落日の王国・4
「ほら、ちゃんと前を向いてろよ」
髪を掴まれ、奥を攻められながらかすかに目を開ければ、同じように前を向くことを強要された王の顔が見える。
王妃はもしかすると気を失っているのかもしれない。
青ざめたアイローオンの腕の中、彼女はうなだれ瞳を伏せてしまっている。
ユラにとってはそれがせめての慰めとなるようだった。
「ぐう、う、うっ……」
噛み締めた唇の端が切れ、一条の血が白い顎を伝う。
愛しい男の目の前で、見世物同然に犯されているのだ。
一瞬ごとに心と体を切り裂く激痛に、だがユラは耐えるしかない。
「あう、あっ、あっ、あああーっ…………!」
獣のような声を上げたユラの中に、またジャスバールの白濁が注ぎ込まれる。
とっくに許容量を越えたそれは、繋がった部分から漏れ出し本来血で汚れるはずだった断頭台を濡らした。
ユラ自身の性器からも、半透明の精液がとろとろと零れていく。
痛みと屈辱だけでなく、快楽によっても自分は打ちのめされてしまった。
なまじの賢さがそれを認めざるを得ないことが、一層ユラを傷付けていた。
……ひそやかな望みこそあれ、未開発だった体を巧みなジャスバールの攻めは蕩かしてしまった。
もちろん、抵抗したり拒絶したりすればアイローオンたちに塁が及ぶ危険性を考慮した面もある。
けれどそれよりも、ジャスバールの指先と舌、そして性器の生み出す快楽は異常な状況ということもあってだろうか。
かたくななユラの肉体はどろどろに溶かされ、男の力に屈服させられてしまった。
これがアイローオンから与えられるものならば、どんなに…
二重三重の陵辱の余韻に震える体から、血と精液にまみれた肉棒がゆっくりと引き抜かれる。
ジャスバールは居並ぶ兵士たちに見せつけるよう、殊更満足そうに息を吐いて言った。
「美人参謀殿は、こちらもなかなか上手であらせられるようだ。飲み込みがいい」
下品な冗談にどっと沸く部下たちに、平然と衣服の前を直した彼はあごをしゃくる。
「だが少々飲み込みが良すぎて、オレ一人では手に余る。疲れているところに済まないが、誰か心在る者がいれば手を貸してくれるか?」
にやりと笑っての一言に、一部では辺りもはばからず自慰を始めていた兵士たちは一斉に色めきたった。
「将軍、オレが、オレがお手伝い致します!」
「何を、将軍、オレが! 優等生の参謀殿に、勉強させてやりますよ!」
「何だよ、お前が勉強させてもらいたいんだろうが!」
ようやく与えられた餌に飛びつく犬のように、彼らは我こそはと名乗りを上げる。
四方を取り囲まれ無残な姿をさらしたまま、ユラはぼんやりとアイローオンの方を見た。
顔を逸らすことを許されぬアイローオンの瞳は、いまだじっと断頭台の上のユラを見つめている。
どうやら完全に気を失っているらしい王妃を抱いたまま立つ彼の瞳からは、涙があふれていた。
「……王…………」
無念と苦痛の思いが痛いほど伝わってくる。
誠実なアイローオンはきっと、ユラの身に起こった出来事を我が事のように感じてくれているのだろう。
だからユラは、心配ないと言うように必死に微笑みを浮かべて見せた。
大丈夫。
心配しないで。
あなたは残された民と、その腕の中の一番大切な人のことだけを心配していればいい。
優しいあなたを守るために、僕という存在は在るのだから。
「へへへ、だらだら涎を零して、欲しくてたまらないんだろう? お前も」
ジャスバールに指名をされたらしい男の声が、不意に後ろから聞こえて来た。
乱暴に尻たぶを割り開かれ、赤く縁を腫らした穴にいきなり肉棒をねじ込まれる。
「あぐ………………ッ!」
大きく背をしならせたユラの細い腰を掴み、背後の男は興奮に鼻をふくらませながら動き始めた。
ねちゃねちゃという粘着質な音が上がるたび、ジャスバールの吐き出した精液と新たな男の先走りが入り混じる。
太い指先で硬くなった乳首を転がされる、そのおぞましさにユラは唇を噛み締めてただ耐えた。
周囲からはさっさと代われ、との声が早くもうるさい程に聞こえて来ている。
集まった男たちは、ざっと数百人はいるだろうか。
全員の相手はさすがに無理でも、多分後数十人の相手をこのままさせられることになるだろう。
しかもその一部始終を、アイローオンに見つめられたままで。
澄んだ瞳に浮かび上がりかける涙を、ユラは必死で押し殺した。
これは正しく公開処刑。
戦で得た功名も、長く秘めて来た恋心も自尊心も何もかも、断頭台の上で男たちの精液にまみれ息絶えていく。
それでも自分が無様に泣き崩れたりすれば、アイローオンが心配する。
「う、く、……っぅ……」
叫び出したい衝動を押し殺し、美しい顔立ちを歪めて貫かれるユラを見てジャスバールは口の端を吊り上げた。
「久しぶりに、手応えのあるおもちゃに巡り合えたな」
一人目の男に中に出される感触に、ユラはぶるぶると震えながら耐えている。
更には待ち切れなくなったらしい順番待ちの男たちに熱い飛沫を浴びせられている少年参謀の淫らな姿を眺めながら、ジャスバールはそれは楽しそうにつぶやいた。
〈終わり〉
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