ぴくの〜ほかんこ

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[142] ジュエル☆★モンスターズ〜道はどんなに遠くても〜

アビシニアン #1★2004.01/06(火)21:31
第39話 捕らわれ

「…サファイア?死んで…ないよねぇ?」
オパールの問いに答えたのは、本人ではなく…
「ああ、この装置には生命維持装置がついてるから…死ぬってコトはありませんよ〜。」
「あ、下っ端のハニーエンジェル。」
ラズベリルがそう言うと、彼女は首を横に振った。
「まさか〜。私は彼女の身代わりになって、あの下っ端のピクシーのフリしてるだけですよ〜?あ、ちなみに〜、私はあなた達のお仲間で、ムーンって言います〜。よろしく〜。」
どことなーく某獣医さん主人公のマンガの女性を思わせる口調で、ピクシーは語った。
「ムーン、何油売ってるんだぁ?」
「あ、ホタル君〜。見ての通り、お仲間と対面してたんだけど、何か〜?」
なんか生意気そうなタマザラシ・ホタルに、ムーンが説明する。
「へぇ〜、じゃあアンタらもジュエルモンスターご一行ってワケか。」
コハクが問うたが返事はなく、代わりにリーダー格と見られるハクリューが、エネコロロとバネブーを従えて登場した。そのバネブーというのが…
「あ…」×いっぱい
「あれ〜、どうかしたんですかぁ?コランダム君に、そこの皆さん〜?」
ムーンが首を傾げる。
「あー、アズサ諸島で会ったご一行だよ〜ん。…ついに、向こうの計画が本格始動するみたいね〜ん。」
「ほーん、アンタらもかぁ。オレはクリス♪。で、こっちのはシェナっつうんっでぇ。まっ、よろぴく。」
ハクリューが、自分とエネコロロを紹介する。
「…そうだ、アージュとアッシュは?」
ラピスラズリは、ふと気づいた。
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アビシニアン #2☆2004.01/08(木)16:13
第40話 アージュとアッシュ

その頃。
「ぶわくしっ!」
アジトの地下通路に、アッシュの強烈なクシャミの音が響いた。
「はっは〜ん。どっかでカワイコちゃんがオレの噂を…」
「くそたーけがっ!誰が御前の噂なんかするんだ!?オマエ、ちっとは自分のナンパ成功率を把握しときゃあ!(何故か名古屋弁)」
当然、アッシュはハリセンで殴られた。
「どっからハリセン持ってきたんだよ…。」
「それは置いといて。みんなを追ってここまで来たのはいいけど、どこにいるんだろうか?心配だな…。」
地下通路は長いこと使われていないらしく、ホコリだらけだった。綿ボコリを踏みつけながら、2匹は進んで行く。と、アージュのすぐ右の壁に、扉がある。
「何だ?ここ。」
アッシュが扉を押してみる。ギィ…と軋んだ音をたて、扉が開く。
「何なんだ…この部屋は…」
無数の檻が並んでいる。中にいるポケモン達は、皆眠っているようにも見えた。しかし、目的の仲間はいない…
「出るか、アニキ…。」
アッシュが扉をくぐろうとすると、途端にランプが灯り、警戒音が響く。さらに、鉄格子が降ってきて扉を塞ぐ!が…
「なーんだ、これ、人間用の格子だ。僕等なら通り抜けられる。」
さらにさらに、進んで行く。だいぶ進んだ所で、階段を見つけることが出来たが、油断はできない。
「上ってみるかぁ♪どーせ、他に行けるようなトコはねぇし。」
ゴン!鈍い音と共に、アッシュが踊り場に降ってきた。
「痛ってぇ!この上、なんかあるぜ…」
「…これ、ずらせるみたいだ。開けてみるよ?」
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アビシニアン #3☆2004.01/21(水)17:39
第41話 対面

「ったく、なんでまたあんな隠し通路があんだよ〜…。」
頭にものすんごいコブを作ったアッシュがぶつぶつ言う。
「まぁまぁ。おさえておさえて。そんな事より…もう廊下も終わりみたいだ。」
突き当たりには頑丈な一枚の扉。多分、ちょっと押した位では空かないであろう。
「な〜んか、大事なモノがあったりして〜♪どーやったら開くのかねぇ?」
ドアノブの横には、何かキーボードの付いたパネルのようなものがある。
『パスワードを 入力してチョンマゲ』
パネルにこんな文章が浮かび上がる。
「ぱすわーど…?この数字を入れればいいのか?じゃあとりあえず…。」
そう言ってアッシュが押したのは…『789*』
「どんな理屈だよ…」
「仕方ねーだろ!ここまでしか届かねぇんだから!」
『残念、不正解! またの挑戦を お待ちしておりま〜すv』
パネルがそう告げ、また入力画面に戻った。
「んっじゃ…これでどーだ!」
『7788』。
『当ったり〜 ドンドン!通ってよろしー。』
「すごいマグレ…」
「な〜に、オレッチの野生のカンだよ〜ん!」
扉が開く。

