特装風紀シズカ
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シチュエーション


林立するビル群の間に延びる高架を走り抜けて、ブルーメタリックに輝く長大な列車がホームに滑り込んでくる。
自動扉をくぐってホームに降り立つ人の群れはいずれも年若い少年少女ばかりだ。
その中に混じって下車した一人の少年が驚いたような、呆れたような口調で呟く。

「…ホントに大きな駅だなぁ……」

周囲の人間が迷う事無く駅舎へと進んでいく一方、少年は戸惑うように辺りを見回してばかりいる。
それもまあ、仕方のない話ではある。
彼がこの場所にやって来たのは今日が初めてなのだ。
さらに、付け加えるならば、この場所は少年が今まで見てきたいかなる土地とも違う特異な環境にある。
物珍しそうにホームとそこから見える周囲の景色を見ていた少年はふとある物に気付く。
それはこの駅の駅名を記したプレートだった。

「……『天輪学園中央駅』か……とんでもないスケールだよ、ホント……」

そこは日本最高にして最大の教育機関、私立天輪学園の中心部。
一つの都市にも匹敵する恐ろしく広大な敷地に、学生達の宿舎や各種の施設が立ち並ぶ超巨大学園だ。
今はまだ戸惑うばかりの少年の新しい生活はこの学園で始まろうとしていた。

「ふう…とりあえず、手続きはこれでお終い、かな?」

転入にまつわる諸々の手続きを少年、八峰コウタが済ませた頃には太陽は西の空に傾こうとしていた。
といっても、時間がかかってしまったのは、それらの手続きが煩雑で手間を要するようなものであった為ではない。
天輪学園においてはそういった手続きへの対応や、その他巨大な学園で学生教員達が暮らしていけるためのさまざまな仕事を生徒達が受け持っている。
アルバイトとしてそういった仕事にいそしむ者もいれば、所属する学科での実地授業の一つとして仕事をしている者もいる。
そして、彼らの自らの仕事への意識は総じて高い。
ただ、不慣れな場所でコウタが道に迷ってしまったり、ギュウギュウ詰めの鞄の中から書類を出すのに手間取ってしまったのだ。

「ともかく、これで僕も晴れて天輪学園の一員なわけだ」

後は宿舎の自分の部屋にたどり着き、彼が昨日まで暮らしていた孤児院から届いているであろう荷物の整理をするだけだ。

「まあ、どうやらソレが一番大変そうなんだけど……」

学業で優秀な成績を修め、奨学金・学費などにおいて格別の優遇を受けて学園に転校してきたコウタだったが、どうにも道に迷いやすいのが玉に瑕だった。
さきほど手続きを終えた窓口担当の学生から親切に宿舎までの道案内を聞かせてもらい、ついでにこの辺り一帯の地図まで貰ったのだけれど……。

「ああ……やっぱり、見栄を張らずに宿舎まで連れて行ってもらえば良かった……」

明日からは自分一人で授業の行われる校舎まで行かなければならないのだから、
人に頼っているようでは駄目だと考えての行動だったが、見事に裏目に出てしまった。
気が付けば、どこをどう通ったのか、西日が大きく長い影を落とす人気のない路地裏をさまよっていた。

「地図通り、言われた通りに来た筈………なら、こんな妙な場所にはいない筈だよね……」

ほんの2,30分前は人通りの多い道を歩いていただけに、目の前に延びる閑散とした道の眺めは余計にうら寂しく感じられた。

「早く誰か道を知っている人を見つけないと………」

すっかり怖気づいて、周囲をキョロキョロと見回しながら進むコウタ。
その時である。

「あれ?……何か聞こえた?……人の声?」

見知らぬ土地ですっかり迷子になった心細さも手伝って、コウタは声の聞こえた方に夢中になって走っていく。
だが、そんな精神状態であったが為に彼は気が付いていなかった。
聞こえてくるその声の様子がどこかおかしい事に……。

