温泉で 続編2
道明寺司×牧野つくし


前回:温泉で 続編(道明寺司×大河原滋)

--翌朝--

つくしは早く目が覚めて中庭を歩いていた

“昨日は本当にあたし、花沢類としちゃったんだ・・/// ”

“花沢類、優しかった。あんな色白くって華奢なのに、胸や腕、たくましくて力強かった。怖かったけどあんな気持ちははじめてで・・”

思い出して赤面しながら歩いているとそこに道明寺が立っていた。

「・よぉ。早いな」

心臓がズキっと痛む。あたしはまともに道明寺の顔が見れない。

「おっ・おはよ」

やっと言葉に出来たのはその一言だった。

二人の間に長い沈黙が訪れる。どれくらい経ってるんだろう。道明寺はそれから一言も発していない。

“きまずい・・何か話さなきゃ”そわそわ考えてると道明寺がやっと口を開いた。

「牧野、昨日は良かったか?」

「は?!・なっ何がよ?」

「その、類とだよ」

あたしは突然聞かれ戸惑った。

“ば、馬鹿じゃないの、何が言いたいのよ。聞き方ってものがあるでしょうが”

「類に抱かれたんだろ」

道明寺は急にあたしの目の前に立ち肩をつかんだ。

“怖いっ!!”

あたしはとっさに目をギュッっとつぶった。

・・・・

“あれ・・?”

そっと目を開けるとそこには悲しい目をしている道明寺・・あたしは胸が痛くなった。

“道明寺・・”

あまりに悲しげでとっさに体に触れようとした瞬間、ギュッと強く抱きしめられた。
道明寺の腕に力が入る。自分では離れられないくらい強い力で。

「ど、道明寺痛いよ」

道明寺はハッとして、それからまた顔色を変えた。

「・・・この腕で、類を抱きしめたのか?」

あたしはぞっとした。道明寺の顔がさっきとは違う。
恐怖で言葉が出ない。

「この唇で類とキスしたのか・・?」

そう言うと道明寺はあたしの頬を片手でぎゅっとつかんだ。

”怖い・・・こわい・・やだ”

あたしは震えていた。これから何が起きるのか恐怖で。

「いいご身分だよな。あっちへふらふらこっちへふらふら」
「男を渡り歩いて、さぞいい気分だろうがよ」

目が・・怖い
あたしは必死に抵抗して逃げようとした。でもがっちり掴まれ
離れることが出来ない。

急にわたしを地面に押し倒すと荒々しいキスをしはじめた。

「やめて!!」

「道明寺、やめて!!・・やめてよ!」

あたしが涙を浮かべると、道明寺は悲しげな顔で言った。
「そんなに類がいいのか? なんで俺じゃねぇんだよ!」

道明寺の手が震えている。あたしは何も出来ない。
何もいえなかった。


・・・・・・・・

「何やってるの?」

・・・花沢類!

