復讐少女第4話
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シチュエーション


……一人の少年が女子の部室の前に立ち、何度も顔を左右に振り、周りに人がいないかどうか確認をする。
少年は緊張しているのか、こわばった顔つきで部室の鍵をあける。
鍵を開け、部室の中に入ると、ツンとした匂いと柔らかな花の匂いを感じた…
汗の匂いと、それを消すためのデオドラントスプレーの匂いだ。
少年は、部室内を見渡し、「城本」の名札が付いているロッカーを見つけ、扉を開ける…
ロッカーの中にあるバッグのファスナーを開け、
その中身を探ると黒色で派手な柄の付いている布切れを見つけた。
バックの持ち主の下着だ。

「……これが、ゆかりさんの……」

女性の下着を手に取りそう呟いた。

「ゆかりさん……ごめん…こうしないと……」

少年の鼓動が高まる。女性の下着を手に取った興奮と見つかるかもしれないという恐怖からだ。
女性の下着を盗む行為……その行為は、少年にとって自分の本意ではなかった。
しかし、しばらくその下着を見ていると、急に下着に顔をうずくめたいという衝動に駆られた。

「…すごい……いい匂いがする……ずっと…嗅いでいたい……」

少年はその本能に従い、その下着に顔を近づけようとした。
しかし、理性の方がわずかに上回ったのか、顔を小刻みに左右に振り払て本能を抑え、
手に持っている下着を自分の持っている鞄にしまった。

「なにをやっているんだ僕は……くそっ!!」

少年は顔を悔しそうな表情をして、別のロッカーにも手を伸ばしバッグを探り始めた…

「ゆかりっ!!ナイス〜〜!!」

汗の匂いが立ち込める体育館の中で、ゆかりは、茶髪のショートヘアで長身の少女とハイタッチを交わす。

「せりなこそナイスだよ!!せりながバンバン強いスマッシュをしてくれるから私にチャンスがまわって来るんだって」
「でもゆかりがそーゆーチャンスを確実に決めてくれるから、私たちレギュラーになれてるんじゃない!!」

瀬里奈は、バドミントン部でゆかりと入部して間もない頃から組んでいるダブルスの相手だ。
瀬里奈は170cm以上ある長身と長い手足を生かし、高い地点から角度のあるスマッシュを打つため
他校のチームだけでなく、同じ部員からも恐れられている。瀬里奈はシングルスでも十分に強いのだが、
スマッシュしか取り柄がないために長期戦になると負けることが多く勝率が不安定なため、
シングルスのレギュラーにはなれなかった。
逆に、ゆかりはこれといって特徴がないのだが、凡ミスをほとんどしないために長期戦に強い。
この2人がダブルスのレギュラーになっているのは、互いに弱点を補填しあっているのであろう。

「ハァ…ハァ…ぇ…もうマッチポイント?うっそ…10点ハンデで試合始めたのに…
城本先輩と横井先輩、強すぎるよ……」

試合相手の後輩の2人のうちの一人が顔に疲れを浮かべながら言った。
ゆかりたちは、次のポイントも簡単決め、試合を終わらせると、体育館の壁にもたれかける。

「ふぅ〜しっかし、1年弱くない?あれが1年で最強のダブルスとか…
私たちがいなくなっちゃったらどうするんだよ…」

瀬里奈がはき捨てるようにゆかりに言う。

「でも、1年生はシングルスになると強いし、大丈夫なんじゃない?」
「だめよ!!チーム戦は5試合中2試合がダブルスなんだから、ちゃんとやらないと!!」

部活に対して熱心は瀬里奈は、ゆかりの楽観的な発言に対してついつい強い口調になる

…確かにダブルスはもうちょっと強くないと、この先まずいかもしれない。来月の10月には新人戦もある。
ゆかりが考えるしぐさをし、男子のバトミントン部員のいる場所に目を遣る。
男子部員の数名が、ゆかりにいやらしい目線を送っている。