「……あっ……くぅん……うぁ…あ…助けて……誰かぁ……」

切れ切れの息に混じる、悲痛な響き。
だが、それが何であるかを理解するより早く、彼は出くわしてしまった。

「えっ……あっ……何、これ?」
「ん?何だ、てめえは?」

そこにいたのは、制服のブレザーをズタボロに引き裂かれて地面に横たわる少女。
そして、少女を見下ろして下卑た笑いを浮かべる不良が一人。
明らかな性犯罪の現場。
それだけでも驚くべき事態だったが、さらに異常だったのは少女に暴行を行う不良男の姿だ。

「てめえ…何を見てやがる?殺されてえか?」

突然の闖入者、コウタを睨みつける男の背中から、ウジュル、と数本の触手が伸びて少女に絡み付いていた。
何故か裸の上半身は異様に筋肉が隆起し、プロレスラーもかくやというほどの体格となっている。
何が何だかわからない。
だが、今ここにいる事がとてつもなく危険である事だけは理解できた。

「殺すぞ、つってんだよ!!」

おそらく、この言葉に偽りはあるまい。
ここにいれば確実に死ぬ、殺される。
だが、しかし……

「…お願い…助けて……」

ズタボロに陵辱された少女の声が、瞳が、コウタをその場に縛り付けた。

(あんなバケモノ相手に僕なんかがかなう訳ないのに……あはは、なんでだろ?)

コウタは両親を事故で失い、孤児院で育った。
彼の瞳には両親の死に様がまざまざと焼き付いている。
コウタを爆発から庇うための盾になって死んだ母。
全身に酷い火傷を負いながらも、足を怪我して歩けなくなったコウタを安全な場所まで運んでから息絶えた父。
コウタの胸の中には自分を守って命を失った両親の想いが未だ息づいていた。
それは寄る辺を失った少年の心を支える柱となった。
二人の死をただ嘆き悲しみ、そのまま押し潰されてしまえればどんなにか良かっただろう。
理不尽な運命を恨み、自分と家族の不幸を嘆いていられれば、どんなにか楽だったろう。
だが、コウタにはそれが出来なかった。
悲しみや嘆きよりも、理不尽と不幸に抗った両親への強い思いの方が勝ってしまう。
父と母を大好きだった気持ちが、心を覆う悲しみすらも追い払ってしまう。
そして、その思いは今この場においても、コウタを圧倒的な恐怖に打ち勝たせてしまう。

(これで死んだら……ゴメン、父さん、母さんっ!!!)

荷物をギュウギュウ詰めにしたバッグを振りかぶって、コウタは男に向かって突撃する。

「うああああああああっ!!!!」

男の顔面にバッグを思い切りぶつけると、僅かばかり男の上体が揺らぐ。
コウタはその隙に少女に手を伸ばし立ち上がらせる。

「逃げようっ!!」
「あ…はい……」

触手を強引に振り払って、コウタと少女は走り出す。
だが、しかし……

「待てよ、クソガキぃ!!!」

鞭のように振り下ろされた触手にコウタは背中を打ち据えられる。

「ぐあああっ!!!」
「舐めた真似してくれやがって……あのまま見ない振りして逃げ出してりゃ良かったものを……」

道路に転倒したコウタが振り返ると、ゆっくり、ゆっくりと男が迫ってくる所だった。
コウタはそこで、男が腰に奇妙なベルトをつけている事に気が付く。
何やら妙にバックル部が大きなそのベルトに、男は手を伸ばし

「もうタダじゃ済まさねぇ………変身っ!!!」

ベルトの腰の両サイド部分についていたレバーを左右同時に下ろし、叫んだ。
瞬間、ほとばしる紫電の中で男の体がみるみる巨大化していく。
それは次第に巨大な顎を持つ、体長5メートルには達しようかというトカゲのような姿へと変化する。

「バ…バケモノ……」
「何だぁ、知らねえのかぁ?これが今天輪学園を騒がしている噂のモンスターだ」

岩のような表皮と鋭い牙、背面の触手も無数の節を持つ硬く鋭い外殻に覆われ、その有様はまさに全身凶器。

「不良獣ギガサラマンダーっ!!!」

異形の怪物と成り果てた男、ギガサラマンダーはコウタ達との間に開いていた10メートル以上の距離を一足で踏み込んでくる。
そこからさらにその長い尾を横なぎに一振り、強烈な打撃によって周囲の建物の壁が粉々に砕け散る。

