……それでは気を取り直し、早速講義に移りましょう。
本日の課題はこちら、
「大丈夫だ、俺は正気に戻った!」
某様をして、正気に戻ったとき一番言ってはいけない台詞とまで言わせしめたFF4屈指の名台詞です。
では皆さん、まずはこの言葉を復唱してみて下さい。
大丈夫だ、俺は正気に戻った。
大丈夫だ、俺は正気に戻った。
大丈夫だ、俺は正気に戻った。
……
はっ、これはこれは学長先生、突然教室においでになるなんて……私に何かご用でしょうか。
え? 洗脳? 何を仰有っておられますやら、先ほどの合唱は授業の一環でして、ええ、ハイ、胡散臭いことなど何一つしておりません。ハイ、勿論です、ご安心をば。
……ふぅ、驚かせやがって。
講義自体が胡散臭いなどとこっそり抜かす輩は一体どこのどいつ様ですか。
ハイ、再度気を取り直して、講義を進めていきましょう。
さて件の台詞。何ともおかしな台詞ですね。何故こうまで聞く者に不信感を与えるのでしょうか。「大丈夫だ」だけならば、軽く請け負った風で済まされるのですが……
そうです。
後半の「正気に戻った」部分が諸悪の根元である事実は既に明白ですね。
ではこの場合、一体どのような台詞回しが妥当だったのでしょうか。
”正気”という単語を置き換え、ケース別に見ていきましょう。
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「大丈夫だ、俺は元気に戻った!」
何やら微笑ましいですね。ですが、誰も体調など心配していません。緊迫した雰囲気への不意打ちとしては使えそうです。
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「大丈夫だ、俺は陽気に戻った!」
かなり大丈夫ではありません。特にカインさんの場合、尚更です。
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「大丈夫だ、俺は陰気に戻った!」
せっかく帰って来たのに突然引きこもってもいけません。
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「大丈夫だ、俺は呑気に戻った!」
のこのこ舞い戻って来たっぽさを追加してはいけません。
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「大丈夫だ、俺は剛気に戻った!」
良い度胸っぽさもいけません。前例と同様、火に油感が万遍なく漂っていますね。
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「大丈夫だ、俺は好機に戻った!」
確かにココイチ!な場面で改心したカインさんですが、計算があったことを自らバラしてはいけません。
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「大丈夫だ、俺は狂気に戻った!」
そもそも戻っていません。
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「大丈夫だ、俺は鈍器に戻った!」
人間であることを止めてもいけません。
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「大丈夫だ、俺はいい気に戻った!」
いい気になるなよ若造が。
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どうですか? 考えれば考えるほど、”正気”が最適の選択であったようにしか思えなくなるこの錯覚感。
これぞマジック! イッツ・ア・ミラコー!
人生、なるようにしかならないものですね。