物語・民話
- 連作童話『始まりの四つ色』 作者不詳
”橙の少年”[Called "Orange" - Der Junge mit den orangefarbenen - ]
1)昨日と明日の真ん中にある分かれ道。橙の少年が道案内します
2)『右は朝です。古いものを捨てる人はこちら』
『左は夜です。新しいものが欲しい人はこちら』
3)分かれ道に、おくびょう者がやってきました。
『僕は朝へ行くのはいやだ。この手に持った何一つも、捨てたくない』
『僕は夜へ行くのもいやだ。両手はもういっぱいで、これ以上何も持てない』
4)『預ってあげようか』橙の少年は言いました。おくびょう者は喜んで、少年に荷物を一つ預けました
5)会う度に一つずつ、荷物はどんどん増えていきます
6)『こんにちは、さぁ、何を預かろう?』橙の少年はいつものように言いました。
『何も』おくびょう者は答えました。
7)『僕は君に預けるばっかりで、他の誰かの荷物を持ってあげられない』
そう言って、おくびょう者は両手の荷物を全部捨ててしまいました。
8)橙の少年が預かっていた荷物もすっかり消えてそれっきり、おくびょう者が分かれ道に来ることはありませんでした。 [おしまい]
”翡翠の塔に眠る美女”
”水面姫”
”海竜の王子”
- 民話『彷徨えるサリーナ』
- 民話『竜の取り替え子』
- 民話『死の囁き手』
- 民話『女王がいらした!』英見湖周辺地域の風習
- 民話『真冬の決闘』テレンジール地域の風習
信仰・神話
- アサイルヘイムの信仰
フロイアとウディンは同じ神話を信仰対象としていますが、解釈(宗派?)が若干異なっています。
ウディンでは、「川辺を旅する者・ョルド」を主柱(第七天の観察者)として扱い、その他登場人物はほとんどスルー。
フロイアでは、ョルドと共に「原初の海より生じた女・フロイア」を主柱、「息吹で波を齎した男・ウディン」を従柱として扱っています。その他の登場人物は、宗派によって扱いが異なります。(エストワールの最大宗派は各登場人物を概ね”聖人”として認定。カロッダの最大宗派は”聖人”という地位を定めていない。)
神話全体の形としては、誰某がどうしたああしたみたいな詩の集合です。(叙事詩形式?)
なお最終節は「かくして、麗しき女神フロイアより首飾り”祝福”を託され、風神ウディンは旅立った! ~ご愛読ありがとうございました。アサイルヘイム先生の次回作にご期待ください!~」で終わっています。
主な登場人物など
川辺を旅する謎の存在・ョルド
海の女神にして全ての母・フロイア
フロイアから生まれた・波の娘たち(たくさんいる)
フリジア/暮凪の娘
ヴェロニカ/高波の娘
オリビア/潮騒の娘
アニカ/風霜の娘
マイア/喚波の娘
ロカ/氷柱の娘
リリア/巴の娘
アンゼリカ/汐の娘
クラウディア/漣の娘
イスカ/赤虹の娘
パトリシア/暗礁の娘
ジェシカ/長波の娘
サリア/驟雨の娘
エデリカ/沙雨の娘
シルヴィア/氷晶の娘
ユーリカ/朝霧の娘
エレミア/寒靄の娘
ユニカ/引波の娘
ナタリア/鬼火の娘
フランセスカ/逆潮の娘
アリシア/薄明の娘
…etc
フロイアから生まれた・雪の御遣い(これもたくさんいる。個体として識別されない)
風の男神にして肺活量なら任せろーばりばり・ウディン
(ウディンの所持アイテム・マナエン [冠]、ヒューガン [剣]、祝福 [首飾り/The Blessing]、ヴァラスカルブ [笹舟短艇])
フロイアの携挙を受けた竜の番い・アスク、エンブラ
今のところこんなところ。(思い出したり必要があったりしたら増える予定)
エストワールで聖人認定が降りているのは、
フロイアの愛娘/ハンナ・ロラ・キャロディン
竜殺し/ダルク・クリステン
灯守り/アリシア・エンドーラ
導標べ/ヒルダベルタ・バニシア
…などなど。
それぞれの神や聖人に纏わるお祭りがあるのですが、現在フロイア諸国は年末の降誕祭を除いてあまり熱心に祝っていません。なのに何故かウディンが毎月熱心にお祭り騒ぎをする。お前ら宗派違うじゃねえか。
- 全宗派共通の祝祭カレンダー
風生祭 5全
風神ウディンにちなんで肺活量を競う、つまり運動する祭り。フロイアでは、学校の運動会がこの日に行われることが多い程度。ウディンでは国を挙げて大々的に行います。
待降節 11上旬
子供の健やかな成長を願って、竜に取り替えられてしまわないようコスプレさせる祭り。元々は「往波の儀」という、防人の衣装を着た子供がぼんぼりを海に流す行事でした。伝統に則ってちゃんとやってる地方もあります
降誕祭 11末~12末
女神の降誕を祝い、でかい木を飾り付けたり贈り物のやり取りをしたり
寄波祭 12末~1第一週
家族で集まってのんびり過ごす。フロイアでは大体休暇期間となります。新年初日は「沈黙の儀」という、波の娘たちに倣った行事(一日喋らず過ごす)をやる地方もあります
凍月 1中旬~10日程度(気温次第)
寒すぎて何かしたくても外に出ると洒落ならんのでお籠りする祭り(祭り?)ウディンでは最終品質試験(成人式みたいなもん)がこの期間に行われます
- 風習『初雪の願い』『十三夜』『雪の御遣い』
- 神話・詩『放浪のョルド』
フロイアの誕生:
旅人は見た
旅路に寄り添う大河、その砂の奥底を
はたしてそこには往路があった
長く長く続く悲しみが、怠慢に横たわっていた
旅人は細い吐息を紡ぎ出し、両の手に清水を掬った
徒労の旅路に貧いた指から、千々の清水が梳き落ちる
旅人は見た
悼ましく澄んだ透の面に、万葉の妄りて焼けつく様を
かつて渡れぬ河の向こうを
旅人は立ち上がり、そして二度と戻らなかった
後には女が残された
砂の上に唯一人、女は佇む
- 神話・詩『波の娘たち』
潮騒のオリビア 作者不詳:
El segundero cuelga para cada hora.