「いやぁあああああっ!!!」
「痛ぅ…ぐああああ…っ!!?」

ギガサラマンダーは怯える二人の叫び声を聞いて、口端を歪ませて不気味に笑う。

「世の中にゃ楯突いて良い相手とそうじゃない相手がいるって事だ。はしゃぎ過ぎたなぁ、クソガキぃ?」

ギガサラマンダーの触手がコウタの体を捕らえ、ギリギリと締め上げる。

「が…ああああああああっ!!!!」
「良い所で邪魔してくれやがったなぁ………死ねやぁああっ!!!!」

さらに数本の触手がコウタの四肢を拘束し、そのまま引き千切ろうとする。
まさにその瞬間だった。

「待ちなさい……」

透き通った声が路地裏の暗がりに響いた。
処刑の手を止めて、ギガサラマンダーはゆっくりと振り返る。
そこには西日を背負って立つ少女の姿があった。

「誰だ、てめえは?」

なびく長い黒髪と白磁の肌、知性の輝きを秘めた瞳は臆する事無く怪物を見据えている。
華奢な体を学園指定のブレザーで包み込み、腕に通した腕章には『風紀』の堂々たる二文字。
片手に携えた竹刀を怪物に向け、少女は名乗った。

「天輪学園風紀委員会所属、佐倉シズカ」
「風紀ねえ……あんたも俺の邪魔する気か?」
「そうね。学園の風紀を担う者として、貴方の蛮行、許すわけにはいかないわ……」
「おうおう、怖いねぇ。まあ、3Pってのも悪くねえか……さて、許さないつって俺をどうしてくれるわけだい?」

鋭い牙をむき出しにして笑うギガサラマンダーに対して、シズカは不敵に笑い……

「そうね…まずは……」

次の瞬間、地面を蹴って一気にギガサラマンダーの懐に飛び込む。

「なっ……!?」
「その男子、解放させてもらうわ……っ!!!」

シズカの放った竹刀の一閃はいとも簡単に怪物の頑強な触手を断ち切った。
触手から逃れ空中に放り出されたコウタの体をキャッチして、シズカはもう一人の陵辱を受けていた少女の前に降り立つ。

「あの……あ、あ、ありがとうございます……」
「こんな人気のない場所にやって来るなんて……学園の敷地内にも危険な場所があるって、風紀からのお知らせ読んでなかったの?」
「いえ…その……それはですね…」

まるで悪戯をしでかした子供を叱るように、コウタに対して注意の言葉を言ってから、シズカはギガサラマンダーに向き直る。

「ぐああ…くそっ……てめえええええええっ!!!!」

怒りにまかせて振るわれる怪物の豪腕。
だがしかし、シズカはたじろぐ事無くギガサラマンダーを睨みつけ

「今ので実力差はわかりそうなものなのに……どうしても、力ずくがお好みのようね…」

左の手首を体の前面にかざし、右腕を添える。
そこには透き通るクリスタルをはめ込まれた、腕時計のような装置が装着されていた。

「コードDF、起動っ!!!」

シズカの叫びと共に、クリスタルから溢れ出た凄まじい光が彼女を包み込む。
光の結界の中、彼女の衣服は燐光へと解けて消え、シズカの裸身が露となる。
光は彼女の体の各所に集い、それぞれに物理的な実体を結び始める。
はち切れんばかりの胸をまずは黒いボディスーツがピッチリと覆い、その上に純白の装甲がかぶさる。
同じくボディスーツに包まれた下肢をしなやかな曲面で構成されたアーマーが覆う。
腰周りは丈の短い真紅のスカートに覆われ、両肩に同じく赤い小ぶりなアーマーが装着され、両腕も装甲に覆われる。
頭部に装着されたヘッドギアからはクリアレッドのバイザーが顔を覆う。
そして、ギガサラマンダーの豪腕を受け止めて、シズカは叫ぶ。

「特装風紀シズカ、校則違反を取り締まらせてもらうわっ!!!」

強化服に身を包んだシズカはガッチリと掴み取った怪物の拳を自分の方に引き寄せ、カウンター気味のストレートをぶち込む。
強烈な一撃によって宙に浮いたギガサラマンダーの鳩尾に、さらに追い討ちの回し蹴り。

