魔法戦士シンフォニックナイツ「ジャミング」
-5-
シチュエーション


少女の絶望の喘ぎと共に、パァッと光が薄桃色の下着を包む。
例によって無数の粒子となった布地は、夜空に舞い上がるとやがてその姿を消していく。
これで、パンティを取り戻すことすら不可能となった。
今のシンフォニックリリーに残されているのは、バイザーを初めとしたヘッドセット。
手足を包む手袋、靴、ソックス。
そして腰に装着されているパーツだけとなった。
勿論、胸や股間といった部分を覆う衣服はもうない。
両手で隠す以外に、恥ずかしい部分を守る術はなくなってしまったのだ。
そして、これによってジャミングの効力は完全に発揮される。
魔法戦士の生命線とも言えるリンク。
それが遂に全て断ち切られてしまったのである。

「あ……う……ッ?」

とくんとくんとくん。
下着が消されると同時に、莉々奈の胸の鼓動が激しくなる。
細腕で覆われた双乳と秘処に熱が集まり、じんじんと疼いていく。
リンク完全遮断によって魔法抵抗力がほぼ無になってしまったため、かけられていたもう一つ魔法。
つまり、エクスタシーの効力が本格的に牙を剥き始めたのだ。

「か、身体が熱くなって……はぅ……!」

硬く閉じられている両脚が太ももを擦り合わせるようにもじもじと動き始める。
胸に当てられていた左手が柔らかなそこを揉もうと動き、股間を隠す右手が割れ目を擦ろうと反応する。
莉々奈の身体が、無意識のうちに性感を欲しはじめているのだ。

「だ―――ダメッ!」

リリーはかろうじてその手の動きを寸前で食い止めた。
自分は今何をするつもりだったのか。
公衆の面前で身体を慰めようとするなど、そんなことをしてしまったら市民にあわせる顔がないではないか。
だが、乙女の頑強な精神とは裏腹に、淫欲に犯された肢体は刺激を欲して疼きを増す。
愛液の分泌が早まり、秘処が更に濡れていくのがわかる。
このままでは手から溢れて太ももにまで零れかねない。

「はぁ…ッ!い、いけない、このままじゃ―――きゃッ!?」

破廉恥な反応を示す自分の身体に狼狽する莉々奈の左足に下魔の手が伸びる。
淫欲に抵抗するため集中していた少女はひとたまりもなく、未だ残っているソックスごと足首を掴まれてしまう。

「は、離して……ッ。や、ああーッ!?」

抵抗する魔法戦士をものともせずに下魔の怪力は少女の脚を垂直に持ち上げた。
高々と持ち上げられた足は、下魔の頭の上まで掲げられてしまい、逆さまになった莉々奈は完全に地面から離されてしまう。
他者の視線から隠すために屈められていた身体は真っ直ぐにされ、空いた右足が外に開きかけた。

「おおっ!」
「い、いやッ!」

シンフォニックリリーのアソコが見える!
淫らな期待に湧く男たちの歓声を受けてリリーは慌てて右足を内股気味に左足に寄せる。
更に、膝を曲げて右足と右手で秘処をガードする形をとった。
左手は胸に回されているため、これでなんとか見られたくない部分は隠れていることになる。
だが、手が回せない後ろは完全に露出してしまっていた。
ほっそりとした肩も、白くなめらかな背中も、芸術的にくびれた腰も、ムッチリと丸みを帯びたお尻も無防備に夜風に晒される。

「うう……っ」

後ろからヒリつくような視線を感じ、莉々奈は恥ずかしさのあまり身を捩ってしまう。
胡桃色の長髪がサラサラと揺れ、逆さまになりながらもその形を崩さないヒップがぷるっと弾む。
ファルケは、そんな宿敵の無様な様子を特等席で楽しみながら次なる指令を下した。

