『 Mebius 』(下)(ジョルノ・ジョバァーナ×空条徐倫)
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第六部 ストーンオーシャン


▼--- Chapter 4 ---▼

ソファからは、水音が響いていた。音に混じり、男の荒い呼吸があった。
ソファに居るのは一人の青年。その下には、蹲り、青年の陽物を愛撫する娘
の姿あった。娘は、その赤い舌をちろりと伸ばして、男の指示に従い、緩急を
つけて、筋からてっぺんへと、凛々と立つ青年のものに舌を這わす。
時折、指で玉を刺激する。
青年のものは、娘の唾液と、青年自身の、先走ったものでぬらぬらと
濡れていた。青年に言われて、娘はやや、苦しそうに、青年のものを口に咥えた。
口内でぺちゃぺちゃと弄っていたが、やはり、息苦しいのか、ぷは、と、
思わず口から、離した。

「徐、倫……」
「ん、ちょっと、タンマッ……!!」

切なそうな眼差しを寄越すジョルノに、徐倫はハァ、ハァと、呼吸を整え、
再度、陽物に向かった。ん、んっ!と、懸命に、青年を愛撫する。突然、
ジョルノがぐ、と、徐倫の肩を掴み、引き抜こうとした。

「も、駄目です、徐倫ッ!どいッ……!」

ジョルノがそう言って、徐倫をどけようとしたところで、べしゃり!と、
ジョルノから出たものは徐倫を顔を、髪を、しとどに汚した。

けほっつ、けほっつ、と、咳をする徐倫に、すみません……徐倫……と、ジョ
ルノは詫びた。顔を持ち上げ、汚した己の精液を、拭き取ってやる。大丈夫よ、
と徐倫は応える。

「んっと……それより、落ち着いた?」
「ええ。まぁ……お陰様で」

そッ!と、徐倫はニコっと笑って見せる。なら、良かったわ。と告げ、
くるりと背を向けたところで、ぐ、と肩を、掴まれた。

「じょ、ジョルノッ……!?」
「『僕は』、良いですよ?でも『君は』まだなんじゃないないですか?
徐倫?」

問われる。くん、と身体を引き寄せられ、ベビードールの上からきゅ!
と乳首を摘まれた。

「『立って』ますよ……徐倫……。興奮しているんでしょう……?」

言い、ちゅっと、うなじを吸われる。するりと下身へと手を伸ばそうとする
ジョルノの手を抑えながら、あ、あたしは平気よッ!と言い繕う。

「あたしはちゃんと、ひとりで出来るからッ!!ご心配無くッツ!」
「ふゥん……。じゃあ、それを僕に、見せて下さい、徐倫」

へ?と、徐倫は間抜けな声を出して、固まる。聞こえませんでしたか?
と、再度ジョルノは、言い募る。

「徐倫がマスターベーションをしてイクところが見たい、と言っているんです」

さらり、とジョルノは告げると、ひょいと徐倫の身を抱え。ドアを開け、
ベッドに運ぶ。そうしてぼすん、と、徐倫をベッドの上に置くと、シャ!シャ!
と遮光カーテンを閉めた。室内は、僅かに洩れる光の他に、薄暗さで覆われる。
ぱち、とジョルノが枕元の電気を付けた。オレンジ色の、妙に淫靡な、光が灯った。

「ほら、何をしているんです?徐倫。ひとりで出来るんでしょう?
僕は居ないものと思ってくれて結構です。やってみせて下さい」

言いながら、ジョルノはベッドに椅子を向け、悠然と腰掛けた。尚もベッド
に放り出されたまま、呆然としている徐倫に、やり方が分からないなら、
例をお見せしましょうか?と立ち上がる。そうして、ぺろ、と己の指先に
唾液をつけると、自分の首筋から胸元へと、ゆっくり、見せ付けるように、
肌に触れながら指を下ろして行った。

「や、やるからッ!やるからジョルノっ!」

頬を紅潮させて、徐倫はジョルノを制止した。そうですか、と、ジョルノは
平然として再度、椅子に腰掛ける。徐倫は一度、すぅっと呼吸をすると、
覚悟を決めたのか、ベッドの上に立ち上がり、結わえていた三つ編みを、解いた。

