怪盗アクアメロディ 犯罪者塔亜風見
-1-
シチュエーション


「……っ!?」

ウインドルを手に入れてから一週間後。
学校から帰宅した美音は微かな違和感に立ち止まる。
目の前にはいつもと変わらない自宅の姿。
だが、美音は外見からでは判断できない異常を感じ取っていた。

「カギが…!?」

確かに出かける前は施錠したはずのドアの鍵が開いていた。
まさか泥棒!?と美音は驚愕と怒りを覚える。
怪盗である自分の家に泥棒が入ったかもしれないという事実がアクアメロディのプライドを傷つけたのだ。
人の気配がないことを確認し、美音は家の中を見回る。

「…な、何これ」

その光景を見た美音は呆然とした表情で呟いた。
ありとあらゆる部屋が乱雑に散らかされていた。
タンスや引き出しは一つ残らず中身をだされ、床は足の踏み場もない。
当然、美音の部屋も例外ではない。
色とりどりのパンティやブラジャーが床に散乱しているのを見て美音はふつふつと湧き上がる怒りを感じる。

「許さない…!」

まだ見ぬ犯人に向けて怒りを燃やす美音。
だが、ふと思う。
これはただの物盗りの泥棒の仕業なのかと。
何故ならば、見た限りでは何も盗まれていないのだ。

(もしかして…!)

美音がその可能性に思い至ったその時。
彼女の背後でゆらりと人影が動いた。

「え…!?」

その気配に気がついた瞬間、美音は勢いよく床に押し倒されていた。
衝撃に下着がぶわっと舞い上がる。
だが、美音はそんなことを気にしている暇はなかった。
状況を把握する前にガッチリと四肢を拘束されてしまったからだ。

「は、離して……っ!そんな…人の気配はなかったのに……あ、あなたは!?」
「ふひ、ふひひひひ…」

拘束から逃れようともがく美音の目にありえない顔が映った。
美音を押さえつけている犯人。
それは現在牢屋にいるはずの犯罪者塔亜風見だったのである。

「な、何故あなたが…」
「ジュエルは…エレメントジュエルは…どこだぁぁぁ!?」
「くっ…」

問いを無視し、異常なほどギラついた目で自分を見下ろす風見に美音は自分の推測が当たっていたことを確信する。
この惨状はただの物取りの仕業ではなく、エレメントジュエルを狙った者の仕業だということを。
なんとか脱出しようと暴れる美音だが、男の力には敵わない。
しかも現在美音は学生服のため武器になるようなものは携帯していないのだ。

(だけど…どうしてここが!?)

美音は混乱した。
牢屋にいるはずの風見がここにいるのは勿論のことだが。
何故風見は自分の家を知っているのかわからなかったのだ。
確かに、風見は美音の顔を見ている。
だが、その後すぐに逮捕された以上彼が美音の情報を集めるのは不可能なはず。

「どこに…どこに隠したぁぁぁ!?」
「きゃっ…な、何を…や、やめなさい!」

美音にそれ以上思考する暇は与えられなかった。
正気を失っているとしか思えない風見が美音の制服を脱がしにかかったのである。

ビリッ!ビリリリッ!
布の裂ける音が美音の部屋に響く。
それは風見が力任せに美音の制服を破り捨てている音だった。

「い、いやっ」
「ここにもない…ならば、全て調べるまでぇぇぇ!!」
「なっ、あっ、い、いやぁぁぁっ!」

男の怒声と少女の悲鳴が交差する。
美音は懸命に抵抗を試みるも、上をとられている状態では満足な抵抗はできない。
前回の時のような巴投げは風見が激しく動いているため状況的には無理だった。
美音の背中に冷たい汗が滴る。

「ああっ、きゃああっ!」

抵抗虚しく美音の下着姿が暴き出される。
その瞬間、僅かな隙が風見に生まれた。
素早く身を翻し逃げ出そうと試みる美音。
だが、風見の動きは更に素早かった。
逃げ出そうとした美音を後から羽交い絞めにすると残る二枚の下着をもその身体から剥がそうと動き始めたのである。

