白いメタグロス | #1★2008.11/12(水)12:34 |
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>プロローグ:シャイン地方―そしてシェイド ヒカリとヤミ…それは決して合うことのない、正反対のもの――その2つの関係と似たような場所があった。 「シャイン地方」と、「シェイド」である。 シェイドは…魔界(まかい)に住む一部の魔族(まぞく)たちが封じ込められた空間。 そこに閉じ込められた彼らの目的は、自分たちの住む世界を広げることだった。 彼らは人間の住む世界に侵入(しんにゅう)し、そこを自分たちの世界にすることにしたのだ。 そう決めると、彼らは魔界をおさめる魔王に無断で、行動をはじめた。 人間界に侵入した当時の彼らの実力は圧倒的であり、シャイン地方に入るまでは向かうところ敵(てき)なしだった。 一方のシャイン地方は、一言で言えば「神々の守る地」。 はるか昔、すべての生き物の楽園として、神々が守るようになった場所である。 そこでは生きるものたちの幸せが、神々によって守られていた。 いかに敵なしだったとはいえ、相手は神の軍勢(ぐんぜい)…魔界ではさほどつよくなかった彼らに、勝ち目などなかった。 彼らの野望(やぼう)はここで終わり、神々によって「シェイド」に封印されたのだった。 …だが、これで終わりではなかった。 シャイン地方に、あらゆるわざわいを引き起こすという恐ろしい術「ダークフィールド」がかけられたのだ。 その術をかけた者の居場所(いばしょ)は―他でもない、シェイド空間。 封印された魔族軍が…数千年(すうせんねん)の時をへて、再び人間界に攻め入ろうしていたのだった。 ダークフィールドによる災害(さいがい)が、次々とシャイン地方に住む人や動物、ポケモンの命をうばい、大地にキズあとを残していく… そんな中…シャイン地方北西にある農夫の町「ファミル」でも、家族を失った孤児(こじ)が続出(ぞくしゅつ)するばかりであった… |
白いメタグロス | #2★2008.11/12(水)10:46 |
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>第1話:ルイとリフォン ザク、ザク…森にひびく、小気味よい2人分の足音。 1人は、白っぽい服そうの少年…名前は「リフォン=ポーラ」。 もう1人は、青っぽい服そうの青年…名前は「ルイ=フォート」。 2人とも、ダークフィールドで家族を失った孤児(こじ)。 今は義理(ぎり)の兄弟として、ファミル町で暮らしていた。 ルイは魔法(まほう)を研究(けんきゅう)している学者であり、今日はその研究でつかうキノコをさがしに来ていた。 『シャイン地方でうまれた人間は、なぜかうまれつき魔法をつかうことができる』 その理由を知ることが、ルイの研究テーマだった。 リフォン「いっぱい取れたね。」 キノコを入れているカバンは、ずっしりおもたくなっていた。 満面(まんめん)の笑顔(えがお)のリフォンのとなりにいる、ルイの表情(ひょうじょう)もどこかおだやかだった。 ルイ「うん、これだけあれば十分だよ。さて、そろそろ帰ろっか。今日はリフォンの大好きなフィールパイを焼くけど、どう?」 フィールパイとは、ファミルの農園(のうえん)で昔からつくられている「フィルの実」をつかった、あまくとろけるような味の焼菓子(やきがし)。 ちょうどポフィンに似たような方法でつくるのだが、リフォンくらいの年の子どもに人気がある。 リフォン「ホント?やったぁ♪」 ルイ「今日はけっこう歩いたしね。そのかわり、リフォンもつくるの手伝ってね。」 リフォン「OK、任せて♪」 リフォンのテンションは上がりっぱなし。 そんな和やかな空気だったが…そう長くはつづかなかった。 森の広場のような場所にさしかかったところで、それはいきなり茂み(しげみ)から飛び出してきた。 それは、どう見ても伝説にのこるポケモン…ラティオス。 どうやら、かなり警戒(けいかい)している様子。 ルイ「ラティオス…?伝説のポケモンが、なぜこの森に?」 ラティオス「…答える義理などない。これ以上、我らの世界に立ち入ることはゆるさん!」 リフォン「我らの世界?な、何のこと…?」 ラティオス「問答…無用ッ!!」 |
白いメタグロス | #3★2008.11/12(水)10:55 |
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>第2話:警戒の理由 ルイとリフォンはポケモンをもっていた。 …だが、戦う理由がわからないため、出そうとはしなかった。 一方、ラティオスはもう戦うことしか見えていない… ラティオス「行くぞ!ラスターパージッ!!」 ルイ「くっ…『風よ、舞え!ウインド!!』」 小さな竜巻を起こす魔法「ウインド」が、ラティオスの攻撃を打ち消した! ルイ「ラティオス、もうやめるんだ!キミと戦う理由なんてない!」 ラティオス「人間のコトバなど…信用できるものかッ!!」 どうやら、人間をあまりよく思ってはいないようだ。 その後も、ラティオスの攻撃がルイの魔法でかきけされる、そのくりかえしが続いた。 戦いそのものをまだ知らないリフォンは、ただそれを見ることしかできなかった。 それから数十分くらいたった、まさにそのときだった。 ?「…もう、やめて!」 その声とともに、ラティオスがあらわれた茂みから…こちらも伝説のポケモンである「ラティアス」が飛び出してきた。 ルイをかばうように立ち回ったそのラティアスは―よく見ると、片方のツバサにキズを負っていた。 どうやらラティオスは、彼女が回復するまで見守っていたようだ。 ラティオス「ティナ…!」 ティナ「お願い、もうやめて…今は人間がどうとか、言ってる場合じゃないでしょ…!」 キズを負っているだけでなく、そうとう疲れているようだ。 リフォン「…ティナ、だっけ。―動かないで、今助けるから!」 ティナをほうっておけなくなったリフォンは、さっそく行動に出た。 リフォン「『いやしの光よ、ここへ!ヒーリア!!』」 リフォンがつかったのは…体力を回復させる魔法『ヒーリア』。 これをうけたティナのツバサのキズが、みるみる治っていく…。 そして、ティナはすっかり元気になった。 ラティオス「バカな…人間が妹を救った…?」 ルイ「ラティオス…オレとリフォンは、最初からキミをキズつける気はなかったんだよ。」 |
白いメタグロス | #4★2008.11/12(水)10:55 |
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>第3話:初めてのコーヒー もうすぐ日がしずみ始めるという時間に、ルイたちは家に帰りついた。 あれから、警戒をといたラティオスは「トラン」と名乗った。 トランの話によれば…ティナとトランは、シャイン地方の西のはての島にある「夢幻神殿(むげんしんでん)」でくらしていたらしい。 そこは今や、復活(ふっかつ)しかかっているシェイドの影響(影響)によってキケンな状態になっており、2匹はそこから命からがら逃げてきた、という。 ちなみに…トランがルイたち(=人間)を警戒していたのは、シェイドのせいではない。 住んでいた神殿に入ってきたドロボウと過去に何度かトラブル(攻撃された、など)になったことがあり、トランはそのせいで人間不信(にんげんふしん)になったようだ(トランにとっては、仲間といっしょにいる場が「我らの世界」らしい)。 道中で聞くことができたのは、そこまで。 このあとどうするかは、家で話すことになった。 焼きあがったフィールパイが、4つに切り分けられ、それぞれの皿の上に乗る。 そのとなりでは、4人分のコーヒー(リフォンの分だけはホットミルク)が湯気を立てていた。 このいつものティータイムの中で、話が行われることになったのだが… トラン「…初めて見るな…」 そう、ティナとトランにとって、コーヒーは初めてだったのだ。 今さらそれに気づいたルイは、しまった、という表情になった。 と、その時…コーヒーに興味(きょうみ)がわいたのか、いち早くティナがコーヒーを口にした。 ティナ「ん…何か、ふしぎな味だね。にがいのに甘いなんて。」 …にがいのに、甘い…? コーヒーよりティナの言いまわしの方が気になり、トランもさっそく一口のんでみた。 トラン「…これは、確かに『にがいのに甘い』…!逆(ぎゃく)の味なのにここまで合うとは、すごいな…」 と、なにやら感動(かんどう)してしまった様子。 リフォン「(…ただ砂糖(さとう)を入れてるだけなのにね…)」 にがいコーヒーに甘い砂糖を入れてるのが、『にがいのに甘い』理由である。 それが当たり前だと思っていたリフォンは、2匹のリアクションにボーゼンとしていた。 ルイ「と、とりあえず気に入ってもらえてよかったよ^^;」 そう言ったルイも、どこか困惑(こんわく)していた。 このなんとも言えない空気の中、いよいよ話し合いが始められるのだった。 |
白いメタグロス | #5★2008.11/12(水)10:56 |
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>第4話:決意 今分かっているのは、シェイドの影響が夢幻神殿に出ていることだけ。 それ以外には、まだ何の手がかりもなかった。 リフォン「…もうこうなったら、神殿に行って調べるしかないんじゃない?」 トラン「たしかに、そうする間もなくオレとティナは逃げてきたが…行ったところで、命の保証(ほしょう)はできないぞ。」 ルイ「命の保証はできない…?それって、まさか…」 ティナ「もう、魔族が何匹か出てきたの…今、神殿はそいつらに乗っ取られてるの。」 魔族とは、文字通り魔界の住人である。 本来はポケモンも魔族も同じ種族(しゅぞく)だったのだが…はるか昔にたびたび起きた同族間(どうぞくかん)での戦争がきっかけとなり、すっかりバラバラになってしまったという。 そのうち、魔界に住むようになった者たちは「魔族」、それ以外の世界に住むようになった者たちは「ポケモン」と呼ばれるようになった。 ポケモンと呼ばれる者たちに比べ、魔族と呼ばれる者たちはどの時代でも「戦争を引き起こす方」だったこともあり、他の種族に対してひどく攻撃的(こうげきてき)となっている。 トラン「ヤツらは自分とはちがう種族をひどくきらっている…その上シェイドに封印されたのだから、そうとう恨んでいるはずだ。そいつらがいる中に入るとなれば…ただではすまされないぞ。」 リフォン「ただじゃすまないのは、覚悟(かくご)の上だよ。」 周りの重い空気をふきとばすかのように、リフォンはそう切り出した。 リフォン「このままあいつらが復活したら、もうこの世界はおしまいだよ…?何もせずにそうなるなんて、絶対ヤだよ!」 間接的(かんせつてき)にとはいえ、リフォンはシェイドによって両親を失っている。 ルイより幼いリフォンにとって、そのことによる心のキズは、ルイ以上に深い。 その言葉の後にリフォンのこぼした涙の背景には、それが深くかかわっていた。 ティナ「…わたしも、リフォンくんと同じ気持ちだよ。みんなの幸せをうばうなんて…絶対許さない!」 トラン「ティナ…今は、恐れている場合じゃなかったな。連中の好きにさせたくないのは…オレも同じだ。」 ティナとトランも、その心からしだいに恐怖(きょうふ)がなくなってきていた。 シェイドに封印された魔族は、今にも世界をその手におさめようと血眼(ちまなこ)になっているはず。 何もせずに、そいつらに世界をうばわれてたまるものか。 その気持ちが、それまで心の中にあった恐怖に打ち勝ったのだ。 ルイ「―行こう、夢幻神殿に。オレたちで、あいつらを止めに!!」 全員「オォーッ!!」 かくして、彼らの戦いは始まった。 打倒シェイドに封じられた魔族―その決意とともに!! |
白いメタグロス | #6★2008.11/12(水)10:56 |
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>第5話:貨物列車 シャイニングライン 翌日…一行はさっそく行動を開始した。 トラン「この気配は…どうやら、ヤツらも動き始めたようだ。」 リフォン「動き始めたって…どういうこと?」 トラン「魔族軍(まぞくぐん)が、シャイン地方に侵入し始めた…これで、空を飛んで行くことはむずかしくなった。」 ティナとトランは、1人か1匹までなら人間とポケモンを乗せ、空を飛ぶことができる。 が、トランの言葉通りなら、その魔族軍は空の上にもいるはず… とうぜんルイとリフォンは空中になれてないので、その中を進むのは無謀(むぼう)でしかない。 ティナ「そんな…」 ルイ「…大丈夫。まだ方法はあるよ。」 トラン「…あれか…?」 ファミル町を出て30分ほど歩いたところにあるガケの上に、一行は移動した。 下にあったのは…古さびた線路(せんろ)と、古さびた駅。 その線路は、ところどころに森の広がる山間(やまあい)の先へと続いていた。 ルイ「そうさ。ここから列車に乗れば、西の港町へすぐに行けるよ。」 ティナ「そっか…!そこから船に乗って行くんだね!」 敵はまだ、ここまでは来ていない。 ルイはトラン、リフォンはティナの上に乗ると、ガケの上からそのまま下の駅へと降りた。 …もうまもなく、無人の駅に古びた機関車(きかんしゃ)が入ってきた。 だが…それはニモツを運ぶための貨物列車(かもつれっしゃ)であり、客が乗る列車ではなかった。 リフォン「あれって…確か駅は素通りしていくんだよね?」 ルイ「そうだよ。これの後に来る列車に乗りこむからね。」 ―ところがそれは素通りせず、ルイたちの目の前で止まった。 何が何だか分からないルイたちの前に、その列車の運転手が降り立った。 グレーの地味な服そうで、すすけた顔とすすけたゴーグルが特徴的(とくちょうてき)な青年。 その青年を見たルイは―ハッとした。 ルイ「き、キミは…!」 ?「よっ、久しぶり!シャイン地方の運び屋『シャイニングライン』…乗ってくかい?もちろんタダでOKだぜ。」 どうやら、彼はルイの知り合いのようだ。 |