「ぐおっ…がああああああっ!!!」

怪物の巨体は面白いように吹き飛んで、そのまま強かに壁に激突する。

「レイ・シューターっ!!!!」

シズカはその隙に腰の両サイドのホルスターに納められた小型のレーザーガンを抜き放ち、両手に構えて次々と撃ち込む。
だが、頑強なギガサラマンダーの外皮には、雨あられのようなレーザーも決定的なダメージとはならない。

「糞アマがぁっ!!!調子に乗りやがってぇえええっ!!!!」

再び態勢を立て直し、ギガサラマンダーはシズカに向かって全力で突撃してくる。
しかし、シズカは冷静に敵の姿を見据えたまま、レイ・シューターを持った両腕を胸の前でクロスさせる。

「レイ・セイバーっっ!!!!」

シズカの叫びに応えるように、レイ・シューターのグリップ下部から光の刃が出現する。

シズカは逆手に持ったレイ・セイバーを構えて、前傾姿勢で前方に飛び出す。
高速で繰り出されるギガサラマンダーの巨大なツメの一撃をギリギリでかわし、光の双剣で岩石のような怪物の胸に斬りつける。

「ぎゃ…ひぃいいいいいいいっ!!!!」

激痛に悲鳴を上げたギガサラマンダーの胸には、巨大な×字の傷が刻まれていた。
シズカは光の刃を収めシューターモードに戻した二丁拳銃を前後で連結させ、怪物の胸の傷に押し当てて引き金を引く。

「レイ・ボルテック・シューターっっ!!!!!」

瞬間、ほとばしる光の奔流がギガサラマンダーを直撃する。
怪物の巨体はその威力に耐え切れず再び宙を舞い、無様に路面に叩き付けられた。

「な…なんなんだ……あの人は……!?」

圧倒的な強さで怪物を追い詰めるシズカの姿を呆然と見つめながら、コウタが呟く。

「…特装風紀……ホントにいたんだ……」

コウタの言葉に答えるように、ギガサラマンダーによる陵辱を受けていた少女が言った。

「特装風紀?……さっき、あのシズカさんって人も言ってたけど……」
「凶悪な不良獣に対抗する為に風紀委員会が技術科に依頼して強化服を作ったって噂があったの……だけど、実在するなんて思わなかった…」

不良獣なんていうバケモノに加えて、それと戦うために武装する風紀委員。
どうやらこの学園はコウタの想像していた以上にとんでもない世界のようだ。

「…これで終わってくれればいいけど……」

シズカは吹き飛ばされたギガサラマンダーを睨んで呟く。

「くっそ…痛てぇ……痛てえぞ…女ぁ……っ!!!」
「やっぱり、そう簡単にはいかないか………そこの君っ!!」

ゆっくりと立ち上がったギガサラマンダーの姿を確認して、シズカはコウタに話し掛けた。

「は、は、はい…なんですか!?」
「そろそろ動けるわよね?その娘を連れて逃げてほしいの…」

気が付けば、コウタが触手の締め付けで受けたダメージは、まだ痛みは残るもののいくらか楽になっていた。

「アイツは思った以上にタフみたいだから…二人でできるだけ安全な場所に避難して…」
「あなたはどうするんです?」
「さっきの戦いを見なかったの?多少厄介な相手だけど、遅れを取るような事はないわ」

コウタと少女の二人を気遣い微笑んだシズカに、コウタは強く肯く。
だが、ギガサラマンダーもやすやすとそれを許すつもりはないようだった。

「てめえ……この場から一人だって逃げられると思ってんのかよ?」
「その有様でよくそんな事が言えるわね。あなたの相手は私よ……」

再びレイ・シューターを構え、シズカはギガサラマンダーから少女とコウタを庇うように立ち塞がる。
いかな怪物が相手であろうと、そう簡単に背後の二人には手は出す事はできない。
シズカはそう確信していたのだが………

