ぴくの〜ほかんこ

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[484] 冒険のはじまりだ!!・2〜天空のかなた〜

ハルカ♪ #1☆2004.09/13(月)19:06
第34話    ☆★ミッシュタウン到着★☆


カナ 「アブル、そっちの状況はどう?」
アブル「別に何もないよ〜。」
        カナという少女とアブルというアブソルが、小型マイクを使って何かを話している。
カナ 「ちなみに、東エリアは終わったからね。」
アブル「こっちも北エリアは終わったよ〜!それにしても、このマイクを持ってくるなんて、カナもスゴイね。」
        アブルは自分の首に下げているマイクを見ながら言った。
カナ 「本当は父さんの勝手に盗んできちゃったんだけどね。机の上にちょうど2つあったからさ。」
アブル「カナの悪知恵!!」
カナ 「お世辞はいいよ。それじゃああたしは、南エリアね。アブルは西エリアお願い!」
アブル「(お世辞じゃないんだけど…)わかった。じゃあね。」
        そうして通信は切れた。マイクを見ながら、カナは独り言を言った。
カナ 「絶対にピィを助けるんだから…!」

        カナはココロ村出身トレーナー。アブルは人間の言葉を喋れるアブソル。2人は不思議なポケモン・ピィを捕まえたエメル団を探すため、今この街に来ている。

アブル「さてと、西エリアに行かなくちゃね。」
        アブルはそう呟くと、素早いスピードとジャンプで、あっという間にその場からいなくなった。
アブル「西エリアって、洞窟が多いんだっけ?なんか手掛かりがつかめるかもな。それより、カナはいったいどういう神経してるんだ?」
        アブルが小さくため息をついた時、西エリアに到着した。そこには人っ子一人いない、静かな場所だ。その代わり、洞窟が何十、何百とある。
アブル「これ1つずつ探していくのか?面倒くさいなぁ〜。」
        そう呟くと、アブルはその場から動かなくなった。耳を立て、周りに空気を鼻で感じ取る。ポケモンならではの探し方だ。しばらくして、片方の耳がピクッと動いた。
アブル「あっちだな。何か怪しい…。」
        アブルは100メートルぐらい離れている小さな洞窟を睨んだ。
アブル「地下があるようだし、なにかの音が聞こえる。カナに一応連絡しておくか。」
        そうして、小型マイクのスイッチを入れ、カナに連絡しだした。
アブル「カナ?なんか怪しい洞窟を見つけたんだけど……」

――そのころエメル団は
エイ 「やっと空の天気がおかしくなったみたいね。よかったわ〜!ね、エメルさん!」
エメル「何よ!私を騙して!いい加減にしなさいよ!」
        エメルはかんかんに怒っている。
エイ 「まあ、そう焦らないで〜。先は長いんだから。」
        エイがエメルを立ち直させようとした時だ。
したっぱ「エイ様大変です!この地域内に例のアブソルが忍び込んできました。」
エイ 「どこら辺かわかるかしら?」
したっぱ「それが…はっきりした場所が分からないんです。」
エイ 「どういうこと?…すぐに行くわ。エメルさ〜ん、少しお留守番にしといて〜!!」
        そういい残すと、エイはしたっぱと一緒に奥に移動した。
エメル「やっぱり、アブルがこの付近にいるんだわ。なんとかして、この場所を当ててもらわなくちゃ!」
        そうして、エメルは目をつぶりだした。物音ひとつも立てず何かを考えている。いったいどんな行動に出るのだろうか…?


カナ 「わかった。あたしもそこに行くから、アブルは先に行ってて!」
アブル「ええ?場所なんて分かるの?」
カナ 「もちろん。このマイクには、相手がどこにいるかも調べられるんだから。」
        カナは自慢げに言った。
アブル「了解♪じゃあお先に失礼!」
         通信が切れると、カナは西の方角を向いた。
カナ 「(ピィ、待っててね…)」
        そうして、引きつけられたの用に、カナは走り出した。このあと、とんでもないことがおきるのも知らずに…。

つづく――
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ハルカ♪ #2★2004.09/15(水)15:17
第35話    ☆★エメル団の基地に侵入・その1★☆


         アブルは今、小さな洞窟の近くにいる。見たところ、人が10人ぐらいしか入れない広さだ。でも地下に続いていることが分かった。
アブル「この洞窟からピィの光が感じる。間違えない、ここがエメル団の基地だ。」
         アブルはそう呟いた。あの時、エメルがやっていたことは、アブルにこの居場所を気づかせるため。ほんの少ししか感じられない所を、半径200メートル以内なら感じられるように力を入れたのだった。
アブル「(それよりカナは遅いな〜。おいらだけでもいいから先に入ってようかな?)」
         そう考えていると、後ろの方から誰かの息切れが聞こえてきた。だんだん近くなってくる…。
カナ 「ゴメンゴメン!通れない道とか…たくさん…あってなかなか…来れなかったんだ…はぁはぁ…。」
         カナは息をたくさん吸い、そして吐いた。普通の呼吸では酸素が足りないくらい、休まず来たらしい。
アブル「そんなむちゃなことしないでよ。」
カナ 「ピィのためだもん…少しでも早く着きたかったからさ…」
アブル「カナの気持ちよく分かったよ。でもさ…カナ!しゃがんで!」
         アブルは急に顔つきが変わった。どうやら、エメル団員が本格的な行動に入ったらしい。そして今、カナ達のことを探している。もちろん、エイも一緒だった。
アブル「しばらく息止められる?」
カナ 「うん。だいぶ落ち着いてきたし。」
         2人の会話はそこで終わった。奴らの足音が近くなったり遠ざかったりの連続だ。近づいてくるたびに2人は体を寄せ合った。
したっぱ「エイ様。やっぱりこの機械が壊れているのでしょうか?」
エイ 「違うと思うわ。何か機械を持ってるんじゃないかしら?電波同士がぶつかって、ちゃんとした位置が示せないと思うわ。」
したっぱ「さすがエイ様。」
エイ 「入り口付近を固めておくわ。それと、何時来ても大丈夫なようにしといてちょうだ〜い。」
したっぱ「了解しました。」
         そして、エイとしたっぱは洞窟の中へと消えていった。完全にいなくなると、カナ達は岩の影からから出てきた。
カナ 「な〜るほど。このマイクが電波の邪魔だったんだ。なかなかやる〜!」
アブル「カナ、喜んでいる場合じゃないよ。入り口がしたっぱだらけになっちゃうよ!」
カナ 「大丈夫!連絡を言う時間もかかるし、今入ればほとんどはクリアできると思う。行くよっ!」
         カナは洞窟に向けて一直線で走った。
アブル「まったく、自分勝手なんだから〜。」
         アブルも後から追いかけた。そしてギリギリ洞窟の中に入れた。まだしたっぱ達がいない。
カナ 「ラッキー!さてと、ますはエメルを見つけなくちゃ!アブル、場所分かる?」
アブル「ちょっと待ってて。」
         そう言うと、アブルは目を閉じ、耳をよく澄ませてエメルの場所を感じ取ろうとした。
アブル「……あっちだよ!地下に閉じ込められてるみたいだよ。」
         アブルは黒い刃で場所を示した。
カナ 「ありがと。早速行くよ!」
アブル「アイアイサ〜!」
         そうして、2人は壁で姿を隠しながら、アブルが指し示す方向へ急いだ。コーナーを何回か曲がった時、誰かの足音が近づいてくるのを感じ取った。
アブル「ヤバイよ!カナ、どうする?」
カナ 「どうするったって…」
したっぱ「ああ!小娘とアブソルだ!!」
         見回りに来ていた背の高いしたっぱ団員が、2人を見つけた。
カナ 「あ〜らら。見つかっちゃった。」
アブル「どうするの?」
カナ 「戦うしかないでしょう。アブル、お願い。」
アブル「わかった!」
         アブルが返事と同時に、相手もポケモンを繰り出してきた。
したっぱ「いっけ〜!ヤドラン!」
ヤドラン「ヤド…?」
         普通よりも一回り大きいヤドランが、アブルの目の前に立つ。
カナ 「アブル、でんげきは!」
アブル「ア〜ブル〜!!」
         稲妻の形をした電気が、ヤドランを襲う。
ヤドラン「ヤ…ド…」
したっぱ「ヤドラン!…ちっ!エイ様に言ってやる!!」
         したっぱは急いでポケモンを戻すと、左に曲がっていった。
カナ 「アブル、追うよ!」
アブル「OK!」
 彼らは急いでしたっぱのことを追いかけた。
したっぱ「卑怯だぞ!お前ら!」
カナ 「何よ!負けて逃げるなんて、あなたの方が卑怯だよ!」
アブル「ある意味同感〜。」
したっぱ「くっ!」
         したっぱは、次の角を右に曲がった。カナ達も彼の後を追った。しかし、あのしたっぱの姿はどこにもなかった。見えるのは、目の前にある壁だけだ。
カナ 「なんか、仕掛けがあるんじゃない?エレベーターとか。」
アブル「うん、ありえるかもね。」
        2人は壁を触りながら、どこかに繋がる抜け道を探した。
カナ 「……ああ!」
         カナがいきなり大声を上げた。アブルはビックリして飛び上がった。
アブル「なんだよ!脅かさないでよ!」
カナ 「あったよ!たぶんここじゃない?」
        カナはこの壁を目で知らせた。
アブル「わかった。」
         アブルは返事をすると、その壁に飛び込んだ。カナも続けて飛び込んだ。

つづく――
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ハルカ♪ #3☆2004.09/18(土)18:04
第36話    ☆★エメル団の基地に侵入・その2★☆


         カナとアブル壁に向かって飛び込んだ。その先には、目の前には通り道、そしてその先には、ありの巣みたいに穴がたくさんある。
カナ 「ここにピィがいるの?」
         カナはアブルに聞いた。
アブル「うん。あの一番奥の穴がそうみたい。どうやって行く?先に行くと誰かに見つかりそうだよ。」
         確かにアブルの言うとおりだ。こちらに気づいていないしたっぱ達が、エイの命令に従って監視活動をしている。
カナ 「アブル、『へんしん』とか使えないの?」
アブル「メタモンじゃないんだから。少しはおいらの技の数を理解してよ〜。」
カナ 「はいはい。」

――そのころエイ達は
したっぱ「エイ様大変です!奴らがこの基地に忍び込んできました!」
エイ 「なんですって〜!」
         エイは大声で叫ぶと、机の上においてあった小型センサーを見た。そこにはカナとアブルの場所がはっきりと示されていた。
エイ 「あら、ちゃんと映っているわ。なんでさっきは映らなかったのかしら。」
         首をかしげているエイの様子を、エメルがじっと見ていた。
エメル「(それは、私がアブルに光を送る時に同時に出したエネルギーが、場所を特定できないようにしたの。何電波とか言っちゃってるの!?さっすが私〜!!)」
         エメルは気づかれない程度に笑った。
エイ 「(さては…)エメルさ〜ん。何か黙り込んじゃってますけど、どうかしましたか〜?」
         エイが心配そうにエメルに近づいた。
エメル「な〜んにも!あなた達が出してくれないから、諦めてただけよ!」
エイ 「あらら〜。とても可哀想に…。」
エメル「いいからとっとと開けなさいよ!!」
         いきなりエメルがエイ以上の大声を発したので、周りのしたっぱ達が飛び上がった。
エイ 「(間違えない…やっぱりね…)」
         エイはいったい何を考えたのか。それは誰にも分からなかった。

