炎色反応 第二章・18



「アーッ!」
ティスは眼を見開き、喉を仰け反らせて叫んだ。
「ほら、どうした、よがれ」
「あ、あ、だめ、まだだめっ、や、いやっ」
たった今、ひどく性急にいかされたばかりの体にはオルバンのものはあまりにも熱く、大き過ぎる。
去ったはずの絶頂の波があっという間に戻って来て、ティスはきつく彼のものを締め付けながら悲鳴を上げた。
「くっ」
さすがのオルバンもわずかに顔をしかめるぐらい、ひくつく内壁は男に絡み付き強い快楽を返す。
魔法使いの口元に皮肉の陰りのない、心の底から楽しそうな笑みが浮かんだ。
「ああ、お前は本当に可愛いな、ティス」
「ああっ」
お返しとばかりに腰を使い始めたオルバンのものに串刺しにされ、ティスは縛られた腕を突っ張らせて声を上げる。
オルバンは両手を彼の胸に回し、唾液を塗りたくられた乳首を親指の腹で愛撫し始めた。
押しつぶすようにもまれるたび、痺れるような快感が生じる。
「んん、あ、あああっ」
「オレは結構お前を気に入ってるんだ」
太い物でティスの中を奥底まで刺し貫きながら、オルバンが低くささやくのが聞こえる。
「いいか、オレに逆らうな」
彼の親指と人差し指がきゅっと乳首をつまみ上げた。
「魔法使いに逆らうな。分かったな」
「あっ、あああっ、さ、さか、逆らい、逆らいません…!」
だから、というように涙目で訴えるティスにオルバンはにいと笑った。
「いい子だ。……いかせてやる」
オルバンは再びティスの両足を掴み、思いきり強く前に押した。
獲物の喉笛をかみ切ろうとする獣のように、彼がその勢いで深く深く体重をかけて圧し掛かってくる。
「ああ、オルバン様ぁ……!」
一回り体の大きな男に押さえ込まれ、根元まで彼を受け入れたティスは主人の名を呼んでもう一度絶頂に達した。


***

翌日、まだふらふらしながらティスはオルバンに連れられて村を後にした。
酒場での騒動はすでに村中に知れ渡っている。
息子を殺された親が危うく怒鳴り込みかける、といった場面もあったが、如才のない村長が素早く彼らを黙らせた。
「盗人に相応しい罰をくれてやっただけだ」
昨夜の件についてやんわりと探りを入れられたオルバンは、平然とそういう説明をしていた。
実際彼らはティスをさらい、集団で強姦するという恥ずべき罪を犯している。
殺すまでの罰を加える必要があったかどうかはさておいて、悪名高い火のオルバンをこれ以上怒らせるのはまずい。
村ごと焼き討ちにあったりしなくてまだましだったと村長は計算したようだ。
とはいえさすがに、出て行くオルバンを見送る彼の顔にも疲労の色が濃い。
「どうぞお気を付けて」
またいつでもお越しを、とはいくらなんでも言えなかったようだ。
同じ事を感じたらしく、笑いを噛み殺しているオルバンの横でひどく気まずい思いをしながらティスは荷物を抱えておとなしく歩き始めた。
例えいつ来てくれていいと言われても二度と御免だ。
熱い、熱いとわめいていたアインの声が耳の奥にまだ残っている。
――オレもいつか、あんな風に殺されるのかな。
ティスはぶるっと身を震わせ、足の長さが全く違うオルバンの歩く速度に必死になって合わせた。
逆らわなければいい。
彼の言うことを聞いて、機嫌を損ねないようにさえしていれば命までは取られずに済む。
いつものように強く、激しく、抱かれてさえいれば。
そう思った瞬間、恐怖や羞恥を凌駕して甘い感覚が背筋を駆けた。
またぶるっと身を震わせ、かすかに頬を赤らめながら歩き続けるかたわらの少年を見て魔法使いは面白そうに笑うのだった。

〈終わり〉

***

読んで下さってありがとうございました。
掲示板などに感想をお寄せ下さると幸いです。

←17へ   第三章・1へ→
←topへ