「・・・・エリス?」
そうであって欲しくない思いを込めて呟く。
「えっ!?」
エリックはそう呼ばれて驚いて俺から離れる。確信を突かれた、という表情だ。
「やっぱり・・・・・エリスなんだな?」
(私エリスって言うの)
全ての記憶を思い出した・・・・・最悪だ。
「あ・・ゼット様・・・」
不安げにエリック、いやエリスが見つめてくる。
頼むそんな目で見ないでくれ・・・・・俺にはそんな資格・・・
ふとエリスに手が伸びる。あの時の手の感触を確かめたくて。
「!!」
触れようとした瞬間、エリスはビクッと身体を震わせた。
「エ・・・エリス・・・」
屈服なんかしてなかった・・・・拒絶された・・・・
・・・・・・嫌われた!!!
俺は部屋から飛び出た、いや逃げ出した。
「ゼット様!!」
背後からエリスの声が聞こえた。でも・・・・それは気遣うフリなんだろ?
その声に答えることも出来ずに俺は逃げた。
何で気付かなかったんだ?
見ればわかるだろ?
大きくはなったがあの時のままじゃないか?
自分のバカさに嫌気がさす。本当に・・・本当に・・・・
「何やってんだよ!!!」
どうしよう・・・・取り返しの付かないことをしてしまった!!
エリスにまた会いたかったのに・・・・
カワイイなって思ったのに・・・・
初恋だった・・・
好きだった・・・・
エリスを・・・・エリスを・・・・・
「愛していたのに!!!」
自分の部屋に逃げ込んだ。そのまま床に突っ伏す。
「クソッ!!クソッ!!クソッ!!」
床を殴りつけながら今までの自分に悪態をつく。そんな事をしても今更遅いというのに。
(その男に見せてやりたいなぁ・・・今のお前を)
今までエリスにしてしまった仕打ちが頭に流れる。
「何言ってるんだ俺!!」
(エリック、一人でシてみろ。)
「バカッ!!相手はエリスだったんだぞ!!」
(変態)
「違う・・・エリスは違う!!」
(変態)
「違うって言ってるだろ!!」
(変態)
「そうさせたのは俺じゃないか!!」
こんなはずじゃなかった・・・・こんなんじゃなかった。
こんな事のために今までやってきたんじゃない・・・・
こんな未来が欲しかったんじゃない!!
俺が望んだ未来はこんなんじゃなかった!!
「・・・・クククク・・・・ハハハハ・・・」
もう笑うしかない。だってそうだろ?王国に復讐する。それだけの為に
今までやってきたのに、そんな自分が手に入れたかったものを
傷つけてしまったんだから・・・・
ピシィィィッ!!!!
「ハハハハハ」
もうダメだ・・・
「クククククク」
俺の心は・・・・
「アハハハハハハ」
完全に・・・・・
完全に砕け散った。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
第6話〜完〜