使用例版権物



16 トドマル・林檎・囁き [ネウロ:ネウヤコ]

「魔界の謎は喰いつくした、って言ったわよね」
「ああ。だから貴様の前にいるのではないか。」
という事で現在尾行中。謎に関わってる感じの知らない人を。ネウロの謎センサー(?)が、美味しそうな匂いをキャッチしたらしい。
スーパーから出てきたその人物は、ママチャリのかごへと買い物を詰め込んでいる。
「じゃあ、さ」
電柱の影から、古典的にその様子をうかがっていた顔を、ネウロの方へ向ける。
「人間界の謎も、いつか食べ尽くしちゃうってこと?」
「貴様がキリキリと働けばな」
痛いいたいイタイ!キリキリいってるのは私の首!!
頭を捕まれ、無理やり例の人物の方を向かされた。自分は路の真中から堂々そっちと見てるんだから、私まで見る必要あるのだろうか。大体、何で道路の真中にいるネウロを、周りの人たちはスルーするんだ。何か能力でも使っているのか?人外メ。
「む、追うぞヤコ」
…相手は自転車ですが。軽快にペダルこいでますよ。
ママチャリを追って歩き出したネウロを追って走りだす。チャリを歩いて追いかけるネウロが異常なのだ。決して、歩いている(らしい)ネウロに全速ダッシュで追いつけない私が、異常だとかいうわけじゃない。
「ヤコ、遅いぞ。それに、そんなにバタバタしては尾行にならないだろうが。仕方ない、我輩が。」
いや、仕方なくないし、この頭上の手は何だ。
「行くぞ」
で、そのまま進むネウロ……く、首がもげる!足浮いてる!!だからアンタいつも余計に目立ってるってば。
「でもさ、そんなことになったりするの?」
首の痛みどころか酔ってきたよ。乗り心地最悪(牽かれ心地?)
「食糧危機のことか。」
自分の特殊なcal接種法にまつわる問題に、そんな名称をつけるな。WFPか。
「実際、魔界のものは全て喰らい尽くしたのだ。ここもいずれはそうなるだろう」
霞みかけてきた視界には、住宅街らしきものが確認できる。そろそろ下車できるかと思った途端、ネウロか足を止めた。慣性の法則と、気をゆるめて握力もゆるめたネウロのおかげで前方へ吹っ飛ぶ。何て荒い下車だ。
どうにか起き上がって、ネウロの視線の先を見ると、ちょうどホシが自宅らしき家へと入ったところだった。上等の謎なのか、このところ相手にしてなかったからお腹がすいているのか、ネウロは涎を滴らせている。

「人間がいなくならない限り、謎なんてなくならないと思うんだけど」



17 踊って踊って、疲れたら眠る [ネウロ:ネウヤコ]

事務所に、一通の封筒が届いた。
消印以外にもやたら印の押された封筒は正直少し怖い。何で少しかといえば、いい加減に危険なことにも慣れつつあるから。というか、慣れてしまう事の方が怖い。
封筒を裏返して差出人を確認する。
            逢沢綾とあった。




追いかけた足跡・尻尾・逃げる



>王美屋のフルーツケーキ:1ピース480¥
そういえば、ネウロと謎を追いかけるようになってから、新しい味に出会う事が多くなった。近場から遠方まで出歩いていれば、必然的に出会いも増えるのだろう。しかし、それにしたって多すぎる。特にタダ飯の機会。(今までも大食いチャレンジとかでタダにしてもらってたけど)
もしや罠。
あの、食欲魔人の。
だからといって目の前のフルーツケーキを食べないなんてことは出来ない。そう、言うなればコレは夢、浪漫なのよ!1ピースは480円だけど、この味の価値に値段なんてものはつけられない。
「う゛っ!」
アヤさんの手紙を開いて、心なしかフルーツケーキの味が落ちた。
便箋の一枚一枚に桜の花が咲いている。検閲、とか言うやつだろう。彼女は今監獄の中のはずだ。

私が

(ネウロが)

