俺たち、ボグミン −後書きにかえて−



 何とも、微妙なノリで書き始めてしまったのですが・・・まずは、うっかり忘れないうちに。
 ボグミンのご母堂さま、炎天下くららさま、Special Thanksです。おかげで、すっかりピクミンをヨコシマなしで見れなくなってしまいました。誰のせいとか、そういうことは一切言いませんが、今度第三者を交えて、あれこれ賠償責任などの話し合いを(は?)。

 毎度毎度、書いてる人間だけが楽しいあれこれ、長々お付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。
 でも、ピクミンのオフィシャルサイトに行って、彼らのあれこれを眺めてると、ほんとにそうとしか見えず! おまけにドルフィン号だの、空を飛ぶだの力が強いだの、単なる偶然の一致とは言え、どう見ても、スタッフに009をこっそり好きな人がいるに違いない!と捏造に拍車がかかったことは言うまでもありません。
 ちなみに、オフィシャルピクミンの公式CPは、白紫、青黄のようです(黙れ)。
 ピクミンかわいー、ボグミンかわいーとわめく日々。8月末には、いよいよこちらでピクミン発売! 思う存分、ひとりで、妄想を垂れ流しつつ、クリアに励みたいと思います。
 ああ! やっと動いて喋って食べられるピクミンに会える!(鬼)
 ピクミン/ボグミンのおかげで、好みではないはずの、白とか紫色とか、服だのバッグだの見るたびに気になって、似合わないのに、うっかり買ってしまいそうになってます。
 でもでも、あのボグミンアニメがなかったら、こんなことにはならなかった・・・というわけで、ご母堂に責任問題の追(削除)

 というわけで、相変わらずの、超蛇足を下方に置きつつ、ボグミンはそろそろこの辺で。
 ゲーム始めたら、また「ボグミンラブラブ観察日記」とかわけのわかんないこと始めそうですが、そこらは理性との闘いですね(違)。
 超蛇足は、ちなみに、本編でどうしても理性が邪魔をした、「ボグミンやおい」に挑戦です。ここまで墜ちてしまいました、はい(大笑)。
 最後にもう一度、どうもどうも、お付き合いありがとうございました。ではまた☆


    























