「司……」
膝をすくって抱きかかえ、恥ずかしそうな頬に口付ける。はにかんだ笑みを見つめてベッドに横たえる。
久々の高揚感にまかせて、貪り尽くしたい。
「ちょっと、抑えが利きそうにないんだけど……」
苦笑しながらの告白に、司も中途半端な笑いを浮べてみせる。
「大丈夫…俺もちょっと、暴走しそう、だから」
「……たまんないな」
噛み付いて、唇を貪る。自分のがむしゃらさがおかしい。
息をするのも忘れて、舌を絡ませ、唇を食んで、吸いついて、唾液を注ぎ、すする。
「……んむっ……っは……ん……」
それに必死で答えてくれる司にもっと触れたくて、普段よりいくぶん乱暴に服を脱がす。
「…んは、はぁっ…」
口を離すと銀の糸がひいて、それも惜しく感じて舐めとる。
体を起こした隆也が服を脱ぎ始めると、しばらくぼんやりしていた司もはっとしてサラシを巻き取る。
隆也はズボンを下着ごと脱ぎ捨てて蹴り飛ばす。どうも今日の自分は年甲斐もなく焦っているようだ。
その焦りもどこか嬉しい。
司が少し躊躇して下着を脱ぎ捨てる。濡れていた。
少し見ない間に日に焼けた首から視線を下ろしていくと、肌がグラデーションになっている。
まったく日に焼けていない胸は静かに上下して、隆也の手を待っている。
「……司」
覆いかぶさってもう一度、唇を重ね舌を絡める。
掌に吸い付くような胸を、円を描くようにゆっくりと撫で回す。
「…ふ……んぅっ……」
鼻にかかった息が漏れる。さらに胸を揉み立ち上がった乳首をこねると、司の舌の動きが止まる。
「……ふぁ…ん……はぁ……」
ぴくぴくと震える体が可愛い。苦しげな息を漏らす司の腕が首に回っている。この重みも久しぶりだ。
「は……可愛いな、司……もう…」
「ひゃ…せんせぇっ……」
耳元で囁くと、また声をあげてぴくりと体を震わせる。
太ももを擦り合わせるように腰をくねらせているのに気付いて、茂みの奥に手を差し入れる。
「や、あ……」
花弁に触れる前からそこはすっかり濡れていて、ひくつく膣口から溢れた愛液はすでにシーツを汚していた。
「びしょびしょだな……」
秘裂に指を滑らせると、愛液が絡みつく。卑猥な水音を立ててやると、司が首を振る。
「あ…あぁ、んっ……やぁ…」
「……いい声だ……」
首筋に唇を落とし、膣口をなぞり指先を埋める。
「あっ……やぁ……」
逃れるようにくねる腰とは裏腹に、膣は快感を求めて蠢いている。
「……いくぞ」
返事を待たずに指を押し込み、絡みつく愛液と膣壁を押しわけて奥へと進む。
身をよじる司の口から漏れる声を聞きながら、指先を曲げて中をかき回す。
抉るように抜き差しすると、いやらしい音をたてて愛液が溢れる。
「だめ、やだぁっ……せんせ…せんせぇの……っ」
首を横に振ってよがっていた司の目が、じっと隆也を見つめる。
「……司……」
喘ぎながらも自分を求める司の腕が無理矢理首を抱き寄せる。
「は……もう、待てないよっ……」
ぷつんと、理性が焼き切れてしまいそうだ。
腹に付きそうなほど立ち上がった肉棒を司の下腹部に押し付けて、指を引き抜く。
「…俺もだ……いくぞ」
腰を引いてぬめる膣口に先端を押し当てる。一瞬体を強張らせた司の目が潤んでいる。
「は、い……」
暴れだしそうな肉棒を押し込むと、生々しい水音と膣壁が絡みついてくる。
快感に喜んでびくんと跳ねた肉棒を、じりじりと押し込んでいく。
「ふぁ……あ、は……あぁっ……」
すでに言葉や理性を捨ててただ貪りたかったが、小刻みに震える体を押しつぶして、耳元に顔をよせる。
「…すごく…いいぞ、司の中……」
囁いて耳たぶを噛めば、ぴくんと震えた司の声が耳をくすぐる。
「あ……ん、嬉しい…せんせぇ……」
もう、言葉はいらない。収縮と弛緩を繰り返す膣内をえぐるように、いきなり激しく腰を打ち付ける。
「ふぁ、あっ……あぁっ……やぁっ……!」
身をよじり逃げようとする腰を押さえつけて、何度も何度も、激しくつきあげ、中をかき乱す。
「せんせっ……や、あぁっ……だめ、だめぇっ……!」
何度押し開いても絡み付いてくる膣は理性をどこかへ追いやってしまう。
「は…司……司っ……!」
息を上げながら名前を呼び、何度も唇を落とす。
「せんせ…せんせぇっ……いっちゃう、よぉっ……!」
震える司の泣き出しそうな声が、はっきりと耳に届く。
「んっ…いいぞ、俺も……っ」
あらん限りの力で腰を打ちつけ、中を抉る。
「あ、あぁぁぁぁぁっ……!」
司の絶叫とともに膣は肉棒を締め付け、その最奥にたまった熱い精液をぶちまける。
