【←まえの話】
【つぎの話→】
最強レックウザ | #1☆2007.06/26(火)23:48 |
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【はじめに】 これは『ナタネ 夢へ向かえ!』の続編です。 『ナタネ 夢へ向かえ!』(http://www1.interq.or.jp/kokke/pokemon/commu/story/927.htm (→ほかんこ))を見ていない方は、まずそちらを見ないと、ストーリーの流れがわからないと思います。 【21 水を操る少女とデパート】 ナタネ『ふぅ、ミモネシティって広いね…』 ソヨギ『それはそうよ!だってレアフいちの大都市だもの』 ナタネ『あっ!あれって!デパートじゃない!?ちょっと買い物していこう?』 ナタネたちは、デパートへと向かった。 ナタネ『モンスターボールがあと2つしかないや…買っておこうかな…お金もあるし、買いだめしちゃお!』 ナタネが財布の中身を見ながら歩いていると、レジから見覚えのある女の子の声がした。 ??『みずのいしくださーい!えっと5個くらい!もうすぐで私のシャワーズコレクションが集まるんだよねー!えっと、おいくら?』 店員『みずのいし、品切れ中なんです…ごめんなさい』 ??『えー!?ここにも売ってないの!?だってここ、デパートでしょおー!?』 店員『明日になれば入荷すると思いますが…』 ??『明日ね!絶対だよ!…もう、品揃えくらいちゃんとしといてって!』 女の子が不満そうにこっちへ向かってくると、女の子は立ち止まった。 ??『もしかして…ナタネさん?』 ナタネははっとして顔を上げる。そこには、明らかに見覚えのある顔があった。 ナタネ『えっと、あなたは確か…』 ロミ『あたしはロミ!シオカゼシティジムリーダー!水の使い手!ほら、ナタネさんが一番最初に戦ったあたしだよぉ!』 ナタネ『ああ!ロミさん!』 ロミ『あんれー?ソヨギちゃんまだお供してたの?』 ソヨギ『そうだよ。ナタネ一人じゃレアフの冒険は無理だよ』 ナタネ『むっ、何よそれー』 ロミ『あははっ!ところで、ソヨギちゃんはジムは大丈夫なの?』 ソヨギ『大丈夫だよ!うちの町はほとんど人の来ない…ていうか、来るのも大変なほどのド田舎だし、ジムはうちの弟のグリンがやってるから!』 ロミ『そっかぁ…ナタネさんは大丈夫なの?』 ナタネ『あたしは、シンオウのチャンピオンにジムを任せてる』 ロミ『チャンピオン!?…なんか挑戦者がかわいそうな気もするけど』 ナタネ『まあそこらへんは…ね。』 ナタネ『っああ、ところでロミさんはなんでミモネシティに居るの?』 ロミ『実はね、私のポケモン、ヌフアちゃんに盗られちゃったんだ。追いかけてきてるんだけど、もう何処にいるかもわからないから、あきらめてシャワーズコレクションのためのみずのいしを売ってる店を探してたところ』 ソヨギ『ちょっと、それ呑気すぎない?ポケモン盗られたんでしょ?じゃ返してもらわないと!』 ナタネ『それにしても何でヌフアのことちゃん付けで呼ぶの?』 ロミ『あの子、トレーナースクールに通ってた時の同級生だったの。なのに、何であんなふうになっちゃったんだろう。』 ナタネ『何でかは、そのうちわかってくると思うけど、ロミさんも何か言ったの?そんなことはやめて、とか』 ロミ『言ったよ。でも、『俺はそんな甘っちょろい人間が大嫌いだ』って…』 ソヨギ『それは考えさせられるね…』 ヒアマ『…あの、久しぶりにバトルとか…』 ソヨギ『ヒアマくん、あのさ、空気読もう?』 ロミ『盗られた子は一番のパートナーなの。その子さえ戻ってくれば、バトルしてあげられるんだけど…』 ナタネ『…わかった、あたしたちと一緒にヌフアを探しに行こう!』 ロミ『え、つれてってくれるの?』 ソヨギ『もちろん!ジムリーダーのポケモンが盗られるって結構一大事だもんね!』 こうしてナタネたちは、ロミと一緒にヌフアを探すことにした。 ナタネ『ところでこの町には、ジムはないの?』 ソヨギ『あるよ。こっち』 ナタネ『ああっ、でも、ロミさんのポケモンを取り返すのが一番だよね、ごめん…』 ロミ『ううん、あたしのことは後でいいよ。だから挑戦しておいで!』 ソヨギ『何か妙に呑気なんだよなぁ、ロミちゃん…』 ナタネ『失礼しまーす…』 ナタネがジムの扉を開けると…? 4人目のジムリーダーの正体は!? 続く。 次回 【22 4人目のジムリーダーの正体!】 |
最強レックウザ | #2☆2007.06/27(水)11:38 |
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【22 4人目のジムリーダーの正体!】 ナタネ『あの…ジムリーダーさんはいらっしゃいませんか?』 ナタネが叫ぶが、誰も居ないようだ。 見上げるような高い天井にナタネの声が響くだけ。 ナタネ『此処のジム、何か凄く天井高いなぁ…まあいいか、ジムリーダーを探しに行こうっと』 ナタネがジムの外に出ると、ソヨギとロミが見知らぬ男と話していた。 ロミ『じっちゃん!何処行ってたの!』 ??『やかましい!じっちゃんと呼ぶでない!わしはヌフアを探していただけじゃ』 ソヨギ『ヌフアを!?何で?』 ??『あのクソガキ、また何か企んでおるのじゃ!何でも、「レキェングをもう一度復活させ、グラスタウンを征服し、グラスタウンの住民のポケモンを生け贄にして新種のポケモンを作り、新しい世界を作る」とか何とか…』 ソヨギ『大変!あと1匹新種のポケモンが誕生してしまったら、本当にこの世界はあいつらのものになってしまう!それに、ユラちゃんやメロちゃんが危ない!』 ヒアマ『何か食い止める方法はないのですか?』 ナタネ『…待って。ふと気づいたんだけど、ヌフアたちが新種のポケモンを作る時って、何かしらポケモンの力が必要になるんだよね。』 ソヨギ『1匹目はレキェングと一部の野生ポケモン、2匹目はディアルガ・パルキア・ユクシー・アグノム・エムリットの力を使い、新種のポケモンを作ったんだよね』 ヒアマ『だとしたら、今回の標的はグラスタウンのポケモン…グラスタウンのポケモンたちを逃がせばいいのでは!』 ナタネ『それだ!』 ナタネ『ところで、あなたは?』 ヤジ『おぉ、よくぞ聞いてくれた。わしは此処、ミモネシティのジムリーダー、飛行タイプ使いのヤジじゃよ』 ナタネ『なるほど、だからジムの天井が高かったんだね』 ヒアマ『おやじだからヤジさんですか…』 ロミ『ヒ、ヒアマ君!あなたって子は!』 ヤジ『…ちょっとプツンと来たが、まあいいじゃろう。ところで、今からグラスタウンへ向かうんじゃろ?』 ナタネ『そうだね』 ヤジ『ヌフアから聞いた話じゃが、あいつユラを人質としてネイブのどうくつに連れて行ったみたいじゃから、無理にポケモンを逃がしたりとかすると、ユラが危ないわい』 ソヨギ『出来るところまでやってみるけど…ヤジさんはどうするの?』 ヤジ『こんな事は言いたくないのじゃが、わしはもう年じゃ…。すまんがお前らの力になることは出来ぬ』 ナタネ『分かった。じゃあ行ってくる!』 ナタネたちはミモネシティを出た。 ナタネ『もう、あいつら私のバッチ集めを邪魔して…』 ヒアマ『まあしょうがないでしょ』 ナタネが話ながら歩いていると、水しぶきが何処からか降ってきた。 ヒアマ『雨…ですか?』 ロミ『違うよ!あれ見て!きゃー、可愛いーっ!』 ロミが指差すほうには、池に入ってみずでっぽうを飛ばしているニョロゾが居た。 ロミ『かわいー!ねえ、あれ欲しいなぁ!でも、今モンスターボール無いんだよねぇ』 ナタネ『じゃああたしがゲットしちゃお♪』 ロミ『あー、ナタネさんひどいー!』 ナタネ『ヒアマ、よろしく!』 ヒアマ『はい!』 ヒアマは青い光に包まれグレイシアになった。 ナタネ『ヒアマ、ふぶき!』 あたり一面が雪景色になった。 ロミ『寒い〜…』 ナタネ『続いて、シャドーボール!』 シャドーボールが当たり、ニョロゾがよろける。 ソヨギ『クリーンヒット!ナタネ、いけるわ!』 ナタネはモンスターボールを構える。 ナタネ『今だ!チャンス到来!いっけー、モンスターボール!』 コン! コトン、コトン… …シュポン! ナタネ『やった!ゲットよ!』 ロミ『おめでとう〜!いいなぁ…』 こうしてナタネはニョロゾを新しく仲間にした。 ナタネ『あ、グラスタウンが見えてきたよ!早いなぁ』 ナタネたちは小走りでグラスタウンへ向かった。 続く 次回 【23 グラスタウンの悲劇】 |
最強レックウザ | #3☆2007.06/27(水)18:31 |
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【23 グラスタウンの悲劇】 >グラスタウン ヌフア『…! またお前らか!』 ナタネ『ヌフア、そんなことをするのは止めて!』 ソヨギ『ユラちゃんやポケモンたちがかわいそうでしょ!?』 ヌフア『知るか…』 ヒアマ『ヌフアさん、レキェングはこの間コキ使われて疲れています!もうやめて!』 ヌフア『フン…言われて見れば…まあ、今さっきあんな奴の力を借りずに第3のポケモンを作る方法がわかった所だ…こんな町に用はない』 ナタネ『逃げる気!?』 ヌフア『逃げるも逃げないも、そもそもお前らに野望を食い止められる筋合いは無い』 ソヨギ『…大アリじゃない!』 ロミ『あたしのポケモン返してよ!』 ヌフア『ああ…お前のポケモンか。全然弱かったし、新世界を作るための材料にもならなかった。使い物にならない、くれてやる』 ヌフアはモンスターボールをロミに投げつけた。 ヌフア『俺は忙しいんだ…』 ヌフアはそうぼやいて立ち去ろうとした。 ナタネ『待ちなさい!』 ヌフア『何だよ、もう用はないだろ』 ナタネ『もう一度、あたしとバトルして』 ヌフア『勝ち負けは決まっている、無駄だ』 ナタネ『…こっちが勝ったら、さっき言ってた「レキェングを利用せずに第3のポケモンを作る方法」を教えなさい』 ヌフア『…俺が勝ったら?』 ナタネ『好きにさせるわ』 ソヨギ『えっ!?』 ロミ『嘘っ!』 ヒアマ『ナタネさん…それは!』 ナタネ『今回こそは勝てる自信があるの。だって、あなたなんかよりあたしのほうが何倍もポケモンへの愛が勝っているもの!』 ヌフア『フン…また甘っちょろいことを…』 ナタネ『いいから始めようよ!使用ポケモンは1匹、いいね?』 ヌフア『…いいけど。行って来い、マニューラ』 マニューラ『マニュゥ!』 ナタネ『氷には氷で勝負よ!いってらっしゃい、ヒアマ!』 ヒアマ『はい!』 ヒアマはグレイシアになった。 ヌフア『ほぉ、今度はグレイシアか…先攻は譲る』 ナタネ『なら遠慮なく!ヒアマ、みずのはどう!』 ヌフア『マニューラ、かわしてかわらわり』 マニューラは素早い身のこなしでみずのはどうをかわし、ヒアマに近づいてきた。 ソヨギ『ナタネ、食らったらただじゃすまないわ!』 ナタネ『ヒアマ、よけ…』 ゴッ! ナタネ『ダメだ…マニューラのほうが圧倒的に速い…』 ヌフア『あれ、もう終わり?…ジムリーダーのくせに、情けない』 ナタネ『…スピードでかわせないなら…、ヒアマ、あられ!』 あられが降り始めた。 ナタネ『続いて、ふぶき!』 ヒュオォォ! ヌフア『なるほど…特性「ゆきがくれ」で回避をしながら、ふぶきの必中コンボか…やるな』 ナタネ『さあ、そっちも体力がもう半分みたいね!』 ヌフア『マニューラ、つじぎり』 ザシュッ! ナタネ『ヒアマ!』 ソヨギ『ナタネ…もうヒアマの体力は限界…。』 ヌフア『お前が負けたら…、好きにさせてくれるんだよね…?』 ナタネ『させるもんか…!』 ロミ『で、でももう無理だよ!』 ナタネ『…ヒアマ、ふぶき!』 ヌフア『くそっ、こればかりは…かわしきれない!』 ふぶきがマニューラに命中した。 ヌフア『…俺の負けだ…約束は約束だ、教えてやる…、「レキェングを利用せず第3のポケモンを作る方法」―…。』 ヌフア『それは…』 ナタネ『それは…?』 ヌフア『レキェングそのものを第3のポケモンとして扱うこと』 ナタネ『そんな!あのポケモンが!?』 ヌフア『レキェング、グラシード、ヒョウガ―…。この3匹は、レアフ地方を作り出した、電気、草木、氷の神と呼ばれて、あがめられていた。しかし、凄い力を秘めているため、この3匹が集まるのはとても危険と恐れられ、グラシードとヒョウガは封印され、レキェングもせいたんのいずみに閉じ込められていた。』 ナタネ『グラシード、ヒョウガ…、っていうのは、ヌフアが作り出した影のようなポケモンね』 ヌフア『そう…、でも実際は俺が作り出したのではなく、ただ単に封印をといただけ。封印をとくのに必要なポケモンの力を利用していただけだ』 ナタネ『でもなんで、影のような姿なの?』 ヌフア『それはわからない…多分、自らの姿を隠すために何かのベールをまとっているのだろう。それは後でどうにかするつもりだ』 ナタネ『よくわかったわ。でももうあなたの好きにはさせない』 ヌフア『…お前らにそういわれたって、やめる気にはならないな。3匹が集まったら、新しい世界が出来るのだから…』 ヌフアはそう言うと、マスターボールの中からポケモンを出した。 ??『…』 ナタネ『レキェング!?』 ヌフア『ちょっとばかし言うことを聞いてもらうためにゲットしたまでだ。』 ナタネ『やめなさい!何のつもり?』 ヌフア『まあいい…お前らのために少し時間をやる。ミモネシティの先にある「あがめのおか』で待っている…。』 ヌフアはそう言うと立ち去っていった。 ロミ『ああ、エンペルト…よかった!みんな有難う、それじゃあこの辺で』 ロミはエンペルトの入ったモンスターボールを腰に付けて去っていった。 ナタネ『それにしても、なんとしても止めないと…あがめのおかへ急ごう!』 ソヨギ『待って、ユラちゃんがまだ』 ナタネ『ネイブのどうくつだね…あぁ怖い』 >ネイブのどうくつ ユラ『…あっ…』 ナタネ『待っててユラちゃん…今ロープほどいたげる』 ユラ『そうじゃなくて…あぁっ!』 ユラは悪霊に引っ張られていて、必死に耐えているところだった。 ユラ『早く…ロープほどいて…助け…ッ』 ナタネはロープを急いでほどいた。 ユラ『あ…っ…たす…け…意識が…』 ナタネ『ユラちゃん!頑張って!』 ナタネはユラを引っ張る。そこへジムの留守番をしていたメロがやってきた。 ナタネ『あっ、メロちゃん、悪霊どうにかならない!?』 メロ『まかせてください!それならとくいです!』 メロは静かに精神統一をした。 メロ『おねえちゃんをかえして!あくりょうたいさんッッ!』 ふっ… ユラ『…メロ、有難う』 メロ『あたし、うまれつき れいのうりょくがあるみたいなの…。』 ユラ『だから、いつもこの洞窟へ来る時はメロと一緒なんです。』 ナタネ『へぇ…凄いねメロちゃん』 ソヨギ『それにしてもユラちゃんも大変だったね』 ユラ『そ、そうだ!レキェングは!?レキェングは無事ですか…!?』 ナタネ『…』 ソヨギ『ごめんね。レキェング、実は無事じゃないんだ…。ヌフアにゲットされちゃった』 ユラ『そんな!あたし取り返しにいきます!』 ソヨギ『ダメだよ!ユラちゃんに何かあったら…』 ユラ『いいんです!私の役目ですから…』 ソヨギ『あたしたちがちゃんと止めてくるから安心して。』 ユラ『…。』 ナタネ『それじゃあ行ってくるね!』 ナタネたちはユラと別れ、再びミモネシティへ来た。 >ミモネシティ ヒアマ『まだ時間がありそうですし、先にジム戦をやってみては?』 ナタネ『そうだね…ってあ!バトルといえば、ロミさんとの再戦忘れちゃったあ!』 ソヨギ『何かの機会でシオカゼシティにいった時に頼めばいいじゃない』 ナタネ『まあ、そうだね』 ナタネ『それじゃあ行ってきます』 ナタネはジムに入った。 ヤジ『おお、早速来たの。』 続く。 次回 【24 空の戦い】 |