アブル「カナ!あっちからピィの声が…!」
カナ 「うん。あたしにも聞こえたよ。」
アブル「どうしようか…ここから行ったら見つかるし…。」
         アブルが黙りこくっていると、カナがアブルの背中を叩き、
カナ 「じゃあ、ここはいっぺん走っていこうよ!」
アブル「な、なんで!!?」
カナ 「それしか方法がないんだからね。じゃあ他にどんなのがあるっていうの!」
         カナは真剣な顔つきだった。それがアブルにも分かったのか、静かに頷いた。
カナ 「じゃあ決まりだね!行っくよ〜!」
アブル「1…2…」
         アブルがカナの声を合図に慎重に数え始めた。
カナ・アブル「……3!!」
          そうして2人は一気に奥の部屋へ走った。
したっぱ「あいつらだ!早く捕まえろ!!」
したっぱ「おい!!エイ様に報告を!!」
         順調に走っていた時、突然目の前に敵が立ちふさがる。
カナ 「どうてよ!今急いでるの!!」
セシナ「俺はセシナ。したっぱの中でも一番強いんだぜ!」
         先頭に立っていた男が急に名乗り上げてきた。
カナ 「でもしたっぱでしょ。弱いと思うんだけど…。」
アブル「同感。しかも自己紹介して!っなんて言ってないのに…。」
         2人の意見に、セシナはこけそうになった。
セシナ「ば、馬鹿にしやがって…!!いけ!ペルシア…」
カナ 「お先に失礼します。」
アブル「頑張ってね〜!」
         カナ達は人と人の間の隙間を簡単に通り抜け、いつの間にか一番奥の穴にたどり着いた。
セシナ「こら〜!人の話を聞け〜!」
         残念だったね、セシナ。まっ、次出してあげるからさ。
セシナ「作者!お前のせいだぞ!!責任を取れ!!」

カナ 「見つけたわ!エイ!」
アブル「覚悟しろっ!」
         穴の入り口には、カナとアブルの姿。エイは驚きエメルは嬉しがっている。
エメル「カナ〜!アブル〜!来てくれたのね!!」
         エイの隣には、カプセルに入っているエメルがいた。
カナ 「ええ!?なんであたし達の名前知ってるの…?」
アブル「でも聞き覚えのある口調だな…。」
         そう。この2人は、まだピィがエメルだってことが知らなかったのだ。最後にあったのはピィの姿だったから、2人はエメルのことを別人だと思っている。
エメル「私だよ!ほらピィだよ!ゴメンネ。本当はセレビィなの!名前はエメルよ。」
         カナとアブルは口をぽかんと開けて何も言えない様子だった。
カナ 「ピィ…いいや、エメル!会いたかったよ…。」
アブル「エメル、大丈夫だったか?」
エメル「全然OKだよ!」
         エメルの元気良いポーズを見て、涙目だったカナとアブルが大笑いした。その彼らの姿は、晴れ晴れとしていた。
エイ 「はあ〜い!カナさんとアブルさ〜ん。お久しぶりですこと。元気でなによりだわ〜。」
カナ 「エイ!」
アブル「こいつの存在忘れてたよ…。」
         そうしてエイは、カナ達に向かって歩いてきた。
エイ 「涙の再会はもう終わったようね。いい?ここからが本当のフィナーレよ〜!」
         その顔は不気味な笑いと真剣さが混じっている。何か不吉だ…。
アブル「どういう意味だよ!」
エイ 「こういう意味よ!ユウナ、電波を発信させて。」
ユウナ「了解しました。」
         幹部の1人・ユウナは、机の上にあった小型センサーの電波を、エメルに向けて放った。
エメル「いったい何のつもり?」
エイ 「見れば分かるわ…!!」
         カナはユウナが持っている小型センサーを睨んだ。
カナ 「それ…小型センサーじゃないわね。」
アブル・エメル「ええ!!」
         カナの突然の言葉に、アブルとエメルは心臓が止まるほどビックリした。
アブル「何で分かるの?」
カナ 「だって普通のやつだったら、アンテナがもっと細いし、ボタンだってそんなに大きくないもの。」
         確かに、よく見ると、アンテナは直径4センチぐらいだし、ボタンのサイズも全然違う。
カナ 「まるで、何かの実験をやるような形をしてるね。それは何故?」
         カナはエイの近くまで来た。すると、ユウナは電波を止め、周りにいたしたっぱ達の動きも止まり、最後には機械のスイッチまで止まった。
エメル「何!?すっごい不気味だよ!」
アブル「カナ!!」
         カナはそれでも、エイのことを睨みつけた。そして、エイは口だけ笑い、こう答えた。
エイ 「だってそれは…」

――つづく
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ハルカ♪ #4☆2004.09/21(火)21:33
第37話    ☆★「集」と「散」★☆


エイ 「だってそれは、時を操る道具だからよっ!!」
         エイが言った瞬間、洞窟内は大きな地震に襲われた。上から土や小石が落ちてくる。
カナ 「けほっ!けほっ!すごい・・けほっ!」
アブル「カナ!大丈夫?」
カナ 「うん・・大丈夫・・けほっ!」
         カナが咳き込んでいる中、団員達は忙しそうに動き出した。
したっぱ「もうすぐこの洞窟が崩れるぞ!」
セシナ 「早く逃げろ〜!」
         いつの間にか、洞窟内には人が半分以上がいなくなっていた。アブルは、気を失ったカナを背中に乗せると、
アブル「エメル!早くし…」
エメル「きゃっ!」
         エメルがいるカプセルは、エイの手によって渡ってしまった。
エイ 「もう少ししたら逃がしてあげるから、それまで待っててね〜!」
         エイはエメルに向かって話しかけた。でもその時の微妙な様子は、エメルにしか感じられなかった。
エイ 「それではアブルさん達〜、アディオ〜ス!」
         エイはそう言うと、非常口から逃げた。
エメル「アブル〜!絶対逃げてくるから!絶対にぃ!!」
         エメルの声が反射して聞こえてきた。
アブル「なんなんだ・・そうだ!早くここを出なきゃ!カナが危ないし。」
         そうしてアブルは、全速力で洞窟から逃げ出した。外にでた時には、もエメル団はいなかった。
アブル「カナ!しっかり!!大丈夫?」
         アブルは空気が汚れていない場所に、カナを地面に置いた。
カナ 「うん・・大丈夫・・けほっ!」
アブル「無理しないでよ。カナが汚い空気の中にいちゃダメなことは知ってるんだから。」
カナ 「アブル、覚えててくれたんだ・・けほっ!けほっ!」
         カナは昔から、汚染された空気の中にいると、喘息を起こしてしまう。そのことはアブルにも聞かされていた。
カナ 「でも都会の中は大丈夫、それって変だよね。」
         カナは微笑みながらアブルのことを見た。
アブル「それのことを、エイのところに渡ってなきゃいいけど。」
         そう言うと、黒くて厚い雲に覆われた空を見上げた。
アブル「エメル――大丈夫かな?」

――そのころエメル団は
エメル「もう!放してって言ってるでしょう!」
エイ 「もう少ししたら放してあげますよ。」
          ここは、ミッシュタウンの北に向かった街「グランドシティ」。エメル団は自家用ヘリコプターで移動し、一番見つかりにくいこの街を選んだのだった。
エイ 「ここは世界でも上位に入っている大都会。カナさんたちは見つけてくれるかしら?・・この場所をね!!」
          するとエイは不気味な大声で笑い出した。その様子を見たエメル。
エメル「(この人、こんな人だったっけ?これが、本性…?)」
          エメルはそう思うと、怖くて体を縮めた。本当に、これが本性なのだろうか?

          場所は戻ってミッシュタウン。PCの中で、カナ達はタウンマップを見ている。
カナ 「う〜ん、何処に行ったんだろう?」
アブル「あんまり遠くじゃないと思うんだけどなぁ〜。」
カナ 「アブル、またエメルの光を感じ取れないの?」
アブル「さっきやってみたんだけど、出来なかったよ。うっすらとした光だったけど、何処にいるかは・・」
カナ 「そう。」
          カナは肩をすくめた。アブルもタウンマップを見たまま動かなくなった。その時、
       『臨時ニュースです!』
          いきなり、カウンターの上にあるワイドテレビから、ニュースが流れてきた。
       『さきほど、グランドシティで緑のバンダナをした集団が、街中にいるポケモンを奪っていく事件がありました』
          それを聞いたカナとアブルは、イスから落ちそうになった。2人の目はテレビを釘付けにしている。
       『さっきインタビューをしたAさんは、「なんであんな集団が、この街に来ているの?」などと答えてくれました。それにしても、何故あの集団がこの街に来ているのか・・今入ったニュースです!』
カナ 「もう〜!早く言ってよ〜!」
アブル「何がおきたんだよ〜!」
          カナとアブルは貧乏ゆすりをしながら待っていた。
       『なんとこの集団、街の中にある「時の祠」に入って行ったようです。何故入っていったのかは、ただいまの状況では分かりません。また情報が入ってきたら、お知らせします。以上、臨時ニュースをお伝えしました』
          そうして、テレビ画面は、オーキド博士のポケモン講座に変わった。
カナ 「アブル、聞いた?」
アブル「もうバッチリ!」
カナ 「グランドシティ・・ここから急いでも丸1日はかかるよ。」
          カナはタウンマップを急いで操作し、見ながら答えた。
アブル「それでも別にいいよ。エメルが危ないし、それに、」
カナ 「時間が危ないしね。よし、行こう!」
          カナはタウンマップをリュックの中に放り込むと、アブルの背中を叩いた。
アブル「ええ!?今すぐ?」
カナ 「そうだよ。アブルは急ぎたくないの?」
アブル「行きたいよ。でも、もう夕方だし、暗くなると動ける範囲が絞られるよ。」
          アブルに言われたカナは、窓から空の様子を見た。黒い雲の隙間から、オレンジ色の光が差し込んでいる。
アブル「おいらも昼間だったら行きたいよ。行ったって、すぐに行き止まりになるよ。カナの気持ちも分かるけどさ、熱すぎるのもダメだよ。」
          アブルの言葉にカナは、
カナ 「アブルには、アブルには、私の気持ちが分からないんだよ!暗くなっても行ける所は行ける!進まないよりはマシだよ!」
アブル「カナ!!今日はいろんなことがあったんだから、少しは休息が必要だよ!」
カナ 「そんなのことしてる間に、エメルは悪いことに利用されちゃうんだよ!アブルなら分かるでしょう!?」
          カナは目に涙をたまらせながら、自分気持ちを吐いた。
アブル「カナ!!いい加減にしてよ!!自分勝手すぎるよ!」
カナ 「それはアブルの方だよ!もう知らない!」
          カナはそういい残すと、PCを出て行ってしまった。
アブル「なんだよあの言い方!!」
           アブルは俯いてそう呟いた。

