ぴくの〜ほかんこ

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[518] ラティアスの日記 【完結】

レオ #1★2005.06/05(日)13:44
ここは、ホウエン地方からはるか南にある「サウス島」
そこには人がいなく、たくさんのポケモンたちが平和に暮らしています。
その島に、住んでいるラティアスとラティオスの兄妹の話です。
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
第一章 〜悲しみが渦巻く未来〜 第1話 2匹の兄妹

「早く、早く」
赤色のポケモンが、手にあふれんばかりのモモンの実を抱えながら、森の中を飛んでいきます。ラティアスの[アス]である。
「そうあせるなって、アスはせっかちだな」
後から追ってくる青いポケモン…ラティオスの[イオ]である。
2匹は、この島の中でもとても仲のいいと評判の兄妹である。

2匹はいつものように浜辺で、友達のポケモンと一緒に遊んでいました
今日は快晴で、心地よい暖かい風が吹いていました。
いつもと変わらない毎日、とても平和な毎日―
あれが、来るまでは…

そろそろお昼。来る途中でたくさん取ってきたモモンの実をみんなで食べている時、アスだけは海の方をばかり見ている
「どうした?アス。食べないのか?」
「ねえ、イオ兄ちゃん。海の遠くの方に…ほら、何か白いものがこっちに来ているような…」
「ん?本当だな…何だろう?見に行ってみるか」
2匹は、ディープブルーに染まった海の上を、それに向かって飛んで行きました。

                      =つづく=
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レオ #2★2004.11/05(金)01:58
第2話 人とポケモン

ラティアス、ラティオスが見たものは、白い大きな船でした。しかも、
1隻2隻どころではありません、無数の船がサウス島向かっているのでした。
「…大きい船だね。あ、誰か甲板出てき…」
「アス、姿を消すんだ!」
アスは、イオのいきなりの言葉に戸惑いながらも、急いで姿を消した。
甲板にでてきた者は集団に加わって何か話している。どうやら2匹は気づいていないようだった。
「あれは、人だな」
「え?何で、わかるの?」
「アスはまだ、卵だったから知らないと思うが、ずいぶん昔に人がこの島にも住んでいたんだ。人とポケモンはお互い助け合い、いっしょに生活をしているものいた」
「え、それなら別に姿を消したりしなくてもいいんじゃないの?」
「でもな、人はもっと豊かな暮らしを手に入れるために、木々が伐られ、森林が無くなりポケモンたちのすみかが減った。それに伴ない食 料の木の実もなくなっていった。それからというもの、人とポケモン の間に戦いが、絶えなくなっていった…」
「でも、戦い以外に解決できる方法とかあったでしょ?なぜ戦いに…」
「こうしなければ、この島のポケモンたちがみんな死んでいたかもしれないんだぞ!」
「でも…」
アスは、いつもと違うイオの口調に、涙がこぼれ落ちそうになった。
それを見た、イオは「ごめん」と言うおうとしたが、その時はなぜか言えなかった。
「…」
ふたりの間に、しばらく沈黙が流れた。
「…まだこの話には続きがあるんだよ。今のサウス島は、森もたくさんあるだろ。あるとき、青白い光が空から降りてきんだ。それが“心のしずく”と言って、青々と輝く珠玉だった。その心のしずくの輝きが、人をポケモンをいやし、森をよみがえらせたんだ。人はまた、こんなことが、起こらないように、サウス島から出て行った。そして、今のサウス島あるわけだ…」
「ねえ、人とポケモンが、共存することってそんなに難しい事なのかな」
今まで黙っていたアスが、ぽつり言った。
「さあぁ、でもそんなに難しいことじゃないと思う」
「私も」
アスは、にっこりした。しかし、イオの表情はまだ硬かった。
「とにかく、あそこで話している人の近くに行って、何の話をしているか、聞くぞ」
「盗み聞きは、よくないんじゃ…」
「ほら、早く行くぞ」
「イオ兄ちゃんもせっかちなんだから」
いつもの調子に戻ったイオを見て、アスは少し微笑みながらイオの後をついて行きました。

                      =つづく=
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レオ #3★2004.11/05(金)01:56
第三話 サウス島の危機1

アスとイオは、姿を消しながらその集団に、近づきました。その人たちは、青い服を着て、頭には何かのマークの入ったバンダナをしていて、腰には黒い色をしたモンスターボールを付けてました。
アスは、モンスターボールを見るのが初めてだったので興味しんしんでした。
アス「ねえ、イオ兄ちゃん。この丸いものの中に、キバニアくんが入っているよ。キバニアくん、こんにちは」
キバニアは機嫌が悪いのか、すごい目つきで、アスをにらみました。アスは、おどろいてイオの後ろに隠れた。
イオ「なんだか様子が変だな…」
アス「うん…」
イオ「何か話をするみたいだ。聞いてみるぞ」

?「それでは、これから作戦会議をする」
ウシオ「われわれ、アクア団はアオギリリーダーの行方がわからなくなってしまったいじょう、われわれが海の水を増やすという夢を果たさなくてはいけない。その間この幹部ウシオが、リーダーをつとめることになった」
?「失礼ですが、リーダー。それでは、ポケモンの宝庫といわれていますが、他に何もないサウス島に、なぜ向かっているのですか」
ウシオ「イズミお前は、心のしずくというものを、知っているか?」
イズミと呼ばれた幹部の女性団員が、答える。
イズミ「…いいえ」
ウシオ「心のしずくというものはな、昔サウス島の人やポケモンをいやしたという伝説がある。だから、そんなにすごいものなら、海の水を増やすってことぐらいできる、と思う」
「…」
船の上が静まり返る。
「ずいぶんと、アバウトだな」
「本当にリーダー、ウシオさんでよかったのか?」
と、いう声があちらこちらから聞こえる。
ウシオ「今、おれのことをぶじょくしたやつは、船から落とすぞ!」
また、船の上が静かになる。
イズミ「…それで、その心のしずくがサウス島にある、ということですね」
イズミが、気を取り直していった。
ウシオ「ああ、そうだ」
?「そういえばリーダー、その島まだ人やポケモンはいるっすかね」
幹部の男性団員、シズクがたずねる。
ウシオ「いや、人はいないがポケモンはたくさんいるらしい」
シズク「じゃあ、めずらしポケモンを捕まえて売りましょうよ」
シズクは、にやにやしながらいった。
ウシオ「そうだな…今ほとんど資金が無いし、捕獲することを許可しよう」
シズクは、うれしそうにしていたが、イズミは、信じられないという顔をしていた。
イズミ「リーダー!それはしてはいけないと、アオギリ様が決めていたでしょ!アオギリ様を裏切りるつも―」
ウシオ「イズミ、今のリーダーは私だ。逆らうというなら…」
ウシオは腰のモンスターボールに手をかけた。周りの団員たちが、どよめいた。
イズミ「…すみませんでした、リーダー」
イズミは、くちびるをかんだ。
ウシオ「それでいい。では計画を言うぞ。おれのチームは心のしずくを徹底的に探す。シズクのチームはポケモンを、すべて捕獲しろ。このダークボールを使え。扱いにくくなるがその分、強くなるからな。イズミのチームはここで待機。サウス島に着いたらすぐに開始だ。これで会議を終わる。解散」
ウシオの号令の後、団員はぞろぞろと船内に入っていく。イズミだけは、その場でうつむいていた。

