第六部 ストーンオーシャン
たっのしかったーッ!!という歓声と共に、徐倫はベッドに倒れこんだ。 でも、良かったの?と、部屋でコートやら何やらを片付けているジョルノを見る。 「式を挙げてすぐ、ハネムーンで。お仕事とか色々、あったんじゃない?」 「大丈夫ですよ。あの闘いの後、直ぐに必要だと思える事はやっておきましたから。 徐倫こそ、良かったんですか?新婚旅行の場所がイタリアで。別に僕のことなんて 配慮しなくても、行きたいところを言ってくれてば良かったんですよ?」 「平気よ。あたし、イタリア来た事無かったし、ジョルノの居る国を少しでも知って おきたかったしねッ!」 そう告げると、徐倫は仰向けになって、四肢をゆっくりと伸ばした。たっぷり としたキングサイズのベッドは、ふわふわしていて夢見心地に誘ってくれる。 それにしても、凄いホテルよね。と徐倫は呟く。 「最上階が一室で、ワンフロア丸々貸切状態なんでしょ?凄くない? っていうか、良かったの?そりゃあ、あたしは嬉しいけれど、もっと普通でも 全然構わなかったのよ?」 こきゅ、と首を傾げながら徐倫が告げると、お金と権力は、とジョルノが言 った。 「使いたい時に使う。そういうものです。昔なら兎も角、今では僕は余り使い ませんからね、こういう時しか使えないんですよ」 んーまぁ、ジョルノの性格からして、そうだろうけれど……。と、上半身を 持ち上げて、背を枕壁にもたれさせた。ベッドの上にあったクッションを抱き 抱える。 「式、楽しかったわねッ!色々な人が来ていたわッ!!」 「呼んだのは一応、身内とごく親しい人々だけだったんですけどね……いやはや、 ジョースターの家系の凄さと言いますか……」 父さん、ずっと苦虫を噛み潰したような顔をしていたわね。と言う徐倫に、 一人娘ですからね、とジョルノは苦笑しながら応え、徐倫の側に腰掛けた。 ベッドがひとり分追加した重さに、沈む。 「そりゃあ、苦い顔にもなるでしょう。なんせ、あの後直ぐに結婚、ですしね。 承太郎さんとしては、家族水入らずの時間をもう少し味わいたかったんじゃなんい ですかね」 父さんが?と、徐倫は目をぱちくりさせた。身を乗り出し、そうかしら? と、どこか期待するように、問う。 「そうですよ。まぁ、ひょっとしたら僕の事が気に食わないのかもしれませんけどね。 徐倫にプロポーズした時も唖然とした顔をしていましたしね」 「そりゃあ神父との戦闘が終わって直ぐだもの。あたしだってビックリしたわよッ! おまけに『今は婚約指輪が無いのでこれで……』って、花を生み出して薬指に結ぶとかッ! 普通、ありえないわよ」 「嫌でしたか?」 いや、そんな事はなかったけど……と、笑顔で訊いて来るジョルノに、口の中でモゴ モゴと徐倫は答えた。嬉しかったけれど、恥ずかしかったわ、と。 「プロポーズを受け入れてくれて、今でもほっとしています。急だったから、 信用してくれないかと思いました」 「まぁ、確かに急だったわよね。『繭』の中でもしきりにプロポーズしていたしね、 ジョルノ。 ……んー、そうね。ご飯を上げちゃった以上、責任取らなくっちゃなー、なんて思ったのよ」 「『ご飯を上げたら、懐いちゃった獣』だから?」 隣に座したまま、耳元でそう問いかけると、うん、まぁ、そんなトコロ、と徐倫は 可笑しそうにクスクス笑った。 ジョルノはそんな徐倫の、耳障りの良い笑い声に微笑みながら、責任とって飼って 下さいね、と軽く頬にキスをした。 -----------『 Mebius 』----------- (下) ▼--- Chapter 1 ---▼ 外で食事と観光を済ませると、ジョルノが先に風呂に入った。徐倫は夜が近づくにつれ、 段々身を硬くして行った。ジョルノが風呂から上がった瞬間など、 飛び上がらん程の勢いで、首を傾げるジョルノに、慌てて何でもないッ!