「……またあいつら!!だから男子は弱いのよっ!!」

瀬里奈は肉食獣のような獰猛な目つきで男子部員を睨み付けた。
男子部員は瀬里奈の目つきに驚き、思わず目を逸らす。

「まぁまぁ……別に減るもんじゃないし」

ゆかりは瀬里奈とは逆に、男子部員に対してニッコリと微笑み、手を軽く振るしぐさをした。
男子部員の視線が元に戻る。

「はぁ……ゆかりさぁ〜、入れ乳をして男子を引き付けたい気持ちは分かるけど、
少しは嫌がるしぐさぐらいはしたら?……あと、ユニフォームだけど一回り大きいのを買って。
下着が汗で透けて見えてるじゃない!!」

バドミントン部の中では、ゆかりの空白の2ヶ月間を豊胸手術をしていたと考えられている。
ゆかりは戻ってきた当初は否定していたが、それも面倒になり、豊胸手術説を黙認している。

「ん〜買うの面倒なんだよねぇ…」
「はぁ…なんで、面倒臭がり屋でお気楽思考のあんたが、バドミントンになるとあんなに丁寧になるのよ……
入部からの付き合いだけど、掴めないっていうかさ……
謎めいたところがあるのよ、ゆかりって。その入れ乳もさ」

瀬里奈はそういうと、ゆかりの胸を数回指で突き自分のラケットをケースの中にしまった。

「じゃ〜先に部室で待ってるから。コートの片付けは負けた1年に任せればいいでしょ」

瀬里奈はラケットを持ちタオルを首にかけると体育館を後にした。

「……ふふっ。女性は謎が多いほうが魅力的でしょ?サタン」

ゆかりが笑みを浮かべながらサタンに話しかける。

「まぁそうだな……私もゆかりのことが時々掴めなくなるからな」
「…クスクス」

ゆかりは帰り際に先ほどと同じように男子部員に微笑みかけ、男子部員を釘付けにして体育館を後にした。

ゆかりが部室に戻ると、先に部室に戻っていた瀬里奈や他の部員達が怒りに満ちた表情を浮かべていた。

「みんな……どうしたの?部活終わったのになんでそんなに機嫌が悪いの?」
「部員の下着が全部なくなっちゃってるのよ!!」
「ぇ……」

ゆかりは瀬里奈の発言に驚き、自分のバックをチェックした。

「ほんとだ……下着が、なくなってる」
「も〜〜っ!!シャワー浴びて帰ろうかと思ったのに、替えの下着がないと気持ち悪いじゃない!!
ぁあああ〜下着盗んだ奴、絶対にボコボコにしてやる!!原型がなくなるくらいに!!」

瀬里奈はロッカーの扉に向かって思いっきりこぶしをぶつける。

「でも、どうやって部室に入ったんだろう……鍵、かかってるし」
「そんなの、窓から侵入とかできるんじゃないの!?」
「でも窓はちゃんと鍵をかけたはずだよ……やっぱりドアから入るしか…」
「……ぁ、だったら奴しかいないわ」

瀬里奈の口調が落ち着いたものになる。

「奴って?」
「荻原よ、荻原!!あの変態生活指導教員!!あいつが部室のスペアキー管理してんのよ!!
いつも使っている鍵は部活中私たちが管理しているから……間違いないわ!!」

すると瀬里奈は他の部員の方に視線を変えた。

「…みんな!!いくよ!!問い詰めてやる!!」

そういうと瀬里奈は他の部員達と一緒に部室の外へ出て行った。
そんなに単純に解決するのか?ゆかりは疑問に思ったが、他に犯人が思い浮かばないので瀬里奈達に
ついていくことにした。

瀬里奈と部員達は職員室に着くと真っ先に荻原のいる席へと向かった。
途中体育館寄って一年生にも呼びかけたせいか、大人数が荻原の席を取り囲み、荻原を睨みつけた。
荻原は驚きを隠せれずにいた。