あたしは慌てて土のついた浴衣をほろった。
そして花沢類の元へ駆け寄る。

「司、牧野をいじめるのやめてくれない?」

放心している道明寺へそう声をかける。

少しの間沈黙が続いた。その後、道明寺がやっと口を開く。

「類・・・お前 なんで牧野なんだ・・?」
「また静の身代わりか? ふざけんじゃねーぞ!
この俺を裏切って、友達だったんじゃねーのかよっ」

道明寺が花沢類に殴りかかろうとした瞬間、あたしは目をつぶった。

ボカッと鈍い音がする。あたしはそっと目を開けると
道明寺の口が切れ、血が流れている。

殴られたのは花沢類じゃなく道明寺の方だった。

「類、てめぇ」

「司、俺は本気で牧野が好きだよ。お前は、牧野が好きかもしれないけど
牧野のこと、傷つけてばっかりだろ。守ってやれてない」

道明寺が何も言わないでいるとさらに花沢類は続けた。

「昨日の夜、俺は牧野を抱いたよ。これからも譲る気はないから」

・・・花沢類・・・

花沢類はあたしの方を振り返るとこう言った。

「牧野、昨日のこと覚えてる? 素直になれって言ったよね?」
「司が好きじゃないなら、ちゃんと言葉にしなきゃ。」

道明寺は震えていた。怒りと悲しみと、想像もつかないほどの
感情でその場に立ちすくんでいた。

・・・あたしは・・・
昨日の夜、あんなに辛かったのに、だけど、あたしは・・・
花沢類と・・・これからも一緒にいたいと思うのは花沢類だよ。
そうだよね・・?つくし

だけど、道明寺の傷つく顔が頭から離れない。
今も、目の前で震えているあいつのことが・・?
なんで、すぐに言葉が出ないんだろう・・

「何してんのよ!」
ドタバタと滋がやってくる。

「あ〜あ、つくし浴衣こんなにしちゃって」

滋が慌てて駆け寄る。3人の緊迫した空気に割って入った。

滋は3人の空気を読み取ると、切なそうな顔でつくしに声をかけた。

「ねぇ、つくし、女同士で話したいことがあるの。」

・・え? でも今は・・・

あたしがオロオロしていると滋さんは強引にあたしの手を
ひっぱり奥の部屋へ連れて行った。

「えっ?滋さんっちょっと・・!」

・・・道明寺、花沢類、2人にして大丈夫だろうか・・・

「温泉に来たのに土だらけなんて・・。
まずは、浴衣なんとかしなきゃね。」

滋さんはニコッと笑ってあたしに新しい浴衣を渡してくれた。

「ありがとう、滋さん」

”やっぱり滋さんのこと憎めないなぁ。
男だったらやっぱり多少わがままでもこういう人選ぶよね。
可愛くて・・スタイルよくて・・なのになんで道明寺は・・”

なんで・・なんでっていう理由を突き止めればそこにたどり着くのに、
あたしはいつも見てみぬフリをしてきた。あいつの気持ちが重くて、
あいつとはもう関わらないって・・・

・・・ダメダメっ!あたしは花沢類と・・・

「ねえ、つくし、昨日はどうだった?・・花沢さんと。」

突然そんなことを聞くからまたあたしの心臓が飛び跳ねる

「どうって・・・別に・・」

”あー・・さっきの訂正するわ、こんな時にそんなこと聞くなんてっ”

あたしはつい昨日の夜のことを思い出して恥ずかしくなった。

「ふふっそうだよね。やっぱり。」

悲しそうで崩れそうな笑顔でそうつぶやいた。

「えっ?」

「あのね、つくし、そのことで話たいことがあって・・・」

そう言うと、滋は下をうつむいて小刻みに震えていた。

「あの・・滋さん・・?」

泣いてる・・・?

「つくし・・あたし司とだめだった!」

涙目になりながらそう話はじめた。

「あのね、ごめん、つくし、実は・・昨日の夜、
司がつくしの部屋に行こうとするの止めようとしたんだけど、
聞いてくれなくて悔しくて、部屋のドアを・・・少し開けて
司に見せちゃったの・・・」

あたしはさーっと体の血の気がひくのを感じた。
昨日の夜の・・いったいどこを見たんだろう
どんな風に道明寺は感じたのだろう・・そのことで頭が
真っ白になった。あたしがぼーっとしてると更に話続けた。

「それから・・ね、司が私を抱いてくれようとしたんだけど・・・
だめだったの・・あ・・あたしじゃダメなんだって! 
つくしじゃなきゃ・・・ダメなんだって、そう言ってたよ?」

