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くひだをれ

 人に大阪の絵的イメージを問うたならば、そこにはかならず紅白のだんだら衣装を身につけ、セルロイドの眼鏡をかけた太鼓を叩く人形がいるにちがいない。その名を「くいだおれ太郎」という。
 先日くいだおれが暖簾を下ろした。店の看板人形の太郎も引退ということになった。道頓堀に太郎がいないと思うとさみしい思いがする。いや、私は一度も店に入ったことがないのだが。
 ここ十年ほどで道頓堀の風景は様変わりしてしまった。くいだおれの閉店で、時代の残り香がまたひとつ失われたというわけか。しかし、これほど明るい店の畳み方もめったにないだろう。

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