CRAZY TAXI 兄編
鳴海洸至×鳴海遼子


前回:CRAZY TAXI(樫村編集長×鳴海遼子)

■兄ギリギリ編

樫村が帰った後、洸至は遼子をベッドに寝かせた。
乱れたシャツを直してやり、スカートの裾を整えると、上から毛布をかける。
遼子が眠るベッドに腰掛け、しばらく妹の寝顔を見つめていた。

「…まったく、お前はどうしていつも相手を間違えるんだ」

妹の乱れた髪を梳いて整えてやる。

「そんなに遠山が好きなのか?」

頬に指を滑らす。

「酒に酔うと、誰でも遠山に見えて、誰かれ構わずキスしちまうのか」

洸至の指先が遼子の唇に触れた。

「だからつけ込まれるんだ」

樫村から遼子を受け取った時に微かに纏わりついていた雌の芳香。
それが意味するところは明らかだった。

「いいように、玩具にされて悔しくないのか」

遼子は安らかな寝息をたて眠っている。
お前が遠山と勘違いした相手でも、束の間でも愛されたとしたら満足なのか。

「男なんてなあ、浅ましい生き物だからな。出来ると思えばやっちまうんだぞ」

遼子の下唇の形を洸至の親指が愛おしげに辿る。
遼子の瞼がぴくりと動いた。驚いた洸至の指が止まる。

が、遼子の瞼は開かれることなく、また静かな寝息がつづけている。
…浅ましいのは自分も同じか。
遼子が眼を覚まそうとした今、あの夜のように、自分を遠山と勘違いして唇を求めてもらうことを洸至は一瞬期待した。
まだ部屋には遼子から漂う雌の香りが漂っている。
それに理性を絡め取られる前に、洸至は枕元を離れ、部屋を後にした。

洸至は己のベッドに潜り込んだが、躰の芯で出口を求めたぎる熱のせいですぐに眠れそうにない。
そんな時は、手製爆弾の回路図を頭の中で展開させる。
迷路のように絡まっているが、ひとつの純粋な目的の為に収れんされた美しい回路図を。
点火、発火、起爆の連鎖と、その爆発が建物を破壊するさまを想像する。
破壊行為を想像することはいつも洸至の心を落ち着かせた。

―――本当に壊したいのは自分の理性なのかもしれないな。

だがそれだけは壊せない。そうしたら兄妹ですらいられなくなる。
自分が振り切りたいものについて考えるより、社会をより良い方向へ導く計画をまた練り直そう。
新しいシナリオ、雑誌編集長の悲劇的な死を付け加えた計画を考えながら、洸至はようやく眠りについた。


■兄リミッター解除ver

遼子は空を飛んでいるような心地よさに包まれながら眼が醒めた。

「起きたか」

兄が自分を覗きこんで微笑んだ。
あまりの顔の近さに遼子が驚いた時、自分が兄により抱きあげられていることにようやく気付いた。

「えっ、ええっ?」
「樫村さんが酔い潰れたお前を送ってくれたんだぞ。さっき帰った」
「編集長が?」

遼子はまだ酔っているが、アンタッチャブル編集部の面々と飲んでいる頃よりは酔いも醒めた。

「降りるか?それともこのままベッドまで運んでもいいだぞ」
「お、降りるよ、歩けるから」

リビングで兄の腕の中から降ろしてもらう。

「寝てるお前を動かさなきゃいけないからな。ああやって抱き上げたけど、ホント重くなったな、お前」
「もう、やめてよ!」
「最後に抱き上げたのは小学校の頃だもんな〜。お前いくつだっけ」
「わかってるくせに。もうすぐ30歳」

からかう兄に困ったように遼子が言った。

「30か。すっかり大人だなあ…。タクシーで男と変なことする位だものな」

兄の眼が遼子に据えられていた。

ジャージ姿で、口元には笑みを浮かべつつも、眼には肉親の遼子でさえ怖気を振るうような昏い光が宿っていた。

「え…」

兄が遼子に近づく。
仕事をしている時に洸至から感じる威圧感が、今の洸至からも漂っていた。
思わず遼子が後ずさる。だがすぐ背にリビングの壁があたり、遼子はもう退く場所を失った。
兄が迫る。壁と兄の間に挟まれるようにして遼子は立っていた。
まるでキスするように兄の顔が近づく。
鼻先が触れるか触れないかの近さで、兄が止まった。

