ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[698] 天空星対戦〜てんくうせいたいせん〜

中氏 #1★2005.07/26(火)00:34
〜序章〜

太古の昔、
「聖天王国リュオウ」という名の、天空に浮かぶ巨大な王国があった。
リュオウは過去に現在の大都市にも勝るほどの文明、強大な戦力、強き国王を持ち、
栄えた王国であった。
リュオウはその力で地上の国を次々と支配していった。
しかしリュオウができてちょうど500年経ったある日、
リュオウの民は一瞬にしてその命を奪われた。
この謎の怪事件により、リュオウは滅びた。
リュオウが滅びる時、一つの小さな光がリュオウの王宮から飛び出し、
天高く昇って行ったという。
このリュオウは、いつどのようにしてできたのか、どのようにして栄え、そして滅びたのか、
真相は現代に至るまで一切不明である…
この国は、今も何処かに存在するという…

 ―そしてこれはリュオウが滅びて、ちょうど1500年後の物語である―
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中氏 #2☆2005.05/21(土)02:42
【第一話:センリの急用】

―現代―
ここはトウカシティ。この町のジムで2人の少女と少年がポケモンバトルを繰り広げようとしていた。

ジ「今日こそは勝つぜ!エルリア!!」

この元気の良い少年の名は「ジン」。ミシロタウン出身の十歳の少年である。

エ「はいはい。そのセリフは聞き飽きたわ。ごたくは勝ってから並べなさい。」

一方ジンとは対照的に少し大人びているこちらの少女の名は「エルリア」。ジンと比べると年上に見えるが、同い年である。

審「使えるポケモンの数は一匹の、一対一の勝負です!使用ポケモンの選択は完了しましたか!?」

ジ「おうよ!いつでも来いってもんだ!!」

エ「始めて良いわよ。」

審「それでは、戦闘開始!!」

ジ「行っけー!オレの十八番ジュカインこと、「ブレード」!!」

ジンがモンスターボールを投げると、中からジュカインが飛び出した。

エ「ふーん…ジュカインねぇ…アタシも運が悪い時ってのはあるものね…」

ジ「どうした!?早く出せよ〜!」

エ「そうね。勝敗の見える勝負を引き受けといてあげて、今更断るのも礼儀知らずよね。お行きなさい。」

そういうと、エルリアもポケモンを出した。
そして中からは、ラプラスが出てきた。

ジ「な〜るほど、確かにこりゃあ運が悪いなァエルリアさんよぉ!!なんせラプラスは水タイプやもんなァ!!」

エ「アンタ、それ何処の方言?」

ジ「人の口調に指図すんな!!オレに勝ったら教えてやらあ!ブレード、「リーフブレード」!!急所に当ったれ〜!!」

リーフブレードは見事にラプラスに直撃。
しかしエルリアは表情を変えないし、喰らったラプラスもそこまでダメージを受けたといった顔をしない。

ジ「アレ?何で急所に当たらねーんだよ??」

エ「…バカねアンタ。「特性」ってモノを知らないの?」

ジ「ゲッ!ま…まさか…」

エ「返答する前に倒してあげるわ。ラプラス、冷凍ビーム。」

エルリアがそう指示すると、ラプラスの角から冷気を帯びた青い光線が発射され、それは見事にジュカインを直撃した。

ジ「シェル…アー…マー…!」

エ「返答遅し。」

審「勝負あり!今回もエルリア殿の勝利!!」

ジ「一言余計だ!!」

セ「事実だろうが、ジン。」

この男の名はセンリ。トウカジムのリーダーを勤めるジンの父親である。

ジ「親父、見てたのか!?」

セ「一部始終、しっかりとな。」

ジ「「一家心中」?まさか親父…冗談だろ…?」

セ「「い・ち・ぶ・し・じゅ・う」!!最初から終わりまでという意味だ!!どうやったらそんな風に聞こえるんだ!?」