白いメタグロス | #7★2008.10/29(水)15:14 |
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>第6話:ルイとリーク ルイたちは青年の言葉に甘えることにして、列車に乗りこんだ。 青年の名はリーク=コウルマン―ルイが前に住んでいた国「エネリス」に住む、ルイの大親友だった。 その国では石炭(せきたん)が多くほり出せるため、それを取っては他の国に売るという「炭鉱業(たんこうぎょう)」がさかんであった。 そして、石炭をのせた列車を運転し、石炭を西の港町へ運ぶのが、リークの仕事。 そのためか、ルイたちの乗った先頭車両(せんとうしゃりょう)の後ろには、石炭を積んだ荷台(にだい)がズラリとならんでいた。 リーク「…そういや、お前エネリス魔法大学にいたよな?何か中退して旅に出たって聞いたが…何があったんだ?」 ルイ「実はね…」 ダークフィールドで両親を失ったため、中退せざるをえなくなったこと… ファミル町でリフォンといっしょに暮らすことにしたこと… 森の中で起きたこと… そして今何をしようとしてるのか… 話せるだけのことを、ルイはリークに説明した。 リーク「かーっ、大きく出たなぁ!シェイドの連中をぶっとばす、か…けどよ、ヤツらに勝つ方法とかは考えてるのかい?」 ヤツらに勝つ方法…そう言われて、ルイたちは何も言えなかった。 方法どころか、敵のことじたい、分からないことだらけなのだ。 ティナ「それは、分からないけど…でも、何もしないまま終わりたくないの。」 リーク「なるほどね…まぁ、やれるだけやってみな。ただ、ムチャはするなよ?」 ―その時だった。 列車のまわりを取りかこむように、とつぜん現れた鳥の大群。 それはただの鳥ではなく…カラスをそのまま大きくしたような姿をした「魔族」だった。 リーク「な、何だ、こいつら…!?」 トラン「くっ、もうここまで来たのか…気をつけろ、こいつらは『ランドクロウ』、れっきとした魔族だ!」 ランドクロウ―直訳(ちょくやく)すると、大陸のカラス。 一匹一匹はさほど強くないが…100匹をゆうにこえる大群でおそってくることが、この魔族の恐ろしいところである。 リーク「やべぇな…後ろには予備(よび)の燃料(ねんりょう)が――ッ!!」 言い終わる前に、一匹のランドクロウがおそいかかってきた。 とっさにくり出されたリークの相棒、マッスグマの技によってどうにかなったが…敵はどうやら、燃料だけでなく動力部(どうりょくぶ)もねらっているようだ。 ルイ「燃料も、動力部も守らないと…リーク、ここは二手に分かれよう!」 リーク「名案だな…うし、乗った!オレはここを守るから、お前らは予備の燃料を頼むぜ!」 ルイ「あぁ、了解ッ!」 こうして、ルイたちは燃料を、リークは動力部を守ることにした。 これが…一行にとって、初めての魔族との戦いとなる。 |
白いメタグロス | #8★2008.11/01(土)19:49 |
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>第7話:列車の上の戦い リフォン「さぁ、行くよ!エリス!」 ルイ「出番だよ、グラン!」 燃料のつまれた後ろの車両に移動した一行。 着くなり、リフォンは相棒のイーブイ「エリス」を、ルイは相棒のグラエナ「グラン」をくり出す。 今いるところは屋根はないが、戦うためのスペースはちゃんとあった。 リフォン「エリス、スピードスター!―『出でよ、みなぎる勇気!マージ!!』」 エリス「きゅいっ!!」 リフォンがつかったのは、ポケモンの技でいう「てだすけ」に似たような効果を持つ魔法「マージ」。 エリスの放ったスピードスターは広い範囲に及ぶため――多くのランドクロウに、強化されたスピードスターがヒットしたのだ。 ルイ「グラン、シャドーボールだ!―『炎よ、焼きつくせ!フレイア!!』」 グラン「ガゥッ!!」 ルイは攻撃魔法を得意とするため、パートナーとの連携攻撃に出た。 いずれも遠距離攻撃(えんきょりこうげき)であるため、こちらも数匹の敵にヒットした! トラン「行くぞ…『りゅうのはどう』!!」 ティナ「お兄ちゃん、行くよ!『てだすけ』!!」 さすがに兄妹の連携だけあり、息がぴったり合っていた。 もともと威力の高い技なので、多くのランドクロウをしとめることができた。 ――だが、一行がいくら倒しても、ランドクロウの群れはいっこうに減らない…! トラン「くっ、これではキリがない…!」 ?「困りますなー。私の作戦のジャマをされては、ね…」 ランドクロウと戦い始めて、およそ10分たったその時… その声とともに、それは一行の前にあらわれた。 |
白いメタグロス | #9★2008.10/29(水)15:15 |
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>第8話:岩の怪鳥 ルフ・イーグル それがあらわれると同時に、まわりのランドクロウの群れは、いっせいにリークのいる先頭車両へと向かっていった。 それの見た目は巨大な鷲(わし)だが…その体は岩でできており、ツバサには羽根の代わりに、とがった小岩が並んでいる。 ルフ・イーグル―怪鳥(かいちょう)ルフがモデルとなった、まさに岩の怪鳥。 どうやら、ランドクロウが一丸となってリークを攻撃し、ルフ自身がルイたちの相手をすることにしたようだ。 トラン「『ルフ・イーグル』…!このランドクロウの群れは、お前が…!?」 ルフ「その通り、ランドクロウどもは私の忠実なるシモベ。魔族軍の活動のためには物資(ぶっし)が必要なものでしてね…シャイン地方中をつなぐこの列車を強奪(ごうだつ)することにしました。―ですが、どうやらそれ以上の収かくになりそうですね。」 ティナ「それ以上の収かくって…な、何を言ってるの…?」 ルフ「―ティナ、トラン…あなた方は我々のブラックリストにのっています。ここであなた方を始末すれば、軍も活動しやすくなることでしょうね。」 と、ルフ・イーグルはツバサを大きく広げ、かまえをとった。 ルフ「始める前に…言い残しておきたいことはありますか?」 そのルフの一言には、絶対的な自信がこめられていた。 どうやら、彼はそうとうな自信家(じしんか)のようだ。 ティナ「これ以上、あんたの好きにはさせない!」 トラン「悪いが、カクゴしてもらうぞ…!」 リフォン「絶対…あきらめないよ!」 ルイ「軍がかかわっているのなら…なおさら見逃すわけにはいかないね!」 一行もかまえをとり、ルフと対峙(たいじ)した。 ルフ「なかなか威勢(いせい)がいいようですね。―いいでしょう。あなた方がそう望むのならば…ここで消えていただきましょう!!」 |
白いメタグロス | #10★2008.11/01(土)19:56 |
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>第9話:ボスバトル1―ルフ・イーグル トラン「くらえッ、『りゅうのはどう』!!」 ティナ「『てだすけ』!!」 2匹の放った連携技は、確かにルフに命中した。 だが、それでもあまり大きなダメージにはならなかったようだ。 トラン「くっ、何てヤツだ…!」 ルフ「この程度とは…攻撃とは、こうするものですよ。」 ――刹那(せつな)、ルフの翼から数枚の岩の羽根が、ミサイルのように発射された! ティナ「きゃあっ」 その攻撃は全体におよび、ルイたちは全員、その技に当たってしまった。 ルイ「…岩の羽根…これだ!」 何やらひらめいたルイは、グランに『はかいこうせん』を指示した。 その後、ルイは魔法をつかう準備(じゅんび)に入る。 ルイ「グラン、オレの魔法にお前の技を合わせるんだ!―『水流よ、押し流せ!アクオス!!』」 グラン「ガゥッ」 そのとき、ルフ自身の予想を上回る現象が起きた。 グランの「はかいこうせん」にルイの「アクオス」が混ざり合ったかと思うと――次の瞬間、「アクアブラスト」という別の技になったのだ。 ?「ぐはぁッ…こ、この力は…!?」 ルイ「合成魔法(ごうせいまほう)さ…もっとも、今回のはそれを応用(おうよう)したものだけど、ね。」 合成魔法(ごうせいまほう)とは、文字通り2つの魔法を同時につかうこと。 本来は魔法同士の組み合わせで行うのだが、さっきのようにポケモンの技と魔法を組み合わせると― 完全にシンクロし、まったく別の技になるという。 ルフ「…甘く見すぎていたようですね…」 リフォン「(やばっ)エリス、ボクに『てだすけ』をつかって!―『いやしの光よ、ここへ!ヒーリア!!』」 エリス「きゅいーっ!!」 ルフが本気になったことに気づいたリフォンは、エリスとともに仲間全員を回復させた。 さっきのアクアブラストと同じ原理で、「てだすけ」は回復魔法の効能を高める効果があるのだ。 その読みどおり、ルフはついに必殺技にふみ切った。 ルフ「…この技のもと、吹き飛ぶがいいッ!『ロックバード』!!」 ―直後、ルフは床(ゆか)を強くけると、そのまま遠くへ飛び去った。 その途中、ルフの岩のツバサが巨大化していく… そして―その状態のまま、ルフはこちらへ猛スピードでつっこんで来た! トラン「ヤツめ、列車ごとオレたちを吹っ飛ばす気か…!」 リフォン「トランさん、ティナさん、エリス…ボクに『てだすけ』をつかって!」 ティナ「えっ、いいけど…どうするの?」 リフォン「お願いだよ!ボクに考えがあるんだ!」 トラン「…、分かった。リフォン、お前を信じるぞ。」 ティナ「…うん、OK!リフォンくん、がんばってね!」 エリス「きゅきゅいっ!!」 ティナ、トラン、エリスの『てだすけ』を、リフォンは受けた。 そして―リフォンは行動に出た! リフォン「ルフ…これで終わりだ!―『守りの力よ、ここへ!ガード!!』 ―直後、リフォンの張った『ガード』のバリアに、つっこんできたルフが衝突(しょうとつ)した。 てだすけによって強化されていたため、そのバリアは衝撃(しょうげき)に耐えきることができた。 結果として、衝突によるショックは、すべてルフに跳ね返されたのだ。 ルフ「ぐッ…この私が、こんな…こんなブザマな負け方をしようとは…ッ」 ショックに耐えきれなかったルフは―そのまま消滅した。 己のくり出した必殺技による、自滅。 こうして、ルイたちはルフ・イーグルとの戦いに勝ったのだった… |
白いメタグロス | #11★2008.10/08(水)19:32 |
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>第10話:リークとの別れ ルイたちの活やくにより…ルフ・イーグルの襲撃は阻止された。 だが、喜んでばかりはいられない。 100匹ものランドクロウの攻撃により、動力部をやられてしまったのだ。 リーダーであるルフ・イーグルを失い、ランドクロウたちは退却したものの…これで列車は動かなくなってしまった。 リーク「すまねぇ…守りきれなかった。」 ティナ「気にすることないよ、それより…あなたが無事でいてくれて何よりだよ。」 トラン「だが…これからどうする?オレたちはともかく、お前にとっては仕事にならないはずだが…」 リーク「…それなら大丈夫だ。今、エネリスの事務所(じむしょ)に連らくしたから、じきにレッカー車両が来るはずだ。この列車はそいつに引っぱってもらうんだが…この分だと、エネリスに戻るしかねぇ。」 レッカー車両とは、こわれて動かなくなった列車を代わりに引っ張って動かすための列車である。 西の港町の事務所からよぶこともできるが…このさわぎで売り物の石炭がかなり減ってしまったので、出直すしかなくなったのだ。 リーク「だから…悪いが、西の港町までは行けない。エネリスに戻って出直すとなると時間がかかるからな…時間もそれほどないんだろ?」 ルイ「ここまで乗せてもらっただけでも、すごく助かったよ。―また会えるといいね、リーク!」 リーク「ルイ…あぁ、そうだな。―また会おうぜ、ルイ!」 リークと別れた一行は、しばらく線路の上を歩いていた。 キケンをともなうが、西の港町への一番の近道は、もうそれしかない。 ここでも敵がいつ来てもいいように、一行は決して飛んでいこうとはしなかった。 やがて、線路の下に森が見えてきた―ここで、いきなりティナが立ち止まった。 一見するとティナの表情は不安そうだったが、かすかに希望の感情も入りまじっている。 トラン「…ん?ティナ、どうした?」 ティナ「何か…森が呼んでいるような気がするの。あの森、きっと何かがあるのかも…」 |
