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アビシニアン | #1★2004.01/06(火)21:31 |
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第39話 捕らわれ 「…サファイア?死んで…ないよねぇ?」 オパールの問いに答えたのは、本人ではなく… 「ああ、この装置には生命維持装置がついてるから…死ぬってコトはありませんよ〜。」 「あ、下っ端のハニーエンジェル。」 ラズベリルがそう言うと、彼女は首を横に振った。 「まさか〜。私は彼女の身代わりになって、あの下っ端のピクシーのフリしてるだけですよ〜?あ、ちなみに〜、私はあなた達のお仲間で、ムーンって言います〜。よろしく〜。」 どことなーく某獣医さん主人公のマンガの女性を思わせる口調で、ピクシーは語った。 「ムーン、何油売ってるんだぁ?」 「あ、ホタル君〜。見ての通り、お仲間と対面してたんだけど、何か〜?」 なんか生意気そうなタマザラシ・ホタルに、ムーンが説明する。 「へぇ〜、じゃあアンタらもジュエルモンスターご一行ってワケか。」 コハクが問うたが返事はなく、代わりにリーダー格と見られるハクリューが、エネコロロとバネブーを従えて登場した。そのバネブーというのが… 「あ…」×いっぱい 「あれ〜、どうかしたんですかぁ?コランダム君に、そこの皆さん〜?」 ムーンが首を傾げる。 「あー、アズサ諸島で会ったご一行だよ〜ん。…ついに、向こうの計画が本格始動するみたいね〜ん。」 「ほーん、アンタらもかぁ。オレはクリス♪。で、こっちのはシェナっつうんっでぇ。まっ、よろぴく。」 ハクリューが、自分とエネコロロを紹介する。 「…そうだ、アージュとアッシュは?」 ラピスラズリは、ふと気づいた。 |
アビシニアン | #2☆2004.01/08(木)16:13 |
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第40話 アージュとアッシュ その頃。 「ぶわくしっ!」 アジトの地下通路に、アッシュの強烈なクシャミの音が響いた。 「はっは〜ん。どっかでカワイコちゃんがオレの噂を…」 「くそたーけがっ!誰が御前の噂なんかするんだ!?オマエ、ちっとは自分のナンパ成功率を把握しときゃあ!(何故か名古屋弁)」 当然、アッシュはハリセンで殴られた。 「どっからハリセン持ってきたんだよ…。」 「それは置いといて。みんなを追ってここまで来たのはいいけど、どこにいるんだろうか?心配だな…。」 地下通路は長いこと使われていないらしく、ホコリだらけだった。綿ボコリを踏みつけながら、2匹は進んで行く。と、アージュのすぐ右の壁に、扉がある。 「何だ?ここ。」 アッシュが扉を押してみる。ギィ…と軋んだ音をたて、扉が開く。 「何なんだ…この部屋は…」 無数の檻が並んでいる。中にいるポケモン達は、皆眠っているようにも見えた。しかし、目的の仲間はいない… 「出るか、アニキ…。」 アッシュが扉をくぐろうとすると、途端にランプが灯り、警戒音が響く。さらに、鉄格子が降ってきて扉を塞ぐ!が… 「なーんだ、これ、人間用の格子だ。僕等なら通り抜けられる。」 さらにさらに、進んで行く。だいぶ進んだ所で、階段を見つけることが出来たが、油断はできない。 「上ってみるかぁ♪どーせ、他に行けるようなトコはねぇし。」 ゴン!鈍い音と共に、アッシュが踊り場に降ってきた。 「痛ってぇ!この上、なんかあるぜ…」 「…これ、ずらせるみたいだ。開けてみるよ?」 |
アビシニアン | #3☆2004.01/21(水)17:39 |
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第41話 対面 「ったく、なんでまたあんな隠し通路があんだよ〜…。」 頭にものすんごいコブを作ったアッシュがぶつぶつ言う。 「まぁまぁ。おさえておさえて。そんな事より…もう廊下も終わりみたいだ。」 突き当たりには頑丈な一枚の扉。多分、ちょっと押した位では空かないであろう。 「な〜んか、大事なモノがあったりして〜♪どーやったら開くのかねぇ?」 ドアノブの横には、何かキーボードの付いたパネルのようなものがある。 『パスワードを 入力してチョンマゲ』 パネルにこんな文章が浮かび上がる。 「ぱすわーど…?この数字を入れればいいのか?じゃあとりあえず…。」 そう言ってアッシュが押したのは…『789*』 「どんな理屈だよ…」 「仕方ねーだろ!ここまでしか届かねぇんだから!」 『残念、不正解! またの挑戦を お待ちしておりま〜すv』 パネルがそう告げ、また入力画面に戻った。 「んっじゃ…これでどーだ!」 『7788』。 『当ったり〜 ドンドン!通ってよろしー。』 「すごいマグレ…」 「な〜に、オレッチの野生のカンだよ〜ん!」 扉が開く。 「あ、おバカとそのツッコミ。」 「アンタの言えるコトじゃなかっ!」 そこには、いつもの2匹の漫才が待っていた。 「…これ、一体……?」 |