イオ「大変なことになったぞ、アス。急いでみんなに知らせないと。それと、ダークボールというものがなにか少し気になる」
アス「今はそんなことより、急ごう」
イオ「そうだな」
アスとイオは、急いでサウス島にもどった。

                       =つづく=
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レオ #4★2005.06/04(土)14:02
第4話 サウス島の危機2

もう日がすっかり傾いていました。海が夕日でオレンジ色に、染まっています。少し冷たい陸風が、島の方から吹いている。
イオ「ずいぶんと、日が沈んできたな」
アス「うん」
サウス島が見えてきた。
?「待ちくたびれたよ。遅すぎ〜」
イオとアス「ごめん」
昼まで一緒に遊んでいた友達のポケモンのアブソル♀の[アブソ]が言った。
?と?「そうだよ、そうだよ」
同じく、友達の兄妹ブラッキー♂、エーフィ♀が言った。ブラッキーの方は[ツキ]で、エーフィの方は[エフィ]である。
イオ「本当にごめん。それよりな―」
海で出会ったアクア団のこと、そのアクア団が自分たちを捕まえようとしていること、心のしずくをも奪おうとしていること―
アブソ「…そんな…」
アブソルのアブソが、ガクゼンとした。
ツキとエフィ「どうしよう、どうしよう。と、とにかく、みんなに伝えないと…」
アス「もう遅いみたいだよ」
イオ「アス、何言っているんだ。まだ、間に…」
もう、真っ黒に染まった、海にぽつぽつと、光が浮かんでいる。アクア団の船が来た。

イオ「…もう、戦うしかないな。もう何も…失いたくないだ」
イオは、昔の戦いを思い出したのか、少し悲しい顔を見せた。

「サウス島は、ポケモンの宝庫って言われているんだぜ。楽しみだな。アオギリリーダーのときはこんなこと無かったもんな」
「そうだな。早く行きたいぜ」
アクア団のしたっぱの二人が話しているのを聞いて、イズミがしたっぱたちをにらんだ。したっぱたちは、全速力で走ってその場から逃げていきました。
イズミ「ふぅ…なんでこんなことになったんだろう。アオギリリーダーがいたころはこんなこと、無かったのになぁ」
イズミが、深いため息をついた。船は、サウス島のもうすぐまで、来ていました。

そのころサウス島では、イオたちが、話し合っている。
イオ「俺たちだけでも戦うべきだと思う」
ツキ「そんなこと、言ったって戦ったことなんて全然無いぞ」
エフィ「そうだよ、一回も戦いなんてしたことないんだよ。私たちだけで無く、この島のみんなも」
アブソ「かといって、話し合いで解決できる相手なのかな。…話し合いが無理なら、やっぱり戦うという方法しかないのかも…」
イオ「アブソの言うとおりだよ。何もしなければ、みんなやられてしまうぞ」

「しかし―」「―でもやっぱり―」
なかなか話は、まとまらないようだ。
アスは、話し合いが終わるまでずっと黙っていた。しばらくして…
イオ「それじゃ、アブソは、できるだけ急いで、みんなを島の中央にある『秘密の庭』に避難させてくれ。俺とアスはアクア団と戦う、後で『秘密の庭』に、行くからな。ツキとエフィも、一緒に戦ってくれ」
アブソとツキとエフィ「了解!」
イオ「アスはどうした?」
アス「イオ兄ちゃんは、何もわかっていない!私は誰も傷つけたくないの」
イオ「アスは優しすぎる。お互い傷つかずに解決できる相手じゃ…」
アス「もう、知らないから」
アスは、森の奥のほうへ飛んでいきました。
ツキ「お、おい。アス、待てよ」
イオ「ほっておけ。もうアスは、いいんだ」
イオは、冷たく言った。
エフィ「なんかイオ、アスに冷たくなってきたね。あんなに、仲がよかったのに…」
イオは、何も応えなかった。

アスは、イオたちから見えないところで立ち止まりました。しばらく待った後、イオが追ってこないところをみて、
アス「イオ兄ちゃんのばか…」
アスは泣きながら、真っ暗な森の奥に飛んでいきました。イオが追ってきてくれると、思っていたのに…

                          =つづく=
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レオ #5★2004.11/05(金)01:55
第五話 サウス島の危機3

アスは、木の陰で、ずっと泣いていました。
イオと離れてからどれ程経っただろう。ポケモンたちの、叫び声が聞こえてくる。遠くの方には、煙が上がっているのが見える。アスは、ずっと木の陰に、うずくまっていました。
アス「もう、みんな知らない。…みんな」

イオ「くっ、強い」
ツキとエフィ「もう駄目だよ。はぁ…はぁ…強すぎる」
イオ、ツキ、エフィは、傷だらけになりながらも、サメハダーたちと必死で戦っている。
シズク「うひゃ〜。なかなかしぶといな。こいつらは」
イオ「ツキ、エフィ、スピードスターだ」
しかし、もう疲れきっていたツキとエフィのスピードスターは、むなしくもサメハダーの硬い皮膚に、はじかれてしまう。
シズク「おっと、もうお疲れかな。先にこの2体を捕まえてやる。行け、ダークボール!」
ツキ「ごめんな」
エフィ「アスを、守るんだよ」
2匹は、ダークボールの中に納まってしまう。ボールの中に入った直後、ツキとエフィの目つきが変わっていく。
イオ「ツキ!!エフィ!!」
イオ「このやろう!!」
イオは、ラスターパージを放ったが、悪タイプの混じっているサメハダーには、まったく効き目がなかった…。
イオ「もう…お終いだ。この島も、みんなも、アス…」
イオの脳裏に、アスと過ごしたときのことが、よみがえってくる。
シズク「お前も、ゲットしてやる」
シズクの投げたダークボールの中に納まってしまう。イオは、ダークボールから出る力も残っていなかった。イオは、ボールに完全に納まった後、だんだん意識が遠のいていった。イオもまた目つきが、変わっていく…。
イオ「アス…」