最強レックウザ | #4☆2007.07/12(木)23:34 |
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【24 空の戦い】 ヤジ『よく来たのぉ、御主は確かシンオウのナタネだったかの?』 ナタネ『そうですよ!4つ目のバッチをゲットしに来ました』 ヤジ『わしに挑むとは、いい度胸じゃ…。では、早速はじめようでないか』 ナタネ『はい!』 ヤジ『バトル形式は、3対3じゃ!ポケモンの交代は御主のみ認めよう』 ナタネ『わかりました』 ヤジ『では、はじめるぞ!』 ヤジの声が高い天井に響く。 ナタネ『まずはあなたよ!いってらっしゃい、プラスル!』 ヤジ『出でよ、ムクホーク!』 互いのポケモンが場に出た。しかし、ヤジは何も指示をせず、ただ不気味な笑みを浮かべていた。 ナタネ『…来ないなら此方から行きますよ!プラスル、スパーク!』 プラスル『プラァッ!!』 プラスルは電気をまとってムクホークのほうへ走り出した。 それを見たヤジはニヤリと笑ってとっさに指示を出した。 ヤジ『ムクホーク、はがねのつばさ!』 ムクホークの翼が鋼鉄のように硬くなる。そして、向かって来たプラスルと電撃を受け止める。 プラスルは硬い翼にぶつかってしまった。 ナタネ『あぁっ、プラスル!』 ヤジ『まだじゃ…ムクホーク!』 ヤジが言うと、ムクホークは電気を帯びた鋼鉄の翼を倒れているプラスルに追い討ちをかけるように叩き付けた。 バシッ!バシッ!! プラスル『プラアァァッ!』 プラスルが喉が裂けそうな声で悲鳴をあげる。 だがそれを無視してムクホークはなおもプラスルを叩き続ける。 プラスルの体力はもう限界だ。 生まれたての小さい赤ん坊であったプラスルにまだバトルは早かったのだ。 ナタネ『プラスルっ!しっかりして…!でんげきは!』 ナタネの言葉に、プラスルはなんとか起き上がると、素早く電気を放出した。 ヤジ『ムクホーク!はがねの…』 そういう間もなく、放たれたでんげきはは光の速さでムクホークに襲い掛かる。 ヤジが悔しそうな顔をすると、ムクホークにでんげきはがモロにあたり、苦しそうによろける。 ヤジ『ムクホーク、しっかりするのじゃ…インファイト!』 ナタネ『プラスル、でんげきは!』 ムクホークが動くのも見逃さず、プラスルは再びでんげきはを放った。 ヤジ『くそっ…こればかりは…』 ムクホークにまたもやでんげきはが命中する。 ヤジ『どうにかして、あの技を封印できないものか…こうなったら、向こうが動く前に動くしかないか…』 ヤジはしばらく考えると、ムクホークに指示を出した。 ヤジ『最速スピードでブレイブバードだ!』 ムクホークはその言葉を聞いて、翼をたたむと、低空飛行でプラスルに突っ込んできた。 それは物凄く早い出来事で、プラスルがでんげきはを放つ間もなかった。 ナタネ『は、早い…!これじゃよけられない…。』 ゴッ!! プラスル『プラッ…!』 ナタネ『プラスル!』 プラスルは倒れこんだが、すぐに立ち上がろうとするが、体に力が入らない。 ナタネ『しっかりして…!そのままの体勢で、10まんボルトを決めて!』 ナタネはプラスルに無茶な指示を出すと、プラスルは弱々しく体から電気を放った。 その電気は、虚しく宙を舞う。全然届かなかった。 ナタネ『プラスル…』 プラスルは薄く目を開けると、ナタネを見て微笑み、そして倒れこんだ。 ナタネ『お疲れ様、ゆっくり休んでね』 ヤジ『ほぉ、赤ん坊のわりにはよくやる奴じゃったのう。さあ、御主の2番手は…?』 ナタネ『私の2番手は…』 続く。 次回 【25 ミモネジム大決戦、ヒアマの行方は…?】 |
最強レックウザ | #5☆2007.07/25(水)19:33 |
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【25 ミモネジム大決戦、ヒアマの行方は…?】 ナタネは言うと、後ろを見た。 ナタネ『私の2番手は、ヒア―…』 ナタネ『あれ…?ヒアマが居ない…?』 ヤジ『…それは一大事じゃな…ちぃと中断じゃ!ヒアマとやらを見つけ出すのが最優先じゃ』 ナタネはジムの外へ出ると、なにやら外が騒がしい。 ソヨギ『あっ、ナタネ!!』 ナタネ『ソヨギ!それにヒオリちゃん!』 ソヨギと一緒に話していた少女は、前にトレーナーズスクールで出会ったヒオリだった。 ヒオリ『ナタネさん…大変なんです…それが…』 ヒオリはジムの外での出来事を事細かく話した。 ―ヒオリは、トレーナーズスクールの授業が終わり、家へ帰ろうとしていたところであった。 ヒオリはそこでとんでもない光景を目撃する。 見覚えのない赤い髪の男が、ヒアマを一瞬にして連れ去ってしまったという。 どうやらそれは、リリフでもノルマでもヌフアでもない―…誰も見たことのない男だったようだ。 男は『あがめのおか』のほうへ向かっていったという―… ナタネ『大変…!っていうことは、「あがめのおか」で今まさに、2つの悪いことが起ころうとしているところなの!?』 ヒオリ『です…でも、あがめのおかへ立ち入るには、ミモネジムのバッチが必要なんです…』 ナタネ『…しょうがない、それなら先にジム戦をやらないと…。でもその男、ヒアマを連れ去ってどうするつもりなんだろう?』 ソヨギ『私たちが見た限り、ヒアマは男を見た瞬間おびえだしていたわ。過去に何かあったのでは』 ナタネは再びジムへ戻った。 ナタネ『ヤジさん―…。続けましょう』 ヤジ『でも御主の2番手は…』 ナタネ『かまいません。いってらっしゃい、ニョロゾ!』 ヤジ『ほほう、水タイプか』 ヤジ『ムクホーク、インファイトじゃ!』 ナタネ『ニョロゾ!うずしお!』 ムクホークがニョロゾへ向かおうとしたがニョロゾは渦を素早く作り出した。 ヤジ『ムクホーク、渦に飲まれるでない!避けるのじゃ―…』 そう言ったのも虚しく、ムクホークは渦に飲み込まれた。 捕らわれて身動きの出来ないムクホークは、ただ渦の中でもがく。 ナタネ『ニョロゾ、今よ!みずでっぽう!』 みずでっぽうはムクホークに命中した。 ナタネ『続いて、あわ!』 ヤジ『…』 ナタネ『…?』 ヤジ『ギガインパクト…』 ナタネ『!! ニョロゾ、すぐに守りの体勢に入って!』 ナタネも一度はそう言ったが…体の大きさも違うのに、受け止められる筈もなければ、この素早い攻撃を避けきることも不可能だった。ナタネはそれに気づいた。 ナタネ『…ニョロゾ、たいあたり!絶対に逃げないで―…!』 ニョロゾは体に風を受けて走る。 前方からムクホークが猛スピードで突進してくるのを見て一瞬怖気づいたが、ナタネの『絶対に逃げないで』という言葉を思い出し、捨て身で突っ込んでいく。 ムクホークとニョロゾが激しい風の音とともにぶつかり合った。 ナタネ『ニョロゾ!!』 ナタネは祈るようにして目を瞑る。 ヤジはそれを見て、軽く笑って言った。 ヤジ『フッ、若いの。力比べは力が強い方が勝つに決まっておるじゃろう…?』 ナタネ『それは…』 ナタネは一瞬言葉を失った。 ヤジの言った事が正しいと思ったのだ。 ナタネ『(あたし、なんであんなことを指示したの!?自分でも信じられないよ…!)』 ナタネはあの時、混乱していて思わず運任せにあんなことを指示してしまったのであった。 ナタネ『(ニョロゾ、あたしはあなたを信じている…だから負けないで!)』 ナタネが心の中で言う。そして、うっすらと目を開けると、ムクホークたちのぶつかった場所を見て呆然と立ち尽くしているヤジが見えた。ナタネは、何が起きたのかと思うと、怖くなってきて再び目を瞑った。 ナタネ『ヤジさん…一体…何が…?』 ナタネが目を瞑ったまま話すと、ヤジは言った。 ヤジ『な…何故…だ…!』 ナタネ『…?』 ナタネはヤジの返答を聞き疑問に思い、思い切って恐る恐る目を開けた。 そこで、ナタネはやっと自分の目の前の状況を理解した。 ―ムクホークは、ぶつかったショックでぴくりとも動いていなかった。 ギガインパクトの反動で動けなくなったのかもしれない―…、ヤジはそう思ったのだが、まるで寝ているかのように目を閉じて倒れているムクホークを見て、判断し、呟いた。 ヤジ『ムクホークの負け…』 一方ニョロゾの方はというと、息を切らしながらも傷だらけの体で辛うじて立っている。 静かなジムの中に、ニョロゾの息の音だけが響き渡る。 ナタネ『ニョロゾ!!無事だったのね!よかった…』 ヤジはそれを見ると、ナタネに聞こえないように小さく舌打ちをすると、余裕げな表情で言った。 ヤジ『だが…わしの手持ちはあと2体。お前さんの手持ちもあと2体だが、そのうち1体はもう体力の限界ではないのか?』 ナタネ『…絶対勝ちます』 ヤジ『やる気は認める…が、それを実行できるかどうかの問題じゃ!出でよ!オニドリル!!』 ナタネ『ニョロゾ!うずしおで相手の動きを封じ込めて!』 ナタネはヤジが指示を出す前に素早く指示を出した。 ニョロゾはそれに応えるように素早く水の渦を作り出した。 ヤジ『オニドリル!ふきとばし!』 ナタネ『え…ニョロゾを強制交代させるつもり?…ニョロゾ、逃げて!』 ヤジ『すまないが、目的は強制交代ではないぞ…』 ナタネはニョロゾをとっさに非難させたが、それは無駄な動きであった。ニョロゾは酷くダメージを受けているため、少し歩くだけでも疲労が溜まってしまう。その隙を突いて、オニドリルはふきとばしで起こした風を、水の渦に当てる。 ナタネ『ああっ!!』 風が水の渦を巻き込んで、破壊してしまった。うずしおが水の粒となり、フィールドに降る。 しかし、此処でヤジの計算外の出来事が起きてしまった。 ヤジ『まずい、オニドリル!今すぐその場から回避するのじゃ!さもなくば、水の粒に当たってしまう!水の粒が翼にたくさん当たったら、翼は水を含んで重くなってしまう…!』 ヤジの言っている事は、あたっていた。 水の粒は雨と化し、もしもオニドリルに大量に当たったなら、オニドリルの翼に雨が染み込み、重くなってしまう。 しかし一方のオニドリルは、いまいちヤジの言っている事が理解できなかった。 それに、ヤジが危険を感じた箇所はそこだけではなかった。 ナタネ『貰ったわ!これはもう『雨の状態』。ニョロゾの特性は『ちょすい』。回復しながら、こちらの水タイプの技を強くできるのよ!』 ヤジ『オニドリル…くそっ、何で分かってくれないのだ!』 ニョロゾは雨を次々と受けていく。そうすると、次第と傷が癒えていく。 ナタネ『ニョロゾ、今よ!うずしおを今度こそ決めて!』 ニョロゾはまたもや水の渦を作り出した。 オニドリルの方へ水の渦が迫っていった。 ナタネは勝利の笑みを浮かべた。うずしおに呑まれて身動きが取れなくなれば、こっちのものであった。 しかし、ナタネはすぐに顔をしかめた。 なんと、うずしおがオニドリルのほうからもうひとつ発生し、ニョロゾの放ったうずしおの方へ迫っていたからである。 ナタネ『何でオニドリルがうずしおを…!?』 ヤジ『…がえし…』 ヤジが呟いた。 ナタネ『え?』 ヤジ『オウムがえし…。わしは指示をしていないのに…あいつは自主的にオウムがえしを仕掛けた』 ナタネ『…っ!?』 2人がうずしおの方を見ると、2つのうずしおはあたったところで1つの大きな水の渦になった。 ヤジ『…! オニドリル、ふきとばし!』 オニドリルはとっさに羽ばたいて風をうずしおに送った。うずしおは風に流され、そのままニョロゾのほうへ向かっていく。 ナタネ『…っ!!』 ナタネは驚いて声も出なかった。そして、容赦なくニョロゾは水の渦に呑み込まれた。 ニョロゾは渦の中でもがくが、もがけばもがくほど、水の流れが速くなり、ニョロゾを苦しめる。いくら水タイプとはいえ、これには流石に耐えられなかった。 数分間、ナタネは驚いたままニョロゾの姿を見ていた。 ナタネ『(何で!?私は…ニョロゾを見捨てている…!声が出ない…指示ができない…お願い、何か抵抗してよ!)』 初めのほうは水の流れに抵抗していたニョロゾであったが、時が経つにつれて、あきらめたのか意識を失ったのか、ニョロゾはただ水の流れに身を任せているだけであった。そのうちに、渦はニョロゾを再びじわじわと傷つける。 と、ニョロゾが水の流れから外れて、渦から放り出された。ニョロゾはすでに意識のない状態であった。 ナタネ『ニョロゾ!!』 と、ここでようやく声が出たナタネ。ナタネがニョロゾの体をゆすると、ニョロゾは力の無い声で優しく鳴いた。 ナタネ『お疲れ様―…』 ナタネがニョロゾをボールに戻そうとすると、ジムの扉が開き、ソヨギとヒオリが慌てて駆け込んできた。 ソヨギ『はぁ…はぁ…。』 ヒオリ『大変です…あがめのおかで…ヒアマさんが、ヒアマさんが…!』 ナタネ『ヒアマが、どうしたの!?』 ソヨギ『い、行ってみればわかる!とにかく大変なんだよ!』 ナタネ『でも…バッチが!』 ソヨギ『今は戦いをしている暇はないよ!ヒアマを助けにいかなきゃ!』 ヤジ『仕方ないのぉ…』 ヤジはポケットに手を入れると、きらりと光るバッチを取り出した。 ヤジ『ほれ、ウインドバッチじゃ。一時的に貸してやる』 ナタネ『え、本当ですか!?』 ヤジ『お前さんたちなら、わしに勝っていなくてもこのバッチを使えこなせそうじゃから。ただし、正式に渡すのはわしに勝ってからじゃ』 ナタネ『ありがとうございます、ヤジさん!』 ナタネはバッチを受け取ると、ソヨギ、ヒオリとともにジムを出た。 続く。 次回【26 今、その瞬間に出来ること】 |