「ハハハッ…甘いぜぇ風紀委員さんっ!!!こういうのならどうだぁ!!?」

突如、ギガサラマンダーは背中から生やした十数本の触手を周囲の建物の壁に打ち込んだ。
コンクリートの壁に幾つもの穴が穿たれ、無数のひび割れが走る。

「な、何を……!?」
「こういうやり方もあるんだぜぇ!!!」

そしてギガサラマンダーは己が両の拳を左右の建物の壁に叩き付けた。

「ううりゃああああああああああああああっ!!!!!」

凄まじい衝撃がひび割れた壁面全体を揺るがす。
そしてそのダメージに耐え切れず、ついに壊れた壁の破片がコウタ達の頭上に落下し始める。

「そんでもって、コイツでどうだぁ!!!!」

さらにギガサラマンダーは崩れた壁の中から探り当てた鉄筋・鉄骨を強引に引き抜いた。
支えを失った壁の崩壊は加速し、さらに巨大な破片が降り注いでくる。

「うわあああああっ!!!!」
「危ないっ!!!」

コンクリートの雪崩に巻き込まれそうになったコウタと少女を見て、シズカは咄嗟に飛び出した。
二人の上に覆い被さって落下物に対する盾になろうとするシズカ。
だが、しかし………

「本当に予想通りに動きやがったなぁ……そぉれっ!!!!」
「しまった……っ!!?」

ギガサラマンダーの巨大なツメが彼女の体を捕らえた。
レイ・シューターで反撃しようとする彼女を、さらに触手の鞭で何度も打ち据える。
二丁拳銃は彼女の両手から弾き飛ばされ、身動きの取れないシズカはその攻撃を甘んじて受ける事しかできなくなる。

「せ…せめてあの二人を逃がすまでは……負けてられないのにぃ……」
「んん、その心配ならもう必要ないぜ?」

ギガサラマンダーの言葉に、さきほどコウタと少女がいた場所を見るシズカ。
そこには無数のコンクリート片に打ち据えられた無残な姿の二人が横たわっていた。

「そん…な……」
「というわけだ……それじゃあ、これからアンタには俺の楽しみを邪魔してくれた罰を受けてもらうぜ」

呆然とするシズカをギガサラマンダーは力任せに手近な建物の壁に打ち付ける。

「ひぃ…があああああっ!!!!」
「さあて、それじゃあ楽しませてくれよ、風紀委員さん……」

そしてギガサラマンダーはその巨大な顎を開き、悶絶するシズカをその口元に運んでいく。

「いただきます、ってか?」
「いや…やめて…いやぁああああああっ!!!!」

巨大な口の奥から飛び出した粘液塗れの触手がシズカの四肢を拘束する。
触手はそのまま彼女をギガサラマンダーの口腔内へと引きずり込んでいく。

「いや…こんなの…私……」

やがて触手に拘束されたまま、シズカの姿はギガサラマンダーの体内に消えた。
正義の武装風紀は凶悪な不良獣によって丸呑みにされてしまった。

むせ返るような、それでいてどこか理性を甘く蕩かすような、異様な臭いに包まれた空間。
上も下も、右も左も、てらてらと不気味に輝く肉によって閉ざされた牢獄に、シズカは捕らわれていた。
両手両脚は肉壁に埋まって、身動き一つ取る事ができない。
さらに彼女の全身を、粘液に塗れたいやらしい触手達が舐り回し、彼女の誇りでもある特装風紀の鎧を汚している。
ここはギガサラマンダーの体内。
一度は追い詰めた敵にまんまと裏をかかれ、シズカは怪物の虜となってしまったのだ。

「よう、どうだい気分は?」

その時、ギガサラマンダーの声が肉牢の中に響いた。

「あなた、一体私に何をしようっていうの!?」
「だからお楽しみつっただろ?アンタの体を骨の髄まで味わわせてもらうのさ……」

ギガサラマンダーの言葉に反応して、触手の内一本がシズカのボディスーツの上から秘所を撫でる。

「ひぃ…くぅ…や、やめなさいっ!!」
「おお、いい声出してくれるじゃないの。何、心配はいらねえさ。俺の体の中で犯されればどんな女も蕩けるような快楽を味わえるんだぜ」
「そんな……いやっ…あなたみたいな奴が相手なんて…絶対にいやっ……」

シズカは目前に迫った危機に怯え、肉の枷から逃れようとジタバタと手足を動かす。

「無理だぜ、風紀委員さん……俺の体内にただよっている空気、粘液はあんたの体力やその強化服のエネルギーを奪い、
ついでに媚薬効果で理性まで溶かしてあんたの精神力まで奪い去る……もう逃げられねえよ……」