「よし―――やれ」
「え……?な、なッ?」

ゆらり、と逆さま宙吊り魔法戦士の身体が右に揺れる。

次は左、そしてまた右。
振り子のように揺らされる少女の肢体は徐々にそのふり幅を大きくしていく。
空中で激しく振り回される莉々奈。
敵の狙いがつかめずに、髪を乱しながら為すがままにされる魔法戦士は揺れる視界の範囲が段々広がっていることに気がついた。
垂直だったはずの身体はいつの間にか斜めになり、振られるごとにその角度を水平に近づけられていく。

「あ……ンンッ!」

下魔が自身の身体を回転させ始めると、リリーの身体も宙に浮いたまま旋回を始めた。
既に少女の体は遠心力によってほぼ水平にまで持ち上げられている。
速度はそれほどではないが、プロレス技でいうジャイアントスイングの状態だ。

「あ……うあ、あッ!?」

されるがままだった莉々奈の口から狼狽の声が漏れ始める。
振り回されているだけなのでダメージこそないが、遠心力によって手足が外に開こうとし始めたのだ。
手足を今の位置から動かすわけにはいかない、と必死に力を込めるリリー。
しかし絶え間なく襲い掛かる遠心力には敵わず、徐々に乙女の両手と右足は置いていた場所から離れ始めていく。
そして遂に、大きく身体が振られると同時に右足が離れてしまった。

「きゃあ!」

大股開きになってしまった股間を見て、莉々奈はか細い悲鳴を上げる。
しかし足はどんなに力を込めても一向に元の位置に戻る気配を見せない。
未だ両手は踏ん張っているため肝心の部分は見えないが、それも時間の問題だ。
ぐるぐる回る視界にはその時を今か今かと待っている男たちが映る。
見せたくない、見られたくない。
その一念で少女の手に更なる力がこもる。

「んあ……ッ!」

だが、それがまずかった。
力が込められたため、握り締めるような形になった莉々奈の指が肌に食い込んでしまったのだ。
乳房と秘処という身体で最も感じる部分への突然の刺激に、思わず手足から力が抜ける。
と同時に、胸を覆っていた左手が、そして股間を隠していた右手が弾けるように乙女の身体から引き剥がされた。

「きゃあああああッ!!」

遂に隠すものが一つもなくなった乙女の肢体が夜空の下で露わになる。
裸体を晒す恥辱に、ぎゅっと目を瞑る莉々奈。
と、その時―――足から下魔の手が離された。

「え―――?」

拘束から解放された魔法戦士の身体が宙を駆ける。
開放感と浮遊感が身体中を覆い、一瞬思考が真っ白になる。
しかし、すぐに状況を飲み込んだリリーは心臓をドクリと大きく跳ねさせた。
今の自分は砲丸投げで投げられた砲丸のようなもの。
このままアスファルトやビルの壁に激突すれば大怪我、悪ければ死は免れない。
リンク率が完調であれば、防御魔法なりダメージの軽減なりはできたのだが現在それを望むことは不可能。
ゾッと氷をあてられたような寒気と恐怖が少女を襲う。

「ひあ―――ッ!!」

一呼吸遅れて悲鳴が喉から溢れ出た。
チラリとかすめた前方の視界に何かが映る。
ぶつかる―――!
覚悟を決め、ぐっと目を瞑る。
しかし、莉々奈を襲ったのは硬い壁や地面の感触ではなかった。

「きゃあッ!」
「うわわっ!?」

ドスン!
何かにぶつかる衝撃とともに背中に感じたのは柔らかな肉の感触。
野太い男の悲鳴を耳に入れながら、魔法戦士は勢いのままぶつかった何かと共に転げていく。

「う……痛っ……」

ようやく動きが止まり、莉々奈はゆっくりと目を開いた。
幸いにも身体に怪我はないようだ。
ぶつかったものがクッション代わりになったようだが、一体何をぶつかったのだろう?
うっすらと開いた瞳に、とある人気アニメのヒロインである魔法少女の絵が映る。
よく見れば、その絵はシャツにプリントされたもののようだった。