ジ「おおそうか!全然知らなかったぜ!」

セ「全くお前はいつまでたっても変わらんな…そんなことだから、エルリアちゃんにバカにされるんだ。」

ジ「余計なお世話だ!」

エ「いいえ、センリさん。ジン君は戦う度に強くなってます。ただ…」

セ「ただ?」

エ「知識が足りないというか、おつむが弱いというか…」

セ「それは言える。」

ジ「うっさい!あ、それより親父、何でココに居るんだ?たしかハジツゲタウンのバトルテントに行ったんじゃなかったのか?」

セ「確かに私はハジツゲに行っていた。しかし、お前達に用があって戻ってきた。」

エ「私たちに?」

セ「ああ。その事についてはハジツゲで話す。2人とも着いて来てくれ。」


                       …第二話へ続く
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中氏 #3★2005.06/13(月)22:09
【第2話:謎の隕石】

―空中―
ジン、エルリア、センリの3人は、ジンはトロピウス、エルリアは、プテラ、センリはフライゴンと、それぞれ空を飛べるポケモンに乗ってハジツゲへと向かっていた。

ジ「…なあ親父、用って何だ?と、聞きたいところだけどよー…」

セ「どうした?」

ジ「オメェ、空飛ぶの遅すぎだよ!」

セ「うるさい!余計なお世話だ!大体私は高所恐怖しょ…じゃなかった、トレーニングの為に毎回徒歩で目的地に向かうんだ!大体おつむの弱いバカ息子にそんなこと指摘されたくないわ!!」

エ「…センリさん、自分の非は認めるべきだと思います。あと、人のセリフをすぐに引用しないで下さい。」

ジ「へっ!!おつむが弱いったって、オレは親父にも、ダイゴにも勝った事あるもんね〜♪」

セ「ぐ…っ!その事を言われると…」

反論できない、センリであった。

セ「人のセリフを強奪するな!!」

ジ「誰と話してんだよ…お、見えてきたぜ。ピウス、着陸態勢に入ってくれ。」

どうやらジンは、トロピウスにもニックネームをつけているらしい。

ト「きゃう!」

―ハジツゲタウン―

バタバタバタ…

ジ「着陸!とう!!」

ジンはそう叫ぶと、トロピウスの背中から元気に飛び降りて地上に着地し、トロピウスをボールの中に戻した。

セ「いでっ!!」

一方センリはというと、勢い余ってフライゴンと共に地面に激突した。
とてもジムリーダーとは思えないほど無様である。

エ「センリさん、日頃からこういう事の練習もした方がいいですよ。フライゴン、大丈夫?」

フ「きゅ〜う…」

ジ「そうだぜ親父。フライゴンが可哀相だし、無茶苦茶みっともねーぜ。」

セ(私の心配は無しか…)

エ「ま、何でも良いけど早く目的地に案内してください。じれったいのは苦手なんで。」

セ「…」

3人がハジツゲに着くと、いつもは静かな筈のこの町が、何やらよそ者達で溢れていた。どうやらよそ者の大半が何かの事件の野次馬らしい。他、テレビのリポーターや、カメラマン等の姿も伺える。

レ(レポーター)「え〜ここが昨夜謎の隕石が落ちた、ハジツゲタウンです。隕石を一目見ようと、人々で溢れかえっています。」

「ちょっと押すなよ!」
「アタシにも見せなさいよ!」
警「はいはい、このロープから内側に入らないで!!」

エ「もしかして、この隕石のこと?」

セ「ああ。しかし、私達がこれから行くのはソライシ博士の家だ。人ごみに紛れて迷子になるなよ、2人とも…って、ジンがいないぞ!?」

ジ「ちょっと、オレにも見せろよ!」

エ「あそこよ!」

セ「バカモノー!!」

                       …第3話へ続く。
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中氏 #4☆2005.05/22(日)01:42
【第3話:隕石の秘密】