          エメル団の事件。カナとアブルの仲。いったいこの先どうなってしまうのだろうか。

――つづく
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ハルカ♪ #5★2004.09/29(水)19:14
第38話    ☆★別々の夜をすごして…★☆


カナ 「(アブルのバカバカバカ!!どうして私の気持ちが分からないの!?)」
         カナは今、グランドシティへ続く草原を走ってる。日はすでに地平線が紫色に輝いていた。
カナ 「なんかアブルがいないと、微妙だな…」
         カナは、隣の隙間を見ながら呟いた。
カナ 「…な、何考えてるんだろう?アブルはもういいのに…」
          カナは微笑した。でも、心の隅には、アブルの心配している心があるのに、彼女は少ししか気づかなかった。

          時間はゆっくりと過ぎ、外は墨汁で塗ったみたいな空になった。
アブル「はぁ〜。今日1日疲れたな〜。」
          アブルがため息をついていると、後ろからジョーイさんの足音がした。
ジョーイ「あら?あなた、トレーナーのポケモンさん?」
アブル「アブル!」
          アブルは首を振った。ちなみに、アブルはカナ・カナの家族・オーキド博士・エメル団以外だと、野生のポケモンが喋る言葉にする。
ジョーイ「そう…もしかして、捨てられたの?」
          ジョーイの言葉に、アブルの心は痛んだ。
アブル「(本当のことを言うべきか…でも…)」
           アブルはいつしか俯いていた。それを見たジョーイは、
ジョーイ「どうしたの?やっぱり、捨てられたのね。」
アブル「……」
          アブルは答えることが出来なかった。
ジョーイ「困ったわね。あなたは、これからどうしたいの?」
           ジョーイはアブルに問いかけた。でも、返事が返ってこなかった。
ジョーイ「どうしたの?」
          ジョーイは、俯いているアブルの顔を見た。
ジョーイ「疲れて眠っちゃったのかしら。しばらくこの子を預けてみようかしら。」
           そう呟くと、ジョーイはカウンターから毛布を取り出し、アブルに掛けてあげた。そして、カウンターに戻っていった。


カナ 「…はぁ〜〜」
          その頃カナは、歩いている時にあった大きな木の下で、野宿を取ることにした。カナの目の前には、木の枝が規則正しく組まれていた。
カナ 「さてと、火をつけなくちゃね。今夜はいつもより冷えてるし。」
          そうして、カナはマッチ棒を擦って火をつけた。
カナ 「食料は前もって買っておいたから足りるけど、明日ぐらいには切れるかもね。」
          そう言うと、深いため息をついた。
カナ 「それより、エメルはどうしてるんだろう?天候は変わってなかったし、警報は鳴ってなかった。明日の夕方には着くから、それまで事件に巻き込まれてなきゃいいけど。」
          そう言ったカナの目には、焚き火のが映っていた。まるで、何かに萌えているみたいに…

――そのころエメル団は
エイ 「時の祠っていいわね〜。聞いただけで心が安らぐわ〜!!」
           エメル団は、ちょうどヘリコプターから荷物を運び終えたところであった。
セシナ「エイ様、これから何をすればいいのでしょう。」
エイ 「そうね…カナさんとアブルさんが何処にいるかを偵察してきてちょうだ〜い!」
セシナ「はっ!」
           そうして、セシナは数十人のしたっぱを連れて、彼らの様子を探りに行った。
エメル「ちょっと!もういいでしょう!早く出しなさいよ!!」
            エメルがカプセルの中で、エイに向かって叫んでいた。
エイ 「あともう少しの辛抱よ。頑張ってちょうだい!」
エメル「『頑張ってちょうだい!』じゃないわよ!こっちの気持ちも考えてよね!」
           するとエイは、この前とは違う機械に、エメルが入っているカプセルを突っ込んだ。
エメル「痛っ!!ちょ、ちょっと何するのよ!」
           エメルが反発した。すると、不気味なエイの顔がカプセルに近づいてきた。
エイ 「あんたでしょう。カナとアブルの邪魔をしているのは。」
           そうして、エイはこのエリアから去っていった。
エメル「今の…見たことない表情だった。エイってもしかしたら…!」
            エメルは縮こまりながら呻いた。本当に怖かった、この気持ちは誰にも分かるまいっと思いながら。

           時の流れは正常に過ぎていった。やがて空は、藍色に温かい水を注いでいった。

アブル「…ここは…」
           アブルはPCの中で一晩過ごした。
アブル「そうだ。カナと喧嘩して、カナは出て行っちゃったんだっけ。」
            アブルは掛けてあった毛布をソファーの上に置いた。そして、周りの様子を見た。
アブル「きっとジョーイさんだ。毛布を掛けてくれたのは。」
           そうしてアブルは、誰もいないことを確認すると、入り口の自動ドアが開くかどうか確かめた。
アブル「よかった〜開いてて。よし、おいらも出発するか!」
           ドアを開けて、新鮮な空気をたくさん吸い込む。それは新しい1日の始まりを告げる、アブル式体操だ。
アブル「エメル、待ってろよ〜!絶対助け出してやるからな!!」
           アブルは歩いてPCを離れ、ずいぶん経ってから走り出した。

カナ 「はぁ〜!よく寝た〜!」
           カナはたくさんの日差しを受け、焚き火の後始末を始めた。
カナ 「途中、小さな休憩所があるらしいから、そこで最後の食料を食べるか。」
            軽く体操すると、カナはバックを背負った。
カナ 「よ〜し!今日も一日頑張るぞ〜!!」
           地平線まで響きそうな大声で活気を入れた。その心は、アブルの心配も何気に兼ねていた。
          新しい朝、新しい1日。カナとアブルが仲直りになる日は、いったい何時なんだろうか…

――つづく
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ハルカ♪ #6☆2004.10/09(土)18:19
第39話    ☆★Together!!★☆


         グランドシティの、時の祠にいるエメル団。彼らの活動が始まったのは、日が45度に傾き始めた時だった。
エイ 「セシナ〜。昨日はご苦労だったわ〜。」
         エイが、したっぱがたくさんいる部屋に元気よく入ってきた。
セシナ「おはようございます、エイ様。」
エイ 「昨日の様子はどうだったかしら?」
セシナ「…スイマセン。」
         セシナとそれについていったしたっぱ達が、頭を深く下げた。
エイ 「いいのよ。必ずしも現れるわけないんだから。今日も番をヨロシクね。」
セシナ「はっ!承知しました!」
         セシナが元気いい声で返事をした。
ユウナ「エイ様!例の準備が終わりました!」
          その直後、幹部のユウナが部屋に飛び込んできた。
エイ 「わかった。すぐ行くわ。みんな、今日も頑張ってね。」
         それを言い残すと、エイはユウナと一緒に部屋から去っていった。

アブル「…何かの気配だ。」
         今朝PCを出発したアブルは、まだ1km進んでいないところで、立ち止まった。
アブル「エメルが何かに利用されようとしてる…急がなくちゃ!!」
         すると、高いジャンプ力で、岩や太い木を伝いながら急いだ。

カナ 「な〜んか、妙な感じがするのよね〜。」
         カナは立ち止まって周りをよく見渡した。
カナ 「雲が一段と厚くなってるような気がするし、気温が少し低くなってきた…早くグランドシティに行かなくちゃ!」
         そうして地平線にビルが出ているところに向かって走り出した。

アブル「…ああ!!」
         アブルが最後の木を渡り終えたところで、思わず大声を出してしまい、立ち止まってしまった。
アブル「もう、こんな所までいたのか…」
         ちょうどこの木の下を、カナが走って通り過ぎていった。たが、カナはこちらに気づいていない。
アブル「周りに木がない。絶対バレる…」
         アブルは目をつぶり、どうしたらいいか考えるばかりであった。

         一方、アブルがいると知らない木の下を通り過ぎたカナは
カナ 「アブル…遅いな…」
          そんな言葉がカナの口から自然に出ていた。
カナ 「ううん。アブルはもういいの。でも、あんなことで喧嘩になるなんて、何時もよくある事なのに、なんであたし出ていっちゃったんだっけ…」
         そう考えると、自然に足が止まった。
カナ 「ごめんアブル。あたし、わがままだったよね。本当はあたしが行けなかったんだよね…あれ?どうしてそんな言葉を言ってるんだろう。」
          カナは笑顔を作っていた。無理やりではなく、いつもと同じ笑顔。
カナ 「アブル!そこにいるんでしょう?あたしが悪かったよ。こんなあたしを許してくれるなら、出てきて。」
          カナは通りがかった木に呼びかけた。すると、ガサガサっと音がしたと同時に、アブルがゆっくり出てきた。
アブル「カナ、おいら…」
カナ 「ううん。あたしが悪いの。ゴメンネ。」
          カナの目には、ガラスのような涙が浮かんでいた。
アブル「おいらも悪かったよ。少し言い過ぎた。ゴメン…」
           アブルは俯き、カナは涙を拭いた。するとアブルがいきなり、
アブル「はいはい!もうこんな暗いのはお終い!カナったら心配かけないでよね!」
カナ 「なによ!」
          そうして顔見合わせると、お互い笑った。その笑顔はとても温か。2人の未来に幸運をもたらすような、そんな笑顔だった。
カナ 「アブルったら〜!」
アブル「なんだよ〜!カナだって〜!」
          いつまでもそんな空気でいてほしかった。グランドシティがいきなり大きな音を立てて大爆発したからだ。
カナ 「何あれ!!」
アブル「すごい大爆発だよ!」
          黒い煙が上がっている範囲がとても広い。煙は天に向かって長く聳え立っている。
カナ 「何があったんだろう。」
アブル「とにかく行ってみようよ!」
カナ 「うん!」
          カナはアブルの背中に乗ると、アブルは疾風のようなスピードでグランドシティを目指した。

――そのころエメル団は
ユウナ「エイ様、実験が成功しました。」
          ユウナはエイの部屋に飛び込んできた。
エイ 「ご苦労様。これですべてうまくいくはず…!ここの住民はどうしてるかしら?」
ユウナ「右往左往している様です。」
エイ 「ふふふ…これで現れるわよ。このことを他の人にも伝えてちょうだい。」
ユウナ「はっ!」
          そうしてユウナはエイの部屋から出て行った。
エイ 「これで何もかもすべてうまくいくわ!」
セシナ「エイ様!大変です!!」
          セシナが部屋に飛び込んできた。
エイ 「どうしたの?」
セシナ「あの少女とアブソルがこちらに向かってきています!」
エイ 「やっと来たのね…分かったわ。防犯対策は大丈夫なの?」
セシナ「完璧でございます。」
エイ 「分かったわ。監視を続けてちょうだい。」
セシナ「はい!」
          そうしてセシナは部屋から出て行った。エイは不気味な笑顔を浮かべていた。
エイ 「そろそろフィニッシュを迎える、大きな盛り上がりのところのようね。」

アブル「着いた!」
          カナとアブルは、グランドシティに到着したようだ。
カナ 「ありがとう、アブル。」
アブル「別に!」
          カナはアブルから降りると、エメル団が近づいてきた。
セシナ「よう!また会ったな!」
カナ 「何よ…!」
          すると、セシナ先頭でカナに一歩近づいた。
セシナ「ここから先は通さないぜ!」
カナ 「あなたとは話している暇はないの。通して!」
セシナ「言うことを聞かないな…グラエナ!!かげぶんしんだ!」
グラエナ「ぐるるる!!」
          すると、カナ達はたくさんのグラエナに囲まれてしまった。
        グランドシティをピンチから迎えたカナとアブル。無事に時の祠にたどりつけるのか…!