「え……シャツ…?」

少し頭を持ち上げてみる。
するとそこには苦しそうに、しかしどこか幸せそうにうめく一人の男の姿があった。
男はいわゆるオタクの格好をしており、手にはデジカメを、背中にはリュックを背負っている。
彼のお腹はメタボ腹とばかりにふっくらと突き出ており、どうやら激突のショックはこのお腹が吸収した様子だった。
男のほうも背中のリュックのおかげで怪我はない様子。
互いの無事に、ほっと息をつくシンフォニックリリー。

「あ……!」

しかし次の瞬間、リリーはポッと頬を染める。
ぶつかった時の影響か、体勢が男を押し倒してしがみつくような形になってしまっていたのだ。
何も着けていない双乳が、柔らかな縦筋が異性の身体に密着しているのを感じてしまう。
幸いにも、胸は男に押し付けられて、股間は男の立てた膝がちょうど股を割るような形で差し込まれていたため見える状態ではない。
だが、男が服を着ているとはいえ、今のリリーの格好は破廉恥極まりなかった。
胸を押し付け、股間を男の足で割られているなど、まるで性行為中のような格好だ。
リリーは慌てて身体を隠しながら男から飛び離れる。
そして気がついた。
周囲に倒れている男と同じような格好をした男がいることに。
彼らが、その視線の全てが自分に向けられているということに。

「きゃ……ッ!!」

うずくまるようにしゃがみこみ、莉々奈は自分の裸体を隠す。
と同時に突然の人間砲弾から我に返った男たちが歓声をあげ、狂喜乱舞しながらレンズを少女に向けた。

「や、やめて……撮ってはいけません……」

震える喉からなんとか声を捻り出すも、男たちの行動は止まらない。
先程までは数十メートルほど離れていた彼らだが、今の魔法戦士との距離は数メートルと離れていないのだ。
こんなに至近距離で撮影できるチャンスをカメラ小僧たちが逃すはずもない。

「や、やン……!」

多数の視線とレンズから身を守るように莉々奈は更に身を縮こまらせる。
裸同然の格好をこんなに近くで大勢の異性に見られるなど可憐な乙女には耐えられなかった。
しかしシャッター音は止む気配を見せず、それどころか彼らは更にもっと近くで撮影しようと徐々に歩み寄ってくる。

「どけ」

そこに乱入して来たのはファルケと四体の下魔だった。
二体はシュガーの方に回っていたはずなのに。
そう疑問に思うよりも先にファルケたちは進行通路にいる男たちを蹴散らし、リリーの前に立った。
魔物の接近に、つい先程まで魔法戦士の裸に興奮していた男たちが逃げ腰になる。
だが下魔が一吼えすると、彼らは逃げる気すら消し飛ばされその場に留まらされてしまう。

「ファルケ……お願い、この人たちには手を出さないで…!」
「こんな時まで他人の心配かい?流石は正義の魔法戦士、お優しいことだ。
だが安心していい、最初に言ったとおり彼らには手は出さない。さっきのも邪魔だから転ばせただけだ。それに―――」

す、と黒スーツの男が合図の手を上げると下魔たちが莉々奈を取り囲む。
嫌な予感にその場を離れようとするも、異形の巨体に囲まれては脱出のしようがない。

「彼らは観客だって言っただろう?」
「な、何を企んで……うッ!」

ファルケに詰め寄ろうとしたリリーの足が下魔によって掴まれる。
今度は片足だけではなく両脚ともをだ。
身体を隠すことに気をとられていた魔法戦士は先程の再現とばかりにまたしても宙に逆さ吊りにされてしまう。
それどころか、膝を割られて百八十度近くにまで開脚を強制されてしまった。

「ああ……!」

足を大股開きにされるという恥ずかしいポーズに、莉々奈は赤面する。
二体の下魔が片足ずつを掴み、広げている格好のため前も後ろも丸見えだ。
胸と股間は辛うじて両手で覆っているが、その最後の砦も残り二体の下魔によって捕まえられてしまう。
そして下魔の腕が力んだのを見てとって、リリーは彼らの狙いを悟った。
敵の狙いは、至近距離の衆人環視の中で自分の裸を隅々まで晒すことだったのだ。