滋さんは涙目になりながら必死にぬぐいながらそう話してくれた。

「・・・滋さん」

あたしは何もいえなかった・・・・。

「私、司とはダメだったけど、つくしとは友達でいたい。
だから、つくしの本当の気持ちを聞かせて?」

「あたしの・・・本当のきもち・・?」

あたしは動揺していた。昨日は、花沢類の気持ちが嬉しくて、
単純に好きだって思った。だって今までずっとあこがれていたから。

でも・・・道明寺に見られたなんて・・
あたしじゃなきゃダメだなんて・・ 

どうして、道明寺のことを考えてしまうんだろう。

「つくしは、本当に花沢さんのことが好き? 司のことは・・?」

「あっあたしは、別に道明寺のことは・・花沢類が好きに決まってるわよ。
じゃなきゃ・・昨日の夜・・」

なのに・・・なんでこんなに胸が痛いんだろう。
どうしてあたしはあいつのことを考えてしまうんだろう。
それだけがひっかかってしまう。

「・・・つくし・・」

ガチャガチャガシャーン

「何?! なんの音?」

突然鳴り響いた音に滋さんもあたしも驚く。

「あっちに行ってみようっ」
「う、うんっ」

あたしたちは音のなる方、さっきいた場所へ戻った。
さっきまでいた場所に急いで戻ってみると、そばにあった鉢植えや
窓ガラスが粉々に壊れていた。

「何よ・コレ?!」

滋さんも顔が真っ青になっている。
あたしは道明寺の顔を見てますます真っ青になった。

道明寺は狂ったように暴れていた。まるであの時のように・・。

「つくし、とりあえず今日は帰りなよ。私なら大丈夫だから。」

滋はそう言うと、花沢類に目で合図した。

「牧野、行こう」

花沢類はあたしの手を引っ張り別荘から外へ連れ出した。

・・・花沢類・・・

花沢類の手からも血が流れていた。口元も少し切れている。
あたしは、胸がズキっとした。
ごめんね、なんでか分からないんだけど、あいつのこと気になる。
今も、胸が痛い。あなたのこと大好きなはずなのに・・
昨日のことだって、本当に嬉しかったのに・・・
あたしが・・二人の仲を壊してしまった・・・

「牧野・・?」

外へ歩いて、あいつから離れていくその間、あたしは涙で
前が何も見えなくなって立ち止まった。

花沢類は、あたしの気持ちを察したのか、何も言わず抱きしめて
くれた。それから、花沢類が運転手さんを呼んでくれて家まで
送ってくれた。

見送ってくれた顔が悲しげで、あたしは、花沢類のことも、
道明寺のことも、滋さんのことも、みんな傷つけているのは
自分なんだって思った。

あたしのせいで傷つく人が出るのは嫌だと思ってあいつから
離れた。だけど、結局みんなを傷つけてるんだ・・・。


「・・・ただいま」

家に帰ってくると、急に現実に引き戻される。あたしは今日も
働かなきゃいけない。

「まぁ、お帰り、つくし!2泊くらいしてくれば良かったのに!」

ママがまたいつもの調子で話しかける。

「ね、どうだったの、道明寺さんと!もしかして・・・!」

ニコニコしてママがまとわりついてくる。

・・・うるさいなぁ・・・

「あたしはママなんかに構ってる場合じゃないのよ!」

ママの顔が一瞬固まる。そしていつものように・・・

「パパーーつくしがっつくしがーー」

ママの泣く声。

「ええっママどうしたんだい、つくしは。」

パパのオロオロする声。

・・・はぁっ落ち着いて悩んでもいられないのね。・・

面倒になって、今日はいつもより早目にバイトに向かうことにした。

「・・ハァ」

「どうしたの?つくし、今日はため息ばっかりついてる」

優紀が心配そうに声をかけた。無理もない。
バイトが始まる前からこんな調子でため息ばかり。

「なんか色々ありすぎちゃって」

“昨日、今日の事、ちゃんと考えなきゃいけな
いよね。”

あたしは道明寺と花沢類の悲しい顔を思い出しまた胸がギュッとなった。

「あれ?なんかココ赤くなってるよ」

優紀があたしの首筋を指差す。
そういうと急に優紀は固まった。

「え、?」

「こ、コレッてもしかして!、キ、キスマーク?!」

大きな声が響く。あたしは慌てて優紀の口を塞いだ。

「ごめんっごめん、で、どっちと?」

案の定、ニヤニヤしながら聞いてきた。

あたしは昨日と今日の出来事を一から話をした。
花沢類とのこと、滋さんのこと、そして道明寺のこと。

「・・そっかぁ。。そんな事があったんだ・」

「うん・・」

「つくしは、でも、花沢さんが好きなんでしょ?」

あたしは、言葉に詰まってしまった。花沢類が好き、だけど
道明寺のあんな悲しい顔を見たのははじめてだった。
それが心に引っかかる。皆を傷つけていることも。。

それからしばらく黙りこんでしまったあたしの肩をポンポンと叩く優紀。

「何にもしてあげられないのが歯がゆいけど、元気出しなよね。雑草つくしパワ
ーでしょ!ね?何かあったらまたすぐに言いなよね」

「ううん、聞いてもらってちょっとスッキリした。ありがとう、優紀。」

やっぱり持つべきものは友達よね。
・・その友達の仲を・・道明寺と花沢類の仲を壊してるのはあたしなんだよね、


「あ、いらっしゃいませ!」

さあ、仕事しなきゃと思い優紀に続けていらっしゃいませと言おうとして固まっ
た。

「よぉ!勤労処女探したぞ」

西門さんと美作さんが現れた。

今一番会いたくない連中なのに・・!

