ぴくの〜ほかんこ

物語

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[43] ジュエル☆★モンスターズ

アビシニアン #1★2003.11/02(日)17:47
〜旅の始まり〜
第1話 きっかけ

「お願いですっ!妹を助けて!僕が身代わりになってもいい!」
「問答無用!かみなりっ!!」
「ぐ…あああああ!!」
=============================
「…アクア…マ・・リンっ…ゴメン…ゴメンね、ダメな兄ちゃんで…っく…」
ここは、どこか森の奥…そこで、1匹のミズゴロウが泣いているようだ。
「どうしたのさ、ラピス?」
「あ…オパール。実は、妹が黄色くてトゲトゲの体の、電気技が使えるポケモンにさらわれて…」
「えっ…!!」
イーブイ=オパールが驚いたような声をあげた
「そ、そのポケモン、もしかしたら…」
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アビシニアン #2☆2003.09/18(木)17:38
第2話 秘宝の目覚め

「…そのポケモン、もしかしたらボクの兄さんかも…知ってるだろ、ボクの兄弟のこと。」
「ああ、君の兄さん達?でもまさか…あのトパーズさんがそんなことするわけ…」
「…それがさ、今朝置き手紙があって…。」
「どんなの?」
置き手紙は、こんな内容のものだった。
『…弟・オパールに宛てて。
     俺は、人間に従うことに決めた。当分帰らない。アイフェルの兄貴をはじめ他の弟妹たちも一緒だ。 俺に会いたいなら、森から出て花壇のある道をずっと行ったら町がある。そこからまたずっと山道を行けば、俺達の居る街・キララシティにたどり着く。それ以上は書けない。さよなら、我が弟
               次男・トパーズ
            同じく長男・アイフェル
               長女・双子のパール
               三男・同じく双子のオニックス
               次女・ザクロ  …』
「……ね?兄さん達、人間に『あの力』を利用されてるのかもっ!!」
「えっ、『あの力』を!?」
…『あの力』とは…
 ポケモンの中には、普通のポケモンにはない特別な「力」を備えた者があり…ラピスラズリやオパールにもその「力」があった。これを利用しようとする人間が居る事を、2匹は知っていた…。
「そ…そんな…じゃあアクアマリンは…!」
不安げにラピスラズリ=ミズゴロウは呟く。と、そんな2匹に突然声をかけたゴクリンが居た。
「話は聞かせてもらったぞ、お若いの。ワシも昔のぅ…」
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アビシニアン #3☆2003.09/20(土)12:07
第3話 翡翠の知恵

「ワシも昔のぅ、オマエさんらのように『力』を利用されそうだった仲間を助けに行ったことがある。」
「え、長老が…」×2
「それで…やはりキララシティを目指したのじゃ。そこにはポケモンを使って世界征服を企む人間のアジトがあっての。たしか何とか団といったっけのぅ…忘れてしもうた。」
「じゃあ、やっぱり兄さん達はキララシティに…!?」
動揺するオパールに、長老はこう語った。
「まぁ待て。キララシティはの、とても都会的で美しい街じゃったが、悪い人間の、ほれ、何と言ったかの…」
「たまり場、じゃないですか?」
ラピスラズリがそっと長老に教える。
「そうじゃそれじゃ、たまり場でもあった。オマエさんら、キララシティに行くのなら、くれぐれも捕まらないようにな!相手が赤白の球を出したら、すぐに逃げるのじゃ、良いな!」
「はいっ、分かりました!ほら、早く行こうよ、オパール…」
「うんっ、じゃあ長老…」
2匹が出発しようとすると、
「待て!出発する前に、これを持っていくがよい。どこかで役に立つであろう…。」
そう言って、長老は2匹に小さな玉を渡した。ラピスラズリには深い瑠璃色の玉。オパールにはきらめく多彩色の玉。
「うわぁ…すっごい、きれいな玉…。」
「長老…これと、妹の所に行くのにはなにか関係あるのですか?」
玉を不思議そうに見つめていたラピスラズリが尋ねると、
「んー…まあ、そのうち分かるわい。気をつけてな!」
「はいっ、長老!行って参ります!!」
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アビシニアン #4☆2003.09/21(日)16:42
第4話 淡い闇との衝突

さっそく旅に出たラピスラズリとオパール。さて、今居るのは…。
「えーと、確か兄さんは森から出て花壇のある道を行くって言ってたよね。じゃあこっちに行けばいいのかな?」
オパールの指した先には、レンガでふちどられた薄紫の花が咲き乱れる花壇。それが道の両脇にあるのだから、この道で合っているということだろう。
「…そう言えば、この玉結局何なのかなぁ?」
ラピスラズリがオパールに話しかけようとすると、
「キシャー!そこのポケモンッ!その『ジュエル』をよこせーっ!」
「おっ、オマエは…!」
「オパール、知ってるのか?」
「誰だ?」
「だあああああ!!」×2
オパールの突拍子もない発言には、さすがの悪者(?)もずっこけてしまった。
「俺様はキララシティのオニキス団の手下、ポチエナだ!それよりてめーら!その『ジュエル』をよこせ!」
「あ、あのー…。」
ラピスラズリは、ポチエナに恐々話しかけてみた。
「なんだ!」
「あの、『ジュエル』って何ですか?」
「アホ!てめーらが首から下げてるその玉!それが『ジュエル』だ!」
あーあ、しょーもない質問にポチエナさん、怒り狂ってますな。
「はぁ、このキラキラの玉、ジュエルって言うんですか。ボクのはいろんな色だけど…。ポチエナさん、どうしてこれが欲しいんですか?」
「フフフ…それはな。この『ジュエル』は、この世界に12個っきりしかない貴重な玉なんだ。そして、『ジュエル』を全て集めると、何かが起こる…らしいんだ。それに、『力』を強める効果もあるらしいぜ。」
「ふーん、それじゃあ…」
なぜか、オパールはニコニコしている。
「ああ、オパールも同じ考え?じゃ、せーの…」
「ジュエルアタック!!」×2
ポチエナに、瑠璃色の光をまとったラピスラズリと、多彩色の光をまとったオパールがぶつかっていく。
「ぎゃあああ!」
ポチエナは、2匹の「ジュエルアタック」をもろに食らい、吹き飛ばされた。
「クソ、覚えてろよ!」
「…なんだか分かんないけど、やったね!」
「うんっ、ラピス!!」
           そして、2匹の旅は続く…
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アビシニアン #5☆2003.09/22(月)17:04
第5話 新しい光

