君を探して
1.
僕が竜二と知り合ったのは高校へ入学した時の事だった。
彼と僕は高校1年で同じクラスになり、しかも入学式の時に席が隣だったんだ。
入学式は学校の体育館で行われ、僕の周りには真新しい学ランを着た新入生がいっぱいいた。僕が通う高校は男子校だったから、
周りはもちろん男だらけだった。
時々横目で体育館の隅を見つめると、ビデオカメラを持って僕を撮影している父さんの姿が見えた。
ステージの上には黒いスーツを着た校長先生が立ち、学校の歴史などのつまらない話を長々と続けていた。
僕はその時すごく緊張していた。僕は昔から人見知りな性格で、高校へ入ってからちゃんと友達ができるかどうか不安だったんだ。
体育館の中には延々と校長先生のダミ声が響いていた。僕はその声を聞き流しながら小さくため息をついて体育館の茶色い床を見つめた。
するとその時、隣に座っていた竜二が僕の手をツン、と指で軽く突いた。
僕はその時初めて竜二の顔を見た。僕はそれまであまりに緊張していて、
隣にいるのがどんな人かという事さえ気にしている余裕がなかったんだ。
恐らく彼は僕の小さなため息を聞き逃さなかったんだと思う。
その後竜二は苦笑いをして僕を見つめ、囁くような声でこう言った。
「話が長いな…」
それは本当に小さな声だった。でも僕の周りの人たちはちゃんとその声を聞き取っていたようだった。
竜二の一言で、一瞬周りの空気が和んだ。彼の声を聞き取った人たちは、皆小さく肩を震わせて笑っていた。
そして緊張していた僕はすごくリラックスする事ができた。
僕がクスッと笑うと、竜二も軽く微笑んだ。
彼は痩せ型で、短い髪が真っ黒で、すごく人懐っこい笑顔を見せる人だった。
『やっと見つけた』
僕は初めて彼を見た時、心の中でそうつぶやいた。
それは人には説明しづらい感情だったけど、僕はその時たしかにそう思っていた。