最強レックウザ | #6★2008.02/16(土)14:50 |
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【26 今、その瞬間に出来ること】 ナタネたちはミモネシティの北へ向かい走っていた。 ナタネ『はぁっ…はぁっ』 ソヨギ『あがめのおかは、もうちょっと先よ!』 ナタネ『ヒアマ…っ!』 >あがめのおか ナタネたちがあがめのおかへ到着すると、丘の上にヌフアではなく、ヒアマの襟元を掴んでいる赤い髪の少年が居た。 ナタネ『ヒアマッ!!』 ナタネが丘を駆け上ろうとすると、赤い髪の少年が言った。 ??『俺は…人間の母とポケモンの父との間に生まれた…フウエン』 ヒアマ『こいつは、私の幼馴染なんです!こいつのお父さんは、ゴウカザルというポケモンで…』 フウエン『お前は黙っていろ』 ナタネ『フウエン!何でヒアマを…!』 フウエン『俺は、人間だがポケモンのように技を繰り出すことができる。しかし、俺はそういう中途半端な状態が大嫌いだった。だから、ネガイのみを食べて人間とポケモンにころころと切り替えることのできるコイツが憎いんだ』 ナタネ『…それなら…!』 ナタネはポケットに手を入れて、フウエンにネガイのみを渡そうとした。しかしフウエンはそれを拒否した。 フウエン『今となってはどうでもいいことだ、コイツを焼き払うのが先ず最初だ』 ナタネ『ヒアマ!』 フウエンは指先から小さな炎を出してヒアマに見せた。 フウエン『所詮お前もポケモン。この炎を見たら怯えるんじゃないのかな…?』 ヒアマは何も応えなかったが、いかにも怯えている感じだということが遠くから見ているナタネにもわかった。 その理由は他でもない。『自分が氷タイプだから』。 もしこの炎が体に触れでもしたら、たちまち弱り始めてしまう。 フウエン『…消えろ』 フウエンはそう言うと、指先の炎の力を強めて、振りかぶった。 ナタネ『ヒアマっ!逃げて…!』 ボッ! ナタネ『ヒアマーっ!!』 ナタネが悲痛な叫び声をあげる。 ヒアマに炎が燃え移った。 ヒアマ『私の…ことは…。…、…ナタネ…さん、此処は…危険…。』 ナタネ『あなたを見捨てて逃げれるわけないでしょう!?』 ナタネ『フウエン!!ヒアマを傷つけないで!』 フウエン『はっ…やるのか?』 ナタネ『いいよ!受けてあげる!!』 フウエンはそれを見ると、ニヤリと笑い、ヒアマを投げ捨て、ナタネの居る丘の下へゆっくりと歩いてきた。 ナタネ『覚悟しなさい!いけっ、ニョロゾ!!』 フウエン『お前もろとも、みーんな焼き払ってやる』 フウエンはそう言うと、場に出たニョロゾではなく、ナタネに向かって火をまとい突進してきた。 ナタネ『なっ…!?』 ソヨギ『人間に攻撃なんて、卑怯だよ!』 ヒオリ『ナタネさんが怪我をしたらどうするんですか!?』 フウエン『ふぅん、じゃあ、あいつはどうでもいいの…? フウエンはそう言うと、木陰に横たわり、体全体が炎に包まれてぐったりとしているヒアマを指差した。 ナタネ『ヒアマは…ポケモンでしょ?』 フウエン『今はのあいつは、技も繰り出せないただの人間』 ナタネ『…。』 そう言われては、ナタネも言い返すことができなかった。 フウエン『とにかく、人間には人間でお相手してもらうよ…』 ナタネ『そんな…相手は半ポケモンの人間なのに…そんなの無茶よ…』 フウエンが炎をまとい再び突進してくる。 ナタネは対抗もしなかった。というか、フウエンの素早い動きに翻弄され、対抗できなかった。 ソヨギ『ナタネっ…!』 ソヨギがとっさに駆け出したが、間に合う筈がなかった。 炎をまとったフウエンが、ナタネへ激突する。その衝撃で、砂煙が巻き上がり、ナタネとフウエンを包み込む。 フウエンは一足早く、砂煙の中から出ると、砂煙のほうを見た。 フウエン『あいつももう終わりかな』 フウエンのフレアドライブを浴びて、普通の人間が生きていられる筈がなかった。 ソヨギとヒオリが、絶望の表情で砂煙のほうを見ている。 と、そこで弱々しい声がした。 『私は…っ、そんな…簡単に…くたばり、なんか…しないよ』 フウエン『馬鹿な!これは幻聴だ!!』 フウエンが信じられないという感じで言うと、砂煙がおさまり、 中にはボロボロになりながらもちゃんと立っているナタネがいた。 ソヨギ『ナタネ…!』 ヒオリ『き、奇跡が…!』 ナタネ『フウエ…ン、今度こそ…覚悟…しな!』 ナタネが余裕でもないのに余裕の表情を見せると、 フウエンはさっきまで驚いていたのが嘘のように、笑い出した。 フウエン『あははっ!たかがフレアドライブ一発耐えただけで、お前は所詮ただの人間、俺と戦うことなんて不可能。』 ナタネ『…くっ…』 フウエン『生きて帰れると、思うなよ』 ソヨギ『フウエン!もうやめ…』 フウエン『大丈夫だ、お前もすぐこいつの後を追わせてやる』 そこで、握りこぶしを作って立っていたヒオリが、叫んだ。 ヒオリ『だったら…だったら私と戦って!』 フウエン『…はっ?お前も所詮ただの人間、しかも餓鬼…1発KO、確定だな』 ヒオリ『本当にそうかしら?』 フウエン『何だ?自信ありげな態度だな…俺をその気にさせてくれるか?』 ヒオリは首からさげている透き通るような綺麗な球のついたペンダントの近くに両手を出した。 フウエン『…!? なんだあれは!』 ペンダントから白く光る眩い発光体が出てきた。 フウエン『なんだ、そのペンダントは!』 ヒオリ『私の家に先祖代々伝わる「あがめのたま」』 ナタネ『あがめの…!?』 ヒオリ『伝説の3匹…レキェング、グラシード、ヒョウガを静めるために使うものなのだけれど、護身用として常備しているんです』 ??『これまた厄介なものを持つお嬢ちゃんだな』 ナタネ『!? 誰!?』 ナタネが振り返ると、そこにはヌフアが立っていた。 どうやら、今までのことをすべて、後ろで見ていたというのだ。 ヒオリ『これを奪うつもりですね…?そうはさせませんよ…!』 ヒオリはヌフアにそう言うと、再び前を向き、あがめのたまから出た白い光を両手ですくうようにする。 ヒオリ『行きますよ、ティンカー』 ヒオリは『ティンカー』という名の白い光を手で誘導する。 ヒオリ『ティンカー!』 ヒオリが名を呼ぶと、ティンカーはフウエンに近づき、眩い光を放った。 フウエン『くっ!目くらましか!!』 フウエンはそう思ったが、違った。 光は目くらましではなくれっきとした攻撃だったのだ。 気づけば、眩い光は光の刃のようになり、フウエンを切り刻む。 ナタネ『あれ…は?』 ヒオリ『ティンカーの技のひとつ、「ライトニングブレイド」です』 ソヨギ『凄い…!』 フウエン『っ、痛っ…!』 痛みに耐えながらも、光の中でもがき続けるフウエン。 それを見て、いつもとはまるで違う悪魔のような笑みを浮かべたヒオリが言った。 ヒオリ『では、この攻撃はやめにしましょう。ティンカー』 フウエン『もう…やめ…』 ヒオリ『まだまだ。ヒアマさんとナタネさんを傷つけたこと、これくらいでは済まされません』 ヒオリ『ティンカー、次よ』 ヒオリが言うと、ティンカーは今度は、フウエンの近くで眩い…を通り過ぎる、目に痛いほどの光を放った。 ヒオリ『みんな、目を瞑って…』 フウエン『うわあぁぁっ!!なんだこの光は!』 ヒオリ『ティンカーの目潰し用の技、「フラッシュライト」です』 ナタネ『凄い…』 ヒオリ『さあ、これでもう、あの技が出せますね。最終兵器、「エネルギークラッシュ」』 ナタネ『これでフウエンも…おしまいね』 ヒオリ『エネルギークラッシュは、光をためてから光の爆発を巻き起こす技で、ためる時の隙が大きいので、いつもではとても使えないのです』 ナタネ『相手の目をつぶせばこっちのものだもんね』 ヒオリ『さあ、ティンカー!最後の技!』 ティンカーはその場で光をためはじめた。 小さかったティンカーが、光を集めてどんどん大きくなっていく。 そして…。 ヒオリ『このくらいでいいでしょう、ティンカー!』 ティンカーはフウエンの元に近づくと、光を漏らし始めた。 ヒオリ『この技は危険です!みんな、逃げて!』 ピカァッ!ドカァァン…! フウエン『くっ…!』 フウエンは光の爆発を受けた後、光に包まれてどこかへ行ってしまった。 ヒオリ『倒し…ましたね。』 ナタネ『ヒオリちゃんの「あがめのたま」って凄いんだね…』 ソヨギ『あっ!ヒアマは!?』 ナタネ『ヒアマー!』 ナタネとソヨギたちは、ヒアマの倒れていた木陰へと走った。 続く。 次回【27 心の中でいつまでも】 |
最強レックウザ | #7★2007.07/31(火)21:41 |
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【27 心の中でいつまでも】 ナタネ『ヒアマっ!ヒアマっ!』 木陰で焼け焦げて倒れているヒアマを見てナタネは体をゆすって呼びかけた。 もはや辛うじて原型をとどめているヒアマからは反応が返ってこなかった。 ナタネは理解していた。自分たちがフウエンと戦っている時に、燃え尽きてしまったということ。 しかしナタネはそれを認めたくなかった。少しでも希望があると信じて―…。 ソヨギ『…ナタネ、あきらめなよ…』 ナタネ『ソヨギまでそんなこと言うの?ヒアマはポケモンだよ?ポケモンなら、炎で焼けたって瀕死してしまうだけで、永遠の眠りにつくなんてことはないでしょ?』 ヒオリ『フウエンが言っていました、今のコイツは紛れも無い人間だ、と』 ナタネ『そんな…』 ナタネはこらえきれなかった。 今までのヒアマとの思い出が、いつのまにか頭の中をよぎるのだ。 ―初めて出会ったのはグリーンビレッジ。確かあの時は、貧乏人のふりをしてナタネにすがりついてきた…。 リーフィア『カゼハ』との別れ。幼いころの思い出。いろいろな町の歴史の話。 見かけによらずお喋りなヒアマは、いつもナタネに話をしてくれた。 いろいろなことを教えてくれた。 ナタネがひとり戦いに出る時、ヒアマは『行っちゃ嫌だ!』と、ナタネに泣きついた。 そんなヒアマをなだめて、ナタネはヒアマを残していった。 帰ってきたときのヒアマの顔は、どこのどんなものよりも可愛いものだった。 ―ヒアマはポケモンであるにもかかわらず、人間と同じように接することができたため、ナタネの一番のパートナーに近い関係になっていた。 ―自分のために、命を捨てて戦ってくれたヒアマ。 何度か瀕死にさせてしまったことがあったが、それはジョーイさんがすべて良くしてくれた。 しかし―今回はそうは行かなかった。 ナタネは、覚悟を決めた。 本当は信じたくなどなかったのだが、信じざるを得なかったのだ。 そして、ナタネは、ヒアマに最後の言葉を告げた。 ナタネ『ヒアマ、あなたの存在は、何よりも大きなものでした。あたしは、あなたにいろいろなことを学びました。あなたは、眠ってなんかいません。あたしの心の中で、いつまでも生き続けています。だから、あたしは…あたしは…』 ナタネはそこまで言ったところで、こらえきれなくなった涙を溢れ出させた。 ナタネ『…っ、さよなら…なんて…言わない…からねっ…』 ナタネは、溢れ出る涙を拭おうともせずに、ヒアマを見つめていた。 『…ネ…さん…』 『…タ…ネ…さん…』 ナタネははっとした。どこかから、自分のことを繰り返し蚊の鳴くように呼び続ける声がしたからだ。 『…ナタネ…さ…ん…』 しかもその声は、ナタネの直ぐ目の前から聞こえてくる。 見ると、ヒアマの目が開いていて、口が僅かに動いていることがわかった。 それを見た瞬間、ナタネは希望に満ちた声でその名を呼んだ。 ナタネ『ヒアマ!?』 ヒアマ『っ、はぁ…、ナタネ…さん、私は…、あなたのポケモンになれて…幸せでした…っ、』 ヒアマは今にも力尽きそうに呟いた。 ヒアマ『ナタネさん…あなたが無事だっただけに…この死に方に…悔いはありません』 ナタネ『ヒアマ…ヒアマっ!戻ってきてくれるよね!?また、あたしと一緒に旅をしてくれるよね…?』 ナタネはヒアマの最後の言葉を聞いているようで聞いていなかった。 ナタネはヒアマに祈るように言うが、ヒアマはにっこりと笑いながら言った。 ヒアマ『ごめ…んね、もう…できそうに…な…、い…。』 ヒアマはそう言うと、静かに瞳と口を同時に閉じた。 それが、ヒアマの最後だった。 ナタネ『ヒアマっ、ヒアマっ…ヒアマあぁっ!!』 ナタネは狂ったようにその冷たくなった体を激しく揺さぶり、名を叫び続けた。 ナタネ『嫌だぁっ!ヒアマぁっ!帰ってきてよ!ヒアマ!』 ソヨギ『ナタネ…。』 ナタネ『嘘…そんなの嘘よ…ヒアマ…』 ヒオリ『ナタネさん…』 ナタネ『…。』 ナタネは、諦めたのか叫ぶのをやめた。 そして、数秒の沈黙のあと、話した。 ナタネ『行こう、ソヨギ、ヒオリちゃん。いつまでもウジウジしてても、仕方ないものね』 ナタネはどこか曇った笑顔を見せた。 しかしソヨギとヒオリは、その笑顔を見て、ますますナタネのことが気がかりになったのだ。 どう見ても、作り笑いにしか見えなかったからだった。 しかし、今何か言うと、またナタネを傷つけるだけだ。 ソヨギとヒオリは、黙ってナタネに同意した。 ソヨギ『…うん。』 ヒオリ『さ、ミモネシティへ帰りましょう…』 3人があがめのおかを後にしようとすると、後ろから誰かが呼び止めた。 『もう、俺もこれ以上待っていられない。ショーを見たいなら、今のうちだ』 ナタネは振り返った。そこにはヌフアが立っていた。 ヌフア『どうする?レキェングたちを見捨てて立ち去るのか、それとも…』 ナタネ『次はあなたの番だったね。』 ヌフア『ふふ、じゃあ遠慮なくはじめさせてもらおうかな!』 ヌフア『俺の…世界最大の…ショーを!』 ナタネ『…っ!』 ナタネ、そしてソヨギとヒオリは、唾を飲んだ。 続く。 次回【28 世界の終わり…】 |