「な、な何だよ君たち…わ、私になにかも文句でも…」
「何だよ…じゃないわよ!!この下着ドロボー!!」
「えっ?下着ドロボー?…ちょっと待ってくれよ…他の誰かと勘違いしているんじゃないか?」

荻原は本当に何も知らないような素振りを見せ、今度は荻原が瀬里奈を睨みつける。

「…2年生の横井さんだっけ?君は部活も熱心な上に、クラスの学級委員も務めている。。
けど、その派手な茶髪は何度注意しても直さないよね。。。」

そういうと荻原は、瀬里奈の髪を触ろうとする。荻原の癖だ。
本人は故意でやっているわけではないが、男女関係無く制服や髪に触わろうとする。
この癖のせいで女子からは「変態」や「セクハラ」と陰口を叩かれてしまうのだ。

「ちょっと、触らないでよ!!この変態教師!!」
「へ、変態とは何だ!失礼だぞ!!」

荻原はその言葉が癪に障ったのか、声を荒げる。

「……せりな。まだ、荻原先生が犯人って決まったわけじゃないよ。」

ゆかりが荻原と瀬里奈の間に割り込むように言った。

「でも、スペアキーを持っている時点で他に誰がやれるのよ!!」
「スペアキー?」

荻原が瀬里奈の言葉に反応するように言った。

「それなら…夏休みが終わってから、1年の体育を担当している矢田先生に管理が変わったんだ。
教頭先生からの指示でね。でも、矢田先生は管理が雑でさ…
メインの鍵を無くした生徒に他の鍵ごと簡単に貸してしまうんだ。
私は何度も注意するんだけど、聞いてくれないんだよ」
「うそ……そんな……」

スペアキーは荻原が管理していない…瀬里奈は荻原の発言にしばらく体が固まってしまった。

「鍵なら彼の机一番上の引き出しにあるはずだ」

ゆかりは早速矢田の机に向かい引き出しを開けた。
荻原の言うとおり鉄製の大きな輪にスペアキーの穴が連なっている。

「ぇっと……私たちの部室の鍵は…」
「『女バド』って名札が付いているはずだよ」

荻原が答える。

「………ない。無くなってる!!」
「……これで私に対する誤解は解けたかい?横井さん」
「うっ……。……誤解をしてしまい、申し訳ありませんでした!!」

瀬里奈は荻原に深々と頭を下げた。

「……近いうちに髪も黒に戻します」

瀬里奈はもう一度荻原に頭を下げ、職員室を後にすると、他の部員もそれに続いた。

「…しかし災難だったね。。下着泥棒だっけ?…矢田先生には更に厳しく言っておくよ……
まぁ、でも今回の事件で彼も反省するだろうけど」

一人の残ったゆかりに対して荻原は話しかける。

「こちらこそすみませんでした。横井さんって、一旦頭に血が昇ると誰にでも暴言吐いちゃうタイプで…」
「大丈夫だよ…わたしの癖で、そう思われても仕方がない」
「その癖直らないんですか?」
「直せれるのなら…とっくに直しているよ」
「そうですか……ふふっ……じぁー私が直してあげますよ…えいっ!!」

そういうとゆかりは荻原の額に向かって人差し指をぶつけた。荻原はゆかりの突然の行動が理解できないのか、
きょとんとした目でゆかりを見つめる。

「これで直りましたよ。クスクス……そういう『命令』をかけておきましたから」

ゆかりは薄ら笑みを浮かべながら職員室を後にした。

下着泥棒の事件から、1週間が過ぎ、9月も半ばに差し掛かっていた。
荻原はゆかりの『命令』のおかげか、生徒の服や髪に触らなくなり
地に落ちていた評判も少しずつではあるが良くなっていた。
ゆかりはいつもの噴水で真希と和美と一緒に昼食をとっている。