アス「イオ兄ちゃん!!」
アスは、泣きつかれて、寝てしまっていたようだ。
もう、海からは日が昇っていた。朝焼けが、海を明るく照らしている。
アスは、ものすごいスピードでイオたちのいた、浜辺へもどったが、そこには誰もいなかった。『秘密の庭』にも行ってみるが、イオどころか他のポケモンたちもいない。さらに、祭壇に置かれてあった“心のしずく”もない。この島は、アスだけになっていた。
アス「イオ兄ちゃんー!!ツキー!!エフィー!!みんなー!!」
声が森の木に、反響するだけで、なにも返事はなかった。叫ぶのをやめると、いつもの静かな森になった。風の音だけが聞こえる…。

                           =つづく=
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レオ #6☆2004.11/05(金)02:04
第六話 島との別れ そして旅立ち

アスは、まだこの島に誰かいると信じて、朝焼けのまぶしい浜辺を飛んでいた。浜辺には、やはり誰もいない。
アス「イオ兄ちゃん…んっ、あれは」
アスの目線の先には、アクア団のマークが入った船が一隻、岩陰から見えた。アスは、反射的に姿を消した。
船にアクア団の団員が数名乗り込んでいる。出航のために、食料を積んでいるようだ。
アス「イオ兄ちゃんを、助けなきゃ!」
アスは、アクア団のしたっぱの女性団員に姿を変え、船の方に走っていった。

ウシオ「そこ、何をしている。早く、そこの荷物を運べ」
ウシオの声には元気がなく、大きなあくびをしている。手には、心のしずくを持っている。ここで、取り返そうとしても無理だと判断したアスは、ぐっとこらえた。
アスは、近くにあった食料の入った木箱を抱え、船に乗り込もうとする。
アス(おもっ)
アスは、予想以上に重かった荷物のせいで、よろめいてしまう。「ダメだ倒れる」と、思った瞬間、アスは誰かの手に支えられた。
?「大丈夫?見ない顔だけど、新入りかい?」
顔を上げると、心配そうな顔をしたイズミの姿があった。
アス(どうしよう。私、人の言葉喋れないのに…)
アスはとりあえず、うなずいた。
イズミ「それならいいんだ。徹夜で、働かされたから、疲れているかもしれないけど、頑張るんだよ」
イズミは、そう言って、忙しそうに船の中へ入っていきました。アスは、しばらくぼーっと突っ立っていました。
「早く、持って行け!」というウシオの怒鳴り声に驚いて、アスは急いで船内に荷物を運んでいった。

アス(ふぅ…疲れた〜)
アスは、荷物を倉庫に運び終えて、休憩している。虚ろな目で、倉庫の窓から外を眺めていた。
人はあんなふうに優しい場面があるのに、何故こんなことをするのか…。アスの頭の中は、わからない事だらけだった。

したっぱ「出航するぞー!」
外で、したっぱが、声を張り上げて言っているのが聞こえた。
アスは、倉庫で食料の入った木箱に座ったまま、それを聞いていた。サウス島を初めて出る不安と、イオたちを助けようとする強い意志が、アスの表情からうかがえた。
船は、誰もいなくなったサウス島から徐々に離れていく…。船が通った後が、白い線のようになっている…。船と並んで、キャモメたちがやさしい潮風に吹かれながら、気持ちよさそうに飛んでいる。天気は、快晴。旅立ちには、とてもよい日だった。
アス(もう、後戻りは出来ないな)

第一章 〜悲しみが渦巻く未来〜 END   =第二章へつづく=
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レオ #7☆2004.11/09(火)19:26
第二章 〜君が必要な人は…〜 第七話 新たな出会い

どれだけの時が、経っただろうか…。
倉庫で、ずっと座っていたアスは、重い腰を上げた。アスは、甲板に出て大海原を、見渡した。夕焼けが海を、深いオレンジ色に染めていた。少し湿っぽい冷たい風が、北の方から吹いている。
アス(イオ兄ちゃんたちを、どうやって助けよう…)
アスは、どうやってイオたちを助けるか、何も考えていなかったようだ。
アス(そういえば、また話しかけられたらどうしよう。また何も喋れなかったら、怪しまれるかも…)
?「どうしたの?そんなに、考え込んで」
いきなり声をかけられたので、びっくりして後ろに振り向くと、イズミの姿があった。
アス(うわ〜。いきなり声かけられちゃったよ〜)
アスは、また黙ってしまった。しばらく、沈黙が続いた後。
イズミ「あんた、もしかして喋れないのかい?」
アスは、黙ってうなずいた。
イズミ「それならそうと早く言いなよ。って、喋れないんだっけ…」
イズミは、ズボンのポケットを、ごそごそと探り出した。ポケットから出てきたのは、メモ用紙とペンだった。そして、それをアスに差し出した。
イズミ「これを、使いなよ。聞きたいことがあったら、これに書きな。それとお前が、喋れないことは自分がみんなに話しておくから」
アスは、それを受け取った。ペンを握って、少し考え、書き始めた。お世辞にも綺麗と言えない字だったが、なぜか人の言葉が書けている。自分自身もこのことに、びっくりしているようだった。そして、アスは紙をイズミに渡した。
イズミ「…えっと。ウじゃなくて…『ラティオス』。読みにくいなぁ…『どこにいる』かな。『ラティオス、どこにいる』って、書いてあるのか?」
アスは、首を縦に振った。
イズミ「ポケモンのラティオスのことか?確か、お前が荷物を運んでいた倉庫の近くの、倉庫B-2の棚だったっけ。でもシズクが、ウシオに内緒で、かってに―」
イズミが、話を言い切る前に、アスは倉庫へ走り出していた。
アス(B-0…B-1…B-2あった!ここのどこかに、イオ兄ちゃんが!)
倉庫に入ると、大量のダークボールが棚に置かれてあった。しかし、イオの入ったボールは、どこにも見当たらなかった…
                              
                      =つづく=
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レオ #8☆2004.11/23(火)15:34
第八話 夕方に…
 