「わからないか…?」
「な、何が」
「この匂いだよ。お前からすごくいやらしい匂いがしてるぞ」

遼子の頬が一気に赤くなる。恥ずかしさに体が熱を持った。

「何言ってるのよ、お兄ちゃ〜ん。そんなわけ…ひっ」

遼子が冗談めかして誤魔化そうとした時、洸至がいきなり遼子のスカートの中に手を入れた。

「駄目!何してるの!」

まるで当然のことをしていて非難されているかのように、洸至が意外そうな顔をした。

「何って、この匂いが俺の気のせいじゃないか確かめてるだけだよ」

太ももの上へ上へと兄の掌が這うのを感じて、遼子は思わず太ももを閉じた。
スカートの上から兄の手を止めようとするが、遼子の右手を兄が取り、遼子の顔の横の壁に押し付ける。

「だって、さっきは史郎ちゃんが…」
「お前が一緒にいたのは樫村さんだろ」

遼子は冷や水を浴びたように息を呑んだ。
遼子の太ももから力が抜けたのを見逃さず、洸至の掌が内腿へと滑り込む。

「お前が酔っぱらって、誤解して樫村を誘ったんだよ。きっと。お前は酔っぱらうと誰でも遠山に見えるんだ。悪い癖だよ」
「そんな、わたし…」
「お前は好きでもない男に触られたんだ。そして」

兄の手が遼子の下着に触れた。湿り気のある部分を指が撫でる。

「こんなに濡れたんだよ。下着の上からでもわかるぞ」
「お兄ちゃん、駄目!何してるの」
「知らない男に抱かれて、こんな匂いさせて帰ってくるのに、毎日顔を合わせる俺がそうしたら駄目なのか」
「駄目にきまってるよ!兄妹なんだから」
「そうだよな、駄目だよな」

だが洸至の指は止まらない。下着の上から、遼子の敏感な場所を過たずに刺激する。

「いゃあ」
「でもお前の躰はお前の言ってることとは別みたいだぞ」
「ふぅっ…。だめ、駄目よ…」
「いつの間にこんなにいやらしい躰になったんだ、遼子」
「いやらしくなんか…あぁん…」

遼子の亀裂を撫でる洸至の腕を遼子が掴むが、それは引き離そうとする動きと言うよりは、
押し寄せる快楽に蕩けそうになるのを恐れて縋りついているようにも見えた。
器用に股の部分を脇に寄せると、直接洸至の指がそこに触れた。

「あっ」
「おいおい…。これじゃ洪水だぞ、遼子。道理で匂うわけだよ。いやらしい匂いが」

兄が遼子の耳元に口を近づけ囁いた。
愛撫のひとつのように熱い息が耳朶にかかり、それだけでもまた遼子は甘い吐息を漏らす。
洸至がひときわ強く亀裂をなぞった。

「ああっ」

洸至が指を抜いて、二人の顔の間にそれを掲げる。
てらてらと光る指が遼子の眼の前にある。

「見ろって遼子。ちょっと撫でただけで、こんなに濡れてるんだ。タクシーでも散々やったんだろ?」
「違う…」

遼子はあまりの光景に眼をそらした。

「じゃあ、これはなんだろうなあ」

湿った音を立てて洸至がそれを舐めた。

「…お前はこういう味なのか。好きでもない男にやられて、濡らして…。恥ずかしくないのか?」

洸至が遼子から離れて、そのまま自分の部屋に入っていった。
遼子の体から力が抜けそこにへたりこむ。

「わたし、何て事を…」

それは三重の意味での狼狽だった。酔った上とはいえ遠山と思いこんで樫村とした行為。
今、兄が自分にした行為。それに対して遼子は背徳感を覚えつつ、途轍もない愉楽を感じてもいた。
兄がまた部屋から出てくると、遼子の前に立った。
妹の手を取り、己の部屋に誘う。
片手には、兄が部屋で時折飲んでいるスコッチの瓶がある。

「来いよ、遼子」
「こんなこと、駄目なんだって!お兄ちゃん!」
「そうか」

表情を変えず、遼子に眼を据えたままの兄が遼子の眼の前でスコッチをあおる。
そしてそのまま遼子に口づけた。

「んっ」

遼子の口の中が熱を持つ。アルコールの度数高い琥珀色の液体がもたらす熱と、兄の舌がもたらす熱。
合わせた唇から、スコッチが漏れる。
洸至はそれには構わず舌を蠢かせ、遼子の舌を捉えると絡め取り、吸った。