――つづく
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ハルカ♪ #7☆2004.10/12(火)13:48
第40話    ☆★大爆発の正体★☆


セシナ「さあ、どうするかな?」
         グラエナに囲まれてしまったカナ達。
カナ 「アブル、戦える?」
アブル「もっちろん♪最近戦ってないから、体が鈍ってるよ〜。」
         アブルは余裕の顔をしている。
セシナ「余裕なこと言って!グラエナ、かみつくだ!」
カナ 「アブル、でんげきは!」
グラエナ「ぐるる!!」
アブル「アブ〜〜!」
         アブルの「でんげきは」は、1発でグラエナにヒット。
グラエナ「ぐるる…」
セシナ「グラエナ!何で攻撃があたったんだ!?かげぶんしんは回避率を上げる技なのに。」
カナ 「でんげきはは、必ず命中する技なの。これぐらい覚えておいてよね!」
         グラエナは必死に体制を立てようとしている。
カナ 「それより、降参したらどうですか?」
アブル「これ以上やっても、おいら達には勝てないと思う。」
セシナ「くっ!悪口だけ言いやがって!!グラエナ!!」
         セシナが反撃してきた。グラエナはものすごいスピードで、アブルにかみついた。
アブル「アブッ!」
カナ 「アブル!大丈夫?」
アブル「これくらいなら大丈夫!やれるよ!」
カナ 「分かった。」
         アブルは前方にいるグラエナを睨んだ。すると、グラエナの様子がおかしくなった。
セシナ「ど、どういうことだ!?」
カナ 「『にらみつける』よ。相手の防御力を下げることが出来る技。」
         そして、アブルはその場で、自分の周りに風の渦を巻いた。
セシナ「攻撃しないならこっちのもんさ!グラエナ!かみつ…」
カナ 「アブル!かまいたち!!」
アブル「アブ――!」
         アブルは高く飛び上がり、風の刃を放った。その大きさは、普通のより少し大きめだ。
グラエナ「ぐる…る…」
セシナ「グラエナ!!」
         セシナは、ひんしになったグラエナをボールに戻した。
セシナ「こ、このことを、エ、エイ様に報告し、しなければ!!」
          セシナと団員は、あわてて基地に戻っていった。
アブル「カナ、追いかけないの?」
カナ 「ここは都会。どうせ慌てた人達に埋もれて、そのうち見逃すと思うよ。」
         カナはエメル団が走っていった方向を睨んで答えた。
アブル「そういえば…そうだね。」
          アブルも納得したみたいだった。
カナ 「さあ、街で聞き込み調査よ!」

――そのころ時の祠では
エイ 「な、なんですって〜〜!!」
         時の祠では、エイのうるさい声がガンガンと響いている。その様子を、作業中の団員達がちらちら見ている。
エイ 「私は、あなた達のことを信じていたのに…!」
セシナ「申し訳ありま――」
エイ 「おだまり!!」
         エイの声は、一段とうるさくなった。
エイ 「ちゃんと命令に従わなかった者は、一時的に追放します。しばらく頭を冷やしなさい!」
         エイは足音を立てながら時の祠から出て行った。
セシナ「はぁ〜〜。外されるのか〜。」
ユウナ「ふん!少しはいい気になったでしょう!?」
セシナ「なに!?」
         床に座ったまま振り返ると、そこには20人ぐらいの団員を連れているユウナの姿があった。
ユウナ「なにガキに負けてるんだい!やっぱり、あんたもしたっぱだから弱いんだね〜。」
セシナ「お前には関係のないことだ!!」
ユウナ「あら、以前あなたの先輩だったわよ。」
セシナ「今と昔は関係ないことだ!」
         セシナは立ち上がり、ユウナを睨みつけた。
ユウナ「まあ、せいぜい頑張ってちょうだい。ほら、行くよ!」
団員達「はっ!」
         するとユウナ達は、時の祠から出て行った。
セシナ「しばらく暇になるな…お前達はどうする?」
          セシナは当時一緒に行ったしたっぱ達に質問をした。
したっぱ「俺は別に。そこらへんうろついてりゃ時間が来るだろう。」
したっぱ「私も。一時的にでしょう?」
セシナ「そりゃー、そうだけどさ。」
         セシナは俯いた。したっぱ達はまだ話し合いが続いている。
したっぱ「でもさ、基はといえばセシナがあのガキに勝てないパワーがなかったからだよな。」
         セシナはその話に耳を傾けた。
したっぱ「そうそう!セシナが弱いから私達追放されたんじゃん!!」
したっぱ「そうだそうだ!」
したっぱ「あたいは悪くないよ!」
         セシナは怒りの限度を超えていた。したっぱ達は笑ったり、馬鹿にしたり、悪口を言ったり…
セシナ「もういい!」
         すると、セシナはユウナ達やエイと同じく、時の祠を出て行った。

女の人「そうねー…大きな爆発の前に必ず2.3回小さな爆発があるのよ。」
         カナ達はそのころ、街の人に聞き込みをしていた。今は現場からよく見える場所にいた、という女性と話している。
カナ 「それ、本当ですか?」
女の人「30秒前にね。それは確かよ。」
         カナは考え込んだ。何故3回も爆発するのか、どうして小さい音なのか、と。
カナ 「そうですか。」
女の人「あぁ、そうそう!一番最初の爆発が起こってから、空があのようになったのよね〜。」
         女性は天を指しながら言った。
カナ 「分かりました。いろいろとありがとうございました。」
          カナは女性にお礼を言うと、アブルを合図し近くの公園へと向かっていった。
カナ 「小さな爆発…いったい何だろう?」
         カナはベンチに座りながら、アブルに質問をした。
アブル「分からない。エメルの仕業かな?」
カナ 「エメルはカプセルに入れられた状態よ。エイに見張られていて、何も出来ないと思うわ。」
アブル「じゃあいったい…?」
         アブルはわけが分からなくたったようだ。もちろんカナも。
カナ 「ねえ、あの大きな爆発に出た煙って、黒い雲に向かって聳え立っていたわよね?」
アブル「そうだけど。それが何か関係あるの?」
カナ 「思い出してみて!一番最初に質問をした男の人が言ってたじゃない!『近頃時の祠で爆発が多い』って。」
アブル「…ああ!!」
         アブルが大声で叫んだので、周りの人たちから怪しまれた。それに気付かずに、2人の講義は続いている。
カナ 「やっと分かった?」
アブル「分かった分かった!!なんでこんな問題気付かなかったんだろう!!」
カナ 「そう。爆発が多かったのは“空に黒い雲を増やす”ため。」
アブル「そいで、小さな爆発は“大きな爆発を起こす”ための準備に繋がるってことだよね!?」
         アブルは大きくうなずいた。
カナ 「そういうこと♪よく分かったね。」
アブル「2番目に質問した人が言ってたもん!『小さなものは大きなものの前触れに繋がるかもよ』ってね!」
         アブルは物知りそうな顔をして答えた。
カナ 「そして、黒い雲を増やして、時を操るんだわ。その方法は知らないけれどね。」
アブル「これで謎が解決したね。あとは時の祠に忍び込んで、」
カナ 「爆発をとめること。そして青空に戻すこと。」
         2人は顔を見合わせると、ベンチから立ち上がり公園から出ようとした。
男の子「ねえ、さっきあの子のアブソル喋ったよ!」
女の子「私も見たわ!すごいポケモンよね!」
         公園で遊んでいる子供達が、アブルに近寄ってきた。
カナ 「アブル!」
         カナはアブルを睨みつけた。
アブル「だって〜!」
カナ 「はいはい。」
         そうして2人は、急いで公園から抜け出すことが出来た。

カナ 「アブル、こっちの道で合ってるの?」
アブル「たぶん…違うかも。」
カナ 「えぇ〜!?」
         公園を後にして数分後、彼らは大通りで道に迷っていた。
カナ 「だからさっきのところで、右に曲がるって言ったのに!」
アブル「しょうがないじゃん!」
カナ 「どうしようか。」
         カナは360度、周りを見渡した。あちらこちらに高層ビルが並んでいて、住宅街が全然見えない状態でなんにもならない。その時だった。
セシナ「よう!さっきのガキども!」
カナ&アブル「セシナ!!」
         カナとアブルの目の前に、セシナが立っている。ありえない光景だ。
カナ 「何よ!さっきの復讐!?」
アブル「おまえにはおいら達に一生勝てないよ!」
         2人は戦う準備をしている。
セシナ「違うんだよ!ちゃんと俺の話を聞け!」
         怒鳴った言葉で、2人は力が抜けていった。
セシナ「俺は今、エメル団から追放されたんだ!」
カナ 「へっ?」
アブル「はっ?」
         セシナは真剣な顔つきだった。そしてこう言った。
セシナ「俺はもうエメル団をやめる。どうだ?仲間にならないかい?」

――つづく
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ハルカ♪ #8☆2004.10/22(金)21:53
第41話    ☆★エメル団の過去★☆


セシナ「どうだ?仲間にならないかい?」
         セシナの思いもよらない言葉で、カナとアブルは動けなくなった。
カナ 「仲間に…」
アブル「なる…?」
セシナ「そうだ。俺が追放されたのは、団員全員が知っている。信じられないなら、そいつらに聞け。」
         セシナは時の祠がある方角を見た。
カナ 「何よ!そんなのに乗らないわよ!」
アブル「おいら達をエメル団に、入れるつもりなんだろう!!」
         そう言うと、アブルは風の渦を巻かせた。
セシナ「本当に違うって!信じてくれよ!!」
カナ 「残念だけど、その手には乗らないわ!アブル、かまいたち!!」
         その掛け声でアブルはセシナに突進してきた。
アブル「あ…」
セシナ「お願い違うんだよ!!エメル団の目的とか全部話すから!!」
         セシナは手で受け止めようと、手を前に出し目をつぶった状態で話した。不思議なことに、いつまでたってもかまいたちはこない。
セシナ「…なんでこないんだ…」
         セシナは恐る恐る目をゆっくり開けた。そこには、2人とも何も知らないような顔をして立っているではないか。
セシナ「いったい…?」
カナ 「あなたが追放されたってのは信じるわ。」
アブル「だから、エメル団のことすべて、教えてくれない?」