「やっ……はっ、離して…ッ」
「さて、ここにいる人間たちよ。幸運に喜ぶといい、正義の戦士シンフォニックリリーの生まれたままの艶姿だ」
「はなし……くっ、あうっ……あああ……ッ!」

恐怖と興奮にどよめく観衆の中心で、リリーは必死に両腕に力を込める。
だが、少女の細腕と下魔の怪力では比べることすら馬鹿らしい。
ぷるぷると震える乙女の腕は、あっさりと地面に引き倒された。

「や…や……いやぁ……だめぇっ、こんな……裸で、こんな格好なんて…」

ゴクリ…
遂に衆目の目に曝された魔法戦士の裸体に男たちの喉が鳴る。
想像よりも、遠目から見たものよりも、服の上から見たものよりも魅力的なその身体にその場にいた全ての男が声を発することもできない。
莉々奈のそこはいかにも柔らかそうな縦筋に覆われ、異性たちの視線を感じているのか恥ずかしそうに震えている。
足を思い切り開かれているせいか、入口は僅かに開き、中身のピンク色が少しはみ出ていた。
その上には若草のような恥毛が生えていて、時折風に靡いてふわっと揺れる。
柔筋の上にちょこんと存在しているクリトリスは未だ包皮に覆われたままだが、今にもその身を曝しそうな按配だった。
完全に勃ちあがった乳首を中央に乗せた二つの柔乳は、87センチという立派なサイズに恥じない大きさを見せ付けている。
逆さにされているせいか、不安定な巨乳は少女が息を吐くたびにたゆんと揺れてその大きさを誇示しているかのようだった。
男たちの視線が恥ずかしい部分に向けられているのは視線を向けるまでもない。
しかし、押さえられている四肢はピクリとも動かず。
莉々奈はただ、自分の無力を噛み締めながら裸を晒し続けることしかできなかった。

ビリッ…ビビビリビリッ!
かろうじて下半身を隠していたパンティストッキングが細切れになりながら宙を舞った。
一瞬の隙をついて魔物たちの手から逃れたシュガーだったが、体勢が体勢だけに前につんのめるような形で倒れこんでしまう。
それでもなんとか両手両脚を使って胸と股間だけは隠す。
だが、下魔たちを含む観客たちの大半は裸に剥かれた少女ではなく、つい数瞬前まで彼女の下半身を覆っていた布切れに目を奪われていた。
タイミングよく吹いた一陣の強風が宙を舞っている、あるいは地面に落ちた黒の残骸を掬い上げる。
そのまま風に運ばれたそれらは数十メートル先に陣取るカメラ男たちの下へと流れていった。
途端に男たちの間で、たった数センチ四方の布切れを巡って争奪戦が巻き起こる。

「離せ!これは俺んだ!」
「よっしゃゲットー!」
「こ、これがシュガーちゃんのストッキング……ハァハァ」

何も知らないものが見ればゴミクズにしか見えない布切れに男たちが争う。
そんな現実感のない光景に見入っていた菜々芭は数秒の後、ハッと息を呑んだ。
男たちが手に取っているのはつい先程まで自分の素肌に密着していた布地である。
そのことを理解した瞬間、言葉にできない嫌悪感と、それを塗りつぶすような羞恥心が小柄な少女を襲った。

「あ……いやぁ……そ、そんなの…ッ!」

力なく伸ばされた右手が何かを懇願するようにふらふらと宙をさまよう。
できるならば、数十枚に散った布切れ全てを取り戻したい。
だが、そんなことは到底不可能だ。
戦闘力を奪われ、裸に剥かれた今の自分は無力な小娘に過ぎない。
敵の気まぐれで生かされているだけで、相手がその気ならばもう既に殺されていてもおかしくはないのだ。

(だけど……だけど…!)

