炎色反応 第三章・1
もう何度こんなことをしたのか分からない。
けれどまだ、ティスは一抹の恥ずかしさを忘れられないでいた。
「さっさとやれ」
黒髪に金の瞳の精悍な顔付きの青年が、頭上から傲慢な口調でそうせかす。
傲岸不遜な火の魔法使い、オルバンは木の寝台に腰かけておりティスは彼の足の間に座り込んだ格好だ。
白い肌に金の髪とぱっちりとした水色の瞳がよく映える、おとぎ話に出て来る妖精のような愛らしい容貌を持った少年である。
彼は不運にも残忍な魔法使いに気に入られ、その従者兼性奴のような生活を余儀なくされていた。
「は、はい」
ためらいながらオルバンの黒い衣の前を開き、通常の状態ですでに自分の何倍もありそうな彼の性器を掴み出す。
手に余るような大きさのものは、ゆるく握っただけですぐに硬さを増す。
おそるおそる、その先端にまず一度口付けた。
「まだるっこしいんだよ、くわえろ」
火の精霊の指輪をはめたオルバンの指が伸び、ティスの鼻をつまむ。
一気に呼吸が苦しくなり、思わず口を開いたところで彼のものをその中に突っ込まれた。
「んぐっ…! ん、う、ふぅ」
喉を突くものにむせ、苦しさにうめくティスの頭をオルバンが掴んだ。
その顔を何度も自分に押し付けさせるようにして抜き差しを繰り返す。
奉仕と言うにも遠い。
文字通り、彼はそうやってティスの口腔を犯していた。
「んん、んん、んんん!」
顔を真っ赤にして逃れようともがくのを許さず、性的な刺激よりも冷酷な行為そのものに興奮した様子のオルバンは執拗に同じことを繰り返す。
酸素を求めて夢中でもがきながらも、懸命なティスは必死になって口の中のものを噛んだりしないように気を付けた。
前に一度、同じ状況で歯を立ててしまったことがあるのだ。
もう二度と思い出したくないほどにめちゃくちゃに犯された挙句、首を締められて危うく殺されるところだった。
またあんな目に遭うのは御免だ。
その気になれば彼がどれぐらい残酷な方法で人を殺せるかは、今まで何度も見せ付けられている。
とはいえ、今回は本当に苦しい。
後の心配をする前にこのまま殺されるのではないだろうか。
そう思った時、口の中に独特の苦味とどろりとした感触が広がった。
「んぅ、ゲホ、ゲホゲホッ」
喉の奥に向かって吐き出されたものが、食道を伝い落ちていく。
ここで吐いてもやっぱりひどい目に遭わされるのだ。
ティスは死ぬ思いをしながら口の中から出て行くものに舌を這わせ、出来る限りそれをきれいにした。
ぴちゃぴちゃと音を立てて性器に浮いた筋を舐め、先端の部分を吸い上げるようにしてにじみ出る熱いものを全て飲み干す。
「だいぶうまくなって来たな、ティス」
一度の射精では萎えた素振りも見せないものを平然とさらしたまま、オルバンはにやりと笑った。
「今度は下だ。乗れ」
短い言葉でももう彼の意図が汲める。
ティスはわずかなためらいを振り切って立ち上がり、オルバンの膝の上にそろりと乗った。
右手を自ら背後に回し、尻を押し広げながら腰を落としていく。
心ならずも期待することをもうそこは覚えていたが、慣らしもせずにすぐには男を受け入れられない。
ましてこれだけの大きさの物だ。
「少し…待って、下さいね………」
ティスは中腰になり、オルバンのものの先端を自分の入り口に当てた。
そこを濡らす卑猥なぬめりを開きかけた穴にこすり付けていく。
「あ………、あっ」
もどかしさに、いっそ一気に座り込んでしまいたくもなる。
でもそんなことをしたら本当に裂けてしまうだろう。
自慰をしているような気分になりながら、ティスは半端な姿勢を維持してしばらくそれを続けた。
はた目にはきっと、自分がこの行為を望んでしているように見えているに違いない。
場末の娼婦のような真似をしている自分を、もう一人の自分がどこか悲しそうに見ているのをまだ感じる。
しかし、先日のとある村での出来事により、ティスの中からオルバンに対する反抗心など消え失せた。
痛覚さえも自在に操る、あの恐ろしい火に焼き殺されるなんて絶対に嫌だ。
流星のような光に穴だらけにされて殺されるのだって嫌だ。
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