「ここかぁぁぁ!!」
「や、やめっ…放して、放しなさいってばぁ!」

ぐいぐいと下着を中心に二人の綱引きが始まる。
しかし力の差は歴然だった。
美音のブラジャーとパンティは本来の位置からずれ、守っていた中身を徐々に露出していく。
ブラからは乳首が、パンティからはふわっとした茂みと共に秘丘がチラリと覗いた。

「いやっ…だめぇぇっ!」

あまりの事態に美音が涙目になる。
だが、容赦のない風見の暴虐はついに美音の防御を突破した。
ブチン!という音と共にその魅力的な肢体から二枚の下着が引き千切られる。
ぷるるんっ!
衝撃でおっぱいと尻が柔らかそうに弾んだ。

「あっ!」

下着が取られた勢いで美音の身体は転倒し、部屋の壁へと突っ込む。
そして少女の裸が風見の目にさらされた。

「っっっ!!」

壁との激突のショックで足を大きく開いていた美音は慌てて小さくうずくまり、男の視線から己の身体を守った。
その身体はわなわなと振るえ、少女の羞恥と怒りを言葉の代わりにあらわしている。
しかし、風見はそんな美音にそれ以上襲い掛かるわけでもなく呆然と立ちすくんでいた。

「ない…何故だ?」
「…?」
「どこに…どこに隠したんだ?教えろ…教えろ…でないと、俺は、俺は…」

ぶつぶつと独り言を言ったかと思えば、風見は再びゆらりと動き出した。
その様子は先程までの異常さに比べればまともだったといえる。
だが、美音にはわかった。
風見は追い詰められているのだ。
現実として美音を追い詰めているのは風見のほうなのだが、彼は別の誰かに怯えているのだと。

「がぁぁぁ!!」
「あ…あうっ!」

咆哮した風見が意を決したかのように美音に襲い掛かった。
不意をつかれた美音はその動きに対処できない。
あっという間に再度組み伏せられる美音。

「こうなったら…身体に聞くまでだ…!」
「え…!?」

じぃぃぃ…と風見は自分のズボンのチャックを開いていく。
すると、その中から一本のそそりたった肉棒が現れた。
それを見た美音は固まる。
知識としては知っていたが、男の性器を見たのは初めてだったのだ。
だが、風見は美音の驚愕などおかまいなしに己の望みをかなえるべく動いた。
風見の両手が美音の両膝を掴む。
その行動で風見の目的が理解できた美音は真っ青な表情になった。

「うがぁぁぁ!!」
「いっいやぁっ!?」

美音の足を大股開きにするべく風見の両手に力が込められる。
美音も必死だが、鬼気迫る勢いの風見の力には到底敵わなかった。
徐々に美音の膝が開き、彼女の大事な部分が露になっていく。
と同時に風見の一物がそこへ向かって一気に突き出される。

「あ…ああっ…!」

間近に迫る処女散花に怯える美音。
だが、風見の勢いは止まらない。
ついに美音の足は完全に開かれ、風見の邪魔をするものは何もなくなった。
ず…と処女穴に入り込んでいく肉棒。
美音は恐怖に目を閉じた。
そして次に来る痛みを覚悟し――――その痛みはやってこなかった。
何故か、風見の動きが止まっていたのだ。

「が……ぁ…」

ぐりん、と眼球を回し白目になると風見は先程までの勢いが嘘のようにパッタリと倒れる。
美音は呆然とその様子を見守っていた。

「たす…かっ…た?」

風見はピクリとも動かない。
そして美音はようやく危機が去ったことを理解した。
安堵からか、美音は自らの身体を隠すことすら忘れてへたり込む。
だが、彼女は知らない。
彼女にとっての本当の危機はすぐ傍に迫っていたということを。