「も〜、アンタはいっつもどうしてそうなるんよ!」
「そんなん言うたって、ワイの知ったことやないわ!だいたいオマエは…」
道のど真ん中で、2匹のポケモンが何やらケンカしている。
「あたしはなぁ、アンタのその態度が気にいらなか!それ、何とかしぃ!」
「あの〜…。」
「あ?アンタは…。」
どこかの訛りで怒鳴っていたロコンが振り返る。
「え、えーと、ミズゴロウのラピスラズリって言います。」
「あ、ボクはオパールです。」
オパールも付け足すように言う。
「ほーん。おまはんら、見かけへん顔やなぁ。どっから来たん?」
関西弁ガーディも2匹に尋ねた。
「あの、実は僕たち…(かくかくしかじか)…ってワケで、妹を…あ、オパールの兄さんたちもか。捜しにキララシティへ行くとこなんです。」
「へぇー、キララシティのオニキス団…うん!あたしもついてくったい!なぁ、ラズベリル。あんたも来るに決まって・・」
勝手にベラベラと話を進めるロコン。それに対してラズベリル(ガーディ)は…。
「おっオマエ!勝手に決めんといてぇなぁ!」
「へーえ。じゃあ、この『ジュエル』はあたしが…」
「えっ…あなた達も!?」
ラピスラズリも、声を出せないほど驚いている。
「…はいはい、わーりましたよ!ワイもついてきゃええんやろ!?ほな、ジュエルはまた共有でええな、クリソベリル?」
訛りロコンも、それには同意した。
ラズベリルとクリソベリルのジュエルは、燃えるような橙色で、やはりキラキラと日の光に輝いていた。
「じゃ、これからよろしくっ!」
「せやな、夜露死苦!」

新しい仲間と共に、歩み始めたラピスラズリとオパール…次なる冒険は一体…?
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アビシニアン #6★2003.10/15(水)19:31
第6話 青い空、白い雲、そして災難

空はいつもよりも高く、いつもよりも澄んだ色をしていた。しかし、4匹の足元はぬかるんでいた。そう、嵐は昨日までこの山で暴れていた。
「…しっかし、見事にボロボロやなぁ、この辺!」
「確かに…木は折れてるし、山肌も削れてるし…。」
ラズベリルとオパールの言葉に間違いはなかった。道の脇に生えていたはずの木が、道をふさいでいる。切り立った山の斜面も、ボロボロに崩れていた。
「この山が無事に抜けられたら、あたしは自分に金一封あげてもよか〜…。」
クリソベリルは、倒木とぬかるみで塞がれた道を見て、ため息をついている。
「…だけど、この山を通らないとキララシティには行けませんね…。」
ラピスラズリも呟く。
数分後…
「…こら、しゃあないなぁ。さ、はよこの山抜けてまおう!」
「…そうやね、ここを抜けない限り、キララシティに行けないんやったら…根性で頑張るとよ、あたしは!」
「おうっ!!」×3
4匹は、進んだ。倒木を飛び越え、ぬかるみを避けながら。すべる道もあれば、体が半分つかる程の深くて大きな水たまりが道を占領しているところもあった。それでも、彼らは進んだ。

キララシティへ向かう道が見えてきた頃、「災難」は起こった。
「ふぅ…キララへ行く道だろ、あれ。よーし、もう少し!」
「オパール、ちょっと張り切りすぎやろ、それは。」
前方に夢中で、4匹は足元を見ていなかった。そして…
「うわっ…!?」
「な、なんや!?」
「それはあたしのセリフたいっ!」
「そんな…まだ妹にも会ってないのにっ、なんでいきなりっ…!?」


「…い。…おいっ…!!…」
誰か…誰かが僕の名を呼んでいる…ねぇ…君は誰?
「…おいっ…ラピスっ…!」
「ん…あれ?僕たち…?」
ラピスラズリの目に映ったのは、まぎれもなくラズベリルだけ。そこに、クリソベリルとオパールの姿はなかった。
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アビシニアン #7★2003.10/15(水)19:32
第7話 地上への道は?

「…なぁ、ラピやん。どうやらワイら、地面の裂け目に落ちてもうたみたいやで?」
「そんな……ところで、オパールとクリソベリルは?」
「んー…おれへんなぁ…はぐれて…しもたかも…」
ラズベリルは辺りを見回しながら答える。
「…かも、じゃなくて絶対はぐれてますよ、これ…」
上には高くて上れない。かと言って、下にもこれといった抜け道はなさげだ。
「…なぁ。あそこの穴から抜けるっきゃないんちゃう?」
ラズベリルが見つけた「穴」は、2匹の体がギリギリで通れるほどの狭い穴で、地上へ出られる保証はどこにもない。
「でっでも…もし、この穴が地上に抜けていなかったら…。」
「なーに言うとんねん。そんなの、そん時考えればええこっちゃ。」
どこまでも楽天的なラズベリル。彼はラピスラズリを引っ張って、ずんずんと穴の奥へ入っていった。そして…
「ほれ、ラピやん!こんなトコへ出られたやん♪」
「穴」を抜けた先には…平らな岩と透き通った湖。水面はキラキラと輝いている。湖の向こうに、なにかが6つ光っている。
「…ここって…もしかして地底湖?」
ラピスラズリが誰にともなく呟いた。ほうっとため息をついて。
「…あんたら、ここに何しに来た!!」
「だ…誰や!?」

一方、オパールとクリソベリルは…
「…ここ、どこね?」
「ボクに聞かれても…。とりあえず、地下でしょ。」
やはりこの2匹も、どこか地面の裂け目に落ちていたらしい。
「ど、どうしよ…ねぇ、クリソベリル…」
「…そうね、あたしらとラズベリル達、同じぬかるみにはまって落ちたやろぅ?あたしが思うに、あいつらもそこそこ近くにいるったい。確証ないけん…」
「…なるほど。じゃあさ、あの小さい穴を通り抜けたらラピスたちに会える!(かも!)」
オパールも、ラズベリルと同じ考えを抱いていた。
「…それっきゃないみたいね。じゃ、行くっとよ!!」
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アビシニアン #8☆2003.09/30(火)19:19
第8話 地下に咲く百合

再び地底湖…
「あんたら、ここはあたいらのシマだぜぇ?勝手に入ってきたからにはただじゃ置けねぇなぁ…。」
ポケモン3匹の内、右に立っていたヤミカラスが最初に口を開いた。
「おう、てめぇなかなかいいモン持ってんじゃねーか、あぁ?」
『ジュエル』に目を付けたヘルガーも2匹に詰め寄ってくる。
「あ、あのっ、えっと、なんの話…ですか?」
「…てめっ、耳聞こえてんのか!?その『ジュエル』のことだ!」
ヘルガーがさらにつっかかってくる。
「悪いが、ジュエルは渡さへん!『かえんほうしゃ』っ!」
「おうよ、やるかぁ?…そんならいくぜ、『シャドーボール』!!」
ヤミカラスが応戦する。
「やる…んだな、『とっしん』!」
「なにをっ、『だましうち』っ!」
ブラッキーもついに口を開き、戦闘に加わった。
そして戦うこと15分…ついにラピスラズリとラズベリルの「技」が出た。
「ジュエルアタックっ!!」×2
2匹がそう口にしたとたん、3匹の動きが止まった。
「てめぇ…オレをなめてかかってんだろ!!!」
ブラッキーが激怒している。
「オレのことを、ちょっくら教えてやらぁ!オレは地下の悪獣、ブラッキーのリリーナだ!」
「同じくリリス!」
ヤミカラスが叫ぶ。
「同じくリリム!」
ヘルガーも2匹に続いて叫んだ。
「…お前ら…やっぱりワイらの『ジュエル』が狙いなん?」
「……ざけんじゃねぇ!オレはジュエルなんか欲しくもない!!あんなチャラチャラしただけの丸っこいもんなんざ、これっぽっちも欲しくねぇ!!」
リリーナが言い放った…体をワナワナと震わせて。
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アビシニアン #9☆2003.10/01(水)17:53
第9話 回想