謎を解いたから

(謎を食べたから)。

゛ここは良い所よ、探偵さん。゛
彼女の手紙はこの一文から始まっていた。

゛皆一人だわ。一人きり。でも、反省もしていないような悪い人より、少しでも良心が残っていて、後悔している人のほうが孤独みたい。どうしてかしらね。じゃあ、こんなにも一人きりな私にも、良心があるのかしら。
ここに来て、私はいつも歌っています。
あんまりひとが失神するものだから、独房に入れられたりもしています。

でも、

そうするともっともっと、

いい歌が

歌えるの。

たまに看守さんまで倒れちゃって。でもここから脱獄しようなんて思ったりはしないから安心してね。゛

ここまで読んで、ひとまず便箋から顔を上げた。
残りのフルーツケーキをほおばる。美味しい。少し笑った。
「ネウロ、」
「何だ、ヤコよ。」
頭の上で返事。たぶん天井からアヤさんの手紙を読んでいたのだろう。
「これからも、アヤさんみたいな人を」
たくさんみなければいけないのかと、問うた。


「ふむ。あの人間のようかどうかは、謎を喰って見ないことには判らないではないか」
>人間の奴隷人形:一匹480¥

>>極上の謎:priceless

笑うところですよ。



18 37.4〜6 [NARUTO:しかいの]

お囃子が流れている。遠くから響く太鼓の音は、祭が終盤である事を表していた。もうすぐ連なった提灯の灯は消え、通りはいつもの闇夜へと戻るのだろう。
「どうしてなのっ!」
帯に合わせて選んだ蘇芳色の巾着を振り回しながら、いのは叫ぶ。
曰く、どうしてサスケに出会わないのかと。
いのに、あのサスケを直接誘うことはできなかった。だが里の住民ほとんどが参加する祭である。大通りとイベントの開かれる広場を一通り回れば、すれ違う顔見知りは両手両足でも足りない。出会ってしまえばあとは簡単。偶然ねーとばかりに声をかけ、後について祭をまわればいいだけの話。
一緒にまわろうと言って承諾するようなサスケでは無いが、だからと言って酷く追い返したりしないことを、いのは知っている。せいぜい「勝手にしろ」と言われるくらいだろう。
そう目論んでの出陣だった。
大通りの左右には屋台や出店が立ち並び、人々を誘惑していた。いのはその誘惑をどうにか振り払う。母に着付けてもらった浴衣の裾と、普段の里からは想像できないほどの人だかりを気にしながら歩いて回った。
そうして、大通りの端から突き当たりの広場を三往復。気づけばこの時間と言うわけである。しょうがない最後のかけだと、もう一度広場の方へ足を向けたとき、足の指に痛みが走った。
「つっ…?」
いのは足を止め、その場にしゃがみこむ。結い上げた髪に挿した、簪が揺れた。
慣れない下駄を履いて、慣れない歩き方をしたせいか、鼻緒で擦れた皮膚がつるりとむけてしまっている。普段なら耐えられる痛みなのに、いのは涙ぐんでしまい、立ち上がる気力も無くしてしまった。