最強レックウザ | #8☆2007.08/13(月)13:42 |
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【28 世界の終わり…】 ヌフア『さぁ…出て来い!レキェング、グラシード、ヒョウガ!』 ヌフアが呼ぶと、どこからか3匹のポケモンが現れた。 グラシードもヒョウガも、ナタネたちにちゃんと姿が見えた。 黄金の光をまとった金色のポケモン 舞い続ける葉をまとった翠色のポケモン 蒼白い煙をまとった蒼色のポケモン ヒオリ『レキェング…グラシード…ヒョウガ…これが…!』 『あがめのたま』を授けられ、この3体の神を治めるという任務を任されたヒオリ。 ヒオリが呆然として3体を見ていると、ヌフアが言った。 ヌフア『…お嬢ちゃん、俺のショーの邪魔をするのなら、容赦しないからな?』 ヌフアは不気味に笑うと、3匹の前に立った。 ヌフア『新しい世界を作るのはお前たちだ!後は頼んだぞ…!』 ヌフアが言うと、3匹は空中に3つの光線を出した。 金色の光線、翠色の光線、蒼色の光線。 3つが混ざり合い、多色に光る光の球が現れた。 ナタネ『!? 何をする気!?』 光の球は直ぐに弾けると、空間をあっという間に包んでしまった。 まるで異空間にいるような雰囲気に、ナタネは動揺した。 ナタネ『私たちは、どうなってしまうの…?』 ヌフア『滅びる』 ナタネ『…ヌフアも?』 ヌフア『ああ』 ナタネ『なら…何故こんなことを!』 ヌフア『お前に俺らの野望など解る筈がない!この世界は消えてしまえばいい!新しい世界を作るのは俺ではなく、この3匹だ!』 ナタネたちには、ヌフアの言っている意味がよくわからなかった。 そんな間に、不気味な光にどんどん呑み込まれていく。 やがて光は尋常でないくらいに眩く光りだした。 ソヨギ『くっ…眩しいっ!』 ヌフア『見ろ…、これが』 ヌフア『世界の終わりだ…』 ヒオリ『そんなわけには…!』 ヒオリはあがめのたまを宙にかざそうとした。が、ヌフアが素早い動きでペンダントごと奪ってしまった。 ヒオリ『あぁっ!!』 ヌフア『お嬢ちゃん?俺の邪魔をするなと、言った筈だろう…?』 ヒオリ『か…かえして…っ、返してえっ!!』 ヒオリはその場に崩れこんだ。ヌフアに向かって必死に手を伸ばすが、届かない。 ヌフア『返して欲しい?』 ヒオリ『…っく、それ…は、私の先祖代々の…っ』 ヌフア『こんな物を持っていては駄目だよ、お嬢ちゃん』 ヌフアは笑顔であがめのたまを宙にかざすと、その手に力を入れ始めた。 ヌフア『これは邪魔…不必要なもの、だから、握り潰してあげる』 ヒオリ『やめてぇえっ…!』 ナタネ『ヌフア!やめて!!』 ナタネがヌフアに駆け寄ろうとする。 それを見たヌフアは、いっそう力を強くした―…、瞬間。 パリィィン…! あがめのたまが砕け散った。 ナタネはそれを見て足を止めた。 ヌフア『あっははっ!!これがなければ、もう何をすることもできない!ああ悲惨なあがめのたま…!ふははっ!』 ヒオリ『ヌフア…っ!』 そこへ、砕け散ったあがめのたまから現れた白い光が近づいてきた。 ヒオリ『…ティンカー…なの?』 白い光は頷くように点滅した。あがめのたまが砕かれたことで多少光が弱まっているように感じたが、しっかりと生きていた。 ヒオリ『無事なのね!よかった!!ヌフア、ティンカーがいれば、あなたなんて…!』 ヌフア『さっきフウエンとかいう奴をメッタメタにしたそいつか…ふ、また厄介なものが』 ヌフアが面倒そうに言った。 ヒオリ『さぁ、ヌフア、覚悟!』 ヒオリがティンカーを引き連れてヌフアに向かおうとすると、ティンカーの光がたちまち弱くなった。 ―…そして、消えてしまった。 ヒオリ『ティンカー!?』 ナタネ『そんな!』 ティンカーは、あがめのたまの主である。 だから、あがめのたまが無くなった事で、ティンカー自身も消えてしまったのだ。 ヌフア『さぁ、君たちはもう無力だよ…』 ヌフアが笑うと、そこへ誰かの声がした。 『ヌフアちゃん!!もうやめて!!』 ヌフア『ヌフア…ちゃんだと!?お前…!』 ヌフアは、聞き覚えのある声と、その呼び名に反応して振り向いた。 そこには―…。 ナタネ『ロミさん!!』 ロミ『ヌフアちゃん…なんでこんな事をするの?昔はこんな人じゃなかったのに…』 ヌフア『…っ…』 ヌフアはロミに久しぶりに会って、苦心の表情を見せた。それには深い訳があった。 ロミ『ヌフアちゃん!お願い!教えて…!』 ヌフア『俺は…、っ!』 続く。 次回【29 ヌフアの過去】 |
最強レックウザ | #9☆2007.08/13(月)14:22 |
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【29 ヌフアの過去】 ヌフア『俺は…過去を思い出すのが…怖かったんだ…』 ヌフアが小声で話し出した。 ロミ『だからそれを紛らわすために、こうして悪事を働いているの?』 ヌフア『そう…俺は、過去に手違いで兄さんを殺してしまったんだ』 ヌフア『俺は悪い者扱いされて、世間から変な目で見られるのが怖くて、どうせなら悪事をもっとやらかしてしまおうと思って…』 ロミ『それじゃあ同じじゃない!』 ヌフア『…そうだな…俺は…、…私は、馬鹿だね…』 ヌフアはそういい終わると、眩い光の中へ飛び込もうとした。 とっさにロミがヌフアの腕をつかむ。 ロミ『そっちは何があるかわからないのよ!』 ヌフア『いいの…、私がどうなろうとも。すべては私がいけないのだから』 ロミ『ヌフアちゃん!』 それを見ていたヒオリが叫んだ。 ヒオリ『そうよ!みんなみんな、あんたがいけないのよ!』 ロミ『!?』 ヒオリ『どうしてくれるのよ!こんな事にして、あがめのたまだって、もう直らない…。』 ロミ『ちょっと!』 ヒオリ『本当に詫びる気持ちがあるのなら、全て元に戻してよ!』 ヒオリが瞳から涙をたくさん零して叫ぶと、ヌフアが振り向いて優しく言った。 ヌフア『ごめんね…謝っても謝っても、もうどうにもならないことだというのは、私自身も解ってる。』 その様子をずっと見ていたナタネは、ポケットに手を入れると、ひとつの小さな実を取り出した。 ナタネ『ヒアマ…やっと、これを使うべき時がやってきたよ』 それを見たソヨギが言った。 ソヨギ『それは…ネガイのみ!?』 ヒオリ『えっ!?』 ロミ『ネガイのみだって!?』 ヌフア『それは…!』 ナタネ『皆に、あたしからお願い。』 一同『?』 『ヌフアを、許してあげてね。そしてヌフアは、もう悪事はしないと誓ってね。』 一同は一言も喋らず、笑顔で小さく頷いた。 それを見たナタネも、小さく笑みを浮かべてネガイのみを食べた。 ナタネ『全てが、元に戻りますように―…。』 ―…。 ―…。 気づけば、一同はあがめのおかで倒れていた。 レキェング、グラシード、ヒョウガの姿ももう見当たらない。 景色も、普段見る景色に戻っていた。清々しい蒼い空。穏やかに吹くそよ風。風になびく草木―…。 ナタネ『…終わった…。』 ヒオリ『…』 ヒオリは下のほうに目をやった。そこには、ちゃんとあがめのたまが首から下げられていた。 ヒオリ『よかった、あがめのたまも元に…。』 ヌフア『でも、いつまたあの3匹が暴れだすか解らないし、何が起こるかもわからない。そのときは、君のあがめのたまを使ってね』 ヒオリ『はい。』 ヌフア『じゃあ私は、そろそろ行くね。リリフやノルマにも、このことを伝えておかないと』 ナタネ『でもリリフやノルマは、ちゃんと理解してくれるかな?』 ヌフア『さぁ、どうだろう?』 ロミ『まぁ、がんばって。』 ヌフア『うん。あと、…ロミちゃん、有難うね。』 ロミは照れくさそうに笑った。 ロミ『あっ、ねぇ。今日は丁度ジムの定休日だし、リリフやノルマにこのことを伝えるの、手伝ってあげてもいーよ?』 ヌフア『えっ?』 ロミ『まあいいってことよ。行こう?ヌフアちゃん!』 ヌフア『あ、うん…』 ロミ『じゃあナタネさんたち、まったね〜!』 ロミは、大きく手を振って去っていった。 ヒオリ『じゃあ私もこの辺で、じゃあ何かあったら連絡できるように、ティンカーにはナタネさんたちに付いていってもらいましょうか』 ナタネ『うん、わかった!』 ヒオリ『何かあったらティンカーに言ってください。私に直ぐ知らせに来ると思います。』 ヒオリはそうして、去っていった。 ナタネ『ふぅ…なんか大事続きで疲れちゃったね。ソヨギ』 ソヨギ『そうだね〜…あ、そういえば、まだヤジさんに勝ってなかったよね?』 ナタネ『そうだった!早く行こう!』 ナタネたちは丘を下り始めた。 続く。 次回【30 ミモネジム最終決戦】 |
最強レックウザ | #10☆2008.02/02(土)21:48 |
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【30 ミモネジム最終決戦】 ナタネ『えーと、ヤジさん、あたしです、ナタネです!』 ジムの中へ入ったナタネはヤジを呼ぶ。 そして、ヤジが奥からやってきた。 ヤジ『待っておったぞ。ジム戦じゃな?』 ナタネ『はい、そうです!』 ヤジ『うむ、続けよう。こちらは体力の回復などは一切しておらぬが…お前さんはどうじゃ?』 ナタネ『こちらも大丈夫です。』 ヤジ『よろしい、では始めよう。残りのポケモンはわしが2体、お前さんが1体じゃったな?』 ナタネ『はい。』 ヤジ『出でよ、オニドリル!』 ヤジの最初のポケモンは、オニドリル。 以前のバトルで受けた傷跡が、まだ残っていた。 ナタネ『いってらっしゃい、ロズレイド!』 ヤジ『ほう、草タイプで飛行タイプに挑むというのか…面白いじゃないか』 ナタネ『あたしに草タイプを使わせたら右に出るものなんていませんよ!』 ヤジ『ほっほっほ。そうかそうか。では、それなりの戦いを見せてもらおうじゃないの。オニドリル、ドリルくちばしじゃ!』 とっさにオニドリルがロズレイドめがけて急降下する。 ナタネ『ロズレイド、かわして!』 ロズレイドは素早くその攻撃をかわした―…つもりだった。 ヤジ『フッ…そうくると思ったわい。オニドリル、はねやすめじゃ!』 ナタネ『ええっ!?』 オニドリルはロズレイドに攻撃すると見せかけて、ロズレイドがかわしたスキを狙って回復したのだった。 ナタネ『うう…予想外だぁ…ロズレイド、回復のスキを見計らってエナジーボール!』 ナタネも負けじと回復中のスキを狙ってエナジーボールを撃つ。 流石に回復中は無防備なのでかわすことはできず、攻撃は命中した。 ヤジ『くぅ…回復中の攻撃はやっぱり痛いのう…でも!オニドリル、もう回復は済んだろう?』 ヤジの言葉にオニドリルは頷いた。確かに視るとオニドリルの身に刻まれていた傷跡はもうどこにもない。 ナタネ『なんて凄い回復力なの…!それなら、ロズレイド!リーフストームよ!』 ヤジ『全回復はできないが…効果は所詮今ひとつじゃ!オニドリル、耐え抜け!』 ロズレイドはありったけのフルパワーでリーフストームを繰り出した。 葉っぱの嵐が巻き起こり、それがオニドリルへ襲い掛かる。 オニドリルはそれに耐えようと必死だが、力の差で負け、あっけなく吹き飛ばされる。 ヤジ『オニドリル!』 ナタネ『効果は今ひとつ…だけど、以前の戦いで受けたダメージはまだ完全には回復できていないはず!』 オニドリルは堪えていたが、やがてぐったりと倒れる。 ヤジ『オニドリル…』 ナタネ『やった…!これで向こうも残り1体!』 ナタネが喜んだのもつかの間…不安がよぎる。 ナタネ『…残り1体っていっても…相手はジムリーダー。きっと一番の切り札を出してくるに違いない!』 ヤジ『フフフ…御名答じゃ。』 ヤジ『わしの最後の1体は…これまでの2体とは比べ物にならない強さを誇るのじゃ。…出でよ、トゲキッス!』 ナタネ『トゲキッスだって!?』 ヤジの切り札は、飛行タイプの中でもトップクラスの速さを持つトゲキッスだった。 ナタネ『くっ…でも、此処まで来たのよ!此処で引き下がるわけにはいかない!』 ヤジ『ほっほ、いい根性じゃ。トゲキッス、でんじはじゃ!』 ナタネ『ロズレイド!かわし…』 ビッ!! ナタネ『ああっ!ロズレイド!!』 ロズレイドがかわす間もなく、でんじはを易々と受けてしまった。 