では、開幕!
・
・
・
舞台は机と椅子を並べた簡素な会議室。幹部達が揃ったところで、悪の秘密結社会議が始まります。
「本日は、我らが野望の達成をことごとく邪魔するAの処置について作戦を立てたいと思う。意見のある者は挙手を」
議長であるGさんが言い終わるか終わらないかの内に、C君(本人)がバッと手を挙げました。
「……早いな。ではC、意見を述べろ。」
「は。私が提唱する作戦は、まず、下級戦闘員の配置改変を行います。現在は各要所に相当数を散らせる形をとっていますが、過去の戦術に染まりきった形式的作戦思考からの脱却を求めます。」
「というと……」
「各要所の守りは幹部が一人で行い、全戦闘員をA抹殺に投じるべきです。」
C君(本人)の発言に、会議室がどよめきました。
「我らに留守番せよと申すか! 我らが力、戦闘員に劣るとでも?!」
「マジでえ? 一つトコに居座っちゃったら出張費用パクれないじゃなァ~い。」
不満の声を上げる幹部達に、C君(本人)の鋭い視線が突き刺さりました。
「そういった文句は結果の一つも上げてから言ってほしいものだがな。」
「なっ……」
見るからに血気盛んなR君、椅子を蹴倒し立ち上がりました。
C君(本人)ふんと鼻を鳴らします。
「大体お前! 5人対1人のどこが正々堂々だ。体の各パーツごとにHPを設定するくらいの根性を見せてから一丁前の口を叩け!」
先制パンチを喰らったR君、直立不動で押し黙ってしまいました。
「ちょっとちょっと、そりゃいくら何でも言い過ぎじゃなァい……?」
見かねたB嬢が横からフォローを入れます。
しかし、C君(本人)から立ち上るオーラに圧され、引っ込んでしまいました。
「C、お前のA完殺に向ける意気込みは良く分かった。だが、その作戦をそのまま採案するわけには……」
険悪となりきった会議室の雰囲気を打開すべく、議長であるGさんが口を開きます。
しかし、何やら異様な迫力を纏ったC君(本人)、彼すらも一睨に伏しました。
「そもそもがG、お前の作戦が生ぬるいと俺は言っているんだ。A完殺の為には全て犠牲にすべし! A打倒! A完殺!」
何やら盛り上がりを見せるC君(本人)の一人大合唱。
Gさんは泣きそうになりながらもC君(本人)に声を掛けます。
「か……帰ってこい……」
「やかましいッ! そうだ、お前が出ろ! 大将なんだってからには強いんだろう?! SもKもBもRもザコも引き連れて今すぐ行け! さあ行けそら行けA完殺! A完殺! A完殺! A完殺! ジークジオン!」
その後、C君(本人)の姿を見た人はあんまりいません。
・
・
・
どうですか? 「帰ってこい」の裏側には、統一性だの調和だのがまるで皆無な一個団体率いてしまったGさんの苦労が隠されていたのです。余談ですが、統率者という点に関しては、相手に応じて手を変え品を変えして人材整理を図ったA君の方が優れているのかもしれませんね。
は? 普通過ぎてつまらない?
う、うるさいっ私だって一生懸命寝食削って講義内容考えてるんだーーーッッッ
・・・折角泣きながら飛び出そうとしたのに、どなたも「帰ってこい」を言って下さいませんね。皆さん、分かりきっていてもオチを付けてあげるのが芸人根性と書いて人情ってもんですよ?