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本当の想い1

10_197氏

さてと世間ではクリスマス前。
カップルたちの幸せが倍増し、独り身には風が骨身にしみる季節だ。
まぁ、俺にも実は彼女がいる。
クラス、いや学年1の美女で俺も玉砕覚悟で告白したのだが
奇跡的にOKしてもらえたのである。
男からモテる割りに彼女は謙虚で優しかった。
俺はその幸運を絶対に無駄にはしない。
今から彼女とクリスマスを過ごすのが楽しみだ。
「彼女とクリスマス、すごすんやろ?羨ましいなぁ。
しかも学年一の美少女やないか。彼女、泣かせたらうちが怒るさかいな。」
「そんなにがっつくなよ。お前はモテるんだから適当なの取って来ればいいのに。」
「あかんなぁ。男は追うより追われる側の方がええんや。」
「モテるのに選り好みするなぁ。」
「モテるからや。」
俺とバカをやってるのが柊七雄。俺の親友である。
というより腐れ縁。幼稚園の頃からずっと一緒にいる。
さっきの話のとおり、中性的な顔つきの為かこいつはかなりモテる。
こいつ目当てで俺に話しかけてくる女も何人かいる。
でもあいつはそんな女は好かないらしくそんな女には見向きもしなかった。
 今日は彼女の方は用事があるから一緒に帰れないらしい。
仕方ない。男同士、ときには親睦でも深めるか。
「七雄、帰ろうぜ。」
「あれ?彼女さんは?」
「用事があるらしい。急がしいらしいからな。」
「そか。モテるのは男女問わずに大変やからな。告白を断りにいっとるんやろ。」
「それはしょうがないな。」
そこで下駄箱に行く。
七雄の所には毎日のようにラブレターが届く。
俺だったらそのうちの一人とつきあうのに七雄は付き合おうとしない。
だからとはいえ、女に興味がないわけじゃない。
全く行動が理解できなかった。
そこで七雄が驚いた表情をする。
「こっ、これ、まさか……!?」
「なんだ。七雄。今更、ラブレターなんて珍しいものじゃないだろうに。」
「ちゃうちゃう。せやない。里美ちゃんから来とるのや。」
「へっ?」
一瞬、驚きを隠せない俺。里美は俺の彼女の名前である。
「同じ名前の別人じゃないか?」
「あほ。苗字の同じ同名の別人がおるか。」
俺は手紙を取るのを戸惑っていると七雄が俺に手紙を手渡した。
それは間違いなく、あいつの字だった。
「もしかして、あいつへの嫌がらせか?それともラブレターの代筆か。」
七雄は女を見る目がかなり厳しい。告白の場所に行かないことも結構ある。
七雄いわく、「こっちの都合も考えい」だそうだ。
だからモテる女の名前を借りたのだろう。
里美は言われたら断れなさそうなタイプだからな。
「そうかもな。うちはそこには行くさかい。あんたとは帰れへん。すまんな。」
「そうだな。」
「それに、もしかしたら襲われるかもしれへんしな。」
七雄は笑いながら言っている。
振られた女が腹いせに襲うことが実際にありえるだけに笑ってられる七雄の器はかなり大きい。


 そして、七雄は待ち合わせの場所に向かう。
実は俺もその場所に行くことにしていた。
あの七雄に彼女が出来るかどうか、興味本位だったのだ。
俺はその判断を後でものすごく後悔したのだが……。
くそっ、遠くてよく見えない。徹夜でゲームのやりすぎがこんなところで祟るとは。
だがこれ以上前に出ると相手に見つかってしまう。
「もしかして、七雄君一人で来てくれた?」
「あぁ。一人で来たで。」
「実はね私、そのね、…」
「なんや?」
「七雄君のことが好きなの。」
「なっ、なんやって!!」
驚く七雄の声。
それは当然である。女の声は里美の声だったのだから。
そんな、バカなっ。
まさか、あいつが…!?
「お前、今あいつと付き合ってるんちゃうか?」
「うん。でもあれはあなたに近づくためだから。本命はあなたなの。」
里美の口から語られる衝撃の一言。
あいつの本心は俺にはなかったのか……?
「そっ、そんで、うちの事が好きなんやな…」
驚きながら満更でもない七雄。
悔し涙が少し目を潤す。
「うん。3ヶ月くらい前からずっと想ってたの。」
「せか。」
「私と付き合ってくださいっ!!」
なんとなくいい雰囲気。
親友の為だ。邪魔者は去ろう。俺は耳を塞いでこの場から立ち去った。
俺はこの日、親友と恋人を一気に失ったのである。


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