「ゆかりん、そういえば例の下着ドロの犯人ってまだわからないの?」

和美がゆかりに話しかける。自分達が一度性犯罪の被害にあっているせいか、
二人共この事件に積極的に協力してくれている。

「う〜ん……あれ以来なにも起こってないからなぁ。。手がかりとか何も残さなかったし」
「…でもなんか下着ドロボーって卑怯だよねぇ〜〜正々堂々と取りに来なさい!!って言いたくなるよ」
「まき……正々堂々と取りに来られたらまずいでしょ。。。」

和美と真希が話していると、一人の少年がゆかりのそばに近づいて来る。

「ぁ!!朝倉君、こっち、こっち!!」

真希が、少年を手招きする。

「坂下さん、頼まれてた楽譜、転調して調整したものを作成したんですけどこれでいいですか?」
「う〜んどれどれぇ……見た感じきちんとできてそうだねぇ〜細かいアレンジも効いてそうだし」
「アレンジした部分は演奏して確かめてみてください。もしかしたらしっくり来ないかもしれないので……」

少年の名前は朝倉 優太といい、真希と同じ吹奏楽部し所属している。優太は男性にしては小柄で、
背が160cmを少し超える程度…ゆかりとほとんど変わらない。
優太は真希にそういうと視線をゆかりの方に向けた。ゆかりは少年をやさしく見つめている。

「こんにちは。ゆうくん」
「ぁ……ゆかりさん。お久しぶりです」

ゆかりと優太が親しげなやりとりをしているのを見て、和美はいやらしい目線で2人の間に割り込む。

「ふ〜ん。ゆかりんと名前で呼び合う関係なんだ…こんな少年が、学校No.1の美女であるゆかり様にねぇ……」
「ちょっとかずみ!!No.1ってだれが決めたのよ。。。」
「男子がよく話してるし。ゆかりんのスタイルとか。スタイルとか。スタイルとか。

ほんっと男子って変態よね〜」

「(クスクス……それはそれでいいんだけどね)」

ゆかりが笑みを浮かべて小声で言う。

「ん?ゆかりんなんかいった?」
「あ、別になんにも…それよりゆうくんはね、中学の時にちょっとお世話になったの」
「お世話になっただなんてとんでもないです!!僕がいなくてもゆかりさんはちゃんと仕事してたと思いますよ」
「またまた謙虚になっちゃって…わたしが中学3年の時の話なんだけどわたしね、半年間だけ生徒会長やってたの」
「ぇっ!?めんどくさがりのゆかりんが生徒かいちょお?」

和美は驚いた顔をして言う。高校からの付き合いであるゆかりから見て想像がつかないからだ。

「ああっ!!ゆかりん!!かずみ!!そろそろお昼休憩終わっちゃうよ!!」
「ぁ!!ホントだ!まずいじゃん!!」

ゆかりは自分の身に着けている時計を確認してあわてて弁当を片付ける。

「ゆかりさん!!じゃあ僕はここで!」
「うん。またね〜」
「ちょっと!!この話はあとでじっくり聞かせてもらうよ!!ゆかりん!!」

ゆかりたちは急いで教室に戻った。

「罠を仕掛ける?どうやって?」
「それを今から考えるのよ…」

放課後、女子バドミントンの部員達が、月1回のミーティングで集まっている。
今回は新人戦のメンバー決めについて話合いをすることになっていたのだが、いつの間にか
下着泥棒撃退作戦に変わってしまっている。

「なにかドアのあたりに仕掛ければいいんじゃないですか?」

一人の後輩部員が瀬里奈に話しかける

「どんなものを?」
「…ドアを開けると警報とかなるようなものがいいかも!!」

今度はゆかりと同期の部員が提案した。

「でもそれだと、警報が鳴った時に犯人が逃げちゃうよ……」
「そうだよね。多分今度起こる時もわたしたちは部活中なんだから
わたしたちだけ気づくようにしなきゃね…」
「でも、そんな警報どこで手に入れるの?」
「ん〜ホームセンターとかに売ってるんじゃないの?」

