要姫 第二章・1
押し殺した甘い声が、広々とした美しい部屋の中に響く。
「……んっ、んっ…………!」
光の鎖に戒められた指先が震える。
同じ鎖に戒められ、大きく割り広げられた足先も。
その狭間で執拗な愛撫を受け、ひっきりなしに蜜を零す未成熟な男性器も。
「あはぁ…………っ、ンッ、あぁ、だ、めっ、アレクシ様ぁ…………」
豪奢な寝台の背にもたれるような格好で座らされたナイアの体を覆うのは、半分透けた薄衣一枚のみ。
流れ落ちる白い髪は背こそ覆えど、慎ましい胸のふくらみも要姫の証である両の性器も隠してはくれない。
まして理術の鎖により四肢を拘束された状態だ。
指で、舌で、吐息でナイアを翻弄するアレクシから逃れる術はない。
「ふふ、またいってしまいますか、ナイア様…………?」
ひくひくと震える女性器を長い指先で広げ、奥の縦穴を覗き込んで金髪の美青年が妖しく笑う。
座らせたナイアの足下に屈み込んだ彼は、さながら貴婦人に仕える高貴な騎士だ。
けれどその行いも、口から出る言葉も、到底騎士のそれとは言い難い。
「ぱくぱくと口を開けて、いやらしい糸を引いて………ああ、敷布をこのように汚されて……」
「あ、あぁ…………や………、言わない、でっ…………」
愛液を垂れ流すそこを視姦される恥辱に、ナイアは噛み締めすぎて真っ赤になった唇からか細い息を吐いた。
ランクーガが陥落してから早一月余り。
要の神殿にクラウディオの侵入を許した挙げ句、無理矢理アレクシの妻とされたナイアはバルトフェルト内に用意された小さな宮に軟禁状態にあった。
お二人のために用意したのですよ、とクラウディオが微笑みながらそう言ったこの宮は、小さいながらも豪華きわまりない。
大体が小さいと言ってもあくまでバルトフェルト王城と比べてのことだ。
要の神殿とは比較にならないほど壮麗なこの宮に住むのは、寡黙な数人の使用人と警護の兵、そしてアレクシとナイアだけ。
最奥に用意された広いこの部屋にて、ナイアは毎日のようにこうしてアレクシに犯されていた。
「あ…………っ!」
節くれた長い指が二本、膣内に挿入されていく。
口を開けていると揶揄された穴を左右に広げられ、ナイアはきゅっと唇を噛んだ。
そうやってあえぎを堪えようとした矢先、もう片方の手で充血した肉豆を摘み上げられる。
「ヒッ!」
鋭い性感に、思わず声が出た。
そのまま指の腹で過敏なそこをいじめられれば、とても声など殺せない。
おまけに彼は、女性器を広げた指先をまたその奥へと挿入し始めた。
「あぁ、あーっ…………!」
拘束された四肢がびくびくと跳ねる。
根本まで差し込まれた長い指が、からかうように中で蠢いていた。
後から後からあふれる愛液をかき混ぜるようなその動作に、羞恥と快感はますます高まるばかり。
「あぁ、はぁ、や………っ、アレクシ……っ、だめ、またぁ…………っ」
両手を使っての執拗な愛撫に、淫らな水音がひっきりなしに上がる。
触れられていない男性器の先からあふれた先走りも入り混じり、アレクシの手を汚していくのが見なくても分かった。
「ぬるぬるし過ぎて、うまく摘めないぐらいですよ? ナイア様…………」
女の最も敏感な性感帯をこりこりと揉みながら、アレクシは美しい顔に卑猥な笑みを浮かべてささやく。
「……は、ぁ…………ッ、だ、だって、だって……!」
「ええ、分かっておりますとも…………あなたは……私を想い、私に感じて下さっている……」
奥に潜っていた指が引き抜かれる。
しとどに濡れそぼったその指を舐め上げ、彼は熱い声で更にささやきかけてきた。
「……嬉しいです。愛しい我が妻…………」
妻。
改めてそう言われると、ナイアの胸は複雑な痛みを覚えた。
聖なるものと崇められる一方で、人ならざると蔑まれる運命の両性体。
要姫として王宮に売り飛ばされ、けだもののような王に処女を守る以外のあらゆる恥辱を与えられてきた身だ。
まともな幸せなど自分の手に入るはずがないと思っていた。
アレクシへの想いは永久にこの胸に秘めておかなければならないと思っていた。
なのに全ては理術師の手で白日の下にさらされ、今ナイアはアレクシに妻と呼ばれる。
彼だけではなく、クラウディオもこの宮に仕える使用人達もみなナイアを彼の妻として扱うのだ。
………………嬉しいという気持ちがないと言えば嘘になる。
←topへ 2へ→