さらさらと解かれた髪が波を描きながら流れた。それらを両手でゆったりと
掻き上げる。ゆるり、と腰をくねらせる。指を、咥え、ゆっくりと、
己の唇から胸元へと下ろしてゆく。ふに、と、両手で、ベビードールの上から、
己の両胸を持ち上げる。するり、と片手を臍へ、もう片手の、薬指と中指とで、
乳首を摘む。
ほんの少しだけ身を反らし、やや、背中を見せるようにして、ベビードール
を脱ぎ捨てる。白い素肌が、露わとなる。
両膝をベッドに着く。片手で胸を揉みしだきながら、片手で、ゆるゆると、
秘所を撫ぜる。下着は、既に濡れていた。くち、という僅かな音を聴きながら、
弄る。ぐち、ぐちぐちと、音は次第に、高くなる。

「徐倫、仰向けになって、足をこちら側に開いて下さい」

ジョルノの声が響く、徐倫はこくん、と頷くと、ベッドに仰向けに横たわり、
Mの字に足を広げて見せた。そこは、じっとりと、物のかたちが分かるほどに、
滲んでいた。

「紐を解いて」

両サイドの紐を、静かに解いた。まずは右側。続いて、左……。
下着は両の支えを失い、どうにか徐倫の股間に乗っている状態にあった。徐倫、
と、声が響いた。

「下着をゆっくり、外してください」

徐倫の腹は緊張からか、興奮からか、びくびくと脈打っているのが、
遠目からでも分かった。すっと、震える徐倫の手が、下着に伸びる。そろ、
そろと、上に乗った下着を捲り上げ、ゆっくりと……手を、離した。

そこは、酷く充血し、ぴくぴくと蠢き、物欲しそうに、涎が垂れていた。
ぐ、と、思わず駆け寄りたくなる己を抑え、何をやっているんです?と、
わざと平静さを装って、次の指示を出した。

「それで、マスターベーションは終わりですか?違うでしょう、徐倫。
指で、自分のそこを、触って下さい」

ひゅっと、息を飲む音が聞こえた。やがて、ぎこちなく徐倫のタトゥーが
施された手が、秘所に伸び、ひどく、ぎこちなく……秘所への愛撫が始まった。

仰向けになったまま。徐倫は秘所を、そして乳房を、弄っていた。無論、
足は開き、秘所はジョルノの方へと見せ付けたままである。秘所からは次から
次へと愛液が滴っているというのに、全く、イけない。
ただただ、腰の、股の、ずっと奥が、きゅんきゅんと切ないばかりである。

ジョル、ノぉ……!と、伴侶の名を呼んだ。ぽろぽろ、と涙が零れてくる。

「じょる、のッ!!お願い、手伝ってッ!!変なのッ!イけないのッ!!
あたし、ひとりじゃ、イけないっ……!!」

ひっく、ぐすっと肩を震わせて居ると、溜息と共に、ぎぃっと椅子の軋む音が
聞こえた。仕方のないひとですね、と、ジョルノの腕が、抱き起こす。

「ひとりで出来るんじゃなかったんですか?」
「だ、だッて……!感じ方が違うのッ!ぜんぜんッ!今までは、
これで、良かった筈なのに」

言い、ぐず、ぐず、と鼻をすする。

「痛みは、どうなんですか?まだ、痛い?」
「分かんない……。それよりも、何だか奥が、きゅんきゅんするの」

「……『きゅんきゅん』?」

そう。と、徐倫は言った。そしてジョルノの手を取ると、そっと己の……子
宮の辺りに手を当てさせた。

「ココが、何だか、凄くッ……切ないの……」

告げると、突然がばり!とジョルノが徐倫の身を抱き締めた。
じょ、ジョルノ?と徐倫が声を上げる。

「ああ、もぉッ!僕の負けですッ!負けですよ徐倫ッ!!」

そう言うと、ジョルノは荒々しく徐倫の唇にくちづけ、
徐倫の上に覆い被さると、肉棒を取り出し、ぐちりッ!と挿れた。

ぐちゃ!ぐちりッ!ぐちゃ、ぐちりッ!!

