予行演習
鳴海洸至×鳴海遼子


夜、洸至がアパートに帰ると、既に家の電気がついていた。

ドアを開け、帰ったぞ、と声をかけるも、妹から返事はない。
訝しく思いながら、リビングに入ると、妹の部屋から声が聞こえてきた。

「おかえりなさい、ご主人様、くつろいでくださいね」

声の方へ眼を移すと、そこには黒いワンピースに、白いフリルのついたエプロン、頭にも白いレースがついたカチューシャをした遼子が鏡を見ながら、首を傾げ何か台詞の練習をしていた。

「なんだあ、その格好」
「お、お兄ちゃん、帰ってたの?」
「今帰ったところだよ。お前、そんな趣味あったのか」
「違うってば!今度『売春メイド喫茶が存在する!』っていう記事を書くために潜入取材するのよ。
メイド喫茶なんだけど、風営法違反して、売春もさせてるって噂があるお店があるの」
「へえ、それでか」
「おかえりなさいませ、ご主人さま」
「…はあ?」
「お兄ちゃんも少し手伝ってくれる?こういう台詞が自然に出てくるように、練習して来いって
そこのオーナーから言われたの。ご主人様」
「ご主人様って言われてもなあ」
「お願いします、ご主人様」

ワンピース姿の遼子に、上目遣いに見つめられ洸至の目が泳いだ。

「ま…、いいか。少しつきあうよ」

洸至がネクタイを緩めながら、テーブルに買ってきた鯛焼きを置いてから座った。
その隣に、メイド服姿の遼子がちょこんと座る。
かなり珍妙な光景である。

「ご主人様おかえりなさいませ。楽しいひとときをお過ごしください。私たちになんでも
お申し付けくださいませ」

台本通りの台詞を、ほぼ棒読みで遼子が言った。恥ずかしいのか、耳まで赤くなっている。
白と黒の制服と、遼子の紅く染まった肌のコントラストに洸至の頬が緩んだ。

「じゃ、遼子お茶」
「はい、ご主人様」

洸至はキッチンに立った遼子の後ろ姿をさりげなく眼で追った。

「鯛焼き、買って来たんだ」
「うわっ、おいしそう〜、これ駅前のあのお店のでしょ」
「遼子、言葉遣いが違うだろ」
「あ、えーと、ご主人様ありがとうございます。ありがたく頂戴いたします」
「江戸時代だぞ、それじゃ」
「ご主人様、いただきますっ」

遼子が首を傾げて、笑顔で言った。

「砕けすぎだろ」
「じゃ、何て言うのよ」
「感謝の気持ちを言葉だけじゃなく、行動でも示すんだよ。例えば俺の頬にキスするとか」
「もぉっ、お兄ちゃん!真面目にやって!」
「はははは。でも遼子、俺は至って真面目だぞー。それに俺はお客なんだからご主人様って
呼ばなきゃ駄目じゃないか。それかお兄様…いや洸至様、と呼ぶべきじゃないのか?」
「う…。そうよね、お客なら…。こ、洸至…さま。」

「そこは、店外デートのあるメイドカフェなんだろ。客に指示されたら、ちょっとは今みたいな
サービスしなきゃならなくなるぞ、たぶん」
「えっ!」
「てことは、店外で何かサービスするんだぞ、お前が。例えば、だ」

洸至がネクタイを外し、状況が呑みこめない様子の遼子の両手を慣れた手つきで縛り上げた。

「お、お兄ちゃんっ」
「洸至様、だろ」
「洸至様、い、一体何をされるんですか」

洸至は、スーツの胸ポケットからペンを取り出した。

「…?」

キャップを付けたままのペン先で遼子の首筋をなぞる。

「きゃんっ」
「こういう風に悪戯されるかもしらないぞ」

そのまま下へペン先が動く。微かに乳房の先にそれが触れた。

「あっ…」

服の上から、胸の谷間をペン先が這う。

「どうかしたか」

遼子の躰が、洸至のペンが動くたびに微かに震えた。

「う、ううん」

「風俗系の潜入取材は体を張ることになるんだぞ。すぐに逃げられたらいいが、今みたいに
縛られていると逃げられないかもしれないぞ」

「おにい…洸至…さま、もうやめて下さい…」
スカートの裾から出ている、網タイツを履いた脚が、洸至のペンが敏感に感じる場所を撫でるたびに小さく跳ねる。
洸至がその遼子の様子を見て、悟られぬように笑みを浮かべるとペンをポケットにしまった。