部員の2人がそのようなやりとりをしていると、ゆかりが考えるしぐさをする。

「ホームセンターとかには売ってないんじゃない?
だって、警報とか本来は犯人が侵入するのを防ぐものなんだからそんな変わったもの……」
「変わったもの……か」

ゆかりはその言葉を反芻し、目線を別の校舎の方に移す。

「ゆかり、なんか心当たりでもあるの?」
「うん……ちょっと、ね」

ゆかりはミーティングが終わると早速別校舎に向かった。コンピュータ室の方だ。

「おじゃましま〜す」

ゆかりがドアを開けると、黒縁メガネの男がパソコンに向かって何か作業をしているのが見えた…久田だ。

「ん?…あなたは坂下嬢の友達の……」
「城本だよ」

一人の男がゆかり姿を見てなにやら慌てて作業をしている。ゆかりはその慌てぶりが気になったのか男の方に近づく

「ああっ〜!!見ちゃダメだっ!!」

半ば強引にゆかりが男のパソコン画面を見ると、そこには裸の女性の画像の顔の部分が、
ゆかりの顔にされている画像が見えた…アイコラ画像だ。完成度がかなり高く、本当にゆかりが裸になっているように見えた。

「クスクス……それっ!!」

するとゆかりは男の背後から抱きつき手を首にかけ、自分の大きな胸を、男の背中に押し当てる。
男はゆかりの感触に興奮しているのか、顔がかなり赤くなっている。

「ふふっ……いつもこんな事して遊んでいるの?いけない子ね……」

ゆかりは男の左耳にそう囁くと、優しく息を吐きかけた。

「ああっ!!たまりません…ゆかり……さ…ま…」

男の興奮が頂点に達したのか、そのまま失神してしまった。

「…あのー……今日はどのようなご用件で?」

部屋にいる一人が気まずそうにゆかりに尋ねた。

「ちょっと相談事があってね。…先週ね、バド部の部室に下着ドロボーが侵入したんだよ。
部室のスペアキーも盗まれたままだし、また犯人がやってくる可能性があるから、ドアを開けると警報が作動するようなものが欲しくて…」
「それだったら、ホームセンターとかに売っているマグネット式の警報装置をつければよいのでは?
わざわざここまで来て相談するほどの事ではないと思うのだが…」

久田が腕を組みながらゆかりに話す。

「…でもそういうのってブザーとかが中に入ってるでしょ?わたしたちが欲しいのはね、犯人が部室に
入ってきた時に、犯人に警報の存在が気づかれないようにして部員だけがわかるようなものが欲しいの。
そうしないと犯人が逃げちゃって、二度と捕まらなくなる可能性があるでしょ?」
「そういうことなら……おい!!貴様、いつまで寝ているんだ!!」

そう言うと久田は、先ほど失神した男の頭を目掛けて、机の上に置いてあるフロッピーディスクをぶつける。

「いてっ!!」

その衝撃に男は思わず頭を起こした。

「くっそーせっかく幸せな気分に浸っていたのに……」

男は無駄に表情を引き締めゆかりの方を向く。
自己紹介がまだだったな。。俺は木下 聡。このコンピュータ部の部長だ。
先ほどの話はすべて聞いていたよ」

「聞いてたんだ……」

ゆかりは呆れた口調で言う。

「警報装置だよね。そういう類のものは、あるにはあるんだけど…」

木下は、そういいながら引き出しの一番下の部分を開け、携帯電話と小さなマグネットのようなものを取り出す。

「このマグネットをドアの境目の上と下につけるんだ。警報のスイッチの操作は、この携帯でできるようになっている。
スイッチが入っている状態で、このマグネット同士が離れると……携帯が鳴り出す。」
「へぇ〜すごい仕掛けだね。それ」

ゆかりに感心された木下は気をよくしてさらにしゃべり続ける。

「フフ……そうだろう?しかもこれは半径1kmの区域まで使用可能だ。だからこの学校のどこにいても侵入者がわかるはずだ」
「へぇ〜そこまで私に説明してくれるんだから、貸してくれるんだよね?それ」