「どうしたんだ。何か、あったのか?」
B-2の部屋に団員たちが、集まってくる。イズミが、団員たちを押しのけて、アスによって来た。
イズミ「おい、いきなりどうしたんだ?」
アスは、黙りこくっている。
イズミ「お前らは、さっさと持ち場に着け!」
団員たちは、イズミの凄みに押されて、そそくさと部屋をあとにした。イズミとアス以外、誰もいなくなった部屋の中で、イズミが話し始めた。
イズミ「さっきの質問といい、今の行動といい、お前はいったい何もんだい?そういえば、名前も聞いてなかったし…」
アス(どうすればいいんだろう…。いっそうのこと、自分はラティアスですって書いてしまおうか…でもそんなことしたら、捕まえられるかもしれない)
アスは、数分下を向いて硬直していたが、
イズミ「…言いたくなければもういいよ。そこまで、必要に聞くことでもないからな。それより、お前疲れているんだろ。もう部屋に戻って休んでいいよ。お前の部屋は、この隣だから…。部屋に日記帳があるからそれに、きちんと記入しておくこと。これは、アクア団の伝統だから、絶対に書くように。そうそう、さっきの質問の続き、ラティオスは、シズクが、持っているから。結構、気に入っているようだったな…。それじゃあ、ゆっくりと休めよ」
イズミは、部屋の扉のほうへ向かっていく。アスは、もっと詮索〔せんさく〕してくると思っていたので、あっけにとられていた。
アス(あっ。シズクの部屋を聞いておかないと…)
急いで、紙に何か書いて、イズミに渡した。
イズミ「わっと。いきなりなんだい?…シズクの部屋ねぇ、お前の部屋の正面だけど、なんでまた、そんなこと聞くかねぇ。…この下の方に書いているのは、あんたの名前かい?」
アスは、うなずいた。
イズミ「アスっていうんだ。やっと名前教えてくれたね。そういえば、自分もまともに自己紹介してなかったね。私は、イズミ。アクア団の幹部を務めているんだ。そうそう、前のリーダーは、アオギリリーダーっていって、それはもうかっこいい人でね。私は、アオギリリーダーに、憧〔あこが〕れてこのアクア団に入ったんだ。でも、ルネシティで起こった事件以来、アオギリリーダーは、姿を消したんだ…。それも、もう3,4年前の話だけどね。いい人だったさ、ポケモンたちのためを思って、海の水を増やそうとしていたんだ。でも、実際カイオーガを復活させてみると、人やポケモンを悲惨な目に遭わすだけだった。自分の過ちに気づいたリーダーは、私たちに何も告げずにそのままどこかに行ってしまったんだ…。今はどうしているだろう…」
イズミの目から、きらりと光るものが、ほほを伝って床に落ちた。イズミは、涙を手でぬぐった。
イズミ「それじゃあ、早く自分の部屋行こう。そこの部屋のベットは、フカフカで気持ちいいぞ」
アスは、背中を押されて、B-2の部屋から出された。鍵〔かぎ〕がかけられたその部屋から、イズミのすすり泣く声が聞こえていた。アスもなんだか、悲しい気持ちになった。アスは重い足どりで、自分の部屋へ向かっていった。部屋には、ベットと小さな机とその上には日記帳が置かれてあった。
アス(こんな日は、ツキが喜ぶだろうな…)
部屋にある小さな窓から、明るい満月の光が差し込んでいる。窓から外を眺めた。辺りは、すっかり真っ暗になっていた。空には、満月と小さく瞬〔またた〕く星たちがあった。北の空だけは曇っていたが…。
アスは空を見上げ、今夜、イオ兄ちゃんたちを助けると、心に誓った。

                          =つづく=
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レオ #9☆2005.04/01(金)17:11
第九話 心のしずくの伝説

アス(さて…、さっきみたいにならないように計画を立ておこうかな…)
ベットの上にちょこんと座り、計画を考え始めた。
アス(まず、姿を消す。これでも、全く見えない訳じゃないから、船の見張り役が少ない時のほうが良いな――。そして、イオ兄ちゃんを助けて、その後、みんなを助けに行くと)
アスは船の見張り役が少なくなると思われる、深夜まで待つことにした。
ふと、小窓から外を見ると、物凄い速さで、どす黒い雲が流れていくのが見えた。雨が次第に降り出し、少し海が荒れ始めた。
アス(不吉な天気だなぁ…。さっきまでは、いい天気だったのに…。何も起こらずに、無事みんなを助けられればいいんだけど…)
アスは少し不安になった。


その頃、操縦室には操縦者のしたっぱ数名とイズミ、そしてウシオがいた。
ウシオ「くあぁ〜ぁ、眠い…。おい、イズミ。眠気覚ましにコーヒーを一杯頼む」
大あくびを一つ、側にいたイズミに眠そうに言った。
イズミ「はい、只今」
イズミは部屋の片隅にあるコーヒーメーカーのところに行き、スイッチを入れた。しばらくして、コーヒーのいい香りが部屋いっぱいに広がった。
そしてイズミは、出来たばかりの暖かいコーヒーをカップに注ぎ、それをウシオに渡した。
ウシオは軽く頭を下げ、それを受け取った。
イズミ「随分とお疲れのようですね」
ウシオの疲れた顔を見て言った。
ウシオ「昨日から、ずっと寝てないからな。今日はやっとまともに寝れそうだ」
そのとき、操縦室にシズクが入ってきた。
シズク「こんな時に、コーヒーブレークですか?海が時化始めましたよ」
ウシオ「大丈夫だ。この船にどれだけ費用がかかっていると思っているんだ。時化で沈むような船でどうする」
シズク「はぁ…。ですが、心のしずくにはこんな伝説がありますよ。…『悪しき者が心のしずくを使うとき、心は汚れ、しずくは失われるだろう。この島とともに…』とありますよ。実際、何年か前に、世界で一番美しいと呼ばれる水の都「アルトマーレ」というとこが、海に沈みかけたとか…」
辺りが静まり返る。しかし、それもすぐにウシオの笑い声で元に戻る。
ウシオ「わはははっ。そんな伝説信じられるか!それに、俺は悪しき者ではないしなっ!」
ウシオ一人だけが、馬鹿笑いしている。
そこに、居合わせた一同、ポケモンの乱獲や心のしずくを盗んでいるのに、悪くないとは言えないだろうと思った。
シズク「いやでも、実際にあったんですよ…」
ウシオ「お前は、心配性だな。その伝説が仮に本当だとしても、ここは船の上だ。心配すること無いさ」
ウシオはすっかり冷めてしまったコーヒーを一気に飲み干した。

                           =つづく=
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レオ #10☆2005.04/16(土)03:22
第十話 再会

