「あちちっ」の活用
皆様こんにちは。えー、今回はですね、「あちちっ」の活用を学びたいと思います。
それでですね、えー、私が以前使用を放棄した用例シリーズ、
”ABCのレッツFF4用語”第三巻を、ぜひとも、ご覧下さい。
すばらしいですから。ええ。
え? 後ろに立っているスーツの男? ええ、えーと、この方はですね、
この素晴らしい用例ビデオを監修されたご本人様です。
えー、はい、では、ビデオスタート!



B君のとりなしによってお互いの愛を確認することが出来たA君とCさん。今日は動物園でデートです。
キュル、キュルルル。
あ、すみません。ビデオデッキの調子がおかしいようです。えー、はい、出ました。
は? 早送りですって? どうしてそんな。
してませんよそんな事。私は潔白です。

こじゃれたレストランに入った二人。キャンドルが演出する薄明かりの中、うっとりと見つめ合います。
「君はコアラのようにキュートだけど、カンガルーのように強いんだね。」
「あなたこそ。普段はヤマダイショウのように安心させてくれるけれど、
いざという時キングコブラになってくれるんだわ。」
何だそりゃ。さっぱりわからん。……いえいえ、ビデオではなく、こちらの書類の事ですよ。
ソムリエが、寄り添う二人のグラスにワインを注ぎます。
「乾杯、フラミンゴのような君に。」
「乾杯、サンゴヘビのようなあなたに。」
動物園へ行って何を見てきたのでしょう、彼女。
……は、すみません、私、独り言の癖がありまして。はい、黙っています。
しばらくして、料理が運ばれて来ました。
動物園巡りで一日中歩きっぱなし、笑いっぱなした若い恋人達のおなかはペコペコです。
「フィレステーキのお客様は……」
「はい。」
即座に手を挙げたCさん。A君は笑みをこぼします。
「おなか空いてたんだね、C。」
「もう、いじわるね!」
外面如菩薩内面如夜叉となったウェイトレス嬢、続くメインディッシュを取り上げます。
「こちら、ロースステーキで御座います。」
「ありがとう。」
ウェイトレス嬢から皿を受け取ったA君。次の瞬間、その指先からちっと小さな音が出ました。
「あちちっ」
皿を机に置き、慌てて耳たぶに手をやるA君。俯いたCさん、くすくすと肩を揺らします。
「Aったら、可愛いこと言うのね。」
A君、肩を竦めます。
「君ほどじゃないさ。」



いかがでしょう。交際中の彼女がおられる方、慌てんぼうのふりして「あちちっ」。
これは婦女子に受けること間違いナシです。さあ、これでもう非モテ系なんて言わせません!
……は? 続き……? はあ、やっぱり。あの、つかぬ事お聞きしますが、何かB君に恨みでもおありで?


サークルの飲み会でレストランに来ていたB君。ナイスなことにA君Cさんの真後ろに座ってしまった彼は、聞きたくもない会話を延々聞かされ、最早崩壊寸前です。
「B! グラス空いてるぞ飲めおらァァーー!」
何がコアラだ。
何がカンガルーだ。
「一気行けテメーー!! ういぃイッキ! イッキ! イッキ!」
何がフラミンゴだ。
何がサンゴヘビだ。
酔っぱらい十数名が好きずきに注文した多量の料理を運んできたウェイトレス嬢、
盆の重さに耐えかね、姿勢を崩しました。
煮えたてのフグ鍋は放物線を描きそして――
「あちちっ!!!」


私思うんですけど、この、B君の姿から何を学べと仰るのでしょうか。
えー、はい、次回またお会いしましょう! それでは!! アデュー!