ロズレイドの身は痺れて、思うように動けない。 ナタネ『ロズレイド!しっかりして!ヘドロばくだん!』 ヤジ『かわすのじゃ!』 ナタネ『あきらめないで!命中するまでヘドロばくだんを撃つのよ!』 ヤジ『フッ、無謀じゃ。トゲキッス、エアスラッシュ!』 ナタネ『なっ…!』 風の刃がロズレイドに突き刺さる。 ナタネ『負けないで!ヘドロばくだんよ!』 しかし、ロズレイドは動かない。…というより、”動けない”ようだった。 ナタネ『こ、これは…もしかしてっ!』 ヤジ『ほっほ、ロズレイドはどうやら怯んでしまったようじゃのう…』 ナタネ『そんなっ…』 ヤジ『トゲキッス、もう一度エアスラッシュじゃ!』 ナタネ『ロズレイド、かわして!』 しかしロズレイドがかわす前に風の刃が突き刺さる。 ナタネ『うう…ど、どうしよう!…また怯んだりしたら…相手の思うツボよ…!』 ヤジ『フフ、いい調子じゃ、トゲキッス。』 ナタネ『ロズレイド!動いて!意地でも…!このままじゃ、あなたはやられてしまう…!』 ナタネの必死の声にロズレイドは応えようとするが、身体が思うように動かない。 ナタネ『くっ…今度は麻痺で動けないのね…』 ヤジ『これで最後じゃ!トゲキッス、はどうだん!』 ナタネ『ダメ…ッ!!』 ロズレイドに弾が迫る。 ナタネ『どうすれば…どうすればあのスピードに追いつけるの…!』 ―…そして、奇跡が起こった。 ヤジ『うおっ!急に陽射しが…!』 ナタネ『わっ、眩しい!』 眩いばかりの陽射しに、ロズレイドが反応した。そしてロズレイドの身が、陽射しに負けぬほど光りだした。 ヤジ『こ、これはまさか…』 ナタネ『そうか!葉緑素が発動したのね!』 ヤジ『何だと!?ロズレイドに葉緑素なんて特性は無いはずじゃぞ!』 ナタネ『いいえ。あたしの草ポケモンは、みんな修行によって葉緑素を会得しているのです』 ヤジ『ほう…自然はお前さんの味方をしたようじゃな…』 ヤジの表情が少し焦る。 ナタネ『これなら、あのスピードに追いつけるかもしれない!ロズレイド、ヘドロばくだんよ!』 ヤジ『トゲキッス、かわすのじゃ!』 しかし、流石のトゲキッスもこのスピードを抜くことはできなかった。 トゲキッスにヘドロばくだんが直撃する。 ヤジ『まずい…ロズレイドのスピードに追いつけないなんて…』 ナタネ『今よ!あたしがトドメを刺すわ!ロズレイド、くさむすびッ!!』 ロズレイドは動こうとしたが、身体の痺れが邪魔をする。 それでもロズレイドは動き出し、トゲキッスに草を絡める。 ヤジ『麻痺しているはずなのに…何故こんなに軽やかに動けるのじゃ!』 ナタネ『云ったでしょう?あたしに草タイプを使わせたら右に出るものは居ないと!』 ヤジ『くっ…』 トゲキッスはくさむすびを受け、力無く地面に打ち付けられる。 そして、そこから起き上がることができなかった。 ヤジ『…わしの負けじゃ。』 ナタネ『やった…!』 ヤジ『くぅ…惜しかったのう。流石草タイプ使い…相性の悪い飛行タイプに打ち勝つなんて、凄いじゃないか』 ナタネ『ありがとうございます!』 ヤジ『それじゃあ、これがミモネジムのバッチ、”スカイバッチ”じゃ。』 ナタネ『ありがとうございます!これで4つ目!』 ヤジ『これからも、頑張るのじゃぞ。』 ナタネ『はい!』 ソヨギ『おかえり、どうだった?』 ナタネ『勿論勝ったよ!ホラ!』 ナタネはソヨギにスカイバッチを見せた。 ソヨギ『流石ナタネね。この調子で次も頑張ろう!』 ナタネ『うん!』 ―とそこに、ソヨギの携帯電話が鳴り響いた。 ソヨギ『あれ?…もしもし、ソヨギですけど』 ソヨギ『ふんふん… …ええっ!?い、今すぐ帰ります!』 ナタネ『か、帰るって!?どうしたの!?』 ソヨギ『弟で、今ジムリーダーを任せているグリンが、倒れたらしいの!』 ナタネ『なんだって!?早く行ってあげなきゃ!』 ソヨギ『いや、ナタネは旅を続けてて。此処からあたしの街までは、距離が遠すぎるわ』 ナタネ『えっ…でも!』 ソヨギ『それに!バッチを集めないとあたしの街までは来れないわよ!』 ナタネ『そ、そうだった…』 ソヨギ『じゃあ、悪いけど此処でお別れね!早くバッチを集めて、あたしの処に来てね!じゃあね!』 そういい残して、ソヨギは走り去っていった。 ナタネ『うう…あたし一人じゃどっちに進んだらいいのかわからないよ…』 ナタネがしょげていたその時だった。 『おい、そこのオマエ!』 ナタネ『えっ、あたし?』 『そうだ。』 ナタネ『な、何?』 続く。 次回【31 一匹狼、ジュナ登場!】 |
最強レックウザ | #11☆2008.02/02(土)22:22 |
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【31 一匹狼、ジュナ登場!】 『オマエは…もしかして…ハクタイジムのナタネか?』 ナタネ『えっ…そ、そうだけど…あなたは?』 ジュナ『オレはジュナだ。…オマエ、こんなところで何をしているのだ?』 ナタネ『何って…シンオウのチャンピオンの子に、突然レアフ地方の探索をお願いされて…』 ジュナ『それで、道がわからないのか?』 ナタネ『う、うん…(恥ずかしいけど…)』 ナタネの前に現れたのは、ジュナと名乗るポニーテールの女の子だった。 が、女の子のわりには言葉遣いが男っぽく、その横にはジュプトルを引き連れていた。 ナタネ『で、その…もしかして、教えてくれたり…するの?』 ナタネが焦りながらもジュナに問う。 それに対し、ジュナはしばらく考えてから応えた。 ジュナ『…わかった。』 ナタネ『ホント!?ありがとう!』 ジュナ『次の街への道は、こっちだ。』 ナタネ『ありがとう。ところでジュナ、あなたはかなり強そうだけど…何者なの?』 ジュナ『オレはホウエン地方の者だ。初めて捕まえたコイツと一緒に、各地を旅している。レアフの旅が終わったら、シンオウへ行くつもりだったから、シンオウのジムリーダーが此処にいて、吃驚した。』 ナタネ『そ、そうなんだ…』 ジュナ『此処でオマエのような奴に逢えたのも何かの縁だ。オレはこの地方のことはよく知っている。…団体行動は好まないのだが、一緒に行ってやる』 ナタネ『本当に!?ありがとう、ジュナ!』 ナタネ『(最初見たときは、ちょっと怖かったけど…見かけに反して、親切な人っぽいし…しかも、ちょっとカッコいいし…いいよね♪)』 ジュナ『云っておくが、オレがこうやって団体行動をするのは、オマエみたいな奴とだからだ』 ナタネ『えっ?…街中で道がわからなくてうろついてる頼りないジムリーダーだから?』 ジュナ『違う!ジムリーダーと一緒に旅をすれば、一層強くなれると思ったからだ。自分をそうやってよくない風に考えるのは、やめろ。』 ナタネ『そ、そう?あたしみたいなのでよければ…(よかった…)』 ジュナ『ホラ、またよくない風に考える…。』 ナタネ『ご、ごめんごめん。ところでさ、ジュナ。このジュプトルには、何か思い入れはあるの?』 ナタネはジュナの横をついてくるジュプトルを見て問いかけた。 ジュナ『思い入れか…まあ、オレがホウエンから旅立つときに初めて出会って、その見かけと性格と強さ…すべてに惹かれたって感じかな。』 ナタネ『確かに、ジュナとジュプトル、お似合いだね。なんか性格とかも似てそうだし』 ジュナ『オマエは確か、草ポケモンの使い手だったよな?』 ナタネ『え?うん、そうだけど…?』 ジュナ『そうか。実はオレも、草タイプが好きなのだ。』 ナタネ『ホント!?気が合うね!』 ジュナ『ああ。だから、今此処でバトルをしてもらってもいいか?』 ナタネ『えっ?い、今?』 ジュナ『そうだ。』 ナタネ『うーん…いいけど…。』 ジュナ『よし、此処がいいだろう。』 2人がやってきたのは、道のはずれにある小さな原っぱだった。 小さいとはいえども、周りに障害物はオレンの樹くらいしかなく、バトルするには最適の場所だった。 ジュナ『この場所は、オレの修行場所でもある。道のはずれにあるから、人も来ない』 ナタネ『へえ…いい場所を知ってるんだねえ。』 ジュナ『使用ポケモンは1vs1だ。じゃあ、始めるぞ!』 ナタネ『うん!』 続く。 次回【32 VSジュナ!草原の戦い!】 |
最強レックウザ | #12☆2008.02/03(日)12:00 |
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【32 VSジュナ!草原の戦い!】 ナタネ『いってらっしゃい!ロズレイド!!』 ジュナ『ジュプトル、頼んだぞ!』 ジュナ『オマエからかかって来い。』 ナタネ『えっ!?(何を考えてるんだろう…)』 ジュナ『早くしろ!』 ナタネ『ごめん…ロズレイド、ヘドロばくだん!』 ロズレイドは素早くヘドロばくだんを繰り出す。 ジュナ『そう来たか…ジュプトル、やれ!』 ナタネ『ええっ!?』 その瞬間、さっきまでバトルフィールドに居たはずのジュプトルが居なくなっていた。 ナタネはそれを視て動揺した。 ナタネ『えっ…ええっ!?どうなってるの!?…ロズレイド、警戒して!』 ジュナ『フン…ジュプトル、そこだ。出て来い!』 とたんに、ロズレイドの足元からジュプトルが飛び出して、ロズレイドを空高く突き飛ばした。 ナタネ『そんなっ!ロズレイド、しっかりして!』 ジュナ『甘いな…』 ナタネ『これは…あなをほる!?』 ジュナ『そうだ。身のまわりを警戒したって、地面のなかまでは警戒できないからな…』 ナタネ『…(やっぱり強い…!)』 ナタネ『(い、いや。何とかして、攻撃を当てなきゃ!)ロズレイド、もう一度ヘドロばくだん!』 ジュナ『ジュプトル、でんこうせっかだ!』 ロズレイドが動き出したとたんに、ジュプトルがまたロズレイドに突っ込んできた。 ナタネ『わっ!は、速いッ…!』 ジュナ『一瞬のスキが、命取りになるんだ』 ナタネ『うう…ロズレイド…』 ナタネ『どうしよう…ぜんぜん攻撃を当てることができない…』 ジュナ『よし、ジュプトル、リーフブレードだ!』 ナタネ『ロズレイド、かわして!』 今度はジュプトルの攻撃を、ロズレイドが素早くかわした。 ジュナ『なかなか素早いな…。』 ナタネ『あたしをナメちゃいけないよ!』 ジュナ『そうだな。でも…まだまだこれからだ。』 ナタネ『もちろん!』 ナタネ『ロズレイド、今度こそヘドロばくだん!相手をよく見て!』 ジュナ『ジュプトル、かわせ!』 しかし、ロズレイドはしっかりとジュプトルを捕らえて逃がさなかった。 かわそうとしたジュプトルにヘドロが降りかかる。 ジュナ『ジュプトル!』 ナタネ『そうよ、ロズレイド!その調子よ!』 ジュナ『くっ…ジュプトル、リーフブレードだ!』 ジュプトルも負けじとロズレイドに素早い攻撃を繰り出す。 ロズレイドはリーフブレードにより深い傷を受けてしまった。 ナタネ『ロズレイド!頑張って!エナジーボール!』 ジュナ『ジュプトル、でんこうせっかでかわして、そのままロズレイドに突っ込むんだ!』 ジュプトルはでんこうせっかのスピードを使い、エナジーボールをかわした、が…。 ナタネ『ロズレイド!ジュプトルを追って!』 ジュナ『何ッ!?』 でんこうせっかで素早く動き回るジュプトルの後ろから、ロズレイドが追ってきた。 スピードこそは負けているものの、ロズレイドはジュプトルを見逃さない。 ナタネ『あの速さを止める方法はただひとつ!ロズレイド、くさむすび!!』 ジュナ『かわしきれ、ジュプトル!!』 しかし、ロズレイドの放った草がジュプトルの身に絡まる。 ジュプトルはそのまま身動きが取れなくなりスピードを落とした。 ナタネ『今よ、ヘドロばくだん!』 ジュナ『くさむすびにそんな使い方があったとは…。よし、ジュプトル!その草にすいとるだ!』 攻撃をかわそうにも、絡まっている草のせいで身動きができない。 そこで、せめて体力の回復をしようと、ジュプトルは草にすいとるを繰り出した。 草から吸い取った養分で、ジュプトルの傷が少しずつ癒えていく。 ナタネ『う…逆に利用されちゃった…でも、ロズレイド、回復しきる前にヘドロばくだんを命中させて!』 ロズレイドはかまわず回復をしているジュプトルにヘドロばくだんを撃つ。 ジュナ『まずいな…ジュプトル、リーフブレードで草を切って、でんこうせっかで回避しろ!』 ジュプトルはとっさにリーフブレードで草を切り刻み、でんこうせっかでその場を回避した…が、ロズレイドの撃ったヘドロばくだんが後方から迫ってくる。 ジュナ『逃げ切れ、ジュプトル!!』 ナタネ『くっ…なんて素早さなの…!!』 ジュプトルは間一髪、ヘドロばくだんが届かない場所まで逃げ切った。 ジュナ『よし、いいぞジュプトル!じゃあ、そこからターンしてロズレイドに突っ込め!』 ナタネ『ロズレイド、リーフストームでジュプトルをこっちに来させないで!』 でんこうせっかでロズレイドに突っ込もうとしたジュプトルは、ロズレイドの放ったリーフストームにより一定の距離からロズレイドに近づけない。 ナタネ『そうそう、いい感じ!』 ジュナ『くっ…風の威力が強いな…。でもジュプトル、オマエのスピードならこの風を打ち破ることができるはずだ!』 ナタネ『(これでもし、風を打ち破られたら…!)』 しかし、ナタネのいけない予感のとおり、ジュプトルは風を打ち破り、ロズレイドに突っ込んでしまった。 ナタネ『ロズレイドッ!』 ジュナ『そうだ!そのままリーフブレードで痛めつけろ!』 ナタネ『(このままじゃロズレイドが…!)』 でんこうせっかをもろに食らってしまい怯んだロズレイドに、ジュプトルはあらん限りの力でリーフブレードを連続して繰り出し、ロズレイドを切り刻む。 そんなロズレイドを視て途方にくれていたナタネは、あることを思いつく。 ナタネ『…!(そうだっ!この至近距離から、効果抜群のヘドロばくだんを撃てば、ジュプトルに致命傷を与えられるはず!)』 