ひやァん!!という徐倫の甲高い声が、響いた。それは確実に、
甘いものが、混じっていた。

「ァんっ!ぁんッ!ぁッ!ぁッ!ぁあん!や、ぁあんッ!」

徐倫の手が伸び、ジョルノの髪を、クシャクシャッ!と掻き乱す。
ジョルノは熱く、甘い吐息を洩らしている徐倫の呼吸さえも全て飲み込むほど、
熱く熱く唇を交わすと、はち切れんばかりの己の精を、放った。

「とりあえず、僕は自分で思っている以上に、君に首ったけのようです。
驚きました」

妙に憮然とした表情で、まるで不本意この上無い、という様子でジョルノは
徐倫に告げた。そんな事を言われても……と、徐倫は戸惑う。

「あたし、思ったことを言っただけなんだけど……」

徐倫は天然だから困りますッ!!そう、憤然した空気を持って告げられる。
身を抱き寄せられ、占有でもするように、腕の中に封じ込められていた。

「初めてですよ、もう、こうも気持ちがコントロール出来ない事は……」
「コントロール?」
「余り感情をストレートに出す事は好きじゃないんです」

ぎゅっと、抱き締められ、ジョルノの胸に頭を入れられた。
要望はストレートの癖に、変ね。と、徐倫は、笑う。分かった!と、徐倫は言った。

「ジョルノって格好つけでしょう?それはそれで素敵だけど、あたしは
そんなしなくっても、ジョルノの事、好きよ?もっと自然体でいて、良いわ」

言い、くつくつと胸の中で徐倫は笑う。だって、と、ジョルノは言う。
子供の様に唇を尖らせて、ちょっと、照れ臭そうに。

「……恥ずかしいじゃないですか、子供みたいで……。僕はもう、
とっくに成人男子なんですよ?」

「良いじゃない、別に。それも含めて、ジョルノなんでしょ?
あたしは別に構わないわ。あたしも何ていうか、ちょっと泣き虫なトコあって
子供っぽいし。……少しずつ、ふたりで本当の大人になれたら良いわ」
「徐倫が泣いちゃうのは良いんですッ!可愛いから」

不服そうに言うジョルノに、あたしは嫌なのッ!と、両手を伸ばし、
ぐにぐに、とジョルノの両頬を引っ張った。
その後に、互いに顔を見合わせて、笑った。


▼--- Chapter 5 ---▼

それから、数週間が過ぎた。大学で生物学を学び始めた徐倫も忙しい日々を
送り、ジョルノはそれまでと同じの、しかし、少し変わった生活を送り始めた。
仕事はそれまでと変わらない。部下を統制し、別のルートから大麻が流れ込んで
いないか、裏の世界での情報収集と提供。暗殺を請け負うことは無いが、状況と
情報を整理した上で、鉄槌代役を受けることはあった。

イタリア全土を掌握することはまだまだ力不足だが、確実に勢力は伸び、
統制も取れていった。勢力地域では寧ろ治安が良くなったくらいだと、
住民からの評判も良かった。

ただ、他国からの「裏の」旅行客とのトラブルと、売春婦問題は頭の痛い
問題だった。

麻薬の撤廃はブチャラティの意志を継ぎ、市井にこれらが回る事はほぼ無くなった。
代わりに利益を占めたのが賭博であり、これは成功を収めたと言っても良かった。
スリやコソドロに関しては、今までと大差ない。ただ、互いに互いの持ち場を
荒らさない事、相手を選ぶこと、が遵守されるようになった。

これらの犯罪は、行う者たちも比較的容易にジョルノの方針に同意してくれた。
彼らとて、互いの足は引っ張り合いたくは無く、きちんと(この場合の「きちんと」
は一般的な「きちんと」とは大分意味が異なるが)稼げるなら、
そっちの方が単純に良かったのだ。

だが、売春婦と他国からのトラブルは実にやっかいな問題だった。
まず、彼等は自分たちの観念とは全く違う。そこから衝突し、なかなか互いに
妥協出来ない。妥協出来ないものだから、抗争が起きる。
血の気の荒い者は大騒動を起こしたりする。

