使用例版権物



07 I will ask her who she loves best. [FF6:エドリル]

ぱしゃ
水飛沫をあげながらリルムは絵筆をバケツに放り込んだ。虹色が広がった後、混ざり合って暗い色へと変わっていく。水面が落ち着けば空の色を映す。
リルムの目前にあるキャンバスには水彩で描かれた砂漠が広がっていた。
腕組みをしてキャンバスとその向こうの、本物の砂漠を見比べるが、どうもしっくりこないらしい。乾いた砂漠を水彩で描く事は存外難しかったのだ。
日差しに目を細めていると1頭のチョコボを見つけた。城へと近づいている。
騎手が砂と日光を避ける為に頭から被っている布。その隙間から見えた瞳は湖の色だった。
「色男!」
物見の塔の真下に止まったチョコボへ声をかけるために、リルムは身を乗り出した。
エドガーはチョコボに乗ったまま、体にまとわりついた砂を払いつつリルムを見上げている。
「やあ。私がそんなに待ち遠しかったのかい?」
「なに言ってるんだか。と、言いたい所なんだけど。」
リルムは乗り出していた体を戻すと、キャンバスとパレットを抱えて先ほどまで体を預けていた部分へよじ登る。下を向いてひらひらと片手を振った。
「ちゃんと捕まえてよー!」
落下を開始するのとほぼ同時の言葉にエドガーは目を見張る。慌ててチョコボを飛び降り、落下地点を探した。リルムは余裕の表情で、帽子が飛ばないように頭を押さえている。
ばす
わずか数秒後。上品とは程遠い音とともに、リルムはエドガーの腕の中に収まっていた。エドガーはため息をついた。リルムは笑顔を振り撒いた。
「…リルム!」
信頼されている、というのはエドガーの己惚れではないだろう。だからといって。
「怪我でもしたらどうするんだ!!まったく。いいかいレディというものは…」
つらつらと説教を始めるエドガーの言葉を、リルムはまったく聞いていなかった。エドガーの瞳を見つづけている。
「うん!決めたよ。ありがとう王様。」
エドガーは満足げに笑うリルムを抱えなおした。
横抱きにしていた状態から、目線を合わせられるように。
「何を決めたんだい?」
嬉しそうな苦笑いでエドガーが訊ねると、リルムは大事に抱えていたキャンバスを見せる。
「これ、相談したかったんだけど。もういいよ。決めちゃったから。」
「答えになってないじゃないか。」
「いいって。仕上がったらこれ、あげるから。それより、今日どこに行ってたの。大臣がすごい勢いでアンタ探してたよ」
キャンバスをくるくると回したり、パレットを弄ったりとしながら、リルムはまるで興味のないことのように城の状況を伝えた。この王は勝手に城を留守にしたらしい。
「どこに行ってたの、い ろ お と こ ?」
首筋を指先でなぞりながら問いただす。エドガーは今度こそ苦笑するしかなかった。
「ま、いいんだけど。頑張って言い訳しなさいよね。」
リルムの触れた部分にいつのまにかキスマークが浮かんでいる。リルムが砂の上へ降りるて城へ入ろうとすると、人差し指の先だけが絵の具で赤く汚れた手を掴んで引き止められた。
「おそろいにしなくちゃな。」

後日、エドガーに渡った絵には青いオアシスが書き込まれていた。(らしい)



08 imitation or copy&paste. [FF6:エドリル]