リリーナの中に封印されていた記憶。それは、ラピスラズリとラズベリルの『ジュエル』によって破られた。
「…………。」

3年前…
「あーらっ、アンタ、まーたこんな所で何やってんのかしらぁ?」
「るせぇ!オレがどこで何をしようとオレの勝手だろ!?」
リリーナはその「相手」につっかっていった。
「きゃぁー、乱暴なんだから!いいこと、あたしは『ジュエル』を持ってるのよ?そのあたしに乱暴するなんて許せない!」
「んだと、このブリッコ!」
「なによー、この一般ポケモン!」
ジュエルを持つポケモン…あれは確かピカチュウとか言っただろうか。あんな黄色い玉が何の役に立つんだ!
「いいこと?あたしはジュエルモンスター。特別なポケモンなのよ。そして、アンタはただのポケモンの一匹よ、ひどく乱暴なねぇ!」
「………!!!」

それ以来、リリーナはずっと「ジュエルモンスター」を憎んでいた。同じ経験のあるリリム、リリスと一緒にジュエルモンスターを倒そうとつるんできた。そして、あの忌まわしい記憶はリリーナの中で封印されていた。ついさっきまで……。

「………なぁ、リリス、リリム。あたしら…仲間だよな?裏切ったりとか、寝返ったりとか…しねぇよな?」
「え…リリーナ?…もちろん…だ・・っ…」
リリスも、リリムもリリーナの突然の言葉に戸惑いながらも答えた。
「あっ…!ラピスっ、ラズベリル!!」
「…オパール!?」
「クリソベリルっ!オマエ、どうしてこんなトコに来てんのや!?」
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アビシニアン #10☆2003.10/06(月)20:56
第10話 漆黒に唄う

「なんでって…あんたらこそなんでこんな所に来てるっとね?」
「じゃかあしい!見たトコてめぇらも持ってるんだな?例の丸っこいやつ。」
リリムが2匹に向かって叫ぶ。
「へ?それって『ジュエル』のこと?そんなら、ボクもクリソベリルも…クリソベリルはラズベリルと共有だけど…持ってる…けど…?」
「……へっ…オレもなめられたもんだね!ジュエルモンスターが4匹も!どうせオレらは『ジュエル』を持たねえ一般ポケモンだっ!軽蔑するならしろ!!冷やかすなら冷やかせ!!さあ!」
リリーナが鋭く言い放つ。その瞳は、怒りに燃え上がっていた。
「…別に冷やかすつもりはあれへん。ワイらはただ…。」
「じゃあなんだってんだ!ジュエル自慢かよっ!!言っとくが、オレは『ジュエル』なんていらねえ!さあ、言いたいことがあんなら言えよ!!」
なおも、リリーナは怒る。
「……僕達…ただこの前の嵐で地下に落ちて…穴を抜けたらここに出てきた…ただそれだけです。信じて…もらえますか?」
「ふ…ん!それがどうした!!」
リリスも怒鳴る。リリスとリリムの瞳も、リリーナと同じにメラメラと燃えていた。
「………昔々 3年前 我は『力』持つ者に軽蔑された 時の流れは移りゆけども 心の傷は 癒えぬまま 我は地下にて待ち受ける さあ来い ジュエルモンスターよ 我を軽蔑するならば 軽蔑するだけすればいい 後は我等が ケリつけん 
百合の花とて 雨に打たれる 雨に打たれぬ花などは お外にでた時 散り行かん………」
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アビシニアン #11★2003.10/13(月)20:53
第11話 KOKOROーココロー

「リ…リーナ…?」
リリーナの仲間・リリムは、驚きが全身に広がっていた。
「…なぁ?ただ丸っこいモン持ってるだけでみんなにチヤホヤされて…おかしくねぇか?」
「あ……。」
4匹は、リリーナの言葉にはっとした。今まで旅してきて、出会ったポケモン達はみんな自分たちに優しく、何かと世話を焼いてもくれた。それが、まさかこの「ジュエル」のお陰だったなんて思いもしなかった。ただ、彼らは元々そんな性格で、他人を放って置けないだけだと思っていた。
「…ちょっとチヤホヤされたからって…いい気になってんじゃねぇよ…何が特別だ…ただ、他とほんのちょっと違うだけで…」
「…リリーナ……。」
リリスとリリムが、リリーナの口からその言葉を聞いたのは、これで2回目だろうか。そう、3年前に地下に集った時、2匹はこの言葉を聞いていた。
「……そっか……確かに…あたし、他とは違う特別なポケモンやって、自分のこと思ってたかも…」
「……そう言われてみれば…ワイもあったかもな、他のポケモンはんの事、見下したこと。」
「…そんな扱い…自分が受けたとしたら…つらいですよね…悔しいですよね……」
「うん…ボクだったら…そんなの嫌だよ…」
「リリーナさん達は…今までそんなひどい扱いをされてきたんですね…。」
4匹は考えた。もし、自分が他とはちょっとだけでも優れた、特別なポケモンに見下されたら?ひどい侮辱の言葉を浴びせられたら?
ラピスラズリの足元に、光る雫がこぼれた。音もなく…
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アビシニアン #12☆2003.10/14(火)20:42
第12話 誓いと別れ

ポロポロ、ポロポロ……とめどなく涙があふれてくる。止まらない…止めれない。気づかなかった。自分の中の「陰」に。他を見下していた「ココロ」に。
「……んだよ、チョーシ狂うなぁ…。」
ラピスラズリのいきなりの反応に、さすがのリリーナもあきれたような顔をしている。
「リリーナさんっ…ごめん…ゴメンね…僕等、リリーナさんの言うとおり…そのっ…『いい気』になってたかも…」
止まらない。涙が止まらない。どうして今まで気づかなかったの。どうしてこんな事になってしまったの?
「……な…そんな、泣くような事じゃねぇよ。だいたい、てめぇ男だろ!?男ならさっさと前を向けよ!その涙をふけよ!!」
リリスがラピスラズリに向かい、カツを入れる。
「……ちょっと言い過ぎたかな…オレも、随分手荒な事してきたし…悪いのは、なにもてめぇらだけじゃねぇよ。ただ、オレの逆恨みかもな。…ゴメン。」
「リリーナ…!?」
リリムが驚いたように声をあげる。何せ、彼女は人に謝ることなど無かったから。
「じゃあ…許してくれるの…?ボク達のこと…」
「さぁな。リリムやリリスと…また誰かさんで遊びに行くかもだし☆」
イタズラっぽくリリーナが笑う。
「あーっ!リリーナさん、また冗談きついですよ!いままで僕達で遊んでたんですか!?」
さんざん泣いて赤く腫れあがった目でラピスラズリがリリーナを睨む。その目は、かすかに微笑んでいた。
「なーんや、なんだかんだ言って、けっこう仲良くなってるんちゃう?アイツら。」
「まったまたぁ。アンタもやろ、そらっ、行って来ぃ!」