『次のニュースです。アクアメロディから予告状が届きました!』

「一体、どういうつもりなの…?」

怪訝な表情を浮かべながら、アクアメロディの仮面と衣装を身に纏った美音は呟いた。
身に覚えのない予告状。
それがテレビで放送されていたのだ。

「しかも場所が塔亜邸…あからさますぎる罠よね」

先日と同じく、塔亜邸近くのビルの屋上から美音は警備状況を盗み見ていた。
前回とはまるで逆に、庭に人の気配はなく、邸宅周辺にチラホラと警察官らしき人影が見えるくらいだ。
この件の指揮を取っているのが夜暗警視だというのならばお粗末極まりないずさんすぎる警備配置である。
あの後、美音は気絶した風見を厳重に縛って物置に監禁した。
最初は警察に突き出そうかと考えていたが、そうなると説明が難しい。
警察署の前にでも運び捨てようか…そう考えていたところでのニュースだったのだ。

「梶夜暗…何を考えているの?」

今まで全く情報の掴めなかったなかったダークが一度押し入った塔亜邸にあるなど常識で考えれば罠でしかありえない。
そして、そうなるとその罠をはったのは夜暗しかいない。

(それに…)

美音にはもう一つ気にかかることがあった。
それは今も物置で眠り続けているであろう風見のことだ。
何故彼は自分の家を知ることができたのか。
これは捨て置けない問題だった。
この件はアクアメロディの今後の進退に関わってくる。
はたして、美音のことを知っているのは風見だけなのか。
それとも、協力者がいて今も虎視眈々と美音の持つエレメントジュエルを狙っているのか。

(…ううん、今はそんなことを考えている場合じゃない)

ぶんぶんと首を振って雑念を振り払う美音。
そのことについては考えることは後でもできる。
今は、最後のエレメントジュエルを確保することだけを考える…!

「はっ!」

美音はふわりと跳躍するとハンググライダーを背中に装着し、塔亜邸へと侵入を開始するのだった。
…自分の運命が決まってしまったことを知ることもなく。

「どういうつもりですか、警視!」

その頃、怪盗捕縛チーム班長小銭警部は憤っていた。
いくら警視といえどもただ一人の若造に指揮を取られるのは彼にとって愉快なことではなかった。
だが、警察において階級は絶対である。
だからこそ彼は表面上は大人しく夜暗の指示に従ってきたのだが。

「どういうつもりとは?」
「警備配置のことです!確かに下手な分散はアクアメロディの思う壺ですが、警備の大半をこの部屋に集めるなんて!」
「戦力の集中は基本だ」

この坊ちゃんは正気か!?催涙ガスや睡眠ガスを打ち込まれたら一巻の終わりだというのに!
小銭警部はめまいがした。
現場からのたたき上げの警視というからどんなものかと期待していたというのに、なんという稚拙な対応。
いや、そもそもこの男は最初から怪しいところが多かった。
まず、今まで見つからなかったはずのダークが塔亜家にあるという情報を持ってきた時点でおかしかったし、
実際にダークがあったことは更におかしいのだ。
背後に鎮座しているダークを横目で確認しつつ疑惑の視線を向ける小銭。
だが、夜暗はそんな視線をまるで気にすることなく微笑んだ。

「ご心配なく、準備は万全です」
「…だと、いいのですがな」

諦めと共に溜息をつく。
こうなったら自分ひとりでも頑張るしかない。
そう決意した小銭の鼻に僅かな異臭が届く。

「ん、なんだこの匂い……むっ!?」

途端にばたばたと倒れ始める警備人員。
自身にも眠気が襲ってきたところで小銭は理解した。
自分が懸念していた通り睡眠ガスを使われてしまったのだと。

「…こ…のバカモノ…が…」

襲い来る眠気にあがらうこともできずどさりと倒れこんでいく小銭。
彼が最後に考えたことは、夜暗への侮蔑と。
何故かただ一人平気な顔で立っているの上司への疑問だった。

「さあ…やってこい、アクアメロディ」

ニヤリ、とガスの中で一人笑う夜暗。
その背後では不気味にダークが光り輝いていた。

バァン!

