魅惑の皇后
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シチュエーション


深夜の宮殿の一室。
一人の少年が寝床から半身を起こし、前方を見つめていた。
揺れ動くロウソクの光は、その秀麗な顔立ちを照らす。
幼さが残るものの、彼の周りにはすでに王者の威風が漂っている。
彼こそ、次期王位を継ぐシャロス王子である。

まだ十六歳でありながら、権謀術数が溢れる環境で育てられたため、
歳とは不釣合いの落ち着きがあった。
彼の明るい目つきは、常に他人を警戒する鋭いものを含んでいる。
しかし今では、彼の表情は穏やかなものだった。
なぜならば、彼の前に跪いている者は、数少い信頼できる人物の一人である。

「申し上げます。近頃、王都周辺の農民の土地が、
役人に強引に取り上げられた事件が頻発しています。皇后一派による仕業です」

一人の女性は片膝を地面に突き、淡々と述べ続けた。
端麗な容貌とスレンダーな体つきに、軽鎧が着けられていた。
彼女はシャロス王子の腹心の一人、宮殿近衛隊のレイラ隊長である。
二十代の若い女隊長だが、剣の腕は確かで、常に冷静な行動でシャロスを補助してきた人物だ。

「また皇后派の跋扈か……」

シャロス王子は眉をしかめた。
先王が急逝してから一ヶ月、政局の情勢はほとんど決まっていた。
この国の実権を握っているのは、次期国王であるシャロス王子ではなく、皇后であった。
国のしきたりのため、まだ成人していないシャロス王子は親政できず、
宰相や皇后の補佐を受けなければならない。

先王が亡くなられたのは、皇后派に毒殺されたという噂があるが、
確実な証拠が無いため、事件の真相は暗闇の中だ。
名目上、シャロスは補佐されながら国政と関わることになっている。
しかし現状では、宰相は皇后派に取り込まれ、国政のほとんどが皇后の意のままに操られている。
そんな中で、シャロスはひそかに権力奪還をめざし、王室に忠実な人材を集めていた。
その一人が、宮殿近衛隊隊長のレイラである。
宮殿近衛隊は宮殿や後宮を守る伝統ある部隊で、その成員は全員女性である。
人数こそ正規軍と比べて圧倒的に少ないが、王室を最も近くから護衛し、王族と関わる機会も多い。
そして、レイラはこうして誰の目にも触れず、シャロス王子と接触出来る。
一挙一動が皇后派に監視されている中、シャロスはこのようにして外界の情報を得ている。

「法曹機関は皇后派の息がかかっているため、
先ほど述べた役人が提訴された事例はまったく聞きません」
「ふん、国民をなんだと思っている!あんなやつらに、この国を任せていられるか!」

シャロスは怒りのあまり、寝台側の机に拳を叩きつける。
その凄まじい形相に、レイラの細眉はピクンと跳ねた。

「殿下、どうかお静まりを。まだ病み上がりの体ゆえ、お怒りはよくありません」
「ああ分かってる。しかし、このままいつまで我慢すればだというんだ!」
「殿下が十八歳になられて王位を継げば、皇后派もさすがに国政に挟めまい。
そこで一網打尽すれば……それまでの辛抱でございます」
「ふん、そんな悠長に待っていていいものか……私が十八歳になる前に、
やつらはきっとしかけてくる。それを乗り越えなければ、我らに勝機は無い」

そう言って、シャロスが熟考の表情を浮かべた。

シャロスを見たレイラは、感慨深かった。
彼女はもっと若いときからシャロスを見てきた。
彼がまだ子供だった頃、よくレイラのことをお姉さんと言ってなついてくれた。
その時はとても素直で、まわりの人から好かれる人間だった。
それが成長と共に安易な言動が消え、人の上に立つのに相応しい英明な王子となった。
臣下としては喜ぶべきことだが、レイラとしてはどこか寂しいような気持ちもあった。