アビシニアン | #4★2004.01/22(木)17:47 |
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第42話 迫る闘い 「ああ、これですね〜…制御装置のスイッチを切るなり、装置そのものを破壊すればいいらしいいんですけど〜、スイッチにもパスワードが必要って、エンジェルさんが言ってました〜。」 「え、エンジェル…?ああ、あのピクシーね。」 アッシュが一瞬戸惑ったが、顔を上げて聞いた。 「ところで、パスワードって…」 質問は、聞き覚えのある超えに遮られた。 「え、エンジェル〜!!!!」 もはや説明するまでもない。漫才コンビが駆け込んできたっつぅことである。 「…居るぢゃん。ココに。」 ボケ下っ端が指摘する。 「いんや。これは俺のハニーじゃないっ!毛づや!シッポの巻き具合!目つき!翼の美しさ!どーれーも、ハニーエンジェルよりも劣っているっ!!」 「…悪かったですね〜、劣ってて。」 ムーンがムッとした顔でぶつぶつ言う。その7メートル32センチ6ミリ先で、ツッコミが携帯電話のボタンを叩く。 「あ、もしもし幹部?残る6匹がひょっこり出てきてますよ〜。今いっちゃん奥の部屋ッス。はいはい…んじゃ。」 「幹部って、あのおばはんか?」 「さぁ…。」 ラズベリルに聞かれたが、ラピスラズリでは分かるはずはない。 「決戦が…近づいてきていますね…。」 シェナが静かに流れていくような声で呟いた。 「お待たせ。まもなくボスが到着するわ。」 「あ、やっぱあのおばはんや〜。」 と言っても、幹部には通じっこないので安全だ。 「………生きろよ、…みんな。」 コハクが誰にともなく言った。 |
アビシニアン | #5☆2004.01/24(土)11:24 |
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第43話 南風〜前編〜 「生きろよ……」 コハクの声が聞こえてから、一体どの位経ったのだろう?13匹のポケモンに対応した、それぞれのカプセル…っぽいもの。 「12の珠玉、3つの水晶。それが全て揃った今、時の精霊は召喚される……。」 幹部とは違う、別の声が響いた。…女性の声だ。 「…一体、何が目的で…?」 オパールが不安げに呟く。 「…これは、私の仮説だけど…まず、12個の『ジュエル』と呼ばれる宝石と、私たち。珠の色や固有技の名前を考えてみて。…ほら、各月の誕生石になってるでしょ?だから、珠は1年の暦、そして私たちは時の精霊を封印、そして守護する者。水晶にしても…それぞれ大地、海、空に関わっているのかもしれません…。」 シェナがそう言った。確かにその通りかも知れない。前に、ヒスイは『5月のヒスイ』と名乗った。ラズベリルとクリソベリルの技にしても、『ガーネットテイル』。 …声の主であろう女が姿を現す。淡い緑色のスーツに、深緑の石が嵌められたペンダントという出で立ち。 「しぇ〜、綺麗だねぇ〜。」 「アッシュ、君は女性なら誰だってそうだろ…?」 兄弟がそう話すのが聞こえたが、アッシュでなくとも…彼女は確かに綺麗だった。 「12の珠玉、3つの水晶…これが揃った時、時の精霊が眠る水晶が召喚される!出よ!聖なる珠・聖水晶!」 女性が叫んだ…すると、15の珠は急に輝き出して…ひとつになった。混じりけのない透明な珠にも見える。微かに朱、蒼、白などの色が混ざっているようにも見える。 「聖水晶に眠る時の精霊・セレビィ。今ここに出よ…我を悠久の時の中へ、招き入れよ!」 |
アビシニアン | #6☆2004.01/26(月)17:23 |
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第44話 南風〜中編〜 女性の声に合わせて、聖水晶は白く輝き……………時の精霊が降臨した。 『我を呼びだした者よ。そなたは我に何を望む?』 鈴の音のような、それでいて威厳のある声が響いてくる。 「我が望むはひとつ。汝が我を悠久の時の流れへ招き入れ、過去へと送ることを望む。」 「ちょ、ちょっと待てよ!オレらはどうなるんだ?」 ホタルが叫ぶ。 『…我を封印し、護ってきた13体の妖獣。…この者との、意識の交流を望むのか?』 「…つまり、会話すんのかって聞いてるワケだぁ。…そうだな、希望としては。」 クリスが一番にそう言う。 『…………承知。』 精霊…………………セレビィが頷くと、彼らは光に包まれ… 「最初に聞くけど、アンタの目的は何なんだ?オレにはさっぱり分からないんだ。」 意識を取り戻したサファイアが口を開く。 「目的など…御前らに教えてどうする。」 「どうするもこうするも…何か、悪事に使うなら、阻止するまでです」 シェナが言い返す。それを聞いた彼女は… 「フ…悪事、か。表向きにはそう見えるが、仕方がない。」 「仕方ない…仕方ないってどういう意味なんですか!?何が仕方ないっていうんですか!?」 「せや!何が仕方がない、や!もっと他の方法があるんちゃうのか!」 ムーンとラズベリルが口々に反論する。 「時の精霊。我を、過去の世界へ…。」 『ならぬ。』 「な…何故!」 『理由を…告げよ。それが言えぬと言うのなら…我は再び、眠りにつく。』 女性は軽く唇をかんで考えこみ、 「……わかった。話そう…」 |