セシナ「昔、エメル団が結成したころだ。その頃も時を操ろうと必死に努力してきた。」
         セシナは真剣な顔で2人に話し始めた。カナ達も真剣な表情だ。
セシナ「第一の目標は、セレビィを捕まえること。ある日、ジョウト地方のウバメの森にある祠には、セレビィが宿っている。という噂が流れてきた。それで俺達は、その現地に行ってみることにした。」
         セシナは一息でいい、息を深く吸ってまた話し出した。
セシナ「そして俺達は偶然会うことが出来た、そのセレビィに。そしてそのセレビィは、たぶんエメルだと思う。」
カナ 「ええ!?」
         カナは思わず声を上げてしまった。アブルは口をぽかんと開けている。
セシナ「けれど、俺達がエメルを利用すると感じたのか、エメルは時渡りで姿を消した。」
アブル「…」
セシナ「それからだ、俺達が本気になったのは。セレビィ探知機を作ったり、時渡りするセレビィのパワーを集めていろんな物を作る計画とか。でも、全部失敗した。」
         セシナは大きくため息をついた。
アブル「どうして?」
セシナ「セレ…エメルが俺達のことを知ってしまった以上、もう姿を現すことは無かった。たぶん世界のどこかで隠れていたと思う。」
         セシナ俯いた。その顔はとても悲しそうな感じがした。
カナ 「話を続けて。」
セシナ「それで俺達は、いつ出てきてもいいように準備をしていた。あそこの洞窟で準備していた。それから半年経ったころだ。クタータウンの時計台でお前達を見つけた。」
         その事を聞いて、カナとアブルは我に返ったような顔をした。
セシナ「教えてくれ、エメルに会ってから今日までの出会いを…」
カナ 「…分かったわ。」
         そうして、カナはすべてのことを話した。
クタータウンに行く途中、ピィの姿で草むらから現れたこと。街に着いたらピィが消えていたこと。時計台でエメル団のことを教えてもらったこと…
セシナ「そうだったのか。」
         セシナは、まるで自分だったかのような感じがこもった言葉を出した。
アブル「エメルが捕まえてからどうしてたの?」
セシナ「それからはエメルを使っての実験や、爆発の準備をしていた。」
カナ 「そうだったの…」
         カナは大きなため息をついた。
アブル「それで爆発をして黒雲を作っていたのか…」
セシナ「その通りだよ。」
         そしてしばらくの間、3人の間に沈黙が流れた。空には厚い黒雲が浮いている。
カナ 「ねえ、あの爆発とめられないかしら?」
          一番最初に沈黙を破ったのがカナだ。
アブル「そうだよ!セシナなら、時の祠や機械に詳しいでしょう?」
セシナ「まあ…そうだけど…」
          セシナは少し考え込んだが、すぐに答えを出した。
セシナ「わかった。俺も協力しよう!もうエメル団の団員じゃないしな!」
カナ 「その息だよ!」
アブル「じゃあ意見がまとまったところで、時の祠をのっとる作戦を考えなくちゃね!」
          するとアブルは立ち上がり、地面に向かってかまいたちをした。
セシナ「な、なにやってるんだ!?」
カナ 「見ていれば分かるわ。」
          砂埃から出てきたのは、時の祠を地面に描いたものだった。
カナ 「アブルのかまいたちには、絵を描く使い方もあるのよ。」
セシナ「なるほど…」
          そして、セシナは時の祠の内部を説明した。カナとアブルは頷きながら聞いている。
          エメル団と戦う本番は、もう目の前に来ていることを知らずに。

――つづく
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ハルカ♪ #9☆2004.10/24(日)15:18
第42話    ☆★作戦会議!!★☆


カナ 「セシナ、内部のことは大体分かったけれど、誰がどの仕事につくの?」
         時の祠からエメル団を追い出す作戦は、休む暇もなく続いている。
アブル「セシナって、機械室の内部のこと知ってるよね?」
セシナ「ああ、そうだが…」
         機械室とは、爆発の準備物やエメルが入っているカプセルなどが置いてある、エメル団が勝手に作った場所である。
アブル「じゃあ、セシナが機械室関係の役になったら?団員達も結構いるんでしょう?」
セシナ「確かに。半分以上があそこにいるからな…」
         セシナは天空を眺めながら答えた。
アブル「じゃあ、セシナが機械室からエメル団を追い出す!ってのはどう?」
          アブルの突然の質問に、カナとセシナが驚いた。
カナ 「どういうこと?」
アブル「さっき説明してくれたときに、爆発のスイッチがあるっていってくれたでしょ?それを破壊すれば…」
カナ 「なるほど!それでもう爆発が出来ないようにするんだね。」
アブル「ご名答♪どう、セシナ?」
          アブルとカナはセシナの方を見た。
セシナ「でも、追い出すには誰かがおびき出さないと…」
アブル「あっ!!そうだった…」
          アブルは少し落ち込んだ。それをカナが励ましている。
カナ 「ほら!いつまでもいじけてないでよ!考えればいいことじゃん!」
アブル「は〜い!」
          少しテンションが下がっていたが、いつものアブルに戻った。
カナ 「っで、おびき出すのは誰がやる?あたしがやってもいいんだけ――」
アブル「おいらがやるよ。」
          アブルはカナの顔を見ながら言った。
カナ 「アブル…大丈夫なの?」
アブル「大丈夫だよ!いつも危険な目に会ってるしね。」
セシナ「じゃあ決まりだな!」
          そう言うと、地面に描いてある内部図の機械室に×印をつけた。
アブル「残るはカナだね。」
カナ 「ああ、そういえば…」
          カナは思い出したような口調で言った。
アブル「カナ、何か考えてよ〜。」
カナ 「何で私だけなの〜?」
アブル「ごちゃごちゃ言わない!」
カナ 「(そう言ってるのはそっちじゃない!)はいはい!」

――その頃時の祠では
したっぱ「エイ様!お願いします。」
エイ 「…あら?そういえば、セシナがいないわね〜。」
          あの時に追放されたしたっぱ達は団員に戻りたくて、時の祠に戻っていった。今はエイを説得している。
したっぱ「なんかどこかに行ってしまって…」
したっぱ「探したんですけれど、どこにもいなくて。私どうしたらいいか…」
          もちろん、したっぱ達はセシナがいなくなって嬉しく思っている。エイは彼らの作り話を信じている。
エイ 「セシナはもう少し追放いたしましょう。あなた達、頭を冷やしたようね。」
          エイはそう言うと、したっぱたちを見回した。
エイ 「…団員に戻りなさい。あなた達のことはよ〜く分かったわ。」
したっぱ「エイ様!ありがとうございます!」
          したっぱ達は全員頭を下げた。地面で隠れている顔は、不気味に笑っていた。
エイ 「さっそくだけど、次の爆発まであと1時間よ。機械の点検をしてちょうだい!」
したっぱ「はっ!」
          そうして機械室に走りこんでいった。
エイ 「セシナ…どこへ行ったのかしら…まさかね〜。」
           そう呟くと、エイは苦笑いをしていた。

カナ 「だ〜か〜ら〜、あたしもアブルの手伝いをするって言ってるでしょう!」
アブル「カナには他にもやることがあるはずだよ!諦めないでよ!!」
          2人の言い争いは、いまだ続いていた。
カナ 「何よ!またけんかを売る気?」
アブル「そっちこそ!」
セシナ「あのさ…」
          セシナの発言に、2人とも黙り込んだ。
セシナ「今思いついたんだけどさ。カナはエイを屋上に連れて行って欲しい。」
カナ 「…え?」
セシナ「俺達が機械室に行く前に屋上に連れていけば、これからやる機械室での争いを知らずに連れ出すことが出来る。」
          セシナは木の棒と地図を使いながら、彼らに説明している。
アブル「わかった!カナがエイを屋上に連れて行ったら、おいら達は機械室のスイッチを切る。そういう事だね!」
セシナ「そうだ。エイに報告されることもなくなるしな。」
カナ 「…」
          カナは無言状態だった。黙って2人の話を聞いている。
セシナ「それしか方法がないと思うんだ。」
アブル「カナ、やってみなよ!」
          そう言うと、アブルはカナの背中をポンと叩いた。
カナ 「それって重要じゃない!それに、そう簡単に出来るの?」
アブル「おいら達だって、そう簡単に追い出すかどうか分からないんだよ。」
カナ 「…」
          カナはまた黙り込んだ。地面を見つめ、今言われたことが頭の中で回っている。
カナ 「…しょうがないな〜。やってあげるよ。」
          カナは渋々返事をした。もう諦めた感じだった。
アブル「じゃあ決まりだね!」
セシナ「後はどういう流れで行くかだ。この内部図を見てくれ。」
          そうして、セシナはカナとアブルに説明し始めた。
         アブルの誘導場所、セシナの入り込み方、カナのタイミング…。それらをみな、肝に銘じていた。

         その話し合いが終わったのは、日が暮れはじめたときだった。
カナ 「じゃあ明日の活動が騒がしくなった頃、作戦開始ね。」
セシナ「了解。」
アブル「明日じゃないよ!もう作戦が始まってるじゃん。」
         アブルはカナにため息を混じりながら言った。
カナ 「わかったわかった。ゴメンネ。」
セシナ「じゃあまた明日、必ず会おう!」
          セシナはそう言うと、町外れの方に歩いていった。
カナ 「アブル、無理しないでよ!」
アブル「カナもね!」
          2人は顔を見合わせると、別々の方向に歩き出した。

        これから何が起こるかは、カナもアブルもセシナも分からないかもしれない。
        エメル団も明日どうなっているのか分からない。そしてエイも…

          そうして、旅立ちの朝が来た…

――つづく
d2fdb3e4.tcat.ne.jp
ハルカ♪ #10☆2004.10/26(火)20:03
第43話    ☆★作戦の実行★☆


         旅立ちの朝が来た。エイ達が準備していた爆発はしていなく、カナ達3人はそれに目を向けている。
ユウナ「あなた達、最後の点検をしてちょうだい!そしてあなた達は、誰もいないか入り口を見張ってちょうだい!」
         朝から時の祠はとても騒がしい。どうやら、昨日の爆発を今日に回したらしい。
エイ 「ユウナ、ご苦労様〜。」
         エイが黒いサングラスを手に歩いてきた。
ユウナ「いいえ。これが仕事ですから。」
エイ 「何時ぐらいに出来そうかしら?」
ユウナ「早ければ、今日のお昼ごろです。」
         ユウナは設計図を見ながら答えた。
エイ 「分かったわ。それまで頑張ってちょうだいね!!」
ユウナ「はっ!」
         そうしてユウナはまた団員達を指示しはじめた。
エイ 「さてと、私も取り掛かりましょうか。」
          そう呟くと、エイは機械室を抜けた。

カナ 「アブル!そっちはどう?」
         3人は早速計画に取り掛かっている。
アブル「セシナも一緒だよ!入り口付近にいるよ。カナは?」
カナ 「入り口を通り抜けるところ!したっぱ達が見張っているから気をつけて。」
         2人は小型マイクで連絡を取り合っている。アブルは思わず大声が出そうだった。
アブル「ええ?その中を通るの?」
カナ 「当たり前でしょう!それしか方法がないんだから…じゃあ合図したら入ってきてね!」
アブル「ち、ちょっとカ――」
         通話が途切れてしまった。アブルはかけようとしたが、電源が切れていた。
セシナ「連絡が来るまで、ここで待ってよう。」
アブル「ううん…カナ、大丈夫かな?」