筆が震える。
道化師と対峙した時ですら揺るがなかった自信は薄れてしまったのだろうか。
いつも思い描く顔が、正しいという自信も無い。短い間に、薄れたのは記憶。
もう何冊目かわからないスケッチブックに新たな一ページを加えた。
自身の能力で具現する姿。それを見て、忘れてなどいない、変わってなどいないことを確認する。
自己嫌悪
「やあ、おはよう。」
温かい笑みはまるで生身のよう。
それでも微笑み返す事はできなくて、眉根に皺を寄せる、毎朝の行為。
苦痛
「ほら、そんな顔しないで。かわいい顔が台無しだよ」
であった時から比べればおおいに縮まった身長差だが、追いつくことはもう無いだろう。姿形とは裏腹に、がっしりとして細かな傷のある手が頭を撫でた。
否、撫でようとした手を振り払う。
「……そんな…エドガーみたいな顔して、エドガーみたいなこと言わないでよっ!」
理不尽な怒り
それでも彼は、やはりエドガーらしく苦笑してリルムを抱きしめた。お腹の中の我が子共々。
生まれてくるのはきっと、金の髪を持つ男の子。
「酷な事を、させているね。」
耳元で、囁かれて鼻がつんとなる。もう我侭を言えるような年でも立場でもないのだが、せめてもと甘えて涙をこぼした。
「でもまだなんだ。」
世界の復興。帝国の残党。国の復興。エドガーが有能であればあるほど、引き継ぐものに重荷を背負わせる。この身と、宿る命と、守るべき命を思って残された言葉はその残酷さで信頼を語っていた。
「臨月ももう少しだね。無茶しないで、体には気をつけて。」
額に口付けると部屋を後にする。向かったのは執務室だ。
「この子が…女の子、だったら?」
大きく膨らんだお腹に手を当てて、閉まったドアにつぶやいた。
彼は自分の知っているエドガーでしかない。長く持たないことは、リルムにとって救いにもならないけれど。
混乱と落胆
自分の幼さを思い知るたびに覚悟していたとはいえ、ここまで早いとは思わなかった。あのエドガーが躊躇った一番の理由。


リルムが新しいスケッチブックを用意したある日の朝。



09 腕も上がらない [FF7:ザックラ]

心落ち着く、よせては返す波。
真っ白な砂浜から水平線へ向けて、美しいグラデーション。日中はブルーとグリーンだが、現在はレッドとオレンジで。今が一番、夕日の美しい時期だ。


クラウドは椰子の木陰に、ザックスは砂中にいた。

「ク・ラ・ウ・ドーー」
ドカ
鈍い音で、椰子の実はザックスの頭部へ当たった。唯一砂中から現れているそこへ。
クラウドはご立腹だったのだ。ザックス、クラウドに言わせるならバカックス(バカ+マックス)のおかげで、なぜだか二人、任務中に無人島へたどり着いたから。
「『クラウドちゃ−ん♪暖めてv』」
無駄にレベルの高い声色で、ザックスの言葉をリピートしたクラウド。椰子の樹に肘打ちを食らわせ、落ちてきた実を投げる。今度は側頭部にヒット。
ザックスは青くなった。椰子の実のダメージもさることながら、笑顔で声色を使うクラウドに恐れおののいている。
更なる不安要素もあった。確かに、太陽光で暖められた砂中は、秋深まる今日この頃でも暖かい。しかし、ここは波打ち際なのだ。徐々に波が近くなっている気がする。満潮時、溺れるかどうかきわどい位置。
「お、鬼…悪魔…チョコボ頭……」
うるうるしながらつぶやいた途端、クラウドがガバっと立ち上がった。ザックスは心臓の止まりそうな思いを味わう。
クラウドはザックスの前でニコリと笑んだ。砂浜に手をついて、何かを始める。
「……ひ、ぃーーー!」
クラウドが両手をぱんとはらい、もう一度ザックスに笑みを向けた時、砂浜は人体の形に盛り上がっていた。
もちろん首はザックスの生首。
「ああ、そうだ。」
クラウドはどこに隠し持っていたのか、ザックスのバスターソードを取り出す。そこから、黄色に輝くマテリアを二つほどはずす。
ひっさつ★★
れんぞくぎり★★★
さすがと言っていいのか、どちらもマスターレベルである。
だが、この際そんなこたぁ関係ない。
クラウドは無邪気さを装ったすばらしい笑顔で、その二つを例の位置に埋めた。
砂人間の股間。