Los anillos anuales picados por el pilar de madera desaparecen poco a poco.
El sonido que suena desde todo el lugar parece ser bullicioso.
Los rostros desconocidos.
巴のリリア 作者不詳:
てゆひかぜ ゆきにてやまぬ あまみはら
あふなぎなりて あゐそめの
わくるいずみに かみぞありなむ
風霜のアニカ 作者不詳:
- 聖人・『竜殺し』
- 聖人・『灯守り』
- 聖人・『導標べ』
- 信仰・宗教団体『海響』
フロイア大陸南部発祥の宗教団体(宗派)です。
風神ウディンをやたら目の敵にしており(入団儀式を”忌風祓い”と名付ける念の入れ様)、各波の娘の”呼女”(ヴァルカラ)を称する女性をトップに据えています。
一時期なぜだか時流に乗ってしまい順調に勢力を伸ばしたこともあったのですが、主張の過激さもあって人気が薄れ、現在は発祥地付近に小集落を築き細々と暮らしているもよう。
現ヴァルカラはアニカの呼女を称するデボラ・ユゥという若い女性が努めています。先代はオリビアの呼女を称するアミラ・フィという少女でした。両者とも教団名で、正確な身元は不明となっています。
- 信仰『波の往辺 サルワティオルト』『波の寄辺 アズナール』
歴史・故事
- 故事『西の女王と北の女王』
これはまだ、竜の子孫たちが女王と呼ばれる長に率いられる群れとして暮らしていた頃のおはなし。
かつて竜であったことを忘れてしまうほどの時が経っても、彼らの心にはまだちゃんと女神フロイアへの尊敬と愛情が根付いていました。
彼らはフローラの花が咲く季節になると「導きの地」と呼ばれる入江に集い、女神さまへ最も価値ある供物を捧げることに決めていました。
これは、ある年の会合のこと。
西の群れの長を務める女王・アレッサは、優雅な足取りで波打ち際へ進み出ました。
「女神フロイア、あなたに私の髪を捧げます。私の髪はこの世で一番美しいものです」
そう言うと、西の女王は、綿雪草の蔓のようにふわりふわりと柔らかに輝く髪を、根元からばっさりと断ち切りました。
西の女王の順番が終わると、次に、北の群れの長を務める女王・シャーロットは、胸を張ってこう言いました。
「女神フロイア、私の髪こそあなたにふさわしい。私の髪は、これまで一度ももつれたことなどないのです」
北の女王は、星滑花のように波打ってさらさらと垂れる髪を、根元からばっさりと断ちました。
西の女王は頗る面白くありません。
「生意気なシャーロット、なんていやな女!」
西の女王は、群れの皆に声高く言い放ちました。
「あの女の首と引き換えに、私の子を授けましょう」
それを聞いた北の女王も、黙ってはいません。
「高慢ちきなアレッサ、身の程を思い知るがいい!」
そして、群れの者に命じます。
「あの女の首と引き換えに、我が子を授けます」
二人の女王の一つの願いは、民に戦の劫火を放ちました。
「進め、我らがアレッサ女王のために! 忌々しき炭髪の魔女を討ち倒さん!」
西の騎士は兵士に命じます。
「怯むな、我らがシャーロット女王のために! 愚かな枯髪の魔女を討ち取らん!」
北の騎士は兵士を鼓舞します。
真っ白な光の大地を、遍く血の色に染める哀しい争いは、一人の少女によって終焉を告げました。
その年、「導きの地」に集まった女王の中で一番若いその少女は、はらはらと光を降らせる空に、穏やかな笑顔を向けました。
「女神フロイア。私は、あなたに大きな贈り物を持って参りました」
言うなり、少女は、西の女王と北の女王の背を押し、波打ち際に突き放しました。それを合図に、空に閃く雷鳴のような迅さで、少女に従う東の騎士が供物の双頸を刎ねとばしました。
儀式を終えた少女は、皆に振り返り、優しく微笑みかけました。
「みなさん、ご覧になりましたでしょう? 女神フロイアは、私の贈り物――”争い”を、確かに受け取ってくださいました」
◆◇◆◇◆◇◆
少女の名は、ハンナ・ロラ・キャロディン。「フロイアの愛娘」と称される彼女の長く平和な治世の始まりです。
(”カロッダ”の成り立ち暫定版//物的証拠で裏付けの取れる有史上初の”同胞戦争”//西と北が争ってる間に東が勢力を増強しており、アンタッチャブルとなっていた宗教儀式時に両勢力トップの断首作戦を堂々敢行、事態の収束を行ったという話//実際にこの事件だけでケリが付いたわけではなく、しかし長く続いた戦乱に兵力を消耗していた西と北は両軍合同でも東に敵わず、少女の名の元に終戦調停を結びました)
- 歴史『イダヴェル』『カラドヴォルグ』『大科砕』