The Blue Sky After The Heavy Rain
       【1】

昨夜の雨が嘘みたいに空は抜けるような青空がどこまでも広がっている。

さぁっという風が心地よい。

そんな良い天気なのに俺−−の心はどんよりと曇っていた。

その原因は昨夜の一目連のあの言葉・・・

『俺、のこと真剣に好きだから。今度会う時に返事返してくれればいいから』

「・・・考える時間1日だけじゃんか。しかも・・いきなりあんな事言われても・・っ・・俺、連のことどう思ってるのか・・自分でも分からないのにっ・・」

連が人間じゃないっていうことはあまり気にしないけどさ・・。

でも俺たち男同士だよな・・。

でも、じゃあなんでキスされても平気なんだってことなんだけど・・・。

「連とのキスは気持ちいいし、嫌じゃないからだけどっ・・。輪入道にキスされても嫌じゃないし・・」

ころんとベッドで寝返りを打つと小さく溜息をついた。

「〜・・・あー!もう悩んでても仕方がないっ!さっさとシャワー浴びてじいちゃんち行かなくちゃ!」

ベッドから飛び起きると俺を見上げてきょとんとしている灰色の子猫を抱き上げる。

「お前も綺麗にしなくちゃな。一緒に風呂はいるか?」

にこりと微笑みかけると子猫が小さく鳴き声を上げた。
それを聞いて俺はクスリと笑うと猫と共に風呂場へと向かった。


「・・・で、なんでもういるんだよ」

風呂からあがり裸に腰にタオルを巻いただけの状態の俺はびしょぬれの子猫をそっと床に下ろし、溜息をついた。
子猫が床に足をつけるのと同時に俺の腰を引き寄せたのはさっきまで俺が悩んでいた元凶−一目連だった。

「早くに会いたかったから。」

「なっ・・・」

その言葉に思わずぼっと顔が真っ赤になる。

「・・・それはそうと・・ってここ綺麗な桜色なんだな。」

そういうと連は俺の胸元を指さした。

「え・・・?どこがだよ。」

「だから・・ここだって」

そのまま指が触れそうになるくらい指が近づけられた先には俺の胸の突起がある。

「〜〜〜〜!!この・・セクハラ大王!!」

だぁん!!と思い切り連の足を踏みつけると連が「いって〜・・」といって足を押さえてうずくまる。

・・・ちょっとやりすぎたかな?

「れ・・連・・えっと・・ごめ・・ん・・俺」

慌てて謝ろうとしたが連は俺の腰のタオルをはらりと落とさせた。

「あぁっ!!?」

「・・・いいもの見せてもらったから許す」

「な・・・っ・・勝手に見るな〜〜!!!」

そういって連がにっこりと微笑むのと俺が力一杯連を殴り飛ばしたのはほぼ同時だった。
 
 
、待てって」

「うるさいっ!!」

俺の問いかけにそう答えながら前をすごい勢いで歩いているを見ながら俺−一目連−は苦笑いを浮かべて肩をすくめた。

−お嬢が任命した俺たちの仲間で俺の想い人でもある。

っていっても告白したのは昨夜なんだけどさ。
灰色の子猫をしっかり抱いたまま早足で歩くをみて肩をすくめた。

全く、こっちは来た途端あんな姿のあいつを見せられて動揺してたんだぜ?
本当だったらそのまま押し倒しておいしくいただいちゃうところだけど、にはそんなこと無理強いしたくないから見てるだけで我慢したって言うのに。

『あんた、本気なのかい?』

今日、ここに来る時骨女と輪入道にそう尋ねられた。

は人間だぞ。わしらと住む世界が違う。なのにわしらの我が儘で彼と一緒にいるんだぞ。それに・・・−』

そこで言葉を句切った輪入道が見たのは『あいつ』だった。

お嬢だけじゃない。
俺達さえも見張っている『あいつ』。

・・・分かってる。

俺がを好きになれば好きになるほど彼を巻き込んでしまう、そんなことぐらい。

俺がを好きになる資格がないことぐらい。

俺は・・・人間じゃないから。

「・・・遅いんだよ!早くしろって!」

「・・・へ?」

ぼぉっと考え事をしているとそんな声と共に現実に引き戻された。

・・・」

が俺の手を掴んでひっぱり歩き始めている。
そんなことがすごく嬉しく感じて俺は思わず微笑んだ。

やっぱり、かなわないな、には。

、俺やっぱりのこと好きだわ。本気で」

思わずくくっと喉で笑いながらの手を握り返す。

・・・『日だまり』か・・確かにそうかもな。

は俺たちにとって『救い』なのかもしれない。

「・・・っ・・そういうことをこんな場所でいうなっての!」

はふりむくと俺をきっと睨み付けてどんどん早足になっていった。

片手には子猫を、片手では俺の手を掴んだまま・・・。




                            
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