現状を正確に把握して、それでもなおシンフォニックシュガーの闘争心は衰えていなかった。
肌を晒すのは恥ずかしいし、できることなら穴を掘って埋まってしまいたい気分だ。
けれでも、今ここで諦めてしまったら市民たちを守る者がいなくなってしまう。
何よりも、ここで自分が負けを認めてしまったら莉々奈を誰が助けるというのだ。
誰よりも大切な親友、背中を預け、背中を守る彼女を見捨てることなどできない。
ここからでは様子はわからないが、莉々奈もきっと同じような状況のはず。
あの人を、助けないと―――!
羞恥と屈辱に震えていた身体に僅かながらも活力が戻ってくる。
しかし、そんな魔法戦士の想いを嘲笑うかのようにヘルメは奪い取った黒い生地を口元へと運んだ。

「どれ、味見を」

ねろぉ……ッ。

「あッ!?な、何をしているんですかッ!」

想像だにしていなかったその光景に、魔法戦士の少女は狼狽も露わに叫ぶ。
なんと、サラリーマンの中年に化けている上魔は菜々芭のストッキングの切れ端を舌で舐め始めたのだ。

「ふむ、汗の酸味と少女特有の香りがなんともいえませんね……少量とはいえ魔力も染み込んでいますし、美味」
「や、止めてくださいっ。そんな、そんなものを舐めるなんて……」

ヘルメが持っている切れ端は、股間を覆っていた部分だ。
上魔の下が踊るたび、まるで直接秘部を舐められているような錯覚に襲われる。
ゾクリとする寒気と、カッと湧き上がるような熱が同時に少女の背筋を駆け上っていく。

「グギャア…グウ…」

ヘルメに倣うように、下魔たちも次々と手にした布切れを舌の上に乗せる。
中には我慢しきれなくなったのか、くちゃくちゃと咀嚼をする者まで現れる始末だ。
異形たちの持つ切れ端も、股間近くやお尻を覆っていた部分。
まるで下半身を見えない舌で舐められているようだった。
あまりの恥辱に菜々芭は思わず顔を背けてしまう。
だが、逸らされた視線の先に映ったのは、魔物たちの真似をするように手にした切れ端を味わう人間の男たちの姿だった。

「な…ぁ……そんな、嘘……」

守るべき市民までもが低俗な下魔たちと同じ行動をとっていることに菜々芭は動揺した。
静寂の訪れた戦場に響く嚥下音が少女の耳を打ち続ける。
いっそ目を瞑って両手で耳を塞いでしまいたかった。
だが、ショックにわななく小さな肢体はピクリとも動かない。
一分ほど経っただろうか。
男たちが口を動かすのをやめた頃、ヘルメの呟くような詠唱で僅かに地面に残っていた切れ端が粒子になって消失した。
―――とくんッ

「は……ンッ」

両膝で股間を隠すようにぺたんと座り込んでいたシュガーの心臓が大きく跳ねる。
と同時に、身体の中心部からじわじわと波紋のように熱が広がり始めた。
先程、股間に息を吹きかけられていた時に感じた感覚。
くすぐったような、もどかしいような、それでいて心地よさを感じる甘い疼き。
性感という、敵から与えられるには忌むべき感覚が少女の身体の中で脈を打ち始めた。
トロリ……
未だ頑なに閉じたままの秘唇から、滲み出るように汗でも小水でもない透明な液体が零れ落ちる。
それは紛れもなく愛液だった。

「あ……い、いやっ……です、こんな…」

リリーと同じくエクスタシーの効果が表層に出始めたシュガーは自分の身体の変化に戸惑う。
ぎゅっと太ももを硬く閉じ、愛液が零れるのを防ごうとするものの、じわっと滲み出てくる恥ずかしい液体は止まらない。

「おやぁ、どうしたましたかそんなに足をモジモジさせて……おしっこでもしたいんですか」
「おし……ッ!そ、そんなわけありません!」
「ふぅむ、それじゃあ……」

言葉を切り、人間に化けた上魔が観察するような視線を少女の股間に向ける。

(き、気づかれた……!?)

