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月下桜園 (2)

◆ELbYMSfJXM氏

そのまま腕の内側に口づけながら上ってゆく。もう片方の手で胸を優しく包んでごく軽く揉む。
まだ風呂上がりの熱の残る肌はしっとりと心地よく適度に弾力があり俺を押し返してくる。
「や…、……」
平気な振りをしながら唇を噛みしめて身をよじる姿に、つい脇や胸の周りを舐め回す。石鹸の残り香が鼻孔をくすぐる。
指先で胸の突起に触れると小さく声をあげた。すぐに表情を戻すが頬が赤い。
「……後ろから、してくれるか?」
「ん?」
「見られたくない」
……要望通り後ろから抱き締めると柔らかな髪や肌がより密着する。
俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう華奢な躰はどこをなぞっても女の子のそれで、あのむさ苦しい野郎どもの中に居たことが信じがたい。
耳朶を甘噛みしながらやや手に余る大きさの胸は掌全体で揉むと動きに合わせて呼吸が熱くなってくるのが判る。
時折先端を指先で擦るとぴくりと躰が反応するのでだんだん尖ってきた部分を指先でこねる。右手で左を、左手で右を同時に刺激すると振り向いてきた。
「やめて……あの、さ、もう、いいだろ…」
切なげに眉を寄せて至近距離で請う。胸を触られながらも背中や肩はまだ強張った感じが残っている。同時にじんわりと熱さが腕に体に伝染していくのが心地良い。
「いいって……何を?」
「入れて、早く……」
「…………」
言うか?
もう少し触らせてくれてもいいだろ? それとも濡れやすいのか。
脚の間に手を滑らすと反射的に慌てて力を入れて阻もうとするが繁みをかき分けて到達すると、僅かに指先を濡らした。
「まだ早いだろ」
「……、だって、入れたら気持ちよくなるんだろ……?早くして…、くれよ……」
「――――入れてもいいけどな、今だと絶対に痛いぞ。…初めてだろ?」
「処女でもすぐ感じちゃって痛くなくなるって皆書いているよ」
「どーゆー本ばかり読んでいるんだお前」
「もう、触らなくて、いいから、さ……それより、早く…」
辛そうに目を逸らして呟く姿に、得体の知れないモノが体の中で生まれた。


とりあえずその要望は無視してお構い無しに体中を触る。ついでに後ろからの注文も却下して前から唇で胸を弄る。
口に含んで舌でつついてみたり、転がした後に全体を存分に舐め上げる。こりこりに固くなった所で今度は指先で摘んで擦り合わせる。
が、すぐにくすぐるような動きに戻し先端を舌先で刺激する。
自分でも判らない感覚が胸の奥に渦巻いている。最初はごく小さい染みだった濁りは流れに乗って徐々に広がってゆく。
急な責めに焦って聞いたことの無い声で抵抗する。先刻までの余裕ぶりが嘘のような狼狽ぶりだ。
「あ……、ぁんっ、だから…っ、やめ……」
「嫌なのか。まあ、そうだな。俺が初体験なんて不運極まり無い」
「ちがっ……、いや…あ……っ!」
胸元の柔らかい部分を強く吸うと紅く痕が付いた。鎖骨や首筋の辺りまで幾つも印を散らす。
「それとも……、こんな振りして何人もたらし込んでいるのか?口封じに」
「違う!そんなこと……っ」
うっすらと汗が浮かび上気した顔で息を荒げながらも、心底驚いた風に目を見開いて俺を見つめる。
「ぼくは……」
悲しげに顔をゆがめたかと思うと、自分から視線を外して目を伏せた。
その姿を見ても黒い思いは変わらない。かえって一層その濃さを増して俺を満たす。
「入れたら分るけどな。その前に散々触って弄らせてもらうから」
脚の間に膝を割り入れ脚を閉じさせないようにする。右手で膝下を持ち上げて女の部分を露わにさせると左手で何度も上下になぞる。
「…や…、触るの……っ、ぁあ…みないで……はぁぅ、」
徐々に溢れてくる愛液を上の方、繁みの辺りまで擦り付けて全体にまぶしていく。五本指で丹念に触れるように撫でていくと小刻みに震えてきた。
濡れて光りながら充血して膨らんできた部分を人差し指と薬指で挟んで剥き出しにすると腰をよじらせた。
「だめ、だ……、あ……っ、つ!」
中指でごく薄く掠めるように触り続ける。指先の動きに合わせてびくびくと体が動き声が漏れる。明らかに快感の混じる喘ぎに変わっている。
蜜はとろとろと溢れ出して脚の間を伝いシーツにいやらしく染みた。
「気持ちいい?感じてるのか?」
そんな姿を見られたくないのか俺を見たくないのか、両手で顔を覆って表情を見せまいとする様だが逆効果だ。
「もう……や、めて…ぇ…、これ以上、は……っ。だ、め……」
「まだ先は長いんだよ」
奥に指を突き入れる。くちゅりと音が立って思ったよりすんなりと第二関節まで埋まったが、取り巻く襞は締め付けて抵抗してくる。
この狭さは確実に処女だ。ゆっくりと指を折り根元まで出し入れしながらもう一本を入り口付近になじませるように刺激して広げてゆく。
汗と蜜でぬらりと熱くなった部分に顔を寄せる。濃密な女の匂いとひくつく花芯が男を誘う。すすり泣きにも聞こえる声により嗜虐心が増す。
熟れきったそこを舌で舐め上げる。舐める音と水音が新珠の耳にも響くように嬲る。唾液と愛液にまみれ艶めいた部分を更に吸い上げる。
「あっ、ぃや、ぁ…っ…あ…――っっ!」
背中を仰け反らせて下半身をがくがくと震わせた。足の指を突っ張らせてシーツに皺を寄せた後長く息を吐きながら弛緩した。
誰も見た事が無いであろう女の顔で。