セ「まったく…言ってるそばから迷子になるとは…情けないぞ!」

ジ「へ?親父ココに着いたとき、何か言ってたっけ?」

エ「つまり注意を聞く前に迷子になったってワケね…」

ジ「そーいうワケ!エルリアってやっぱ頭良いよな〜!!」

セ「それも正しいが、正直に言うとお前が馬鹿すぎるだけだ。」

ジ「うるせーよ!!」

エ「何でもいいけど、急いだ方がいいんじゃない?多分アタシ達、大遅刻だと思うよ?」

ジ「どれどれ…(時計を見る)ゲッ!マジでヤベェ…」

セ「とにかく急ごう。」

―ソライシ宅―

ソ「遅いですよー3人とも〜時間はしっかりと守らなきゃ…」

野次馬組に参加して迷子となったジンを探す事30分、3人はしっかり遅刻したのであった。

ジ「へへっ、悪ィ悪ィ。」

エ「アンタ、笑いながらそんな事言える立場だと思ってんの?」

ジ「スミマセン、オレが悪ぅございました…」

ソ「まあ、何でもいいけど本題に入りましょう。もうご存知だとは思いますが、この町に隕石が落ちたことはしってますよね?今日はその隕石の事で、御2人にお話があってここに来てもらいました。私が話をしている際に、疑問に思った事などがあれば、遠慮なく言って下さい。」

エ「では、早速ですけど…」

ソ「何ですか?エルリアちゃん。」

エ「何でたかが隕石のことで、こんなに大騒ぎになってるんですか?他の地方ならいざ知れず、ホウエン地方って、結構隕石が落ちて来る地方なんでしょ?」

ソ「いい質問だね、エルリアちゃん。そう、君が言ったように私達が暮らしているこのホウエン地方は隕石がよく降ってくる地方なんだ。今回落ちてきたこの隕石も、通常ならこんなに野次馬が集まるほど注目されず、「邪魔だから」といって撤去作業に移るところだ。」

ジ「しかし、それが普通じゃねェって言いたいんだな?」

ソ「その通り。この隕石は、他の隕石とは全く違う性質できているんだ。そしてその性質とは、なんとポケモンのDNAが組み込まれている事なんだ。」

エ「ポケモンの…」

ジ「DNA!?」

                          …第4話へ続く
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中氏 #5★2005.05/23(月)15:59
【第4話:眠りマユ(前)】

ソ「そう。あの隕石の中には、ポケモンのDNAが組み込まれている…いや、『眠っている』と言った方が正しいかな。」

エ「どうやってそんな事が分かったんですか?」

ソ「それは…」

―回想,昨夜(時刻 0:00)のハジツゲ―

ヒュルルルル…ドン!

住民1「何だ何だ?」

住2「誰!?こんな真夜中に大音量で音楽鳴らしてるの!!」

住3「いや、音楽じゃねぇみてぇだぞ。」

ソ「一体何ですか?」

ソライシの妻「ちょっと見てきて下さらない?」

ソ「ああ。見てくるよ。」

ソライシはそういってバット(何処にあったんだ?)を手に取ると、表へ出た。
彼が表へ出ると他の住民たちも数人外へ出ていた。

ソ「い…隕石…?」

住1「なーんだ隕石かよ…」

住2「隕石もここまでしょっちゅう落ちて来られると迷惑よね〜」

住2の赤子「ほぎゃあ!ほぎゃあ!」

住2「子供は泣き出すし…お〜よちよち、怖くないからね〜」

住3「何でもイイけど撤去隊呼んで、早く寝ようぜ?オレもう眠いし…」

住4「そうだな。ソライシ博士、悪ィけど撤去隊呼んでくれねーか?」

ソ「いいですよ。こんな事しょっちゅうですし。」

2時間後、撤去隊が到着した。
ちなみに『撤去隊』というのは、『隕石撤去隊』の略であり、トクサネに本部を構えている。
こんな部隊があるのは、恐らく隕石の多いホウエン地方くらいだろう。

撤去隊隊長「コレですね?」

ソ「はい、お願いします。」

長「あ、そうそう、住民は避難させましたよね?」

ソ「もちろん。」

長「よーし!皆の衆セット!」

 ジャキ!

