「リライト」さん配布のお題、「選択課題・ベタ」に挑戦。ジャンルは魔術士オーフェン。
空には星のまたたきが見え隠れしはじめている。それらを見渡し、サルアは頭の中にたたきこんだ地図と方角を照らし合わせた。
ただ星空を眺めていたわけではない。ゲイト・ロックと呼ばれるこのなにもない荒野では、星と月がなによりの道標となる。
(このペースならナッシュウォータまであと二日ってとこか)
しばし考え、距離と時間をはじきだす。一行に怪我人を抱えている身では、妥当なところだろう。
振り返ると、すこし離れたところにいる同行者たちが野宿の用意をしているのが目に入った。星明かりに慣れた目にいかにも焚き火は眩しく、片手をかざしてしばたたかせる。
焚き火のさらに向こうにかろうじて見える人影は、なにやら小さな人影ふたつを蹴りまわしているらしい。
ふと、何の気なしに左手が服の布地をこすった。感触を確かめたかったのだ。
両の手を闇の中にかざす。この暗がりでなにが見えるわけでもない。わざわざ確認せずともわかる……。そこにあるのはただの手だ。
(いや、暗がりだからこそ見たかったのかね)
痛みもなく傷痕もなく欠けたるところのない手を。
キムラック市を脱出し――ついでに外輪街を「多少」破壊して――から野宿が続いている。そして、すくなくともあと二日は。歓迎すべきだな、とサルアは皮肉っぽい面持ちで考えた。
まだあとひと晩は、壁のある場所では悪夢を見ることなく眠れそうにない。
(いやその……獄死しかけてさすがにちょっとトラウマってるんじゃないかなーとか(目をそらしつつ))