勢いよく開かれるドア。
同時に睡眠ガスがそこから逃げ場を求めるように拡散していく。
ガスが部屋から抜けきった頃、ドアから一つの影が現れた。
その影は言うまでもなく、怪盗アクアメロディだった。

「ようこそ、怪盗アクアメロディ!」

風見の時と同じジェスチャーで怪盗少女を出迎える夜暗。
彼は十数人の男が眠りに倒れこんでいる中、ただ一人余裕を持ってダークの前に立っていた。

「あなた…何者?」

美音は警戒レベルを最大にして夜暗を睨む。
他の人員を見る限り、睡眠ガスは間違いなく効果を発揮しているはず。
にもかかわらず夜暗に眠る気配はない。
ガスマスクを被っていたというわけでもない彼が平然と立っているのは異常以外の何者でもないのだ。

「梶夜暗…いや、お前には塔亜夜暗といったほうがいいか。そしてダークの持ち主はこの俺だ」
「塔亜!?それって…」
「そう、風見は俺の実の弟さ…まあ俺は一族から追放されたんで繋がりは血しかないがな」
「…まさか、風見を逃がしたのは」
「ご名答、風見を逃がしたのはこの俺だ。まあこうしてお前がここにいるということはアイツは失敗したということか」
「あなたの目的は一体何!?」
「平穏さ」
「な…」
「そして平穏を守るためには力が要る。過分な望みはなくても、力があって困るということはない」

ニヤリ、と弟そっくりに笑う夜暗の表情に嘘はなかった。
しかし美音はその答えに戸惑う。
エレメントジュエルは六つ全部を集めれば一国を支配することも可能な力を秘めている。
にも関わらずこの欲のなさ。
いや、これ以上ない欲深さに美音は戦慄した。

「それだけのために、こんなことをっ」
「こんなこと?確かに犯罪者である弟を解き放ったのは罪かもしれんが、それだけだ。
警察官として正義に励み、日々を平穏に生きる…ただそれだけの俺に何の罪があると?」
「エレメントジュエルは…危険なものなのよ!」
「いかな兵器とて使いよう…そうだろう?」

「…これ以上問答をしても平行線ね」
「そうだな、全く残念なことだ」
「最後のエレメントジュエル、渡してもらうわ」
「できるものなら」

ぶわ、と夜暗から黒いもやもやのようなオーラが放たれる。
そのあまりの禍々しさに一歩後ずさる美音。
と、その瞬間。
美音の足が何者かに掴まれた。

「えっ!?」

思わず目線を下に向ける美音。
自分の足を掴んでいるのは眠り込んでいたはずの警官の一人だった。

「――はあっ!」

美音は反射的に男の顔に蹴りを打ち込む。
だが、常人ならば失神確実の蹴りを受けたにも関わらず男は意に介さず美音の足を拘束していく。
驚きに目を見開く。
しかしそれは致命的な隙だった。

「あっ…!」

ガシッ!ガシッ!ガシッ!
眠っていたはずの警官たちが次々と身体を起こして一瞬のうちに美音の四肢を拘束していく。

「なっ、は、放してっ…」
「おやおや、大人気だなアクアメロディ」
「こ、これはっ…」
「これが我がダークの能力…その男どもは俺の操り人形だ。こいつらを眠らせてくれて助かったよ、おかげで随分と制御が簡単だ」
「そんな…!」
「正直、お前を捕まえるだけなら俺一人で十分だったのだがな。折角なのでこいつらには協力をしてもらおう」
「くっ…」

暴れる美音だが、大の男が数人がかりで少女の身体を拘束しているのだ。
当然拘束が解けるはずもない。
夜暗は巣にかかった蝶を見る蜘蛛のようにゆっくりと獲物の元へと近づいていく。

