喫茶店に着いたときには、もうCさんは席に着いていました。
「ごめん、遅くなって。」
「ううん、いいのよ。」
Cさんは微笑みますが、目の前に置かれたカップはからになっています。
Bクンは申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。しかし。
「Aクンもまだ来てないから。」
Bクン、完全に不意を突かれました。イスに座る寸前の中腰姿勢で動きが止まります。
Aが来る?
何故だ。何のために。俺に幸せそうな二人の姿を見ろというのか。
地獄のキューピッド役だけじゃ不十分だっていうのか。
俺がいったい何をしたっていうんだ。何の因果でこんな目に。
しかもこいつら、今日が初デートじゃないのか。
ちくしょう。すみません。勘弁して下さい。
一瞬の間に以上の事を考えたBクン、Cさんが不審に思う前に何とか動きを取り戻しました。
イスに深く腰掛け、コーヒーを頼みます。
「ねぇねぇ、もうすぐAクンの誕生日なんだけど、何あげたら喜ぶかなぁ?」
「さぁ、俺、そういうのうといから……」
んな事俺が知るか。
「あんまり高い物だときっと困っちゃうでしょう? やっぱり時計とかがいいかなぁ。」
「Cが心をこめた物が最高のプレゼントなんじゃないかな。」
君。プレゼントは君。
かわいそうに、どんどん暗くなっていくBクン。
それから程なくAクンが現れ、地獄のショウタイムが始まりました。
何せ今日が初デートの二人。
しかも、実はずいぶん前からAクンもCさんの事が好きだったなんて、
ナイス設定がおまけです。
「昨日学校でね――ひどいでしょー?」
「でも、それは君がかわいいからだと思うな。」
「やだ! そんなこと言って、もぉー。」
「あはは、冗談だよ」
万事が万事この調子。
さすがのBクンも頬が引きつります。
これは一体何だ。何のつもりだ。
頼むから俺の知らないところで幸せになってくれ。
立ち直るにはまだまだ時間がかかりそうな失恋。
傷口に塩を塗ったくり、忘れることさえ許してくれない二人の行動。
このままでは立ち直る前に人格崩壊してしまいそうです。
たっぷり三時間二人の世界を見せつけられたBクンは、映画に行くという二人の誘いを断り、
疲れ果てた体と心を引きずって帰路に着きました。
すれ違うどいつもこいつも幸せ面に見えます。
「ひとり……か」
街はすっかり秋色です。
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いかがですか?
あまりにも暗い例で、私まで人格崩壊起こしそうです。
今後この用例シリーズはやめましょう。