白いメタグロス | #12★2008.10/10(金)11:57 |
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>第11話:眠りの森 『あの森には何かがある』 ティナの感じ取った「何かの気配」が気になり、一行は森へと入っていくことにした。 彼らの入っていった森は―いつしか「眠りの森」と呼ばれるようになった森である。 まるで森が深いねむりに落ちているかのように、そこではほとんど音がしない。 それどころか、この森には植物以外の生き物はまったく見かけられないという。 進むにつれ、どこを見渡しても同じような風景しか見えなくなってきた。 ほとんど無音であるため、時が止まっているかのような錯覚(さっかく)すら感じられる。 トラン「…しずかすぎるな…」 ティナ「何だか、不安になってくるね…」 その上、空はすでにオレンジ色になっており、今はもう夕方。 このまま辺りが夜のヤミにつつまれたら、もう進むどころではない。 リフォン「ね、ねぇ…まさか迷ってたりとかしてない、よね…?」 ティナ「うん、大丈夫。気配はこっちの方から感じるから、まだ迷ってないよ。」 ルイ「その気配だけど、どんな感じ?」 ティナ「うーん…何か、すごいチカラの持ち主みたい。敵じゃなさそうだけどね。」 やがて、辺りがだんだん暗くなってきた。 まもなく、夜が訪れようとしている… そろそろ進むのがきびしくなってきたので、一行はこの辺で休むことにした。 パチ、パチ… 音のない森に、たき火の音だけがやけに大きくひびく。 一行は、近くに生えていたオボンの実だけを夕食として食べていたが―それだけで十分だった。 辺りがブキミなくらいしずまり返っているため、食欲がなかなかでないのだ。 リフォン「…ねぇ、やっぱり変だよ、この森…」 トラン「そうだな…生き物がまったくいないのは、さすがにありえないな。」 ルイ「もしかして…ティナの感じていた気配と、何か関係があるのかもしれないね。」 リフォン「ね、ティナ。…その気配って、今も感じられるの?」 ティナ「うん…それもね、入った時よりも気配が強くなってるの。たぶん、だいぶ近くまで来てると思うよ。」 その後、寝込みをおそわれないよう、交代で見はりをしながら休むことにした。 行動開始から…今、初日が終わろうとしていた。 |
白いメタグロス | #13★2008.10/29(水)15:11 |
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>第12話:深まるナゾ 翌日―ルイたちは、ふたたび気配のする方へと歩き出した。 進むにつれ、辺りの景色が昨日とは少しちがうものになってきた。 あちらこちらの地面からつき出た、黒っぽい石の柱。 そのすべてに、古代文字(こだいもじ)のようなもようが、細かくきざまれている。 遺跡(いせき)とかにありそうなものだが、なぜ森にあるのだろうか… ティナ「!…気配が強くなった…この辺りだよ!」 ルイ「…やっぱりね。」 彼の口ぶりは、何か知っているかのようだ。 トラン「ん?何がやっぱりなんだ?」 ルイ「ここらにある石柱は『ルーメイス』っていってね、何かを封じるためのものなんだ。…でも、石柱から魔力がもれ出しているから、もうその封印は解けているのかも。」 ティナ「あ、もしかしたら…その封印から解かれた何かが、わたしの感じてた気配かも…」 やがて、ルイ一行は広場のような場所に出た。 中心には巨大な木があり、それをかこむように、例の古代文字のきざまれた石柱がならんでいる。 どうやら、道はその木のウラから、まだ先へつづいているようだ。 トラン「ッ!…気をつけろ、その木から魔族の気配がする…!」 リフォン「それって、ティナの感じていた気配の…?」 ティナ「…ううん、ちがうみたい…!」 ?「…あら?まだこの森に眠ってないコがいるなんて…」 その言葉とともに、その木から―ひそんでいた魔族が姿をあらわした。 |
白いメタグロス | #14★2008.10/29(水)15:17 |
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>第13話:狂気の妖蛾 ヒプノ・フライア 巨大な木からあらわれたのは、巨大なガのような姿をした魔族だった。 体の色はすき通るような青で、羽だけが虹色(にじいろ)と、とてもガの魔族とは思えないほどきれいな印象。 そして…なぜか声ではなく、テレパシーをつかって話しかけてくる。 ?「わたくしの名はヒプノ・フライア…以後お見知りおきを、ボウヤたち。」 ティナ「…まさか、この森はあなたが…?」 ヒプノ「その通り―魔族軍が動いていることはご存知かしら? 今の本拠地(ほんきょち)は夢幻神殿だけど、これだけでは足りませんわ。―そう、今のわたくしたちには前線基地(ぜんせんきち)が必要ですの。」 前線基地とは、本拠地とは別の場所につくる、いわば「第2の本拠地」。 それをつくる事で、本拠地から遠くへ攻め入った場合も、そこを利用すればいつも万全な状態で侵攻していけるのだ。 リフォン「それじゃあ…この森を、その前線基地に…?」 ヒプノ「さっしがいいのね、ボウヤ…でも、それだけではつまらないでしょう?今、この森でくらすコたちは眠らせてるのだけど、それと同時に洗脳(せんのう)してますの。次にそのコたちが起きた時…そのコたちは、わたくしたち魔族軍の忠実な手下になりますのよ。」 すると、ヒプノ・フライアは姿勢をひくくして、かまえをとった。 ヒプノ「さて…眠らないのであれば、今のアナタたちはキケンですわね。わたくしが、直接始末してあげますわ。」 彼女にとっては緊急事態(きんきゅうじたい)のはずだが、それでもヒプノはまったく動じていない。 自信家だったルフに対し、どうやらヒプノはかなり冷静なようだ。 ティナ「…許さない…あんたなんかに、この森は渡さない!」 トラン「これが運の尽きだったな、ヒプノ…お前を、ここで倒す!」 リフォン「これ以上、お前たちの好きにはさせないよ!」 ルイ「ヒプノ・フライア…お前のたくらみもここまでだ!」 一行もかまえをとり、ヒプノに立ち向かう。 ヒプノ「あらあら、かわいそうなコたち…相手が悪かったということに、まだ気がついていないようですわね。……いいですわ。アナタたちに…身のほどを思い知らせてあげますわ!」 |
白いメタグロス | #15★2008.11/01(土)20:05 |
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>第14話:ボスバトル2―ヒプノ・フライア ヒプノ「さぁ、絶望なさい!『フィアパウダー』!!」 先手をとったヒプノは、てはじめにルイとリフォンの魔法を封じる技「フィアパウダー」をつかった! こうして徐々に相手を不利にしていくことが、ヒプノの得意な作戦のようだ。 ヒプノ「ふふ、これでそこの2人は戦力外になりましたわ。」 トラン「まだだ!まだオレたちがいる!『ラスターパージ』!!」 ティナ「ポケモンのチカラ、甘く見ないで!『ミストボール』!!」 リフォン「エリス、『てだすけ』でティナとトランをサポートして!」 本来『てだすけ』は単体用なので、2匹同時にかけると、その効果は半分に減ってしまう。 だが――どうやらヒプノにはエスパータイプの技はこうかばつぐんだったらしく、これで手痛いダメージを与えることに成功した! ルイ「グラン、『ちょうはつ』だ!」 そこに、タイミングよくグランの『ちょうはつ』が決まり、もはやヒプノは攻撃しかできなくなった! ルイ「よし、これなら行ける!」 ヒプノのやっかいな戦法も、これでしばらくはつかえない。 その上、ティナとトランの技もこうかばつぐん―戦況はルイたちが有利かと思われた。 だが…そうはいかなかった。 ヒプノ「それで勝ったつもりですの?本番はここからですわ!―『フライヤースティング』!!」 フライヤースティング―それは矢状の真空波を相手全体に向けてはなつ、かなりの大技。 そう、それはヒプノが隠し持っていた必殺技だった。 トラン「ぐッ…」 ルイ「つ、強い…!」 ヒプノ「あらあら、当たりどころが悪かったようですわね。次で終わらせてあげますわ!」 ?「…やはり、お前のしわざだったか…」 その声とともに、それはルイたちの前に出た。 姿はラティオスに似ているが―その体は、同じラティオスであるトランより二回りも大きい。 その身にはかすかにオーラをまとっており、その手には大剣がにぎられている。 ルイ「キ、キミは…?」 ?「リオ・ブレイブ―そう呼ばれている。」 振り向きもせず、それだけ答えると…リオ・ブレイブはヒプノに剣先をむけた。 ヒプノ「リオ・ブレイブ…!あなたはたしか、封印されているはず…」 リオ「その封印が解けた理由は、ただひとつ―過去をふたたび、過去へと戻すためだ。」 直後、リオ・ブレイブは大剣をかまえ…一気に間合いに入った! ――神々しいかがやきをはなつ大剣で、強力な斬撃(ざんげき)を与える剣技『アークディヴァイド』がくり出された! そのチカラの差は、歴然としかいいようのないほど大きかった。 ヒプノ「くっ、さすがですわね…けれど、わたくしを倒したところで、もうどうにもなりませんわ。…ふふ…せいぜい、己の運命に…苦しむといいですわ…」 その言葉を残し―ヒプノ・フライアは消滅した。 トラン「なぜ、助けた?いや、その前に…」 お前は何者だ?と聞きかけたトランを、ティナが止めた。 トラン「ティナ…?」 ティナ「わたしの感じてた気配と、リオさんの気配…すごく似てるの。リオさんは…わたしたちが探していた、気配の持ち主だよ。」 |
白いメタグロス | #16★2008.10/29(水)15:07 |
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>第15話:戦士としての運命 ヒプノ・フライアとの死闘は…リオ・ブレイブの助けによって決着がついた。 背中に背負った鞘(さや)に剣を収めると―リオ・ブレイブは、初めて一行に向かい合った。 リオ「状況は分かっている…夢幻神殿が、魔族軍の手に落ちたようだな。…俺のことを話す前に、お前たちに見せるべきものがある。」 ティナ「見せるべきものって…?」 リオ「この先にある。―俺について来い。」 木のウラから続く道へ入っていくリオと―それに続く一行(自己紹介はその道中で終えた)。 その道の両端(りょうはし)には、あの古代文字のきざまれた石柱が立ちならぶ。 リフォン「ねぇ、リオさん…この先には何があるの?」 と、リフォンはダメもとで質問してみた。 リオは見たかぎりでは無口のようであり、とても答えてくれそうにないのだ。 だが…リオは答えてくれた。 リオ「夢幻の祠(ほこら)だ。俺はそこに自らを封印していたが…軍の復活と同時に、俺も封印から目覚めたのだ。」 自らを封印した? なぜそうする必要があったのだろうか… トラン「なぜ、そこに自分自身を封印した?そうする理由がいまいち分からないんだが…」 リオ「…潮時(しおどき)をむかえたから、というのが一番の理由だ。たしかに俺は、この地で魔族と戦った…それで平和になったのだが、名声を得るためにそうしたのではない。俺はあくまで、平和を守るためのヤイバ…平和な世には不要な存在。こうして封印から目覚めたのも、世の中が平和ではなくなったからにすぎないのだ。」 そう言うリオの表情は使命感(しめいかん)に燃えているようだが…その考え方には、どこか違和感があった。 ―そう、自分自身のことについては考えてなく、自分は平和を守るためだけの存在だと考えているのだ。 ルイ「それ…本当にキミの望んだこと?そういう生き方をしてて、不安とか感じなかったの?」 リオ「ルイ、といったな…お前の言いたいことは分かる。だが…結局のところ、それが俺の役目であり、俺の宿命だ。少しでもためらえば、敵にその隙をつかれ、命取りとなるだろう。戦士とは文字通り『戦う者』…一瞬の迷いやためらいですら、戦場では許されないのだ。」 |
白いメタグロス | #17★2008.10/29(水)15:04 |