「……じゃあ、僕達はそろそろ出発します。どうもありがとう…」
「いいって。抜け道教えただけだし。」
「……それじゃ、またどこかで!さようなら!!」
「おうっ!元気でやれよー!!」×3
「毎度おおきにー!!」
「毎度はよけいったい!!」
「さよなら、いつか…またどこかで!」×4
「じゃあなぁーっ!!!」×3
山道に、4本と3本の影が長く伸びていた。4本の影はやがて遠ざかり…見えなくなった。
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アビシニアン #13★2003.11/02(日)17:46
〜新たなる仲間〜
第13話 妹を捜して三千里

「しっかしまぁ…でっかい街やなぁ…キララシティ。」
4匹は今、キララシティに居る。兄弟がこの街の何処かにいる。そう思うと、この旅も長いようで短かった。そう考えながらも、ラピスラズリはある建物を目指していた。オニキス団のアジト。噂では、ヒカリトレーナーズスクール・キララ校の地下にあると聞いていた。あとほんの数メートル先。その地下に、妹がいる!
ギイ…古いドアが軋む。中には誰もいない。あるのは机と椅子ばかり…それに、大きな黒板。
「…どっから入るっとね?アジトに。」
「知らないよ、そんなことボクに聞かれても…」
オパールがつい黒板にもたれかかる。その時、ほんの少しだけ黒板が右に動いた。
「も、もしかしたら、この黒板…!」
「なんや、ラピやん?どないしてん。」
「…ちょっといい?」
そう言って、ラピスラズリが黒板をそっと右に押してみる。
スゥ…意外にも、簡単に黒板は移動した。その裏には壁がある。
「なんや…空振りかぁ。さぁ、次や!」
「ちょっと待って…ここ、四角い線が見えるよ?ねぇ、ラピス。」
オパールがその線に囲まれたところを押してみる。壁がそこだけ引っ込み、人間がひとり通れるくらいの穴が出来た。
「行ってみよう!このさきに兄さん達がいるかも!」
穴の先には、本当に狭い空間があった。そこから下りの階段が出ている。4匹は、階段の続く限り降りていった。そして…
「…ここがアジトやな…。」
アジトには全く人気がない。誰もいない地下は不気味なほど静かだ。
「…アクアマリンっ…!!」
妹の名を呼んでみても反応がない。ここには居ないのだろうか?
「…行ってみるしかなかとね…奥へ!」
さらに奥へ進んでみると、巨大な装置や大きなスクリーン、12個のカプセルがある部屋があった。そこから声が聞こえる。ポケモンの声だ。
「……い…」
「誰かおるんか!?」
「行ってみよう!オパール、ラズベリル、クリソベリル!!」
カプセルの1つの中に、その声の主は居た。アブソルだ。
「……あなたですか?僕達を呼んだのは。」
「…ああ。…お前達、持ってるのか?」
カプセルの中からアブソルが答える。
「…はい…『ジュエル』の事ですね?じゃあ、あなたは…」
「そうだ…オレは『ジュエル』目当ての人間に連れてこられた。ほら、これ…」
アブソルの胸に、ラピスラズリのそれよりも明るい青色の「ジュエル」が光っていた。
「オレはサファイアってんだ。あいつらなら…さっきポケモンの…入ったオリを持って…どっかへ出て…いったぜ……っ…」
そこまで言うと、サファイアと名乗るアブソルはぐったりと目を閉じた。
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アビシニアン #14☆2003.10/16(木)20:11
第14話 過去

……目の前は一面真っ白。自分がどこにいるのかも分からない………
ここは…何処だろうか。背の高い草が生い茂っている。人間がいる。誰…?どこかで…どこかで会ったよな?
「…もう、オマエは必要ない。俺様のパーティに入れておくにはオマエは弱すぎる!」
弱い…?オレ、そんなに弱かったの…?
「……俺様は最強のトレーナーになる男だ。オマエはオレが最強の称号を得るのには足手まといだ!失せろ!!」
待って…あんた…オレを捨てるの?どうして、一体どうして……オレ、弱い?そんなに邪魔だったのか?
遠ざかっていく……あの「トレーナー」の足音…名前は…そうだ、ジオとかいったっけ……そうか…!あいつ、オレの………!!
「……い……おいっ…!」
「っ……。」
「あ、目ぇ覚めたん?なんで急に気絶したりしたんや…?」
カプセルの外から、ラズベリル…とかいうガーディが話しかけてくる。
「…なんか…昔の夢を見た。オレがトレーナーのポケモンだった頃の夢…。」
「えっ!?じゃあ、サファイアって元々トレーナーのポケモンだったのか?」
「……ああ。でも、なんだかオレ達に対して冷たくて…いらなくなったモンスターはあっさり捨てるような奴だった。オレもそのクチさ。」
サファイアの元・トレーナー…ジオは、彼の特殊な力に気づいてはいなかった。その上、サファイアは勇敢だが決して好戦的ではない。そんな性質だったからか、足手まといだとしてサファイアを道路に捨てていった。豪雨の前日だった。
「それで…その後どうなったんですか?」
「…オマエも物好きだなぁ。オレなんかの生い立ちを知りたがるなんてよ。……捨てられた次の日は大雨でよ。隠れるような場所もないからその日は雨に打たれっぱなしさ。で、雨が上がった日…降り出してから2日後だな、そこの長老とか名乗ってたストライクからこの『ジュエル』を授かったってワケよ。」
「ふぅーん…アンタもいろいろ苦労してたっとねぇ。」
「………まぁな。」
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アビシニアン #15★2003.10/23(木)18:14
第15話 現在

「……で、そっから出ることは出来ひんのか?」
「…出来てたら苦労しねぇよ…何せ、あの『ジュエル』の力でもコイツは壊せねぇんだ。」
「えっ……」×4
今まで数々の(物理的)障害をクリアするのに、いつも一役買っていたあの「ジュエル」の力で強化された技でさえも、クオーツ地方最大の都市・キララシティの科学力にはかなわないというのだ。
「…じゃあ、ここに人が戻ってくるまでサファイアは出られないってこと!?」
「……かもな。」
「そんなっ…僕達には…何も出来ないって言うんですか!?」
目の前のカプセルに閉じこめられた「仲間」を救いたい…けれど、「ジュエル」でも壊せないのに、どうやって…。
「直接攻撃じゃダメかもだけど…『ジュエルストーム』っ!!」
瑠璃色の光が、カプセルめがけて降り注ぐ…が!光は全てカプセルに吸収されてしまう。そして…
「うああああっ!!」
衝撃波がラピスラズリを襲ってきた。当然、たった7・6kgの体は吹き飛ばされてしまう。
「くそっ…一体どないしたらええんや!」
そんな時、物陰から一匹のペルシアンが姿を現し、こんな事を言った。
「ああ、そいつか…この部屋の右端に、もう1つ扉があるでしょう?その先に、この装置の制御室がある。確か、白いボタンを1回だけ押せば、機能は停止するってここの幹部が言ってるの、聞いちゃったわよぉ。」
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アビシニアン #16☆2003.10/23(木)18:13
第16話 未来へ…

