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ときメモ1 主人公×伊集院レイ 1

1_41氏

伊集院レイとつきあい始めて3日が経った。
それはつまり、俺らの卒業式から3日が経ったと言う事だ。

卒業式の後、誰からとも知らぬ、(だが筆跡からして女の子からと推測される)手紙が、机の中にあって。
どこの学校にも一つや二つありそうなファンタジックな校庭裏の伝説の木
-----それは女の子が好みそうな、永遠に結ばれるやら何やらの伝説だったが------
の下に呼び出され、僕は特に何の感慨も無くその木の下に向かった。
ら、伊集院レイが居た。

三年間クラスメイトで常日頃嫌味な金持ちの『坊ちゃん』だと思っていた、伊集院レイが。
つまり、三年間「男のクラスメイト」だと思っていた人間に
「家の家訓で男の格好してたけど、実は女でした★」と言うありえないオチと共に、告白されてしまったのだ。

三年間常に、その形の良い頭の後ろで結んでいた金の髪を下ろして、さらさらと音がしそうな
ストレート・ヘアを僕に見せつけながら、ウチの高校の女の制服を着た伊集院レイに。

俺はその日、さっき迄3年間男だと思っていた人間に告られて、承諾した。


それから3日して今日は、伊集院とつきあい始めて2回目のデートだ。
が、2度目にしていきなり家に呼ばれてしまった。
「まぁ、その辺で適当にくつろいでいてくれたまえ。」
…物凄い模様でぶ厚い絨毯やら(高そう)変な絵やら(高そう)家の門をくぐってから
玄関迄何分掛かるんだ!?ってクソ広い屋敷やら、あらゆる調度品やら部屋の豪華さや
センスが一般からかけ離れているさは、こいつ主催のクリスマスパーテイの時に来た事あるから、分っていた。
この広い屋敷の奥まった場所にある、こいつの私室に入るのは初めてだったが、
今更ロココ調の家具やら今時の高校生らしさのカケラも無い、ついでに女の子らしさのカケラも無いインテリアの類では
もう驚かん。そこは想定の範囲内だ。
そこにかわいいシカさんの、怖すぎる頭のみ剥製が壁に掛かってるが、それもまぁいい。

だが、これだけは想定外だ。これだけは!!
「何故男装なんだ。何故男言葉に戻ってるんだ。」
いじゅういん。
目の前の俺の「彼女」の筈の伊集院レイは、以前の通り金の長い髪を後ろで縛り
男物のシャツ、ネクタイ(!)細身のスラックス。
物の見事に三年間見慣れまくった男・伊集院レイの私服姿だ。
確か伝説の木の下での告白の時に『卒業したら普通の女の子に戻れるのv』とか言って無かったか伊集院。

今日!今!この時のこれは、彼氏(俺だ)と君の「デエト」だろ。

「ハッ、あれは貴様を口説き落とす為の演技に決まっておるだろう!
三年間も慣れ親しんだキャラと態度と口癖がそう簡単に直ると思うかね?
口説き落としたらこっちの物だ。」

と、何がそんなに誇らしいんだか、ハーッハッツハッ…と「ああ伊集院だな」って感じの高笑いを続ける。
何に勝ちたいんだお前。


…まぁ何でもいいがな。今更。

俺も大概だが、恋人になって尚、普通に伊集院は伊集院らしく伊集院で、何だか毒気を抜かれる。
1年の時分、入学当初に伊集院を見た時、薔薇を普通に持ってるわ、一人だけ制服違うわ(何でだったんだろう)
毎日登校がリムジンだわ、立ち振る舞いは王子入ってるわ、なのにモテてるわで、
他の凡庸なクラスメイト、否全校生徒と鑑みても明らかに一人だけ異質に愉快な人だった。
存在がネタな様な奴だった。
そして俺は正直、『お友達にはなれない』と思った。愉快過ぎて。
(俺は平穏を愛してる人間だ。)
なので、そんな派手に愉快で存在自体ががネタの様な伊集院レイが「実は女でした★」とか言われても
愉快な伊集院の人生にひどく似つかわしく感じて、驚いたが、驚ききれなかった。
ギャグみたいな人生が似合う人って得だな、伊集院。


俺がそんな失礼な物思いに耽っている事も知らず、
「僕がこんな格好で、何か不都合でもあるかね?」
と言いながら、いつの間に準備したのか
カチャ、と豪華そうなテイーソーサーに乗せられたカップをテーブルに置く。
・・・別に無い、って理由を考えてたんがな、今。
伊集院が淹れてくれたらしい紅茶を見ながら、ぼんやり考える。。
俺は紅茶の種類なんて詳しく知らないが、心地よい香りがするので多分そこら辺にも、伊集院のこだわりがあるのだろう。
・・・ほっそい指。
伊集院は俺の前に紅茶を置くと、俺の視線など全く気付いた様子も無く
対面に自分の紅茶を置き、テーブルを挟んだ俺の対面のソファーに座ろうとする。
…をい。