その時、突然部屋の外から宮人のあわただしい声が流れた。

「王子様、皇后様がお見えになられました!」

シャロスとレイラは驚き、お互いの顔を見合わせた。
すぐに皇后リテイアの声が響いた。

「そこを通せ。わらわを邪魔するとは、何事じゃ」

その直後、寝室の扉が開けられ、一人の豪華な服飾を身に着けた女性と、二人のメイドが現われた。
その後ろに、困った表情で立ち尽くす宮人がいた。

「皇后様!」
「殿下。あら、近衛隊長のレイラちゃんまで。ここで会うなんて、意外ですわ」

そう言って、皇后リテイアはリシャスに満面の笑顔を向けた。
翡翠色のドレスは床をなびき、彼女の魅力溢れる肢体を包み込む。
大きく露出した胸元と背中は白い肌を見せ、上品な色気をかもし出す。
腕には白長い手袋がはめられ、ほっそりとした腕をエレガントに演出する。
胸元には更に柔らかそうな白羽毛が飾りつけられ、全体的に高貴な雰囲気を作る。
美しい顔立ちは今では優しい笑顔に満ち溢れているが、
ときおり見せる妖艶な一笑は、見る者の息を詰まらせる。

レイラはきまり悪そうに横へ下がる。
彼女が太子派であることは、すでに皇后派に知られている。

「レイラ隊長、こんな夜遅くまで殿下の周りを護衛するなんて、ご苦労だわ。
でも、執政殿だけでなく、夜遅く殿下の寝室で密会するなんて……ふふふ、
まるで誰かの悪口をしてるじゃないかと疑っちゃうわ」

「めっそうもありません」
「さて、それはどうかしら」

頭を下げるレイラを見て、リテイアはクスクスと皮肉っぽく笑った。

「皇后様、レイラをここに呼んだのは私だ。
近頃私が軽病にかかったゆえ、執務報告を私の寝室でさせている。それが何か問題でも」
「いいえ、そんなことありませんわ。わらわはただ、殿下が疲れすぎないようにと思って」
「ご配慮を嬉しく思う。レイラ、もう下がってよいぞ」
「はっ」

レイラは立ち上がってシャロスやリテイアに一礼すると、寝室の外へ出た。

シャロスはリテイアの笑顔を見て、相手の意図を探った。

(この女狐め、いまさら何のために乗り込んできたのか……)

皇后リテイアは先王の後妻で、シャロスとは血縁関係が無い。
シャロスは彼女のことを母上とは呼ばず、皇后様と呼んで遠ざけている。
それは権力争いの関係もあるが、何よりもシャロスは彼女自身を嫌っていた。
生まれの母親と入れ替わるように、彼女が皇后となったためなのだ。

先代女王は慈悲深く、優雅で、太陽のように暖かい女性だ。
子供だったシャロスにとって、彼女はこの世に二人といない母親である。
彼女が他界したこと時、シャロスは深く悲しんだ。
その代わりに先王が娶ったリテイアは、妖しい色気を出す魅惑的な女であった。
そして噂では、彼女はまわりの権臣とふしだらな関わりがあるという。
彼女の妖しい魅力は、シャロスの中にある貞淑な母親のイメージとはまったく異なるものであった。
父親がリテイアを溺愛すればするほど、シャロスはリテイアのことを嫌っていた。

「皇后様、今日はどんな用件だろうか」
「あら、必ず用件が無いとここに来れないのかしら。
息子が病にかかったと聞いて、来ちゃだめかしら?」
「それなら、もう大丈夫だ。体調が少々優れなかったが、今はもう癒した」
「それを聞いて安心したわ。殿下は将来この国を治める大事なご身分。
何かがあったら、私は先王に向ける目がありませんわ……」

(ふん、私が即位するのを精一杯邪魔しているくせに)

