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司10 (3)

◆aPPPu8oul.氏

隆也もあっさりと服を脱ぎ捨てる。クリスマスのために、久々に冬服を買ったのは秘密だ。
細い腿を割って体を入れて、顔や胸にキスを落としながら茂みの奥へ手を差し入れる。
濡れたそこをゆっくりと撫で、揉んでやる。
「ん……あ、あ……」
漏れる声に気をよくして、ときおり顔を上げては嬉しそうに司と目を合わせる。
「気持ちいい? 」
「ん、きもち、いい……」
口元に手をやって恥らう姿もいいが、もっと乱れて欲しい。
手を取り硬くなり始めた自分の下半身に触らせると、戸惑いながらも手が動き始める。
「先生、いい? 」
根元から先端まで、先走りを絡めて扱く手の動きに、息が乱れる。
「ん、いい、ぞ……司も、な……」
指を潜らせ、絡みつくような肉壁をなでてやると、手が止まり腰が揺れる。
「あ、ん、ぅ……あ、せんせ……」
「うん……気持ちよかったら、ちゃんと気持ち良いって言うんだぞ」
わざとらしく水音を立てながら指を出し入れし、さらに一本を加えて内側をほぐす。
溢れた愛液がシーツを濡らして、いやらしい染みを作っている。
「ん、あ、あぁっ……い、いいっ……きもちいいっ……」
顔を背け悶える司を追い詰めるように、体を倒し乳首を責める。
舌を這わせ吸い上げて軽く歯を立てると、体を挟んでいる足が震え、可愛らしい声が漏れる。
「や、だめっ、せんせぇっ! あ、んんっ……」
自分を呼ぶその声に、ぞくりと何かが走る。
責めの手を止め、息の乱れた司に覆いかぶさって頭を撫でる。
「な……一つだけ、プレゼントが欲しいんだけど聞いてくれるか? 」
紅潮した頬を寄せて目を細めていた司が、不思議そうに目を覗き込んでくる。
「いいけど……何? 」
「名前で呼んでくれないか? 」
「え」
大きな目を丸くしたまま、固まってしまった司に笑いかける。
「もちろん、司が嫌ならいいけど」
「い、嫌じゃない。嫌じゃない、けど……」
「けど?」
「……恥ずかしい……けど、頑張る……」
たかだか名前を呼ぶだけで頑張らなければならないのかと思うと、笑みがこぼれる。
赤い頬をなでて、気が変わらないうちに、と体を起こし司の脚を抱える。
「ひゃっ、せ――……」
言いかけて口をつぐんだ司の口から、いつその言葉が出てくるかと期待に胸を膨らませながら、
いきりたった先端を宛がう。
「……入れるぞ」
ぐ、と腰を押し出すと、受け入れの準備が整ったそこは簡単に男を飲み込む。
飲み込んでおきながら、その狭さと独特の弾力と熱でもって、たまらない責めを味あわせる。
「あ、んぅっ――っ」
奥まで押し込んでゆっくりとスライドさせると、色っぽい吐息が口をつく。
普段ならそこに混じるはずの”先生"という単語が聞こえない。
変わりに名前を呼んでくれるはずが、それもまだ聞こえない。
焦るつもりはない。今日は無理でも、近いうちにそう呼んでくれればいい。
少し意地悪をしすぎたかなと反省しながら、次第に快感を得る作業に没頭していく。
腰を抱え角度を変えて奥を責めると、途切れることなく喘ぎ声があがる。
「あ、んっ、あっ、あっ、あ――」
「つ、司っ……いく、ぞっ……」
ぎしぎしとベットにも悲鳴を上げさせながら腰を振って、目の前に迫った絶頂に向かう。
赤くはちきれそうな陰核をつまむと、びくんと背が跳ねる。
「や、いやっ、だめ、だめぇっ! 」
「んっ、俺、もっ……一緒に、いこう……司っ……っ! 」
腰を打ち付けられ波打つ体が、快感に震える。そのまなじりから涙がこぼれ、喉の奥から声を絞り出す。
「あ、あっ、だめ、あぁっ――せ、た、たか、やぁっ! 」
「っ!! 」
どくん、と際奥に精を放った瞬間、頭の中が真っ白になった。
体で感じる以上の快感があることを、久々に思い出した。
しっかりと最後まで精を出しつくして、抱えていた脚を優しくなでて体を離す。


「はぁ、は……せんせぇ……」
結局戻ってしまった司の泣き顔に笑いながらキスをして、熱い体を抱きしめる。
「……司」
呼吸を整えながら名前だけ呼んで頭を撫でると、甘えるように擦り寄ってくる。
「は……あ、やっぱり、先生って呼んじゃう」
「うん。少しずつでいいさ。けど、嬉しかった」
笑顔を作るのではなく、自然と顔がそう、幸せを形作る。
「ん、うん。これからも……できるだけ、名前で呼ぶ」
「うん。それが俺へのクリスマスプレゼントな。司の欲しいものは? 」
頭や背を撫でていると、気持ち良さそうに目を閉じてしまう。
瞼を撫でると、くっきりと大きな目が隆也を捕らえる。
「んー……え、っと、ね」
「うん」
「明日、ずっと一緒にいて。……隆也が欲しい」
言って、司は恥ずかしそうに顔を胸に埋める。
「……うん。お安い御用だ」
口元に笑みをたたえたまま、目を閉じる。
肌の境はもう感じられなくて、鼓動まで重なったような錯覚に陥る。
ゆっくりと夢の中に落ち込んでいく感覚を味わいながら、毛布を手繰り寄せる。
鈴の音もクリスマスソングも、今は心地よい子守唄にしかならない。
静かに、静かに。
来年もこんな日が過ごせるようにと意識まで溶け合いながら、二人は夢に落ちていった。

一年後、十二月二十四日、午後四時半。
『何!? 塾の時間間違えてただぁ!? 』
携帯の向こうで、隆也が間の抜けた声をあげる。
司が参考書を片手に眉をしかめ、溜息をついて視線を教室内に巡らす。
「だから、ごめんってば。センター対策の補講忘れてたから」
『教科は? 日本史なら見てやるぞ』
「たか……都さんじゃ勉強にならないだろ。しかも今日! 」
"男"と"女"を使い分けるのも、"先生"と"三宅隆也"と"高久都”を使い分けるのも、司にはそれなりの労働だ。
隣には塾の友人がいる。隆也の声は聞こえないが、司の声は丸聞こえだ。
『うん。確かに。教える気あんまりないな』
より深い溜息が口をつく。教師の癖に、と言いたいのを堪えて口を開く。
「……じゃ、今から授業だから。都さんの手料理楽しみにしてる」
『はいはい。わかったよ。んじゃな』
通話を終えると、さっそく友人が声をかけてくる。
「なんだよ、彼女とクリスマスイブか? 」
「そ。受験生はお休みします」
言いつつ、次の授業で使う参考書を開く。日本史、それも江戸時代の政治についてのページだ。
「あー、くそ、お前なんで落ちちまえ」
参考書を見ていた司の手が止まり、友人の言葉が耳を素通りしかかる。
「な。糸割符制度が施行された五都市、全部言えるか? 」
ふいに司に問いかけられた友人は、難しい顔で記憶をたどる。
「は? えーと、江戸、堺、長崎、京都……と、どこだっけ? 」
頬杖をついていた司はにやりと笑んで視線を参考書に落とす。
「大阪だよ。お前が落ちろ」
ここだけは絶対に忘れない、とマーカーで線を引きながら、司は数時間後に思いをはせた。

――終り――


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