――その頃カナは
カナ 「あなた達、エイ様を見かけなかった?」
したっぱ「いいや、見かけなかったけど。」
したっぱ「私なら見かけたわよ。」
         隣にいたもう一人のしたっぱが話しかけてきた。
したっぱ「エイ様なら、さっき機械室にお戻りになったわ。」
カナ 「ありがとう。」
         そう言うと、カナは早歩きで時の祠に入っていった。
カナ 「うわぁ〜。中もクタータウンの時計台にそっくり!」
          カナは感心して機械室に進んでいった。
カナ 「セシナの言うとおりにすると、ここを曲がったところに機械室があるんだよね…」
         そう呟きながら、カナは突き当たりを右に曲がった。そしてカナは立ち止まってしまった。
カナ 「何これ…凄い豪華じゃない!おまけに団員達がぞろぞろいる〜!」
         機械室からたくさんの団員達が出入りしているのをじっと見た。
カナ 「はぁ〜。この中にエイがいるのね…よし!」
          カナは一歩一歩慎重に歩くかのようにして、機械室の中に入っていった。中は思ったとおり、ユウナが団員達を指示している。
ユウナ「――これが終わったら、この仕事をやってちょうだい!!そして…あら?」
          ユウナはカナに気付いたらしく、動きを一時中断した。
ユウナ「あなた、もしかして新人さん?」
カナ 「は、はい。エイ様を探しているんですけれど、どこにいらっしゃいますか?」
          カナは緊張をしながらも、ユウナに言った。
ユウナ「エイ様ならあちらにいらっしゃるわよ。」
           ユウナは部屋の隅のほうを指した。エメルがいるカプセルを持って何かをしている。
カナ 「あ、ありがとうご、ございます!」
          カナはお礼を言うと、エイのところに走っていった。
ユウナ「でも、新人が入るってエイ様おっしゃってたっけ?」
          ユウナは今の事情を知らぬままだった。

アブル「ねえ、まだかな〜?」
          アブルは退屈そうにセシナに話しかけた。
セシナ「きっとエイ様を探しているんだろう。」
アブル「そうだといいんだけど…なんか妙な感じがするんだよなあ〜。」
          アブルは俯きながら言った。心配そうなアブルをセシナが励ました。

カナ 「エイ様!」
          カナは声のトーンを低くしてエイに話しかけた。
エイ 「何かご用かしら?」
カナ 「話したいことがあるんです。少しお時間をいただけないでしょうか?」
          カナは機械ロボットのようにストレートに言った。
エイ 「大丈夫よ。」
カナ 「ここでは言いにくいので屋上に行ってもいいでしょうか?」
エイ 「どうしてもそこじゃないとダメなの?」
カナ 「はい、お願いします。」
          エイは少し考え込んだ後、エイはカナに一歩近づいた。
エイ 「分かったわ。」
          そうしてカナはエイと一緒に屋上へと向かった。そしてアブル達に知らせたときでもあった。

――その頃アブル達は
アブル「セシナ、早くモンスターボールを!」
セシナ「分かってるって。そんなに慌てるな。」
          すると、セシナは腰にかけておいた空のモンスターボールを取り出し、アブルをボールの中に入れた。
アブル「ボールの中って、すっごい狭いね〜!」
          ボールの中に入ったのが初めてなアブルは、ボールの中ではしゃいでいた。
セシナ「アブル、そろそろ移動するよ。」
アブル「はいは〜い!」
          そしてセシナは入り口へと戻っていった。セシナの場所へ戻っていった。

――つづく
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ハルカ♪ #11☆2004.10/31(日)18:13
第44話    ☆★アブルとセシナの誘導★☆


         時の祠に戻っていったセシナは、真っ直ぐに機械室へと向かっていった。
セシナ「アブル、出てきてくれ。」
         手に持っているモンスターボールのそう言いかけると、中からあぶるが出てきた。
アブル「もう少しいてもよかったのにな〜。」
セシナ「アブル、ここから作戦通りにいこう。」
         体を震わしているアブルに向かってセシナは言った。
アブル「はいは〜い!じゃあ行くよ!」
セシナ「ああ。」
         そうして機械室の中へと進んでいった。

ユウナ「あら。あなたはまだ追放されているんじゃないの?」
         思ったとおり、ユウナが手を止めてこっちにやって来た。
セシナ「お前には関係のないことだ。」
ユウナ「それよりこのアブソル。もしかしてカナって言う少女のポケモンじゃない?」
セシナ「ああ。」
ユウナ「これでエイ様がお喜びになられるわ!あなたもやるときはちゃんとやるのね〜。」
         ユウナはアブルを見ながら答えた。
セシナ「この話には続きがある…」
ユウナ「どういう意味よ!」
         まだ何も分からないユウナにセシナはアブルに合図を送り、目線をユウナに戻した。
セシナ「こういう意味さ…アブル!」
         するとアブルは、素早いスピードで壁にあるスイッチを真っ二つにきりさいた。
ユウナ「何もするのよ!!」
         そのせいで、団員達がパニック状態になってしまった。そしてユウナはセシナを睨んだ。
セシナ「もう俺はエメル団員ではない!エメル団を倒す側だ!」
ユウナ「何も身勝手なことを!エイ様に報告しなければ!」
セシナ「それは無駄だ。」
         セシナもユウナのことを睨んだ。
セシナ「カナがエイのことを連れ出したはずだ。今頃ちゃんと作戦通り進んでいるはずだ。」
ユウナ「あの新人だと思っていたのはあの子だったのね…お前達!早く始末を――」
         ユウナは振り向きながら言ったが、途中で言葉が止まってしまった。団員達が1人もいなかったからである。
アブル「おいらが追い出してあげたんだ!報酬はどのくらいもらえる?」
ユウナ「あなた達!いいかげんにしなさい!!」
         そう言うと、腰のボールに手をかけて投げようとしたが、
アブル「アブ――ッ!!」
          アブルのかまいたちでボールの開閉スイッチが壊れてしまった。
ユウナ「ちっ!覚えていなさいよ!」
         そういい残すと、ユウナは部屋から出て行った。その様子を全て見送ったセシナは、浅いため息をついた。
セシナ「これでOKだな。」
アブル「カナに連絡しておくね!」
         そうしてアブルは、小型マイクについている連絡スイッチを押した。

――その頃カナたちは
         屋上にたどり着いたカナとエイ。エイはカナのことを見破っているのかどうか分からなかった。
カナ 「エイ様、改めてお話したいことがございます。」
エイ 「その前に確認したいことがあるの。」
         2人の間に風が通り過ぎていった。
エイ 「あなたはエメル団員じゃないですね。正直に答えなさい。」
          カナはアブル達からの連絡を受け取ったので、もう話してもいい頃かと思った。
カナ 「はい、そうです。」
エイ 「あなたの正体を見せなさい。今すぐに!」
          するとカナは諦めたらしく、エメラルド色のバンダナを投げ捨て、隠し持っていた青いキャップを被った。
          そして黒い上着と深緑色のぶかぶかズボンも投げ捨てた。その下にいつも着ている半そでとズボンを着ていた。
カナ 「いつでも脱げるように、下に着ていたんですよ。」
          カナはいやみっぽく言った。
エイ 「ふん!もうすぐ屋上の爆発が起こるのよ。後1分で点火して…」
         『そんなことは絶対にないよ!』
エイ 「誰なの!?」
          エイは少しおびえた声を出した。そして屋上のでは入り口の扉が開いた。
カナ 「アブル!」
          カナは嬉しそうな笑顔を見せた。
アブル「スイッチは粉々に壊しました〜!」
エイ 「何ですって!?ユウナに会わないと!!」
アブル「それも無理だね。」
          エイの動作を見ながらアブルは言った。
アブル「みんな外に追い出しちゃったんだよね〜。」
エイ 「よくもやってくれるわ…」
          エイは怒りに包まれた。カナ達はいつでも逃げられるような体制をとっている。
エイ 「いいわ。ここで決闘をしましょう。」
カナ 「何でいきなり決闘なの?」
          いきなりの発言に、カナは冷たく返した。
エイ 「あなたとやりたいからよ。勝ったら連れ戻してきてちょうだい。」
           エイは黒いサングラスをかけながら言った。
カナ 「別にいいわ。でも勝てないと思うけれど。」
          そう言うと、アブルは前に出た。
アブル「そうそう。絶対に勝てないよ。」
エイ 「私はグラエナ一匹と戦うわ。ちょうど1vs1だものね。」
          エイはモンスターボールからグラエナを出した。
グラエナ「グルルル…」
エイ 「さあ真剣勝負よ!そっちからどうぞ!」
カナ 「どうも。アブルかまいたち!!」

――つづく
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ハルカ♪ #12☆2004.11/03(水)22:24
第45話    ☆★もうひとつの作戦…★☆