アビシニアン | #7☆2004.01/28(水)20:17 |
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第45話 南風〜中編2〜 「…私には、妹が1人居た。…もっとも、『居た』のであって、今はもう…」 「いないの?」 ここに乗り込んだときには、クリスの後ろに隠れて見えなかったキルリア…コーラルが、無邪気に聞いた。 「ああ…14年前に、ポケモンに攫われて…それっきりだ。だから、私は時の狭間を飛び越え、妹を取り返す。」 「…だめ…です…」 「え…?」 ラピスラズリの言葉に、皆振り返った。 「どんなコトをしたって、失われた命は戻らない…それが自然の……定めです。そんな歪んだこと…」 「そう……自然の定めには、逆らえない。昔から…そして、これからも…永遠に!」 ヒスイがラピスラズリに続いて言い放つ。女性の顔に、怒りが浮き彫りになる。 「この…獣風情が…!」 「待ってよ…じゃあ、どうしてわざわざ兄さんや姉さん・・それに、ラピスの妹を攫うの?恨んでるの?」 オパールが真剣な瞳で聞いた。いつもは天然からくるボケをかます、あの彼が。 「違うな…恨んでいる訳ではない。私のモンスターを使い、お前達が此処に集うようにし向けただけだ。」 「…許せない…!てめぇ…!」 クリスとコハク、さらにラピスラズリの声が重なる。 「邪魔をするというのなら、力ずくで破るまでだ!…フライゴン!」 緑色の美しい龍が飛来する。しかし、その瞳に感情はない。 「やらせるかっちゅぅねん!『しんそく』っ!」 目に見えない程のスピードで、ラズベリルがタックルを叩き込む。その後ろから、コハクの鋭い爪が迫る! 「…きりさくっ…!」 攻撃は当たった。しかし、フライゴンの尻尾の一撃によって、コハクは床に叩き付けられる! 「オレ様も加勢するぜっ!プリズミックアンバー!」 アッシュの体から、琥珀色の雷撃が放たれるが、フライゴンは体を揺すって電気を振り払った。 「シェードスター!」 アージュの額から、深紅の閃光が発射され、龍の体を貫く! 「破壊光線」 フライゴンは、主人の声を聞き終わるが早いが、白い光を15匹に向けて打ち出した。 「な、なんて威力…」 「は…歯が立たねぇ!」 クリソベリルとホタルが呟く。 「もう…残った力をぶつけるっきゃないな!みんな、合わせてんか! |
アビシニアン | #8☆2004.01/29(木)17:40 |
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第46話 南風〜終章〜 「行っくでぇぇぇ!ガーネットテイル!」 ラズベリルとクリソベリルの尾が紅く光り、フライゴンの体を打つ! 「これで、最後の闘いになるよ〜ん!アメジストボール!」 コランダムの真珠から、赤紫色の玉が発射される! 「もう、こんなことやらせない!サイコアクアマリン!」 コーラルの周りから、水色の波動が放たれる! 「終わらせてやる!ダイアモンドストーム!」 「これが最後なのね…エメラルドアロー!」 クリスの放った光の嵐と、ヒスイの放った緑の矢が走る! 「行きます〜!パールシャイン!」 「許せません…ルビーカッター!」 「違いを見せてやる!ペリドットレイ!」 ムーンの翼から白い光が放たれ、降り注ぐ!その後ろからは、シェナの紅い刃とホタルの黄緑の槍が飛ぶ! 「オレは、もう負けない!サファイアブレード!!」 「ボク、やるよ!オパールハリケーン!」 「終わりにするよ!トパーズシールド!」 サファイアの蒼い剣が地龍を貫き、オパールの放つ多彩色の渦が呑み込む!そして、コハクの飛ばした黄色の壁が、フライゴンの動きを束縛する! 「…そうだ…僕は、1人じゃない…みんながいる!ホーリーラピスラズリ!!」 瑠璃色の光が強まり、その場に居合わせた者は思わず目を覆った。そして…今までに放たれた12色の光が混ざり、絡み合い、1つになってその悪しき心をも焼く! ………光がおさまった……… 『封印を護ってきた者達…よくやった。我の力を悪しき事に使わんとする輩は、もういない…安らかに眠れ…』 精霊は、そう言い残して消えた。残ったのは、床に倒れ伏す13匹の守護獣と、そして…残ったポケモンの解放で力を使い果たしたアージュ・・アッシュの兄弟。彼らはやがて光になり…どこかへと消えた。 ……いつかまた 巡り逢うであろう 15匹の獣 南からの風が 生命の唄を 歌い続ける… |
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