ゆかりが期待するような目線を木下に向けたが、木下はうつむき腕を組んだ。

「…この装置は、今度ちょっとした用事で使うんだ。いくらゆかり様のお願いとはいえ、今すぐ貸すわけには…」
「えぃっ!!」

ゆかりは木下の話を遮る様に、再び背中に抱きついた。今度はさっきよりも強く自分の胸を木下に押し当てる

「ふふっ……今すぐ貸してくれたら、わたしの本物のハダカを見せてあ・げ・る………クスクス」

ゆかりは木下の左耳に囁き、先ほどと同じように息を吐きかける。

「ああっ!!どうぞお持ち下さい…ゆかり…さ…ま」

木下は、失神してしまった。本当に。

「クスクス……いい子ね」

他の部員達は、哀れむような目つきで木下を見つめる。

「……な、なんか、坂下嬢といる時と雰囲気がちがうぞ……」

久田が顔を引きつりながら言う。

「なんか男の子の中にいると、血が騒いちゃうんだよね〜」
「なんの血だ?」
「な・い・しょ。クスクス……」

ゆかりは久田に悪戯っぽく笑い、部屋を後にした。

ゆかりは、コンピュータ室を出ると早速部室に行き、木下から貰った警報装置を取り付けた。
その警報装置は使い勝手が良いのだが、一つ欠点かあるとすれば、着信音が男の叫び声に
なっており、変更が一切できないということだ。
警報装置をつけてから1週間が過ぎたが、装置が作動することはなかった。

「本当に犯人はまた侵入してくるのかなぁ…」
「多分くるわよ。スペアキーも持ってるし、性犯罪は再犯する場合が多いらしいから」

部活の休憩時間ゆかりと瀬里奈が話していたその時、

「お〜〜〜い!!スタッッフ〜〜〜〜〜!!!!スタッッフゥ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

ゆかりのラケットカバーのそばにおいてある携帯電話から、例の叫び声が聞こえてきた。
…警報装置が作動したのだ。

「これって……!!」
「ついに来たわね!!絶対に逃さないわよ!!!」
「うん!!」

ゆかり達は駆け足で部室の前まで行くと、案の定ドアの鍵が開いていた。
瀬里奈は中にいる犯人を挑発するように、部室のドアを勢いよく開けた。、
瀬里奈が部室の中を見てみると、一人の少年が怯えた目でこちらを見ている。

「あんたが犯人ね!!ふふっ……これからどーなるか、わかっているわよねぇ……」

瀬里奈は薄ら笑みを浮かべながら少年に近づく。。。
ゆかりも瀬里奈の後から付いていき、少年の顔を確認した瞬間…表情が一気にこわばった。

「ぇ……うそ………ゆうくん……なんでこんな事を……」
「ゆかり……さん。ごめん…なさい。ごめん…なさい。ごめん……」

優太は今にも泣きそうな表情で、ゆかりを見つめる。

「ゆうくんが、下着を盗むなんて……ありえないよ……」
「ん?こいつってゆかりの知り合い?」

ゆかりは無言で頷く。

「あんた……ゆかりとどういう関係か知らないけど……ゆかりの心に傷をつけた事は、大きいよ!!

覚悟なさい!!」

「まって!!」

瀬里奈が更に優太との距離を縮めようとしたときゆかりがその間に割り込んだ。

「ちょっと、ゆかり!!」
「ゆうくん……何かの間違いだよね……」

優太は黙ったままだ。

「よし……」

ゆかりは優太の肩に手を置いて目を見つめ、『透視』を始めた。

「……やっぱり、ゆうくんは好きでこんなことはやってなかったんだ…」
「え?ゆかり、どういうこと?」
「本当の犯人は……ゆうくんじゃないよ……」
「なにいってるのゆかり、だって部屋のなかにこいつが……」
「わたしが本当の犯人を見つける……だから、ゆうくんを見逃してあげて……お願い。。。」