隊長が合図すると、隊員たちが一斉に何やらバズーカ砲らしきものを隕石の方に向けた。
隕石の撤去作業というモノはちょっと…いや、かなり手荒なモノらしい。

長「砲撃!!」

 ドゴオオオオオォォォォ…

物凄い爆音が辺りに響く。
フエンタウンにまで届くかという位だ。

ソ「いつ聞いても凄い爆音ですね…あの、もう少しお手柔らかにできませんかね?」

長「あいにくですが、それはムリです。まだ耳が慣れないとでも?」

ソ「いや、僕は慣れてるから良いんですけど、住人からよく苦情が飛ぶんで。」

隊1「そうですよ隊長。」

隊2「俺達だって周囲の苦情に全然傷ついてない訳じゃないんだから。」

長「スマン…お前達…」

隊3「!…た…隊長、アレ!」

一同「!!」

 …後編へ続く
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中氏 #6★2005.06/16(木)00:50
【眠りマユ(後)】

一同は隊員が指を差した方を見た。

ソ「む…無傷…?」

長「バ…バカな…我が隕石撤去隊専用特殊バズーカは無敵のハズ…!」

その時…

…ピシッ

隊1「!!隊長!隕石に…ヒビが…」

バキバキバキバキッ…!!

長「…よ…よく分からんがと…とにかく全員ここから非難しろー!!」

隊員達&ソ「イ、イエッサー!!」

その場の雰囲気に合わせて、ついつい隊員達と
同じセリフを喋ってしまったソライシ博士であった。

―住民達が避難しているハジツゲから少し離れた場所―

住1「なーんか今日の撤去作業はいつもより長くねーか?」

住3「こちとら早く寝てーのに、何やってやがんだよ…」

…カッ! ドゴオオォォ…

住1「おっ、あの大爆発は…」

住2「撤去完了の合図だわ!」

住5「でも、今日はいつもと違う青い光だったよ?
いつもは普通の爆発じゃん。」

住3「まあいいさ。
あとはいつものように撤去隊が戻って来れば俺たちは安眠できるってコトだろ?」

タッタッタッタ…

ソ&撤去隊「ハァ、ハァ、ハァ…」

住4「おっ、来たようじゃ。」

住2「これでやっと寝れるわ。」

住3「んじゃ、早く戻ろーぜ…ファ〜ァ…」

ソ「待ってください!」

長「恐れ入りますが、まだ戻らないで下さい!」

住人達「ええ〜!!」

住2「ちょっとアンタ達、人をバカにしてんの!?」

住1「こっちは眠くて仕方ねーんだよ!」

住3「もういい!意地でも戻ってやらあ!」

住1「そうだ!そうだ!」

ソ「ちょ…ちょっと待って下さい!」

長「何が起こるか分からないんですよ!?」

住1「へっ!悪ィけどアンタ等の言うコトは聞けね…って
何じゃこりゃあァ!」

元隕石があった場所には、隕石に比べると遥かに小さい、漬物石位の大きさの青いクリスタルのような謎の物体があった。

ソ「こ…コレは…」

長「一体…」

住3「ソレはこっちのセリフだ!」

住2「何でもいいけど、私達はもう戻ってもいいワケ?」

長「あ…はい、良いですよ。」

住3「やっと寝れる…」

住2「こんなコトしょっちゅうやってたら、お肌が荒れちゃうわ。」

文句を言う住民達が全員家に入ると、隊長は謎の物体を持ち上げた。

長「…とにかく、本部(トクサネ)の研究所へ持って行ってみます。」

ソ「解りました。お願いします。」

―現在―

ソ「…と、いうワケなんだ。」

ジ「そして研究所で調べた結果、ポケモンのDNAが眠っていたってワケだな。」

ソ「その通り。」

エ「ところで、どんなポケモンのDNAが眠っていたの?」

ソ「残念ながら、それは未だに不明なんだ。
しかし、一つだけ解っている事がある。」

ジ「それは?」

ソ「眠っているポケモンがとてつもなく強大な力を持っていることだ。
その力を使えば、新たなポケモンを作り出したりする事も、容易にできるだろう。
そして僕達はその謎の物体に、『眠りマユ』という名をつけた。」