「どうだ、お前、それでもまだこの取材するつもりなのか」
「だって、仕事だし…。鷹藤くんもバカにしてた割に、似合うって言ってくれたし…」

最後の一言を聞いた洸至の表情が硬くなる。

「鷹藤くんも行くのか」
「いい年こいてメイド服似合うと思ってんのか、とか言っていたくせに、わたしが制服
着て見せたら、ちょっと驚いていたのよ。悪くないとか言って取材に関係ないわたしの
写真撮りまくっていたし」

鷹藤の反応を思い出し、嬉しそうに話す遼子は、それを聞いている洸至の眼の奥が冷気を
増しているのに気付いていないようだった。

「ふーん…」

兄の目が自分に据えられたのを見て、遼子が首を傾げた。

「お兄ちゃん、どうかした」
「こ、う、じ、さ、ま。だろ」

「あっ、洸至様…。どうかなさいましたか」
「その店、売春させてるって言っていたよな」
「うん…」
「店がお前に貸したのは衣裳だけか?」
「えっ。ええっと…」

遼子の両手を戒めたネクタイの先をリビングのテーブルに縛り付けると、洸至が立ちあがった。
遼子が慌てふためいて止めようとするが、洸至は無視して遼子の部屋へ入っていく。

「ま、待ってよ、お兄ちゃん」

しばらく遼子の部屋の中から、何かを探すような音がしたのち、ぴたりと音が止んだ。
女物のトートバックを手に、洸至がリビングに帰ってきた。
それを見た遼子の表情が硬くなる。

「お前の部屋にこんなのがあったぞ」

洸至がトートバックを逆さにすると、中からパステルピンクや、パステルブルーの可愛いらしい
色をした大小様々なバイブレーターが転がり出てきた。

「おいおい…」

遼子が顔を赤らめて俯いた。

「調べるまでもない。こんなのを持たせるんだ。売春クラブ確定だろ。取材なんか必要ないじゃないか」

洸至がバイブレーターを手に取り、しげしげと眺めている。

「で、でも…。内側から調べた方が真実味があるし…いい記事にしたいし…」
「そうか。じゃあ、俺も手伝ってやるよ」
「何するの」
「客に使ってもらうかもしれない。…慣れておいた方がいいだろ?」