ジュナ『ジュプトル!一瞬たりともスキを作るな!まだ何を仕掛けてくるかわからない!』 ナタネ『ロズレイド、そこからヘドロばくだん!』 ロズレイドは耐えながら、ヘドロばくだんを目の前にいるジュプトルに撃った。 しかし、ジュナに云われてロズレイドの攻撃を警戒していたジュプトルは、その攻撃をかわしてしまった。 ナタネ『そんなっ!こんな至近距離からの攻撃もかわすことができるの!?』 ジュナ『流石だな!ジュプトル!やっぱりオレのパートナーだ!』 ナタネ『ううっ…ロズレイド…』 やがてロズレイドは、その場にうずくまってしまった。 ナタネ『ロズレイド!!』 ナタネ『ロズレイド!…ごめんね、あたし何もできなくて…お疲れ様。』 ジュナ『…ホラ…自分をダメな方向に考えるのはよせって云っただろう』 ナタネ『でも…ロズレイドは…』 ジュナ『ソイツをキズ付けたのはオレのジュプトルだ。オマエのせいじゃない。だから、もうそういう考えはやめろ。』 ナタネ『…ジュナ…あたしってさ、ジムリーダーとして、情けないよね…。』 ジュナはその言葉にまた『そういう考えはやめろ』と云おうとした。 しかし、ふと見たらナタネはぐったりとしたロズレイドを視て泣いていた。 俯いていたので、最初はわからなかったが、ロズレイドの身に煌く雫が零れ落ちたのを視て、ジュナは悟った。 ジュナ『…いや。オマエは強かった。情けなくなんかない。…元気出せ。』 ナタネ『…ありがとうね、ジュナ…』 ジュナ『…悪かったな。』 ナタネ『何で謝るの?…ジュナは悪くないじゃない』 なおも自分を責めるナタネを視て、ジュナは黙り込んだ。 ナタネ『…ねえ、本当にあたしなんかと一緒に旅をするの?今だって、ジュナは勝ったじゃない。一緒に旅をしても、ジュナは強くなるどころか…弱くなると思う…。』 ジュナ『…。 オマエは、強くなる』 ナタネ『…』 ジュナはジュナなりのありったけの励ましの言葉をナタネにかけたが、 ナタネは立ち直らない。 ジュナ『別に…オマエと旅をして、自分が弱くなったって構わない。まあ、そんなことは無いと思うが…。』 ナタネ『…』 ジュナ『オレは、オマエと一緒に旅をしてみたい。…気に入ったよ、ナタネ。だから、一緒に旅をしよう』 ナタネ『ジュナ…ありがとう。優しいね、ジュナは…。』 ジュナはその言葉をきいてはっとした。 何故なら、ジュナは生まれてから今までずっと、『優しい』などと云われたことがなかったからだった。 今までずっと独りで生きてきた彼女に、『優しい』という言葉は、新鮮なものだった。 ジュナ『オレが…優しい…か…。』 ナタネ『うん。こんな優しい人は、あたし今まで一度も会ったことがないくらいね』 ジュナ『そうか…。』 ジュナはそっぽを向いた。 ナタネはそれを視て、ジュナの顔を覗き込んだ。 ナタネ『どうしたの?ジュナ…』 そして、それを視てナタネは唖然とした。 ナタネ『…! ジュナ…?』 ジュナ『…すまないな。…オレというものが…涙を見せるなんて…。』 ナタネ『…あたし、何かいけないこと云った…?』 ナタネは、ジュナを傷つけてしまったのかとおもい尋ねた。 しかし、ジュナは首を横に振った。 ジュナ『違う…逆だ…。』 ナタネ『えっ…逆って…?』 ジュナは目を瞑って、静かに語った。 ジュナ『オレは…”優しい”だなんて云われたことがなかったんだ…。生まれて一度も。』 ナタネ『そうなの…?みんな、ジュナの優しさに気づいていなかったんだね』 ジュナ『オレのことを”優しい”だなんて思ってくれるのは、オマエだけだ…。』 ナタネ『…そう…。』 ジュナはその後、黙り込んだ。 ナタネはそれを視るに、にっこり微笑んで語りかけた。 ナタネ『ねえ、ジュナ。あたしからお願いしていいかな。ジュナと一緒に、旅をしたい。』 ジュナ『…ああ…。』 ナタネ『…大丈夫?ジュナ…』 ジュナ『ああ…大丈夫だ…。そろそろ行こう…』 そして、ふたりは共に歩みだした。 続く。 次回【33 ニックネーム?何それ美味しいの?】 |
最強レックウザ | #13☆2008.02/03(日)23:05 |
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【33 ニックネーム?何それ美味しいの?】 ナタネ『あー…なんか喉渇いたかも…』 ジュナ『そこに自動販売機がある。ちょっと休憩しよう。』 ナタネ『ジュナ、何がいい?』 ジュナ『オレはいらない。』 ナタネ『えっ?いいの?…悪いね、あたしだけ飲んで』 ジュナ『別に、構わない。』 ナタネは『ミックスオレ』のボタンを押した。 ナタネ『ふー。やっぱりコレだよ!ちょっと高いけど…甘いの大好きだもん!』 ジュナ『甘いモノか…オレはあまり好まないな…。』 ナタネ『やっぱり?なんかジュナって甘いの苦手っぽいイメージある!』 ジュナ『そうか?』 ナタネ『うん!』 そうして2人で喋っているうちに、ジュナが唐突に云った。 ジュナ『おい、いきなりだが…オマエは、ポケモンにニックネームを付けたことはあるのか?』 ナタネ『いや、無いけど…っあ!』 ジュナ『どうした?』 ナタネ『まえに、ヒアマっていう名前のグレイシアと一緒に旅をしていたことがある!』 ジュナ『まえに…って、今は居ないのか?』 ナタネ『…うん。今は居ないね』 ナタネの表情が少し曇った。 ジュナ『その様子だと…何かよくないことがあったのか。まあいい、深くは問わない。』 ナタネ『で、ニックネームがどうしたの?』 ジュナ『いや…ホウエンでは今、ニックネームをつけるのが流行りらしくてな。』 ナタネ『へえ…ジュナは付けないの?』 ジュナ『ああ。そういうのはあまり好まないからな』 ナタネ『あたし、ニックネーム付けてみたいな!』 ナタネが不意に立ち上がる。 ナタネ『ねえ、ジュナ!一緒に考えてよ!』 ジュナ『オレが?』 ナタネ『うん!なんかジュナのネーミングセンス気になるなぁ〜…』 ナタネが不気味に笑いながら云う。 それをきいてジュナは、少し呆れ顔になった。 ジュナ『仕方ないな…』 ナタネ『ありがとう!じゃあ、まずはこのロズレイドだけに付けることにしようかな。』 ジュナ『そうだな。』 ナタネ『どんなのがいいだろう…ダメだ、いざとなるとぜんぜん考えつかないや』 ジュナ『…フラーケ、なんてのはどうだ』 ナタネ『フラーケ!いい響きだね!どういう由来?』 ジュナ『ロズレイドは確かブーケポケモンだろう。それにフラワーを足してフラーケだ』 ナタネ『すごい!なんだジュナ…あなた絶対ニックネーム付けたほうがいいと思うけど』 ジュナ『フン、云っただろう、オレはそういうのは好まないんだ。』 ナタネ『じゃあ、今度からこの子はフラーケね!』 ジュナ『…自分のポケモンのニックネームくらい自分で考えろよな…。』 ナタネ『あたしそういうの考えるの苦手なんだよね〜。』 ジュナ『”あたし、ニックネーム付けてみたいな!”とか云ったの何処のどいつだ!まさか、最初からオレに考えさせるつもりだったのか?』 ナタネ『当たり前じゃん!』 ジュナ『はぁ…。』 ジュナはため息をついた。 そして、ナタネのロズレイドは『フラーケ』と名づけられた。 ジュナ『今度からは、自分で考えろよな』 ナタネ『わかったよ…』 ジュナ『そろそろ出発するぞ。』 ナタネ『うん!』 そして2人は再び歩き出した。 ナタネ『そういや、ここら辺にポケモンセンターはないの?』 ジュナ『此処からだと遠いな。一度ミモネシティに戻らないと』 ナタネ『そっかぁ…じゃあジュナ、あなたは此処で待ってて!』 そう云い捨てて、ナタネはミモネシティへ向かって走り出した。 ジュナ『はぁ…なんか、アイツと居るといろいろ大変そうだな…まあ、いいか…。』 ジュナは再びため息をついた。もともと単独行動を好むジュナなだけに、 ナタネに振り回されやすく、呆れていた。 しかし、彼女自身もナタネのことを気に入っているので、共に旅をすることを今更断ることもできない。 一方、ナタネはミモネシティのポケモンセンターのパソコンをいじっていた。 ナタネ『よし、これでいっか…。』 ナタネ『…そうだ。アカリちゃん、元気かなぁ…通信してみよう』 ナタネはパソコンの通信機能を使って、アカリに電話をした。 アカリ『もしもーし。あれ?ナタネじゃん!元気?』 ナタネ『え…う、げ、元気だけど…』 アカリ『電話してくるなら普通に電話してくればいいのに…なんでパソコンから?』 ナタネ『いや、ちょっとポケモンを預けたついでにね。アカリちゃんどうしてるのかなぁと思って』 アカリ『わたしなら全然変わったことなんてないよ。ナタネは旅、どう?』 ナタネ『うん、順調だよ。今はバッチ4つ。』 アカリ『4つ!?遅いなぁ…!』 ナタネ『ごめん…色々あってさ…』 アカリ『まあいいや。あと、この際云っておくけど、あなたやっぱり、レアフ地方のバッチ集めだけして還っておいで』 ナタネ『えっ!?』 アカリ『それだけ。じゃあね。』 そして、不意に通話が途切れた。 …いつかと同じように。 ナタネ『ま た い き な り 切 ら れ た 。』 ナタネ『…まあいいや。早くしないと…ジュナが待ちくたびれてるかも。』 ナタネは急いでポケモンセンターを出た。 ナタネ『お待たせ!』 ジュナ『いつまで待たせる気だ!』 ナタネ『ご、ごめん…(やっぱりジュナってせっかちなんだ…)』 ジュナ『はやく行くぞ。ところで、何をしてきたんだ?』 ナタネ『うん、ちょっとロズレイド以外のポケモンを預けてきた』 ジュナ『…何でまたそんなことを?』 ナタネ『えへへ、ちょっとメンバーチェンジでもしようかなって。気分だよ。』 ジュナ『オマエな…(そんなお気楽な気持ちでよくジムリーダーやってこれたな…)』 ナタネ『あっ!あれは?』 ジュナ『あがめのおかだな。』 ナタネ『ああ、そうか!思い出した。』 しかし、ジュナの表情が途端に険しくなった。 ジュナ『何か…可笑しいぞ』 ナタネ『えっ?可笑しいって…何が?』 ジュナ『あの3つの光だ』 ナタネ『え?蒼、翠、黄の…綺麗だね』 ジュナ『あれは…まさか…』 ジュナはその3色の光を見てあることを思った。 ジュナ『…レアフの神々が…目醒めようとしている…。』 ナタネ『ええっ!?だってこの間、ヒオリちゃんが鎮めてくれたはず…ヌフアの野望だって阻止したはずなのに、どうして!?』 ジュナ『あそこに誰か居るぞ!行こう!』 ジュナはそう云うと、丘を駆け上っていった。 ナタネ『えっ、ちょ、ちょっと待ってよっ』 ナタネも遅れて丘を駆け上がる。 そして―…そこには…。 ナタネ『あなたは…!』 ジュナ『誰だ!オマエは!』 ナタネ『ヒオリちゃん…!!』 続く。 次回【34 ヒオリの本性】 |
最強レックウザ | #14☆2008.02/04(月)23:35 |
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【34 ヒオリの本性】 ナタネ『ヒオリちゃん…こんなところで、一体何を?』 ヒオリ『フフフッ…視ればわかるでしょう?』 ナタネ『ええっ…?』 ヒオリ『レキェング、グラシード、ヒョウガを…ふたたび呼び出しているのです。この、”めざめのたま”で』 そう云うと、ヒオリは首からぶら下げている珠を掲げた。 ナタネ『嘘でしょ?だってソレは、”あがめのたま”…この3体を鎮めるためのモノでしょ?』 ヒオリ『フフッ…フフフフッ…』 ヒオリ『…お馬鹿なナタネさん…。』 ナタネ『ヒオリちゃん!?どうしちゃったの!?しっかりしてよ!』 ヒオリ『何を仰っているのですか?これがわたしの本性ですよ』 ナタネ『何だって!?』 ヒオリ『わたしの目的は…ヌフアたちの野望…そう、この醜い世界を塗り替え、新しい世界を作ること』 ナタネ『ええっ!?』 ヒオリ『ヌフア、リリフ、ノルマ…。彼女たちはみな、わたしの下僕なのです。』 ナタネ『そんな!』 ヒオリ『そして、そのティンカーには…あなたたちが余計なことをやらかさないかどうか、追跡してもらっていたのです』 ナタネ『ということは…あたしたち、ずっとヒオリちゃんに見られてたの!?』 ヒオリ『ええ。』 ナタネに言葉にできない絶望が襲い掛かる。 そして、それを視ていたジュナが云う。 ジュナ『何のことか知らないが…コイツらを悪用するのはやめろ。何が起こるかわからない!』 ヒオリ『…そんなの、覚悟の上です』 ジュナ『何だと…?』 ヒオリは”めざめのたま”を空中にふたたび翳す。 ヒオリ『これより…終わりが始まるのです…』 ナタネ『ヒオリちゃんッ!』 ヒオリ『というより…もう始まっていると云ったほうがよろしいでしょうかね。』 ジュナ『何ッ!?』 ヒオリ『今各地で、人やポケモンが突然倒れたりしているでしょう?それは、この者たちが世界の力を汲み上げているからなのですよ』 ナタネ『世界の…力を?…』 ナタネ『…!? 突然倒れる…人がッ!?』 ジュナ『どうした、ナタネ!』 ナタネの脳裏にある人物がよぎる。 ナタネ『グリン…!ソヨギの弟!彼は…急に倒れたと聞いたけれど、まさか…』 ヒオリ『そう。そのまさかですよ。』 ナタネ『そんな!…やめてよ、ヒオリちゃん!』 それを聞くに、ヒオリは笑って云った。 ヒオリ『フッ、今更やめるとでも思っているのですか?やっとわたしの夢がかなうというのに』 ナタネ『…ッ…』 ヒオリ『さあ、お遊びも此処まで。そろそろ本当に始めましょう。』 ヒオリの言葉に応えるように、レキェング、グラシード、ヒョウガの3匹は3つの光を交える。 ナタネ『…ヒオリちゃん、あなたの今までのあたしへの言葉は全部嘘だったって云うの?』 ヒオリ『当たり前です。最初から悪人面してあなたたちに阻止されたりなんてしたら、たまったモンじゃないですからね』 ナタネ『あたし、ずっと騙されてたんだ…ヒオリちゃんに…。』 ヒオリ『騙されるほうが悪いのですよ、ナタネさん…。』 