2.

 入学式でのそんなエピソードもあって、僕と竜二はすぐに仲良くなった。
僕たちは学校でいつも行動を共にするようになった。 彼とはちょうど通学している地下鉄の路線も同じだったから、登下校の時もいつも一緒にいるようになった。
僕は竜二と気が合って、彼と一緒にいるのがすごく楽しかった。
学校の授業が終わって休み時間に入ると、竜二は真っ先に僕の席へやってくる。
彼はいつも笑顔を絶やさない人だった。
教室での僕の席は壁際の1番後ろで そこにはいつも外の光が届かなかったけど、竜二がそばへ来るといつも目の前がパッと 明るくなるような気がしていた。
「早く髪が伸びないかな」
彼の髪型は模範的なスポーツ刈りだった。
高校へ入学した当初、竜二はしょっちゅうそう言って自分の髪が短い事を気にしていた。でも僕はその髪型が彼に1番似合っているような気がしていた。
ただ竜二は中学生の頃ずっと髪を長くしていたらしく、彼自身はいつも頭が寒い感じがすると言っていた。
彼は痩せ型で身長もそれほど高くはなかった。学ランの袖が少し長すぎるのは、きっとその制服が彼の成長を待っているためだった。
もしかしてその頃の彼は少し子供っぽく見える自分をあまり気に入っていなかったのかもしれない。

 僕らの通う学校のそばには有名なアイスクリーム屋があって、甘い物が好きな僕たちは放課後になるとほとんど毎日その店へ立ち寄った。
僕たちはいつもスポーツバッグを肩に掛け、カップに入ったアイスクリームを頬張りながら地下鉄駅へ向かって歩いた。
竜二はいつもチョコチップのアイスクリーム。そして僕はバニラのアイスクリームを食べると決まっていた。
駅へ続く道は緑に囲まれていた。 道の左右には背の高い木がズラリと並び、風が吹くたびに木の葉のさえずりが聞こえてきた。 そこはまるで緑のトンネルのようだった。
土の道は雨が降ると少しぬかるんだりもしたけど、僕は緑の匂いが漂うその道をすごく気に入っていた。
「なぁ…今度の日曜日、一緒に遊びに行かないか?」
空が曇っていた5月のある日。隣を歩く竜二がチョコチップを頬張りながらそう言った。
彼はその後アイスクリームをすくい取るプラスティック製のスプーンを口にくわえて僕の返事を待っていた。
「新しくできた遊園地に行きたいな」
僕は彼と同じようにスプーンをくわえながらそう答えた。
すると竜二は切れ長の目を大きく見開いて驚いたような表情を見せた。
「俺も今そう言おうとしてたんだよ」
彼はスプーンを口の中から取り出して静かに微笑んだ。そして僕も笑顔でそれに応えた。
その時僕らの遥か頭上から小さく小鳥の鳴く声が聞こえてきた。

 僕と竜二は恐らくその頃からお互いを親友だと意識するようになった。
以心伝心という言葉があるけど、僕たちは小さな事でもすごくよく分かり合う事ができた。
その頃の僕はずっと彼と一緒に緑のトンネルを歩き続けるものだと信じていた。