ズバァ。前回の続き。
なんとサルアが表紙に登場。余談だが本屋で「背約者(上)」を見たとき「誰だろうこの目つきの悪いおっさん」と思ったのはここだけの秘密だっ!
おひさしぶりっ!「寝てただけさ」
「我が神に弓引け背約者(上)」p.113
このあたりの話の打ち合わせ中、担当編集者M氏が「サルア?そんなやついましたっけ?」と発言したのは有名でもなんでもない話(fromベスト・オブ・オーフェン)。
なんと主人公にも忘れかけられていたことが判明。アワレ。その男の名前を、忘却の淵ぎりぎりで思い出し、オーフェンは口早につぶやいた。
同p.114
登場するたびに死にかける男、サルア。今度の死因は拷問死。「そっちの金色のに、死体と間違われんのも、しゃあねえかもしんねえよな」
同p.116
しかし見開き口絵を見るに、どう考えても背後から袈裟切りにされたような痕があるのはなぜ。
一方、クリーオウには本気で忘れられていた。まあクリーオウが相手とあっちゃあ分が悪いわな。「知り合い?わたしもなんか、どこかで見たことあるような気がするけど」
(中略)
「俺ってこんなのに殺されかかったのか……?」
同p.116-117
スキップする看守のほうがよほどホラーでないかいな。「あの足音を聞くと、憂鬱になるんだよな。ここの連中も、たまにゃスキップくらいすりゃいいのによ」
同p.119
数少ない……てか唯一?サルアがまともに強いシーン。生爪剥がされ、左肩や片足首の間接外れた状態でもつおいよ(アラレちゃん的表現)。(前略)サルアが、あの傷ついた体のどこに余力を残していたのか、神官兵のひとりから手際よく警棒を取り上げ、一瞬で相手を打ち倒している。
同p.124
ひとつしか違わないメッチェンが教師の立場にあることを考えると、好きで教師の地位に就かないのか、あるいは素行不良でなれないのでは、という気もする。「この街では、その地位も任務も秘密にすることになっている。大抵は、この神殿庁のお偉い教師様、て立場を隠れ蓑にするんだが、教師を演じるには、俺はちと歳が足りないんでね。(後略)」
同p.133
いや、もしかしたらメッチェンも外輪街の住民に教師様と呼ばれているだけで、公的には神官兵の地位なのかもしれないが。
はーい説教モード入りまーす。「ガキはともかく、大人はたまにゃ、ちっとくらいいじめられたほうがいいんだよ。てなわけで顔を上げろ、キリランシェロ」
(中略)
「呼び名くらい、ぐだぐだこだわってんじゃねえよ。だいたいそこの坊ちゃん嬢ちゃんは、この名前の意味も分かっちゃいないんだろが。てめえがあわててるだけ滑稽ってなもんだ」
同p.136
ぼろ服だから、というよりサルアは着たものがなんでもよれよれに見える気がする。新品だろーが洗濯したてだろーが。例の神官兵達と同じ服であるわけだが、ところどころ破れているせいか、あるいはもともとそうなのか、彼が着ているものは多少ラフになっている。
同p.141
前後の会話からして、サルアが教主ラモニロックは不死であることを知っているのは確実と見られる(始祖魔術士であることは知らない?)。だからこそ、反逆を企んだ動機――クオを排除すれば教会の閉鎖的な体制を変革できるという考えが短絡的に思われるのだが。へっ、とサルアが鼻で笑い――なんのことだかわからずにオーフェンが視線で探ると、サルアは肩を竦めて邪悪を払うような仕草をした。聖印というものである。
同p.151
23かそこらで「若い奴ら」とか言うなよ……。「若い奴らってのは、すぐ模範解答ばかり欲しがるんだな。もうちっと、自分で考えようって気にならねえのか?」
(中略)
「それに、若い奴らって、あんただってわたしたちと歳、大して違わないでしょ」
「そう言ってもらえると嬉しいねぇ」
(中略)
「……やっぱ、なんかおっさんくさいわ、あんたって」
「嬉しくないねぇ」
同p.154