「アンタは……誰だ?」
サファイアは疑うような目つきでペルシアンに問う。
「あらぁ、あたしはアンタ達の仲間よぉ。ジュエルだって、ほらっv」
確かに、彼女は淡い琥珀色の玉を手で転がしている。
「あ、ありごとうございますっ!行こう、みんな!!」
「おうっ!」×3

「これが例の装置やなぁ?えーっと、白いボタン…コレや!ポチッとな……」
何も変化はない……
「……これでよかっとんよね?」
「さぁ…」×3

「電源が切れたってことは…もうこのカプセルは開くことができるんだよね。よぉしっ、『すてみタックル』!!」
バリバリと音を立てて、電流がほとばしる!もちろん、さっきのラピスラズリと同じように、オパールも吹き飛ばされる。
「えっ、どうして…僕達は言われたとおりにしただけなのに、なんで電源がついてるんだ!?」
「『はかいこうせん』っ!!」
突然、ペルシアンが叫ぶ。赤みを帯びた光の塊は、4匹に激突して……
「『トパーズシールド』!!」
激突しなかった。ジュエルと似た色の壁が、光線を跳ね返したのだ。跳ね返された光は、ペルシアンにぶつかり…
「ああああああああああ!!」
ペルシアンは気絶したようだ。
「だっ、誰ですか!?」
「あたいか?……あたいが、そのジュエルの本当の持ち主……ジュエルモンスター、コハクさ!」
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アビシニアン #17☆2003.10/28(火)21:27
第17話 偽られた琥珀

「え……じゃあ、あそこのペルシアンは…。」
突然知らされた事実に、皆驚きを隠せずにいる中で、クリソベリルが口を開いた。
「さあな…。この組織のポケモンじゃないのか?あいつ、さっきみたく『はかいこうせん』であたいを首尾良く気絶させた後で、ジュエルを奪った…あたいはそうにらんでる。」
あっさりした口調で彼女は答えた。しかし、その目には怒りの炎が灯っていた。
「イミテーション・ジュエルモンスター…なんてね。」
いつ入ってきたのか、ネイティらしきポケモンが言った。偽物の宝石獣……そんな意味深な言葉を発した以上、さっきの会話を聞いていたのだろう。
「……あんたも、持ってるんだな?」
あくまでクールにコハクがネイティに言う。持ってる…つまり、このネイティもジュエルモンスターとコハクは言っているが……。
「……そうね…確かに、持っているけど…それがどうか?ちなみに私はヒスイ。5月のヒスイ…。」
掴もうとすればするほど掴めない…そんな雰囲気のポケモンだ。消え入るような話しぶりが、その雰囲気をいっそうかき立てている。
「5月………?それって、どういうことなんや?」
言葉には出さなかった。しかし、ラピスラズリ、オパール、クリソベリルも同じ疑問を抱いていた。
「そうね……1年。あなた方が旅立って1年も経てば、その時には分かっていると思うわ……。」
「1年ってえと…まさか、暦に関係あるアレか?」
サファイアがヒスイに尋ねる。
「……多分。」
ヒスイ…相変わらず最小限のことしか語ろうとはしない。
「………あんた…なによ!この嘘吐き!本物はこのあたしなんだから!!」
さっきのペルシアンだ。コハクに怒鳴り散らしている…。
「……なら、決着つけるか?」
「……望むところよ!」
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アビシニアン #18☆2003.10/29(水)15:21
第18話 イミテーション・ジュエル

「なんか、スゴいことになってんなぁ…。」
サファイアが誰にともなく言った。コハクとペルシアンの周りには結界があるように、誰も近づかない。いや、近づける状況ではない。2匹のペルシアンが尾を上げ、睨み合う。永遠にも感じられる時間が、8匹のポケモン達の間を過ぎていった。
緊迫した重い空気の中で、コハクが先手を取った。突然コハクの姿が見えなくなる。と、思いきや、いつの間にかペルシアンの後ろに回っている。ペルシアンが振り向いた瞬間……
「よっしゃあ!『だましうち』が決まったでぇ!!」
ラズベリルが興奮気味に実況する。
「くっ……好きにさせない!」
ペルシアンの「かみつく」攻撃をひらりとかわす。どう見てもコハクのほうが優勢だ。1分…5分……時間が経てば経つほどに、2匹の差は開いていく。まだ余裕の表情のコハクと、疲れを見せているペルシアン。
「どうよ……思い知ったか!!」
コハクが叫ぶ。その声は、シーンとした空気を矢のように貫いた。そして……パタンという軽い音とともに、ペルシアンは倒れた。
「いくら強くても、しょせん彼女はニセモノ…どんな精巧な作り物でも、本物と並べれば嫌でもアラが目立ってくる…」
ヒスイがあの独特な口調で呟いた。その瞳は、ある一点を見つめていた。
「あ、そうだ。カプセルの装置…どうする?」
オパールも気づいたようだ。あのカプセルの装置。
「決まってるだろ、電源が分かんないんだから……」
コハクが5匹の方を振り向く。ラズベリルがまさか…と言いたげな顔で言った。
「ま、まさか……ぶっ壊す…とか…?」
「そう!いいカンしてるじゃん。さあ、作業開始!!」

装置に向かい、各々が技をかける。
「ガーネットテイル!!」
クリソベリルとラズベリルの、合計7本の尻尾が、紅く光って装置を打った。
「エメラルドアロー!!」
ヒスイの目の前から、鮮やかな緑色の光が矢となって飛ぶ。
「オパールハリケーン!!」
オパールのジュエルから、多彩色の光が飛び出し、嵐となって装置にぶつかっていく。
「トパーズシールド!!」
黄色く輝く壁が、コハクの正面にある装置めがけて飛んだ。
「よっしゃ、もーちょい!!ラピやん、頼むでぇ!」
「OK…ホーリィラピスラズリ!!」
瑠璃色の光の塊が、装置を包み込んだ。光の塊はものすごい早さで膨らんでいく。そして……
光が消えた時には、装置は崩れていた。配線はちぎられ、本体はバラバラになっている。

「……なぁ、あいつらはどこへ行ったか…知らない?」
オパールがサファイアに問う。
「さぁ……あっ、確かアズサ諸島に向かうって言ってた……。」
7匹は顔を見合わせ、
「行こう!そのアズサ諸島へ!!」

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アビシニアン #19★2003.10/31(金)21:10
第19話 刃と爪