と告げると、 自分の着替えを手にそそくさとバスルームへと入る。服を脱ぎ、ぶくぶくとバスタブに 沈む。バスオイルを使用しているらしい湯船からは、花の良い香りがした。 ここから上がったら、と、徐倫はひとり、思う。 (あたし、ジョルノに『食われちゃう』わけだわ……) どうしよう、と思った。いや、思ったところでどうしようも無いわけだし、 結婚したのは合意であるし、まさか結婚とセックスは別のものだなんて、 思っているわけでも当然無い。そういうものであることは、承知の上だ。ただ……。 「すンげェー、怖い……。ど、どうしよう……」 初体験は誰しも痛いと聞く。よく少女漫画ではキラキラとした背景と共に、 涙ながらに男と結ばれて歓喜しているのを見掛けるが、あれは脚色だと クラスメイトから聞いたことがある。実際はあんなモンじゃない。メチャクチャ痛い。 喩えるなら口内炎をグリグリと広げていってソコにレモンジュースを注ぎ込むようなものだと。 敢えて喜びを挙げるならば、と、クラスメイトは言った。 ”『食べられる』っていう喜びかしらね。相手が喜んでくれるっていう事を 喜ばないと、とてもじゃないけれど初体験って楽しめないわ” 相手の喜び……と思ったところで、ちらり、と徐倫は己の胸を見下ろした。 両の手で、覆ってみる。サイズは多分、そんなに小さい方じゃないし、両の手 の平から余るというくらいだから、それなりにある方だと、思う。 「あ、でも……ジョルノの方が手が大きいから、小さく感じるかも……」 呟くと、何だかちょっと気落ちした。ふに、と自分の胸を押してみる。当た り前だけど柔らかい。腕を見る。刑務所に入れられて以来、しっかりと筋肉が ついてしまっていた。腹が平たいのは嬉しいが、あんまり女の子らしい華奢な 感じはしないかも知れない……と落胆する。 「とりあえず……綺麗にしておこう……」 ボディーソープで丹念に泡立てると、乳首や秘所、菊座をいつも以上に丹念 に洗った。脇とか腕とかの毛は処理済だったが、一応念の為、と、 剃刀を当てておく。 シャワーを浴びながら、バスタブの湯を抜く。神父との闘い以上に怯えを 感じている自分に、ファイト!と励ます。 「ファイトよ、徐倫!あの泣き虫のママだって、オヤジにキチっと 食われたんだッ!!」 よし、と立ち上がったところで、ガチャリとドアが開いた。 「大丈夫ですか?徐倫?何だか随分長いですが、湯あたりしてや……」 「きゃァあーーッツ!?」 心配して顔を出したらしいジョルノに、徐倫は慌ててバスタブに身を沈めた。 が、湯は既に抜けている。風呂場とトイレは別々になっているため、シャワー カーテンが無く。隠すものが無い。大丈夫だからッ!と、徐倫は耳まで 真っ赤に染めながら、首だけねじって、ジョルノに応えた。 「もう、上がるからッ!!ま、待っててッ!!」 そうですか。と、ジョルノはやや戸惑っていた様子だったが、パタリとドア を閉めてくれた。徐倫はバスタブの中で崩れ落ちながら、自分の言葉に ツッコミを入れていた。 「『待ってて』って、何だよ、クソッ!!これじゃあ『貴方の為に準備し ていました』って言ったも同然じゃんッ!あたしの馬鹿ッ!! チクショウ……超、飛びてェ……」 溜息を吐きながらも、上がった。身体を拭き、下着を、身に纏う。 純白のレースと、フリルで彩られたブラとショーツ。一応、今日の為に 買ってみた。「そういう下着」は、どういったのが良いのか、正直徐倫には 分からなかった。下着店で色々見たが、やたら赤いのやらスケスケなのを見て、 いや、脱がしてみたらソレってどうよ、と頭を抱えた。初体験でそれってどうよ。 それともやっぱり、男って喜ぶモンなの?と。 結局、羞恥心とそれまでの常識が勝った。