「イったんだな。そんなに良かったか?」
「……ぁ……、」
とろけた瞳が光を取り戻し始める。だらしなく涎を垂らしてゆるく肩を上下させながら快感を全身で受け止めている。
「嫌がってても体は反応するんだよな、…そりゃ、生理反応みたいなものだから。諦めろ」
抜いた指にまとわりつく愛液を舐め取りながら目を合わせずに言い放つ。
「俺じゃなくてもこうなるんだよ。……ほら、お前の味だ」
蜜が残る俺の指を銜えさせる。泣き出す一歩手前の顔をしながらも受け入れる。
「ん…、やぁ……ちが…………、」
反発しながらも挑んでくるような舌の動きに指にもかかわらずぞくりとする。気が変わった。
「じゃ、入れるぞ。これが男のモノだ。これがあそこに入るんだ」
「…………っ!」
張りつめたものと俺の顔を交互に見比べ明らかに怯えている様子で後ずさりする。
「や…、だめ……、おおきい…」
思わずぐらりと揺れそうになったが――、そう見たこともないだろう、し、な……
「指よりは大きいな。触ってみろよ」
手を取って触れさせる。細く白く長い指がおそるおそる震えながら当ててくる動きはかえって昂ぶりを増してやばい。
「ちゃんと握れよ」
掴ませて上下に擦らせる。嫌そうに眉をしかめながらも教えられるままに両手で固く脈打つものを、俺のものを握っている。
擦り上げられるたまらない刺激に先端から透明な滴が垂れてきた。
「これ……?」
「男も気持ち良くなると出てくるんだ」
「きもちいい、のか……」
そう言って真っ赤な顔で凝視されるとちろりと舌が舐めた。嘘だろ。
「君に、されたから……、おかえし…だ……」
ぬるぬるした液体を舌で広げる。俺がしたように。指と違って熱く熱を帯びて粘質に這う動きの、あまりの良さにうっかり吐き出しそうになる。まだだ。まだ早い。
初めてなのか?これで。
「そのまま銜えて、奥まで入れるんだ…歯は立てるなよ」
ぐるりと舐め終わって先に戻ってきた所で逡巡する素振りを見せたが、そのまま従って徐々に口に含んでいく。


「…ん…はぁ……ちゅぶ…」
柔らかく包まれる感覚に舌や唇が触れるたびに背筋に電流が走る。フェラってこんなに気持ちいいのか。
10ヶ月前に1ヶ月、4ヶ月前に17日間1年生の女の子に告白されて付き合ったことがある。
「頭が良い先輩が好きです」とか言われたな。「先輩は私より本のほうが好きなんですね」と、あっさり振られたが。
えっちな事にも及んだが当然両手で数えられる回数しか経験は無い。今日の展開は自分でも想定外の外だ。
恥ずかしさと嫌悪感で耳まで真っ赤にしながら涙を溜めて奉仕する顔に汗で髪が一筋張り付いている。
あの、新珠燐に口でされている、たまらない征服感と優越感。快感が高まってくる。
「はむぅ…ちゅば…ん……、んんっ、っ!!」
「俺もイかせてくれ」
頭を抱えて激しく上下させて揺する。
「むぐっ…ん…んーーーっ」
無理矢理動かされて息も出来ず苦しがる様子を見下ろしながら満ちてくる思いに任せる。
頭の中が真っ白になり欲望を吐き出した。
一瞬緩んだ俺の手と射精された振動で、銜えていたものから解放されて辛そうに咳き込んだ。
「う…、ごほっ…、嫌……っ、のどきもちわるい……」
おそらく少しは飲んでしまったに違いない、頬や喉元に垂れる白濁液と流れ落ちる涙が行為の汚さを物語っている。
最低だな、頭が冷めて罪悪感が一気に襲ってきた。
「ねぇ、…本当にこれが気持ちいいの…?」
潤んだ瞳で咎められて嘘はつけない。
「いい。男は挿入と同じ位、……口でされるほうがいいって奴もいるみたいだ」
「そうか……、あの、アイスを舐めるみたいにって読んだから……って、今時の恋愛小説でもこの位載せているからな」
照れ隠しか口調が強気な元のペースに戻っている。しかし見た目は裏腹に俺に汚されたままのギャップが堪らなくいやらしく刺激する。
現金に復活したモノにゴムをかぶせると、もう終わったかの素振りをしそうな背中を襲う。
「俺は、入れるほうがいいな」
「え…、だって、やぁ、……ふぁんっ!」
押し倒してすぐ間近で見つめ合う。
……綺麗だ。
あくまで真っ直ぐ正直に俺を見つめ返す瞳には迷いは無く、ただ俺を映している。奥底まで見透かされるような色から逃げられない。
また決意が揺らぐ。どうして抱かれようとしたんだ、どうして俺なんだ。
問おうとした時再び唇に柔らかいものが触れた。今度は指でなく、――同じ唇。
「やはり読むだけじゃだめだな。実際に経験しないと、全然違う」
「俺を巻き込むのはやめて欲しいんだが」
「ぼくのライバルは君しかいないと言っているのに」
…………
今は考えない事にする。分らないことはいずれ分る時が来る。
彼女の口腔を味わいながら切ない息遣いと交わす唾液の響きに互いの躰が再び熱くなるのを感じていた。