モンスターズ一行(ラピスラズリ・オパール・ラズベリル・クリソベリル・サファイア・コハク・ヒスイ)は、今リスタルシティ…「清い泉と水ポケモンの町」。どうやらちょっと休憩中のよう……。
「ふえーっ、疲れたぁ!もう喉がカラカラだよぉ。ねぇ、そう思わない?」
「何言ってるんだ?まだキララの隣町だろ…。」
オパールのボヤキに、サファイアがすかさずツッコミを入れる。
「そうそう。アズサ諸島まであとどの位あると思ってるとね?ここからずっと海沿いの道を行って…海を越えてやっとアズサ諸島の『アスカ島』なんよぉ?」
「せやって。アズサ諸島には他にも『アズサ本島』とか『ショウトウ島』もあるし…あいつらがどの島におるかも分かれへんのやで?」
クリソベリルとラズベリルも次々に言う。
「あーっ、もう!みんなうるさいよぉっ!」
そんな一行の漫才を、冷たく鋭い瞳で「何か」が見つめている。一行は、それには全く気づかずに…のんきに観光客から「シロガネ山の銘水」などもらって喜んでいる。
突然、ラピスラズリがこんな事を言いだした。
「ねぇ、思ったんだけど…なんで急にあんな技が使えたんだろ?僕等。」
「さあ…なんか、直感?みたいなさぁ…。」
「あっ、それワイも!なんかもうこれ急に頭の中に浮かんでさぁ!」
2匹が口々に言う中、クリソベリルがこんな発言。
「へーえ、あんたにそんな事が思い浮かぶオツムがあったとはねーぇ。」
これは、どう考えてもラズベリルに対するイヤミだ。
「あーっ、なんやソレ!ワイのことバカにしてるやろう!」
「えっ、今まで気づいてなかったと!?ホントにおバカだったとねぇー……きゃっ!!?」
クリソベリルの体が、一瞬にして宙に浮き、どこかへ消えた。
「うわっ!?」
同様に、オパールも突然見えなくなる。
「一体…どうなってんだ!?」
サファイアが辺りを見回すが、何も見あたらない。人気の無くなった広場に、5匹が立ちつくしていると…
「お前達の仲間は今、『未知』の世界に送った。仲間を救いたくば、要求におとなしく従え!」
「み…未知やて!?」
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アビシニアン #20☆2003.11/05(水)15:26
第20話 未知の世界へと…。

「で、要求ってなにさ?」
黒い霧に包まれた相手に向かい、コハクが大声で尋ねる。
「要求?…もちろん、その珠玉をよこしな。そうすれば仲間に会わせてやる、無傷でだ。」
相手は冷ややかに言った。霧に包まれたそれは、姿こそ見えないが…霧の中でほくそ笑んでいるんじゃないかと思えた。
「珠玉……そんな、これは僕等の大切なっ…。」
「ほぅ。では…仲間とは永遠におさらばだな。会えるとしても…それはあの世だな。」
「く……。」
「ジュエル」が無ければ、技の威力が出せない。それに、各々が装置の破壊に使った技も使えなくなる…しかし、オパールとクリソベリルに会うなら、ジュエルをよこせと敵は言っている……。
「……わかった。」
サファイアが、一番に蒼い宝玉を手前に置いた。
「…そうやな、今はアイツらに会って、こっちに連れ戻すことが先決や。」
ラズベリルも、共有で持ち歩いていた朱色の玉を差し出す。続いて、ラピスラズリ、コハク、ヒスイも次々に「ジュエル」を自分の前に置いた。
「そう……それでいいのだ……」
何だか、「敵」の声が遠くの方で聞こえるような気がする。
「今から、お前達も『未知』の世界へと送る……。」
声はますます遠のいていく。声と一緒に、5匹の意識もどこかへ遠のいて……………………

「……ここが…未知?」
ヒスイが辺りを見回す。コハクも同じように顔を右に向け、左に向けている。
「おーいっ、オマエら起きろーっ!」
サファイアがラズベリルとラピスラズリの上で怒鳴った。
「んー…ここが…未知?」
「…ラズベリル……それ、もう私がとっくに言ってるわよ?」
「そんなことより…2人は?」
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アビシニアン #21☆2003.11/07(金)18:22
第21話 未知の正体

……5匹は、奥へ奥へと進んでいく。静かすぎる「未知」の中を。
「なんか…未知って言うよりはどっかのさびれた町工場の倉庫って感じねぇ。」
ヒスイがサファイアの頭の上を飛びながら話しかける。
「せやなぁ。案外、そうだったりして。」
奥へ…左へ……今度は右へ。そして…
「……オパール?」
2匹は、一番奥まった所にいた。目が赤く光っている…
「ねぇ、どうしたの…うわぁっ!!」
2匹は無言だった。そして、オパールは無言のままで、無二の親友であったラピスラズリに「すてみタックル」を食らわせた。迷いが全くない。
「ど…どないしてん!?」
「…こいつら、操られてるっ!!」
サファイアがそんな事に気づいた。
「あっ、アイツ!」
ラズベリルが見つけたのは…目を真っ赤に光らせてうずくまる、一匹のエーフィだった。
「ひょっとしたら…ネコにこばんっ!」
小判が辺りに散らばり、エーフィに当たる。3匹の目が一瞬だけ元の色に戻ったように見えた。
「そ、そっか!だいもんじっ!」
「ねんりきっ!!」
ラズベリルとヒスイも、次々と技を繰り出す。「ねんりき」が放たれた直後に、エーフィが立ち上がった。そして…
「うわあああ!?」
無数の星形の光が、5匹めがけて飛んでくる。
「くっ、かまいたち!」
サファイアの周りで、空気が渦を巻き始める。
「ジュエルストーム!」
瑠璃色の光が、エーフィめがけて降り注ぐ。いつもよりも、その光は淡く、弱かった。
エーフィがもう一度「スピードスター」を撃とうとした矢先に、サファイアの「かまいたち」がヒット!……エーフィは、その場に倒れた。
「あれ…?ラピス?なんでボク達こんな所に?」
「……覚えてないの?」
2匹は、元に戻ったようだ。そして…
「そうだ、あれ…」
7匹は目を合わせ、うなずき合った。
「ジュエルウィンド!」
光の風が、エーフィの体を包み込む。朱色の光がある。緑色の風も吹く。青い光、多彩色の光、瑠璃色の光…風が止んだ。
「ん……っ。」
エーフィが目を覚ましたようだ。
「あ、えーっと……。」
オパールが話を切り出そうとする。しかし、何と呼べばいいのか?
「あ、僕はアージュっていいます。さっきの事はよく覚えてないけど…。」
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アビシニアン #22☆2003.11/08(土)17:42
第22話 また増えてっ!