人の流れが、そこだけ変わったことにシカマルは気付いた。自身も流れに逆らい足をとめてみると案の定、しゃがみ込んだ浴衣姿がある。なんだよめんどくせーなと、舌打してお決まりのセリフをつぶやいた。
「オイ、どうした。大丈夫か」
シカマルは目線を合わせるために自分もしゃがみ込みながら声を掛ける。
「…て、いのかよ。何やってんだ」
普段ならポニーテールで長くたらしたままの髪は結い上げられ、その性格からは思い浮かばない渋い色使いの浴衣を着ていたものだから、シカマルは一目でいのだとわからなかった。思いがけない出会い方とあわせて驚く。と言ってもその様子はあまり表には出なかったが。
「な…シカマル!?」
シカマルの目の前で、大輪の花を模した紅い簪が、揺れた。
視線が合った途端、最悪の二文字が脳裏に浮かんだ。最強面倒臭い状態を表している瞳から目を逸らし、いのの手が添えられている足へと意識を移す。いのが小さく鼻をすすった事にも、片手で目元を拭った事にも気付かないふりをするのが一番だ。
庇うように添えられていた手をよせさせれば、親指の内側に血がにじんでいる事が分かった。
「ったく。とりあえずつかまれよ、ココ邪魔だろ」
悪化させてもいけないので左足の下駄は脱がせる。立ち上がらせて肩を貸してやると、素直に体重をあずけてきた。人込の中にいつまでもしゃがみ込んではいられないので、細い路地へと足を向けた。
「ほらひとまず座れ。」
祭の為か、真新しい樽や木箱が積みあげてある。シカマルはちょうど良い高さのものにいのを腰かけさせた。そうしておいて、ぷらぷらさせているいのの足を診る。本当にたいしたこののない怪我だった。応急処置に、ポケットから出した手ぬぐいを細めに裂いて巻く。その間に考えたのは、いのが沈んでいた怪我以外の理由。
「あのなあ、サスケが祭りに顔出すような奴かよ。」
言っとくが、俺だって母ちゃんにたこ焼き買って来いなんて言われなきゃ来なかったぞ、そこまで言い切ってからシカマルはいのへ下駄を履かせた。少し厚めに手ぬぐいを巻いておいたので、傷口もそう痛まないだろう。
再び両足をぷらぷらと振り回し始めたいのの顔は、膨れっ面と表現するべきものへとかわっていた。
「……綿菓子…」
シカマルの言葉に確かにそうだと思ってしまったいのは、せっかくの祭を楽しめなかった事が悔しくなってきた。それでふと、小さい頃に好きだったそれを思い出して呟いたのだ。
「は?」
とは言え、シカマルにしてみればそれはもう突然で聞き取りにくい呟きだった上にさっさと面倒事からオサラバしたいものだから、つい喧嘩腰で聞き返してしまった。
いのはいので機嫌が悪いものだから、返す言葉も大きくなった。
「綿菓子が食べたいって言ってんのよ!!」

望みの品を手に入れたいのはすっかりご満悦だった。大分人通りが減り始め混雑していなかったので、ゆっくりと祭情緒を味わうことができ、シカマルもまあ悪くはなかったかと思う事にした。
「あ!ねえ、シカマル」
ご機嫌のいのの声にやっぱり悪かったかもと思い直す。綿菓子で指された方向には金魚すくいの露店。客もいないのに店主がばたばたしているのは、もう片付けをはじめているからだろう。シカマルが止めておけと言う前に、いのはぱたぱたと駆け寄っていた。仕方もないのでのろりとついてゆく。
店主となにやら話しているいのの隣に立って、シカマルは水槽を見た。そこに肝心の金魚は3匹。赤、朱、朱と白の斑。
揺れる金魚の尾を、いのの簪みたいだと思いながら眺めていると、大きな網が視界に現れた。金魚たちは水槽の端へ追い込まれ、すくい上げられる。
「おじさん、ありがとう」
そう言って笑んだいのを見て、なんだしっかりくのいちじゃねえかと思うシカマル。店主に手を振るいのをおいて歩き始めた。すぐにまってよと、お声がかかった。
「飼えるのか。」
いのは慎重に金魚の入った袋をぶら下げている。
「2、3日だけ家において、その後は川に逃がしちゃう。」
だったらなんでわざわざと、考えてから、シカマルはその理由を考える事を止めた。面倒臭いから。
いのは自分の顔の高さまで袋を持ち上げて金魚を見ている。
「大きくなりなさいよー」
歩いているうちに灯りも途絶え、薄暗い路になる。十字路、左側はいの、右側がシカマル。
「ありがと。」
いのは控えめにシカマルへ感謝の言葉をおくった。シカマルはそれすらも面倒なように視線を逸らす。
「浴衣、お前にしては地味だけど似合ってるぞ。」



19 好きだったって、過去形で、抱きしめて。 [おお振り:タジハナタジ]

三橋は安部の隣。現在話題の中心につき、強制。
安部の三橋とは反対側から花井、水谷、栄口、ぐるっとまわって帰ってきて、三橋の隣に田島。縮こまろうとする三橋をぐいぐいと阿部の方へ押している。相変わらず、テンションの高い田島。