オーソドックスな白の、上品な物 を徐倫は選んだ。普段着ている物の露出が高いので意外に思われそうだが、 下着の類は女の子らしい、可愛らしいのが好きなのだ。 身に纏い、鏡に映った自分を見る。ストラップの無い、細かく刺繍が施された ブラと、ショーツ。多分、そんな変じゃないし、それなりに似合ってる。と思った。 すっと息を吸うと、徐倫はバスローブに、腕を通した。 ▼--- Chapter 2 ---▼ お待たせ、という言葉と共に、徐倫はベッドに居るジョルノの隣に、並んだ。 ついつい、身が固くなる。はい、と、徐倫の隣に居たジョルノが、 グラスを差し出した。カラン、と氷の涼しやかな音がする。 「何?これ……?」 「桃の果実酒です。後口が良く、アルコール濃度も低いので、お風呂上りには 良いと思いますよ」 言われ、こきゅん、と飲み込む。口に入れると爽やかな桃の香りが広がった。 確かに飲み易く、風呂上りであった事も手伝って、こきゅこきゅと飲み干した。 飲み物を飲んで緊張が解れたのか、或いは、僅かに含まれているという アルコールのせいなのかは知らないが、ほんの少しだけ、心が解れた。 枕元に空いたグラスを置き、横たわる。 「緊張していますか?」 くすくす、とジョルノが横目で見て、笑った。先に指摘してくれて、 ほっとしたのか、分かる?と、徐倫は笑いながら、応えた。 「すっごい緊張。笑わないでね、あたし、初めてなのよ。 なんていうか、さ、上手く出来なかったら、ごめんね」 くすくすと笑いながら答える徐倫に、優しくしますね、とジョルノは 耳元で囁き、ゆっくりと、圧し掛かった。 バスローブの紐が解かれて、静かに襟を広げられる。ジョルノの唇が徐倫の 白い喉へとすべり落ち、ゆっくりと胸元へと降り、バスローブは広げられる。 下着姿が露わとなり、ジョルノの視線に、恥じ入るように、徐倫は身を捩った。 あ、あの、と徐倫が呟いた。この下着、変かな、と。 「変、ですか……?」 「いや、あの、あたし、普段シンプルな奴ばっかりだから……。 こ、こういうの良く分からなくて……。ジョルノの好みじゃなかったら、 悪いなって……」 僕の感想を言うのなら、と、ジョルノは前置きして言った。 「100点満点ですよ、徐倫」 そうして、再度、胸元へと顔を沈めた。 徐倫の白い下着は、彼女の白い肌によく似合っていた。清楚で、可憐で、 彼女の中にある「少女」が、その下着に現れていた。これからその「少女」を 剥ぎ取り、自分が「女」にしてやるのだと思うと、知らずに心が昂ぶった。 ブラジャーの上から、ゆるゆると乳首を撫ぜる。徐倫は切なそうな吐息を立て、 自分は背中へと手を伸ばし、ホックを外す。ゆっくりと剥ぎ取ると、 綺麗な桃色に染まった、頂が見えた。指でそっと撫ぜ、摘み、舌で、味わう。 ふぁん、と声がした。いつもよりも高い甘い声に、心が躍った。 暫くぺちゃぺちゃとそうやって弄っていると、ぴん、と乳首が立ってゆく。 立ってますよ、徐倫。と悪戯声でそう囁くと、かぁっと彼女は頬を染めた。 そのさまが本当に可愛らしくて、ちゅ、とジョルノは彼女の額に、 小鳥のようなキスを落とした。 ゆっくりと、触れる指は下へと動かす。下腹部から大腿部へ。 秘所へと手を伸ばそうとしたところで、ぎゅっと、徐倫の足が反射的に閉まった。 徐倫、とジョルノは囁く。 「徐倫、両足を、開いて。……やってくれますね……?」 徐倫の目を見ながら、優しくそう告げると、徐倫はやや、不安の色を 目に滲ませながらも、おずおずとその両足を己の意志で開いた。ジョルノの手が 股の内へと滑り込む。する、と上から撫ぜると、ぴくん、と徐倫は身を震わせた。 そのまま、強く押したり、撫ぜたりを繰り返す。徐倫の吐息が強くなる。 どうやら、陰核への刺激は慣れているようだ。