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>第16話:ラスターソードを受けつぐ者 やがて、リオの言う「夢幻の祠」の到着した。 まわりに円を描くように立ちならぶ石柱は、見た目はこれまで見てきたのと同じだが…大きさは5メートルは軽くこえるほど巨大になっている。 そして、その中心には…古代文字がびっしりと書かれた石碑(せきひ)があり、その手前にある台座には、なぜか大剣がつきささっていた。 リオの持っている剣とはちがうモノのようだが… リフォン「何、この剣…近づいただけで、チカラが伝わってくる…!?」 リオ「この剣の名はラスターソード…千年前の戦争でつかわれていた武器だ。俺は自分を石碑に封印し、そこからこの剣を守っていた…この時がくるまで、な。」 そう言うと…リオはなぜか、トランの方を向いた。 リオ「トラン、といったな…この剣はお前がつかうのだ。」 トラン「ッ!?」 伝説ともいうべき大事な大剣を―自分がつかう!? トランの今の表情は、そう言わんばかりであった。 トラン「ば、バカを言うな!会って間もないオレに、そんな大切なモノを…」 リオ「たしかに、この剣は誰かの手にわたるべきではないが―お前はこの剣と運命をともにすべきなのだ。」 そう言われ、トランは頭の中がまっ白になった。 千年前の伝説の剣と、生まれて十数年くらいの自分…何の関係もないのに、なぜ運命をともにすることになる? 考えてみたところで…これまでの自分では、答えを出すための知識も、経験もない…答えなど、出せるはずがない。 …もしかしたら、その答えは…この剣がにぎっている? さんざん考えた末に、トランはその可能性にかけてみることにした。 トラン「…、分かった。この剣をつかうことで、その答えがつかめるのなら…」 ルイたちは、トランのその意思に意義(いぎ)を出そうとはしなかった。 リオ「―ありがとう。この剣をつかう内に、その答えは見つかるはずだ。」 剣の手前まで進み出したトランは、慎重に剣の柄(つか)に手をつけた。 トランが剣を抜いた瞬間…青白い光が、あっという間に辺り一面に広がった。 リオ「トラン、剣を上に向けるのだ!それが、運命をともにする誓いとなる!」 トラン「くっ…うおぉーッ!!」 千年も封印されていた剣を、ほぼ無理やり叩き起こしたのだ。 長年台座に収まっていたチカラは、いきなり抜き出されたことで行き場を失い…結果、あばれ出してしまった。 あばれるチカラを強引に押さえ込み、トランは―今、その剣を天高くかかげたのだった…! |
白いメタグロス | #18★2008.10/29(水)15:03 |
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>第17話:アルミナへ… トランは…見事、ラスターソードを受けつぐことに成功した。 と、その時…天にかかげられたラスターソードが、光のつぶとなり、トランの中へ吸い込まれるようにして消えた。 トラン「なっ…ラスターソードが、消えた…?」 リオ「消えたのではない…お前の中に収められたのだ。誓いを立てて契約を結んだ者は、その剣を己の心の中にしまうことができる。これで、ラスターソードはお前の意志で、自在に出し入れできるようになったのだ。」 そう言われたトランは、さっそく試してみた。 …どうやら、剣を取り出すことをイメージすれば剣を出すことができ、反対に剣をしまうことをイメージすれば剣を心の中にしまうことができるようだ。 リオ「それと、その剣はお前にゆかりのあるモノだ。つかっていけば、その剣にひめられた必殺技を出せるようになる。最初は慣れないと思うが、きっとお前の助けになってくれるはずだ。」 トラン「そうか…ありがとう。とにかく、慣れるしかないか…」 その後、話題は「今後の方針」にうつった。 リオ「―そういえば、お前たちの目的は夢幻神殿を取り戻し、魔族軍を止めることだったな。となると、行かねばならない場所がある。」 ルイ「行かねばならない場所…?」 リオ「月神の神殿…アルミナだ。」 アルミナ…それは天空にあるという、シャイン地方になくてはならない神殿。 アルミナからふりそそぐ光が、魔法をつかうのに必要となる魔法素(まほうそ)をつくり出すため、アルミナがなくなれば魔法自体がつかえなくなってしまうという。 そのアルミナのほぼ真下にシャイン地方があるから、そこに住む者は生まれつき魔法がつかえるのだ。 ここまでのことを、リオは一行に説明した。 ルイ「アルミナ…話には聞いてたけど、まさか実在してたとはね…」 リフォン「でも、どうやってそこまで行くの?今、空の上はキケンだって聞いてるけど…」 リオ「残念だが、飛んでいくしかない。そこで…」 そこまで言い終えると、リオはおもむろに自分の大剣を鞘から抜いた。 リオ「…俺が敵を迎撃(げいげき)し、ルートを確保(かくほ)する。 お前たちは、その俺の後について来るのだ。」 たしかにリオは強いが…その作戦はあまりにもキケンすぎる。 だが…もうそれしかないようだ。 一行は、リオの作戦に乗ることを決意した。 リオ「アルミナには、そこを守るクレセリア『ノルン』がいるのだが…今、彼女の身に危機が迫っている。もうすぐ日が暮れるが…時間がない。行くぞ!」 ルイはトラン、リフォンはティナの上に乗った。 オレンジ色の夕日を背に、一行はひたすら「アルミナ」を目指すのだった… |
白いメタグロス | #19★2008.10/29(水)15:01 |
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>第18話:空中戦 アルミナがあるのは、北の方角。 先を急ぐ一行…だが、そうカンタンにはいかなかった。 前方の雲の合間から、翼竜のような姿をした魔族『ワイヴァーン』の群れが出現。 もちろん、それらは魔族軍である。 リフォン「うわ、強そう…;」 リオ「(ティナとトランが人を乗せている以上、戦うのはキケンか…)一気に切り抜けるぞ。」 ワイヴァーンの群れの行動パターンは2種類。 ツバサやツメなどをつかった直接攻撃と、口から吐き出す炎である。 リオ「はぁッ」 直接向かってくるワイヴァーンを、リオの剣が斬る。 やはりリオのチカラが強すぎるのか、斬られたワイヴァーンは一撃で消滅していった。 リフォン「『はやての風よ、ここへ!クイック!!』」 一方、ルイたちはリオの後ろの位置をキープして飛びながら、向かってくる炎攻撃をよけていた。 その時にリフォンが絶えずつかっていたのは、仲間全員のすばやさを一時的に上げる魔法『クイック』。 やや効果が切れるのが早い魔法だが、発動までに時間があまりかからないので、相手の攻撃に気をつけながらつかうことができる。 リオ「まだ、大丈夫か?」 もちろんそれは、ルイたちに対しての言葉である。 ルイ「う、うん、何とかね…」 リオ「そうか…アルミナまではもうすぐだ。皆…気を抜くな!」 一見すると、そう声をかけるリオは、仲間全員を励ましているかのように見える。 だが…ティナにはなぜか、それだけではないと思えてならなかった。 ティナ「(…そういえば、会って間もないわたしたちに、リオさんはどうしてここまでしてくれるのかな…?わたしとお兄ちゃんが特別だから…?それとも…ううん、今はなやんでる場合じゃないよね。)」 そう割り切り、直後に飛んできた敵の炎攻撃をかわしたティナ。 ふと背中に乗せているリフォンを見ると…真剣な顔つきで『クイック』の詠唱(えいしょう)に集中していた。 よほどチカラをはげしくつかっているのか、額(ひたい)には少し汗をかいている。 ティナ「(リフォンくんも、こんなにがんばってる…わたしもしっかりしなきゃ!)」 そうして、飛び続けること三、四十分後… 青白い満月がのぼり始めた時、一行は「月神の神殿 アルミナ」へと到着した。 |
白いメタグロス | #20★2008.10/29(水)15:00 |
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>第19話:月がヤミ色にそまる時 神殿に着いたとき、ひたすら『クイック』をとなえていたリフォンは…チカラのつかいすぎで、顔色が悪くなっていた。 ルイはリュックから何か液体の入った小ビンを取り出すと、リフォンに渡した。 それは、魔法をつかうために消費するチカラを回復するクスリ「霊水(れいすい)」だった。 リフォン「あ、ありがと…」 こくっ、こくっ… ビン一本分の霊水を飲みほしたリフォンの顔色が、さっきよりだいぶ良くなった。 『お疲れ様』 リフォンを見守る仲間たちの表情は、そう言いたげなほど穏やかなものになっていた。 そうして一休みした一行は、すぐさま行動を開始した。 もちろん、ここに来るのは一行は初めてだったが…それでも異様だと感じるほど、内部は静まり返っていた。 神殿の中には…天空に浮いているにもかかわらず、すき通るほどきれいな水がたまった場所がいくつもあり、それが外からの月光を反射し、神殿の中を青白くそめている。 トラン「リオ…この神殿は、もとからこんなに静かなのか?」 リオ「…いや、ここはラティアスたちやラティオスたち、総じて夢幻竜族がよく参拝に訪れると聞いている。今、この神殿で何かが起きているのは明らかだ。」 ティナ「それで、神殿のまわりに強力なワイヴァーン軍がいたんだね…」 やがて、一行は神殿の一番奥にたどり着いた。 その場所は円形の広大な部屋で、天井はなく、上を見上げれば満月のうかぶ夜空が見える。 ここでもサークル状の水たまりがあり、真ん中の円形につき出た床に向け、まわりから橋が十字状にかかっていた。 ―その真ん中の床の上では、リオの言っていたクレセリア『ノルン』と、何者かが対立していた。 敵は姿こそはラティオスに似ているが、その体は影のように黒色となっている。 リフォン「な、何、あの黒いのは…?」 リオ「今ならまだ間に合う…! 皆、行くぞ!!」 一行が真ん中の床に到着すると――その黒い存在は振り向いた。 胸の△マークと目は赤色であり、いかにも邪悪そうな雰囲気を出している。 リオ「貴様…デスグリード!?」 ?「へへ、そろそろ来ると思ってたぜ…喜べ、今夜は宴を用意した!死と狂気の宴をなァッ!!」 そう叫んだ瞬間、夜空にうかぶ満月の色が…赤むらさき色にそまった。 月がヤミ色にそまる時、一行は最凶の敵と対峙したのだった…! |
白いメタグロス | #21★2008.10/29(水)14:59 |
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>第20話:死神デスグリード デスグリード「後ろにいる連中は初対面か…いいだろう、聞くがいい!俺の名はデスグリード…シェイド魔族軍の幹部にして、死神の異名(いみょう)を持つ者だ!」 そう叫んだ瞬間、デスグリードは手を上にかざし…影のように黒く、そして大きな鎌(かま)を取り出した。 その大きな鎌こそが、死神である何よりの証。 ノルン「…デス、グリード…何が、狙いなのですか…?」 かなりのキズを負い、床に倒れこんでいたノルンは…悲しげな目でそう尋ねた。 デスグリード「何だ、まだ息があったのか?…まぁいい、そこでおとなしく見てな。部下どもがやられたと聞いたんでな、直々に出向いてんのさ。この神殿さえぶっ壊せば…魔法の消えたシャイン地方など、カンタンに支配できるって寸法だ!」 どうやら、デスグリードの狙いは『シャイン地方から魔法を完全に消し去る』ことのようだ。 この地を守る神々も、実はアルミナからチカラをもらって存在している。 つまり…アルミナの消滅は、そのままシャイン地方の終わりを意味するのだ。 ティナ「そんなこと…させない!」 身構える一行をつき動かしていたのは…デスグリードへ対する怒りが強かった。 『会って間もないとはいえ、ノルンをここまでいためつけた』 どうしても、そのことばかりが目に付いてならないのだ。 だが…リオだけは、ちがう感情を感じていた。 リオは―千年前、一度デスグリードと戦っていたのだ。 リオ「何をあせっている、デスグリード…貴様を何もない世界に閉じ込めたシャイン地方が怖いのか?」 デスグリード「なッ、何だと…ッ!!」 リオは質問をぶつけた――それも、あえて挑発的(ちょうはつてき)な口調で。 だが、相手の本心を知りたいという気持ちが、リオの中にはあった。 デスグリード「何を言い出すかと思えば…それを知ったところで、お前らは俺に斬りきざまれるのがオチだ!!」 リオ「気のみじかさは相変わらずか…どの道、今の貴様はキケンだ。千年前の決着、ここでつけさせてもらうぞ。」 そう言うと、リオは前へ進み出た。 ―次の瞬間、リオの口から信じられない言葉が出た。 リオ「ここから先は…手出し無用だ。」 トラン「なッ…待て!ひとりで行くつもりか!?」 ティナ「そんな…わたしたちは足手まといだっていうの…!?」 リオ「そうではない…デスグリードは、千年前よりも格段に強くなっている。仮に束になってかかったところで、勝てる保証はない…最悪の場合、全滅してしまうだろう。俺とヤツとの戦いを、しっかりその目に焼きつけておけッ!!」 ノルン「…リオ、やめて!無謀すぎる…!」 リオ「ノルン…安心しろ、死ぬつもりはない。」 デスグリード「バカめ…!千年分の恨み、ここで一気に晴らさせてもらうぞッ!!」 ノルン「リオ――ッ!!」 こうして、因縁の対決が…今、幕を開けたのだった! |
白いメタグロス | #22★2008.10/20(月)09:22 |