「お前は酒があれば、誰でもいいんだろ。そうなんだろ?」
「ち、違う…」
「そんな妹は、俺が少しおしおきしないとな」

そう言って、洸至は遼子を自分の部屋に連れて行こうと手を引く。遼子が暴れ抵抗すると、
洸至はまた遼子を抱き上げ、自分の部屋のベッドまで連れていった。
ベッドに遼子を投げ出すと、スコッチを手にしたまま、遼子に覆いかぶさる。
また洸至がスコッチをあおる。
口づける。遼子の喉を熱いものが通っていく。スコッチをあおる。口づける。

「…駄目、兄妹なんだもん、駄目!」

洸至の胸を叩く遼子を無視して、スカートの下に手を入れ、遼子のストッキングに
手をかけると、一気に脱がせる。
それをロープ代わりにして、遼子の両手を手慣れた動作で縛り上げた。
次に枕元にあったタオルで、遼子の口に猿ぐつわをした。

「少し黙ってろって。あの男に触られたところ、きれいにしてやるから」

洸至がスコッチ片手に遼子の脚元へ移動する。スカートをめくりあげ、また口に含む。
下着に手をかけ、引き下ろすと、遼子の亀裂へ顔を近づける。
遼子は脚をばたつかせ抵抗するが、洸至が両足の足首を掴み、掲げながら開かせた。

「んんっ。ふ…ふふっ」

猿ぐつわの向こうで遼子が兄を止める言葉を言っているようだが、まるで意味を成さない。
その時、洸至が亀裂に口をつけた。

「んふぅっ」

熱い液体が自分の中に注ぎ込まれるのを感じて、遼子がのけぞった。

「きれいにしてやるから、少し我慢してろよ」

洸至がまたスコッチを口に含んだ。洸至がまた口づけ、遼子の亀裂へ注ぎこむ。
アルコールの熱で、遼子の亀裂が脈打つように反応する。

じゅる、じゅるるるるる…。
品の無い音を立てて洸至がそこを啜る。

「こういう飲み方、はじめてだけどうまいぞ」
「あふ、あふいぃっ」

遼子の亀裂から痺れるような熱と痛い程の快楽が走る。

「んふふぅぅっ」

スコッチを注ぐだけでなく、洸至が舌を使い始めたのだ。襞一枚一枚を舌で辿り、舌先でクリトリスをそそのかす。
のけぞり、腰をくねらせながら、遼子は快楽に酔い始めていた。

兄妹二人の痴態を包むように、部屋中が淫らな音と匂いと喘ぎ声で満たされていく。

最初は啜りあげるような音だったのが、それが水音に変わっていた。
クリトリスを舌で嬲りながら、洸至が指を二本出し入れしていた。
遼子からは拒否の言葉ではなく、間断ない喘ぎ声しか漏れていない。
洸至が猿ぐつわをはずす。
指を動かしながら、そして妹にたっぷりと口づけをくれてやる。
遼子も淫らに兄の舌を求め、兄の舌に絡みついていく。

「酒のせいだけじゃないな…淫乱なんだよ、お前は」

洸至が楽しげに囁く。そして遼子の耳朶を口に含んだ。
辱める言葉が遼子を昂ぶらせるのを見越しているようだった。
その言葉に遼子が喉をさらし、せつなげな吐息をもらした。

「どうしてほしい?このまま終われば、一線を越えたことにはならないぞ。まだ引き返せる」

遼子の眼が洸至に据えられる。

「欲しいんじゃないのか。指だけでいいのか」

洸至が指を叩きつけながら遼子に聞いた。
遼子が沈黙していても、部屋にははしたないまでの水音が響いていた。
洸至を仰ぎみて、一瞬だけ遼子が逡巡した。
だが、押し寄せる快楽が、これ以上の快楽を遼子に求めさせた。