と思ったものの、シャロスは顔では一杯の感激の表情を作った。

「どうか心配しないで、皇后様」
「ええ……しかし、殿下は本当に仕事熱心ですもの。みんなも殿下に頼りすぎだわ。
療養中ぐらい、殿下を休ませればいいのに」
「私はまだまだ不才の身。将来、国民全員が幸せに暮らせる国を作るために、
まだ勉強しなければならないことが山ほどある」
「ふふふ、殿下はきっと立派な名君になられますわ。
即位した暁に、私も安心して摂政の地位から身が引けますわ」
「いいえ、皇后様に伝授してもらうことはまだ多く残ってある。
どうか、これからも未熟な身を導いてください」

顔色一つ変えないリテイアに対し、シャロスもきわめて真摯な表情で会話を続けた。
内情の分からない人間がそばから見ても、おそらく和やかな会話に聞こえるだろう。

「本当、殿下もすっかり頼れる存在になってきたわ。でも、無理だけはしないでほしいわ。
マナ、エナ、いらっしゃい」
「はい」
「はい」

まるで同じ音色の声が二つ重なり、リテイアの後ろに立つメイド達が前へ出た。
シャロスは二人の顔をよく見ると、彼女達は服装も顔立ちもまるっきり一緒の双子だった。
どちらも美貌の少女だが、左の娘はショートヘアの活発そうな雰囲気で、
右の娘はポニーテールの落ち着いた雰囲気だった。

「皇后様、これは……?」
「わらわの専属の召使いだけど、すごく素直でいい子たちよ。
どちらかを殿下の身の回りの世話役にしようと考えているの。
今回殿下が病に倒れたと聞いて、やはり殿下の体をしっかり管理する人間が必要だと思って」

「いや、そんなの……」
「だめよ、そうやって軽く見てるから病気になったんでしょ。
今回だけでいいから、母親である私の言いつけを聞いて」

リテイアの言葉に、シャロスは心の中で警戒心を高めた。

(ふん、私の側に監視役を置く寸法なのか……あつかましい)

「私にはそんなのいりません。今までの宮人で充分だ」
「あら、彼女達はどちらも優秀な召使いだから、きっと役に立つと思うのに。
まあ、この話はまた今度にしましょう。あなた達は下がりなさい、後はわらわと殿下が直接話をするわ」
「はい」
「はい」

双子の召使い恭しく一礼すると、同じ歩幅で部屋から退出した。

扉が閉まると、残るのはシャロスとリテイア二人だけとなった。
このような状況は今まで一度も無く、シャロスも予想できなかった。
相手は一体何をたくらんでいるのか考えながら、シャロスは口を開いた。

「皇后様、私にお話しがあるとは……?」

リテイアはしばらく黙ったままシャロスの側へ歩み、そしてベッドに腰を下ろした。
彼女の真っ白い背肌はロウソクに照らされた、明暗が分かれる。
そのあまりにも蠱惑な光景に、シャロスは思わず目線を伏せ、躍りだす心をなんとか鎮静した。
すると、リテイアは突然シャロスの手を掴み、彼女の膝の上に置いた。
シャロスは驚いた表情で見上げると、リテイアの美しい顔には憂いの表情を浮かべていた。

「殿下」

リテイアの唇から出た言葉、とてつもなく優しい響きを携わっていた。
それには、まるで眠っている恋人を呼び覚ますような、甘い感情がこめられていた。

初めて感じる女性の女らしさに、シャロスは少し動揺した。
彼は賢王の片鱗を見せるほどの人物だが、成長した環境のせいもあって、
彼には男女の間に関する知識や免疫はほとんど無かった。

「皇后様……?」
「殿下、最近私と殿下とでは、仲が悪いという噂が町中に流れています」
「えっ……」

リテイアの単刀直入な態度に、シャロスは戸惑った。
いくら早熟しているとはいえ、まだ十六歳の少年。
普段なら受け流しにできたかもしれないが、一度隙を突かれると、なかなか立ち直れない。
そして、リテイアは少年の隙を簡単に逃さない。