カナ 「アブルかまいたち!!」
アブル「アブ―ッ!」
         アブルは素早く風の渦を巻き始めた。
エイ 「グラエナ、いばるよ!」
グラエナ「グルル!」
         いきなりアブルの前に立ち威張り始め、アブルの様子がおかしくなった。
カナ 「アブル!」
         混乱しているせいか、カナの声が届かない。
エイ 「いばるは攻撃力をぐーんとあげるけれども、そのかわり混乱状態にする技よ。」
カナ 「それときたか。アブル、かまいたちをグラエナに!」
アブル「アブ!」
         かまいたちを放とうとしたが、自分の足に攻撃をしてしまった。
カナ 「やっぱりだめか。」
エイ 「グラエナ、かみくだく!」
         エイの指示で、グラエナはアブルの首に突っ込んだ。
アブル「アブッ!!」
カナ 「アブル!」
        今日のエイは強い。カナは一瞬そう思った。
カナ 「(倒せる方法がある。絶対に!)」
エイ 「あら!もうお手上げなの〜?」
        エイはカナに嫌味を言った。
カナ 「そんなことはない!アブル、きりさく!」
アブル「アブ―!」
        今度のアブルは調子がよかった。
カナ 「今のでダメージを結構喰らったはずよ!」
エイ 「それはどうでしょうか。」
        しかし立ち上がったグラエナは、攻撃を食らってないみたいにピンピンしている。
カナ 「なんで!?…まさか!」
エイ 「そう、そのまさかよ。」
        エイが大声を出した。
エイ 「グラエナの特性“いかく”で攻撃力を下げる。それも作戦の一部よ!」
カナ 「全然思ってもいなかった。どうしたんだろう、今日のあたし…」
        カナはショックを受けている。アブルもカナのことが心配だった。
エイ 「これまでのお仕置きを全部受けなさい!グラエナ、かみつきまくるのよ!」
グラエナ「グルルル!」
カナ 「アブル!絶えて!」
        混乱状態のアブルに指示すると、よけいダメージが減る。そう考えたのだろうか。
アブル「アブ…」
エイ 「ほっほっほっ!!もう力尽くようね。」
グラエナ「グル…」
        ところがいつまでたっても攻撃をしてこない。
エイ 「何故!何故なの!?」
         エイは何がなんだか分からなかった。
カナ 「それは、あなたと同じ作戦の一部よ。」
アブル「アブッ!」
         カナはエイの目を睨み付けながら答えた。
カナ 「アブルには“プレッシャー”という特性があって、相手のPPを下がりやすくするの。」
         エイはさっきからピンピンしているアブルを見て、もっと驚いていた。
エイ 「何でアブルさんが!?」
カナ 「きのみよ。戦う前に持たせておいたのよ。」
         カナの目はいっそう強くなった。
エイ 「すごい作戦ね。でも…」
          エイは一瞬扉のほうを見たが、またカナに戻し、
エイ 「他の技を使ってくるかもしれないのに、どうして?切り札があったかもしれないじゃない。」
カナ 「他の団員もそうだったけれど、技を1,2種類しか使ってこなかったの。」
         エイは一歩下がった。
カナ 「まだレベルが低く技もそんな覚えていない時に、急激にレベルを上げる薬を飲まされた。これが私の推理だけれど、どうかしら?」
         カナは得意そうな顔をしている。そしてエイは扉のほうを見た。
エイ 「こうなったら…みなさん!カナさんとアブルさんを囲って!」
          すると、追い出したはずの団員全員が入ってきて、2人を円状に囲った。
カナ 「どういうこと!?」
エイ 「あなた達の作戦はもう見えているのよ。この人のおかげでね。」
         そしてエイは再び扉のほうを見た。カナ達もつられて見た。そこには思いがけない光景があった。
カナ・アブル「セシナ!!」
セシナ「とうとう捕まってしまったよ。」
         手に手錠をはめられたセシナは微笑しながら、したっぱ達と一緒に入ってきた。
カナ 「エイ!どういうつも…」
セシナ「カナ。はめられたんだよ、こいつらに。」
アブル「どういうこと?」
         俯くセシナの代わりにエイが答えた。
エイ 「セシナの背中に、盗聴器をつけておいたのを気づかなかっただけのこと。作戦とか全部聞こえていたわ。」
         エイの言葉に2人とも返す言葉がなかった。その間に、セシナもカナたちがいる所に連れて行かれた。
エイ 「さあ、すべてのことに終わりを告げましょう。みなさん、この2人とセシナを処分しなさい。」
団員たち「はっ!」
         そして団員たちはポケモンを連れて3人に遠慮なくかかってきた。その時だった…
      『いい加減にしなさい!!』
         どこからか聞き覚えのある声が聞こえた。エイは即座に自分が持っているカプセルを見た。
エイ 「エメル!眠っていたはずなんじゃ!」
カナ 「エメル!」
アブル「グッドタイミング!」
         エイが持っているカプセルの中から、眠っていたはずのエメルがガラスを割って飛び出してきた。そして、
      『神よ!こいつらエメル団に復讐を!!』
         いきなり、エメルは天空に向かって、神の名を呼んだ。
カナ 「エメル、いったいどうしたの?」
         カナとアブル。そしてエメル団員とセシナが変化する天空を見上げた。
――つづく
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ハルカ♪ #13☆2004.11/07(日)16:50
第46話    ☆★天空のかなた★☆


厚い雲が変化するのを彼らはじっと見ている。
 「エメル!あなたいったい…」
カナは静かにつぶやいた。
 「エメル!どういうことだよ!!」
アブルは天空に近づいているエメルに向かって叫んだ。
     『私を利用して時を操ったエメル団。そのせいで他の人たちに迷惑がかかったのよ!』
エメルは特別な声で町全体に声をまいた。
 「そうだそうだ!罰を受けろエメル団!」
 「そうよ!巻き込まないで!!」
時の祠の近くに集まった住民たちが、口々に文句をぶつけた。
 「うるさいわよ!少しは黙りなさい!!」
エイは地面に向かって怒鳴ると、エメルのほうに戻して、
 「私たちは全体に罰を受けないわよ!」
     『それは神の判断で決まるわ』
エメルは振り返り町に響く声でつぶやいた。
 「じゃあ…俺も受けるのか?」
     『それも神の判断』
セシナの言葉にエメルは冷たく返した。
 「(何か変…エメル…)」
 「(もうどうでもいいって感じ…)」
カナとアブルは一瞬そう思った。けれど、
 「(やっぱり気のせいだよね!)」
2人ともすぐにそう感じた。
するとその直後、天空に光の柱が何本も突き始めた。
 「何?また何か起こるの?」
カナは一歩後ずりした。
     『もうすぐ…もうすぐで神がいらっしゃる!!』
エメルは天空を遠い目で見ながら答えた。
 「エメル!」
カナはエメルに近づきながら言った。
 「エメル!神って誰なの?教えて!」
するとエメルは真剣な顔をして振り向いた。
     『天空に住んでいらっしゃるレックウザよ』
 「レ、レックウザ!?」
アブルは悲鳴のような声を出した。
 「誰それ?」
 「てんくうポケモンのレックウザ。オゾン層に住んでいるんだ。こっちに来るとやばいことになるぞ!」
アブルは急いでカナに説明をした。
 「エメル!何で呼ぶの!?」
カナは大声で叫んだ。その声で住民たちの騒ぎが消えた。
     『罰と受けてもらうために…神を捕まえられないために…』
そう言うと静かに振り向いた。その顔は悲しみで包まれている。
 「そ、そういうことだエメル!レックウザを捕まえるって…」
     『まだ分からないの!?』
もうエメルは今にも泣きそうだった。
     『エメル団の“エメル”はEMRALDの“EMER”を取った名前よ!そして私もエメル…“EMER”を同じく取った名前』
言い終えると、透明なしずくがエメルの顔から零れ落ちた。
カナとアブルははっとした。
     『レックウザはエメラルド色の体を持っている。それからとったの!本当の目的は…神を捕まえること!』
エイの目が少し笑ったのを、カナは見逃さなかった。
 「でも…でもなんでエメルを!!エメルを捕まえたりしてたの?」
     『ジョウト地方にあるウバメのほこらに彫ってある言い伝えよ。“セレビィに被害があると天空の神が舞い降りて街を荒らす”…そのチャンスを待ち構えていたんだと思う…』
エメルはそう言い終えると屋上に降りた。彼女をカナが易しく抱きしめた。
 「辛かったんだね…このときが来るのを…」
アブルもセシナもゆっくりと近寄ってきた。
その時だった。あのたくさんの光の柱が一つにまとまり始めたのだ。
その上からてんくうポケモンの声が大きくなっていく…!
 「神が…神がいらっしゃった!!」
エメルの声は街に響かなくなった。
次の瞬間、柱からエメラルド色の長い体を持った神が現れた。
 「レックウザ!…レックウザ!!」
エメルは必死に呼んだ。だがその声は圧力でかき消された。
     『誰だ!?我を使おうと企んでいる奴らは』
天空から舞い降りた神、レックウザは周りを見渡しながら叫んだ。
 「レックウザ!こちらの人たちよ!」
エメルはカナの上を通り過ぎ、エメル団を指した。
だが、これもまた気づかずにいた。
     『…お前たちか!!』
レックウザはエメル団に気がつくと、屋上に向かってはかいこうせんを繰り出した。
 「く、来るぞ〜!!」
下にいる住民は急いで避難した。
 「カナ乗って!」
 「うん!エメルも一緒にきて!」
アブルに素早く乗るカナは、レックウザに近寄ろうとするエメルの体を引っ張った。
 「レックウザ!カナ、離して!」
 「今は逃げないと危ないわよ!アブル飛び降りて!」
 「了解!」
そしてすぐに屋上から飛び降りた。その数秒後、時の祠はめちゃくちゃになった。
 「みなさん…大丈夫ですか…?」
 「エイ様…私たちは大丈夫です」
エメル団とセシナは瓦礫の下から出られることができた。
するとレックウ坐臥目の前に現れた。
     『さあ、最後の攻撃といこうか…!通報されたお前もな!』
そう言うと、はかいこうせんを口いっぱいにためた。
 「エイ…様…」
 「まだ助かる手はあるわ!」
団員の声にエイは静かに言った。
     『エメル団よ!もう未来はない!ゆっくりと天空で過ごすがいい!!』
そういい終えると、最後のはかいこうせんが発射された。
 「エメル団!」
 「神!もうおやめください!!」
街にいる全員がきつく目をつぶった瞬間でもあった。

――つづく
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ハルカ♪ #14☆2004.11/10(水)18:57
第47話    ☆★レックウザの怒り…★☆


     『ゆっくりと天空で過ごすがいい!!』
レックウザの言葉に、街の全員が目をつぶった。
 「アブル!かまいたち!!」
 「アブ――ッ!」
アブルはかまいたちをはかいこうせんにぶつけた。
そのせいか、威力がやや弱まった。
     『誰だ。我の邪魔をした者は』
 「ここよ!」
レックウザはよく周りを見渡した。すると地面にぶつかったはかいこうせんの煙の中からカナ達3人がいるのを目にした。
     『なんだ、お前たちは』
 「もうこれ以上やらないで!」
カナの意外な言葉に、エイたちは驚いた顔を隠せなかった。
 「確かにエメル団は時を操ったりあなたを捕まえようとした。だからって殺そうとすることはないんじゃない?」
     『お前たちには関係ない。そこを退くんだ』
 「嫌よ!」
レックウザは怒りをあげそうになった。
     『我を邪魔するとはいい度胸だ。だが限度ってものを知る必要がある』
そう言うと、レックウザの目付きはカナに移った。ターゲットがカナ達に変わったらしい。
 「神!止めてください!!」
     『誰だ。我を呼んでいるのは』
エメルの体が小さいからか、レックウザはそれに気づかない。
     『気のせいか…まあいい』
そう呟くと、長い体の先にある尾を頭に寄せてきた。
     『覚悟しろ!人間どもめ!』
そして尾をカナ達に振り回してきた。
 「よけて!」
落ちてくると同時に、彼らは危険を逃れた。
 「カナ、どうするの?」
 「逃げ回って!重いと思うけれど…」
 「これぐらいなら減っちゃらだよ!」
そうしてカナとエメルを乗せたアブルは、迷路のような街路地へ急いだ。
     『待て!』
レックウザは体をくねらせながらアブルの後を追った。