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>第21話:千年の宿命 デスグリード「こっちから行くぜッ!!」 そう言い終わるころには、デスグリードはすでにリオの目の前にいた。 あっという間に振るわれた大鎌を――リオは大剣で受け止めた! リオ「―― そこだッ」 リオは強引に剣を押し上げ、相手の大鎌をはじき飛ばした! すかさずリオは追撃に入ったが…デスグリードはそれをかわした上、一瞬で飛ばされた大鎌を拾い上げた。 デスグリード「まだこれからだ!『あくのはどう』!!」 リオ「やるな…!『りゅうのはどう』!!」 第二ラウンドは『はどう』対決。 両者とも互角に思われたが…わずかにデスグリードの方がチカラの強さで上回っていた。 リオ「くッ…ならば!」 何を思ったのか、リオは『りゅうのはどう』を中断してしまった。 リオの『はどう』が、あっという間にデスグリードの『はどう』に飲み込まれる… だが――リオはすでに、そこにはいなかった。 デスグリード「き、消えただと…ッ!?」 リオ「―― ここだッ!」 リオはすでに、デスグリードの背後に回りこんでいた。 リオの斬撃が、デスグリードに命中! デスグリード「ぐッ―― 図に乗るなァッ!!」 攻撃を受けた拍子に、大鎌をはたき落とされたデスグリードは―― とっさにその鋭いツメで反撃した! 『大鎌なんてただの飾り』 そう言わんばかりのダメージを、リオは受けてしまった。 一進一退の大接戦…両者のチカラは、ほぼ互角。 リオ「たしかにチカラは強くなったが…まだ単純だな…」 デスグリード「はッ、千年前の俺だと思うなよ…!そろそろ切り札を出させてもらうぜッ!!」 リオ「…そうだな…これで、終わりだッ!!」 千年前の、英雄と破壊神(はかいしん)との戦い…それは、あまりにも壮絶すぎるものだった。 たしかに手を出すなとは言われたものの、ルイたちはその激闘に圧倒されるのが関の山だった。 トラン「リオはたしかに強い、だが…あのデスグリードの強さ、まともじゃない…!」 リフォン「あっ…!リオさんも、デスグリードも…必殺技を出そうとしてる…!!」 ルイ「リオ…キミに、何ひとつ手助けしてやれないなんて…」 リオ「これで…終わりだ!『奥義・ホーリーブレイザー』ッ!!」 デスグリード「消え去るがいいッ!『奥義・ジェノサイドフレア』ッ!!」 剣先から、神の光を放つ大技――『ホーリーブレイザー』。 大鎌を回転させ、地獄の炎を放つ大技――『ジェノサイドフレア』。 大技同士が、真正面から衝突…あとは、チカラの強さで勝負が決まる。 デスグリード「てめぇ…千年もの間『眠っていた』らしいな?俺はその間、ずっと腕をみがいてきたんだぜ…? …分かるだろ…俺の方に利があるってことが!!」 リオ「ここでは、過去は関係ない…それに、そのおごりの気持ちが貴様の命取りとなるのだ!!」 ?「相変わらずね、兄さん…ひとりで背負いこむ方が、よっぽど命取りよ。」 その言葉とともに、戦場に一匹のラティアスが乱入してきた。 同じラティアスのティナよりも二回り大きい体、身にまとったオーラ…どことなく、雰囲気がリオに似ている。 その上、その手にはやはり大きめの弓がにぎられている。 リオ「リア…!?なぜ、ここに…?」 どうやら、そのラティアスはリアというらしく…そして、リオの妹のようだ。 デスグリード「リア・フィール…!ちぃッ、生きてやがったのか…!」 リア「話は後よ…兄さん、受け取って!『出でよ、高まる鼓動!ネオ・マージ!!』」 『ネオ・マージ』…効果はマージと同じだが、その効果の強さはマージをはるかに上回るという、上位魔法。 そのチカラにより、リオのホーリーブレイザーの威力が、一気にふくれ上がった! デスグリード「くッ…リオ、この勝負――預けたぜッ!!」 強化されたホーリーブレイザーで、己がほろびるのは一目瞭然(いちもくりょうぜん)。 そう判断したデスグリードは…テレポートに似た能力をつかい、逃げてしまった。 リオ「待てッ!…くッ、逃げられたか…」 リア「深追いは禁物よ。…これでしばらく、デスグリードは動けないはずだわ。」 デスグリードが去った後…月の色が元に戻り、いつもの美しい夜空になった。 あれだけボロボロだったノルンも、その月光を浴びることで、すっかり回復した。 魔族軍の脅威(きょうい)がなくなったわけではないが…こうして、アルミナは守り抜かれたのだった。 |
白いメタグロス | #23★2008.10/22(水)12:04 |
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>第22話:運命は動き出した ノルン「ありがとう…おかげで、最悪の事態にならずに済みました。」 たしかに彼女の言う通り、アルミナは守られ、事なきを得ることはできた。 …だが、一行に心身を休めることは、いまだに許されなかった。 何しろ、リアが現れたことで、またひとつ謎が増えてしまったのだ。 リフォン「うー…何か、頭の中がグルグルしてるよ…」 リア「ごめんなさい、混乱させてしまって…今から、順を追って説明するわ。」 そして、まずはリアのこれまでのいきさつから始まった。 リアはやはりリオの妹であり――自分のチカラがキケンだと悟り、自らを封印したリオに代わり、一般ポケモンのフリをしながらシャイン地方を見守っていたらしい。 では、そもそもリオとリアは何者なのか? その答えは、リアに代わり…ノルンが話してくれた。 ノルン「リオとリアには、親はいません…彼らは、神々のつくった武器の化身なのです。」 彼女が言うには、リオとリアは…ある武器にこめられた想いが、運命の影響で意思を持ち、変化して生まれたのだという。 リオの場合は彼の持つ大剣『ブレイブカリバー』、リアの場合は彼女の持つ大弓『フィールアロー』。 それらの武器にこめられた想いが、やがて『リオ』と『リア』になったのだ。 トラン「ブレイブカリバー、フィールアロー…まさか、リオとリアの苗字は…!?」 リオ「そう、由来は武器の名だ。リオ・ブレイブの『ブレイブ』とは、ブレイブカリバーの『ブレイブ』…」 リア「…リア・フィールの『フィール』は、フィールアローの『フィール』からよ。私と兄さんは、もともとは物言わぬ武器だったの。」 これで、リオとリアの正体は明かされたが…それは、あまりに不可解(ふかかい)すぎるものだった。 ティナ「その運命って…何だったの?お兄ちゃんが、ラスターソードとともにする運命とも、何か関係があるの…?」 トランがラスターソードを手にした時も、受けつがなければならない理由は『運命』というあいまいな表現で片付けられていた。 そろそろ、聞かせてくれてもいいはず…それはティナばかりでなく、ルイたち全員が思っていることだった。 リオ「…リア、ノルン。ここまで来たら、もう説明すべきだと思う――千年前、俺たちがともに立ち向かった運命について。」 リア「そうね。こうして、ティナとトラン…千年前のメンバーが、またそろったんだもの。」 千年前のメンバーが…そろった? ティナとトランは、前にもリオやリアと会っていたのだろうか… トラン「…それは、オレとティナの前世の話か?」 リオ「厳密(げんみつ)に言えば違うが、そのようなものだ。…ノルンはどう思う?」 ノルン「そうですね…リアの言う通り、運命は動き出しています。ここで話しておくべきでしょう。 どの道、もう後戻りは許されないのですから…」 …話は今より千年前、夢幻ポケモンの護る島「アルトマーレ」にさかのぼる… |
白いメタグロス | #24★2008.10/22(水)12:41 |
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>第23話:選ばれた兄妹 千年前…アルトマーレが、まだ名もない島であった頃。 西の海岸を歩く一組の老夫婦が、砂浜に倒れた幼い兄妹を見つけた。 その様を見捨ててはおけず、老夫婦は2人を保護することにした。 ようやく気がついた兄妹… 兄の方はトラン、妹はティナと名乗るも…2人はそれ以上は話そうとはしなかった。 老夫婦もそれ以上は訊かず、2人の回復を見守ることにした。 2人がすっかり元気になったところで、事は起きてしまった。 朝を迎えた島の上空が、あっという間にヤミの雲によって覆いつくされた。 その雲の合間より現れるは、12対の破れたツバサを持つ、巨大な邪竜。 『リュートレギオン』と呼ばれるそれは、魔族軍によって生み出された造魔(ぞうま)であった。 その竜が現れたことで、島はたちまち、魔族軍によって攻め入られてしまった。 彼らの魔の手が、やがて老夫婦と兄妹にも向けられる… まさにその時――兄妹は別の姿になった。 後にこの島の伝説となる存在…そう、兄妹の真の姿は、夢幻ポケモンだったのだ。 まるでそれが引き金になったかのように、この島に救世主(きゅうせいしゅ)が現れた。 『神竜軍』…夢幻ポケモンたちによって構成される、神々の誇る屈指の軍勢。 彼らは、魔族軍が切り札として放ったリュートレギオンを倒すため、その行方を追っていたのだ。 リュートレギオンの弱点は、生ける者たちによる「希望と夢」。 それらを集めてつくった結晶「こころのしずく」が、今まさに高々とかかげられた。 せつな、こころのしずくより解き放たれるは――希望と夢の光。 その光を受ける前にリュートレギオンは逃げ出したものの、島は見事に守られた。 神竜軍のリーダーは、夢幻ポケモンの兄妹…リオ・ブレイブとリア・フィールであった。 『トランとティナは運命を切り開くチカラを持っていて、そのためにリュートレギオンに狙われた』 その事実を聞かされたトランとティナは、二度と魔族軍が来ないように、島を離れることを決意した。 別れの時が急に来たのだ、老夫婦が涙を流さぬはずがない… 『わたしたち、絶対忘れない…いつまでも、見守ってるからね』 その想いを『こころのしずく』にこめて、兄妹は老夫婦に手渡した。 軍とともに島を後にした兄妹は…老夫婦の見えぬところまで来ると、大粒の涙を流していたという。 そして…兄妹は決意した。 『もう、誰も悲しませない。魔族軍の手から、この世界を守る』と。 その強い想いはやがて『武器』というカタチとして実体化した。 トランが手にしたのは、夢幻のチカラを持つ大剣『ラスターソード』。 そして、ティナが手にしたのは、夢幻のチカラを持つ大弓『ミストアロー』であった。 その後、神々の命令により、兄妹たちはチームを組むことになった。 リオ、リア、トラン、ティナによるチーム…神竜軍は、そのチームを先頭にして動くようになった。 やがて、神竜軍は魔族軍をシャイン地方へと追いつめた。 これより先は、月神ノルンを筆頭としたシャイン地方を守る神々と、チカラを合わせていくことになる。 神々の奮闘(ふんとう)により、魔族軍の大半が消滅した。 あとは、魔族軍のリーダー格がいる本隊を残すのみ。 その本隊が陣取ったのは、後に夢幻神殿がつくられることになる、西の孤島。 そこには、あのリュートレギオンも逃げ延びているという。 リュートレギオンを生み出したのは、魔族軍の幹部『絶望の魔女ディウスピア』。 同じ幹部である『狂気の死神デスグリード』の妹にあたる存在だった。 糧(かて)となる「人間の負の感情」を食らうことで成長するリュートレギオンは、今でこそ巨大だが、生み出されたばかりの時はモンスターボールくらいの大きさしかなかったという。 そのリュートレギオンにディウスピアはさらに手を加え、より強力なチカラを出せるようにしたのだ。 魔族軍のリーダーはすでにリオとリアによって倒されており、その時に逃げ出したデスグリードとディウスピアがそのままリーダーとなっていた。 リオたちは一丸となって戦うも、成長しすぎたリュートレギオンの影響を受けた本隊は、もはや手が付けられぬほど強くなっていたのだ。 もう、あくまで最終手段としてノルンから受け取ったモノ『カゲリ石』をつかうしかない。 『カゲリ石』…それをつかうと、相手を何もない虚空の亜空間「シェイド」に、カゲリ石が壊されぬ限り、永遠に封印できるという。 この石の使用により、魔族軍本隊は――すべてシェイドに封印されたのだった。 その後――カゲリ石を守るために、その島に夢幻神殿がつくられ…そこに、石を守るために夢幻ポケモンたちが住むようになった。 トランとティナは、「平和になった今、これは眠りにつくべきだ」と考え、それぞれの武器を夢幻の祠とアルミナに分けて、封印した。 だが、封印した武器は兄妹の意思そのもの…ゆえにこれまでの戦いの記憶も、武器とともに封印されてしまったのだ。 |
白いメタグロス | #25★2008.10/27(月)14:48 |
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>第24話:ミストアローを受けつぐ者 そこまでが、4匹の夢幻ポケモンがともにした運命。 ティナとトランは…記憶はまだ戻らないものの、もはや他人事には思えなくなっていた。 ノルン「ティナ…千年前の預かり物です。さぁ、受け取りなさい。」 そうしてノルンが差し出したのは――言うまでもなく、封印したミストアロー。 ラスターソードの強く激しい光とはちがう、淡くやさしい光が、その弓から発せられている。 ラスターソードの輝きを太陽に例えれば、さしづめミストアローの輝きは月といったところだろうか… リア「ティナ、安心して。こめられたチカラはやさしいものだから、決してあばれたりしないわ。」 ティナ「リアさん…うん、分かった。わたし、受け入れるよ。千年前の運命を…ね!」 ティナは意を決すると、ノルンからミストアローを授かった。 リアの言うとおり、その弓にこめられたチカラは、決してあばれようとはしない。 そればかりか、淡くやさしい光で、ティナの緊張を和らげようとしている。 ティナ「なんだろう、このチカラ…初めてのはずなのに、なつかしい感じがする…」 リア「そう感じるのなら、これで誓いは交わされたわ。その証拠に、ほら…」 その時、弓は光の粒になり、ティナの中に吸い込まれるようにして消えた。 ラスターソードの時と、ほぼ同じ展開… リア「あなたと契約(けいやく)を結んだその弓は、あなたを危機から守ってくれる…ナイト、といったところね。 自由には取り出せないけど、戦いの間はティナのチカラになってくれるわ。」 ティナ「わたしを、守ってくれるナイト――だからなのね、こんなに心強く感じるのは…!」 こうして…ティナは見事、ミストアローを受けつぐことに成功した。 その後の話し合いで、今後の方針が決まった。 運命に導かれて集まった「4匹の夢幻竜と2人の魔術師」、運命に導かれて目覚めた「夢幻の剣と夢幻の弓」。 もう、逃げるので精一杯だった頃のティナとトランは、どこにもいない。 今ここにいるのは、運命をともに越える仲間のいる、運命を切り開くカクゴを決めたティナとトランである。 今行かずして、いつ行くというのだろうか…夢幻神殿に、決戦の地に! 今後の方針、それは…夢幻神殿をその手中に収めた、魔族軍本隊との決戦であった。 だが、デスグリードと対決したリオはもちろん、道中でワイヴァーンの猛攻をよけていたルイたちも、かなり疲れきっている。 そのため、一行は明日の決戦に備え、アルミナで休むことにした。 決戦前夜の夜空の月は、いつになくきれいで…どこか儚げであった。 |