確かに敵の言う通り、強化服の出力は下がり、体にも力が入らなくなっている。
さらには先ほどから触手に粘液を塗りつけられる度に、だんだんと体の奥が熱くなっていくように感じられる。

「さあ、あんたの全てをしゃぶってしゃぶり尽くして、抜け殻になっても犯し続けてぶっ殺してやるよ。覚悟はいいかい?」
「くっ…誰があなたなんかに負けるものですか」

精一杯強がるシズカだったが、その脳裏にふと不安がよぎる。
このまま自分が犯し殺されてしまえば、コンクリート片によって怪我を負ったコウタと少女はどうなってしまうのか?
恐怖と不安と後悔がない交ぜになって、シズカの心を惑わせる。

「さあて、いつまでそんな生意気を言っていられるのか、じっくりと見させてもらうぜ……」

ギガサラマンダーの言葉と共に、肉壁の隙間と隙間から、無数の触手が出現する。
そのどれもが今までの触手以上に大量の媚薬粘液を滴らせている。

「ひっ…い…いやぁ…くるなぁ……っ!!」

さまざまな軟体動物と男性の生殖器の醜悪な部分だけを融合させたような触手達にシズカは思わず悲鳴を上げてしまう。
しかし、触手達はお構いなしにシズカの体中のいたる所にその先端を押し付け、巻きつき、這いずり回って彼女を汚す。
太めの触手は頭の部分をぐいぐいと胸アーマーに押し付け、その内側で守られているシズカの豊かな両の乳房を少しでも圧迫しようとする。
太ももに巻きついた触手はマットなブラックのボディスーツをてらてらといやらしく輝く粘液で汚しながら這い上がってくる。
肉壁に腕を拘束され無防備にさらけ出された腋の下には極細の触手が殺到し、敏感なその場所にぞわぞわと絶え間なく刺激を与え続ける。

「くふっ…はぁ…あ…や…そんなとこ…やめてぇ……っ!!」

触手の与えるおぞましい刺激に、シズカは身を捩り悲鳴を上げる。
しかし、呼吸を一つするごとに体中に体中に染み込んで、ボディスーツの上からでも浸透して来ようとする媚薬成分が、次第に彼女を狂わせていく。

「フヒヒヒ、たまんねえな、これがあんたの味か……」

下卑た声で笑うギガサラマンダーの声が耳に届いて、シズカは悔しさに唇を噛む。

敵の言った通り、シズカの体力、強化服のエネルギーは粘液を媒介に徐々に吸収されているらしく、時間が経過するほどに体に力が入らなくなってくる。
そして、だんだんと朦朧としていく意識の隙間を突いて、触手の刺激が彼女の脳を侵していく。
極細の触手の何本かは装甲の隙間を見つけて、強引に胸部アーマーの内部へと侵入してくる。
媚薬成分が少しずつ効果を現しはじめ、その柔肉の芯の部分にねっとりと熱を帯び始めた彼女の双丘にゆっくりと巻きついていく。

「……っ!?…あっ……や…そこ…ぐにぐにしないでぇ…っ!!」

やがて乳房の先端部分にたどり着いた極細触手はアーマーの下で押さえつけられていたしこり立つ突起を見つける。
数本の極細触手はギリギリにまで神経の張り詰めたその二つの突起を様々な方向から突き、巻きつき、締め付けては引っ張る。

「くあぁ…やぁ…ちくび……そんなに…いじめないで…いやああああっ!!!」

まだ誰にも触れることを許した事のない乳房を蹂躙されて、シズカは悲痛な叫びを上げる。
いよいよ媚薬成分はその本領を発揮し始めたのか、燃えるように熱くなった双丘を極細触手が這う度に、シズカの頭の中は真っ白にスパークする。
先端部分への刺激は執拗でねちっこく、痛みを感じるほどに激しい刺激がシズカの背筋を震わせる。
胸アーマーの外部では相も変わらず太い触手達が先端部分を押し付けてきていたが、そこにある変化が生じる。

「あぁ…なんで……装甲の色が…変わって……」

純白のアーマーがいつの間にやら少しくすんだホワイトに変わり、その表面の光沢も失われていく。
そして、次の瞬間……

「えっ!?…そんな…いや…やめてぇえええええっ!!!!」

ピシリ。

劣化したプラスチックのように無残にひび割れて、胸部装甲の一部が砕け散った。

(強化服のエネルギーが奪われてるせいなの?)