「覚えてないってぇ事は…やっぱし『さいみんじゅつ』で操られてたって説が有力だよな…。」
あれから倉庫(?)を抜け出した7匹+1匹は、広場の片隅で推理ショーを繰り広げていた。
「でも、倉庫(?)に送ったのは『サイコキネシス』なんやろ?さいみんじゅつとサイコキネシスの両方を覚えられるポケモンといえば……スリーパー?」
ラズベリルの推理に、コハクが突っ込む。
「じゃあ、黒い霧は?スリーパーは覚えないじゃんよ。」
「い・・いや、例えばさ、生体実験…とかさぁ。」
「……あのさぁ、こういうのはどう?敵は1匹じゃなくて、2匹だった。で、『くろいきり』が使えるポケモン…例えばクロバットとするね。クロバットが『くろいきり』で自分たちの姿を隠す。それから、ボクとクリソベリルをスリーパーが『サイコキネシス』であそこに送って、監禁していたアージュと一緒に『さいみんじゅつ』で操ってた…こんな感じだと思うな。」
パチパチ…と、拍手が…そんなにわかなかった。
「どうだったんですか?アージュさん。」
ラピスラズリがアージュに直接聞いてみる。
「…んー、監禁されてはなかった。いきなり『サイコキネシス』であそこに飛ばされて…その後の記憶がないんだ…。」
「じゃあ、ボクの推理ってほとんど当たってたんじゃないの!?ねぇ、ねぇ!!」
オパールは自分の推理に興奮している。
「…『ほとんど』、ね。」
「……ヒスイ…酷い。」
いつの間にか太陽が西に沈み、東…メノウ山脈とメノウシティの方から、三日月が昇ってきている。
「……じゃあ、もう今日は寝る?」
「せやなぁ、ラピやん。そうしよっか♪」
「あっ、それならちょうどいい場所を知っているけれど…皆行く?」
全員異議なしで、アージュについていった。アージュは広場を出て、メノウシティへ向かう道路のすぐそばの泉の所に7匹を連れて行った。泉の傍に、一本の樫の木が生えていた。ちょうど落ち葉が積もり、横になると気持ちいい。いつしか、空には無数の星が輝いていた。
………おやすみ。…………
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アビシニアン #23☆2003.11/09(日)19:35
第23話 おはよう

翌朝……
「ふわぁ〜、おはよ〜。」
一行のうちの1匹が、欠伸まじりに言う。太陽はまだ東の空からほんの少し顔を出しているだけ。
「んあ、おはよー、クリソベリル。」
すでに起きていたコハクが返事する。コハクの右半身はぐっしょり濡れていた。夜露で湿った落ち葉の上に、寝返りを打っていたからだった。
数分後、他のポケモン達も次々に起きてきた。枝の上で寝ていたヒスイを除いた全員がコハクと同じような状況になっていた。その間にも、太陽は昇っていく。
「……腹減ったねぇ。」
オパールがぼそっと言った。
「そういえば、あたしも〜…。」
「あ、ワイもワイも!」
「ねぇねぇアージュ、この辺に食べ物ない?」
オパールが瞳をキラキラさせてアージュに聞いた。
「作者によると、これはイーブイ必殺『アイフルビーム』とか言うらしいぜ(ウソ、Byサファイア)」
「…食べ物?…周り見てから言ってくれないかなぁ……。」
アージュが困ったように答える。辺りを見回してみると、色とりどりの「きのみ」がなっている。小さなピンクの実。固い固い青色の実。
「あっ、これなんかうまかとよ〜vいっぺん食べてみぃな。」
かじられたような形の木の実を口いっぱい頬張りながら、クリソベリルが仲間にすすめる。
「おえっ。もぉ〜、これのどこがおいしいっていうのさぁ!それよかこっちの方がボクは好きだよ?」
さっきクリソベリルが差し出した木の実を吐き出しながら、オパールが言う。彼は、梨のような木の実を抱えている。
「何々、『ポケモンの好きな味は、「せいかく」によって違う』か。じゃあ、2人の好みが合わないのは性格が違うからなんだろね。ちなみに僕はこいつが好きだけどね。」
なんかの攻略本を開き、アージュが分析する。(何故本が読めるのかは不明)アージュが好きだと言った木の実は、桃色で勾玉の形をしていた。
そんな時、別の場所では……1匹のハクリューが、雲にも達する高さの空を飛行していた。
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アビシニアン #24☆2003.11/11(火)20:46
第24話 困ったお子ちゃま

ボ…ゥ…
汽笛が聞こえる。サフィア港から船が出航するのだろう。ここは、「青の都」サフィアシティ…白い砂浜と、各地から輸入される珍しい品物のために、夏休みには人が殺到する。しかし、夏が過ぎれば静かな港町だ。
「聞ぃこぉ〜える〜♪遠い海の歌がぁ〜♪」
「海のう〜たがぁ〜♪」
「なに歌ってんだよ…?」
いつも通り、あきれたような顔でサファイアが突っ込む。
「あ?ああ、これ?作者が5年の時に学芸会で歌ったんやってよ。なぁ、クリソベリル?」
ラズベリルがなぜそんな歌を知っているのかは不明。しかし、ソプラノのクリソベリルとアルトのラズベリルのの声はまったくハモっていない。(幼なじみなのに…)
「…どうやって船に乗るか、考えてるよねぇ…?」
サファイアに次ぐツッコミ役・アージュが後ろを歩くモンスターズに聞いた。
「へっ?考えて…へんわぁ。」
「考えてないー。」
いつものボケ役ことラズベリルとオパールが即座に答える。
「はぁ…。」×2
「なぁ、こういうのはどうだ?港にはトレーナーがいるだろ?そいつのポケモンのフリして、2人くらいずつの班に分かれて船に乗り込む。で、甲板に出て合流。どう?」
コハクが提案してみた。
「おお、ないすあいでぃあ!いいねソレ〜!どうしてそんなコト思いつくの?」
「あたいが昔、カントーを捨てたときに使った。」
「へぇ〜、コハクってカントー出身なんだ。で、どんな所だったの?」
ラピスラズリが切り出した。話題はいつの間にか各々の出身地に変わっていた。そして、港にはトレーナーらしき少女が2人立っていた。
「きゃぁ〜っ、見て見てこのコ達ぃ〜!」
「ホントだぁ〜、ちょー可愛い〜!」
「ねぇねぇ、あたし達はまだ9歳だからトレーナーじゃないけど、ポケモン連れててもいいよね?」
「えっ…。」×8
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アビシニアン #25☆2003.11/12(水)15:32
第25話 続・困ったお子ちゃま

