ウルフウッドは、漂ってくる甘ったるい匂いに辟易しながら大きな溜息をついた。
口の周りをクリームだらけにしながら、嬉しそうにヴァッシュはケーキを口に運んでいる。
「ようそんなクソ甘いもん、ばくばく食えるなぁ」
「えー、すっごく美味しいよ?キミも一緒に食べればいいのに・・・」
眉間の皺をますます深くしながら吐き捨てるように言うと、幸せ一杯の人間台風から
とんでもないお誘いがかかった。
「ワイはええわ。遠慮せんとおどれが全部食えや」
「このクリームが最高なんだよ!騙されたと思ってちょっとだけ味見してみろって」
「だから、いらんって言うて・・・!?」
甘い甘い香りがふわりと近付いたかと思うと、唇に優しいぬくもりがそっと触れ
あっという間に離れていく。
「・・・・・・・」
「な?美味いだろ?お前、食わず嫌いなもの多過ぎだって!」
口元に手をやって黙り込む牧師に向かって、嬉しそうにヴァッシュは微笑んでいる。
また新たにケーキを口にしては「やっぱ、美味〜いv」などと言ってご満悦だ。
そんな様子を横目に見ながら、ウルフウッドは苦笑する。
「・・・甘いモンは、苦手やねんケド、な」
そうして、気を抜けばこみ上げてきそうな甘い思いを誤魔化すように、煙草を口に咥えた。