反省、猿でもできるそれを、ザックスは人生で初めて行った。

終れ@こんなクラウドは興味ないなとか言わない。
青桐候也さんからのリク。ザックラ・ビーチ・夕暮れ。かなりそれてますが捧げます。



10 橙色の光 [TOS:ロイコレ]

「あら、どうしたのコレット。」
コレットは困ったような顔でリフィルの手を取った。
「………」
その手のひらに、指で文字を書く。
゛これからは、先生が通訳して゛

「コレット、なんか元気ないよね?」
戦闘を終え、剣玉片手にジーニアスが呟いた。ロイドは双剣を投げ上げ、なれた仕草で鞘に収める。
「うーん、元気ないって言うよりは、何か隠してる感じだな」
天使化に伴う変化を隠していたときに似た空気があった。それはロイドを前にした時に酷く現れ、ロイドの心配を煽る。

その日の宿で、リフィルはコレットに訊ねる。
「どうしてロイドを避けるの?」
リフィルの手のひらに伝わった文字は゛スキ、だから゛
ぬくもりを感じる事も無く、触っている感覚も無いのだが。
自分がロイドに・ロイドが自分に、触れているのだと思うと、眩暈を感じてしまう。
いつにもましてドジで、その上声も出ない。いつまでも手を掴んでトロトロと話していると、せっかちなロイドに嫌われはしないかと不安になった。
嫌われた方が楽なのかもしれないのに。
「恥じる事ではないのよ?」
リフィルは優しく髪を撫でた。他人を好ましく思うことは自然の摂理に違いない。ただ、今のコレットにとっては重荷でしかなかった。指先が文字を紡ぐ。
゛怖いの゛
ロイドの傍にいると、自分の鼓動が早くなるのがわかった。過敏になった耳がその音を捉える。その度に思うのだ。このままでいたい、と。
天使になれば鼓動が止まる事を、コレットは知っている。その時が全てとの、ロイドとの別れなのだ。神子であるということを、忘れてしまいたい、自分が怖かった。
「そうでしょうね」
リフィルはどう受け止めたのか、コレットを抱きしめる。コレットは視覚でしか、それを感じる事ができない。
「ごめんなさい、なんて。言える立場でもないのだけれど」
「………」
大丈夫と、頑張るからと、言いたかったが両手はふさがっている。また少し、この体を(神子の体を)疎ましく思った。
「…私は、もう寝ます。おやすみなさい。」
あなたに言うのは変な気分だけれど、と付け加えるリフィルに精一杯の笑顔で応える。静かにドアが閉まった。
ベッドに座ったまま、ぼんやりと時間をやり過ごす。一人でいると考えることがありすぎて、息が詰まった。そんな時、人ならぬ耳に隣の部屋から声が届いた。゛コレットは、俺が守る゛泣きそうになった。自分の心臓が大きくはねる音が聞こえる。

+え…寝言?



11 めぐるひと [戦国BASARA:前田軍]

  めぐるひと

白いご飯からは暖かい湯気と匂いが立ち上って、まつの肌は同じに白くて。
しかし利家は受け取った茶碗を落としそうになった。
「犬千代さま。明日の戦、まつはおとも出来ません。」
「そ、そうかぁ…」
肩を落として沢庵をぽりぽりかじる利家。寂しそうな顔をしながらも食欲は衰えず、おかわりと言って腕を突き出しまつに茶碗を渡す。
「明日は晩御飯もおにぎりも作れませんの。」
ですのでくれぐれもお気をつけくださいね、まつの言葉に利家は泣き顔になる。
それでも飯は美味かった。