白いメタグロス | #26★2008.10/29(水)14:56 |
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>第25話:決戦前夜 皆が寝静まった中…リフォンだけは眠らず、離れた場所で月をながめていた。 いや、眠らなかったというより、眠れなかったというのが正しい。 それほどの不安と悩みが、鎖となり、リフォンの心をしめ付けていたのだ。 ティナ「リフォンくん?もしかして、眠れないの?」 そんな時、リフォンのとなりに来たのは――寝ていたはずのティナ。 彼女も、やはり眠れないのだろうか… リフォン「ティナか…うん、そんなとこ。」 ティナ「そっか…あのさ、わたしでよければ、相談に乗ったげるよ?」 リフォン「…えっ…?」 ティナ「だってほら、リフォンくん…泣いてるよ?」 リフォンは、あわてて手を目もとに当て…流れている涙を確認した。 いつの間に、ボクは泣いてたんだろ――少し赤くなったリフォンの表情は、そう言いたげだった。 リフォン「…このこと、みんなには言わないでね…」 そう言うと、リフォンは自分の悩みを、ポツリポツリとティナに打ち明けた。 『自分は足手まといじゃないんだろうか』それが、今のリフォンの悩みだった。 その悩みのきっかけとなったのは、リアの「千年前のメンバー」という言葉。 その言葉どおりなら、少なくともティナとトランは、運命に立ち向かうためにちゃんとした理由がある。 でも、自分とルイはというと…つい数年前に生まれたというだけ、当然運命に立ち向かう理由も持ってはいない。 「足手まといではないか」…リフォンは、どうしてもこの結論で止まってしまい、そうじゃないとは思えなくなっていたのだ。 ティナ「リフォンくん…」 リフォン「…ごめん、らしくなかったよね…今は、こんなこと思ってる場合じゃないのに…」 すると…ティナはリフォンに近づくと、夜のヤミを照らす月のように、やさしくリフォンを抱きしめた。 リフォン「えっ…ティナ…?」 ティナ「わたしの方こそ、ごめんね…自分のことで精一杯で、そのことに気付いてやれなくて。」 そして、ティナは一旦離れ、リフォンの手をやさしく持った。 ティナ「リフォンくん、覚えてる?最初に森で会った時のこと…」 リフォン「最初に会った時って…キズついていたティナに『ヒーリア』をつかってあげた時のこと…?」 ティナ「うん、そうだよ。お兄ちゃんにはああ言ったけど…ホントはわたしもすっごく不安で、人間のこともすごく怖かったの。でも、リフォンくんはわたしを助けてくれた…あの『ヒーリア』はね、不安だったわたしの心も、癒してくれたんだよ。」 リフォン「ボクの魔法が、ティナの心を…?」 ティナ「そう。お兄ちゃんはどうなのか分からないけど…わたしは「そういう運命だから」戦ってたり、決意したりしてたわけじゃないの。これだけは忘れないで。ルイさんも、リフォンくんも大切な仲間…一緒に行動するのに、理由なんていらないんだよ。」 リフォンの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。 それまで彼を苦しめていた悩みという名の鎖も、ティナのその言葉の前に敵うことはなかったのだ。 一気に心が自由となったリフォンは、ただ泣くばかりだった。 リフォン「ティナ…ありがと…ッ」 ティナ「ううん…こちらこそありがと、リフォンくん。今のわたしがいるのも、あなたのおかげだよ。」 その後、ティナとリフォンは眠りについた。 これまでの経緯もチカラの強さも関係なく、一丸となって事を為す…それが仲間だということを、両者とも再確認して。 だが、ティナとリフォンを含め…この時の一行は知るよしもなかった。 ルイとリフォンは…実は千年前の戦いとは無関係ではなかったのだ。 その真相は、皮肉にも敵の本拠地で知ることになるのだった… |
白いメタグロス | #27★2008.10/29(水)14:54 |
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>第26話:いざ、出陣! 翌朝――周りの空は、まがまがしいヤミの雲でおおわれていた。 最終決戦というにふさわしい、張りつめた空気が一行を圧倒する… ノルン「ルイさん、ルフォンさん…これをおつかいください。」 と言うと、ノルンは2人に、月を模した指輪のようなものを渡した。 ルイ「これは…?」 ノルン「アルミナリング、というものです。装備することでどんな状態でも魔法がつかえます。今の夢幻神殿にはアルミナの光は届かず、そこでは魔法はつかえないのですが…それさえあれば、つかうことができます。そして上位魔法もつかえるようにしておきましたが、慣れが必要となるでしょう。」 リフォン「上位魔法かぁ…ノルンさん、ありがと!」 やがて、出発のときは来た。 「月神の神殿・アルミナ」は管理者であるノルンなら移動させることができるため、アルミナはノルンの操作により、夢幻神殿のある島の近くの上空まで来ていた。 周りの空にヤミの雲が広がっているのも、敵の本拠地のすぐ近くまで来たからである。 リオ「始まったら、もう後戻りはできない…カクゴはできたか?」 ティナ「うん、できてるよ――もう、迷いはないよ!」 トラン「当然だ…これ以上、ヤツらの好きにはさせん!」 リフォン「ここまで来たんだ…逃げるわけにはいかないよ!」 ルイ「もちろんだよ…これで終わりにしよう!」 リア「兄さん――その問いかけはもはや愚問よ。私たちの決意は、今、ひとつになってるもの!」 リオ「…フッ、そうだな。――ノルン。俺たちがいない間、シャイン地方を頼んだぞ。」 ノルン「――その言葉、たしかに聞き受けました。シャイン地方は、たとえ命に代えても守ります。」 アルミナに来たときと同じく、ルイはトラン、リフォンはティナの上に乗った。 最終決戦に対するカクゴを今一度決め――次にはもう、一行は風となっていた。 夢幻神殿を目指し、一行はアルミナを後にした。 ノルン「みなさん…どうか、ご武運を…」 たとえ祈り届かずとも、ノルンは手を組み、そう祈りをささげた。 こうして――最終決戦へのカウントダウンが、今まさに開始されたのだった… |
白いメタグロス | #28★2008.10/29(水)14:53 |
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>第27話:ヤミに眠る故郷 本当に、ここは魔族軍の本拠地となったのか? そう疑わずにはいられないほど、夢幻神殿は静まり返っていた。 ただ、ヤミにそまった空といい、いつもの風景でないことは、ティナとトランには分かるようだ。 トラン「…静かすぎる。まるでもぬけのカラじゃないか…」 リア「ワナかもしれないわ…慎重に行くべきね。」 敵が向かってこない今のうちに、一行は準備を整えた。 まず、トランはラスターソードを、ティナはミストアローを取り出した。 リオとリアも自分の武器を手に取り、魔法担当のルイとリフォンも「アルミナリング」を装備。 最後に、ルイは自分のリュックの中をチェックし、中に傷薬や霊水があることを確認した。 ルイ「…うん、たぶんこれで足りると思うよ。」 リフォン「そっか…それじゃ、みんな準備バッチリだね!」 リオ「…そういえば、ティナとトランは授かった武器をつかうのは、これが初めてだったな。まだ武器に慣れてないはずだ…危なくなったら、つかい慣れた「技」をつかうようにな。」 ティナ「OK!」 トラン「あぁ、分かった。」 周囲を警戒しつつ、少しずつ歩を進める一行。 夢幻神殿といっても構造はアルミナとほぼ同じで、アルミナとの違いは「地上にあること」「広さ」「庭園の有無」の3点。 ここではあちこちに実のなる木々がある庭園のような場所があり、そこはちょうどアルトマーレにある秘密の庭に似ている。 今となっては草木は枯れてしまっているが、たしかにそこが、夢幻ポケモンの楽園であったということが分かる。 ティナ「…なんだか、悲しくなってきた…」 思い出の場所が、見るも無惨(むざん)な状態になったのだ…ティナが悲しむのも、無理はない。 トラン「…ティナ、泣くな。すべてが終われば、この悪夢だって終わる。…いや、終わらせるんだ。」 そのトランの言葉は励ましだったのだが…不器用なトランの口は、励ましといえる言葉をつむぐことは難しかった。 だが、それでもティナは…妹としてのカンなのか、トランが自分を励まそうとしていることに気付いた。 ティナ「お兄ちゃん…うん、そうだよね!すべて終わったら、またみんなで幸せな生活に戻れるよね?」 トラン「あぁ、戻れるぞ。あと少しで、平和を取り戻せるんだ…涙はそのときまでとっておけ、ティナ。」 ティナ「お兄ちゃん…!ありがと、なんだか元気になれたよ。――わたし、がんばる。すべて終わったとき、思いっきり泣けるようにね!」 たとえどんな状況でも、今の一行が物怖じすることはなかった。 そんな一行の行く手に…いよいよ、魔族軍の本隊が立ちはだかるのであった… |
白いメタグロス | #29★2008.10/29(水)15:37 |
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>第28話:封魔殿への突破口 いよいよ神殿の奥にそびえる「封魔殿(ふうまでん)」にさしかかったところで…それらは行く手をさえぎった。 現れたのは――アルミナへの道中でも見かけた、あのワイヴァーン部隊。 封魔殿自体もなぜか空中に浮き上がっており…あの時のように、彼らの守りをくぐり抜ける必要があった。 あの時と同じように、封魔殿を目指し、空をゆく一行。 だが、さすがに敵も学習しているらしく…なるべく一ヶ所に集まり、口からの一斉砲火で対抗しようとしてきた。 あれだけ集まっての集中砲火…とてもではないが、リフォンの『ガード』や『クイック』では太刀打ちできない。 リア「こうなったら…こちらも集中攻撃で対抗よ!」 一行は一旦止まると、攻撃準備に入った。 ティナ「行くよっ!『りゅうのはどう』!!」 トラン「行くぞ…『ラスターパージ』!!」 リオ「この技に――すべてを託す!『りゅうせいぐん』ッ!!」 リア「行くわ…覚悟なさい!『ふぶき』ッ!!」 ルイ「上位魔法、さっそくつかわせてもらうよ!―『氷雪よ、吹き抜けろ!コールディアッ!!』」 リフォン「みんな…がんばって!―『出でよ、高まる鼓動!ネオ・マージッ!!』」 ――直後、一行のチカラとワイヴァーン部隊のチカラが、真正面からぶつかり合った! チカラの差は――上位魔法とネオ・マージのおかげで、一行の方に利があった。 そして、熾烈(しれつ)きわまりなきチカラの押し合い・せり合いは――見事、ルイたちに軍配が上がった! 行き場を失ったチカラに飲まれ、集まっていたワイヴァーンの群れは全滅したが…すぐに周りにいるワイヴァーンたちが集合しようとしてきた。 集まってしまえば、第二の集中砲火がくり出されてしまう! リフォン「そんなこと、させないよ!―『時の停止よ、ここへ!タイムフリーズッ!!』」 リフォンがとっさにつかったのは、自分と味方全員の周りの時間を止めてしまう上位魔法『タイムフリーズ』。 ただし、この魔法はつかった者の余力に関係なく、しばらくすると効果が切れてしまうのが欠点である。 リオ「感謝するぞ、リフォン!――皆、急ぐぞ!時が戻る前に、ここを突破する!!」 全員「オォ――ッ!!」 再び時が動き出したころには、一行はワイヴァーン部隊の守りを切り抜け、封魔殿の中へと進入していた。 すべての真相は、そこにある… |
白いメタグロス | #30★2008.11/03(月)17:03 |