ジョルノ達からしてみれば、余りおおごとにするのは反対なのだ。
賭博を一部の金持ち連中に対する娯楽とするならば問題無いが、
それでは地域によって大きく偏りが出る。規模の差はあるものの、
賭博場を広げるならば、市井の人々の収入や生活は安定し、一定水準あった方が良い。
そうして得たお金を夢をもって賭け、スったり、或いは儲けたりするのが理想だった。

こうした「遊戯」に、人々が身を乗り出して参加するためには、血生臭い騒ぎは、
極力少ない方が良いのだ。その方が、人々は安心して、お金を賭け事へと投じてくれる。
売春婦に頭を抱えるのも、「安定した市井の人々の生活」に関与していた。
イタリアでの売春婦は基本的に路上で「客引き」をしている。そしてこれを行う
殆どの女性達が異国民であり、それらの元締めは専ら別国のマフィアが行っている。

女達は、一夜の性を売る。中には避妊したり、堕ろしたりする者も居るが、
出産する者も勿論居る。そして、そうやって産まれた子供たちがどうなるか……。
――かつての我が身を思い返すような、胸糞悪い気分になった。

産まれた子供たちは、満足行く教育も受けられないまま、スリやコソドロを行う。
当然、ジョルノ達の場を荒らしたりする。そうした時に、親が出てきて、
親と衝突するのはまだ良い。最悪なのが、親から見捨てられている場合だ。
そういった時は本当に、心から、自分も大人だというのに、
「大人」という存在が……否、「人間」が、憎らしく、なるのだ。

いつか、別国のマフィアと大きくやり合う日が、来るかも知れない。
そう、思った。

「いくら民衆の評価が高くても……これじゃあ、承太郎さんが婿として迎え
るのを嫌がったのは、当然ですよね……」

パソコンと向き合い、勢力情報や経理を纏めながら、ぽつり、とジョルノは呟く。
徐倫に求婚して、数日後、娘親である承太郎から、「婿に来る気は無いか」と告げられていた。
一緒になるのなら、空条家でも別に良いだろう。悪いようにはしない、と。
そして、彼はこんな事も、言った。

「徐倫から、ギャング・スターだと聞いたが?」

お調べになっているでしょうが、本当です。と、ジョルノは臆せず、答えた。

「僕は、ギャングを辞める気はありません。そして、
徐倫を手放す気もありません」

そうか。と、彼は言った。残念だ、と。

「さっきの婿入りの話は無しだ。忘れてくれ」

そう告げて、背中を向けた男に、ご結婚はお許し頂けるのですか?
と声を掛けた。するとゆっくりと振り返って、言った。

「娘が望んだ以上、俺から良いも悪いも、無いだろう。
ただ……幸せには、してやってくれ。これは、俺からの『願い』だ……」

告げられた言葉に、必ず、そうしますと、深々と頭を下げて、
義父の寛大さに心から感謝した。だがきっと、本当は義父は結婚を機に、
足を洗って欲しかったのだろうと、そう思った。

ふぅ、と溜息を吐く。データーを保存し、時計を見ると、
もう直ぐ徐倫が帰宅する時間だった。パソコンの電源を落とし、
大きく伸びをしてから立ち上がると、自室を出て、椅子にかけていたエプロンを
つけた。腕まくりをして、キッチンに立つ。

料理は得意だ。小さい頃からさせられていたのだから、家事全般は普通に
こなせる。徐倫は別に良いと遠慮していたが、彼女は洗濯、裁縫は得意だが、
料理は余り得意ではなかったようで、ジョルノの腕と申し出を受けると、
躊躇いながらも譲ってくれた。以来、食事を作るのはジョルノの役目だ。

新鮮なトマトとレタスをシンクに付ける。まな板を広げ、白身魚の鱗を、
内臓を取り、流水で綺麗にする。塩と胡椒をガリガリとミルで砕いて振り掛ける。
鍋にオリーブ・オイルとスライスしたニンニクを入れる。じゅわっ!と、
ニンニクの食欲をそそる香りが立った。下ごしらえした魚を入れる。
香ばしい魚の香りが広がる。今夜は、"Acqua pazza(アクアパッツア)"だ。