「いいザマだな、アクアメロディ。これが警察を散々梃子摺らせた怪盗だと思うと一警察官として歓喜の念がたえないな」
「こ、このっ…」
「しかし流石は特別チームの猛者たちだ。あのバカとは比べ物にならないほど使えるな」
「…あのバカ?」
「風見だよ。奴は操り人形にしたのはいいが時間の都合もあり半端に自我が残ってしまっていたのでね、迷惑をかけただろう?」
(風見まで…!?そうか…だから彼には気配がなく、あんなに様子がおかしかったのね…)
「まあ特に期待していたわけでもなし。それに、こうしてお前は俺の目の前にいるのだしな」

「私を…どうするつもり…!」
「エレメントジュエルのありかを教えてくれればすぐにでも解放してもいいが」
「お断りよ!」
「そういうと思ったよ…」

夜暗はゆっくりと美音の身体へと手を伸ばす。
男の接近にビクッと身体を振るわせる美音。
だが、夜暗は美音の鳩尾あたりに指を一本軽く触れさせただけだった。
ボウ、と夜暗の指先が光る。

「…何を?」
「何、お前が素直に俺の言うことを聞くようになるちょっとしたおまじないだ」

パチンと夜暗が指を鳴らすと美音を拘束していた男たちが一斉に離れていく。

(チャン……!)

千載一遇のチャンスとばかりに夜暗へ飛び掛ろうとし、美音は愕然とした。
足が石化したかのようにピクリとも動かなかったのだ。
いや、それどころではない。
首から上を除いた全ての部分が金縛りにあったように動かなくなってしまったのである。

「ど、どうして…」
「言っただろう、このダークの能力のことは?」
「まさか…」
「そうだ、お前はすでに俺の操り人形だ。もっとも、首から上は自由だがな」

呆然とする美音を余所に夜暗は再びパチンと指を鳴らした。
すると、美音の手が自分の意思に関わらず動き始め、武装を解除していく。
手に持っていたスタンガンも、隠し持っていた武器も、その全てが美音自身の手によって床に落ちていった。

「あっ…」
「これでわかっただろう?もはやお前に勝ち目はない」
「……」
「ほう、だんまりか。その胆力は買うが、沈黙を貫けば貫くほど後が酷いことになるぞ?」
「何かしたいのならっ……すればいいじゃない!」
「威勢のいいことだ。だが、意志の強さか、それともお前の持っているジュエルの影響か…意識を乗っ取れないとはな」
「…私はあなたなんかには負けない!」
「ふん…そんなことをいえるのも今のうちだ。要はお前の口から喋ってもらえばいいだけの話だからな」

パチン、と夜暗の指がなる。

「お前が素直になるように少々恥ずかしい目にあってもらうとしよう…そうだな、まずはストリップでもしてもらおうか」

夜音の命令に従い、美音の手はゆっくりとスカートへ向かいはじめた。

「手が…勝手に!?」

自分の意思に逆らい勝手に動く己の両手に戸惑う美音。
毎日服の着脱をこなしている手はあっさりとスカートを腰から外してしまう。
手からはなれたミニのスカートは重力に負け、ひらっと床へ落ちた。
すぐさま上着が下着の露出を防ぐ役目を受け継ぐ。
だが、元々そういう機能があるわけではない衣装は裾からチラチラと少女の最も大切な場所を覆う布を見え隠れさせる。

「きゃっ…あっ…やめっ…」

剥きだしになった足に狼狽する美音だが、続けざまに上着に伸びた手は勿論止まらない。
交差した両手が上着の裾を掴む。
そして持ち上がっていく手。
上着にかろうじて隠れていた美音のパンティが露出し、続いて可愛らしいおへそがほっそりとしたお腹と共に晒されていく。

「と、とまっ…」

必死に手を止めようとあがく美音。
だが無情にも手は全く止まる気配を見せない。
豊かな胸を保護するブラジャーが顔を見せたかと思うと、怪盗少女の衣装はあっという間に首から抜きさられてしまう。
ふぁさ…と脱がされた布地はやはり手から滑り落ちるように床へと落ちていく。