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>第29話:かくされた真実 中へ入った一行を出迎えたのは――眠りの森でも見かけた石柱『ルーメイス』の立ち並ぶ空間。 その奥にある入り口の先にはカゲリ石が置かれている…そこにすべての元凶がいるようだ。 ――だが、一行はそれとは違う方向を見ていた。 一行が見ていたもの…それは、入って左の方にある、巨大な壁画。 その壁画には戦いの場面が描かれており、左側には巨大な怪物――右側には4匹の夢幻竜と、2人の魔術師の姿があった。 それぞれの近くには名前も書かれており、それによれば「巨大な怪物⇒リュートレギオン」「夢幻竜⇒リオ、リア、トラン、ティナ」であることが分かる。 だが…2人の魔術師の名は「クロノス=フォート」「リライヴ=ポーラ」であり、なぜかルイとリフォンと同じ苗字だった。 リオ「これは…俺が自らを封印したあとに描かれたもの、か…?」 トラン「伝え聞いた限りでは…たぶん、そうなる。この封魔殿には神官クラスのポケモンしか入れなかったからな…」 ここで暮らしていたティナとトランでさえ、ここに立ち入るのは初めてだという。 となると、この封魔殿にあるものは、あまり広く知れ渡ってはならないものなのだろうか… リフォン「…ねぇ、そこに描かれてる2人の魔術師って…なんだか、ボクとルイさんに似てない…?」 全員「!」 そう、似ていたのは苗字だけでなく、髪型や背格好までもよく似ていたのだ。 はたから見れば、「単なる空似」とも考えられるが…ルイとリフォンは、なぜか確信的に似ているとしか思えなかった。 まるで…そこに描かれているのが、前世の自分たちであるかのように。 ゴォッ――何かが燃え上がるような音とともに、奥の入り口の向こう側が、邪悪な紅い光を放った。 原因は分からなくとも…不吉なことの前触れであることは、たやすく予想がつく。 リア「この気配…リュートレギオンと同じ…!?」 ルイ「壁画のことも気になるけど、どうやらこっちの方が最優先事項みたいだね…」 ティナ「…いよいよ、だね…」 ティナの一言が、全速前進の合図となった。 リュートレギオンが復活すれば、世界は破滅へと導かれてしまう――それだけは防がなくてはならない。 それを防ぐために、ここに来たんだ! その使命感だけが、一行を強く突き動かしていた。 奥の入り口をくぐり抜け――カゲリ石があったという部屋に足を踏み入れた一行。 その一行を待ち受けていたのは――戦わねばならぬ宿敵だった… |
白いメタグロス | #31★2008.11/03(月)17:18 |
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>第30話:狂気の死神と絶望の魔女 ?「…来た…千年前の宿命と…運命の子…」 姿こそはラティアスに似ているが、体は影のように黒く、目と胸の△マークが青紫色に光っている――その存在が、その声の主。 その近くにはアルミナに現れたデスグリードの姿もあるが――そうすると、その存在はデスグリードの妹「ディウスピア」なのだろうか… リオ「狂気の死神・デスグリード、絶望の魔女ディウスピア…ついに、追い詰めたぞ…!」 対峙したことで、2匹を追い詰めた…というのは事実のはずだが、当の兄妹は平然としていた。 ディウスピア「もう遅いわ…リュートレギオンは…私の愛子(まなご)は、もうすぐ復活する…」 デスグリード「ディウスピア、後は任せたぞ。――お前ら、まずは俺が相手になってやる。」 そう言うと、デスグリードは…それまでいた祭壇(さいだん)の上から、一行の正面まで降りてきた。 残ったディウスピアは、言われたとおりにリュートレギオン復活の儀式を再開した。 リア「…あなただけで来るつもり?アルミナでは、私と兄さんにすら敵わなかったのに…」 デスグリード「はっ、勘違いするな…儀式の時間かせぎさえできれば、それでいい。それに…今、ここは俺ら魔族のナワバリだ!アルミナで出せなかったチカラも、本気も!ここでは思いっきり出せるのさ!!」 たしかに、彼の放つオーラは…アルミナの時とは比べ物にならないほど、強くなっていた。 よく見ると手に持つ大鎌の形も、より大きく凶悪な形に変形している。 ティナ「どんなに強くなってても…わたし、絶対逃げないよ!」 トラン「故郷をけがされた怒り…思い知れッ!!」 リフォン「もう、カクゴを決めたんだ!絶対…負けないよッ!!」 ルイ「デスグリード、覚えておくといい…己のチカラにおぼれることの恐ろしさを!」 リア「千年前の決着…今、ここでつけるわ!!」 リオ「デスグリード――覚悟ッ!!」 ルイはグランを、リフォンはエリスをくり出した。 8対1…数の多さだけでは、一行のほうに利がある。 ただし、相手は本来のチカラを覚醒させた狂気の死神…一行は、死闘となることをカクゴした。 デスグリード「ハァーッハッハッハ!いいだろう…死に物狂いで抗ってみなッ!!」 そして、戦いは始まった…! |
白いメタグロス | #32★2008.11/12(水)10:28 |
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>第31話:VS・狂気の死神 デスグリード リオ「トラン、行くぞ!――『炎竜斬』ッ!!」 トラン「あぁ!――『奥義・アークディバイド』ッ!!」 先手をとったのは、リオとトランの剣閃。 空間を切り裂く衝撃波を放つ『アークディバイド』をまともに受けたデスグリード。 そこに、炎をまとった剣による斬撃『炎竜斬』が入った! デスグリードは態勢を立て直した――まだ、彼は本気にはなっていない。 ルイ「グラン、シャドーボールだ!――『うなれ、荒れ狂う業火!フレイガッ!!』」 グラン「ガゥッ」 リフォン「エリス、『てだすけ』でみんなをサポートして!――『出でよ、高まる鼓動!ネオ・マージッ!!』」 エリス「きゅいーッ」 リア「ティナ、行くわよ!――『シャイニングアロー』ッ!!」 ティナ「OK!――『エレメンタルバースト』ッ!!」 まさに、みんなのチカラの集大成ともいうべき、集中攻撃が展開された! グランの『シャドーボール』の後に、灼熱の炎をくり出す魔法『フレイガ』、聖なる光矢を放つ技『シャイニングアロー』、炎・水・雷の三属性の光矢を連射する技『エレメンタルバースト』が続く… そのすべてに、エリスの『てだすけ』とリフォンの『ネオ・マージ』がこめられていた! ――だが、それだけの攻撃を受けても、デスグリードは弱っているそぶりを見せない。 外傷はあるのだが…狂気の死神の異名は、ダテではないようだ。 デスグリード「クーッククク…ハァーッハッハッハ!!」 トラン「…何がおかしい…デスグリード!!」 デスグリード「ここまですげぇチカラを見たのは、何千年ぶりだろうなぁ…余興のつもりだったが、気が変わった! 今度は俺のターンだ――楽しませてくれよッ!!」 デスグリードの目は…生者にはとうていマネできないような、どこまでも赤黒い色に染まっている。 これが…この目こそが、狂気の死神と呼ばれるゆえんなのだろうか…! デスグリード「決めてやるぜ…!『ヘル・ザ・フレアニングッ!!』」 『ヘル・ザ・フレアニング』――千年後の今の時代ではすでに失われたはずの、禁断の魔法だった。 突如として発生した、フィールド全体を大きく揺るがすような威圧感…恐怖のあまり、一行は動けなくなってしまった。 そして…直後に向かってきた炎の波に、一行はなすすべもなく飲まれてしまった! かろうじて全滅はしなかったものの、二度目を受ければ命はない…! ティナ「つ、強すぎる…ッ」 デスグリード「見たか…これが俺のチカラだ!!」 トラン「…まだだ…まだ戦える…!」 リフォン「く…『アルミナのチカラよ、ここへ…!…インフィニテスッ!!』」 必死だった。悲鳴を上げる体に鞭打ち、リフォンは上位クラスの回復魔法『インフィニテス』を味方全員につかった! これで何とか一行は持ちこたえたものの…サポート役が少ないため、これでリフォンが2ターン目を終えるのは、ある意味「賭け」であった。 デスグリード「クククッ…そうだ!立て、そして向かって来い!宴はまだ始まったばかりだッ!!」 リオ「こうなったら…もう、あれしかない。」 リア「えぇ、そうね…もう、次はなさそうだし。」 千年前の宿命と呼ばれた兄妹のその言葉は、まるで最後の言葉であるかのようだった。 ティナ「な…何をするつもり…!?」 リア「前にも言ったけど…わたしたちは、もともと武器だったの。さらに言うなら、元となった武器は、形の無いチカラを押し固めてつくったもの…」 トラン「…まさか…大元のチカラに戻る気か…ッ!?」 リオ「――そうだ。我らはただの一筋のチカラとなり、デスグリードごと、ヤツらの野望を止める。…例えそれで我らが消えようとも、それで千年前の因縁を終わらせられるのなら本望だ。」 千年前の悪夢を滅するためなら、己の命すらいとわない…兄妹の目は、そうルイたちに告げていた。 リフォン「…どうして…たったそれだけのために、どうして自分の命をかけるの…ッ!?」 リア「…ごめんなさい、みんな…急だけど、これでお別れよ…世界のこと、お願いね…」 そう言い残し、正面へと突き進んでいくリオとリア。 やがて、2匹の体は光の筋となり、ぐんぐん加速していく! デスグリード「な、何なんだこいつら…ッ!?」 リオ『リア…思い残したことは無いな?』 リア『当たり前よ。千年も生きながらえたもの…そろそろ、もとのカタチに戻るべきよ。私たちは――物言わぬ武器なのだから!』 リオ『…そうだな。――戻るぞ。本来のカタチに、本来あるべき姿に!』 ディウスピア「…運命は、動き出した…滅びの運命は、もう…すぐ、そこに…」 ――刹那、辺りが光の支配する、白き世界へと化していく。 その光のかなたに、兄妹の姿は――とうとう、見えなくなった… |
白いメタグロス | #33★2008.11/12(水)10:55 |
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>第32話:よみがえる悪夢 ルイたちの視界が回復したとき…状況は大きく変わっていた。 まず、それまで立っていた床がかろうじて残っているだけで、周囲が完全に異世界と化している。 そして――デスグリード、ディウスピア、リオ、リアの姿が消えていた。 トラン「く…いったい、何が…?」 ディウスピア「ふ、ふふ…ずっと、この時を待ってたわ…」 突如背後から聞こえたその声の主は…間違いなく、ディウスピア。 どうやら、リオとリアの行動を先読みし、テレポートに似た能力で一行の背後に回りこんでいたようだ… ルイ「ディウスピア…生きていたのか…」 ディウスピア「兄は…千年前の宿命の兄妹とともに消えた…ふふ、でもね…まだ、このコが残ってるのよ…ッ」 声がかすかに震えている――よく見ると、怒り・憎しみの感情が入り混じった、引きつった笑みを浮かべていた。 『ギュオォ―――ン…』 まるで地の底から響いてくるような鳴き声とともに――ディウスピアの背後に、それは出現した。 その体はヤミだけでできており、形は定まってないが、かろうじて竜のように見える。 大きさは入道雲と見間違えるかのように巨大であり、頭の両目と腹部の一つ目は赤黒く染まっている。 まさしく、その存在は…禁断の魔竜・リュートレギオンそのものであった。 リフォン「リュート、レギオンが…復活した…!?」 ディウスピア「ううん…まだ完全ではないわ。私が破壊したカゲリ石から溢れ出たヤミ…辺りの亜空間は、そのヤミによって構成されている…」 ルイ「…ようするに、この世界はリュートレギオンが封印されていた世界…?」 ディウスピア「ふふ、さっしがいいのね…そのとおりよ。あとは最終段階さえ終われば、私たちの野望に辿りつける…」 すると…ディウスピアは、はるか上空へと上昇した。 ティナ「な、何をする気…!?」 ディウスピア「ふふ…『融合(ゆうごう)』よ。このコは戦闘能力を最大にするため、感情や思考能力を与えていないから…私が、このコの頭脳となり、司令塔となるのよ。」 ――次の瞬間、ディウスピアは影のカタマリとなり、リュートレギオンの中に吸い込まれるようにして消えた。 そうして、リュートレギオンは…はっきりとした実体を持つ、いわゆる「完全体」となった。 体の大きさはそのままに――ディウスピアの影響なのか、ラティアスに似た姿に変化し、腹部の一つ目は消えている。 ただし体の色はすべて「紫と真紅の入り混じった黒色」であり、胸の△マークと両目は青紫色に光っている。 背中には4枚の巨翼を生やし、上2対はラティアス、下2対はラティオスのツバサに似ていた。 ???『…ふ、ふふ…これよ…これが、私の求めていたチカラ…!』 トラン「ディウスピア…いや、お前は一体…?」 ???『私は…今の私は『ディウスレギオン』。これから創られる新世界を統べる主神…』 言い放たれたその言葉には、周囲の空気すら揺るがすほど、強い確信に満ちていた。 ティナ「そんな世界…わたしは認めないよ!」 トラン「リオ、リアの想いにかけて…お前を、ここで倒す!!」 リフォン「ボクたちの世界…何があっても、お前には渡さない!!」 エリス「きゅいッ!!」 ルイ「ディウスレギオン…お前の野望、ここで終わらせる!!」 グラン「ガゥッ!!」 身構える一行――リオとリアの想いを託された今、ルイたちの心はひとつになっていた。 ディウスレギオン『新世界の創造…邪魔は、させない…!!』 そして――今、最後の戦いが始まったのだった…! |