徐倫と一緒に食べる料理を作ることは、苦ではない。何といっても、
彼女は自分の作ったものを、とても美味しそうに食べてくれる。
食事の前に軽く祈りの言葉を唱えて、可愛らしい口に食べ物を入れて、頬張る。
そうしてとても良い笑顔で「美味しいッ!」と微笑むのだ。

そういえば、と白ワインを鍋に加えながら、ジョルノは思った。
彼女は僕が食べる時も、ニコニコしてるな、と。
徐倫は料理は苦手なようだったが、女の子らしくというか、
菓子作りは得意なようで、ちょくちょく、ジョルノの好物であるプティングやらを
作ってくれた。
何度も丁寧に濾して、蒸し器で蒸され、よく冷えたそれは、ふるん、と震え、
甘く、そしてとても優しい味がして、ジョルノは直ぐにそれが気に入った。
徐倫はニコニコと、ジョルノが食べ終わるのを上機嫌で見て、また、
作るわと約束してくれた。

ホットケーキも良かった。朝食で食べたいからッ!と、その日に出された
それは、とても綺麗なキツネ色で、カフェオレと共にふんわりと良い湯気を
立てていた。二段重ねで、上に乗ったバターと蜂蜜が、朝日を受けてキラキラと
光っていた。味はふんわり、しっとりしていて、あっさりと、
ジョルノの胃に収まった。
徐倫はやっぱり、平らげるジョルノを見て、ニコニコしていた。

ああ、と、ジョルノは思った。
フレッシュトマトに、ハーブ類が加わった鍋は、良い香りを立てている。
オリーブの種を抜く、貝の表面を綺麗に洗う。

あれは多分、「母」の顔だ。自分は母親からそんな表情を受けたことが無い
から分からなかったが、きっと、あの徐倫の表情が、きっとそれなのだ。
だとすれば、と、ジョルノは思った。徐倫の食事を見ている自分は、
一体どんな顔をしているだろうか。母の顔なのだろうか。それともやはり男だから、
シェフが客をもてなすような、そんな顔なのだろうか。

もしも、子供が出来たら、自分達の顔を見て、何と言うだろうか?
そんな事を思っていると、何だか妙に可笑しくて、くつくつ笑った。
オリーブと貝を鍋に入れる。もう直ぐ徐倫が帰って来る。そうしたら、
この話をしてみようかなと、そう思った。


▼--- Chapter 6 ---▼

久々に財団を訪ね、エンポリオと会うと、「徐倫お姉ちゃんッ!!」と、
少年は顔を綻ばせて、自分を呼んだ。

数ヶ月ぶりに会う少年は、何だかとても背が伸びて感じた。昔と違い、
ジーパンに黒のTシャツという簡素ないでたちだったが、少年の成長に良く
合っていた。昔に比べると、ずっと表情が豊かになり、良く笑うようになったな、
と徐倫は思った。

「どう?学校は。上手く行ってる?」
「うんッ!最近漸く慣れてきたんだッ!」

徐倫お手製のガトーショコラを頬張りながら、少年は答えた。その知識量と
頭脳ならば、飛び級も可能だと思えるこの少年は、敢えて年齢通りの授業を受けていた。「『普通』をやっておきたいから」というのが本人の弁で、徐倫も財団も、
これに異は唱えなかった。彼の技能や知識は休日に、学校ではなく、財団の方で、
磨かれていた。

エンポリオは嬉々として、最近あった学校での出来事や、友達の事を話した。
面白い特技を持った子や、癖を持った子。変わった子。みんな変わっていて、
みんな素敵だ、と、エンポリオが笑って言った。これが、
「個性」ってヤツなんだね、と。

そう言えば最近学校で、怪談話が流行っているんだ。と、少年はこぼした。
音楽室のピアノが独りでになるんだって!と。

「マジィ〜?あんた、『ピアノの幽霊』持って行ったりしてないわよね?」
「してないよッ!……でもさ、不思議なんだ。刑務所とかなら分かるよ?
死刑とか行われるから、噂になるのも分かる。でも、どうして学校でそう言う
噂が出るんだろうね?関係なんて全然無いのに」

