● リヴィオのこと 6月号で飛行艇から降りてきた彼の顔を見て驚きました。不精髭が生えている。 その後のトイレで顔を洗うシーンでは、フードを外していたので横顔が見えて、胸がズキリと 痛みました。鏡を見つめながら無言で顎を掴んでいるリヴィオの頭部には、もう短い髪が・・・。 ヴァッシュがブラド達と合流したとき、リヴィオの頭部の半分は完全に地肌が見えていました。 飛行艇で移動する途中で、またヴァッシュがイザコザに頭を突っ込みミリメリちゃんと再会。 更に移動してルイーダさんと再会。その時には既に何センチか髪が生えているなんて。 その間、そんなに時間の経過はない筈ですよね。だとしたらこの変化の答えは、多分一つだけ。 『代謝機能の強制促進のせいで 年をとるのも早い』 ああやっぱり、リヴィオも牧師と同じ道を歩んでいるのだ・・・と、とても悲しくなりました。 私、リヴィオは憎くありません。牧師と最後に闘ったのは確かに彼だけれど。 ウルフウッドが命を懸けて救った魂が宿った男だからでしょうか、愛しさすら感じます。 しかしリヴィオはきっと、どんなに周りの人から声をかけられても、一生自分の事を赦すことが 出来ないのではないかと思います。自分のせいで大切な人の命を奪うことになってしまったと 自身を責め続けるでしょう。 それでも。 リヴィオの中には確かに牧師さんが在る。他の誰かでは駄目なんです。ウルフウッドの過去を知って おり、彼のように生きたいと望んだリヴィオ。ウルフウッドの現在を知っており、彼と共に未来を分かち 合いたいと願ったヴァッシュ。きっと二人にしか共有できないものがある。語れない想いがある。 傍から見たらどんなに不思議で歪な関係であっても、きっとそれは間違いじゃない。 だからこそ彼には、出来るだけヴァッシュの側にいて欲しいのです。 ● レガートのこと 4月号タイトルページの見開き。実は私、本当に嬉しかったんです。レガートが生きていてくれたと いうことが。意識もなく物凄い数のチューブに繋がれることで、生きているというよりも生かされているに 近い状態でも。 そして、今月号ラストページでの復活。シルエットしか見えませんが、今回はきちんとした人型の身体が あるのでしょうか。柱には『ナイブズに捧げる忠誠心は無限大』とありますが、まさしくそう。思えば初めから 彼は『ナイブズが全て』でした。 経緯はさて置き、ナイブズを傷つけたヴァッシュを心の底から憎み、肉体が崩壊寸前だったナイブズの 復活に涙を流したレガート。人としての感情を全て捨て去ったレガートの中に残っているものは、 ナイブズへの『想い』だけ。それは、崇敬かもしれないし忠義かもしれないし思慕かもしれません。 あるいは言葉で言い表せない何か、なのかも・・・。 しかし、それに対してもナイブズの対応は酷いもので。ジェネオラロックでヴァッシュに攻撃命令を出した 途端にぺしゃんこに潰され「クズ」扱い。人外の生きものや機械と身体を繋がされても、ナイブズの為に 尽くしてきたのに大切なこと(チャペルの役割や方舟のことなど)は教えてもらえず。たとえレガートが 攻撃の盾になって命を落としても(いや、もしかしたら盾にすらなれない可能性も)ナイブズは眉一つ 動かさないでしょう。 それでも尚、「僕は構わないよ」とレガートは言うような気がします。うっすらと微笑みすら浮かべて。 6月号の207ページのレガートの表情。何故かあの人のことを思い出しました。小さく笑って「無理なんや」と 言った男の顔を。ああ、きっと彼も最期なのだろうと思いました。あんな状態の身体が、短時間で完全に元に 戻るわけがありません。レガートはもうとっくに覚悟を決めていて、ヴァッシュと対峙するのでしょう。 人間である自分の手で『ヴァッシュ・ザ・スタンピードに永遠の苦しみを与える』為に。 深い闇の中で延々と心を侵し続ける狂気。決して正しいとは言えなくても。生死の淵にあってもたった一人、 『あの方』の為だけに動く彼は、ある意味誰よりも純粋なのかもしれないと思ってしまうのです。 ● ナイブズのこと 戦いが最終章へ突入してしまった今、彼の姿を見る度に感じるのは『悲しみ』と『痛み』。 5月号227ページのナイブズを見て、私は涙が出ました。随分前から分かっていたことなのです。 ナイブズの身体はもう既に人の形を成す事はなく、暴走し続けるプラントエネルギーの塊のようなものに なってしまっているのだということ。ナイブズの心は唯一残されていたであろうヴァッシュへの執着をも 断ち切り、人間への憎しみだけで溢れ返っているということ。彼もまた間違いなく終焉へ向かっているのだ ということ。それが本当に辛くて堪らない。 ナイブズがこんな風になってしまったきっかけは、『テスラ』のこと。変わり果てたテスラの姿を見て、 ナイブズはその場で昏倒しました。意識を失うことが出来なかったヴァッシュは『僕もいっそあの時 何もかも途切れてしまえば良かったのに・・・』と思いながら苦しみ続けます。 今まで信じてきたことが根元から崩れていった喪失感、裏切られたという絶望感、自分達だけが異質だと いう孤独感。その想いが全て人間への憎しみへと変化する前に、レムがヴァッシュを命がけで引き戻して くれました。『人も世界も馬鹿にしたもんじゃない』『簡単に大切な生命を手放すな』と。 でも気絶してしまっていたナイブズは、それを知らない。もしかしたら覚醒した後、話は聞いたのかもしれない けれど、身をもって体験したわけじゃない。心の中に湧き上がる狂気に苦しみ、ナイブズはひたすら自らの 身体を傷つけながら涙を溢れさせる。上辺では、おどけ、笑い、今まで通り振る舞いながら、人間への 憎しみを膨らませ復讐を誓っていた。人間の愚かな過ち、醜い欲望がナイブズの心を完全に壊してしまった のだと思います。 現在のナイブズとヴァッシュは、同じ人型プラントであっても全く真反対の立場です。人間を憎みその存在を 消そうとしているナイブズ、人間を愛しその存在を命懸けで守ろうとしているヴァッシュ。 こんなことを考えてしまうのは変かもしれませんが、つい私は考えてしまうのです。もしもあの時、ショックに 耐え切れず気絶してしまったのが、ナイブズではなくヴァッシュだったら・・・二人の今の立場は反対だった かもしれない、と。(勿論そうなってしまっていれば、今のトライガンではありえないのですけれど) 喜びも安らぎも何も無かったであろう150年間。きっと彼もまた、地獄の闇の中を歩き続けてきたのだと 思います。もう誰も彼を救うことは出来ないのだろうかと思う度に胸の奥が軋むように痛みます。 ただ哀しくて悲しくて堪らないのです。 |