足を閉じている以上、見えないとわかっていても視線を向けられるのは恥ずかしい。
菜々芭は胸に回していた手を片方下ろして股間のガードに回す。
だが、それでもなお魔物たちの視線は止むことはない。
それどころか、気がつけば周囲の男たちも視線やカメラを自分に固定して離していなかった。
両手で見られたくない場所は隠しているとはいえ、異性の視線はまるで焼け付くような力を持っているようだ。
剥きだしの肌がチリチリと焼けるように熱く、両手に覆われているはずの胸と股間にもその熱が伝播してくる。
そしてその熱は、身体の中を蕩かすように暴れまわり少女の肌を上気させていく。

「あ、熱い……いけない、私の身体……おかしく……」

熱の上昇と共に息が乱れ、鼓動が激しく跳ねる。
お腹の奥がきゅんと収縮し、胸と股間を切なくさせる。
もはや身体が淫蕩な性を感じ始めているのは明白だった。
しかし、裸に剥かれたシュガーにその感覚に対抗する術はない。
ただ一方的に身体の高まりを享受するだけだ。

「さて、このまま見ているのも乙なものですが……やはりこれだけの観客がいるのですからね」

ニヤニヤと薄笑いを浮かべながらヘルメが座り込んだ魔法戦士に近づいていく。
下魔はもう片方の戦線に送ったのか、その場にいるのは上魔ただ一体。
しかし、絶好のチャンスともいえるこの状況でもシュガーは動くことはできなかった。
両手を使えば裸を見られてしまう。
リンクを完全に切られてしまったため、戦闘力がまるで残っていない。
身体が気だるく、思うように動かせない。
色々な理由があげられるが、一番の理由はヘルメの手にある本を目にしたからだった。
一度だけ目にしたことがあるその本は、上魔の固有能力の元。
そして自分を恥辱の底に突き落とす、忌まわしき舞台劇の台本だったのだ。

「あ……そ、それは……ッ」

健気にも強気を保っていた魔法戦士の瞳が動揺に揺れる。
上魔ヘルメの特殊能力、それは手元の本を読むことによってその本の内容の通りの世界を作り出し、登場人物を操る能力だ。
莉々奈も、そして自分も一回ずつその能力の洗礼を受けているが、対処法はないといっていい。
万全の状態ならばまだ抵抗できるかもしれないが、今のシンフォニックシュガーはただの女の子と大差はない。
文章を読み上げられてしまえば、最早打つ手はなくなってしまうのだ。

『忌むべき敵に敗北した可憐な魔法戦士、シンフォニックシュガー。
彼女はその敗北の責任を感じ、応援してくれた者達への償いとして自らの恥ずかしい姿を彼らに見せ付けることを決意する』
「な……!」

上魔の朗読と共に、折りたたまれていた両脚が地面を踏みしめ、ゆっくりとその身体を直立させ始める。
やがて、ピンと背筋を伸ばして直立不動の体勢にさせられるシンフォニックシュガー。
菜々芭は、勝手に動いた両脚に狼狽する。
風景に変化はないようだが、ヘルメの能力が発動されたのは間違いない。
自由を奪われたのは今のところ下半身だけらしく、両腕は自由に動く。
故に、乙女の大切な部分は未だその細腕で隠されていた。

『シュガーは最も目立つ舞台へと足を向け、歩き始める』

読み上げられる文章通り、魔法戦士の足は前方へ向かって動き始めた。
できるだけ股を開かないように小股で歩こうと努力するのだが、完全に操られてしまっている両脚は主人の命令を聞かない。
両脚を交互に斜めに突き出し、腰を躍らせるような、いわゆるモデル歩きで少女は観衆の集まる方へと歩みを進めていく。

「うっ……く…ン!」

肘より先は未だ意志のもとに動くのだが、肩や腰といった部分は歩き始めてから自由が利かなくなった。
足の動きに合わせるように、クイックイッと肩を突き出すように上半身が動いてしまう。
そのたびに、左腕で覆われている小ぶりな乳房が儚げに揺れ、腕の間から零れてしまいそうになる。
下半身も同様に、足と腰が挑発的に動くたびに細腕から見せてはいけない部分がはみ出てしまいそうになっていた。