ゆかりは懇願するような目で瀬里奈を見つめる。

「ゆかりさん……そんな人いませんよ……ちゃんと仕打ちは受けます……」
「ゆうくん……うそついちゃだめだよ……」

ゆかりは、悲しそうな目で優太を見つめる。

「……なんだかよく分からないけど、一応ゆかりを信じるわ。その『真犯人』っていうのが
特定できたらわたしに教えてよ。ボコボコにしてやるんだから」
「……あと、優太っていったっけ?今は見逃してあげるけど、疑いが晴れたわけじゃないんだから。
やっぱりあんたが主犯だったら…その時は覚悟するのね。あと、スペアキー返しなさい」

瀬里奈が諭すように優太に言った。

「わかりました……」

優太はそう言うと、持っていたスペアキーを瀬里奈に渡し、2人のそばから離れていった。

ゆかりは体育館に戻ると、男子のバドミントン部員が練習しているところに行った。
男子部員の視線がゆかりに一気に集中する。ゆかりは、壁にもたれかけている男子2人に話し掛けた。

「原田君と野村君だっけ?ちょっとお願いがあるんだけど…」
「なんですか?城本先輩?」

原田が爽やかな声でゆかりに話す。

「えっとね……そろそろ新人戦だから君達と試合がしたいの。……君達かなり強いでしょ?
いい練習相手になると思って。」

ゆかりはふたりの耳元に近づき、周りに聞こえないように小声でしゃべる。

「でも練習は3人だけで……しよ。今週の土曜日の夜に……ね」

2人はお互いに顔を見合わせ、しばらく考えた後、ゆかりに視線を戻す

「いいですよ!!城本先輩の頼みなら、なんでも聞いちゃいますよ!!
…それと、メアド教えてもらえませんか?連絡とりたいんで」
「いいわよ……」

ゆかりは2人の携帯番号のメールアドレスを交換し、女子部員の方にもどった。

土曜日の夜になった。
ゆかりは、原田と野村と待ち合わせを約束した市民体育館に来ている。
原田と野村は時間通りに正門でゆかりを待っていた。

「ちゃんと、来てくれたのね。お疲れ様」

2人は、なにかすっきりしないような表情でゆかりを見つめる

「城本先輩……夜にやるっていったってもう体育館締まっちゃってますよ。
一体どこで練習するんですか?」
「クスクス……今日はね。貴方達と練習をしに来たわけじゃないの…」

ゆかりが2人に対して微笑を浮かべる。

「ゆうくん…朝倉 優太君に下着ドロボーをさせたの、貴方達でしょ?」

ゆかりの意外な発言に2人とも驚いた表情を見せる。

「な、ななに言ってるんですか!!な、なぁ、そんなのしらないよなぁ?野村」
「ぁ、ぁ、当たり前だろ?し、し、城本先輩…そ、それはないですよ…」
「怪しい……」

ゆかりは2人を睨み付けた。

「いやだなぁ……城本先輩。証拠なんてないじゃないですか……」
「証拠ならあるんじゃない?原田君の部屋に。わたしの下着がベッドの上においてあるんでしょ?
いまから一緒に行けば分かるわよね……」
「!!!」

原田は更に驚いた表情を見せる。

「そ、そ、そんなこと………し、下着なんかあるはずが……」
「おい……もうやめようぜ、原田」

野村が諭すように原田にいった。

「そうだよ……俺達があいつにやらせたんですよ……」

野村が堰を切ったようにしゃべりだす。

「あいつさぁ…俺らがいじめている奴をがばおうとしたんだよ。弱いくせにさ。
でもあまりにも必死だったから、いじめてた奴は解放する代わりに、あいつに
『度胸だめし』で下着ドロボーさせたんですよ」

「俺ら下着は興味なかったんだけど、あいつホントに取ってきたから貰ってやったんですよ。そしたら、
城本先輩の下着、とくにパンツとかすごくいい匂いがするんですよねぇ……俺ら癖になっちゃってさぁ」