彼女はシャロスの手を抱いたまま、悲しみがこもった言葉を紡ぐ。

「殿下は昔から、わらわのことを遠ざけていませんか」
「そ、そんなこと、あるわけが……」
「私の思い過ごしならいいんですが……確かに、私と殿下は血が繋がっておりません。
しかし、私が来た日から、ずっと殿下のことを我が子のように愛し、
慈しみたいと思っております。先代の王妃の代わりになれないことは承知しております。
だが、それでも皇后に相応しい人間になりますように、わらわは努力しますわ」

リテイアの澄んだ両目が潤い、清らかな涙が彼女の頬をつたって落ちた。
女性が泣くのを見るのは、初めてであった。
それに加えて、彼女のひたむきな言動が彼の心をゆさぶった。

シャロスは少し狼狽し、

「皇后様、泣かないでください。あなたが私を愛していると同じぐらいに、私もあなたを愛している」
「本当でしょうか?……今の言葉は、例え嘘でも嬉しいわ」
「そんなこと無いよ」
「ありがとう、シャロス……」

リテイアは優しく王子の名を呼び捨てた。

不思議なことに、シャロスはそれに反感を覚えなかった。
彼女の優しい口調は、どこか見覚えのある暖かい感情を呼び起こす。
それと同時に、一時的かもしれないが、シャロスがリテイアを嫌がる感情が薄められた。

「シャロス……今だけいいから、あなたをわらわの子供として扱ってもいい?」

リテイアはそう言って、慈悲の満ちた目でシャロスを見つめる。
その目線に触れると、シャロスはどうしてもいやとは言えなかった。

「ええ、もちろん……」

「じゃあ、本当の親子のように、わらわに抱かせて……」

そう言って、リテイアは包み込むかのように、シャロスの細身を胸で抱きしめた。
シャロスは最初はビックリしたが、次第に女の体の気持ちよさに浸した。

(ああ、暖かい……これが、女性の体……)

シャロスの頭はリテイアの胸の谷間にうずまった。
彼女の胸元にある羽毛がくすぐったい。
そして布地の向こうから、乳房の柔らかい肉感が伝わってくる。
彼女の胸から芳ばしい匂いが立ち、シャロスが息を吸う度にと鼻に香りが充満し、意識が朦朧とする。

(ああ……すごく、いい匂い……)

シャロスの表情が徐々に恍惚へ変化するのを見て、リテイアは含み笑らいをこぼした。
彼女の体から発されるのは、強烈な暗示効果を持つ香りであることを、シャロスは知る由も無かった。
しばらくするとシャロスの目は明るさを失い、どんよりとしたものに変化した。

彼女はシャロスの耳に唇を持っていき、ねっとりとした口調で囁いた。

「ねえ、気持ちいいでしょう?もっと顔を深めて、大きく息を吸ってごらんなさい。
母親に抱いてもらった時のように。そうすれば、もっともっと気持ちよくなれるわ。」

シャロスは無意識のうちに、リテイアの呟きに従った。
小さい頃母親の胸に抱かれた時の情景を思い出し、シャロスは知らず知らずのうちにそれをリテイアに重ねた。

「……お母さん……」

シャロスは虚ろな目で、泣きそうな声で呟いた。
彼はずっと王子という地位にいたため、母親以外に腹を割って語れる人物がいなかった。
母親がいなくなってから、どんなつらい事があっても、それを心にしまって置くしか無かった。
それがリテイアに触発されて、今まで溜め込んだ感情が一気に流れ出た。
今のシャロスの心境は、権力も地位も忘れ、ごく平凡な少年に戻った。

「いい子だわ……ずっと寂しかったのね。でも、もう大丈夫だよ」

リテイアは愛憐の満ちた表情で、軽くシャロスの髪を撫で下ろす。
優しくしてもらった幸福感と、女性に抱かれる安堵感がシャロスを包む。
気持ち良さそうに目をつむるシャロスを見て、リテイアは妖艶に微笑んだ。