ガチャ。
アスは、自分の部屋の扉を少し開け、隙間から廊下の様子を覗う。
廊下は、天井に大体10m間隔で付いている蛍光灯だけで照らされ、かなり薄暗く静けさに包まれている。
どうやら、誰も居ないようだ…。
アス(よし。一旦、元の姿に戻ってっと)
アスは暖かい淡い白い光に包まれたかと思うと、元の姿(ラティアス)に戻った。
アス(ふぅ…)
長いこと姿を変えていたことで、少し疲れたようだ。
そしてアスは、一息ついて今度は姿を消した。
アス(光の屈折具合は、これくらいでいいかな…。急激な光の変化には気を付けないと…)
静かに廊下に出ると、正面の部屋に向かった。
廊下の暗さのせいもあって、シズクの部屋が恐ろしく不気味に思えた。
アス(…ここがかぁ)
意を決して、ドアノブに手をかけた。恐る恐る部屋の中を覗く。
部屋の中は真っ暗で、シズクは居ないようだ…。
アスは、部屋の中央にあったスタンドを点けた。部屋は暖かい橙色の光で照らされた。
アス(誰も居ないみたいだ…)
アスは、ふと部屋の隅にある机の上の3つのモンスターボールに目がいった。
そのボールは漆黒に染まっていて、なにやら徒ならぬ暗いオーラを放っていた。その中のには、ツキとエフィ…そしてイオが!!
アス(イオ兄ちゃん!!)
アスはボールの方に駆け寄る。そして、イオの入ったボールを手に取った。
アス(やっと見つけた!!イオ兄ちゃんもツキもエフィも!!)
アスの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
アス(今、助けるからねっ)
その時アスは、はっと気が付いた。みんなの目つきがいつもと違うことに。
しかし、アスはとにかく助け出す方が先決だと思い、特に気にしなかった。
アス(うぅ…)
両手に力を込めて開けようとするが、全く開かない…。スイッチのようなものも押してみるが、何も起こらない…。
その時、凄まじい衝撃音と共に大きく船が揺れた。
アス(うわぁ!)
アスは驚いて、ボールを取り落としてしまう。机の上にあった2つのボールも転がり落ちる。
スタンドは倒れた衝撃で故障してしまい、部屋の中が闇に包まれる。
アス(ボールが!!急いで探さないと!!)
アスは暗闇の中で、手探りでボールを探し始める。

                           =つづく=
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レオ #11☆2005.04/16(土)03:25
第十一話 イズミの思い…

ウシオ「どうした!!何があったんだ!!」
したっぱ操縦士「突如、前方に巨大な渦が現れました!!このままでは、渦に飲み込まれてしまいます!!」
ウシオ「どうなっているんだ…」
揺れの直後、操縦室は巨大な渦の出現で慌しくなっている。
シズク「急激な気象変化…巨大な渦の出現…。心のしずくが災いを招いているのか…」
したっぱ操縦士「リーダー!!舵が取れません!もう駄目です!」
ウシオ「あっ諦めるな!」
額から冷汗が噴き出している。相当、ウシオは焦っているようだ。
そうこうしている間に、船はどんどん引きずり込まれる。
イズミ「これで良かったんじゃない?」
一斉にイズミのほうに視線が向けられる。
ウシオ「おまっ、何言っ」
イズミ「私はこんな事をしたいために、アクア団に入ったんじゃない!」
シズク「何だお前…。それなら、何のためにアクア団に入ったんだ」
イズミに掴み掛かる。
イズミ「それは…」
船が大きく傾く。一気に船の中に、大量の海水が流れ込んだきた。
ウシオ「もう駄目だ。逃げろ!」
ウシオとそれに付いてしたっぱたちが脱出ポットへ逃げ込んでいる中、シズクとイズミだけが操縦室に残された。
シズク「何だよ。言ってみろよ!!」
徐々に水かさが増し、膝くらいまで水が浸かるほどまで浸水してきた。
イズミは黙っている…。
シズク「ああそうか。どうせ、アオギリリーダーの事だろ?あいつは駄目だ。ポケモンのためと思ってやったことが、かえって迷惑になって…ただの馬鹿だぜ」
イズミは黙ってシズクをキッと睨み、拳で頬を殴った。シズクはよろめきながらも、言葉を続ける。
シズク「どうせそんな事になるなら、最初から極悪になればよかったんだよ!ポケモンを使い、世界を征服するような悪にな」
シズク「お前みたいな半端な考えの奴はいらない…。ここでお前は最後を迎える…」
シズクはボールを投げ、サメハダーを繰り出した。
イズミ「ここで終わりになんかできない!!」
イズミもボールを投げ、トドゼルガを繰り出した。
イズミ「アオギリ様から頂いたトドゼルガの力を見せてやる!」

                           =つづく=
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レオ #12☆2005.06/04(土)02:06
第十二話 ラティオス

ゴツッ!
アス「あいたっ!!」
アスはようやく暗闇に慣れてきた目で机の下に転がっていたボールを拾おうとして頭をぶつけたらしい…
アス(ふぅ…。何とか3つとも見つかったなぁ…)
少々お疲れ気味の様子…。
アス(ん?)
アスは机の下に落ちていた一冊の本を見つけた。その表紙には「=ダークボールについて=」と書かれてあった。
アス「これは…」
アスはそれを拾い上げ、表紙を一枚捲ってみた。そのページの初めには「目次」と書かれてあって、その下には、ダークボールの製造法、使用上の注意、特徴―、20個以上もの項目が箇条書きされてあった。
アスはペラペラとページを捲っていると、ダークボールの特徴という項目の書かれたページで手を止めた。
アス(なになに…。このダークボールは、かつてのボールの機能には無い、ポケモン強化、指紋照合システムが導入されている―。このボールに収まったポケモンは瞬時に強化され、そのポケモンの最大限の力…いやそれ以上の力が発揮される。しかし、その強さ故に弱きトレーナーは操ることが難しい…。その点では、もう少し改良が必要だ…。そして指紋照合システムは、他者にボールを盗まれても、勝手に中のポケモンを出されることは無くなる…。強度はマスターボールには劣るが、相当頑丈だ。これで、捕獲も楽になるであろう。これでオーレ地方の全てのポケモンは我々のものだ。わははははは〜…)
ばんっ!!
アスはさらっとそのページを読み終えると、その本を机に荒っぽく置いた。あまり掃除の行き届いていないシズクの机からは本の置いた衝撃で少し埃が舞い上がった。
アス(…指紋照合システム…。通りで開かなかったわけ…。ポケモン強化…弱きトレーナーは操れない…どういうことだろう…。…考えるだけ無駄!善は急げ!早速試してみよう)
アスは、一瞬のうちにシズクへと姿を変えた。そして、ラティオスの入ったボールに手をかける。
アス「そして、このスイッチのようなものを押すのかな…」
スイッチを押すと、ボールの大きさが一回り大きくなった。
アスがもう一度スイッチを押した直後、ボールの中から黒っぽい光線が辺りに迸り、近くの床へとその光が集中する…
そして光が治まり始め、一匹のポケモンの姿が見えてくる。
アス「イ…」
アスは「イオ兄ちゃん」と叫ぼうとしたが言葉を途中で止めた。何故なら、目の前にいたイオは「アスの知っているイオ兄ちゃん」では無かった…。イオのあの頃のあの暖かい瞳はもう既にそこには無く、今あるのは完全に輝きを失った眼だった。
ラティオスは全身から物凄い闇のオーラを放っていた…
ラティオスは低く唸っている…
アス「…何かの冗談でしょ…」
アス「ねぇ!お兄ちゃん!!」
ラティオス「があぁぁ!!」
ラティオスは狂った獣のようにアスに襲い掛かってきた。アスは突然のことに体が動かず、ラティオスの攻撃をまともに喰らい、壁に叩きつけられた。あまりにも凄まじい威力だったようで、アスの叩きつけられた壁は大きく窪んだ。
アス「…どっ…どうして…」
意識が徐々に遠のいていく…。
アス「イオ…兄ちゃんを…たす…けなきゃ…」