この二人に捕まれば、昨日の夜はどうだった、とか根掘り葉掘り聞かれるに違い
ないから。

「優紀ちゃん、今日も可愛いね」

西門さんが優紀にささやくと優紀は嬉しそうに
ポーっとしてる。

・・まったく・・

「今日はどうしたの?用事がないなら帰ってよね。それから、その呼び方やめて
よ。あたしはもう・・」

と言いかけて、・・!・・しまった!・・と思った。

それを西門さんは見逃さなかった。

「優紀ちゃん、ちょっと牧野借りていい?」

「えっ?あたしはいいですけど、女将さんが・」

相変わらず優紀はぽーっとしてる。

「ちょっちょっと!」

無理矢理連れていこうとする二人。あ〜もう・・!なんで金持ちってこうワガマ
マなの!

「ゆ、優紀〜」

優紀にしがみつこうとするあたしをはねのけて西門さんは言う。

「優紀ちゃん、女将さんに、今日これ全部買いますって言っておいて」

そういうとウィンクした。優紀はすっかりハートマークの目、・・ためだこりゃ
。。

「さ、あきら、牧野、行くぞ」

結局なすがまま、近くの喫茶店に連れていかれた。

「さぁ、さてと・・」

腕まくりする二人にビクビクするあたし。

「昨日のこと、話してもらおうか・?」

ニヤニヤする二人。

ハァ・・やだなぁ

なかなか言い出さないあたしを横目に・・

「なんで、俺たちが呼び出したか分かるか?」

西門さんがそう切り出した。

「類の様子が変だったんだよ。怪我してたしなぁ・・」

美作さんが口元を指差しながら言った。

「それから、司の様子も変だった。」

「つまり、牧野、お前が原因!」

二人声を合わせて言う。

あたしは渋々、昨日と今日のことを話はじめた。
花沢類とのこと、道明寺のこと・・さすがに滋さんの
ことはなんとなく言えなかった。

「ひょーっついにヤッタんだ、じゃあ処女じゃないわな」

西門さんと美作さんはまたいつものようにふざけはじめる。

「類・・・」
「つくし・・」
「今夜の君はきれいだよ」
「なんつってー・・・だろ?」

ニヤニヤあたしを囲む二人。

「で、牧野はどうしたいわけ・・・?」

西門さんがぐいっと顔を近づけてくる。

「どっちにするのかはっきりしろよ」

そういうとおでこをトンっとつついてきた。

「痛いなぁ・・もー。」

もうやだ、この二人・・・ハァ

「まぁ、どっちを選んでも、大事な親友が傷つくとあらば
黙っていられないよな」

美作さんが真剣な顔をする。

「正直な気持ちはどうなわけ?」

だんだんイライラしながら西門さんは問い詰める。

「あたしだって、わかんないよ・・・けど・・」

「けど????」

また声を合わせる二人

「でも、花沢類のことが好きなのは事実だよ。・・道明寺のことは・・」

そう言うと涙が溢れてきた。

「もー・・・あたしだって大変なのよ。家のことだってあるし、ふらふらしてるっていうけど、どうしたらイイっていうのよー」

ボロボロ涙を流すあたしを見て、二人は深いため息をついた。
西門さんがヨシヨシとあたしの頭をなでる。

「まぁな、俺たちのような美しい男に取り合いされたんじゃあ、牧野も迷うよなぁ」

ハハハと笑いながらそんなことを言う。あたしの気も知らないでー

「そうじゃなくて・・!あーもーやだーだからあんた達に話すの嫌だったのよ」

「よし、分かった、俺たちが司を説得する」

目を輝かせ、二人が立ち上がる。

「ええっ?!」

あたしはまた何か嫌な予感がする・・・

「ひとつ言っておくけど、これが、牧野の結論でいいんだな?」

西門さんがちらっとにらみつける。

「け・・結論って何よ?」

「ほんと、お前ばかだなぁ、司といい勝負だわ。」

ふうっとため息をはいてやれやれといった顔をする。

「つまり!!司をけって類を選ぶってことでいいんだな?!」

あたしはまた黙ってしまう。でも決めたんだ。
誰を選んでも傷つくのならば、一番好きな人を選んで、分かって
もらうしかない・・・・そうだよね、つくし・・

「どうなんだ?!」

苛々してテーブルにどんっと手をつく西門さん

「いっいいですっ!」

「よしよし、OK!」

美作さんが笑顔で納得したようにうなずいた。

「どんな作戦でいこうかねぇ・・まぁ俺たちに任せとけよ。悪かったな、バイト中に。俺ら帰るわ。重大な仕事ができたことだしな。」

「うん・・」

「じゃあな!勤労処女!・・・あ!違った。」

わざとそんなことをいいながら、二人は喫茶店を後にした。

・・・なんだか嫌な予感がする。

不安な気持ちのままあたしはまたバイト先に戻った。






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