 「レ、レックウザだ!!」
 「街の外へ出ろ!!」
住民たちが慌しく右往左往している中を、アブルとレックウザが駆け抜ける。
彼らの距離は10メートルぐらいあるだろうか。
 「(もう逃げ回ってからしばらく経つ。もうアブルの体力も限界だよね…)」
カナはそう思うと同時にアブルに質問した。
 「アブル止まって!」
 「なんで?」
アブルは顔を正面に向けたまま答えた。
 「いいから!」
するとアブルは仕方なく急ブレーキをした。
 「どうして急に止まったりするの?」
アブルは頭が混乱するばかりだ。
 「アブルの体力がもう限界になってきてるから」
 「たったそれだけ?まだ大丈夫なのに…うわ!レックウザだ!」
アブルは会話の途中でレックウザが接近してくることに気づいた。
 「逃げて!!」
カナの合図でなんとか突進してくるレックウザを逃れたが、風圧で思いっきり投げ飛ばされた。
 「いたた…」
 「カナ、大丈夫?」
アブルは痛がっているカナのそばに行った。
 「うん。これぐらい大丈夫…いた!!」
カナは左足首のところを押さえた。
 「もしかして、くじいたの?歩ける?」
 「うん…ってアブル!後ろ!!」
カナはアブルの真後ろを指した。レックウザがまた突進してくる。
 「かまいたち!!」
 「アブ―ッ!」
アブルは風の渦を自分の周りで巻いた。
     『我の攻撃を受けてみろ!』
そう言うと、レックウザはオレンジ色の玉を最大に吐いた。はかいこうせんだ。
 「アブル!」
アブルは攻撃が遅かったのか、はかいこうせんを喰らった。
 「アブ…いた!!」
カナはアブルを助けようとしたが、足に激痛が走った。
 「痛いのを我慢してもダメか…」
     『どうだ人間のパートナーポケモンよ。もう降参したらどうだ』
レックウザは地面に押し倒したアブルを見た。
 「まだまだ!これで終わりなんて言ってないぞ!」
するとアブルはまだまだ続いている街路地へ走り出した。
 「アブル!むちゃしないで!」
     『まだやる気だな。我の力にかなう者などいないのだ』
アブルを見て言うと、レックウザはさっきの様にアブルの後を追った。
 「レックウザが来るぞ!」
 「アブソルもいるわ!災いが起こったのはこの子のせいよ!」
街にいる人々は怖さのあまりに家の中やその場から立ち去っていった。
     『まだ体力があるとは…さすがにパートナーポケモンだ』
 「それがなんだよ」
アブルは振り向かずに答えた。
     『だが、これで終わりだ!』
すると、アブルの右隣のビルに大きな騒音が響いた。そして遠く離れた建物にも同じ音が走った。
そしてアブルはおどおどして振り向いてみた。
 「た、建物が!!」
     『どうした。戦う気力を失ったか?』
アブルがビックリしたのは、さっきのほかに何十という数の建物がはかいこうせんで壊されているからだ。
 「おまえ…神だろう!何で人を苦しめるんだ!」
アブルは自分でもビックリするぐらいの大声を出した。
     『信ずること…我は人を信ずることが出来なくなったからだ!』
レックウザがそう言うと、アブルは再び前を向き走り出した。
だが、落ちてきた建物の破片が行く手を邪魔して行けなかった。
 「何で?何で信じられないんだよ!!」
仕方なく、アブルはレックウザのほうを今度は睨んで見た。
     『エメル団が私を利用するために、ここに呼び寄せたからだ。あの黒いサングラスの男が呼んだのだろう…』
 「だからって人を殺る事はないんじゃないか!」
そう言うと、レックウザはエメル団がいる方に飛んでいった。
 「いったい何をしようとしてるんだ…ってあれ?」
アブルは追いかけようとしたが、何かを思い出したのかその場に止まった。
 「レックウザを呼んだのって確か…」
アブルは必死に頭の中の時間を戻していく。そして、
「エ、エメルじゃねえか!!そうか!レックウザがこのことを知らないんだ!よ〜し!」
自分の声を合図に、アブルはレックウザの後を追った。その時――
 「ちょっと!何をする気なの?」
カナの声が微かに聞こえてきた。
 「カナ!もしかしてそっちに手を回したか!?」
そう呟くと、アブルは自慢のジャンプを有効に使いながら時の祠があった場所に向かった。

――つづく
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ハルカ♪ #15☆2004.11/20(土)14:33
第48話    ☆★すべての終わりを告げて…★☆


 「何をする気なの!」
アブルが微かに聞こえた時、カナとエメル団はレックウザを前にしていた。
     『パートナーポケモンは諦めた。やはり人間どもの方が我は許せない』
 「もっと詳しく言って!全然分からないわ!」
カナは思いっきり反発した。エメル団員達はすみの方で怯えているが、エイとユウナはカナと同じく前に出ていた。
 「そうよ!私たちには関係ないわ!」
 「エイ様の言うとおりよ!私たちはただエイ様の指示に従っただけ」
「だから、元はといえばあなた達が悪いんでしょう!?」
エイたちの言葉にカナはつっ込んだ。
     『我を呼んだのはお前らだというのは分かっておる。捕まえるだけの用などで我を呼ぶなど絶対に許せぬ!』
レックウザは耳に響くような声で言った。
 「神――」
     『さあ真実を言うがいい。お前たちの真実は分かっておるのだ』
エメルが言おうとしたがレックウザの言葉に邪魔されてしまった。そして迫ってくるレックウザに、エイとユウナは一歩下がった。
その時だった。
誰かの足音がこちらに聞こえてきた。
 「エメル団はお前のことを呼んでないんだ!」
アブルが壊されたビルの間を駆け抜けながら叫んだ。
 「アブル!…いたた…」
カナは立ち上がろうとしたが、まだ完治していないので足首を押さえた。
 「カナ、無理するなよ」
 「うん。ゴメンね…」
アブルはカナのそばに来ながら言った。
     『今のはどういう意味だ!我を呼んだのはエメル団のはず。我は間違っていないはずだ』
 「神!違います!」
やっとレックウザに真実を言えたエメルは、カナのそばを離れレックウザのところに飛んでいった。
     『お、おまえは…!』
 「神!私が呼んだのです」
その言葉にレックウザは驚きを隠せなかった。
 「私が神の元を離れるとき、何かあったら神を呼ぶと教わったことを思い出したのです。それで呼びました」
 「エメル…」
必死にしゃべっているエメルを、カナは温かく見守っていた。
 「だからあの者達をお許しください!」
     『何だと!?』
エメル団は俯いていた顔を上げ、エイとユウナとセシナはエメルのことを見つめていた。
     『何故だ!何故エメル団を許さなければならない!』
 「確かにエメル団には悪いところがいっぱいあります。けれど原因は私なんです!私がここに来なければこんなことにはなりませんでした!」
エメルの言ったことはエメルとレックウザしか分からなかった。
     『しかし――』
 「お願いします!もうこんな争いはおやめください!どんなことでも償います!!」
エメルの必死さ…カナとアブルは2人のやり取りをずっと見ていた。
エメル団とセシナは自分達がやったことをようやく反省したく、地面をただ見ているだけだった。
街の人々は家から出てきたり街に戻ったりして、彼らの話し合いを見ていた。
 「神!!」
エメルは手を組み、頭までも下げて願った。
     『…分かった。エメル団を許そう。ただし、』
エメルは顔を上げた。そしてレックウザはゆっくり後の言葉を言った。
     『もう二度と悪い行いを起こさない。これを約束してほしい』
そして次の瞬間、グランドシティは長い日にちをかけて自由になった様な喜びを味わった。
喜びや嬉しさの嵐がたくさん舞い降りたのだった。
 「か…神!!」
エメルは雫を目にたくさんためている。
 「アブル!」
 「うん、カナ!」
カナとアブルは同じく涙をためてレックウザとエメルを見ている。
 「エイ様…」
 「しょうがないわ。おとなしく警察署に入るわよ」
ユウナの質問にエイは諦めたのか、深いため息をついた。
 「みなさん、それでいいわね?」
エイは他の幹部やしたっぱ、そしてセシナに質問をした。
 「俺達はエイ様に一生ついていきますぜ!」
 「私も同様です」
エメル団員達は快く最後のエイの命令を聞いた。
 「―セシナは?」
ユウナはセシナの近くによって肩をたたいた。
 「俺は…俺も刑務所に入る。罪を最後まで償いたい」
そう言うと、セシナは嬉し泣きをしているカナとアブルを見た。
 「(あいつらのお陰だ…勇気をもらったような気がする)」
少し微笑むとセシナとユウナは団員達がいるところに戻った。
 「さあ、警察署に行きましょう」
エイはそう言うとゆっくりと歩き始めた。エイはカナ達を見ないように歩いた。目を合わせることなくエメル団は姿を消し去った――

     『我は天空に戻る。人間どもよ、いつまでも良い行いを忘れるな』
住民達が落ち着いてきたころ、レックウザは街の人々言いながらエメルに合図した。
 「分かりました、神」
エメルはそう言うとレックウザの隣に移動した。
 「エメル、どういうこと?」
カナは足首の痛みを我慢しながらレックウザとエメルがいるところの近くへ歩いていった。
 「カナ!無理しちゃだめだよ!」
アブルが後からカナの補助をした。そしてエメルはゆっくりと話し始めた。
 「ゴメン…ゴメンね。私ずっとあなた達に黙ってたことがあるの」
カナとアブルはビックリしてすぐに顔をエメルに向けた。
 「私は…私は神と同じかつて天空に住んでいたの」
カナとアブルは口をぽかんと開けていた。住民達は状況が分からない立場に立っている。
 「人間達の生活、前から気になってたの。でも油断大敵ね、思いっきり捕まってしまったわ」
カナとアブルは俯いた。エメルは話を続ける。
 「エメル団が罪を償いように、私も償う。私がいなきゃこんなことにはならなかったもの」
     『さあもういいだろう。エメル、帰るぞ』
 「はい」
エメルは言いたかったことを全部言ったのか、満足そうな顔をした。そして2匹は光の柱へ向かっていった。
 「エメル!…元気でね」
 「こっちにまた戻ってこいよ!」
カナとアブルはエメルに微笑みかけながら言った。でもその心は深く傷ついていた――
 「当たり前じゃない!戻ってきたときには真っ先にココロ村に行くつもり!」
 「うん!約束だよ!」
するとエメルは悲しみながら笑った。そしてエメラルド色の瞳でグランドシティを360度見回した。
     『さて、出発しよう』
 「了解しました」
そういい残すと彼らはゆっくりと光の柱に入っていった。
そしてゆっくりと天空へ昇っていく。
 「エメル…」
カナは再び俯き頭の時間を戻した。

――クタータウンの入り口付近でピィの姿のエメルに会ったこと。
時計台の中で自分達が時渡りする目の前で、エメルがエメル団に捕まえられたこと。
エメルを助けるためにミッシュタウンの洞窟へ向かったが、逃げられてしまった悲しさと悔しさ。
エメルに何回も助けられたこと、ピィの正体がエメルだと分かったこと。
そしてグランドシティでの出来事――

 「エメル、いつまでも待ってるから…」
カナはそう考えると思わず地面を見た。自分では気づかなかったのか、雨が降った後のような涙の後が残っていた。
カナは涙を拭くと天空を見上げた。そこにはレックウザの姿もエメルの姿もなかった。
太い光の柱だけが1つ残っていた。
 「アブル、私達もいつか離れちゃうのかな…?」
 「そんなことないよ!」
アブルはカナに軽く体当たりしながら答えた。
 「…そうだね。そうだよね!」
 「これからも一緒にいような!」
 「うん!!」
そして2人はお互い笑った。涙を流しながら笑った。その様子を街の人々が見ていた。
いつまでもこの世界は、暖かい空気に包まれる予感をしながら―――

――つづく
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