洸至が冷たい視線を遼子に送る。

「その前に逃げるってば!」
「うまく逃げられなかったらどうする?お前、わかってて取材に行くんだろ」

洸至が遼子のスカートをめくると、タイツをつるしていたガーターベルトが露わになる。

「ガーターなんかつけてたのか」
「やめて!」

洸至がスラックスのポケットからハンカチを取り出すと、細長いひも状におりまげ、遼子に猿ぐつわを噛ませた。

「ちょっと静かにしてくれよ。こっちだって手伝ってるんだから」

洸至は、遼子をなだめるように太ももに掌を這わせた。

「ふっ」

呻く遼子から、息が漏れる。

そのまま脚の付け根の方へ手が上っていく。
遼子が太ももを閉じようとするが洸至の手で力強く押さえつけられ、レースの下着の奥の茂みまで
見えるように脚を開かされた。

「ガーターの上は、白のレースか。まったく…、いい趣味だよ。この店の衣裳なんだろ?これも」

洸至が顔を遼子の太ももへ近づけると、今度は舌を這わせ始めた。

「んんっ」

逃れようにも遼子の両手は、洸至のネクタイできつく戒められテーブルに括りつけられている。
遼子の太ももが震えるが、洸至はお構いなしに舌を這わせ続ける。

「大丈夫だって、遼子。客の役はするが、本番はしないから」

そう言いながら、洸至が遼子のやわ肌に優しく口づける。

部屋に淫靡な口づけの音が響く。
遼子の猿ぐつわの向こうから聞こえる甘い声も部屋に響いた。

「感じやすいんだな。これだけで、もう下着が透けそうになってるぞ」

洸至が、遼子の下着のひどく濡れた個所を指で軽く撫でた。

「んんぅっ」

脚を兄に開かされたまま、上半身を縮め、遼子が快楽に耐える。

「この姿勢じゃ苦しいだろ?」

洸至が遼子を抱えると、床に横たえ、下着をするりと剥いた。
そしてまた膝に手を置き、M字になるように脚を開かせる。

「いい眺めだなあ。遼子。きれいな色だよ」

遼子からは黒のスカートの裾が邪魔をして、兄が凝視している様子は見えなかったが、肌に痛い程洸至の視線を感じていた。スカートの裾にちらついていた兄の頭が消えた。

「んんんんんっ」

痺れるような快感に、遼子がのけぞった。
洸至が遼子の亀裂に舌を這わせていた。
舌を使う洸至の様子が見えないだけに、その舌がもたらす快楽が遼子の中で増幅される。
激しい水音が遼子の耳を犯す。
逃れる遼子の腰を洸至が押さえつけ、舌を押し付け、舌で嬲る。

「ふんっ。ううううっ」

逃れられず、拒否しようにもできない以上、遼子はただ首を左右に振りながら、快楽にのめり込むしかなかった。

不意に、洸至の立てる啜りあげる音が止まった。
顔を上げた洸至が、遼子の猿ぐつわを外す。

「もう、これいらないみたいだな。遼子のそんな声なら、いくらでも聞きたいよ」

縋るような眼で、遼子が洸至を見た。

「もっと欲しいか?」

喉まで言葉が出かかっているようだが、その返答が持つ余りに恐ろしい意味に遼子の喉が強張った。

「いやだって言わないってことは…。いいんだな。大丈夫、兄妹だから、そんなことはしない。
けど、もっと良くしてやるよ」

洸至がバイブレーターを手に取った。
小ぶりだが、クリトリスを刺激する部分の形が縦長に拡がっている。
それをじっくりと見せてから、おもむろに遼子の口の中に入れた。
恍惚の表情で、激しく舌を使って遼子がバイブレーターを舐める。

「メイド服を着ると、女ってのはこうも淫乱になるのかな。それとも、お前が元々そうなのか?」

洸至がバイブレーターを引き抜くと、遼子の涎が糸となって伸びた。
洸至が遼子の隣に沿う様に横たわる。
太ももにバイブレーターを這わせると、まるでその到来を待ちうけるかのように遼子の腰が震えた。

「お兄ちゃん…わたし…」

遼子が洸至を見つめる。
その半開きの唇に、洸至が唇を重ねた。
その刹那。

「んんんんんっ」

遼子がまたものけぞる。

「根元まで、すぐ入っちまったよ」

洸至がスイッチを入れた。
低いモーター音が響く。容赦なくクリトリスだけを刺激し続けるタイプのようだ。

「きゃあああんっ」

遼子がのけぞり白い喉を晒し、腰を揺らし、髪を振り乱した。

「いく、だめ、すぐいっちゃう!」

その様子を見て、洸至が手を添えるとバイブレーターは更に強く遼子のクリトリスを刺激した。

「きゃああっ、いく…いくっ、いくうううううっ」

のけぞり、硬直したあと、遼子から力が抜けた。

「遼子、今の奴、一番この中で小さい奴なんだけどな。じゃあ、これならどうなるんだ、お前」

洸至が取りだしたのは、ひと回り大きく、まさに男性器の形そのままな上に、根元にブツブツと突起が
ついているにもかかわらず、パステルブルーのかわいらしい色をした代物だった。

「だめ、そんなの入れたら、わたし、本当におかしくなっちゃう…」
「そうだよな」

洸至が遼子をいたわる様に微笑んだ。
遼子がこの責め苦が終わると思い、肩から力を抜いた時だった。

「じゃあ、おかしくなるところ見せてくれよ」

洸至が遼子の脚を開かせると、それをいきなり挿入した。

「あああっ」

遼子の腰が震える。根元まで差し込むと、洸至はまた遼子のとなりに寝そべった。
そして妹の顔を覗きこむ。
もう、妹は何も目に入らぬようだった。白い喉をさらし、ただ快楽に襲われ翻弄されている。