「くく…良い格好になったじゃないか」

ジロリ、と舐めるように自分を見る夜暗の視線に美音は思わずを目をそむけてしまう。
美音の身体に残されているのは下着二枚に手袋とブーツ、ニーソックス。
そして彼女の正体を隠すアイマスク型の仮面だけとなった。

「く…う…」
「ほう、なかなか大人っぽいデザインの下着を着けているじゃないか」

衣装の下から現れた二枚のディープブルーカラーの下着はおそろいで、デザインは夜暗の言うとおりアダルティさを纏っていた。
セクシーともいえるその下着は美音にとってはいわゆる勝負下着だった。
これで最後だから、というのと先日風見にバカにされたからという理由で身につけていたものだったが
勿論それはこのように男の目に晒すためではなかったため、少女の心には悔しさが広がる。
手は後に回され、胸を張るような格好を取らされた美音は羞恥に震えながらも反撃の機会を窺う。
だが、身体は一向に自分の意思では動いてくれなかった。

「どうだ?自分の身体が己の意思で動かないというのは屈辱だろう?」
「自分の手を下さず…人を操って…臆病者なのね!」
「ほう、まだそんなクチを叩けるのか?まあ獲物の活きがいいのはこちらとしても望むところだ」

口元を僅かに持ち上げた夜暗は美音の挑発に反応することなく右手を上げる。
そして鳴らされる指。
美音の手は、ついにブラジャーへと伸び始めた。

「あっ…!」

背中へと回された手はブラのホックを的確にとらえた。
汗ににじんだ手は手馴れた様子でホックを外しにかかる。
そして…ぷつん、と音を立てていましめが解放された。

「!」

ぷるるっ
締め付けからの開放感にDカップのおっぱいが嬉しそうに弾む。
だが、その胸にはまだブラジャーが残っていた。
ブラジャーは乳首にかろうじて引っかかり、落下を免れていたのである。

「ああっ…」

悲痛な声で「落ちないで」と願う美音。
しかし、乳首に引っかかっている程度では美音のマスクメロンのような胸を覆うブラジャーの重量を支え続けるなどできはなしない。
はらり…
放れ際に桜色の小さな乳首を弾き、胸を覆っていた下着は衣装と同じく床へと落ちる。
外気に晒された胸は羞恥と哀憫に乳首ごとふるんっと一揺れした。

「くく、でかいおっぱいだな?普段はそれで男を誘惑しているのか?」
「ち、違う!私はそんな…」
「男を誘惑するための生まれたような身体だよ…女は抱き飽きているが、久々に食指が動くな…」

夜暗の揶揄にかあっと美音の頬が染まる。
首筋まで広がった赤みはもう少しで胸に届こうかといったところだ。

「全く、俺一人で独占するのが勿体無くなってきたな。どうだ?こいつらを起こして観客を増やしてやろうか?」
「な……!」

夜暗の提案に美音の心臓がドクンッと一段高く跳ねた。
今現在、美音と夜暗の周りには二人を四方から囲むような形で怪盗捕縛チームの面々が立っている。
彼らは眠ったままの状態で操られているため意識はない。
だが、意識はないといえども男の集団が周りに存在しているというだけで美音の心はざわざわと落ち着かない。
なのに、この上彼らが目を覚ましてしまえば数十の意識ある目が自分の恥ずかしい姿をとらえることになるのだ。

「ははは…顔色が変わったな?」
「…そ、そんな……そんなこと…」
「くくっ…冗談だ。そうしてもいいのだが、まだこいつらにはダークの力が完全に定着していないんでな」
「ぁ…」
「ほっとしたか?くくっ、正義の怪盗といっても所詮は小娘か。名が泣くな…怪盗アクアメロディ、いや、水無月美音」
「え…!?」