「ねえ、シャロス。今だけ、私のことをあなたの本当のお母さんと思ってごらん」

リテイアのささやき声は、暗示の香りとともに、無防備になったシャロスの心に届いた。
今まで母親の愛情を渇望していた気持ちは、リテイアの力を助長した。

「……おかあ、さん……」

リテイアの柔和な声に引導されて、シャロスは今まで母親を慕う感情を、全て彼女に投影した。

「ふふふ、素直で可愛い子だわ」

そう言って、リテイアはシャロスの体から離れ、彼の頬に優しく口付けをした。

「あぁ……」

シャロスが忘れかけていた暖かい感情が、彼の神経を走った。
彼はリテイアの美しい顔に見惚れ、すっかり魅了されてしまった。
心の堤防に隙が出来ると、彼も本来リテイアの妖艶さにぐんぐん引き込まれた。
薄地のドレスは、リテイアの体のラインを惜しげも無くくっきりと見せつけ、男の本能を呼び覚ます。

「ふふっ、どこを見てるの、シャロス?」
「あう……!」

シャロスは慌ててリテイアの乳房から目を離した。
彼女の豊満な胸はドレスに締め付けられて、乳房の上側は大胆に露出していた。
その色っぽい形が、シャロスにいやらしい感情を植えつける。

「どうしたんだろ……心が熱くて、まるで破裂しそうで……今まで、こんなこと一度も無かったのに……」
「ふふふ、それはお母さんも同じだよ」

リテイアはシャロスの片手を自分の胸元へ持ってきた。

「あっ!」

初めてさわる女性の胸に、シャロスは顔を赤らめた。

「ふふっ、シャロスったら、また熱くなったわね。ひょっとしたら、ここもそうかな?」

リテイアは蠱惑に一笑すると、白銀の手袋をシャロスの股間の上に置いた。

「あ、そこは……!」
「あら、シャロスのそこが、すごく硬くなってるわ」
「ああっ!はぁん……」

リテイアがシャロスのあそこに円を描くように指を動かすと、訳も分かない感触がシャロスを襲った。

「はぁっ、だめ……そこを触られると……変になる……」
「ふふふ、シャロスは男の子なんだから、それが普通なのよ」
「これが……普通?」
「ええ。レイラに教わってもらわなかったの?」
「レイラが?どうして彼女が?」
「あら。レイラが側にいるから、大丈夫だと思ったのに……仕方ないわね、わらわが直接教えてあげるわ」
「それって……?」

シャロスがいる国では、王室のスキャダルにはタブーがある。
重婚を制限するなどの法律は無いが、王様が色事に耽って政事が滞ることが無いようにと、
成人前の王子にはできるだけ性知識を与えないようにしている。

シャロスが不安な表情になると、リテイアはくすりと笑った。

「それはね、とても気持ちいいことなのよ」
「気持ち……いいこと?」
「ええ。一度病みつきになったら、どんなことも忘れ、それに夢中になってしまうの。どう、知りたい?」

リテイアの挑発は、少年の好奇心を呼び起こすのに充分だった。
シャロスはコクリ、と頷いた。

「じゃあ、お母さんの言うとおりにして。足を開いて、そのままじっとしてて」

指示に従うシャロス。
リテイアは彼の下の服を太ももまでずらし、下着から一物を取り出した。

「あっ、そ、そこは!」

シャロスはさすがに抵抗しようとした。
しかし、その直前に、リテイアの手袋は彼の一物を握った。

「はっ……ぐっ!」

甘美な刺激が身を走ると、シャロスの全身から力が抜けた。

「ふふふ、じっとしてって言ったじゃない。お母さんの言うことを守れない悪い子は、お仕置きだわ」

そう言うと、リテイアは皮のかぶった一物につーんと唾液を垂らした。
ひんやりとした感覚が伝わり、恥ずかしい気持ちが一気にこみ上げた。
そしてなぜかは分からないが、口の中は乾き、喉がカラカラになった。
リテイアはそのまま、一物をゆっくりと上下にこすりはじめる。