そのやりとりを視ていたジュナが、我慢できなくなり入り込む。 ジュナ『オマエな、冷静に考えろ!こんなことしても、最後にはみんな消えてしまうんだ。無意味なことはやめろ!』 ヒオリ『何を仰っているのでしょうか。わたしは世界を塗り替えても消えやしません。…わたしだけは。』 ジュナ『何だと…?』 ヒオリは、ポケットから小さな木の実を出してみせた。 ヒオリ『これがある限り…わたしに不可能などないのです』 ナタネ『そ…それは、ネガイのみ!?何でヒオリちゃんが!』 ヒオリ『簡単なコトですよ。フウエンさんに、ヒアマさんからこの実の在り処を教えてもらったのです。』 ナタネ『フウエン…?彼もまさか、ヒオリちゃんの…?』 ヒオリ『そうです。フウエンもまた、わたしの下僕です』 ナタネ『じゃ…じゃあ、ヒアマは…』 ヒオリ『ヒアマさんを葬るようにフウエンに云ったのも、わたしです』 ナタネ『そ…そんな…』 ナタネはもうどうしていいかわからなくなった。 ナタネ『みんな、ヒオリちゃんが仕向けたことだったんだ…』 ヒオリ『フフッ…表の顔だけ見ていてはいけませんよ。』 ナタネ『あたし…もうどうすればいいか…』 ヒオリ『あら、何もしなくても、あなたは世界が塗り替えられると共に消滅しますよ』 ナタネ『…。』 ナタネは、精神的なショックにより、そして力を汲み上げられたことにより、その場に倒れて動かなくなった。 ジュナ『ナタネ!だ、大丈夫か!?おい、しっかりしろ、ナタネ!』 ヒオリ『あとは…世界の上書きを待つだけ。あなたも…ナタネさんと一緒に、消滅しますよ。』 ジュナ『くッ…』 ヒオリ『つまり…わたし以外のすべては、もう自分が消滅する刻を…ただ待ち続けるしかできないのです!』 ヒオリ『…どうですか?何もできずに、世界が消滅するのを待ち続ける屈辱のお味は…フフッ』 ジュナ『キッ…キサマッ!!』 ヒオリ『あらあら、怒ったところで何も変わりはありません。この者たちを操ることができるのは、わたしだけですからね』 しかしジュナは、あきらめなかった。ジュナはヒオリの方へ走り、ヒオリが首からぶら下げている珠を奪い取った。 ヒオリ『な…何をするのですか!』 ジュナ『決まってるだろう!コイツらを鎮めるんだ!もうこれ以上…キサマの好きにされてたまるものか…!』 ヒオリ『またそんな無駄な抵抗を…めざめのたまを取ったところで、この者たちを鎮めることなんてできませんよ』 ジュナ『何だと!?』 ヒオリ『この者たちを鎮めるには、”あがめのたま”が必要なのです…』 ジュナ『くッ…そんな…』 ヒオリ『残念でしたね…。』 ジュナは、ナタネが感じたものと同じ無力感を味わった。 ジュナ『どうすれば…どうすればコイツを止めることができるんだ!』 ヒオリ『フフフッ…もうわたしを止めることは、誰にもできま…』 ヒオリがそう云いかけたところで、ジュナの持っていためざめのたまが眩い光とともに砕け散った。 ジュナ『な、何だ!?』 ヒオリ『そんな!めざめのたまが…!!』 続く。 次回【35 あがめのたまを探し出せ!】 |
最強レックウザ | #15☆2008.02/14(木)20:29 |
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>はじめに―…随筆の仕方の変更について。 とある方のアドバイスに従い、台詞の前に名前を付けるのをやめました。 急ですが、ご理解よろしくお願いします。 【35 あがめのたまを探し出せ!】 『…フン!めざめのたまは砕け散った…キサマはもう、コイツらを操ることは出来なくなったな!』 『それはどうでしょう?めざめのたまが無くなっても、この者たちはもうすでに世界の塗り替えを始めています。 今頃止めようとしても…遅いですよ、ジュナさん』 ヒオリが微笑を浮かべつつ、ジュナに云う。 『…オレの名前を…知っているのか?』 『勿論…ティンカーはナタネさんのスパイをしていたのですから、当然貴女のことも知っていますよ』 『そうか。』 ジュナは不意に後ろを向いた。 ヒオリがそれを視て危険を感じて云う。 『…あがめのたまを探しにいくのですか? やめなさい、そんなことを今更しても―…』 『うるさいな!キサマにそんなこと云われる筋合いはない! オレは…この世界を救う!絶対になッ!!』 『フッ…出来るならやってご覧なさい、あがめのたまの在り処も判らないような貴女に、そのようなことが出来ると?』 ヒオリはそう吐き捨てると、小さく舌打ちをした。 そんなヒオリを尻目に、ジュナは立ち去る。 そしてヒオリに聞こえない声で呟いた。 『…待ってろ、ナタネ…オマエは、オレが助けるから…。』 ジュナはあがめのおかを後にする。 そして、不意に空を見上げ、やっと異変に気づいた。 『…世界が、薄れていっている…。つまり、ヒオリの云うとおり、もう手遅れなのかもしれない。 でも…やるんだ。オレはそう心に誓ったのだから。』 再度歩みだそうとしたジュナを、誰かが呼び止める。 『そこの君ッ!!』 『誰だ!?』 『はぁ、はぁ…そ、それより!君、ナタネ見なかった!?』 『ナタネ…!? …ナタネは…』 ナタネの居場所を問われ、応えに戸惑うジュナ。 『…知らないの?』 『知っている。…だが…アイツは…』 『ま…まさか…ナタネも、グリンと同じように…』 その少女の声に焦りの色が混じる。 『まさか…世界に蝕まれて…倒れちゃったんじゃ…』 『!? オ、オマエ…知っているのか!今の状況を…』 『ナタネ…! ねえ、教えて!ナタネの居る場所は、何処!?』 『えっ…あ、あがめのおかだ!…ただ、気をつけろ!あそこには―…』 『ありがとう!…待ってて、ナタネ!!』 ジュナの忠告など聞かずに、その少女は走り去っていった。 『アイツは…、もしかして… レアフ地方、8人目のジムリーダー…?』 ジュナは見覚えのある少女がレアフ地方の8人目のジムリーダーに似ていると感じ疑問を覚えた。 しかし今は、そんなことを考えている暇はない。 『急がないと…世界が、塗り替えられてしまう…。』 ジュナはそう云って走り出そうとするが、やっと自分の行動に疑問を感じた。 『探すって云ったって、何処を探せばいいのか…何か手がかりがないと探せるものも探せない…。』 ジュナが途方にくれていたその時だった。 『…しかし…あがめのたまならきいたことがあるが、めざめのたまなんて、きいたこともないな… ん?…もしかして!』 『…いや…違うかもしれない… …でも、今はその可能性にかけてみないと…!』 ジュナは不意に振り返って、元来た道を走り出した。 ジュナの中にある考えが生まれたのだ。 ”あがめのたま”…神々を鎮めるための宝石。 それはこの地方に来る前に、本などを読みこの地方のことを詳しく調べたジュナにとっては 聞き飽きるほどの名前であった。 しかし、”めざめのたま”という対となる宝石の名前など、ジュナは知らなかった。 今まで数え切れぬほど読んだ本の中で、そのような名前は一切書かれていなかったのだ。 ―だとすると、”めざめのたま”は…存在しない? …存在しないのであれば、彼女はどのようにして神々を覚醒させたのか… 呼び起こし、鎮める…これはごく自然なこと… ”あがめのたま”により、神々を鎮めることが出来るのなら…またそれは―… 次回【36 ヒオリ覚醒、そして世界は…】 |
最強レックウザ | #16☆2008.02/16(土)14:36 |
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【36 ヒオリ覚醒、そして世界は…】 『おい!そこに居るんだろう?隠れてないで姿を現せ!!』 ジュナが再びあがめのおかで、ヒオリを呼ぶ。 しかし、ヒオリの返事は無い。 『返事をしろ!おいッ!!』 再び呼ぶものの、返事が全く返ってこない。 ジュナは丘の頂上へと登る。 『…なんだ、コレは…?』 そこにはヒオリが書いたと思われる置手紙が残してあった。 ―『フフッ…何処まで騙されれば気がすむのでしょうね? 確かにあなたの予想通り。めざめのたまなんて存在しません。 でも…あがめのたまも砕け散ったのです。というより、わたしが、もう役目を果たしたので握りつぶしただけですけどね。 あなたもよく頑張ってきましたけど、もう遅いですよ。 前をご覧なさい、神々が世界を塗り替えようとしている。 まあ、やることがないのならただそこで世界の終わりを眺めているというのはどうでしょうね?フフフッ。 では、さようなら、ジュナさん。 ヒオリ』 『く…くそッ!逃げられたか…!』 ジュナが自身の行動を悔やんでいると、後ろからさっきの少女の声が聞こえてきた。 『ナタネッ!しっかりして!ナタネッ!!』 『おい…オマエは、さっきの…』 『そうよ…それより、ナタネが!』 『…もしかしてオマエは…ソヨギか?』 『!? あたしのこと知ってるの!?』 『ああ…オレはジュナだ。ナタネと一緒に旅をしている』 『そ、そうなの…ってことは、ジュナもナタネを…助けたいの?』 ジュナは力強く頷いた。 『ああ。そう心に誓った。しかし…この状況を、一体どうすれば…』 ジュナが困った表情をしていると、後ろからまた新しい声が聞こえた。 『話は聞かせてもらったよ!』 『!…誰だ!』 『ヌ…ヌフア!?』 『うん。わたしもヒオリの下僕としてこき使われてた身だし。 ナタネはわたしを打ち負かすほどの実力を持った人間だし…。 ともかく、わたしも協力する!』 『ヒオリの下僕だったのか…ということは、何かアイツの逃げた場所とか知っているのか?』 『ちょっと待って、ジュナ!』 『何だ?』 『ヌフア…本当に信じていいの?また騙したりしないでしょうね?』 『そんなことないよ!わたしはもう正気に戻ったよ。だから信じてよ!一緒にヒオリを仕留めよう!』 『…そう…。じゃあ、ヒオリの逃げた先を教えて』 『いや…実を言うと、わたし自身もヒオリにこき使われてただけだから、あまりヒオリのこととか知らないの…ごめんね』 『そうか…残念だな…』 『でも、仲間は多いほうがいいよね!』 『そうだな。』 こうして、ジュナ、ソヨギ、ヌフアの3人はヒオリの逃げた先を探し出そうと立ち上がったそのとき…。 『フフフ…あははっ!!まだ気づかないのですね?みんなみんな…』 『馬鹿ばっかね!!フフフッ!!』 『ヒオリッ!?そこに居るのか!!』 『あら、さっきからずーっと此処に居ますけど…これであなたが騙されたのは3度目ですね。ジュナさん!』 『くッ…許さない…キサマだけはッ!!』 ジュナが彼女にしては珍しく、感情をむき出しにさせる。 『あらあら、怒ったところで何も変わりはないと言ったはずでしょう。それに、あがめのたまももう無いのですよ?この世界に生き残れるのはただひとり、わたしだけ―…』 『…! おい、ヒオリ!』 『何でしょうか?また怒るのですか?本当にどうしようもない方ですね』 『隠れてないで姿を現せ!』 『…しょうがないですね…。』 ヒオリが云うと、ジュナたちの前に光の粒が現れた。 それは無数にも集まって、竜のような形を作っている。 『!?』 『ヒ、ヒオリ!?』 『そんな…!』 思いがけない姿を見た3人が驚きの声を上げる。 『フフッ…これが、わたしの真の姿…』 『オマエ…何者だ!』 『あら、嫌ですね…なんかそれってまるで、わたしが人間じゃないとでも言いたいのですか?』 『何処からどう見ても人間には見えないわ』 『単にティンカーがわたしの身体を乗っ取っただけですよ』 『く…合体技なんて厄介なことを…』 『今のわたしはもはや人間じゃないですけどね。だから、こうしましょう。 わたしを倒すことができたら…このネガイのみを使い、世界の塗り替えをやめてあげましょう。 その代わり、わたしを倒すことができなければ…全てはわたしの思うままです。 さあ…どうしますか?』 『…なら…やってやるッ!』 ジュナが少し迷ってからそう云う。が、それをソヨギが止めようとする。 『ちょっと待ってよジュナ!!相手はヒオリよ!?きっとあたしたちなんか、直ぐに…』 『あきらめるんじゃない!!そんなことじゃ、アイツは…ナタネはどうなるんだ!』 『う…で、でも…』 『少しの希望に懸けるんだ!ソヨギ!ヌフア!!』 『わ、わかった…ダメかもしれないけど…やってみるわ』 『わかった!全力でヒオリを倒すよ!』 『よし!もう、負けたときのことは考えるな!やるぞ!』 3人がヒオリを倒すと誓ったのを見て、ヒオリは嘲笑した。 『フッ…無謀な…。』 次回【37 世界の運命に懸けて…】 |
最強レックウザ | #17☆2008.02/16(土)23:15 |