いきなり告げられた自分の名に動揺する美音。
何故それを…!?
混乱する美音を無視し、夜暗は一枚の書類を懐から取り出した。

「水無月美音、十七歳。私立海籐高校二年。委員会や部活動には無所属。両親は共に死去し、親戚もいないため現在は天涯孤独の身で一人暮らしをしている」
「…!」
「身長は162cm。スリーサイズは上から89・57・85。胸のカップはD……くくく、どうしてって顔だな?」

調べつくされている自分のデータに呆然とする美音を余所に夜暗は押し殺したような笑いを漏らす。

「何、簡単なことだ…お前が風見と戦った一週間前のあの夜。俺もこの屋敷にいた」
「な…!?」
「気がつかなかったようだが、あの部屋には隠しカメラが設置されていた。俺は隠し部屋からそれを眺めていただけだがね」
「じゃ、じゃあ…」
「一部始終は全て見ていたよ。勿論、お前の素顔もな…」

その言葉に美音の顔が真っ青に染まった。
警察に正体を知られたということの意味がわかっているからだ。

「早とちりしているところを悪いが、安心しろ。この情報を握っているのは俺だけだ」
「え?」
「このデータは俺の独自の情報網を使って調べたものだ。風見は…ああなってしまったしな」

夜暗は自分がやったことなのにも関わらず、弟の末路を笑う。
だが、美音はそんな彼に怒りを感じることはなかった。
というよりも風見のことは耳に届いていなかった。
何故ならば彼女の思考は前半部、つまり正体を知っているのが目の前の男だけだということに集中していたのだから。

「さて、お喋りはここまでにしようじゃないか、水無月美音」
「わ、私はアクアメロディよ!そんな名前じゃない!」
「この後の及んで否定するか。なんならその仮面を剥がしてもいいんだぞ?」
「っ……」

服を剥かれることも御免被るが、仮面を剥がされるというのは美音にとってそれ以上の禁忌だった。
元々、水無月美音という少女はごく普通の少女である。
一人で富豪や警察に立ち向かうことも、こうして辱められることも本来の彼女ならとても耐えられない。
だが、それを可能にしているのがアクアメロディの仮面だった。
仮面をつけることでアクアメロディという別人になり、水無月美音としての自分を隠す。
美音にとって、仮面とは自分を振るい立たせる勇気。
そして支えなのだ。
それが奪われる…これ以上の恐怖は美音にはなかった。

「選ばせてやる。仮面か、最後の一枚か…脱がされたいほうを選べ」
「えっ!?」
「聞こえなかったのか?素顔を見せるか、素っ裸になるか、選べといったんだ」
「そ、そんな…」

残酷な二択を突きつけられた美音の思考が固まる。
前者を選べば美音はアクアメロディではなく水無月美音という一人の少女でしかなくなってしまう。
後者を選べば男の前で最も見られたくない部分を晒すことになってしまう。
どちらも選べない、選びたくはない。

「黙っているという回答は認めん。それとも…両方ともか?」
「ま、待って!………し、下着のほうを」
「声が小さいぞ?脱がして欲しいほうを脱がしてくださいとハッキリと言え」
「し、下着を!パンティを…脱がして、ください」

あまりの恥辱にふるふると美音の身体が震える。
顔は真っ赤に染まり、目線を伏せて俯くことしかできない。
だが、美音にはそう答えるしかなかった。
素顔だけは…仮面だけは外されるわけにはいかなかったのだ。

「はっはっは!良い表情だ…いいぞ、その顔はそそられる…」
「ううっ…」

鳴らされた指に美音は絶望を感じた。
ゆっくりと動き出す自分の手。
だが、普段は自分の意志で動くはずのその手はやはり彼女の命令を聞くことはない。
パンティの両サイドに手がかかる。
するっ…するるっ…
焦らすように、美音を追い込むように夜暗はことさらゆっくりと手を下降させる。

(お、お願い、止まって、それ以上動かないで…!)