ちなみに「エンサイクロペディア」によると「もう若くないと自覚している者は、せめて他人には「若い」と言ってほしいもの。つまりはそういうことだ」だそうで、後日談にいたっては自分から「もう若くない」などと言い出している。
うぇへうぇへ(悦)。「……本当に?」
同p.159
オーフェンが殺人を犯したことに動揺しているのを見透かしているのだろうが、それを踏まえて次の台詞が出てくるんだと思うと……ねえ?<何が言いたい
ネイムの死に対して何を思っているのか、ここらの台詞から読み取れて興味深い。「お前さんら、俺らを心底なめてるんじゃねえのか?」
「俺たちが、自分の一生をかけてまでやっていることがなんなのか……考えたこともないんじゃねえのか?」
同p.163
ぐずぐず落ち込んでいるオーフェンに、「ちゃんと考えろ」と声をかけてやるだけ、やはり親切な奴だよなー。
半年前にクオにいったい何が起きたのか。地味に気になる台詞である。憶測するに、おそらくクオはそのとき女神の来臨を決意したのではないだろうか。「(前略)なんとなく、なんとなくだが、あんた、毎週欠かさずにやっていた最終拝謁を、半年前からは――」
同p.182
てか、半年前の時点でサルアはマクドガルの内偵に潜入していたから、キムラックに戻った際にメッチェンからクオの変化について聞いたと考えるのが自然だろう。さらに憶測を重ねるが、そうしたクオの変化になんらかの危険を感じ、なおかつオーフェンの登場が決起を早めさせたのではないか?
まあかなりのこじつけではある。オーフェンがキムラックに来る、と予測していたことも含め「サルアは勘が鋭い」とでも思わなければ片づかない。
これもまたわからん台詞。教主が不死であると知っているなら、傀儡にはなりにくいと判断しそうに思うのだが。「(前略)どのみち、あんたがあの教主を傀儡にしていることは分かってるんだ。(後略)」
同p.185
もしくは、クオが教主にまつわることすべてを取り仕切っていたためにそう考えたのかもしれない、とまたもやこじつけ。とはいうものの、教主との接触を許された人間はクオのほかにも複数いるようだし……(p.14のアナスタシアの台詞より)。悩む。
10年前、オレイルは死の教師の首座であったし、おそらく教主との接触も許されていただろう。そしてクオが実はチャイルドマンに手も足も出なかったこともサルアに話しているなら、ある程度の教会の裏事情も教えているのではないか?「(前略)あんたが大陸最強の魔術士とどう戦ったか、俺はオレイルに聞かされて知ってるんだぜ!」
同p.186
つまりサルアとメッチェンが「教主がクオのいいなり」と判断したのは、オレイルがそのように考えたから、という憶測が成り立つ(ただ、教主が人間ではないとはさすがに他言しなかったのかもしれない)。いかがなものだろう。
2日間拷問を受けた後でも冷静に状況を判断できる分析力!義理もないのに迷える若人に説教する親切心!警棒一本で天人の遺産を装備したクオに挑みかかる度胸!まさに男の中の男!「奴は俺がやる!神官兵をたたけ!」
同p.192
しかしあっさりなます切りにされる。満身創痍のサルア・ソリュードを片手で引きずって、無言で歩いてくるクオ・ヴァディス・パテル(後略)。
同p.205
「退屈」とはサルアがよく使う言葉だが、字句通りの意味よりも、極端に閉鎖的な教会と街全体を指して「退屈」と言い表していたのだろう。だとしても不良少年くさいことに変わりはないが。まあ、カーロッタからは最期の言葉と思われてしまったような状態で口にしたのだから筋金入りである。「この男が、我々に反逆しようとした理由、お前にも聞かせてやろう。今のままではキムラック教会が滅びる?そんなことではない。この愚かな若者は、この町に退屈していたのだそうだ……」
同p.226
次回は怒涛の下巻だよ。それにしても妄想成分の多さに呆れかえるね!