スムーズに興奮していって いるところをみると、自分でやったこともあるのかも知れないな、 とジョルノは思った。ひょっとしたら、元々感じやすい体質なのかも知れないが、 これからより様々な所を開発して行こうと言う立場からすれば好都合だった。 性に興味は、無いよりあった方が、こちらとしてもやりやすい。 すっとショーツの中に手を滑り込ませ、指で、内壁を弄った。ひゃうっ!! と、徐倫が声を上げる。ぐち、ぐち、と指をゆっくりと掻き回す。や、ぁ、イイ っ!と、徐倫から微かな声が洩れた。 「あんっ!自分でするのと、違っ!ずっとぉ……イイッ!」 ……これは良い事を聞いたな、とジョルノは思った。今は止めておくが、 おいおい楽しめそうだ。と、先程の徐倫の呟きを聞こえなかったフリをして、 行為に戻る。ショーツを脱がし、頭を両足の間に入れ、ちろり、と舌を伸ばす。 びくっ!と徐倫の背が、跳ねた。 指で両壁を広げ、ぺしゃ、ぺしゃ、と初めは控えめに、舌を動かす。 徐倫の手が伸び、ジョルノの頭を掴む。手が震えている。止めさせようとしている ようだが、手に力が入っていない。くしゃくしゃ!とジョルノの髪を、混ぜた。 指で陰核を押し、舌で内壁を弄り、じゅっ!と力強く吸ったところで、徐 倫の身体がびくんと震え、弛緩、した。 くたりと徐倫が横たわっているのを見ながら、ジョルノは手早くバスローブを 脱ぎ捨てる。下着は、つけていない。帯を解くと、すぐに張り詰めた自身が姿を現した。 ぎしり、と、再度徐倫に圧し掛かる。気配を察したのか、物憂げな様子で徐倫は ジョルノの方へと顔を向けると、ぎょっと眼を見開いて、思わず後ずさりした。 「ああ、ひょっとして、男性器を間近で見るのは初めてですか?」 問いかけるジョルノに、こくこくッ!!と、勢い良く徐倫は頷いた。 そ、ソレ……と、声を絞り出す。 「それを、挿れるわけなのよね……その、あたしの、中に……。 入るかしら?っていうか、裂けちゃわない、かな……」 怯える徐倫に、ジョルノは手を取って、触ってみて下さい、と、 己の男性器を徐倫に触れさせた。徐倫は触れた瞬間、ビクっと驚いて 手を離したものの、おそるおそる、ジョルノに触れた。 「すごい、熱い……。びくびく、してる……」 「徐倫の、ここもね」 言い、ジョルノは徐倫の女性器のうちに指を沈める。 ぁん!と徐倫が可愛らしい声を上げた。 「すごく熱くて、びくびくしています。僕らのものが、互いに、互いを欲し ているんです。だから、徐倫、怯えないで下さい……」 そう、語りかけるジョルノに、徐倫は暫し彼を見つめ、分かったわ。 と、頷いた。その代わり、と、己の手を、彼に差し出した。 「……?」 「繋いでいて。離さないで。あたしのことを。 ジョルノ、あなたの血と、魂で、あたしの魂を結び、 繋ぎ止めていてくれる……?」 徐倫の言葉に、勿論です。とジョルノは答え、互いの両手を絡ませたまま、 二人はくちづけ、そうしてジョルノはゆっくりとうちに、押し入った。 徐倫の中は、ぎちぎちに狭かった。自慰に耽ったことはあっても、 中に挿れた事までは無かったらしい。徐倫の大腿部を掴み、ぎりぎりと 身体を押し進めて行く。きっと、想像を絶する痛みなのだろう。 十分に潤っていたとはいえ、徐倫の顔は辛そうだった。呼吸は荒く、渇き、 痛みからか、一筋の涙がほろり、と彼女の頬を伝っていた。 これに対し、貫いているジョルノは、狭く、締め付けてくるものの、 内壁からの温かさと、刺激に、肉欲と理性との狭間にあった。 がむしゃらに徐倫の子宮を突きたい。だが、苦悶の表情で呻く彼女に 無理はさせられない。 牙を立てる獣は牙を立てる獣なりの、食われる獣は、食われる獣なりの、 分かち合いながら、じわ、じわ、と。互いがひとつになるまで、 酷く不器用に、時間をかけて、溶け合っていった。 