「お、おい。こっちにくるぞ?」
「近くで撮影するチャンスだけど……敵の奴も一緒に来るぜ」
「に、逃げたほうがいいんじゃ…」

自分たちに近づいてくる全裸の美少女戦士にどよめく観衆たち。
しかしその後ろから上魔も近づいてくるのを見ると、男たちの足は後ろに下がり始める。
いくら見た目がサラリーマンにしか見えなくても、彼は怪物たちのボス格だ。
流石の傍若無人なカメラ小僧たちも及び腰になってしまう。

「こらこら、折角の見世物だというのに観客が逃げてどうするのです―――かっ!」

ボガァン!
上魔の掌から放たれた魔力球が観衆のちょうど後ろに立っていた銅像を打ち砕く。
途端に人ごみに響く恐怖の悲鳴。
ただの人間である男たちは途端に足が竦み、その場を動けなくなってしまう。

「や、止めて下さい!彼らに、手を出さないで……ッ!」
「勿論ですとも。今のはただの威嚇、そしてステージの用意に過ぎません」

突然の暴挙に悲痛の声を上げる菜々芭。
だが、ヘルメはそれを意に介することもなく平然と呟くと、恐怖に震える男たちに友好的な笑みを向けた。

「安心したまえ、こちらに君たちを害するつもりはない。むしろいいものを見せてあげようというんだ」
「い、いいもの……?」
「そう、だから逃げずによぉく見てあげなさい。シンフォニックシュガーの恥ずかしい姿を、ね」
「だ、ダメです!皆さん、逃げてください!」

誘惑するような上魔の声と、真摯な魔法戦士の声が交互に観衆たちの耳に響く。
彼らの脳に染み入った声は前者のものだった。
逃げ腰になっていた男たちは、意を決したように再び手に持った撮影機器を構え、少女を捉える。

「そ、そんな……」

避難勧告を無視された形になったシュガーは目の前の光景に愕然とする。
だが、そんな少女の嘆きを他所に、魔法戦士は遂に観衆たちのエリアに足を踏み入れた。
人ごみを掻き分けるように、少女とサラリーマンは歩を進める。
美少女の大接近に、カメラ小僧たちはにわかに騒ぎ始めた。
ある者は上から胸の谷間を覗く様に、ある者は下から股間の柔らかな丘を捉えようと。
そしてまたある者は、後ろから剥きだしになっている可憐なお尻を激写しようとそれぞれレンズを固定していく。

「い、いやぁ……撮らないで、見ないでぇ……」

全周囲からの目に、シュガーは思わず目を伏せる。
しかし、操られた身体は容赦なく彼女の頭を上げ、目線が正面に向くように調整されてしまう。

「う……あう……」

見たくもないのに、自分に注目する男たちの姿が目に入ってくる。
大事な部分は隠しているというのに、それが慰めにもならないほどの羞恥が菜々芭を襲う。
まるで視線が刃となり、身体が切り刻まれているようだった。
切られた場所から痛みではなく、焼けるような熱が込み上げてくる。

身体の火照りからか、シュガーはぎゅっと両拳を握り締めた。
裸で夜風に晒されているというのに、汗がふつふつと浮かび上がってくるのを止められない。
ピンク色に上気した肌が艶を持ち、淫靡な衣装となって無垢な少女を彩っていく。
やがて、菜々芭は破壊された銅像が立っていた台座の上に登らされた。
高さは少女の身長と同じくらいだろうか。
周囲の者達よりも高い場所に上げられたシュガーは落ち着かない様子できょろきょろと周囲の様子を見回す。

「い、いや……こんなの……こんなところで、こんな格好……んはぁッ」

見下ろすような形になったことで、より一層男たちの視線を感じてしまった菜々芭はあまりの緊張に吐息を漏らす。
お立ち台の周囲を隙間なく陣取るように男たちが移動し、一斉に視線とレンズを向ける。
しゃがみこんでしまいたいが、やはり足は言うことを聞かない。
震える両手で身体を隠し続ける魔法戦士に、次なる文章が読み上げられた。