徐々に腰から離れていく下着の感覚に美音の精神は追い詰められていく。
既に怪盗少女の全身は汗でぐっしょりだった。
部屋の光に照らされて玉のような汗がきらりと輝く。

「見えてきたな…」

美音のパンティはもはや彼女の大事な部分を隠すだけの位置まで降りていた
丸みを帯びたヒップの割れ目が覗く。
前からは徐々に黒ずんだ影が露出し始めた。

「いやっ……!」

ふわり、と美音の秘丘を覆う繊細な茂みが空気に晒され立ち上がる。
そして、その下からピタッと頑なに入り口を閉じた一筋のふっくらと膨らんだ処女部がついに姿をあらわした。

するり

美音の足からパンティが抜き取られていく。
これで美音の身体を隠すものは仮面と手袋、そしてブーツとニーソックスだけとなった。

「ほほう…!」

夜暗は思わず身を乗り出した。
それほど美音の曝け出された裸体は魅力的だったのだ。
すらっとした細身にほどよくくびれた腰と触り心地の良さそうな白い肌。
見事に実ったたわわな二つの果実。
そして少量の茂みに覆われた下腹部…
その全てが調和を崩さずに一人の少女を淫らに輝かせていたのである。

「あっ…ああっ…見な…っ!」

美音は首をぶんぶんと振って抵抗をする。
見ないで、と懇願するのを止めたのはせめてものプライドった。
だが、手は再度後で組まされ、足は人の字に開かれたままピクリとも動かない。
怪盗少女はあまりの恥辱に打ち震えた。
身体には指一本触れられていないというのに、裸だけではなく、自分の全てが蹂躙されているような気分だった。

「あぁ……」

恐怖と恥ずかしさが一体となって美音の精神を蝕んでいく。
そして夜暗の悪意の視線は、徐々に美音の意識を奪っていくのだった。

「シティに名を轟かせている怪盗といっても他愛ないものだな…」

羞恥のあまり、意識を失った美音に向かって夜暗はぽつりと呟く。
と同時に美音の身体が糸を切られた操り人形のように崩れ落ちていった。
どさっ
音を立てて床に倒れこむ美音。
夜暗はゆっくりと近づいていき、足で怪盗少女の身体を仰向けに転がす。

「それにしても、良い身体をしている…」

夜暗は思わず唾を飲み込んだ。
その視線は少女の裸体からまとわりついて離れない。
仰向けにもかかわらず、型崩れせずにおわん型を保つ大きな胸。
つんと天井を向いて元気よくその存在を主張している小さな桜色の乳首。
程よく引き締まったウエストにしゃぶるつきたくなるような足。
そして黒ずんだ恥毛の茂みの下の陰部。
手と足、そして顔には装着品が残っているが、それが逆にフェティシズムな興奮を呼び起こす。
怪盗アクアメロディ、いや水無月美音という少女はどれをとっても極上の『女』だった。

「…っと、いかんな。ここで手を出すわけにはいかん…くく、俺もまだまだボウヤということか」

思わず理性の歯止めがきかなくなりそうだった自分の欲望を夜暗はかろうじて押さえた。
自嘲しつつダークを取り出すと美音の額へと当てる。
ぽぅ、と黒い光が淡く光り輝いた。

「…ふむ、やはり他のジュエルの影響があるようだな。情報が引き出せん」

夜暗が試みたのはエレメントジュエルの情報の奪取だった。
ダークの力は生物の身体と意識の両方を操ることにある。
その力によって彼は美音を操りジュエルの在り処を自白させようとしたのだ。

「さて、困った…」

言葉とは裏腹に夜暗の表情には暗い炎が宿っている。
確かにジュエルの力では情報を引き出すことはできない。
だが、アクアメロディは既に手の内にある。
ならば彼女自身の口から自分の意思で吐かせればいいだけ。
そう彼は考えていたのだ。

「そうとなれば、準備をするか」

夜暗は携帯を取り出し、ボタンをプッシュする。
これから始まるのは一大イベントだ。
その仕掛け人は自分。
そして主役は…

(さて、アクアメロディ…水無月美音。目を覚ました時にお前がどんな表情をしてくれるのか、楽しみだよ)








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