「ん…、んっ、痛……っぁ、っつ……」
半分しか入ってないが背中に廻された腕は時折掴まる場所を探すようにもがいている。
気休めにしかならないが長い髪ごと肩をかき抱いて耳元にキスを続ける。
こっちも実は強く押すと折れそうでなかなか進めない。
「ま……だ、?…ぁ……っ」
滲む涙を唇でぬぐって答える。
「後少し、我慢出来るか」
「うん…だいじょ、ぶ……」
ぎゅっと抱き締め返す体を頼りに腰を掴まえて一気に押し進めた。
「――っ!」
指に力がこもって息を詰める気配の後に大きく吐く。
「は……ぁっ」
「全部入ったよ」
「――ん、そう、か……。あ、っ…これが……、ぁ…」
浅い呼吸を繰り返しながらゆっくりと確かめている。
俺は締め付けらるきつさと同時に温かさとそれまで感じたことのない妙な――敢えて言うなら安堵?充実した気分を味わっていた。
入れているだけなのに心地良い。
「気持ち良くなったか?」
「う…っ、あ、熱くて……いた、いのか……よく、わからない……っ」
真剣に悩む顔をする。何だか可笑しくて、
「じゃあ動いてみようか」
ゆっくりとぎりぎりまで抜くと再び奥まで入れる。繰り返す度に体が揺れて離れそうになる互いを逃さないように抱き留めた。
「あ、いたっ……、ぃ、あ…、やぁっ…」
やはり痛いらしい、爪を立てられるが新珠の痛みに比べられるものでは無い。
止めてやりたいが、その切ない声やしがみついてくる体の熱さ、泣き出しそうな表情に意外な程早く追いつめられていく。
「ごめん……、持ちそうにない」
細かく突く動きに変えると一層辛そうな顔をしたが繋がった部分が擦れ合う快感は増していく。
響く音も蜜や汗の匂いもより濃密に絡みついてくる。
「あ、……あまや、ど…っ」
涙を溜めて唇を求めてくる彼女を受け止めると俺の理性は完全に飛んだ――


身支度を整えて俺の部屋の鍵を手元で弄びながら忠告する。
「他の男が入ってくる確率があるぞ、取り替えておけよ」
「寮でこの一番奥の部屋に人が居るのは6,7Fだけだから。ぼくの部屋の隣も無人だし、その隣は奥丁字だから安心していいよ。
今月から寮に入るって言ったら父様が心配してね、家に居ると五月蠅くて集中出来ないから押し通したけど」
当然だ。年頃の娘が男集団の中に居るだけで大変なのに寮生活となれば、何かのはずみでばれてしまえば…、現にあっさりと暴露されている。
学園長が知れば半殺しに退学の道が頭に浮かぶ。もちろん拒否する気も無いしな。
「ここに居るほうが危ない。俺が言う台詞じゃ無いが、きちんと周囲に守ってもらえ」
「君が守ってくれたら問題ないじゃないか」
さも意外そうに、当たり前のように言う。
「ぼくの処女だけでは不満?」
「……新珠、お前……」
強烈な仮定が脳裏をよぎったが証明するのが怖い。
「今日ほど人心に関して勉強不足だと痛感した日は無いよ」
「学生の本分は勉強だろう?いいことだ」
「帰る……」
たかが20年も生きていない人生で何かを知った気になって浮かれている脳をぐちゃぐちゃに掻き回された一日だった。
「ひとつ聞くけど」
ドアの前で振り返って、ベッドの上で上半身をシーツで隠して座り込んでいる彼女に疑問をぶつける。
「どうして男装しているんだ?」
「内緒」
っ、突っ込む前にまたしてもあの笑顔で阻止された。
瞳も髪も存在自体が煌めく幻に錯覚させる程の純粋さ。
全てを投げ出せる覚悟を即座に決めてしまえる強制力を持った最終兵器。
ロックオンされた時期も撃墜タイムも検討するだけ無駄だ。
考えるものじゃなく、初めから落ちるものと決まっている。
「じゃあな、また明日」
金縛りから脱出して声を絞り出すと退散する。これ以上顔を見ていたら朝まで居座ってしまう。
戻っても明日は睡眠不足だな、と苦笑しながら階段を降りた。


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