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【37 世界の運命に懸けて…】 『絶対にアイツを倒す!やるぞ、ジュプトル!』 『ジュルッ!』 ジュナの言葉にジュプトルが隣で頷く。 『あたしも…ナタネのために、ヒオリを倒さなきゃ!出てらっしゃい、チェリム!』 『チェリィ!』 ソヨギとチェリムも意気投合する。 『わたしも…今までこき使われて好きにさせられてきた恨み、此処で晴らす!行け!マニューラ!!』 『マニュゥ!』 『フフッ、みんな揃ったみたいですね。それでは…始めましょう!』 『ジュプトル!リーフブレードだ!』 ジュプトルは素早くヒオリの胴体を狙う。 が、しかし…。 『甘いですね!その程度のスピードじゃ…』 ヒオリは光の竜の尾の部分をたたきつけて、リーフブレード諸共ジュプトルをはじき返した。 『ジュプトル!』 『ジュルゥ…』 それを視てソヨギが前に出た。 『チェリム!にほんばれ!』 『チェリィッ!』 チェリムによって強い陽射しが差す。 『今よ!ソーラービームッ!』 『チェリイイィィッッ!!』 チェリムが陽射しを使ってソーラービームを撃つも、 それも簡単に防御されてしまった。 『フフッ…本気を出しなさい…』 『オレは本気だ!』 『あたしもよ!』 『わたしも!』 『じゃあ…あなた達、全員が…』 光の竜の身体が煌き出す。 『最初から、この程度の実力だったってことねッ!!』 光の竜はさきほどのチェリムのソーラービームとは比べ物にならないくらいの光線を発射した。 『わっ!みんな、避けろ!!』 『避けられないですよ』 避けようと動いたジュナが辺りを見回して息を呑んだ。 『…ッ!!』 『こ…これは…何…!?』 『チェックメイト…フフフッ』 見渡せば、3人の周りには無数の光の刃が向けられていた。 それは、逃げられるような場所もないくらいだった。 『…そうか…さっきの光線はおとりで、そのスキにこれを用意するための…。』 『そのとおり。流石ジュナさん、察しがいいですね。でも…それが判ったところで、何の解決にもなってませんがね…フフッ』 『くッ…』 『ジュナ…』 『さぁ、さっさと倒してあげたほうが、あなたたちも楽になれますね。じゃあ…』 『そうはさせない…!』 『じゃあ、これをかわせるとでも?』 ヒオリは云うと、周りの光の刃をジュナたちに向けて放った。 『ライトニングブレードッ!!』 『きゃあっ!!』 刃が、ジュナたちとそのポケモンたちを切り裂く。 息も出来ないようなその状況の中で、ジュナが声を絞り出して言った。 『み…みんな、逃げろ…早く…ッ…』 その言葉に、ソヨギもヌフアも首を横に振った。 『ダ…ダメよ…!貴女だけを…残して逃げるなんて…』 『そうだよ!…そんなこと…わたしたちには…』 『いいから…ッ!オレのことは…気にするなッ!さっさとしないと…オマエたちも、此処でくたばるだけだ…』 『ジュナ… …やっぱり、そんなこと…出来ない!』 『!? …はぁっ、はぁ…』 ジュナは”さっさと逃げろ”とでも怒鳴りたかったのだろうが、刃に切り刻まれていることにより体力を消耗しており、声が出ない。 そしてジュナは、ソヨギとヌフアを力任せに突き飛ばした。 『きゃっ!』 『ジュナ!…馬鹿っ!!何やってんのよ!!』 『…云った…ろ!オレのこと…は…はぁ…はぁ…』 『”気にするな”だって!?そんなこと出来るわけないわ!チェリム、ソーラービームで刃を吹き飛ばして!』 『チェリッ!』 チェリムがソーラービームを繰り出そうとするも…丁度その瞬間、太陽が雲に隠れてしまった。 『ああっ、そんな!』 『マニューラ!つじぎりで刃を吹き飛ばせ!』 『マニュ!』 マニューラも光の刃を吹き飛ばそうと試みるが、光の刃はちっとも吹き飛ばすことができなかった。 刃の嵐の中で、ジュナとジュプトルは傷だらけになりながらも耐えていた。 『ジュナーッ!早く、そこから出るのよ!』 『…いいでしょう。もうこれ以上痛めつけるのはやめてさしあげましょう。』 とたんに、刃が消え去った。 『ジュナ!ジュプトル!大丈夫…!?』 『オ…オレは大丈夫だ…で…でも…』 ジュナのとなりで、ジュナ以上に傷だらけになったジュプトルが倒れこんでいた。 『ジュプトル!…大丈夫?』 『ジュル…』 ジュプトルはソヨギの声に力なく応えるのみだった。 『…どうも大丈夫じゃなさそうね…此処で休んでなさい』 『ジュルッ…!?…ジュルッ!!』 ジュプトルはその言葉に否定を示した。ジュナを放って、自分だけ休むことなどできない、という想いだった。 『でも…』 『ジュルゥッ!!』 ジュプトルが不意に起き上がると、身体から緑色の光が発し始めた。 『あれは…しんりょく!?』 『…よし…一か八か…懸けてみよう…!ジュプトル、リーフブレード…!』 『ジュルウゥッ!!』 『ちっ…余計なことをしてしまったみたいですね…あのまま攻撃をやめずにいたらよかったものを…』 そして、光の竜をジュプトルがリーフブレードで切り刻む。 『ぐッ…ぐあァッ!!な…何て力…!予想外です…!!』 ヒオリの表情に少し焦りの色が混じる。 『此処は…早くあの2人を葬らないとッ!ライトニングブレード!』 ふたたびヒオリは光の刃を撃ち出した。 『ジュプトル…!リーフブレードで…迎え撃てッ!』 光の刃とリーフブレードが撃ち合う。 しかし、本気を出したヒオリの光の刃はしんりょくによって引き出された力を打ち破るほどの力を持っていた。 光の刃がふたたびジュプトルを切り刻む。 『ああっ…!ジュプトル!!』 ジュプトルは傷だらけになってその場に倒れこんでしまった。 『うう…すまないな…ジュプトル…オレのせいで、オマエまで…』 『大丈夫…あとは任せて!チェリム、はかいこうせん!』 『チェリイィッ!』 チェリムが最終兵器としてはかいこうせんを撃ち出す。 しかしそれは、眩い光によって阻まれてしまった。 『甘いですね…少しばかりわたしにダメージを与えたくらいで…』 『うう…そんな…』 『まずは、あなたたちの可愛い下僕から葬ってあげましょう!シャイニングシード!』 小さな光の粒がチェリムとマニューラに襲い掛かる。 『避けて!チェリム!』 『マニューラ、つじぎりで全部撃ち落とせ!』 しかし2人の指示も虚しく、光の粒子は2匹に命中してしまった。 『ああっ!!』 『お願い、耐えて!!』 『…もう手加減は無しです…』 『チェリム!』 『マニューラ!』 2匹の抵抗は無と化し、真の本気を出したヒオリの光の粒子により吹き飛ばされ、その場に倒れこむ。 『そ…そんな…』 『マニューラが…』 『これで…あなたたちに、もう勝ち目はありません…』 『くッ…』 『あとは、この場で…あなたたちを葬るだけ』 と、ヒオリが最後の攻撃を構えるが、ふと上空を見上げる。 『あら…もう直ぐ塗り替えが終わりますね…あなたたちを、わざわざ此処で葬ることもないでしょう』 『そんな…』 『そして…わたしだけは…このネガイのみで…』 ヒオリはそう云いながらポケットに手を入れるが…。 『な…無いッ!?何で…!?』 『なんだって!?』 ヒオリが焦ってうろたえていると、木陰から声が聞こえてきた。 『フッ…』 『ジュ…ジュナ!』 ジュナはゆっくりと手に握られていた木の実を見せた。 『そ…それはッ!あなた…いつのまに…!!』 『今更気づいたのか…フン、コレは…オレがオマエから、あがめのたまを奪い取ったとき…同時に奪い取った…』 『そんなッ!!か、返してッ!!それが無いと、わたしは…!』 『悪いが…コレは、オレが使う。オマエの目論みを阻止するためにな』 ヒオリに怒りが立ち込める。そして、光の竜の尾をジュナに振りかざす。 『ジュナ!危ないッ!』 『…う…動けないッ…』 ジュナは避けようとするが、ダメージが大きすぎてその場から動くことができなかった。 光の竜の尾は、容赦なくジュナを叩き潰す。 『はぁっ…オ…オレが葬られても…コレは…絶対に渡さない…』 『ジュナ!ダメッ!』 『オレの命に…代えてでも…この世界を、救ってやる…』 『くッ…しぶとい方ですねッ!!なら、こうだッ!』 ヒオリはすっかりムキになって、ジュナに向かって光の粒子を撃ち出す。 『はぁ…はぁ…ソヨギ…ヌフア…、オレが…此処で…力尽きても…オマエたちが…この世界を救ってくれると…信じてるから…。だから…頼んだ…ぞ…。』 『ジュナァッ!!』 ソヨギがジュナの名を叫ぶ。が、ジュナは避けたくても避けることができない状況にある。 実際ソヨギたちも、ただジュナが攻撃を受けるのを見届けることしかできなかった。 『…わるいな…ナタネ…一緒に…旅するって…言った…の…に…。 少しの間だったが…オマエと旅できて…オレは幸せだった…』 ジュナが力尽きようとしたその瞬間、ひとつの影が割って入った。 『ソ…ソヨギ…!』 『ソヨギッ!!』 『ジュナ…!貴女をこのまま放っておくわけにはいかない…』 『馬鹿…ッ…そのまま見てればいいモノを…』 『くッ…』 次回【38 ヒオリの最期】 |
最強レックウザ | #18★2008.02/18(月)00:20 |
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【38 ヒオリの最期】 『今のうちに!さっさと逃げなさい…ジュナッ!』 ソヨギがジュナを庇い、光の粒子を受ける。 『よ…余計なことを…』 『早くッ!ジュナッ!!』 『…ッ…』 ジュナは暫く黙り込むと、やがて声を張り上げて云った。 『もう…これ以上、犠牲を出されるのが我慢ならない…!』 『ジュナ…!』 『犠牲はオレで最期にしてくれ…もう、コイツらには…手を出すな…!』 『ば…馬鹿ッ!!貴女は…どうして、自分よりも、他人のことを気遣うことができるの?』 『…わからない…けど…』 『…?』 『ナタネが…アイツが、居るからかもしれない…。』 『ナタネが…そう…、ジュナ、貴女には…ナタネが必要なのね…』 ソヨギはそう云い、力尽きてしまった。 『ソ…ソヨギ!!…そうか、コイツも…力を汲み上げられて…』 『ソヨギ… ―…ッ!!』 遠くで見ていたヌフアまでもが、ついに倒れてしまう。 『さあ…あとは、貴女だけ…貴女を此処で葬れば、あとはわたしの思うままです』 『…此処で…くたばって、たまるモノかッ…!!』 『根性だけは認めますけど…でも、もう、コレで終わり―…。』 光の竜が煌き始めた。 『くッ…ダメだ…動けない…。もはや…此処まで…か…。』 『さようなら、ジュナさん―…』 『ッ―…!』 ジュナは自身に迫りくる光線に対し、目を瞑って歯を食いしばるくらいしか出来なかった。 『(ダメ…やられ…る…、意識が…朦朧と…)』 自身の終わりを覚悟したそのときだった。 『ジュールッ!!』 キンッ! 『…!? 攻撃が…来ない!?』 ジュナが目を開けると、そこにはリーフブレードを使い光線を食い止めるジュプトルの姿があった。 『ジュプトル…!オマエ…オレを助けようと… 戦闘不能になったのに、無理して…!』 『ジュ…ジュル…』 しかしジュプトルの体力も無に等しい。いつこの護りが破られ、ジュナがやられるかも判らない状況だった。 『どうにかして…ジュプトルがやられる前に、アイツをどうにかしなければ…』 ジュナは光の竜を見渡した。そして、ある1点に気づいた。 『! …そうだ!…あそこを狙って…』 ジュナは傍に転がっていた石ころをひとつ、光の竜の首の部分に投げつけた。 『わッ…! …ちっ…まさか気づかれるとは…』 その瞬間、光の竜の形が崩れ、ヒオリとティンカーが現れた。 『あらら…この姿に戻った以上、もうどうしようもないですね。 正直、また合体できる力も残っていませんし…。それにしても あの僅かな隙間を見つけるとは…。』 『コレで…もうオレを葬ることはできない!』 『さぁ?それはどうでしょうね。だってこのティンカーがまだ…』 ヒオリが云った瞬間に、ティンカーは光を失い、消滅した。 『…あがめのたまを砕け散らしたのは間違いでしたね…』 『フン…どうだ?それでもまだ、オレを葬ることができると?』 『…まあいいです。貴女を葬れなくても、貴女からそのネガイのみを奪い返せばすむ話です』 『そうはさせない…』 『…はぁ…なら仕方が無いですね…。』 ヒオリはそう云い、手を突き出した。そして、指先から光の蔓のようなものが伸びてきて、ジュナを絡め取る。 『うぐッ…ま…まだそんな力が…。』 『ティンカーがいなくなっても、力はまだ少し残っていますから…。』 ヒオリが力を強めると、蔓はきつくジュナを締め付ける。 『…く…苦しい…ッ』 『さぁ、さっさとネガイのみを渡しなさい。そうすれば、苦しい思いをしなくて済みますよ』 『し…死んでも…嫌だ…。』 『…そうですか…なら…お望み通り…』 ヒオリはさらに力を強める。 『貴女を、葬って差し上げましょう。全ては、わたしの夢のためです』 『ぐッ…はぁ…はぁ…』 『抵抗しても無駄ですよ…すればするほど、蔓の締め付けが強くなるだけです』 そう云って、ヒオリは容赦なく力を強くしていく。 『(もう…無理だ…)』 『さぁ、早く…自分の命が惜しいのなら、ネガイのみを渡しなさい』 ヒオリは云うが、それでもなおジュナは首を横に振る。 『本当に…ゴキブリのようなしぶとさですね。でも、次で終わりです』 ヒオリがこれ以上にないほど力を強くする。 蔓は、ジュナが潰れてしまいそうな勢いで締め付ける。 『(うぐッ…目の前が…真っ白に…)』 ジュナが今にも力尽きそうになったその時、ジュナを締め付けていた光の蔓が一気に消え去ってしまった。 『な…ッ!!』 『はぁ…はぁ…』 『くッ!!』 ヒオリが再度手を伸ばし、光の蔓を出そうとするが、光は粒子となって弾け飛ぶだけだった。 『…力が…無くなってしまったようですね。…もう少しだったのに…』 『オマエの…夢を、叶えさせてやれなくて…悪いが…、コレは…オレが…。』 ジュナがネガイのみを食べようとする。ヒオリは咄嗟に走り出し、ジュナからネガイのみを奪い取る。 『!! そ…そんな…』 『甘いのです…わたしを打ち負かそうなんて…』 ヒオリが云ったその瞬間、空間全体が光に包まれ、薄らと消え去っていく。 『ま…まずい…このままじゃ…』 『フフッ…これでお別れです。さようなら、ジュナさん』 『くそッ…これだけは絶対に…避けたかったのに…』 しかし、ヒオリはわざとだろうか、ネガイのみを落として光と共に消え去ってしまった。 『ア、アイツ…まさか…』 ジュナは、ヒオリがジュナ達のために、自分の夢を諦めて、ネガイのみを渡したのだと悟った。 そして、ジュナはネガイのみを拾い上げようとするが、半透明になり始めた自分の手を見て動きを一瞬止めた。 『…早くしないと…ナタネたちが…。』 ジュナは再度、ネガイのみを拾い上げ、それを食べた。 『…悪いな…ヒオリ…。でも、世界を護るためだ…許せッ!』 その瞬間、空間が白い光に包まれた―…。 次回【39 再会】 |
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