その指に引きづられる様に、指の先のやはり細い手首を掴んで、俺は伊集院の細い体ごと自分のソファーの横に座らせた。
こいつ、やっぱり分って無かったんだな。
つきあってるヤツを「自分の部屋に呼ぶ」と言う事の意味が。
「・・・。」
『彼女』の細い肩を掴んで、体ごと俺の方を向かせて顔を覗き込むと、「何をするんだ君は」と伊集院の顔に書いてある。
…考え方を変えれば。
男装をしてた高校三年間は確実に彼氏を作れなかったんだから、
(仮に中学の時彼氏が居ても、高校三年間の間にほぼ確実に別れただろうから)
そう考えると、この時代錯誤で何がしたいのかよく分からない愉快なこの家の家訓に、お礼でも言いたくなる。

客観的に見て、伊集院は綺麗だ。
卒業式の時と、最初のデエトの時しかまだ女装はお目に掛かっていないが、はっきり言って目茶目茶可愛かった。
陽に透ける金の髪、長い睫、すっきりした目鼻立ち、スレンダーな体の線。
すれ違う男は、ほぼ確実に振り返った。
三年間男だと通せてしまっただけあって、ハスキーな声も立ち振る舞いもひどく中性的で、
それが又アンバランスな魅力となって、一昨日のデートの間中、俺はずっと目が離せなかった。

訝しがる「彼女」の綺麗な顔と、深い色の目を覗き込みながら、手のひらで確認しつつゆっくり撫でる。
あのさ。
「あのさ」
肩に乗せた左手は、そのまま腕を撫で下げる。
傍に居る伊集院にしか聞こえない様な声で、そっと優しく言う。
「・・・俺が、伊集院に告られた時、何て思ったか、分かる?」
顔を撫でた右手は、そのまま結んである髪を往復する。
「・・・知る訳無いだろう。」


黙って俺のされるがままになってる癖に、冷静な振りをして、俺から目を逸らしながら答える。
「…あの時は、自分が必死で、そんな事」
恐らく「考えてる余裕なんて」とか続けたかったんだったんだろう語尾は、俺の口の中にあっけなく消える。
初めて彼女の唇を撫でる様に味わいながら、俺は頭の中で、そっと、続ける。
あのさ、
あの時、俺。
すげー腹立ったんだよね。


どうやら驚いたらしい伊集院は、一瞬体をビク、と固くさせ、両手で俺を押し戻そうとする。
が、なだめる様に優しく触れるだけのキスを繰り返し、肩から背中に流れた左手と
頭の後ろの首のあたりの右手に角度を付けて、無意識のうちに逃れようと動く体を、逃さない様に掴む。
力を入れすぎない様に注意しながら。
伊集院の口の表面は柔らかい。
何度か「お願い」をする様に、ゆるく口で口をついばみながら、伊集院の表情を覗き込む。
その途中にも、腕で体の角度を変え、ソファーの背に押し付ける様にキスを続ける。
伊集院は困ったのか、突然の事態に対処し切れないのか、顔を真っ赤にしながら目をぎゅ、っと瞑っている。
あー、こいつ中学の時も絶対彼氏居なかったな。
まぁ、10中8.9居ないと思ってたけど。こいつ色々ウカツだし。
…いやまぁ俺も居なかったんだけど。

とーぜん俺もキスもその先も始めてで、俺ももっと緊張だの手はずが不器用だのしてもいい筈だが。
はっきり言って俺はかなり今キレている為、至極冷静に欲望の赴くまましたい事ができてしまっている。
俺も、自分はもっと小物だと思ってたよ。


ひどく長い時間を掛け、唇の表面を舌で舐め上げる。
「・・・っつ」
と、呼吸が苦しくなったのか、今まで噛み締めていた唇が少し開いた。
と同時に俺はその口腔内にも舌を滑り込ませ、伊集院は俺から更に深いキスを受けるハメになった。
ソファーで、俺に上半身分の体重を掛けられ、無意識に押し戻そうとしたであろう両手も
背中から流れた俺の左手にいっしょくたに掴まれて、俺の緩慢な唇への愛撫を受けさせられている。
ああ、かわいそうだな、と他人事の様にちら、と思う。

伊集院の今の姿は、俺が三年間見続けた男の姿なのに、口の中や掴んでいる腕はやはり女の子だな、と思える。
俺の力で、そう苦で無く押さえ込める程、華奢でやわらかい。
時間を掛けて自分の好きな様に、伊集院の口の中を蹂躙する。
角度を変えて舌でこいつの口の中を舐め上げるとくちゅ、とやらしい音が立った。
その音に、困った様な表情のまま俺にされている伊集院から「…っ、ンッ」と鼻に抜けた様な声が出る。
キスに意識が集中して来たのか、少しずつ緩慢に彼女の体から力が抜けてくる。
俺は角度を変えて彼女を抱かえ直そうと、少し、お互いの口腔に馴染んで来た唇を離すと
彼女の少し名残惜しそうな潤んだ目や、上気した頬、濡れた唇なんかが目に入った。
その扇情的な光景にもう一度口付ける。

今度は彼女のスラックスの間に左足を入れ、もう戒める必要の無い左手も、触りたいままに
彼女の男物のシャツの上の右胸のあたりに触れる。

と、固い。感触が、ひどく。
…サラシ?


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