 風がざわざわと、騒がしい夜だった。
 いつものように、穴を掘って、爪先を埋めて、眠ろうとしても、耳元を過ぎる風に邪魔をされ、白も紫も、そろって寝つけないでいた。
 寒いわけではなかったけれど、風と一緒に、胸の中もざわめくようで、白は、少しだけ不安になって、紫の、赤い首のひらひらを、気づかれないようにぎゅっと握った。
 花はふたつとも、風にゆらゆらと揺れて、そのせいなのか、甘い匂いが鼻先をくすぐる。
 その匂いが気になって、白は、まるで腹を立てたように、土から足を抜き出した。
 「俺たちの花は、苦いのか?」
 何事かと、少し眉を上げた紫が、白に向かって、いつものように無言でうなずく。
 「匂いは、甘いのに。」
 声が、少しふてくされた。
 紫が、どうしていいかわからないといった表情で、風に揺れる白の花を撫でる。
 花びらが、風にではなく、紫の指の動きに、応えるようにやわらかく揺れた。
 動きにつれて、また、白の花の甘い匂いが立って、紫は思わず目を細める。今夜は、風のせいなのか、やけに匂いが強いと、どうしてかほんの少し、首の後ろが熱くなる。
 同じように風に揺れていたはずの紫の花が、その拍子に、ゆっくりと頭の上に立ち上がった。
 白が、何か思いついた顔つきで、不意に立ち上がって、紫の背中の方へ回った。
 何をするのかと、軽く首を傾けて、肩越しに白の姿を追っていると、白は、紫の背中に沿って、必死に腕と爪先と首を伸ばして、紫の花の茎に、指先を絡ませようとしている。
 白に届くように、あごを前に出して、頭上の花の位置を、少し低くした。
 白の小さな両手が、ふわりと花を包み込んだ感触があって、それから、花びらの奥に、ひそめた、けれど白の吐く息が、あたたかく当たるのを感じた。
 白のために、動かずにいようと思えば、首さえ曲げられず、白が一体何をしているのか、はっきりとは見えない。けれど、花と真正面に向き合った白が、そこに、花粉がつくほど近々と顔を寄せていることだけは確かだった。
 花びらの根元の辺りを、濡れた感触が、つつくように這う。舌先で、甘いところはないかと、探しているのだろうか。
 ぐるりと、花びらの根元をたどって、だんだん大きくなる舌の感触に、くすぐったいような、むずがゆいような、紫は、こっそりと首の辺りを少し縮めた。
 黄色い部分に、ぺたりと舌が張りつく。
 「・・・」
 思ったよりも苦かったのか、白が、喉の奥で小さな音を立てて、けほんと、ひとつ咳をした。
 「・・・甘くない。」
 「そう言った。」
 少し素っ気ないかなと思うほど、間を置かずにそう返すと、花の前で、白がむっと唇をとがらせたのが、どうしてかわかる。
 白の舌が、また、花びらの根元の辺りを探り始めた。
 何度も何度も、甘くないことを確かめるように、舌先が行ったり来たりしながら、今きっと、白の舌は花粉で黄色くなっていると想像すると、それはどうしてか、おかしさよりも、また首の後ろの、妙な熱に変わる。
 白は、そんな紫には気づかない様子で、必死に、花の甘い匂いの元をたどりながら、舌先にも甘いはずの、何かを探している。
 紫の花粉は、舌に苦かったけれど、どうしてかそれだけではなくて、苦いとわかっているのに、何度も何度も、舌先をそこへ当てる。
 こくんと、ざらつく舌を喉の奥に飲み込んで、そうすると、頭上の、茎の根元がむずむずした。
 甘いところは、結局見つからず、苦い花粉で口の回りや頬を黄色く染めて、白はついに、紫の花から手を離した。
 まるで、弾かれたように、紫の花はぴんと上を向いて、花の匂いが、鼻先をかすめていった。
 「甘くない。」
 まるで、そのことが紫のせいだとでも言うように、白は紫の目の前へやって来ると、少しふくれた頬で紫を見上げる。
 その頬が黄色いのを見て、紫は、うっすらと笑って、白を自分の方へ引き寄せた。
 「あまい花、今度見つける。」
 白を膝に乗せ、初めて会った時にそうしたように、首の赤いひらひらで、白の、黄色くなった頬や唇を、丁寧に拭ってやる。
 「俺のは甘いかもしれない!」
 白がいきなり、自分の花をつかんで、紫の鼻先に押し当てた。
 甘い匂いに唇を覆われて、思わず、首の後ろの熱を思い出しながら、白の花粉をなめていた。
 苦いはずの花粉が、どうしてか、甘く喉の奥を覆った。
 ごくりと、飲み込んで、やっと白の花から、ほんの少しだけ唇を遠去ける。
 白が、花を後ろへ放って、ひどく真剣なまなざしで、
 「甘いか?」
と、訊いた。
 思わず、うなずいてしまってから、ひどくうれしそうな顔で、白が首に飛びついてきて、唇の横についた花粉を、ぺろりとなめた。
 どちらの花の匂いなのか、また強く、甘い匂いが鼻先に立って、紫は、黄色い舌で、唇をなめている白を見下ろして、期待とは違う味に、みるみるうちにしかめ面になる様を、呆然と眺めていた。
 「甘くない・・・。」
 また、白の唇が、への字に曲がる。
 白へのいいわけも思いつけず、紫は、口の中いっぱいに、白の花粉の、あの奇妙な甘さが広がるのを、舌を動かして、こっそりと確かめていた。
 甘いのは、花粉ではないのだと、そんなふうに思って、どうしてそんなことを思いついたのかわからないまま、またじわりと首の後ろが熱くなる。
 唇をきれいになめてしまうと、やっとあきらめがついたのか、白は、顔を隠すように紫の胸に額をぶつけて、そこで大きく舌打ちをする。
 ふてくされてしまった白を、慰めるように膝に抱いたまま、紫は、もう一度唇の端をなめて、白の花粉の甘さを味わった。
 風はいつの間にかやみ、けれどまだ揺れている花が、抱き合っているふたりを真似するように、向かい合わせに、花びらを、互いに差し出し合っている。
 茎をたわませて、掌を合わせるようにぴったりと、花びらと花びらを絡ませ、花の中心を重ね合わせて、そこでゆっくりと、黄色い花粉が交ざり合っていた。
 空気に濃くまじる甘い花の匂いに、けれどふたりは顔を上げずに、重なり合ったふたつの花と同じほど静かに、ただ、互いを抱きしめ合っていた。