「トレーナーじゃないって言ってるけど…どーする?」
女の子×2に気づかれないよう、ひそひそとオパールが周りの7匹に問うた。
「まぁ、船に乗るんならいいっしょ。」
…甘かった。クリソベリルの考えたように、船には乗ろうとしているものの…
「じゃあー、アタシこのエーフィちゃんがいいー!」
ピンクのワンピースに、セミロングの茶色の髪をした少女が、アージュの腹をぐいっと持ち上げて言った。
「…僕は一応♂なんだけどなぁ。」
と、アージュがぼやいても、人間である彼女には「ふぃ…」としか聞こえていない。
「あーっ、モモったらまたアタシより先にいいのを取っちゃうんだー!じゃあアタシはこのロコンちゃんが好きー!」
白いブラウスに水色のスカート、ツインテールの少女が逃げようとするクリソベリルを押さえつけて言う。
「ねっねっ、あとのコ達どーする?」
モモと呼ばれた少女が、もう1人に向かってモンスターズを指さしながら聞いた。
「うーん、イーブイちゃんは可愛いけど、他のコはなぁ…」
(なにっ…!?)×5
「まあいいや。早く船に乗ろう!アスカ島でピクシィピンクの服見に行くって約束したじゃん!ほらほら、リツ!」
ちなみに、ピクシィピンクとは、この地方のエンジェ○ブ○ーみたいなモンである。昔から商業が盛んだったアスカ島では、こういったブランド物の服も安く手に入るので、彼女らも自分のオコヅカイで服を買える「アスカラブリーショッピングマート」に行こうとしているようだ。
「おいっ、どーする!?もう船出るぞ!?」
「…どーするって、そりゃ船に乗り込むっきゃないでしょ…!サファイア。」
ボ…ゥ。
「うわっ!ヤバ、乗るでぇーっ!」
ドタドタドタ…。
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アビシニアン #26☆2003.11/15(土)19:07
第26話 アズサ航路の盗っ人もどき

舳先が波を切り裂く。サフィアーアスカーアズサ間を行き来する小型連絡船、「あずさシャインシップ」は、アスカ港目指して突き進んでいた。
「腹へったなぁ。もう昼やでぇ?」
甲板で潮風を受けながら、ラズベリルが振り向く。ちなみに、乗客達は、ほとんどがテラスへ移動してしまい、テラスの反対側のここには、人など全くいない状態だ。
「そう言やぁそうだな。食糧倉庫にでも潜入する?」
今やオパールとラズベリルのツッコミ係と言われる(←いつ、どこで、誰がそんな事言った!?)サファイアが、とてつもなく過激な意見。
「食糧倉庫なら、たぶん調理室の近くだな…。行くか!」
コハクは異議なしのようだ。そして、彼らの頭からは、あの2匹のことなどはきれいさっぱり消え失せていた。(酷)

「オレは毎日タマネギの皮むきだ〜…」
おっさんの泣き声に混じって、何かを油を使って揚げている音が聞こえてくる。
「今日のメインディッシュはぁ〜白身魚のっ♪フ・ラ・イ〜♪」
ついでに、音程の破壊された歌声も聞こえてきた。…それは置いといて、この調理室と思われる扉の隣に、「目的地」はあった。ギィ…扉が微かに軋む。巨大な棚がそびえ立っている…(?)冷たい空気が流れ出してくる…
「うわぁーっ、すっごい!」×2
「うっひょ〜、こりゃ天国やでぇ〜!!」
天井からは、サラミやハム、タマネギやら香草やらが吊り下げられている。棚の中にはありとあらゆる肉、魚。片隅にある箱の中には、なぜか色とりどりの「きのみ」に混じって、赤や青、灰色や空色のポロックまである。
「……ねぇ、誰か来たみたいよ?」
ヒスイが言い終わらないうちに、扉が動いた。6匹はあわてて棚の奥に隠れようと飛び込んだ…が、甘かった。
ドンガラガッシャーン…!!!棚がひっくり返る。
「〜〜〜〜!」
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アビシニアン #27★2003.11/17(月)17:10
第27話 逃走劇

「ポ、ポルターガイスト!?大変だっ、みなさんに知らせなくては!!」
…扉を開けたコックらしき人物は、隣の調理室へと走っていった。目と鼻の先にある調理室へ、わざわざ走って…
「…こうしちゃいられないっ、今のうちに逃げよう!」
「食い物は!?」
ラピスラズリが号令をかけ、ラズベリルが食い物を気にする。
「んなモン持てるだけ持って逃げろ!」
ツッコミ係が定着してしまった哀れな(?)サファイアが怒鳴る。
「ここここっちですよぉ!」
人の声が近づいてくる。
「ひょえ〜……、行くぞっ、全速力!!」
オパールが言った次の瞬間。ドドドドドドド……5秒後、6匹の姿は跡形もなく消え去り、残されたのはあっけにとられた人間と、1個の「ナナシのみ」だった。
「? ? 」

ふたたび甲板
「…結局収穫はこんだけかぁ。足りないよぉ…。」
6匹の収穫物…オパールはハーブ1束。ラピスラズリはタマネギ3個。サファイアは牛と思われる肉の小片1塊。ヒスイは赤、青、黄色のポロックが1つずつ。コハクはスルメ1枚。ラズベリルはハム1個。昼食は、泣いても笑っても6匹がかりで盗んだこれだけのようだ。
「とほほ。(泣)」×6

次回はアージュとクリソベリル出します。多分。短くてえろうすいません。
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アビシニアン #28★2003.11/22(土)13:18
第28話 そのころ

その頃、6匹に忘れられたとは知らない哀れなアージュとクリソベリルは、テラスのカフェテリアの隅っこにいた。もちろん、困ったお子ちゃまことモモとリツの2人組みの仕業だ。

「ねぇねぇ、もうお昼だしぃ、何か食べなーい?」
「もう、リツはそうやって食い意地張ってるから太るのよ。」
船に乗り込み、いち早くテラスに移動した2人は、ずっと喋り通していた。そのうち、小腹が空いてくる。で、こうなってくるわけだ。
「まぁいいじゃん。カフェテリアなら大してお金取られないしさっ、腹ごしらえ腹ごしらえ♪」
(…なんであたしはここにいるん?)
(……知らん。それよか、気分わりぃ…。)
「あっ、おにーさん!あたし、ミルクティーとモンブラン、それに卵サンドと苺パフェね!」
威勢のいいリツの声が響く。
「だから太るんだってばぁ。あたしはクリームソーダとチョコレートケーキねっv」

…そして現在に至る。
「う゛う゛う゛う゛う゛…だりぃ〜…」
モモに揺さぶられ、ますます船酔いに苦しむアージュ。そんなことは気にせず「かっわいい〜!」を連発するモモ。
「どう思う?ロコンちゃん。」
「こぉん(どう見てもポケモン虐待ったい。)」
と、その時。
「て、てぇへんだてぇへんだてぇへんだぁぁ!」
「平行四辺形の面積を求める公式は底辺×高さ。」
コックの1人が駆け込んでくる。それにボケで答えるカフェテリアのアニキ。(わけが分かんなかったらゴメンナサイ)
「ポ、ポルターガイストだっ!ひっくりが突然棚返って…」
「逆だ、逆。」
コックはかなり慌てているらしく、アニキに突っ込まれる始末。ちなみに、アニキとは書いたけど、決してヤ○ザみたいな人ではなく、赤いエプロン付けたただの金髪兄ちゃんである。
(…もしかして、あのおバカのラズベリルの仕業っとね?)
(…………。)
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ぴくの〜ほかんこ