「う……ああっ!」

生まれて初めて味わう快感に、シャロスはあらがう術も知らず、ただ受け止めるしかなかった。
ぬめりとしごかれる感触は、すぐに彼の神経を通って脳へ直撃した。
一物は見る見るうちに伸び始め、硬くなった。
シャロスが惨めな声をあげる傍で、リテイアは冷笑を浮かべ、

「うふふ……可愛らしいおちんちん。こんなに大きくなるなんて。中はどうなってるかしら」

そう言い放った次の瞬間、リテイアは親指と人差し指で竿の先端をつまみ、
そのまま下へゆっくりとずらした。

「うああっぐ!」

あまりにも敏感な衝撃に、シャロスは腰を浮かせて、一際大きい声を出した。

「ほら、頭が出てきたわ。うふふ、白いのが一杯残ってるわね。
ここは男の大事なところだから、綺麗にしなくちゃ」

突然リテイアは頭を伏せ、ルージュの引いた唇の中にシャロスの一物を含んだ。

「ひゃっ!?」

シャロスは目を大きく見開き、快感に身をよじりながらリテイアの仕草を見届けた。
リテイアは口の形をすぼめて、彼の竿をさする。
その可愛らしい口の中では、軟体動物のような舌が慣れた動きで亀頭の周りを舐めまわす。

「うっ……ううぅん!!」

シャロスはくぐもった声で寝床のシーツを掴んだ。
亀頭周辺の付着物が舐め落とされるたびに、痛感とも快感とも言える不思議な刺激に全身が軋む。
彼女の生ぬるい口内は淫らに蠢き、シャロスの童貞の一物を自由自在に操る。
そのうち、得体が知れない何かが彼の内側からこみ上げ、竿を通過しようとした。

「ああん、もうだめー!出る、出ちゃうぅ――!」

凛々しいだった顔が、歪んでしまった。
彼の一物がドクン、ドクンと脈打つと、次の瞬間、大量の濁液がリテイアの口の中に放射された。

「ううむぅ!」

リテイアは濁液をこぼさないように口に溜めながら、おもむろにシャロスから離れた。
そのつややかな唇から、白く濁った粘液が零れ落ちる。
リテイアは口の中をゴクリと飲み干し、零れ落ちた白液も指ですくって口内で頬張る。

「はぁ、はぁ……」

シャロスはなにが起きたのか理解できない様子で、肩で息をしながらリテイアの動作を見続けた。

「ふふふ……気持ち良かったみたいね。これが、『イク』ということなのよ」
「イク……?」
「そう。男の子がイクときは、今みたいに沢山白いのを出すの。
そしたら、頭の中も真っ白になって、体が天にも昇ったようになるの。そうでしょ、シャロス?」
「はい……お母さんの言うとおりだよ」
「ふふっ、素直でいいわ。さあ、後はおちんちんを綺麗にしましょうね」

リテイアは妖艶な笑みをこぼし、シャロスの垂れ下がった一物を握り、
彼に見せ付けるように残った白液を舐め取る。

その妖しい様子に、シャロスの心臓は再び高鳴った。

「あら、なんでかしら。あそこがまたこんなに硬くなっちゃって。
シャロスって、ずいぶんとエッチな男の子なのね」
「ご、ごめんなさい……」
「ふふふ、いいわよ。今回だけ、お母さんが特別に手本を見せてあげるけど、
次回からはちゃんと自分で処理できるようにね」

