マネージャーの栄光は誰の手に!?(後編)

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そのころ、氷帝学園体育館では・・。
全員がでていったあとの体育館でテニス部レギュラー陣(一部除く)は壇上の上で誰が一番に帰ってくるかを待っていた。
          
「・・・暇やな・・。」
      
「こうしてまってるだけってつまんねぇ・・・」

岳人がごろんと床に寝転がる。すでに時刻は午後3時を回っている。
   
「でも・・そろそろ何人か戻ってきてもいいはずじゃないですか?」

長太郎が時計を見ながらいうとその隣で寝ていたジローがうっすらと目を開けた。
       
「跡部の命令が難しすぎるんじゃない?」
    
「バーカ、難しくしねぇと意味ねぇだろうが、なぁ樺地。」
              
「ウス」

跡部が自信満々に答えた。
そして最後の一人の宍戸は・・・待ちくたびれたのかうとうとと縁に腰をかけ船をこいでいる。
         
「宍戸さん?眠たいんですか?」

一番はじめにそれにきがついた長太郎が声をかけると宍戸は目をこすり頷いた。
 
「あぁ・・・。家のクーラーが壊れててよ・・昨日一晩クーラー無しだったんだ。」
     
「そうだったんですか。無理せず寝た方がいいですよ?」

心配そうな目を向ける長太郎に宍戸は首を横に振る。
    
「皆がんばってるのに俺だけ寝るわけにはいかねぇよ・・」
         
「宍戸はホンマ優しい子やな〜。」

忍足がくすくす笑いながら宍戸の頭をわしゃわしゃと撫でた。
             
「・・・宍戸。」

すると今まで黙っていた跡部が珍しいほど優しい声を出した。
             
「あ・・?」
      
「無理すんなよ?それで倒れられても迷惑だからな」

宍戸の所まで歩み寄ってきた跡部が宍戸の頭をはたきながらいう。
            
「わかってる・・・」
       
「・・・それとも眠気覚ましでもやろうか?」
             
「眠気覚まし?」
              
「あぁ・・」

跡部はにやりと笑うと宍戸の顎に手を添えいきなりキスをする。
            
「「「「!!??」」」」

その様子を見て驚いたのは忍足達4人だった。
             
「・・・ん!?」

いきなりのキスに硬直していたのか大人しくしていた宍戸もはっときがついたように声を上げる。
しかし、それもすぐに跡部が宍戸の舌を絡めとったせいで聞こえなくなる。
           
「んっ・・んん・・ぁ・・」

しばし、くちゅくちゅと濡れた音がそこら中に響いていた。
     
「・・・あ〜〜〜!景ちゃんだめぇ!亮ちゃんは俺のなの!」

ジローが一番はじめにハッと気がつき跡部と宍戸を引き離そうと必死になっている。
しかし、ジローの力ぐらいではぴくりともしないのか跡部は余裕でキスを続けていた。
             
「ん・・・っ・・」

宍戸は頬を真っ赤にしているがやがて体から力が抜けくたっとして跡部にもたれている。
くちゅ・・・と音を立て跡部が唇を離して微笑んだ。
             
「目、覚めたか?」
        
「あ・・・跡部のアホ〜〜〜!!!!」

力が全く入ってない声で宍戸が跡部をにらみつける。
しかし、頬を上気させ、瞳が潤んでいる状態でにらみつけられても・・・誘っているとしか思えません(爆)
その証拠に、その宍戸の顔を見た跡部・鳳・忍足・ジローの顔が心なしか赤くなっている。
        
「亮ちゃん色っぽ〜い!!次、俺ね!」

ジローが思いっきり宍戸にのしかかると耳たぶにかみつく。
        
「んっ・・!ってジローーー!!!!」

宍戸の怒声がむなしくあたりに響き渡った。


一方、神月聖はそのころ、青学レギュラージャージ(手塚)を持ち、元来た道を走っていた。
 
(跡部の弱点なんて・・あれくらいしか思いつかなかったもんな〜・・。ごめんな、跡部・・;)

心の中で跡部に何度もわびを入れる。腕時計はすでに6時間目終了の時間を告げていた。

(余裕で間に合いそうだな)

しかし、その考えが浅はかだったということに聖は5秒後に後悔した。

氷帝学園の門の前にずらぁ〜・・・っと横一列に女生徒が並んでいるのだ。
     
(・・やっべ・・。なんであいつらがここにいるんだよ・・;)

