・竜の口より生まれしもの
竜。架空生物の王様、竜ですよ。FF4で竜と言えばもちろん、我らが竜騎士、カインですね。
カインの口から生まれるというと、それは言葉でしょう。
というわけで、この一行は
「カインが言った台詞は、」とこうなるわけです。
・天高く舞い上がり
天高く、とは、ますます竜騎士との因縁が強まってきましたね。
しかし、台詞が舞い上がるとは?
これはですね、
ここがこういった古文書解読の面白さでもあるのですが、文字通り受け取ってはいけないのです。
皆さん、場にそぐわない発言をして、周囲の者から冷たい視線を浴びたことがありませんか?
え? 無い?
そういう方は、多分この講座にいてはいけません。
ではなくて、そう、その、場にそぐわない発言を一般に何と形容するでしょう?
そう! 「浮く」と言いますね。
というわけでして、これは前述の一文と合わせ、
「カインの言った台詞は浮いてしまい」となるわけです。
・闇と光をかかげ
闇と光をかかげる。全く正反対のものを手に持ち、掲げるわけです。
肝心の光と闇の正体ですが、前後の様子から見ると、
カインの行動に返るリアクションと考えるのが妥当のようです。
正反対のリアクションというと、「喜ぶ」と「怒る」。そして、感情を掲げる、ということは、
「ある者は喜び、ある者は怒った」となるわけです。
・眠りの地に更なる約束を持たらさん
これはですね、とても高度なトラップが仕掛けられています。分かりますか?
考えてみて下さい。この文章は口伝なのです。ということは、音で伝えられていたわけですね。
「ねむりのちにさらなるやくそくをもたらさん」と。
それが災いして、後世の文章に起こした者が誤解してしまったわけです。
この文章、本当は「ねむりのちに、さらなるやくそくをもたらさん」ではなく、
「眠り、後に、更なる約束を持たらさん」だったのです!
強弁ですか? ほっといて下さい。
というわけで、この一文は
「一眠りしたらけろっと忘れて、また違う約束をした」
となるのです。
・月は果てしなき光に包まれ
果てしなき光! これはまた詩的な言葉ですね。
真っ白に白けきった場をこのように表現してしまうとは、古代人の繊細な感性には頭が下がります。
あまりにもつまらないギャグを飛ばす友人に対して
「今、果てしなき光に包まれちゃったよ!」と突っ込めば、誰も傷つかずすみますね。
さて、月ですが、月と言えば地球を回るもの、転じて周囲の聴衆達です。
「聞いていた者は皆、果てしなき光に包まれ(白けきって)」
・母なる大地に大いなる恵みと
母なる大地、地球。先ほど月が聴衆をあらわすと分かりました。
ですから、地球は当然カインのことです。
そのカインに大いなる恵みを与えるとは?
場を白けさせた人間に与えられる恵みと言えば、生暖かい愛想笑いですね。
「(カインに)愛想笑いをした」
・慈悲を与えん
慈悲。こういう事態に対する慈悲というと、やはり
その嫌な空気を払拭してくれる出来事を起こしてくれた、即ち、
「話題転換した」となりますね。
さあ、解読が終わりました。改めて、文章にしてみましょう。
「カインの台詞は浮いてしまい、皆の反応は喜びと怒りに分かれた。
だが、(カインは)一眠りするとけろっと忘れて、また違う事を言った。
皆白けきったが、(優しい誰かが)愛想笑いで話題を転換してくれた。」
どうでしょう、この一文。何か思い出しませんか?
そう、バブイルの巨人脱出から魔導船へいたるまでのイベントです。
巨人の自爆を告げ、脱出を促すカイン。仲間達は、戻ってきたことを喜びながらも、疑いを捨てきれない。
そして魔導船。
疑いを露わにする者に、カインは新たな誓いを述べる。
セシルは曖昧な笑いで険悪な雰囲気を何とか変えようと試みる――。
古代人は二度も裏切りを働いた男を待つ運命までも予言していたわけです。
同時に、
二度も裏切ったヤツはもう信じられないという人間の心理さえも、叙情的な文章の中に見事織り込んだわけですね。
素晴らしい。全く以て素晴らしい。
いやあ、人の世って、世知辛いですね。