リテイアが含み笑いをすると、指でわっかの形を作り、シャロスのいきり立った一物の竿をこする。

「ああっ……くっ!」
「ほら、目を逸らしちゃだめって言ったでしょ!」
「ごめんなさ……はぁああん!」

シャロスは切ない声を続けて漏らした。
リテイアはもう片方の手を出したばかりの亀頭に置き、竿部が振動するたびに、亀頭を手袋にこすった。

「ああ……もう、だめっ……また、また出ちゃうよ!」

その時、リテイアは突然竿の根元を握り締めた。

「あうん!
「だめよ、シャロス」
「ど、どうして……?」
「シャロス、よく聞いて。男の子がこんな速くイカされることは、すごく恥ずかしいことなのよ。
お母さんはシャロスに、将来そんな惨めな男になってほしくないわ」
「でも、どうしても……」
「まったく、仕方ない子ね。お母さんが鍛えてあげるわ」

そう言うと、リテイアは髪に結いだ赤糸を解き、それをシャロスの根元に結んだ。

「うっ!?」
「これで少し我慢を覚えなさい!」

リテイアはくすりと微笑み、シャロスをじらすようにで服を脱いだ。
高貴なドレスの下から、艶やかな黒レースのブラジャーやショーツ、
そしてまぶしいほど魅力的な女体が晒された。

シャロスは彼女の体に目が釘付けとなり、股間の一物に血液が集中した。

「ふふふ、どう?」
「お母さん、すごく綺麗……」

シャロスはリテイアの胸や秘所を交互に見据え、布地を射抜くような目で彼女を捉える。
そこには英知溢れる顔はどこにもなく、代わりに欲情しきったケダモノのようなものとなった。
リテイアは魅力な谷間を強調するかのように前屈みになって、シャロスの頬を優しく撫でた。

「ねえ、シャロス。お母さんのこと、もっと見たい?」

シャロスはリテイアの胸の隙間を一生懸命覗きながら、

「は、はい!見たいです!」
「……でも残念。今日はここまでなの」
「えー!」

シャロスは哀願するような目を向けた。

(ふふふ……ああ、なんて素敵な表情かしら。みじめで、卑俗で、ほかの下衆の男達と一緒なのね。
いくら賢いからって、所詮は男。女の魅力の虜になれば、ただのオスよ)

彼の苦しみ悶える姿に、リテイアは満足の笑みを浮かべる。

「そろそろ苦しいだろうから、イカせてあげようかしら。
さあ、もっとお母さんの姿を見て、欲情しなさい! 」

リテイアはそう言うと、肢体を悩ましくくねらせ、今までよりも激しくシャロスの一物をしごいた。

「あっ、くっ……あぁん!」

シャロスは悶えるように喘いだ。
リテイアの魅力溢れる体は彼の視界を支配し、何もかも従いたい気分にしてくれる。

すぐにさきほどと同じように熱いたぎりが込みあがるが、
それが糸を結ばれたところで滞り、跳ね返ってしまう。
その過程が何度も繰り返していると、シャロスは次第にもどかしい気持ちに胸が押しつぶされそうになる。

「ああ、イ、イキたい……!」
「ふん、無様な子ね。もっと情け無い声を出してごらん、そしたら、解いてあげてもいいわ」
「あああぁぁあ!お、お母さん、お願い……イキたいです!わたしを、イカせてください!」
「あははは……!なんてはしたない子!本当に口に出して頼むなんて!」
「ご、ごめんなさい、でも……ああぁあん!ほ、本当に、も、もうだめです!
お母さん、お願い……イカせてください!」

シャロスは懇願しながら、口からよだれを垂らした。
彼の目は焦点も合わず空を漂い、額には玉ほど大きな汗粒が滴る。

彼の痴態を見て、リテイアは会心の笑みを作る。

「ふふふ、仕方ない子ね。……シャロス、あなたの初めては、私の手にイカされた。
このことが一生忘れられないぐらい、すごい快感を味あわせてあげるわ!」

リテイアは竿の糸を一気に解くと、竿を扱う手の動きが一段と激しくなった。

「ああ、あああぁぁぁ――――!」

それまでのぼりつめた快感が一気に解放され、まるで噴火する火山のように内なるマグマを噴き出した。
濃密な迸りが四方へ飛び散り、リテイアの顔や腕や、そして悩ましい肢体を汚した。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