いらぬ質問攻めにあい時間を削るわけにはいかない。
聖は思わず辺りを見回した。
正門以外から入れる場所を探すためだ。
しかし、悲しいかなそんな場所は見あたらない。
覚悟を決めて正門をゆっくりと通りすぎていく聖。
すると案の定、女生徒の1人−自称跡部の恋人(氷帝学園中等部イチの美女)−が声をかけてきた。

「あら・・同じクラスの神月くんじゃないのv青春学園男子テニス部のレギュラージャージなんてもってどちらに?」
          
「あ・・いや・・。えと・・・・」

聖は必死にいいわけを考えている。
 
「まさかとは思うけど・・神月くんもマネージャー希望・・とか?神月くんの紙にはレギュラージャージってかいてあったのね?」

・・なんていう観察力と推理力だ。聖の顔が思わず引きつった。
 
「・・・じゃあ話は簡単ねv神月くん、そのレギュラージャージ渡しなさいよ。」
              
「は・・はぁ?」

突然のかなり自己中心的な意見に聖はよけいに顔を引きつらせた。
 
「だって、マネージャーにふさわしいのはこの学園の誰よりも景吾の恋人である私でしょ?今のところ言われた物をもってきたのは神月くんだけなのよ。だからお願い・・・」

その美女−緑山 麗奈−は聖ににっこりと微笑んだ。
しかし、聖とてマネージャーにはなりたいからこんな苦労をしているのだ。
易々渡すわけにはいかない。
         
(大体、跡部の恋人って宍戸だろ?)

それは先ほどの跡部の宍戸への独占欲からも容易に想像がつくことだった。
           
「・・・悪いけど、断る。」

聖はきっぱりとそれだけいうとたっと走り出した。
その後ろからは麗奈の声が響いてくる。
   
「なんでよ!!景吾のマネージャーにふさわしいのは・・・」
  
「少なくともお前じゃない!・・・跡部には他につきあってる奴がいるんだよ!!跡部はそいつしか眼中にねぇんだ!とっととその思いこみ捨てろよな!」


  
「へぇ・・・あの神月って野郎、俺様でも黙らせることに苦労していた緑山をたった一言で黙らせちまった。大した野郎だな・・・」

その様子を体育館の入り口で見ていた跡部が素直に感心したようにいった。
   
「しかもちゃんと紙にかいてあった物、持ってきたみたいやしな・・」
         
「足も結構速いみたいだし・・」
        
「性格も悪くないみたいですね・・」

それに続いて忍足・岳人・長太郎も納得したように頷いた。
    
「ってことは・・マネージャー第1号は神月で決定だね!」

ジローがにっこりと微笑んで結論を出すと宍戸はものすごく嬉しそうにガッツポーズをした。
         
「やったぜ!さすが神月!!!」


その最後の宍戸の声と同時に聖が体育館の入り口前に走り込んできた。
手にはしっかりレギュラージャージを握りしめている。
      
「神月〜〜!!!やったぜ、一着でゴールだぜ!」

宍戸が嬉しそうに聖に抱きついた。
      
「あ・・・あぁ・・。マジ・・疲れたけど・・な」

肩で息をしながら聖が宍戸に微笑みかける。
   
「・・・あと・・べ・・。ほら、青学レギュラージャージだ・・・」

そういって聖がレギュラージャージを広げて跡部に見せると跡部はこくりと頷いた。
 
「確かに・・。いいだろう・・今日から神月聖は俺たちレギュラー陣専属のマネージャーだ。・・ありがたく思うんだな」
          
「・・そ・・そりゃどうも・・」

そしてちょうどそのころ、太陽が西へと沈み始めていた。
そんな中、聖は密かに乾に言った言葉を思い出していた。

           
『跡部の弱点−−−−?』
   
『そうだ。なにかあるだろ。あの跡部にだって弱点が・・・』
 
『・・・・あいつの弱点なんて思いつかねぇけど・・・・。・・強いて言うなら・・』
            
『強いて言うなら?』
            
『・・・宍戸だな』


このことは当分の間胸の奥底に秘めておこう、そう聖は深く決心した。

                             

                         


                                                    FIN



あとがき
や・・・やっと終わりました!マネージャー争奪戦・・。あと5人は・・まぁ後々(爆)。感想などもらえたらとても嬉しいですv