そうねぇ……と、徐倫は言った。

「やっぱり、気になるんじゃない?」
「何が?」
「『死ぬということ』が」

そっか……と、エンポリオが応えた。沈黙が、落ちた。アンタさ、と、
徐倫が言った。

「『見た』んだっけ、結婚式の前に、馬の……集団?を……」

うん。と、エンポリオは答える。

「あれが『霊』であるかは分からないし、『死後の世界』なのかも
分からないけど、ね。
あのね、お姉ちゃん、『魂』っていうのは一定なんだ。この世界で亡く
なった魂が、天国に行くか、地獄に行くか、はたまた、何か別の生命に生まれ
変わるかは分からない。もしかしたら、別の世界の別の人間として、
その『魂』は動いているかもしれない。
でも、一定なんだ。増えすぎる事もないし、減りすぎる事も無い。
……ううんと、ね。怒らないで聞いて欲しいんだけど、子供って、
精子と卵子が受精し、着床して、出来上がるでしょう?」

え?ええ。と、徐倫は少年の歳相応とは思えない話題に
呆気に取られながらも、真面目に頷く。

「ヒトの男性の精子は何億とあって、そのうちひとつの卵子と受精出来るのは
たったひとつの精子だけだわ。白血球とか、酸の海とかが、『異物』である精子を
攻撃するから、どうしても数が無いと受精出来ないもの」

「うん。そうして受精出来たとしても、着床して、育たなくちゃいけない。
子どもがひとり産まれるには、物凄い困難を乗り越えて、漸く出来ることなんだ。
でも、ひとによっては、あっさり子供が出来たり、出来なかったりもする。
勿論、これはその時の相手や体調、状況にもよると思うんだけど、
僕は『魂の量』だと思うんだ」

魂?と、徐倫は問い返した。うん。と、エンポリオは、頷く。

「どこからどこまでの生物に『魂』があるかと言われると困るけれど、
少なくとも僕は、出産にはこれが関係していると思ってるんだ。
『魂の量』は一定だから、供給が少ない時は、どうしても生まれないし、
多い時は、生まれやすい。誰が決めているのかは分からないけれど、
そういうのがあるんじゃないかって、思うんだ。
だから、その、何て言うか……」

ここにおいて、もごもご、と、言い難そうに、エンポリオは言った。

「あまり、気にしなくて良い……。
お姉ちゃんと、お兄ちゃんのせいじゃないと、僕は思うよ……?」

ぱちり、と、徐倫は瞬きをした。エンポリオは気まずそうにオレンジジュー
スを啜っている。ありがとね、と小さく告げると、エンポリオはほっとした表
情で、席から立った。

「誰かと待ち合わせ?」

問うと、静とかくれんぼして遊ぶ約束をしているんだ、と少年は答えた。

「『かくれんぼ』って、『消える能力』で?それってゲームになるの?」
「なるよッ!僕は『幽霊』のスタンドで、ボールを転がして場所を
絞るんだ。『幽霊』は静、消せないし、当たっても素通りするだけだしね。
じゃあね!お姉ちゃん。ケーキ、すッごく美味しかったよッ!!」

そう告げると、エンポリオは元気に手を振って、部屋から出て行った。
あとには綺麗に食べられた一枚の皿と、ストローのささったコップとが残り、
その、幸せな風景を眺めながら、徐倫は己の腹に手をやって、ぽつり……と呟いた。

「こども……欲しい、なァ……」

物寂しげなその呟きは、すっと室内に、吸い込まれた。


▼--- Chapter 7 ---▼

セックスは普通にしていた。診断でも異常は無かった。ただ、何故か
なかなか子に恵まれる気配は無かった。
まだまだ二人も若いため、焦る心配は無かったが、だからといって
諦められるというものでもなかった。

いつものように風呂に入り、寝所を整え、ネグリジェに着替えて待って
いると、何やら小箱を手に、妙に困った顔をして、浴室から上がったジョルノが
来た。どうしたの?と小首を傾げて訊ねると、驚かないで、見て欲しいんです。
と、ベッドの上にその小箱を置いて、徐倫に見せた。中には、楕円形をした、
紐付きの端子があった。