「あ…んっ…、ほ、欲しい…」
「何が」

「お兄ちゃんが…」

洸至が微笑み、ジャージを脱いだ。妹に覆いかぶさると、遼子の腰の間に己を沈める。

「ひゃああああっ」
「まだ酒が残ってるんだな…。すごく熱いぞ」

遼子はもう聞いていないようだった。アルコールが奥まで巡り、遼子のそこ全体が熱く脈打つ中に、
洸至のものが送り込まれ快楽が増幅されていた。

「あああああっんっ」

抜き差しをする前に、兄の二の腕を握りながら遼子は軽く達した。
洸至の腕には遼子の指の型がついている。

「なんだ、もういったのか」

洸至が遼子の頬にキスをした。
言葉を忘れたように、唇を薄く開いたまま、遼子は荒く息をしていた。
洸至が腰をゆっくりと動かし始める。
遼子の眼の焦点が結ばれる。

「あ…また…」

洸至の腰を動かす速度が上がる。
肉を打ちつける音が響く。

「あああっ…」

泡立つような音を立てながら、洸至と遼子のそこがぶつかり合う。
洸至が遼子の体をゆっくりと抱き起こし、腰を蠢かせながら姿勢を変えていく。
座る洸至の上に、遼子が乗る形となった。遼子の腕が洸至の首に廻される。
お互いを見つめあいながら、リズムを重ね腰を揺らめかせる。

「んんっ…きゃんっ…ああっ」
「どうだ」
「お、奥に…いいっ…凄く…あ、あた…るの…んんんっ」

洸至が腰を揺らす速度を上げていく。
子宮の奥まで突かれるような感覚が全身に伝わり、とてつもない快楽として遼子の理性を麻痺させていく。
遼子はただ貪欲に快楽を求めていた。

「凄い、あああ、凄くいいっ」

誰が快楽をもたらしていようが、もうどうでもいいようだった。

「淫乱すぎるよ、遼子」

遼子のシャツの胸元に手を這わせ、胸を揉みながら洸至が腰を動かす。

「いく…また、いっちゃう…!」
「ああ、俺もいき…そうだ」

ベッドが激しく軋み、遼子が啼くような声を上げ、肉がぶつかる音がひときわ高くなる。

「いやっ。あああああっ」

遼子が洸至の腕の中でのけぞり、そのままベッドに倒れ込んだ。

「これじゃ、おしおきにならなかったな…」

遼子のこめかみを流れる汗を舐めとると、洸至が意識を手放した妹に口づけた。

コーヒーの匂いで遼子は眼を醒ました。
慌てて服を確認する。
どこにも乱れたところはなかった。服の匂いを嗅ぐ。
酒の匂いなどしていない。
大きく息を吐いて、遼子が力を抜いた。

リビングに入ると、寝ぐせ頭でジャージ姿の兄が新聞を読んでいた。
その顔を見て、遼子の心拍数が跳ねあがった。

「おお、起きたか」

兄に別段、変わった様子もない。
コーヒーを啜りながら、寝ぼけ眼で新聞を読んでいる。全く普段通りの兄だ。

「どうした?」

洸至は自分の顔を見つめる遼子の顔を不思議そうに見ていた。

「別に…」
「なんだ変だぞ。あ、お前、まだ酒残ってるんじゃないのか」
「そ、そうなの。ねえお兄ちゃん、昨日の夜何かあった…?」
「昨日の夜?」
「私がお酒飲んで帰ってきてから」
「ああ」

兄が新聞に眼を落した。

「いつも通りだよ。史郎ちゃん、史郎ちゃ〜ん、って散々わめいてから、コロっと寝た。
今日出勤したら、樫村さんに謝っとけよ。昨日お前の面倒見て送ってくれたんだからな」
「そう…」
「遼子、変だぞ。どうかしたのか?」

洸至が訝しげに遼子を見る。

「昨日、わたしお兄ちゃんの部屋に行って、寝ちゃったりしなかった…?」

洸至がいきなり笑いだした。

「小学校以来、お前とは寝てないよ。昨日飲み過ぎて変な夢みたんじゃないのか。
だったら今度から酒の量を少しわきまえるんだな」
「…そうだね。昨日飲み過ぎたせいで変な夢を見たみたい。シャワー入ってさっぱりしてくるね」
「おう、そうした方がいいぞ」

浴室からシャワーの音が聞こえ始めると、洸至の口元が緩んだ。

「またスコッチ買っておくか…」

昨日の酒の味を思い出し、洸至はひとり微笑んだ。






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