やがて、全部、入りましたよ。と、汗を滴らせながらジョルノが告げると、 ほんとう?と、涙声となった徐倫の声が響いた。本当ですよ、と。繋いでい た徐倫の手を、繋がる下身へと導き、触れさせる。 ……本当だ。と、子どものような声が響いた。繋がってる、と。 「愛してますよ、徐倫」 そう囁きかけると、あたし、もッ……!!と、感極まったように、 徐倫はジョルノの首筋に両腕を回し、ぴたり、と身体を密着させた。 「あたしもッ!ジョル、ジョルノの、コトっ……!!」 ぽろぽろ、と、徐倫の両目から涙が零れた。耳元で、蚊の鳴くような声で、 愛していると密やかに告げられ、ジョルノはゆっくりと、動き、やがてそれは 緩急をつけ、早まり、二人は互いの背に両腕を回し、肉体を繋がらせたまま、 互いに、弾けた。 ▼--- Chapter 3 ---▼ 朝ですよ、徐倫、と声を掛けられた。重い眼を開けると、 カーテンから緩やかな陽の光が満ちていた。ん……と、身を起こすと、 そこには既に服を着替えたジョルノが居た。 「Buon giorno!(おはよう)徐倫。朝食はどうしますか?ルーム・サービ スをお願いして、もう少し寝ていても良いですが……」 ジョルノの言葉に、ううん、良く寝たし、起きるわ!と答え、はた、 と自分がシーツを巻き付けただけの姿であることに気が付いた。やや、 頬を紅潮させながらも、必死に平常心を装い、シーツを巻きつけたまま、 ベッドから降りようと足を伸ばす。 「――ィッ!!?」 ぺたん、とベッドの下に蹲る。なんじゃこりゃあああああ!!? と内心、絶叫する。 (何これ、ナニこれッツ!?ま、股の間が合わせられないッ!! ち、力が入らないぃいいいいい!!) 冷や汗が、だらだら流れる。しかも痛い。じんじんする。嘘だ、 痛いのは最中だけなんじゃなかったのかッ!?と半泣きになる。 「――ひょっとして――立てませんか?」 すっと、ジョルノが心配そうに腰を降ろして目線を同じくする。 すみません。僕のせいですね、としおらしく謝る態度に一層焦る。 ヤバい。超、恥ずかしい。 大丈夫だからッ!!と、わたわた徐倫は手で制し、 ベッドサイドに手を伸ばした。 「き、きちんと自分で立てるわッ!!そ、それよりもジョルノ、 ルーム・サービスで朝食をお願いッ!」 「本当に大丈夫ですか……?じゃあ、僕は向こうの部屋頼んでいますね。 あ、後、徐倫。備え付けのクローゼットにある衣服は好きに来ても良いので、 良かったから来て下さい。ホテルの方に頼んだものだから、 好みかどうかは分かりませんが……確か、下着もあった筈ですよ。 買い取り式だから、好みのがあったら、付いているタグを置いといて下さい」 そう、一通り説明を終えると、ジョルノは寝室から出て行った。 残された徐倫はベッドサイドに掴まって、震える足を叱咤し、どうにか立ち上がり、 クローゼットまで動いた。 「……信じ、られねェ……世の女の子って、みんなこーゆー痛みに 耐えているモンなの?そーいうモンなの?っていうか、 良くあんな大きいモノが入ったわ……」 そう、ブツブツと文句を垂れながらクローゼットを開いた。 何と言っても全裸である。独房の中ならともかく、この場で、 下着を付けないというわけにはいかない。引き出しの中かな?と、引き出しを開け、 中に敷き詰められた下着を一枚手に取り、固まった。 紐である。スケスケである。しかもなんていうか真ん中に割れ目とか 入ってたりする。ちなみに引き出しひとつがまるまるショーツだ。見ると、 他にも真ん中にでっかいパールのビーズだとか、何かもう、「そういう下着」の見本市 みたいになっている。まさか、と思った。嫌な汗が、背中を伝った。 がらっと、二段目を開いた。ブラである。赤とか青とか黄色とか白とか黒と かそれはもう色とりどりである。