「なぁに?それ?」

ひょいと、手に取る。徐倫が手に取ったのを見、同僚に譲り受けたんです。
と、小さなリモコンの方をジョルノは手に取った。スイッチを入れると、振動
と共に、徐倫の手の平にあった端子が動いた。

「自分たちは使う機会が無いから、使ってくれと言って押し付けられました。
……いわゆる、『大人のオモチャ』ってヤツです」

ヴぅぅヴん、と、徐倫の手の平で、それは動く。『大人の』というのを聞いて、
やや、虚を突かれたようだが、思ったほど嫌悪感は無いらしく、
手に乗せたそのままで、これがバイブってヤツ?と、問い返した。

「いえ、それはローターと言われているもので、バイブはこちらの……」

と、ジョルノが言い、箱から取り出した物を見て、徐倫は硬直した。

透明感があるし、一応、素材として女性が好みそうな、親しみやすい
デザインにはしてあるのだろう。だが、いかんせん原型が生々しい。
なにやらご丁寧にパールのようなものまで付いている。思わず後ずさり
してしまいそうな徐倫に、折角の貰い物なのですから、と、
ジョルノは苦笑いをしながら、徐倫を招き寄せる。

「別に、使わなくても良いですから、持つだけでも持ってみて下さい」
「そ、そうね……」

言われ、おずおずとだが、受け取って、手にしてみる。ジョルノ程ではないが、
そこそこ大きい。それなりに、重さもある。
ごつごつしていて、申し訳ないが、挿れる気にはとても、ならなかった。

ジョルノもそれを見てとったらしい。特に無理強いはせず、何時ものように、
唇を合わせた。

互いの呼気が交換される。くぐもった声が洩れ、ぺちゃ、ぺちゃと舌音が響く。
するり、とネグリジェを剥かれ、優しく、胸を揉まれる。頂を摘まれ、甘い吐息が
洩れる。感覚に身を震わせ、思わず手にあったバイブを握る。ジョルノの手が
するりと伸び、もう片方の手の中にあった、ローターを取る。使ってみますか?
と囁く。さして不快感も無かったそれに、こくんと頷く。

小さな唸りと共に、ジョルノの手にあるそれは、震えながら下着の上から
徐倫の頂を、花芯を、弄った。じっと花芯に当てられて、撫ぜられていると、
じんわりと愛液が滲んで行く。あァんッ……!と声が洩れる。ジョルノはくす
くすと笑みながら、挿れますよ?と、ショーツの横から、それを差し挿れた。
徐倫の身が、跳ねた。と、同時に、ベッドサイドのジョルノの携帯電話が、
鳴った。

ちっ、と心の底から忌々しそうに舌打ちをして、ジョルノは携帯電話を取る。
信頼を置いてる部下の一人からの電話だった。無視するわけには行かない相手に、
ジョルノは「直ぐに戻りますッ!待っていて下さいッ!」と言いおいて、部
屋を出る。妻の喘ぎ声を聞かせるわけには行かなかった。

そして、急な電話に、つい……ローターのリモコンを、手にしたまま、
部屋を出て、しまっていた……。

電話は実際重要なもので、火急を要するものだった。素早い部下からの連絡
にジョルノは感謝しつつ、パソコンを立ち上げ、的確な指示と情報を与える。
その電話相手からとの電話が終了した後も、急ぎ、関係する者達に電話をして、
対応するように指示を与える。
全ての指示と情報の整理が済み、ほっとした後に、はっと徐倫の事を思い出して、
慌てて寝室に戻った。そこで、息を、飲んだ。

それは、酷く淫靡な光景だった。快感に身を捩ったのだろう。ローターから
伸びる紐が、ぐるぐると徐倫の片足に絡まり、まるで緊縛をしているようだった。
花芯からは、もう、ショーツをぐっしょりと濡らすほど愛液が迸っている。
ブラジャーは、堪えきれずに、自分でずり下ろしてしまったのだろう。
僅かに乳首が覗き、頂はぴんと立っていた。
だが、何よりも淫猥さを高めていたのは、徐倫が手にしていた、バイブだった。
すがる物が欲しかったのか、ぎゅっと、手のしたバイブを握り締め、
手は、スイッチを押してしまったのだろう。うぃん、うぃんと、
卑猥な音を上げながらうねるそれを、徐倫は惚けた顔で、胸の間に押し抱いていた。

