「・・・−−コンラッド・・・コンラッド!」
「・・・えっ?」
突然声をかけられ俺ははっと顔を上げた。
眞魔国−中庭。
自分の顔を心配そうにしながらのぞき込んでいたのは自分が護るべき双黒の魔王−。
その向こうには大賢者と、つい最近こちらの世界に来たばかりの言賜巫女以上の力を持つ双黒の少年が見える。
今、ユーリ達双黒3人組は裕哉に眞魔国のことを教えるという名目の元、中庭で勉強会の真っ最中なのだ。
「どうしたんだよ、急に黙り込んで。あ、もしかして具合が悪いとか?!」
ユーリが俺の額に触れ、そのぬくもりに俺はふっと微笑んだ。
「いいえ、すいません。ちょっと考え事をしていて・・」
「そっか、ならいいけど・・・」
さあぁあああ・・・と心地よい風があたりにふいた。
季節は新緑の季節へと移ろうとしている。
もう、雪は降っていない。
「えっと・・・じゃあ門崎、次は第22代目魔王のロベルスキー・アーセニオについて・・・」
「村田・・・。俺の頭の出来、知ってるだろ・・・。んないっぺんにいわれても覚えられないって!!」
新緑に色を染めた葉がざわざわと音を立てて鳴りだした。
「ユーリ・・・」
ぐいっとユーリの体を自分の方へ引き寄せるとユーリは驚いたような顔をして、それでも俺の腕の中へと大人しく収まった。
「コンラッド・・・?」
ユーリを自らの手で処刑しろと言われた時。
『時は幸福を与えてくれますが、また全てを奪い去る事もあります。陛下が成長しこちらの世界へいらっしゃる日を待った15年間、時は毎日俺に幸福を与えてくれた。そして、こちらの世界へお迎えしたあとも・・・。これが、俺が貴方に関わった全ての時間が教えてくれた結論です』
そういって俺はユーリを縛っていた縄を切り捨てた。
ユーリを己の手で殺すくらいなら眞王陛下から与えられた役目さえも投げ捨てユーリを護ろうと考えたからだ。
俺にとってユーリはこの世で何よりも大切な人で・・・その人を殺すくらいなら自分が・・・とさえ思い立っていた。
でも、俺は2度とこの人の隣には立てないと心のどこかで諦めていたのかもしれない。
俺は、サヤ師範の言うとおりユーリを苦しめた。
悲しませた。
だけど・・・
『死ぬなんて許さない。』
あの崖の上で死にかけた俺にそう低い声で告げてきたのはサヤ師範だった。
『もし、死んだら私はコンラッドを絶対許さない』
あの時の彼女の声が忘れられない。
そして・・・。
『いつも・・・いつもそばにいるっていったのはコンラッドじゃないか!俺は、コンラッドがいてくれた方がいい。・・・−俺の、そばにいろよ・・・。』
涙声でそう言われた時に1つだけ俺は誓ったのだ。
「もう2度と貴方を悲しませたりしません。・・・ユーリにはいつでも笑っていてほしいから。」
ユーリの体を強く抱きしめながら囁くとユーリはきょとんとして俺を見つめた。
その顔を見て俺はくすりと笑みを零す。
「俺の居場所は・・・俺が還るべき場所は貴方を抱きしめられる、この位置です。」
そのまま唇を重ねるとユーリの顔がぼっと真っ赤に染まった。
「いやー・・・熱いねぇ、お2人さん。」
「俺たちの存在、完全に忘れられてるもんな」
その横で猊下と裕哉がぼやきながら溜息をついている。
−貴方は俺がそばにいることを許してくれた。望んでくれた。俺は約束するよ、ユーリ。もう2度と貴方に悲しい涙を流させないと。貴方のそばに、ずっといると・・・−
Fin
〜あとがき〜
「さらばコンラッド」「絆のために」ネタです!
ってか激しくネタバレしていて申し訳ありません(汗)
かなり前に書いてパソコンに眠っていた小説を引っ張り出してきました(ぇ)
ところどころ手直ししているうちに門崎裕哉を出してみたり・・・(ヲィ)
門崎裕哉については・・・ドリーム小説を・・・(こらこら)
でも実はムラケン、ユーリ、裕哉の双黒3人組みという呼び方が何げに気に入ってます(笑)
この3人の話はまた書きたいな、と・・・。
ではここまで読んで頂きありがとうございましたv