それはいい。だが、何故か乳首の部分が 空いていたりスケていたり何か突起物がついていたりする。 (フザけんなぁあああああああ!!ラブホかッ!?ココはッ!!?) 叫びたい衝動をぐっと抑える。隣にはジョルノが居る。叫びを聞きつけて、 この状況を見られるわけにはいかない。 ……ジョルノが取ってくれたこのホテルは、実に有名な一流ホテルだ。 それは、間違いない。徐倫だってガイドブックで見たことあるのだから、違いない。 だのにこれは何だというのだ。確かにそりゃあ、新婚夫婦のみが貸切と言ったら、 想像されるのは一つだろう。それは分かる。分かるが……!! 「あたし……どれ着よう……」 徐倫は下着の前に項垂れた。まさか生まれてこのかた、下着を前に泣きそうになる 日が来るとは思ってもみなかった。 結局、徐倫が選んだのは、ジョルノが普段着ている色に似た、ローズのベビードール と、どうやらセットになっているらしい。両サイドが紐のショーツだった。 「……これ着て、スカートとか絶対無理だわ。まぁ、どっちにしろ今日は 出歩けなさそうだけど……」 そう呟きながら、両サイドを蝶々結びにする。紐を引いたらあっさり取れて しまうなぁと思いながらも、固結びをして取れなくなるよりはマシだ。 と自分を納得させる。 ショーツと、ベビードールを身に着ける。スースーする。当たり前だ。 もうちょっと身を覆いたいなと、三番目の引き出しを開けた。ストッキングだ。 ほっとして手に取り、広げる。そして、脱力した。 ガーターストッキングである。今時、ガーターベルト無しでも、 落ちないようなストッキングが当たり前だというのにこの始末。 何ていうか意図してやっているとしか思えない。 溜息を吐きながらも、下着の色にあったものを選び、足に纏う。 ガーターベルトで繋ぐ。鏡でもって、己を見ると、何ていうか 「お召し上がり下さいv」な自分が居た。凄く鏡を叩き割りたい衝動に襲われた。 とにかく服を着ようとクローゼットから比較的自分に似合いそうなワンピースを 引きずり出す。どれも背中のファスナーを下ろせばあっさり脱がせられる作りなの が気になったが、最早ツッコむ気力も失せた。首筋が良く見える、ワインレッドの ワンピースを着て、ジョルノの元に向かった。 きゃあ!豪華っ!と、部屋のテーブルに並んだ朝食を見て、徐倫は眼を 輝かせた。ジョルノは椅子を引いて徐倫を席に着かせると、徐倫の服を見、 良く似合っていますよ、と目を細めて褒めた。 徐倫はぱっと、頬を染めた。そうして遠慮がちに、あ、有難う。と照れなが ら礼を言った。 徐倫はどうも、ストレートな表現を恥らう傾向にあるな、とジョルノは思っ た。褒められたり、レディとして扱われると、異様なまでに照れるのだ。 そこがジョルノからしてみれば面白いし、可愛いのだが、 異性慣れしていないのかな?と時々不安にさせられる。 「徐倫、体調はどうです?今日の観光は止めておきますか?」 食事を摂りながらのジョルノの言葉に、うん。と、やや、影を落として、 徐倫は応えた。 「御免なさい。でも、その……なんていう、か。 今日はちょっと無理っぽいの」 言い難そうに、そう答える。昨晩、あれだけ強く貫かれたのだから、 それも無理はないだろうな、と、貫いた張本人であるジョルノは思った。 気にしなくて良いですよ、と。優しい口調で、徐倫を宥める。 「徐倫は昨晩、僕と頑張って付き合ってくれたんです。僕はとても嬉しかった。 謝る必要なんて、無いんですよ……?」 言いながら、柔らかく微笑む。そう告げると、徐倫は少しほっとした様子で、 やはり、はにかんでから、どういたしまして、と答えた。ジョルノも笑顔で頷 きながら、昨晩は、とカプチーノを片手に、思った。 昨晩は本当に良かったなぁ。と、そう思う。 