                         =つづく=
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レオ #13☆2005.06/04(土)02:13
第十三話 無

?「何にも無いところだな…」
その台詞の通り、全く何も無い真っ白な世界だった。しかしそこには一匹のラティオス…いやイオがいた。
イオ「誰かいないかー!!」
イオの声が木霊するだけで、返事は無い。
イオ「俺はどうしたんだ…。何でこんな所にいるんだ…。そうだ!!アスー!!」
イオはダークボールに捕まるまでのこと、そしてアスのことを思い出したようだ。
イオ「くそっ!ここは何処なんだよ!」
イオは、とにかく真っ直ぐに飛んでみる。しかし、一向に景色の変わる気配は無い…。それでも、諦めずに飛んでいく。しばらくすると、白い景色が薄っすら取れた、色のある部分を見つけた。そこを覗くと、靄のかかった赤い物体が見える…。
イオ「アス!!」
イオは一発でそれをアスだと見抜いた。よくは見えないが、アスのぐったりしている様子がイオには分かった。その瞬間、パッとその色の付いた部分が消える。
イオ「くそっ!どうすればいいんだ!!早く助けないと」
しかし、この何も無い空間ではアスを助ける術は全く無かった…。アスを助けたいという思いだけが募り、イオを徐々に気持ちを焦らせていく。

―その頃操縦室では―
シズク「あらら、もうお終いかい?やれやれ、最初の威勢は何処えやら」
イズミ「黙れ!!」
イズミのトドゼルガは、シズクのサメハダーに圧倒的に押されているようだ。ダークボールに納まっていたサメハダーはとても強い。
加えて、この状況。既に部屋には、下半身が完全に浸かる程まで水位が上昇していた。水の中で、すばしっこく動き回るダークオーラを放つサメハダーに、トドゼルガはついていけなかった。
イズミ(大技のぜったいれいどはここでは使えないな…。自分まで氷づけになってしまう…。何かいい方法は…)
シズク「考えてる暇は無いぜ」
サメハダーの攻撃は容赦なく続く。
イズミ「くっ…」
ふと、目をやった先にまだ水没してない脚の長い机が。何でもっと早く気づかなかったんだと、悔しい表情をした後、素早く机に乗ると、
イズミ「トドゼルガ!ぜったいれいど!」
と同時に一気に周りの気温が低下し、トドゼルガを中心に水が凍り始めた。
シズク「くそっ!これではまず…」
シズクが台詞を言い終わる前に、室内の水が氷に変わった。氷の中で、サメハダーとシズクが凍結されている。イズミは何か少し考えると、行動に出た。

第二章 〜君が必要な人は…〜 END     =第三章へつづく=
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レオ #14☆2005.06/04(土)02:21
第三章 〜それぞれの進むべき道〜 第十四話 脱出

一方、アスもラティオスの両者とも動く気配は無い。アスは気を失っているようで、ラティオスは時折、呻き声を上げるだけで、最初の攻撃から全く動かない。

イオはまだ何も無い真っ白な世界にいた。イオは沢山飛び回ったせいか、その場から動けないでいるようだ。イオの喘ぐ音だけが聞こえる。
イオ「ふぅ…ふぅ…ここは何処まで続いているんだ…」
イオは、その場に横たわる。上を見上げても、何処までも真っ白だった。
イオ「アス…ごめん…もう、お前を助けられないよ…」

アス「ううっ…」
アスは、どうやら意識を取り戻したようだ。アスはすぐさま、呻き声を上げているラティオスに駆け寄った。
アス「しっかりして!!イオ兄ちゃん!!」
アスはラティオスの肩を揺さ振る。ラティオスはその問い掛けに答えるように、小さく呻き声を上げる。最初の時よりか、闇のオーラが治まっている…。アスは何度もラティオスに問い掛けを繰り返した。

「…しっか…し…イオ…」
しばらくして、イオは何処からか途切れ途切れの小さな声が聞こえてくるのに気づいた。
イオ「アスの声か…!?」
イオは体を起こす。そして何処までも響くような声で、力一杯叫んだ。
イオ「アスー!!」
イオの視界が一気に開けた。目の前には、アスが泣き崩れながらも問い掛けを続けていた。
イオ「…アス」
アス「…えっ?」
アスは顔を上げ、イオを見た。そこにはあの頃の優しい眼があった。
アス「…戻って…きてくれたんだね」
イオ「ああ」
アスとイオは抱き合った。と同時にアスもイオも涙を流した。
アス「もう、何処にも行かないでよね…」
イオ「ああ…」
どどどど…低い音と激しい揺れが、アスとイオを襲った。
イオ・アス「ななっ…何だ!?」「なっ…何!?」
その時、水圧に耐えられなくなった扉が壊れ、部屋に一気に水が流れ込んできた。床に置いてあったツキとエフィの入ったボールは流されてしまう。
イオ・アス「ツキ、エフィ!!」
しかし、無常にもボールは濁流にのまれ、もうボールが何処にあるのか分からなくなってしまった。
急いで脱出しなければと思ったイオは、アスの手を引っ張った。しかし、アスは動こうとしなかった。
水の流れ込む大きな音に負けないくらいの声で叫んだ。
イオ「何してるんだ!!早く逃げるぞ!」
アス「…ツキ、エフィ…島のみんなはどうするの…」
イオはアスの手を引っ張る力を緩めた。
イオ「…」
イオは少し黙った。そして言葉を続けた。
イオ「…それは…みんなには悪いけ」
アス「そんなの…嫌だよ!!」
イオの話に割り込む。
イオ「このままじゃあ、俺たちの命も無いかもしれない。ここで、みんな助からなくなるよりも、俺たちだけでも生き残って、あの島を復興させるほうが、島のみんなも喜んでくれると思う」
アスはしばらく黙っていたが、コクっと小さく首を縦に振った。が、アスはやはり納得いかないらしく、表情が冴えない…。
イオ「それじゃあ行くぞ。俺の手につかまるんだ!」
イオはアスがしっかりとつかまったことを確認すると、流れ込む水に逆らって、一気に外へ向かって進みだした。
アスはイオにつかまっている間も、この手を離してみんなを助けに行こうとも考えたが、どうしてもそれが出来なかった…。