「で、三橋。どうなんだよ。好き?嫌い?」

朝方はぐずついていた天気も、今はすっかり回復している。野球部の面々(一部除く)は上機嫌だった。昼休みで、各々眼前に昼食があれば尚更。

「えっと…え、えぇぇ!?」

三橋は自分の左右を見回しながら、混乱している。片方には押し黙ったまま弁当を食う阿部。もう片方には興味津々の田島。三橋でなくてもきょどってしまう。

「あ、あああ、あの、だってその」
「田島、いいから飯を食え飯を。」

田島は、花井に言われて三橋から弁当へ意識を戻した。栄口に肱で小突かれたのはともかく、安部が眼力で圧力をかけてきたので、これ以上三橋への詮索は無理だろう。

「いっただきまーす。」

両の手のひらを合わせるのではなく、箸をつかんだまま両手を上げて、お手上げのポーズ。

「何だよー。オレなら…」


(オレなら?オレだったら、どうするんだろう。こんなに、悩んだり、隠したり、こんがらがったり?)



急に黙り込んだ田島に、皆不信感を抱く。ただ、1人、田島と同時に沈黙を破った。





「「今すぐ告白する」」
「花井、好きだ」





「んぐっ!?」
自分が話題の中心となった途端、花井は盛大にむせた。鼻から米粒が飛び出さんばかりに。向かい合う位置にいる田島は、大事な探し物を見つけた時の、爽やかな笑顔。にじんだ涙が歓喜のモノではなく、かといって悲しみのモノでもなく、むせたからである事を、花井は必死に自分へ確認していた。


終わっとく@全てうろ覚えにつきエセ似非。4人しかわからん(最低



20 屑が降る * 兎 [じゃパン:黒東]

黒柳はきっちり5分前に、待ち合わせ場所へ到着した。後は東を待つだけである。そう思うと、ひらひらと落ちてくる雪も、あまり寒いと感じなかった。
しかし、黒柳は浮かれるあまり東の遅刻癖を失念していたのである。
当然、5分後に東が現れるはずも無い。
腕時計を確認し、まぁ、雪で遅れているのだろうと考える。
それから10分は今日これからのことを考えて一人夢の世界へ。雪がかなり強くなって来た。
その20分後、事故にでもあったのかと心配し始める。おろおろしていると、足元に丸く足跡がついた。
更に10分。ようやく遅刻癖を思い出した。
慌てて携帯を取り出し、悴む指でメモリを呼び出す。呼び出し音が流れた。同時に、聞いた事のある着メロがかすかに聞こえる。
「?黒やん、この距離で電話はないじゃろ〜」
数メートル離れた所に、携帯のサブ画面を確認している東がいた。黒柳がブチリと電話を切ると東は嬉しそうに駆け寄ってくる。
「五点減点!」
「えぇっ!それは無いんじゃよぅ……」
つい癖で叫んだ言葉に、東がうなだれる。
「え、あ、いや…じ、事故でなくて良かった」
何故か目のやり場に困った黒柳は視線を泳がせながら言った。周りはすっかり雪景色にかわっていた。
「雪だるまみたいじゃのー」
黒柳の頭や肩にも雪が積もっている。東はそれを見て、面白そうな顔をした後、はっと気付く。すまなそうに黒柳のコートの裾を引っ張った。
「ちょっと、かがんでくれ!」
よくわからないまま黒柳は膝を曲げた。東と目線があうくらいにまでかがむと、東の手が体に積もった雪を払っていった。礼を言おうとしたとき、両耳に何かが触れる。
「…すまんかった……」
冷え切った耳に、太陽の手は熱いほどだった。
「キス1回」
ぼそりと呟いてみると、東は頬を赤らめて拗ねた顔になった。またしても目のやり場に困った黒柳はそっぽを向く。
東は目の前にある黒柳の頬に口付けた。

以来、東の遅刻癖が改善されたりされなかったり。

+東の可愛らしさを表現できません。