恐らく徐倫はその後の事は記憶に無いだろうが、ジョルノはその後もしっかり 意識を保っていて、事後の始末を彼はした。くったりとした徐倫のうちから 自分のものを引き抜くと、とろり、と、処女の証である破瓜の血が零れ、 ジョルノはそれを人差し指で僅かに掬い取り、舐めた。それから彼女の身体を、 股をそっと拭き清めると、自分はシャワーを浴び、上がった後は徐倫の横で、 ずっと彼女を眺めていた。 そうして、明日は多分立てないだろうなぁ。悪いことしたなぁ。 止める気なんてなかったけど。明日はドコも行かないだろうから、 二人で何をしようかな、そうそう、わざわざ、この部屋にその手の下着やら 何やらも運び込ませているから明日は徐倫にはそれを選んで貰わなきゃ。 徐倫は見たらどうするかな驚くかなどんなのを選ぶかな、どれを選んでも嬉しいから 別に良いけれど……等と、不届きなことを、ずっと、考えていた。 徐倫はそんな事を思い返しているとは露とも知らずに、朝食のサラダを頬張っている。 「あ、徐倫。頬にサラダのカスが付いていますよ?」 「え?ドコ?」 言い、唇の周りに触れる。勿論、そんなものは付いていやしないが、 この部屋に居るのはジョルノと徐倫、二人だけだ。他に知る者など、居やしない。 「ここです」 と、身を乗り出して、ジョルノはペロ、と徐倫の唇を舐めた。 「〜〜〜〜ッ!!!!?」 「もう良いですよ、徐倫。取れました」 にこりとそう微笑み掛けると、徐倫は口をぱくぱくとさせて、ジョルノ、 あんたって……呟いた。 「何ですか?」 と笑顔で問い返す。徐倫は何でもない、力なく首を振った。 朝食の後は、二人でソファで横たわりながら、話をした。 「徐倫は、この後、やりたい事って無いですか?ああ、観光という意味ではなく、 大学に行きたいとか、そういうことです」 大学って言っても……と、徐倫は困ったように、言った。 「あたし、ジョルノと結婚したし、そりゃあ、大学には行きたいけれど…… 子供も、欲しいなッて思っているのよ。 ……ジョルノは子供って、嫌い?」 「まさか!好きですよ?徐倫の子供なら、尚更です」 それでね、と、徐倫は言った。 「あたし、生まれる子は、沢山一緒に居て、愛してやりたいなー、って思うの。 だから、さ、大学行っちゃうと、自分のことで一杯になっちゃうじゃない? それって、やだなーって思うの」 それは違いますよ、徐倫。と、ここで始めて、ジョルノが徐倫の言葉を否定 した。 「程度問題ではありますが、子供ために頑張るのと、己を犠牲にする事とは 違います。徐倫がそうしたいのなら、そうするべきです」 「で、でも、さッ!子供は悲しむかもしれないじゃないッ!?」 何のために、両親が居ると思っているのですか。とジョルノが応えた。 「愛情は、母親だけじゃあない、父親だって注げるものだ。 ……違いますか?」 ジョルノが言うと、説得力あるわね、と、笑いながら徐倫は言った。 「……それじゃあ、サポートの程は、よろしくね、『生命を生み出す、お かあさん?』」 「人の子供は、産めませんよ?産ませることは出来ますけれど」 そう囁くと、ジョルノは徐倫にちゅ、とキスをした。 始めは軽く、数度。次に深く。交わされる二人の唇から、ちらちらと互いの 舌が除き、つ……と、唾液が、落ちた。 ジョルノの手はするすると動き、徐倫の背中にあるファスナーを、下ろした。 ジョ、ジョルノッ!!と、徐倫が慌てて、制す。 「あ、あのね。本ッ当〜〜〜ッ!に悪いんだけど、あたし、今日は無理なのッ! あの、股の、間がねッ!?」 大丈夫ですよ。と爽やかに微笑を浮かべながら、ジョルノは実に鮮やかな 手つきで徐倫の衣服を脱がして行く。元々脱がしやすい服だからか、ジョルノが 上手いのか、或いは惚れた弱みかは分からないが、徐倫はあっさりと剥かれ、 あれだけ恥らっていた下着のみ、となってしまった。 