「徐、倫……」

呟く。唾を飲み込む間も無い程に、妻の痴態に目を奪われる。
ジョルノの声を耳で捉えたのか、徐倫は重そうに顔を向け、
じょる、のォっ……!と声を上げ、きゅっと、自分から、両足を、開いた。

「来……てェっ!お願い……!くる、しいのぉ……ッ!!」

慌てて、ベッドに駆け寄る。徐倫は涙をぽろぽろ流しながら、
まるで釣られた魚かのように、必死でジョルノにキスをする。
ぐちゃぐちゃという音を立て、手を愛液でまみれさせて、ジョルノは徐倫の
上下の下着と、ローターを徐倫の中から取り外すと、急ぎ己の服を脱ぐ。
そうして徐倫に圧し掛かるその前に、待ち切れなかったのか、徐倫の方から、
ジョルノの方を、押し倒した。

「ァんっ!ジョルノっ!ジョル、のォっ……!!」

己の手で天を突いているジョルノの物を捉え、もう片手で花を開き、
ずぶずぶと腰を沈めてゆく。

「徐……倫っ!」

感覚に、ジョルノも眉を顰める。徐倫はジョルノの腹に手をついて、
一心不乱に腰を動かした。

「はァ……ッツ!ぁあんッ!ジョルノっ!イイよ……じょる、のッ!」
「好いです……か?徐倫……そんなにも、僕の、はッ……?」

うん、好いッ!と、徐倫は歓喜の涙を零しながら、腰を振り、
無我夢中で、頷く。

「あんなのよりも、ずッと、ずっとッ……!何十倍もッ!何億倍もッ!
ジョルノのが好いッ!ううん、そうじゃ、なきゃ、やだッ!!」
「……徐倫……ッ!!」

ぐちぃ!ぐちゃぁ!ぐちぐちッ!!という音は、ジョルノから体位を
入れ替えられ、ジョルノが覆い被さったところで、ぱん!ぱんぱん!
という互いの肉壁をぶつけ合う音にとって変わられた。徐倫の、嬌声が上がる。
ジョルノの、徐倫の、互いが互い、お互いの名を呼び合う声が響き、
そして高まり、同時に――果てた。

超、飛びたい……と、ジョルノの腕の中で、恥ずかしさに顔を覆いながら、
泣きそうな声で徐倫は告げた。あたし、自分がどんどん淫乱になって
いっている気がする、と。

「……こんな淫乱だから、神様も、なかなか子宝を恵んでくれないのかしら?
うう、やだ……超恥ずかしいッ……!!」
「それは違いますよ、徐倫。性欲が強くなければ、種を残すことは
出来ません。今出来ないのは、ただ、時が合わない、それだけです。
きっと、気にし過ぎなんですよ。圧力を感じたりして、ストレスを
どこかで感じているのかもしれません。
……今度、仔馬を観に行きませんか?以前徐倫が美しいと言っていた馬の
仔が産まれたんですよ。親に良く似た、美しい黒鹿毛の仔だそうです」

腕の中で嘆く徐倫に、ジョルノが慰めるようにそう告げると、え!?
あの子、こども出来たのッ!?と、徐倫はぱっと顔を上げた。
馬は、徐倫がひどく気に入っていた競走馬の、こどもだった。

「見たいッ!すっごく見たいわッ!!きっと、綺麗なんでしょうね……」

きらきらと目を輝かせる徐倫に、そうそう。と、ジョルノは頷く。

「そうやって旅行先で身も心も解すことは、とても大切なことなんですよ。
ですから、ね、徐倫。旅先では少し趣向を変えてみて、今度は是非、
このバイブを……」
「誰が使うかぁああああぁーーーーーーッ!!!!」

ベッドの上、徐倫が投げつけたバイブは、ジョルノの顔面に、見事にクリー
ン・ヒットした。








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