「きゃあ、いいっ、いいっ」

洸至は忘我の境地にいる妹のおとがいに手を添え、こちらを向かせると舌を絡み合わせるような口づけをした。
舌を絡ませ合いながら、洸至はバイブレーターのスイッチを入れる。
スズメバチが飛ぶような低い音を立て、突起の部分が回転しはじめた。
遼子は腰を上げ、のけぞりながらも、洸至の舌を求める。
血肉を分けた兄妹での口づけのおぞましさなど、この愉悦の前にかき消えた。
何かしていないと気が狂う程の快楽に呑み込まれるのを恐れるかのように、洸至の舌を求め続ける。

「んっ、んんっ」

合わせた口から甘い声が漏れる。
洸至はメイド服の胸元のボタンを片手ではずすと、そこに手を差しこんだ。
ブラジャーの下に手を這わせて、遼子の乳房の蕾をつまむ。
間断ない喘ぎ声が、一瞬ひときわ高くなった。
舌で遼子を味わいながら、洸至は、遼子に覆いかぶさるように位置を変えた。
唇をはずし、遼子の耳元に囁く。

「もっとおかしくなるところを見せてくれ」

バイブレーターに手を添えると、ゆっくりと出し入れし始めた。

「あ、ああああああっ」

突起からの刺激と自分の内奥が掻き乱される刺激に、遼子は口から涎が垂れるのも構わず悶え狂っていた。

出し入れするスピードを上げる。

「きゃあっ、ああつ、いいっいくうっ」

ぬかるみを走る様な音と、蜂の羽音のような音がが響き始めた。

「すごくいい顔だよ。遼子」

蕩け切った遼子の亀裂からは、とめどなく粘性の体液が糸を引き垂れ落ちる。
紅潮し潤んだ遼子の唇は、もうひとつの性器のように洸至を誘った。
そこにまた口づける。
そして遼子を掻き乱す手を早める。

「んっ、んんんんっあ、いっちゃう、いっちゃうよ、お兄ちゃんっ」

遼子の太ももが、全身が痙攣し始めた。
洸至は唇をはずすと、痙攣し、のけぞり絶頂へ昇り詰める遼子を見つめながら、そこへと至る手助けをしてやることにした。
バイブレーターのスイッチを、最強に合わせた。
羽音のようなモーター音の回転数が上がる。

「きゃああああああああっんん」

ひときわ高い叫び声を上げると、のけぞり、それからゆっくりと弛緩した。
肩で息をする遼子は、口を半開きにしたまま、気を失ったようだった。

「こんなにいやらしいお前を、そんなところに行かせる訳にいかないなあ…。
この姿を見るのは、俺で充分だろ」

汗で張りついた髪を愛おしげに整えると、洸至は妹に口づけた。



って…何て夢を俺は見たんだ。
鷹藤が自室のベッドで頭を抱えていた。
シャワーを浴びたあとらしく、髪は濡れたままだ。
日中にあんなものを見たせいか。
鷹藤はベッドサイドのテーブルに置いてある写真に眼を遣った。