ゴク、と、ジョルノの喉が上下するのが見えた。 「Di molto bene(すッげェ、イイッ)……!!」 言われた徐倫からしてみれば、気が気ではない。何と言っても、 まだ腰やら股やらは痛いのだ。またアレを挿れられるのかと思うと、正直、 耐えられるかどうかは自信が無い。戦々恐々として、圧し掛かっているジョルノの 出方を待っていると、ジョルノは徐倫の手を取って、己の物に触れさせた。 布越しでも分かった。ジョルノのモノは、はっきりと、勃起……していた。 そうして混乱する徐倫をよそに、ジョルノはこんな事を告げて来た。 「君に無理強いさせるのは、僕の本意でもない。ただ、徐倫……。 君さえ良ければ……手伝って、貰えますか……?」 言葉を受けて、徐倫は本日何度目かの、思考停止をしてしまった。 (手伝うって手伝うってソレってソレって、あの、何ていうか『性欲』 をよねッ!?でもその、あたしの中に挿れるってわけじゃないわけだから、 その、あの、つまり手とかそのなんていうかをあたしはあたしはあたしぁああああ!?) 「……ああ、嫌なら良いんです。自分ひとりでも、済ませられますから。 良かったら徐倫、そこに座って、こっちを向いていてくれますか?目は、 閉じていても良いですし、嫌なら耳を塞いでいてくれても良いですよ?」 「爽やかにトンでもない事を言うんじゃねェえええええええッ!!!」 新婚初日。初めて徐倫は口汚くジョルノに向かい叫んだ。しかしジョルノは さらり、とどこ吹く風といった様子で、徐倫の叫びを受け止めた。 「仕方無いじゃないですか。僕は徐倫じゃ無いと抜けないんですから」 「『抜けない』とか言うなッ!アンタ、本人を前にして何て事言いやがるッ! もっとこぉッ!!羞恥心っていうモノをね……ッ!!」 じゃあ、どうすれば良いって言うんです。と、ジョルノにしては珍しく憤慨 した様子で、徐倫に言った。 「目の前に欲しくて欲しくて堪らない相手が居たら、こうなるのは当たり前ですッ! 僕だって、こんな事は初めてなんですよッ!!」 え?と、再度、徐倫は固まった。 「……初めてなの?あたしが? ……それって、『初体験』的な意味で?」 「『初体験』的な意味で」 「聞くけど、ジョルノって、童貞捨てたの、いつ?」 「昨日ですね。相手は僕の目の前の人物です」 ど、と徐倫はぷるぷる震えながら、叫んだ。 「どぉおおおしてソレを早く言わなかったのよぉおおおおおお!!?」 「女の『処女』と、男の『童貞』との間には、大きな違いがあるんですよッ!! 昨晩の固まっている君に対して、そんな事、言えるわけないでしょうッ!!」 言っておくけれど、纏わり付いて来る女は山のように居ましたよッ!!と、 どこか言い訳がましく、若干早口に、ジョルノは言った。 「でも、肉体的な関係を持ちたいという女性は居なかったんですッ! そりゃあ僕だって、男だから、人並みに肉欲はありますよッ!? でも、欲を満たすリスクを犯すよりも、抑えたほうが何かと都合が良かったんですッ!!」 ぜぇ、ぜぇ、と、ジョルノは肩で呼吸をしている。徐倫は力が抜けたように、 なぁんだ。と、声を上げて、ふわり、と笑った。 「すッげェー緊張して、損しちゃったわ。あたし、ジョルノって色んな女性と 経験しているのかなーって、あたし、上手くやれるかなーって思ってた。勝手に。 でも、そっか。あたしたち、お互い様だったのね」 そう告げると、こつん、と徐倫はジョルノの額に、己の額をぶつけた。 「いいわ、『お手伝い』してあげる、ジョルノ。でも、あたしやり方なんて 良く分からないから、きちんと、良いってところを、教えてね?」 そうして額から顔を離した後、ちゅ、と、徐倫の方から、キスをした。 SS一覧に戻る メインページに戻る |