勢いは止むことなく、何度も何度も、この20日間の欲情を注ぎ込む。
びくびくと震える司の体を抱きしめて、息を整える。
「ふぁ……は…せんせぇ……」
「は……司……良かったぞ……」
頭を撫でて、体を横にずらし肉棒を引き抜こうとすると、何故か止められる。
「……だめ。まだ……こうしてて」
少しでも長くつながっていたいと、そう思ってくれているのだとしたら。
…焦りすぎたというか、早すぎただろうか。
いずれにせよ今は激しすぎた交わりの反動で、全身がだるくて仕方がない。
「ん……わかった。少し、休もうな……」
熱い体を抱きしめて目を閉じると、倦怠感と睡魔が襲ってくる。
司も同じように目を閉じて、二人はほどなく眠りについた。
はずだった。
「…司、何してるんだ?」
目を覚ました隆也の腕の中に司はいなかった。
汚れたシーツを目にして洗濯の苦労を思ってため息をつき頭を巡らすと、司はまたパソコンの前にいる。
「あ、おはようございます。勝手にネットしてますよ」
この敬語の使い方は男子高校生モードだろうか。
どうせならあそこでもう一頑張りして、今日はもう動けないぐらいに犯してやればよかったかもしれない。
「…そうか……なんだ、自分で探すのか?」
のろのろと衣服を整える隆也の予想は当たっていた。
「うん……でもやっぱネットは需要が多いのばっかで、あんまりおもしろいのは見つかんない」
見ると司はTシャツと下着だけを身につけているらしい。大き目のシャツから伸びる脚は艶かしい。
「まぁそうだろーな…で、何探してるんだ?」
しかし出てくる単語はどうしようもなく女の子らしくない。
「エッジプレイの動画」
「……エ…エッジ……?」
そんな単語、うっかり聞いたことはあるけど女の子の口から聞くのは初めてですよ?
「そう。束縛とかフィストファックとかの見た目いかにもなやつじゃなくて、もっとこう、"この世界にいないと
理解できない"みたいなディープなのがいいから」
それを堂々と口にするお前を俺はどうすればいいんだ。脱力した隆也の口からは正論しかでてこない。
「……それはあれじゃないか……やっぱり法律に抵触しそうだからそのへんには転がってないんじゃないか…?」
「んー。やっぱそーか…でもフツーの持ってってもなぁ」
フツーのって、その基準はどこにあるんだ。いやそれよりなにより。
「なんでそんなにマニアックなもんにこだわるんだ?どうせ見ないんだろう?」
まさかほんとにそっちの趣味が、と言う隆也にむくれて赤面して、司は意外なことを言ってくる。
「違います……普通の奴には理解できないようなモン持ってけば、俺に下ネタ振りにくくなるでしょ?」
たしかにエッジプレイをするような奴に、普通の下ネタは振れない。
「…あー、そこまで考えてたのか。なるほどなるほど。だったらもっと簡単な方法があるだろ」
隆也は身を乗り出して、カチカチとマウスをすべらせ検索ワードを入力する。
『ゲイ 動画』
がつんと、頭を横から殴られる。
「ほんとにソッチの人に求愛されたらどーするんですか!」
「いや、そんときゃそんときだろ。俺を道連れにしてもいいんだぞ?」
半笑いで言う隆也に、司はむっとした表情。
「……ダメです。俺が卒業するまでは平穏無事に生活してください」
「つってもなぁ……」
ぽりぽりと頬をかく。それはさっきの行為と矛盾しているだろうと言外に匂わせると、司はおもむろに立ち上がる。
「そのへんは大丈夫……ほら」
かがんで荷物を拾うと、いいアングルでお尻が見えるのだがそれは黙っておこう。
司がかばんから取り出したのはピルケースだった。
「……え……お前ピルなんて飲んでたのか?」
「うん。叔母さん…保健の先生が、俺が男子生徒として入学する条件だって言って。
ホルモンバランスが崩れるし何かあったら大変だからって…」
こう生々しい話をされると、自分の認識の甘さを考えさせられる。気の抜けた返事しか出てこない。
「そっか……まぁ……そうだろうな」
「うん。じゃなきゃいくら先生がいいっていっても中出しなんてさせません。俺、ちゃんと高校出たいもん」
ぎゅう、と司が抱きついてくる。用心深いわりにこうして無邪気に、無防備に笑うから心配なのだ。
「だからまずは、修学旅行。よろしくお願いします」
笑って言う司を、これからどのくらい愛していられるのかわからないが、やはりとりあえずは修学旅行だ。
「…だな。そうそう、いい考えがあるんだ……」
でもその前にちゃんと服を着ろ、と指導して、この日は日暮れまで修学旅行の打ち合わせをしていた。
この打ち合わせが全て成功するかどうかは、まだ誰にもわからない。