呆然とするシズカの目の前で、ついに城壁を突破した触手達がアーマーの破損部分に殺到する。
そして触手達は瞬く間に装甲の傷口を広げ、ボディスーツに包まれた彼女の両乳房を引きずり出す。

「いや…やだ…そんな乱暴に…ひあああああっ!!!!」

戒めを解かれたシズカの双丘を触手達が思う様に蹂躙する。
その刺激は極細触手による責めなど比較にならないほどの激しさで、シズカはもう悲鳴を上げて翻弄され続ける事しかできない。
触手達によって乳房全体を滅茶苦茶に歪められ、先端部分には口を持った触手が吸い付く。
痛々しいほどにピンと張り詰めた突起は触手の口の中で繊毛状の微細な触手のブラシによって揉みくちゃにされる。

「…ひあ…やはぁああっ!!…だめっ!!…むね、それいじょ…は…私…おかしくなっちゃうぅ!!!!」

凄まじい刺激と快感の荒波に意識をかき乱され、シズカは長い黒髪を振り乱して泣き叫ぶ。
だが、彼女を襲う陵辱の嵐がこの程度のものである筈がなかった。
やがて、シズカは自分に起こったさらなる変化を目の当たりにする。

「ふぇ…あ……うそ?…強化服がぁ……」

先ほどの胸部アーマーと同じく、エネルギーを失ったためであろう、体中のいたる所で強化服の崩壊が始まっていた。
ボディスーツは伝線を起こしたストッキングのようにいくつもの場所で穴が開き、真っ赤なスカートも襤褸切れのような有様になっている。
装甲にも様々な場所にヒビが入り、刻一刻と朽ち果て、崩れ落ちていく。
そして、触手達はようやく見つけた突破口から侵入を開始し、シズカの柔肌をけがらわしい粘液で汚していく。

「ああ…だめっ!!…そんなのだめぇっ!!!そんなところ…入らないで…っあああああああ!!!!」

直接触手に触れられる部分が増えた事で、シズカの体に対する媚薬成分の浸透が一気に加速する。
体中が信じられないほどに熱く火照って、嫌悪感しか感じられないような触手の感触にシズカの体は快感の喜びに震えてしまう。

「は…ぁあ…ひぅ……や…いやぁ…も…こんな………んっ!!?…んんむぅ……んっ…んんっ!!!」

悲鳴を上げた口にも触手が強引にねじ込まれた。

何とか逃れようとするシズカの意思など無視して、触手は激しく前後にストロークを始める。
口腔内を無茶苦茶にかき混ぜられ、蹂躙される苦しみにシズカは涙を流して耐える。
そして、その前後運動が最も激しくなった瞬間、脈動と共に触手の先端から濃厚な粘液が放たれる。

「うむぅ…んぅ…かはっ…こんな…無理…ああっ…んっ……んんぅ…んぅううううっ!!!!」

触手の先端を吐き出し、粘液から逃れようとするシズカの口にもう一度強引に侵入して、濃厚な粘液をリットル単位で嚥下させる。
その全てを飲み干して、ようやく解放された時には、シズカの顔と、それを覆うクリアレッドのバイザーはべとべとの粘液に塗れてしまっていた。

「……うあ…ああっ……触手の…あんなにたくさん…のまされて……う…ああっ…体がっ…熱くっ……っ!!!」

シズカの飲まされた粘液はたちまちに効果を発揮し、体の内側から燃え上がる淫らな熱が彼女の全身を苛み始める。
「…ひゃぅうううっ!!!…ひっ…いやああ…やだ…からだ…へんに……くあああああっ!!!」
淫蕩の灼熱地獄の中で身悶えるシズカ。
既に溢れんばかりの愛蜜を滴らせ、ヒクヒクと物欲しげに震える彼女のアソコにも、ボディスーツの上から絶え間ない触手の刺激が襲い掛かっていた。