シャロスはすっかり放心状態となり、荒い息をしながら空の向こうを見つめた。

「うふふ、とても良かったわ……シャロス、これから誰もいないときは、
わらわのことをお母さんと呼びなさい。いい?これは二人だけの秘密、ほかの人に教えちゃだめよ」
「……はい、お母さん……」

シャロスは小さく頷くと、リテイアはどこからとも無く小さな薬瓶を取り出した。
その中には、紫色の液体が盛られていた。
リテイアは瓶の蓋を開け、その匂いを惜しむように一度息を吸い込んだ。
彼女はその中身を自分の口中に含めると、手でシャロスの顎をしゃくり、彼の口を開かせた。
そして、リテイアはシャロスにキスをした。

「むぅん……」

二人の唇は重ねあった。
シャロスは相手の思うままに唇を押しのけられ、唾液と混ざり合った妖しい溶液を流し込まれた。
リテイアは舌を巧みにねじらせ、シャロスの舌をぬめりと絡めた。
途端、甘美な味がシャロスの口内に広がった。
彼は相手の舌に誘導されるままに、溶液を全て飲み干した。

彼の耳側に、リテイアは小声で、しかしシャロスの頭に染みつくような声でささやく。

「シャロス、今からお母さんの顔をじっと見つめなさい」

朦朧とする意識は、リテイアの命令に反抗する力が無かった。
シャロスは言われたとおりリテイアの清艶な顔を見上げた。
しばらくすると、彼の心の中から一つの欲念が浮かび上がった。
それはただの男としての欲情ではなかった。
中には、相手を守りたい、相手の言いなりになりたい、愛したいという感情が膨らみ始めた。
リテイアの顔を見れば見るほど、シャロスの心がドキドキと加速していき、
やがてもどかしい気持ちが抑えきれないほど、胸が苦しくなった。
初めて抱く感情に、シャロスはどうしたらいいか分からなくなった。
彼が戸惑っている表情を見て、リテイアは薬の効き目が出たと判断し、艶美に笑い始めた。

「うふふ……シャロス、あなたは今どんな感じかしら」
「うっ……お母さんを見ていると、胸がすごく切なくて、息が苦しくて……どうしたんだろ……」
「ふふふ。あなたに飲ませた薬は、惚れ薬よ」
「ほれぐすり!?」
「そう。この薬を飲ませた異性の顔を、ある時間見続けていると、欲情や愛情を抱くようになり、
もうその人のことが頭から離れられなくなるの。そして、その人を見ただけで股間を膨らませ、
どんなことよりも、その人のことを大事に思うようになるわ」

「そ、そんな……どうして?」
「うふふ、わらわは魔女なのよ」
「魔女!?」

その危険な響きに、シャロスの頭は少しだけ回復した。
リテイアの来歴について、彼も少し調べさせたことがあった。
その時、彼女は実は名家の娘ではなく、それに成りすました魔女という情報が耳に入ったことがある。
しかし、魔法はほとんど迷信であるこの国にとって、魔女は荒唐無稽でしかなく、
シャロスたちもそれほど気にしていなかった。

「そう、わらわは正真正銘の魔女よ。魔女の中には、上位の黒魔法が使えたり、
ものすごい化け物を呼び起こす人がいるけど、みんな討伐されちゃったのよ。
わらわは彼女達のように馬鹿じゃないわ。だって、こうして国の権力者をコントロールすれば、
世界なんか簡単に支配できちゃうもの」

「そんなことを……!」
「ふふふ、ここまで来て抵抗できると思って?もう遅いわよ!」







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