「あ、おバカとそのツッコミ。」
「アンタの言えるコトじゃなかっ!」
そこには、いつもの2匹の漫才が待っていた。
「…これ、一体……?」
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アビシニアン #4★2004.01/22(木)17:47
第42話 迫る闘い

「ああ、これですね〜…制御装置のスイッチを切るなり、装置そのものを破壊すればいいらしいいんですけど〜、スイッチにもパスワードが必要って、エンジェルさんが言ってました〜。」
「え、エンジェル…?ああ、あのピクシーね。」
アッシュが一瞬戸惑ったが、顔を上げて聞いた。
「ところで、パスワードって…」
質問は、聞き覚えのある超えに遮られた。
「え、エンジェル〜!!!!」
もはや説明するまでもない。漫才コンビが駆け込んできたっつぅことである。
「…居るぢゃん。ココに。」
ボケ下っ端が指摘する。
「いんや。これは俺のハニーじゃないっ!毛づや!シッポの巻き具合!目つき!翼の美しさ!どーれーも、ハニーエンジェルよりも劣っているっ!!」
「…悪かったですね〜、劣ってて。」
ムーンがムッとした顔でぶつぶつ言う。その7メートル32センチ6ミリ先で、ツッコミが携帯電話のボタンを叩く。
「あ、もしもし幹部?残る6匹がひょっこり出てきてますよ〜。今いっちゃん奥の部屋ッス。はいはい…んじゃ。」
「幹部って、あのおばはんか?」
「さぁ…。」
ラズベリルに聞かれたが、ラピスラズリでは分かるはずはない。
「決戦が…近づいてきていますね…。」
シェナが静かに流れていくような声で呟いた。
「お待たせ。まもなくボスが到着するわ。」
「あ、やっぱあのおばはんや〜。」
と言っても、幹部には通じっこないので安全だ。
「………生きろよ、…みんな。」
コハクが誰にともなく言った。
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アビシニアン #5☆2004.01/24(土)11:24
第43話 南風〜前編〜

「生きろよ……」
コハクの声が聞こえてから、一体どの位経ったのだろう?13匹のポケモンに対応した、それぞれのカプセル…っぽいもの。
「12の珠玉、3つの水晶。それが全て揃った今、時の精霊は召喚される……。」
幹部とは違う、別の声が響いた。…女性の声だ。
「…一体、何が目的で…?」
オパールが不安げに呟く。
「…これは、私の仮説だけど…まず、12個の『ジュエル』と呼ばれる宝石と、私たち。珠の色や固有技の名前を考えてみて。…ほら、各月の誕生石になってるでしょ?だから、珠は1年の暦、そして私たちは時の精霊を封印、そして守護する者。水晶にしても…それぞれ大地、海、空に関わっているのかもしれません…。」
シェナがそう言った。確かにその通りかも知れない。前に、ヒスイは『5月のヒスイ』と名乗った。ラズベリルとクリソベリルの技にしても、『ガーネットテイル』。
…声の主であろう女が姿を現す。淡い緑色のスーツに、深緑の石が嵌められたペンダントという出で立ち。
「しぇ〜、綺麗だねぇ〜。」
「アッシュ、君は女性なら誰だってそうだろ…?」
兄弟がそう話すのが聞こえたが、アッシュでなくとも…彼女は確かに綺麗だった。
「12の珠玉、3つの水晶…これが揃った時、時の精霊が眠る水晶が召喚される!出よ!聖なる珠・聖水晶!」
女性が叫んだ…すると、15の珠は急に輝き出して…ひとつになった。混じりけのない透明な珠にも見える。微かに朱、蒼、白などの色が混ざっているようにも見える。
「聖水晶に眠る時の精霊・セレビィ。今ここに出よ…我を悠久の時の中へ、招き入れよ!」
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アビシニアン #6☆2004.01/26(月)17:23
第44話 南風〜中編〜

女性の声に合わせて、聖水晶は白く輝き……………時の精霊が降臨した。
『我を呼びだした者よ。そなたは我に何を望む?』
鈴の音のような、それでいて威厳のある声が響いてくる。
「我が望むはひとつ。汝が我を悠久の時の流れへ招き入れ、過去へと送ることを望む。」
「ちょ、ちょっと待てよ!オレらはどうなるんだ?」
ホタルが叫ぶ。
『…我を封印し、護ってきた13体の妖獣。…この者との、意識の交流を望むのか?』
「…つまり、会話すんのかって聞いてるワケだぁ。…そうだな、希望としては。」
クリスが一番にそう言う。
『…………承知。』
精霊…………………セレビィが頷くと、彼らは光に包まれ…
「最初に聞くけど、アンタの目的は何なんだ?オレにはさっぱり分からないんだ。」
意識を取り戻したサファイアが口を開く。
「目的など…御前らに教えてどうする。」
「どうするもこうするも…何か、悪事に使うなら、阻止するまでです」
シェナが言い返す。それを聞いた彼女は…
「フ…悪事、か。表向きにはそう見えるが、仕方がない。」
「仕方ない…仕方ないってどういう意味なんですか!?何が仕方ないっていうんですか!?」
「せや!何が仕方がない、や!もっと他の方法があるんちゃうのか!」
ムーンとラズベリルが口々に反論する。
「時の精霊。我を、過去の世界へ…。」
『ならぬ。』
「な…何故!」
『理由を…告げよ。それが言えぬと言うのなら…我は再び、眠りにつく。』
女性は軽く唇をかんで考えこみ、
「……わかった。話そう…」
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アビシニアン #7☆2004.01/28(水)20:17
第45話 南風〜中編2〜