『皆に注目されているシュガーはその興奮から、自分の全てを見て欲しくなり、遂に……』
「ち、違うっ。私は、そんなこと思って……ううあっ」

上魔の魔力によって、胸を隠していた左手がゆっくりと動き始めた。
そろそろと横に滑るように外されていく細腕の下から、少女の膨らみが露出していく。
それでもなお抵抗を試みるシュガーは、指を肌に食い込ませんばかりに力を込める。
だがその健闘も虚しく、人差し指が乳首を弾くようにして右の柔房から離れてしまった。
押さえられていた右胸が解放の喜びにふるるんっと弾む。
そしてその余韻に浸る間もなく、残されていた左の乳房も僅かな抵抗と共に手の保護から離れ、異性の視線に晒されてしまう。

「き、きゃあっ!」
「おっぱい見えたー!」
「うは、ちっちゃいけど形はいいな」
「見ろよ、乳首ピンク色だぜ!それによく見ると勃ってるんじゃないか?」
「いやあ……」

男たちの囃し立てるような声に菜々芭は瞳を潤ませる。
完全に晒されてしまった76センチの胸は、小ぶりながらも女の子らしさを損なわず健気にその存在を主張していた。
莉々奈のそれと比べれば微乳といわれても仕方がない大きさだが、ボディラインを考えると少女にマッチしていて愛らしさを感じさせる。
その中央をちょこんと彩る二つのポッチは、鮮やかな桜色に染まりその身を固めて柔胸から飛び出していた。

「うあ……ッ」

胸を隠すという役目を終えた左腕が下乳に添えられると同時に、膝と腰がくっと曲がり始める。
右手は股間を覆ったまま、内股で顔を上げたままおじぎをするような体勢をとらされてしまう。
正面から見れば、左手が胸を持ち上げるような形で、後ろから見ればお尻が突き出されているような格好だった。
戦闘中とは違い、一瞬たりとも身体を隠すことができないシュガーはいやいやと頭を振る。

「こんなっ……胸、強調して……お尻を突き出すような格好だなんて…は、恥ずかしい……」

肩を縮めることで左腕に持ち上げられた胸に谷間ができ、柔らかく実った小ぶりな果実が重力に引かれて下を向く。
その先端では、乳首が異性の視線に怯えるようにヒクンとわなないている。
見えない後ろ側では、くいっと上側に突き出されたお尻がふりふりと男を誘うように揺れていた。
柔筋こそかろうじて手で隠されているものの、その奥にある恥ずかしい穴は尻たぶが外に揺れるごとにチラチラと覗いている。

「ああ……お願い、私の身体……止まってぇ……ッ」

自分の意思ではないのに、淫らに台座の上で恥ずかしいポーズをとってしまう小柄な肢体。
菜々芭は恥ずかしさのあまり零れそうな涙を必死で食い止める。
せめて精神だけは屈しまい、そう強く誓うものの恥辱のショーは未だ終わりが見えない。
周囲の男たちに満遍なく胸とお尻を披露したシュガーの裸体は、ゆっくりと壊れ物を扱うように腰を下ろしていく。
お尻が台座の上に接すると、ひんやりとした感触が少女を出迎えた。

「こ、今度は何を……ッ」

戸惑う魔法戦士の膝小僧がピクンと反応したかと思うと、閉じあわされていた膝がぐぐっと開き始めた。
リリーと違い、ソックスを穿いていないシュガーの足は足首に至るまでその白い肌を露出している。
肉付きこそリリーには及ばないが、すらりと美しく整った生足がぶるぶると震えながら外側へと開いていく。

「ン、ああ……!」

そうはさせじとおとがいを反らせて力むシンフォニックシュガー。
しかしその努力も上魔の能力の前では砂上の楼閣だった。
観衆を焦らすようにじわりじわりと開いていく少女の両脚が肩幅に達し、あっさりと限界近くまで開かれる。
いわゆるM字開脚の体勢にさせられてしまった菜々芭は、右手で隠された自分の股間に視線が集中をするのを感じ、赤面した。








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