「大将〜、敵軍来てますよー!!」
配下達の言葉に耳も傾けず一人どんよりとうつむいた利家。生気のない顔で半笑いしながらため息をついている。
挙句しゃがみこんで地面にのの字を書き始めた。
大将がこんな様子では戦にならない。配下も必死になり始めた。
「利家殿〜!槍の又左がそんなでどうするんですか」
「ほら、早くやっつけてまつ殿の飯を食いましょう!」
一番効果の見込める言葉を吐いた者が居た。だがその言葉に利家は
「まづーー!うわぁぁぁ!!」
泣き出した。まるで赤子のように手足をばたつかせている。
「馬鹿者!今日まつ殿はご不在だぞ、」
仮にも大将・槍の又左衛門。顔なし凡武将たちには宥め賺すことも一撃喰らわせてお説教することも出来ないのだ。
「ううぅ…まつの飯が食いてぇ」
などと口走る駄々っ子だとしても。
「どうするんだよ…敵も来てるし」
「どうするったって…まさかまつ殿が居ないとここまで大変だとはなぁ」
もうこのまま勝手に戦し始めようか、しかしそれでは戦力差が辛いなぁ、などと困り果てる配下達。
そこへ
「なにやってんだい、あんたたち。」
風のように援軍がやって来た。

深夜。まつは濃姫の泊まっていけと言う誘いを丁寧に断り、自宅へ帰った。
いつもの利家なら眠っている時間のはずなのに、部屋に明かりが灯っていることを不審に思いながら襖を開ける。
その途端
「まつ、これ!」
赤い目をした利家が腕を突き出してきた。握り締められた手には小さい花と、大量の緑の草。
「まあ、私にくださるんですの?」
萎れかけたそれを受け取り、まつは座布団の上に座る。
利家はまつの向かい側に胡坐をかいて身を乗り出しながら尋ねた。
「まつ、朝飯はまだか?」

こんなのさっさとおわらせてまつねえちゃんにはなでもおくってやんなよな!



花を贈る人々*前田軍
まつ姉ちゃんは濃姫様にお呼ばれしてました。



12 たちどまるひと [戦国BASARA:織田軍]


蝮の子は蝮でございます。
そう言って銃口を向けたとき上総介様は



たちどまるひと

女が戦場で生き残ることは難しい。
濃姫は女の手でも楽に扱える銃を手にした。元来男より女の方が血に強い。
殺すことに躊躇いは無かった。殺されることも覚悟の上。
敵から距離をとり、刀の届かぬ内に撃ち殺す。先を行く蘭丸を援護しながら着実に敵を減らす。
あの時まで濃姫の敵は一人だけだった。今はその一人のために戦場を駆ける。
「蘭丸君、危ない!」
「え?」
機関銃を投げ捨てて、蘭丸の前に駆け出す。腹に矢が刺さった。
「濃姫様!」
蘭丸が叫んだ。
「敵に集中しなさい、蘭丸君!」
矢は帯の上から刺さっている。痛みはあるが出血は少ないので大事にはならないだろう。
何より、今の間に囲まれてしまったことの方が問題だ。蘭丸はまだ良いが、濃姫は接近戦では圧倒的に不利である。
「いくわよ」
気合を入れて敵にむかっていったはいいが、銃で戦うには間合いが近すぎる。
濃姫は銃身で刀を受け、足を使って倒したところを順に撃っていた。しかしその間に他の者がまた接近してくるため距離をとることが出来ない。
女が戦場で生き残ることは難しい。
腕力の差が、体力の差が、濃姫の体に傷をつけた。
敵は際限なく襲ってくる。
右手の銃を叩き落され手首を捻った。思わずそこを左手でかばおうとした隙に左の二の腕を切りつけられる。
二丁とも地面に転がった。
ここで死んでなるものかと、睨み付けた敵が一瞬、赤い布で覆い隠された。
後に出来たのは屍の山。
踏み越えて現れる織田信長。
濃姫に歩み寄ると、刺さったままだった矢を無造作に引き抜く。
そしてどこにしまっていたのか、血まみれになった花を取り出した。
「女、」
そう言って花を差し出したとき、上総介様は


わ ら っ て い た か ら 、




花を贈る人々*織田軍
蘭丸君もちゃんと生きてますよ。