ザバン!!
2匹は完全に水没した船の中から脱出し、海の上に出てきた。空はすっかり晴れ渡っていて、西には綺麗な夕日が見えた。
イオ「…助かったんだな。アス」
アス「…うん」
アスはまだ浮かない顔をしている。アスはみんなを助けに行けばよかったと思っているんだろうとイオは容易に見当がついた。
イオ「夕日…綺麗だな」
アス「…うん」

                           =つづく=
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レオ #15★2005.06/04(土)14:18
第十五話 決心

そして2匹は1日半かかって、自分たちの故郷「サウス島」へ到着した。その間、2匹はずっと口を開かなかった。
ここで初めてイオが口を開く。
イオ「着いたな。俺たちの故郷、サウス島に」
アス「…うん」
しかし、以前とは違って目を開けてられないほど、悲惨な状態だった。アクア団が上陸した時に放火されたされたことで、島の半分以上が全く木々の無い、禿山同然だった。
「秘密の庭」、みんなと一緒に遊んだあの森、アスの好きだったモモンの木、懐かしの自分たちの家は焼けてもう無い。何より寂しかったのは…、みんないなくて、2人ぼっちだということだった。
イオ・アス「…」
2匹はしばらく呆然と立ち尽くす。イオの「お腹も減ったし食料を探すか」という言葉で、ようやく2匹は別の方向へ動き出した。
イオは、まだ植物の残っている森林を飛んでいく。イオは大木のすぐ側に育っていた、オレンの木から熟した実を数個拝借した。イオは木の実を拝借したお礼として、近くの柔らかい土の上にオレンの実を2つ植えた。
イオ「一応、食料はあるみたいだから、何とか過ごせそうだな」

一方、アスは最後にみんなと遊んだ浜辺に来ていた。先日とは打って変わって、今日はとても波が穏やか。アスはみなもに顔を近づけた。そこには、自分の冴えない表情が映し出されている。
アス「私は本当にこれでよかったの?」
みなもに映った自分に問う。何も答えない…。当たり前か…。
アスはふいに沖合いに目をやる。昼間の太陽の光が眩しく海を輝かせている。と、そこに「心のしずく」が!
ウシオが盗んだはずの心のしずくが何故こんな所に…。とにかく、アスは心のしずくを拾いに行った。心のしずくは、太陽の光を浴びているせいか、以前よりも輝きを増している。
アスは心のしずくを手に持ち、イオのところへ向かった。

イオ「お〜い。食料あったぞ」
イオは大量のオレンの実を抱えながら飛んできた。イオは一息つき、それを砂浜に置いた。
アス「あの…さっき、これを拾ったんだ」
アスは手に持っていた心のしずくを見せる。イオはその心のしずくを見て、
イオ「…アスには、自分の命と引き換えにみんなを生き返らせる勇気はあるか?」
アスはイオの唐突な質問に対して、目を丸くした。
アス「えっと…それって、どういう意味?」
イオ「言葉の通りだよ。前にも話しただろ?心のしずくで人やポケモンや森を蘇らせたって話」
アスは首を縦に振る。
イオ「実は、その心のしずく…。俺たちのお父さん、お母さんの命、そして心のしずくを使って再生能力を引き出させたんだ…」
アスは、そんなわけ無いでしょとイオにつっこむが、イオの表情は真剣そのものだ。
イオ「だから、俺とアスの命を使って…」
アス「ちょっちょっ、ちょっと待って!!」
イオは、アスの表情から相当困惑していることが窺えた。
イオ「この心のしずくが輝いている今、みんなを蘇らせることが出来るんだ。アス、すぐに決めなくていいんだ。ゆっくり考えよう」
アスは、分かったと言い何処かへ飛んでいってしまった。

―数時間後―
辺りはすっかり日が落ち、夜を迎えていた。
アスは、またあの浜辺に来ている。1人ぼんやりと、宝石が散りばめられたような星空を眺めている…。
私はもし、もしだよ。命を絶ってしまったらどうなるんだろう…。あの星の彼方へ行ってしまうのだろうか…。
私はこの島に居たい。けれども、みんなはどうなるんだろう…。お父さんやお母さんはどういう気持ちで心のしずくを使ったんだろう…。
アスの中ではいろんな気持ちが心の中を渦巻いている。
そんなことを考えている時、イオがこの浜辺へ飛んできた。そして、私の横へ座って空を見上げた。
イオ「今日も星がホント綺麗だな」
アス「ホントだね」
イオが私の気持ちを紛らわせてくれようとしているのが分かった。
2匹はしばらく夜空を見上げていた。
アス「私、みんなを助けたい」
イオは、自分からこの話題に入ってきたアスに少し驚いた。
イオ「ということは、もう決心がついたんだな?」
アスは首を縦に振る。
イオ「それじゃあ、明日にしよう〜。なんか今度は、俺の決心が付かなくなってきちゃって…」
アスはクスッと笑った。イオも一緒に微笑んだ。
アス「こうしていられるのも、もうちょっとなんだね…」
イオ「ああ…」

少し冷たい風の吹く浜辺で2匹は寄り添って寝た…

                     =つづく=
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レオ #16☆2005.06/05(日)02:28
さてさて、最終話に入る前にちょっと寄り道でも…

番外編 その後

?「ふぇふぇ…フェクション!!」
イズミ「ようやく、お目覚めか」
ウシオ「おっ。シズクおはようさん!」
シズク「…ここは何処だ?」
シズクは辺りを見渡す。どうやら、自分はミナモシティのアクア団基地の救護室のベットのにいることが分かった。
少しのの間、ベットから起き上がってボーっとしていたが、すぐにイズミとの戦いのことを思い出した。
シズク「…何で俺を助けた。お前を消そうとしてたんだぞ」
イズミは大きくため息をつき、
イズミ「わざわざ、あの状況でトドゼルガにお前を氷ごと削りだしてやったのに、お礼も無しか…。その後のお前の凍った体を解凍するのホンット大変だったんだぞ!」
シズクはしばらく黙ったあと、「それはそれは、どうもありがとうございやした」とに相手を馬鹿にしたような口調でお礼を言った。
その後、イズミに頭をスカーンと叩かれたことは言うまでも無い…。それから、しばらくの間笑い話に花が咲いた―
それからまたしばらくして突然、ウシオが真剣な顔つきで話し始めた。
ウシオ「今日でアクア団は解散にしようと思う」
イズミもシズクもそれを言うと思っていたというような顔をして、
シズク「そうだな。今ではアオギリリーダーが、何故アクア団を離れたか何となく分かるよ。俺はそれには賛成だな」
イズミ「私も賛成!」
ウシオもそういうと思っていたという顔をして、
ウシオ「それじゃあ、賛成3反対0で賛成可決だな!」