原田はいつもの爽やかな声ではなくいやらしい声で話す。

「そうそう。たまんないんですよ。アレ。でも最近匂いがあんまりしなくなって
もう一度あいつに盗ませようとしたんですよ。。
バレてるってことは、ヘマしたんですね、あいつ」

「……でも、いいですよ。。実物がここにいるからさぁ……ククク」
「今日は俺達もバドの練習はいいですよ……その代わり別の練習をしますから」
「覚悟してくださいね……城本センパイ……俺達、あいつと違って強いですから……」

原田と野村は、ゆかりとの距離を詰める。

「………ふふっ」
「あなた達が私に勝てるわけないじゃない……」

ゆかりがそういうと目が紅く光り、それを見た2人は気を失った。

2人が目覚めると、周りには、マットやボールなどが整理されて置いてあるのが見えた。…どうやら体育館の倉庫の中らしい。

「目が覚めた?……クスクス」

見上げると、一人の女性が下着姿で見下ろしているのが見える……ゆかりだ。

「あれ……俺、服着てないんだけど…」
「まじかよ!!なんで裸なんだよ!!」

原田と野村は自分達が裸になっているのに気づき、慌てふためく。

「おい……俺達の服、どこに隠したんだよ……」

野村はゆかりを睨みつける。もはやゆかりに対して敬語も使いたくないといった心境になっている。

「さぁねぇ〜……それよりこれから君達にやってほしいことがあるんだけど……クスクス」
「てめぇ……ふざけやがって!!」

野村がゆかりに襲い掛かった。しかし、ゆかりはすばやく野村の顔を鷲掴みにし、そのまま地面に叩き付ける。

「ガハッ………!!」
「反抗的だなぁ……ちょっとおとなしくしてもらおうかな……ふふっ」

ゆかりはそういうと、野村のモノに足を近づけ、裏筋の部分を軸にしながら上下にこすりつけた。

「ウッ……ああっ……!!」

野村はゆかりの足がもたらす快感に思わず声がででしまう。

「クスクス……気持ちイイ?じゃあもっと激しくしてあげる……」

ゆかりはこすりつけるスピードを速める。。野村のモノも固くなり、熱を帯びていく。

「……ハァ……ハァ…もう、イキそう……」

ゆかりはその言葉を聞いた瞬間、野村のモノから足を離した。

「ぇ……そんな……」
「クスクス……だめだよ。野村君は反抗的だからイカせてあげない…」
「うっ……。城本先輩……なんでも言うこと聞きますから……イカせてください…」

ゆかりはその発言に納得いかない様子だ。

「う〜〜ん。。。なんかねぇ〜そんな言い方だと、心にグッっとくるっていうか……
感じるものがなにもないんだよねぇ……。クスクス…ねぇ、もっといやらしく、丁寧にお願いしてみてよ……」

野村は、困惑した表情になったが、ゆかりに従い、重々しく口を開く。

「し、城本先輩の綺麗な足で……僕の…汚い…お…おちん…ちんを…しごいてイカせてくだ……さい」
「ふふっ……そんないやらく懇願されちゃったから、少し興奮しちゃった…足じゃ精液がもったいないから
口の中でイカせてあげる」

ゆかりはそういうと口の中に唾液を含ませ、野村のモノを咥えた。

「クチュ……チュッ……」
「アッ……うっ!!!」

野村は突き抜けるような快感を感じて、ゆかりの口の中で一気に果てた。

「ゴクッ……ゴクッ……。ふ〜〜っ、ごちそうさまぁ……」

ゆかりは野村のモノから吐き出された精をすべて飲み干し、今度は、原田の方に近づく。原田は先ほどのやり取りを見ていて、勃起をしてしまっていた。

「クスクス……いまのを見てて勃っちゃったの?原田くんってホントはドMなのかなぁ?」
「ぇ……そんなことは……」
「ふふっ……隠さなくてもいいんだよ。わたしドMな子大好きだから。。。」

ゆかりは原田のモノをまじまじと見つめる。








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