白いメタグロス | #34★2008.11/12(水)10:46 |
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>第33話:最終決戦 ディウスレギオン『ふふ、まずはこれよ…イーヴルビット。』 イーヴルビット――それは、かつてアルトマーレに恐怖と絶望をもたらしたという、リュートレギオン固有の技。 邪悪な色のガラスの破片のようなカタマリが、ルイたちの周りの地面に大量に突き刺さる… ルイたちはなぜかダメージは受けなかったが、破片が突き刺さった辺りの地面が破片と同じ色に染まり、とうとう立っている床全体が邪悪な色に染まってしまった。 ティナ「な、何これ…っ!?」 ディウスレギオン『気をつけることね…その上で回復魔法をつかっても回復できない上に、逆にダメージを受けるのよ。』 先手を取ったディウスレギオンの行動――それは、回復魔法の妨害。 戦いが長引くにつれ、徐々にルイたちを不利にしようというのだ。 トラン「これでどうだッ!『アークディバイド』ッ!!」 ルイ「グラン、シャドーボールだ!――『浄化せよ、聖なる光!ライトニングッ!!』」 グラン「ガゥッ」 リフォン「エリス、スピードスターをつかって!――『出でよ、思念の結界!ホーリーガードッ!!』」 エリス「きゅいーッ」 ティナ「行くよっ!『ヘヴンズランサー』ッ!!」 できる限りの行動をする――それが、今のルイたちにできることだった。 空間を切り裂く衝撃波を放つ『アークディバイド』、魔を滅ぼす光を発生させる魔法『ライトニング』、まるで槍のように大きな光の矢を放つ『ヘヴンズランサー』が、グランとエリスの技の後に続く。 攻撃を受け、すさまじい悲鳴を上げるディウスレギオン――やはり、光に弱いようだ。 そして、リフォンがつかったのは――敵のすべての攻撃の威力を半分にする結界を張る魔法『ホーリーガード』。 これにより、守りもいくらかマシになったはずであった。 だが、安心するのはまだ早かった。 直後、ディウスレギオンから放たれた衝撃波――それは彼女自身の攻撃ではない。 ターンの終わりに自動的に相手を攻撃する『ブラストエンド』という特性によるものだ。 ブラストエンドの威力は、そのターンで受けたダメージの合計であり、ホーリーガードなどの結界すら無効になる。 そのため、1ターンが終わった今…互いに受けたダメージは互角であった。 ディウスレギオン『ふ、ふふ…これで分かったでしょう?あなたたちに…勝ち目は万にひとつも無いこどが。』 トラン「くっ、化け物め…!」 と、その時…エリスの身に変化が起きた。 リフォン「エリス!ど、どうしたの…!?」 エリス「きゅっ…きゅいーッ!!」 それは、ポケモンとともに歩む者ならいつかは経験する――進化であった。 だが、エリス…リフォンのイーブイが進化したのは、まだ確認されていない「第8の進化系」。 体の大きさはグラン…ルイのグラエナと同じくらいで、体の色は黄色がかった白色。 耳の形はツバサのような形に変化し、背中には天使を思わせるツバサが4枚、新たに加わっている。 ディウスレギオン『まさか、その姿は…エルセオン!?はるか昔に絶滅したはずの聖なるポケモン…なぜ、このイーブイが…!?』 イーブイが進化したのは――どうやら、『エルセオン』というポケモンのようだ。 今の時代ではすべてが謎に包まれているが…ディウスレギオンの慌てぶりから、状況がルイたちの方が有利になったことが分かる。 エリス「リフォン…あなたの気持ち、すごく伝わってきたよ。」 トラン「なッ…しゃべれるようになったのか…!?」 その声はこの場にいる全員に聞こえた――どうやら、エルセオンは人語を話すこともできるようだ。 エリス「うん、よく分かんないけど…しゃべれるみたい。それより、今はディウスレギオンだよ!」 改めて敵に向き直る一行――ディウスレギオンは、今や動揺から激怒の表情となっている。 今までに感じたことの無い、空気の振動――それが、最後の決着が差し迫っていることを物語っていた。 エリス「みんな…あたしに、チカラを貸して!」 体の向きはそのままに、エリスがそう切り出した。 ティナ「えっ…ど、どうやって…?」 エリス「みんなの想いをひとつにするの!そうして集めたチカラさえ出せれば、あいつを倒せるよ!」 どうやら、エリスには――この戦いを終わらせるための秘策があるようだ。 ここまで来た以上、もはや一行に迷いはなかった。 ディウスレギオン『おのれ…禁断の魔竜のチカラ、思い知るがいいッ!!』 一方のディウスレギオンもまた、持てるすべてのチカラを放出することを決意したようだ。 ヒカリとヤミ…立場は違えども、それぞれの想いはひとつ。 その先を決めるのは、チカラの強さ…ただ、それだけだった。 一行はエリスに手を向け、想いを送りはじめた。 手を向ける行為に意味はない――強いて言うならば、それは想いの結束のあらわれであった。 想いが集まっていくにつれ、エリスのツバサが、エリスの放つオーラが、大きく、強くなっていく… その一方で、ディウスレギオンもまた、最後の攻撃への準備に入った。 チカラが高まっていくにつれ、周囲の空気の振動も激しさを増していく…! そして――ディウスレギオンは、ついに最終形態へと移行した! |
白いメタグロス | #35★2008.11/12(水)11:19 |
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>第34話:神護る地の民の想い ディウスレギオンの最終形態――姿こそは同じだが、そのチカラの強さは先ほどの比ではない! これが…この存在こそが、魔族軍の誇る最後のチカラなのだろうか…! ティナ「わたしたちの想い…」 トラン「オレたちの想い…」 ルイ「今…ひとつに…!」 リフォン「エリス、ボクたちの想いを…受け取って!」 エリス「みんな…ありがと!――ディウスレギオン…これが、あたしたちの想いのチカラだよ!」 ディウスレギオン『自惚れるな…我ら魔族軍の野望、ここで終わらせてなるものかッ!!』 エリス「『神護る地の民の想いよ…ここへ!ジャッジメント・オブ・シャインッ!!』」 ディウスレギオン『魔族軍の全てのチカラよ…出でよ!ジェノサイド・オブ・シェイドッ!!』 ――衝突。 ヒカリと、ヤミ…『ジャッジメント・オブ・シャイン』と、『ジェノサイド・オブ・シェイド』。 相容れることなきヒカリとヤミ、それらは互いに互角でった。 ディウスレギオン『ククッ、勝負あったな!所詮はただの人間とポケモンにすぎん…そんな弱きチカラを集めたところで、我がチカラにかなうものかッ!!』 ディウスレギオンは、さらにチカラをこめた! それまで互角であったヒカリとヤミ…だが、徐々にヤミの方が押し始めていた。 トラン「くそっ、オレたちだけじゃ無理なのか…」 ティナ「諦めちゃダメ!この戦い…負けるわけにはいかないよ!」 リフォン「ボクたちの世界は…ボクたちが守るんだ!」 ?「いいえ。シャイン地方を守るのは…そこに住まう者達全てです!」 その声の主は…言うまでも無く、ノルンであった。 ふと気がつくと、周りにはノルンの他にも、たくさんの仲間達がいた。 ――そう、この夢幻神殿で暮らしていた、たくさんの夢幻ポケモン…ティナとトランの仲間達だ! ティナ「みんな…無事だったんだね!」 ノルン「彼らは、魔族軍によって神殿の至る所に封印されてましたが…ディウスレギオンが最終形態になった反動で、封印が解けたのです。」 ?「おっと待ちな、オレたちもいるぜ!」 その声の主は…ルイの大親友・リーク。 彼がくり出したのは、列車で見かけたマッスグマと――列車では見かけなかったフライゴン。 ルイ「リーク!どうして…」 リーク「親友が困ってんのに、黙って見てられっかよ!――で、こいつをぶっ倒せばいいんだな?」 すると…集結した夢幻ポケモンの中にいた、一匹のラティオスが口を開いた。 どうやら、そのラティオスは――トランの言っていた神官クラスのラティオスのようだ。 神官「―皆、想いをひとつにして、前方のエルセオンに送るのだ!シャイン地方を守るのは、この地に住まう我々なのだ!」 神護る地の民の想いが…今、ひとつとなった! それまで押され気味だったヒカリが、少しずつ押し返していく…その時、一行の前にさらなる助っ人が加わった! その体はすでに実体ではなく、ほぼ幻影のような存在…だが、それは間違いなく、リオとリアである。 トラン「リオ、リア!…一体、どうやってここに…?」 リア『言わなかった?私と兄さんは元に戻っただけ…死んだわけじゃないわ!』 リオ『皆、これで最後だ…我らも、手を貸すぞ!』 ――神護る地の民の想い『ジャッジメント・オブ・シャイン』。 その想いのチカラの前に…魔族軍の抱く野望は、ついに勝ることはなかったのだ。 もはやディウスレギオンは、戦うことすらできぬ状態にあった。 ディウスレギオン『ぐっ…なぜだ、なぜそこまでのチカラを…』 ノルン「絆です。シャイン地方の全ての民は、固い絆で結ばれている。ゆえに、千年もの間、民同士の争いは決して起きなかった。 …覚えておきなさい。固く結ばれた絆の前に、越えられぬ壁は無いのです。」 ディウスレギオン『…絆…戦乱すら知らぬ固い絆…それが、このチカラの源、なのか……』 こうして…ディウスレギオンとの死闘は終わりを迎え、ディウスレギオンは消滅した。 魔族軍との全ての戦いに、こうして終止符は打たれたのであった… |
白いメタグロス | #36★2008.11/12(水)12:34 |
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>第35話:取り戻された平和 こうして、戦いは終わり…シャイン地方に、再び平和が取り戻された。 一行は解散し、それぞれの地に戻った。 ティナとトランは、前の姿を取り戻した夢幻神殿で、前の仲間達とともに、前の生活に戻ることができた。 ルイとリフォンはファミル町に戻り、しばらくは今まで通りの生活に戻ることにした。 エリスは戦いが終わった後もエルセオンのままであり、まだしゃべれるので、前よりはもっと賑やかになりそうだ。 リークもエネリスで今まで通りの生活だが、休日はちょくちょくルイたちの家を訪れるようになった。 そのたびに鉱山で見つけた珍しい石を見せたり、その話ばかりするのだが…そのときの時間は、互いに何事にも変えがたい時間となっていた。 ノルンもまた、今まで通りアルミナに戻り、シャイン地方の守護に復帰した。 平和が戻ったとはいえ、復興まではまだまだ遠い…そのため、ノルンの仕事もかなりの量となっていた。 しかし、忙しいはずなのに、彼女の顔は疲労を表情に出さない。 それほど、取り戻した平和は、とても暖かいものなのだ。 こうして、何もかもが平穏を取り戻して数日後… ルイとリフォンは、再び夢幻神殿へと足を踏み入れた。 |
白いメタグロス | #37★2008.11/12(水)12:01 |
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>エピローグ:ありがとう ティナ「あ、ルイ、リフォン!久しぶりだねっ!」 まず最初に出迎えてくれたのは、ティナだった。 その声を聞いた周りの夢幻ポケモンたちの注目が、2人に集まる。 かつての警戒の眼差しではなく、仲間を迎え入れるかのような暖かい眼差しだった。 ルイ「やぁ、ティナ。元気そうだね。」 リフォン「ティナ、見てよ!今日はフィールパイをいっぱい焼いて来たんだ!ちょっと遅れちゃったけど…平和になったお祝いにね!」 ティナ「わぁ、ありがとっ!あ、そうだ…2人とも、ちょっと来てほしいんだけど、いい?」 トラン「どうやら来たようだな…ん?何か嗅ぎ覚えのあるような匂いが…」 2人が案内されたのは…かつての封魔殿、今では英雄殿と呼ばれている場所。 かつて死闘がくり広げられた場所で、トランは待っていた。 ティナ「お祝いだよ。ルイとリフォンが、焼いてきてくれたの。」 エリス「あれ…トラン、後ろの台座の剣と弓は?」 トラン「それが本題だ。――神官によれば、台座の武器こそがリオとリアの本来の姿らしい。」 かつて激戦をともにした仲間であるリオとリアは、本来の姿である武器となり、英雄殿に置かれていた。 リフォン「…ね、リオとリアの分のフィールパイも、ここに置いていいかな?」 トラン「あぁ、神官も何も言わないだろうし…それに、リオとリアとも、一緒に今の平和を祝いたいからな。」 リフォンは――台座の上のリオとリアの前に、焼いて来たフィールパイを切り置いた。 その手前にルイたちは並ぶと、手を合わせた。 祈祷(きとう)に見えるが、それは祈祷ではない。 これまでの感謝を、その行為で示しているのだ。 ――ありがとう―― その気持ちをフィールパイとともに置いて、ルイたちはその場を後にした。 この後、夢幻神殿では、フィールパイを囲んでの宴が催されることになる。 もちろん、皆で取り戻した平和を祝う宴である。 ルイたちが去ったあと…台座の上の武器は、かすかに光を放った。 ――ありがとう―― その光は…まさにそう言わんばかりであった。 >スペル クエスト ―――― 完 |
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