そして、3人は新たな道を歩み始めた。イズミはアオギリリーダーを探す旅へ、シズクはリーグへ挑戦するため修行へ、ウシオはもともとの仕事であった漁師へ、3人はそれぞれの道へ。
時折、3人が出会うと決まって、元アクア団員全員を呼んで、居酒屋へ通っているらしい…。

                      =番外編・おしまい=
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レオ #17☆2005.06/05(日)13:42
第十五話 最後の日

朝焼けの眩しさでアスは目が覚めた。ああ、そういえば昨日はここで寝てたんだっけ…。
横に寝ていたはずのイオはいつの間にかいなくなっていた。多分、朝食の木の実でも取りに行っているのだろう。
アスは、冷たい海水で顔を洗う。
最近、羽の手入れもしてなかったし、ちょっとしておこうかな…。最後の日でもあるし…。

しばらくすると予想通り、イオは木の実を抱えて戻ってきた。2匹はそれを食べ終えると、最後の日だからということで、思い出の場所をいろいろと巡ることにした。
もう無いが私たちの家があったところ、みんなの憩いの広場みたいなものであった「秘密の庭」、みんなで探検した洞窟、秘密基地なんかも。みんな、何だかとても懐かしかった。
何だかんだしているうちに、もう日が暮れていた。
アス「いよいよだね…」
イオ「そうだな…。みんなと直接会えないのは寂しいけど…、これでいいんだ」
イオとアスは「秘密の庭」へ向かって飛んでいった。イオもアスも表情は強張っていた。

2匹は、「秘密の庭」と到着する。そこは風の音もしない。とても静かなところだった…。
中央には大きな石畳の祭壇がある。以前はそこの中心から清水が滾々と湧き出ていたのだが、今はその気配は無い。
秘密の庭の片隅には、小さい頃によく遊んだブランコがあった。風も無いのにそれは前へ後ろへ小さく揺れている…。
2匹は秘密の庭の中央へと進む。
イオ「置くぞ」
アス「うん」
昔使われたときと同様、心のしずくの力が最大限に発揮されるように特殊な石で作られた台の窪みに心のしずくを納める。そして、2匹は手を繋ぐ。手に力がこもって、小刻みに震えている。
心のしずくはより一層輝き始めた。辺りが心のしずくに照らされ、昼間のように明るい。
アスが口を開く。
アス「もう、イオ兄ちゃんと会えなのかな?」
イオ「いや、会える。絶対にな」
アスはそれを聞いて、安堵の表情を浮かべた。そしてイオに微笑みかけた。イオもそれに応えて微笑み返す。

そうこうしているうちに、体が徐々に透けてくる。アスもイオも…。
アス「最後に言わせて」
イオ「なんだ?」
アス「私、本当にイオ兄ちゃんの妹で良かったよ」
イオ「俺も、アスの兄で良かった…」

物凄い光が心のしずくから発せられて、その光は空へと続く…
そして、空からキラキラした小さな光が舞い降りてくる。暖かい光…
地表に着くと同時に、一面焼け野原だったところが、一気に緑の芝生で覆われる。そして、驚異的なスピードで木が生長し、元のサウス島に姿を変える。
ある光は集まって生物を形作る。ポケモンの姿が。
島は元に戻ったのだ。イオとアスがいなくなったことを除いては…
ツキ「あれ…。俺生きてる…」
エフィ「私も…。暗い海の中で、意識が遠のいていって…」
ツキ「あっ。イオは!?アスは!?」
エフィ「私たちが捕まった後から、ずっと見てないから…。心配…」
ツキ・エフィ「探そう!!」
他のポケモンたちも必死で2匹を探したが、やはり何処にもいない…。それから、1年も経っても2匹は見つからなかった…。いつしか、イオとアスの2匹のことはポケモンたちの間で「伝説」という形で残った…。


ここは、水の都アルトマーレ。世界一美しい街。時折、ラティアスとラティオスが訪れる街ということでも有名である。そんな、街の片隅でひっそりと暮らす兄妹がいる。
?「お〜い。待てよ。今日も図書館に行く気かよ」
背丈からすると16歳くらいだろうか…少年がだるそうな声で、14歳くらいの少女に話しかける。
14歳くらいの少女「当たり前!本ってホント面白いんだもん」
少年は大きなため息をする。
16歳くらいの少年「今日は、水路に落ちるな…」
少年がそう言っているそばから、その少女は「わっ」っと声を上げて水路に落ちてしてしまう…。
16歳くらいの少年「はぁ…」
少年は呆れてものも言えないようだ。少女は水から顔を出すと、
14歳くらいの少女「そんなこと言われたって、人間の体って歩きにくいんだもん。イオ兄ちゃんはすぐ慣れたからいいけどさ」
「イオ兄ちゃん」と呼ばれたその少年は、
イオ「アス、もう人間になって1年なんだぞ。普通はもう慣れるだろ。さっさと着替えてこいよ」
アス「はい、はい」
イオはアスに手を差し伸べて水路から引きずり出す。

どういう経緯でこうなったのか俺にもよく分からない。
あの光の後、一瞬意識が飛んだかと思えば、目が覚めると人間になっていた…。それだけの事だ。
でも、俺はアスとまた暮らせてとても幸せだ。
それにポケモンの気持ちを読み取れる兄妹ってことで、この辺ではちょっとした有名人になっている。もともとポケモンだから当たり前のことなのだが…。
もし、俺たちの両親も同じようなことになってたら、もしかしたら会えるかもしれないな…。
島のみんなには、もう少し生活に余裕が出来たら会いに行きたいと思っている。みんな、人間の姿をした俺たちをみたらどういう反応をするんだろう…。

とにかく、今の生活は島の生活の時と同じぐらい楽しい。

アス「早く行こうよ!」
いつの間にか着替えを済ましたアスは、図書館のほうに駆けながら言う。
イオ「あっ。待てよ!」
アスの後を急いで追う。2匹…いや2人は狭い路地を駆けて行く…。

今日も空は何処までも何処までも、澄み渡っていた…

                 =ラティアスの日記・おしまい=
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[518]

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ぴくの〜ほかんこ