「…私には、妹が1人居た。…もっとも、『居た』のであって、今はもう…」
「いないの?」
ここに乗り込んだときには、クリスの後ろに隠れて見えなかったキルリア…コーラルが、無邪気に聞いた。
「ああ…14年前に、ポケモンに攫われて…それっきりだ。だから、私は時の狭間を飛び越え、妹を取り返す。」
「…だめ…です…」
「え…?」
ラピスラズリの言葉に、皆振り返った。
「どんなコトをしたって、失われた命は戻らない…それが自然の……定めです。そんな歪んだこと…」
「そう……自然の定めには、逆らえない。昔から…そして、これからも…永遠に!」
ヒスイがラピスラズリに続いて言い放つ。女性の顔に、怒りが浮き彫りになる。
「この…獣風情が…!」
「待ってよ…じゃあ、どうしてわざわざ兄さんや姉さん・・それに、ラピスの妹を攫うの?恨んでるの?」
オパールが真剣な瞳で聞いた。いつもは天然からくるボケをかます、あの彼が。
「違うな…恨んでいる訳ではない。私のモンスターを使い、お前達が此処に集うようにし向けただけだ。」
「…許せない…!てめぇ…!」
クリスとコハク、さらにラピスラズリの声が重なる。
「邪魔をするというのなら、力ずくで破るまでだ!…フライゴン!」
緑色の美しい龍が飛来する。しかし、その瞳に感情はない。
「やらせるかっちゅぅねん!『しんそく』っ!」
目に見えない程のスピードで、ラズベリルがタックルを叩き込む。その後ろから、コハクの鋭い爪が迫る!
「…きりさくっ…!」
攻撃は当たった。しかし、フライゴンの尻尾の一撃によって、コハクは床に叩き付けられる!
「オレ様も加勢するぜっ!プリズミックアンバー!」
アッシュの体から、琥珀色の雷撃が放たれるが、フライゴンは体を揺すって電気を振り払った。
「シェードスター!」
アージュの額から、深紅の閃光が発射され、龍の体を貫く!
「破壊光線」
フライゴンは、主人の声を聞き終わるが早いが、白い光を15匹に向けて打ち出した。
「な、なんて威力…」
「は…歯が立たねぇ!」
クリソベリルとホタルが呟く。
「もう…残った力をぶつけるっきゃないな!みんな、合わせてんか!

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アビシニアン #8☆2004.01/29(木)17:40
第46話 南風〜終章〜

「行っくでぇぇぇ!ガーネットテイル!」
ラズベリルとクリソベリルの尾が紅く光り、フライゴンの体を打つ!
「これで、最後の闘いになるよ〜ん!アメジストボール!」
コランダムの真珠から、赤紫色の玉が発射される!
「もう、こんなことやらせない!サイコアクアマリン!」
コーラルの周りから、水色の波動が放たれる!
「終わらせてやる!ダイアモンドストーム!」
「これが最後なのね…エメラルドアロー!」
クリスの放った光の嵐と、ヒスイの放った緑の矢が走る!
「行きます〜!パールシャイン!」
「許せません…ルビーカッター!」
「違いを見せてやる!ペリドットレイ!」
ムーンの翼から白い光が放たれ、降り注ぐ!その後ろからは、シェナの紅い刃とホタルの黄緑の槍が飛ぶ!
「オレは、もう負けない!サファイアブレード!!」
「ボク、やるよ!オパールハリケーン!」
「終わりにするよ!トパーズシールド!」
サファイアの蒼い剣が地龍を貫き、オパールの放つ多彩色の渦が呑み込む!そして、コハクの飛ばした黄色の壁が、フライゴンの動きを束縛する!
「…そうだ…僕は、1人じゃない…みんながいる!ホーリーラピスラズリ!!」
瑠璃色の光が強まり、その場に居合わせた者は思わず目を覆った。そして…今までに放たれた12色の光が混ざり、絡み合い、1つになってその悪しき心をも焼く!
 ………光がおさまった………
『封印を護ってきた者達…よくやった。我の力を悪しき事に使わんとする輩は、もういない…安らかに眠れ…』
精霊は、そう言い残して消えた。残ったのは、床に倒れ伏す13匹の守護獣と、そして…残ったポケモンの解放で力を使い果たしたアージュ・・アッシュの兄弟。彼らはやがて光になり…どこかへと消えた。
……いつかまた 巡り逢うであろう 15匹の獣
        南からの風が 生命の唄を 歌い続ける…
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