「やぁ…おしつけないで……そんな…つよくされたら……あ…うあああああっ!!!!」

ぐにぐにと女の子の大事な場所に先端部分を押し付ける触手の動き。
もはや限界近くに燃え上がった彼女の体はそれに耐える事ができず、刺激を受ける度にはしたない声を上げてしまう。
すでにボディスーツの隙間から侵入した極細触手は彼女の秘所の近くにまで到達し、敏感なその場所に今にも襲い掛かろうとしている。
シズカはなんとか触手を腰から振り払おうと体をくねらせていたが、その動きはいつの間にか触手の刺激を求める淫靡な腰使いへと変化してしまっていた。

(ああ……そんな…私…こんな奴に好きなようにされて……気持ちよくなってる……)

自らの心と体の変化に、シズカは絶望する。
一対一の真っ向勝負なら、引けを取る事など有り得ない相手だった筈なのに……。
いまや彼女のプライドはズタズタに引き裂かれ、抵抗の意思はだんだんと弱まり始めていた。
そして、そんなシズカをさらに追い詰めるべく、触手の責めは加熱していく。

「ひあっ…ああああああっ!!!!…やだ…入ってこないで……かきまぜないでぇえええっ!!!!」

ついにシズカのアソコに到達した極細触手達が蹂躙を開始する。
汚れを知らない秘裂をかき回し、溢れる蜜を存分に味わう。
そして、内外両面からの触手による攻撃によって、粘液はさらに浸透して、ついには彼女の秘所を覆うボディスーツまでもが破れてしまう。
ついに露になったシズカの秘所めがけて、触手達が襲い掛かる。
クリトリスに吸い付き、薄いピンクの花弁をめちゃくちゃに舐め回し、触手達はシズカを翻弄する。

「ひはぁ…ひゃ…ぐぅううっ!!!…ひや…こんなの…わたし…くるっちゃ……っ!!」

同様の強化服の崩壊はシズカの体の各所でさらに侵攻する。
赤い肩アーマーはついに無残に崩れ落ち、背中の装甲にもいくつものヒビが入り始める。
スカートはもはやその役を為さず、劣化して砕け散ったベルトと共にずるりとシズカの腰から落ちていく。
アーマーの下を守るボディスーツの破れ目は全身に広がり、そこから内部に侵入した触手によってその穴が広げられていく。
もはや、ほとんどのエネルギーを失った強化服にかつての面影はなく、シズカの乱れ姿を演出する淫らな衣装に成り下がっていた。
そして、彼女の両胸を覆うボディスーツはついに完全に剥ぎ取られ、眩しいばかりに白い双丘とピンクの突起が外気に晒される。

「あ……も…やめてぇ……」

震える声で哀願するシズカ。

しかし、触手達は残酷にも、新たなる責めで彼女を追い詰めようとする。
ぐねぐねと、シズカの頭上の方から姿を現した異様に太い二本の触手、その先端が花びらが開くように展開する。
その内側にはびっしりと細かな触手が生え、うねうねと不気味に蠢いている。

「ひ……いやぁ…」

その触手を見て、次に自分が何をされるのか本能的に悟ったシズカだが、今の彼女に逃げ場など存在しない。

二本の触手はゆっくりと彼女の震える両乳房に吸い付き、その内部に備えた無数の触手で弄び始める。
さんざん責められ続けて快感のためにほとんど痺れたようになっていたシズカの胸が触手の口の中で揉みくちゃにされる。
快感のマグマの中で、彼女の乳房はとろとろに蕩けて、それに従ってシズカの心の最後の砦もだんだんと崩壊していく。

「くぅ…うぁああっ!!…あ…おっぱいぃ…わたしのおっぱい……ぐちゃぐちゃの…どろどろにされてるのぉ……」

耐えなければならない、この怪物から逃れて瓦礫の下で横たわるコウタと少女を助けなければいけない。
だが、必死に自分の使命を言い聞かせても、媚薬と快楽の中で崩れていく彼女の体は言う事をきかない。
このままでは恐らく、コウタはギガサラマンダーに殺され、少女はシズカと同じように再び陵辱を受ける事となるだろう。

(…ごめんなさい…私…あなた達を助けられなかった……)








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