氷帝学園−総勢200人の部員をほこる氷帝学園男子テニス部。
200人の部員達は洗濯物などはすべて自分で各自で家に持ち帰っていた。
しかし、部活中の水分補給・・・合宿先での洗濯など何かと不便が起こっていた。
そんなある時、榊太郎(43)が部長の跡部景吾(14)に提案したのだ。


        

マネージャーの栄光は誰の手に!?(前編)


「マネージャー・・・ですか?」

朝練後の音楽室、跡部はいきなり呼び出されて何事かとむかってみればピアノを弾きながら榊監督はいきなりこういいだしたのだ。
       
「何人かマネージャーをとってみるのはどうだろうか?」と。

そして冒頭の跡部の言葉が出たのである。

「そうだ。最近、部員達からそういう苦情があってな。話を聞いてみれば確かにマネージャーがいてもかまわないという気がしてな。」

そういえばレギュラー陣たちからも『ジローをいちいち起こしに行くのが大変だ』という苦情がでてきていたはずだ、と跡部はぼんやりと考えた。
    
「まぁ・・悪くはない話ですがその決め方は・・・」

「それは部長のお前に一任する。マネージャーはレギュラー専用が1人。それら専用が5人。計6人というのはどうだろうか。」
       
「わかりました。ではそのように検討します。」

その返事をきいて榊は満足そうに鍵盤を叩くといつものポーズで「ごくろう。では戻ってよし」といったのだった。


その日の昼休み・・・スピーカーから聞こえる「鍛冶屋のポルカ」が耳に心地よい中、テニス部レギュラーの忍足 侑士・向日 岳人・鳳 長太郎・芥川 慈朗・宍戸 亮は5人で屋上で昼食をとっていた。
    
「やっぱり、こんなけ暑いと屋上なんて人こないよなぁ・・」

「せやな・・・。結構いい風ふいとるんやけど・・皆、暑いと決めつけておるんやろうな」

しっかりと日陰の部分に腰を下ろし皆が皆思い思いに食事をしている。
    
「でも今日午後からものすごくあつくなるっていってましたよ?」

長太郎がスポーツドリンクを飲みながら呟くように言うとそのとなりで暑そうにしながら弁当の中の卵焼きをたべていた宍戸が心底嫌そうな顔をした。
  
「まじかよ・・・。俺らのクラス、今日このあと体育あるのによぉ・・・」
            
「うっわぁ・・・ご愁傷様〜v」

「でも、宍戸。体育いうても今日から確か水泳やろ?なにがそんなにいやなん?」
        
「あれ?亮ちゃんって泳げなかったけ〜〜??」

いつのまに起きたのかジローが不思議そうに顔をのぞき込みながら尋ねる。
          
「ば・・・っ・・・ち・・ちげぇよ!!」

その声に慌てて否定する宍戸。
      
「あ・・・もしかして宍戸・・あの日・・とか?」
      
「え・・・?え・・?あの日ってなんですか?」

             ばこっ!!ドカッ!

岳人がにやにやしながらふざけていい、長太郎がまじめにそれを尋ね返した瞬間、顔を真っ赤にさせた宍戸が自分の持っていたペットボトル(500ml入り、封をあけてない)で思い切り岳人と長太郎の頭を殴ったのだ。
             
「いって〜〜〜・・・・・」

いきなりのかなり痛いつっこみに殴られた場所をさする岳人。
       
「ただの冗談だろ、んなにムキになる必要ないじゃんか!」
           
「その冗談の内容によるんだ、あほ!!」

そのままいつもどおりの喧嘩に発展していく二人。

・・・進歩ねぇな。
                 
「??」

なぜぶたれたのか未だに理解できていない長太郎は言い合いを始めてしまった2人を放っておき忍足の元へといく。
             
「あの日、ってなんですか?」

そんな様子の長太郎をみると吹き出しそうになるのをこらえたまま忍足は長太郎の肩に手を回した。
         
「なんや、ほんまわかってへんの?だから・・・」

ぼそぼそと小声で何かを説明する忍足。

そして・・
         
「えっ!?宍戸さんって女の人だったんですか!?」
               
「ちげぇ!!!!」

                げしっ!!

マジなのか天然なのか・・・長太郎の言葉に今度は思い切り跳び蹴りを食らわせた宍戸・・。
その足下には長太郎の屍が・・・(汗)
           
「お前ら本当仲えーなぁ・・・」

今のどこを見てそう思ったんですか、忍足さん!?
        
「そうそう、亮ちゃんはちゃんとした男だよねv」

そういいながらジローが宍戸の上の制服をがばりと鎖骨までめくりあげた。
     
「!?ジローーー!!!!なにしやがるんだ、てめぇは!!」
   
「あはは、かわいい後輩の疑問に答えてやるのも先輩のつとめだC?」
            
「・・・・っ!!!!」

その様子を長太郎は顔を真っ赤にして食い入るように見つめ、岳人はつまらなさそうにみつめていた。
そして忍足はというと・・・
     
「へぇ・・宍戸って結構ええ体してるやんか・・・」
            
「コメントするな!!!」

                ばこっ!!

履いていた上履きを忍足に投げつけ怒鳴る宍戸さん。からかわれまくっています・・・。

その時・・・

−ピンポーンパンポーン・・・−
さきほどまで流れていたクラシックが止まり、かわりに放送の呼び出し音がかかった。
皆反射的にスピーカを見つめる。
そして流れてきた声は・・・

『よぉ、てめぇら。またせたな・・。今日は俺様がじきじきに俺たち氷帝テニス部のマネージャー募集の知らせを持ってきてやったぜ。』
           
「・・・あ・・・あ・・・跡部!?」
       
「マネージャー・・・本気で入れる気だったのか・・・。」

もう、皆どこからつっこんでわからないらしい。
しかし、階下の部屋からは女子達の黄色い声が・・・。

『マネージャーの人数は6人。男女関係なしだ。希望者は今から体育館に集合だ。そこでマネージャーテストを受けてもらう。じゃあ、またあとであおうぜ!』
        
・・・ピンポーンパンポーン・・・。

・・・・・
・・・・・

しばらく屋上の5人は誰1人として口を開かなかった。
         
「・・・マネージャーテスト?」
 
「ってか、あいつ・・・大胆すぎねぇ・・?授業さぼらす気かよ・・」
           
「さすが跡部部長ですね・・・」
      
「・・・俺らも様子見に行った方がいいんやろうか?」
        
「・・・景ちゃん、すごいよねぇ〜〜・・・」

そして全員が顔を見合わせてため息をついたのだった。

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