今日、樫村が遼子に言い渡したのは、裏で売春させている疑いのあるメイド喫茶への潜入取材だった。
嫌がる遼子をなだめすかし、樫村はその店の面接に遼子を行かせた。

どうせ面接でひっかかるはずだ。

編集部の連中はそう思っていたが、面接から帰って来た時、遼子は紙袋とトートバックを持たされて帰ってきた。

「受かっちゃった…。今度からこれ持って来いって」

顔を赤らめた遼子が鷹藤に差しだしたトートバックには、大小さまざまなバイブレーターが入っていた。

「うわっ、なんだよこれ」
「いきなり店外デートありなんだって。これで売春させてるの確定よね。さあ、取材頑張るわよ!」

遼子が意気込んでパソコンに向かおうとした時、もうひとつの紙袋を里香が覗きこんでいた。

「鳴海さんこれって…」
「これが制服のメイド服ですって」
「へえ〜。里香に着たところを見せて下さいよ〜」
「ちょ、ちょっと里香ちゃん!」

里香が遼子の手を引くと、女子更衣室に連れ出した。
しばらくののち、編集室に里香の声が響く。

「ええ〜っ。かわいいじゃないですかあ。あ、このタイツ、ガーターベルトで留めてるんですか。
見せて下さいよ〜。白?白のガーターってかわいいですねえ」

煙草を咥えかけた樫村の手が止まった。

「清楚な白タイツの上がガーターっていやらしくないですかあ」
「そ、それはそういう店だから…」

城之内のつぶらな瞳が点になっていた。

「下着も白って決まりなんですか?」
「り、里香ちゃん声が大きいって、それもレースって決まりが…」

コーヒーを飲みかけたまま、中原が固まっている。

編集室にいる、男たち皆、全身が耳と化していた。
動揺しつつも、カメラをいじる鷹藤の隣に美鈴が座る。
美鈴が鷹藤の様子を見て口元に笑みを浮かべた。

「取材の時ちゃんと守ってやらなきゃね」

美鈴が鷹藤の耳元に口を近寄せた。

「じゃなきゃ、白のレースの下着と、白のガーター、誰かに見られちゃうわよ。
で、あれ使われちゃったら…」

鷹藤の肩がギクッと動いた時。
編集室のドアが開いた。

「みなさん、見て下さいよ〜。メイド服の鳴海さんです」

里香に後ろを押されるようにして、いやがる遼子が部屋に入ってきた。
美鈴以外の男どもの刺すような視線を完全に誤解して、遼子が顔を赤くして言った。

「さ、30近いのにメイド服なんか着て、って思ってるんでしょ。三十路近いけど、
大人の色気が漂うメイドって褒められたんだから。わかるひとには私の魅力がわかるのよ」

実際悪くなかった。
ワンピースの黒を清楚な白色のエプロンがひき締め、ウエストが更に細く見えていた。
その下からのぞく白の網タイツ。
鷹藤はそれがガーターで留められているかと思うと、清楚さの裏にある淫靡さが際立つような気がした。

「意外と似合ってるぞ、これで取材の成功もバッチリだ、なあ、みんな」

樫村がぎこちなさを隠すように大声で言った。

「鷹藤、取材前に写真撮っておけよ」

鷹藤はのろのろと体を動かすと、遼子の前に行きカメラを構えた。

「何よその顔。いい年こいてって思ってるでしょ」
「大人の魅力ねえ…。いろんな趣味の人が世の中にはいるんだなって」

メイド服のまま、遼子がむくれた。
――――似合ってるなんて言える訳ないだろ。
そしてシャッターを切った。


鷹藤のベッド脇のテーブルに、仏頂面でメイド服を着た遼子の写真がある。
こっそり現像して部屋に持ってきたものだ。

夢を見てあんな風になるなんて、よっぽど自分は溜まっているのだろうか。
しかもメイド服の相棒相手に。
こんなの中学校以来だ。情けなさに涙ぐみそうになる。
しかも…。

遼子のあんな夢を見たのに、どうして主演は俺じゃないんだ。
いつもあいつの横で、睨みを利かせている兄さんがどうして主演なんだよ。
今度は、自分の想像力に涙ぐみそうになった。

…まさか、正夢ってことはないよな。
口に出せば、正夢じゃなくなるという。でも、こんなの口に出せる訳ねえって…。
遼子に聞いたら、一生口を聞いてもらえなさそうだ。近寄ることすら許されないだろう。
だけど、もし正夢だったら、遼子が兄さんとあんなことになっていたら。
たしか遼子は練習するために、衣裳を家に持ち帰っていたはずだ。
バイブレーターもたしか…。
そんなのは妄想に過ぎないと思おうとするが、遼子を見つめるあの兄さんのねっとりした
視線を思い出し、鷹藤はそれをぬぐい去れないでいた。

腰に籠る熱を感じて、そこに眼を移すと、またも鎌首をもたげようとしている。
男の本能のあさましさに、鷹藤はみたび涙ぐみそうになる。
それなのに、さっきの夢を思い出しながら鷹藤はティッシュに手を伸ばした。

続編:メイド遼子(鷹藤俊一×鳴海遼子)






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