ジ「へー…それで、何でオレ達を呼んだんだ?」

ソ「じつは、明日からキミ達にこの眠りマユを守ってほしいんだ。
眠りマユの力を悪用されると、大変な事になるかも知れない。
今の所、さっき僕が話した内容を知っているのは僕の仲間達と、キミ達とセンリさんだけだ。
この事は、必要以上に他人に口外しないでほしい。
どうしても、って場合は僕の許可を得てくれ。」

セ「でも、何故私の息子達に…」

ジ「そーだよ、別にオレ達じゃなくてもさあ、こう…もっとお偉いさんで強い人ってワンサカいるだろ?ジムリーダーとか、四天王とか、チャンピオンのダイゴとかさあ…」

ソ「実は、彼等にも頼もうとしたが向こうの都合が悪くてね。
一応、ほぼ毎日挑戦者が訪れるワケだし…
それで、『殿堂入り』した君達に頼んだと、いうワケさ。」

エ「でも、なーんかイマイチ納得いかないわね…」

ソ「実は、もう一つ理由があるんだ。
それは、とある『伝説』のコトだ。」

ジ「伝説?」

ソ「うん。
実は、謎の物体に『眠りマユ』という名前をつけたのには、ちょっとした理由があってね。
それは、『リュオウ伝説』の事なんだ。」

エ・ジ「リュオウ伝説?」


第5話【リュオウ伝説】に続く…
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中氏 #7★2005.06/12(日)02:07
第5話【リュオウ伝説】

セ「確かリュオウ伝説というと、ホウエン地方に昔から伝わる結構有名な伝説じゃ…」

ジ「確かリュオウ伝説ってゆーと、何かスッゲー大昔にリュオウとかいうゴッツイ王国が空中に浮かんでて、その国の王様が世界制服を企んで、ガンガン征服していくケド、世界征服まであと一歩というトコで、何故かその国の核のような存在がいきなり暴走して、あわれ国民は全滅、高度な科学力を誇った国の機能も完全ストップ…で、リュオウ滅びて世界は救われ、万万歳って童話だろ?俺がガキの頃、よくお袋が読んでくれてたぜ。アレって「童話」じゃなくて、「伝説」なのか?」

ソ「正確にはね。」

エ「確か「眠りマユ」ってその伝説に出てくる、「リュオウの核のような存在」という設定を与えられていた物質でしょ?何故そんな事実かどうかも分からないような伝説から名前をとったのですか?」

ソ「すまないケド、この理由は僕にも分からないんだ。」

ジ「はぁ?じゃ、何でそんなに安易に名前つけたんだよ!?何か納得いかねェ…」

エ「ジン、少し落ち着きなさい。まあ、「納得が行かない」という点については、私も同じだけど。ソライシ博士、正確にはその名前は、一体誰がつけたんですか?」

ソ「それは、僕らと同じ研究仲間の『リュ―ド』という男が名づけたんだよ。」

セ「リュ―ド?」

ジ「で、そいつはどんなヤツなんだよ?」

ソ「本名、『リュ―ド:ジルク』。性格は…うーん、特に親しいワケじゃないからよく分からないケド、必要以上に人と関わらないようにしてるって感じの男だね。」

エ「で、その男の友人は?他、出身地、家族などについては?」

ソ「僕の知るかぎり、彼と親しくしている人物は、見かけたコトがないね。出身地も分かっていない。」

ジ「結局現時点で分かるのは、本名くらいってワケか。」

エ「ま、そーゆーコトになるわね。でも、こんなに長々と話させといて悪いけど、リュ―ドのコトなんて、ほとんどどうでもイイのよね。」

ソ「あはは…とまあ、現時点で分かっているのはコレ位だ。何か質問はあるかい?」

エ「別に。」

ジ「全然っ大丈夫さ!」

ソ「じゃあ、僕の頼みを受け入れてくれるかい?2人とも。」

ジ「おうよ!任せとけってんだ!」

エ「…」

セ「ん?どうしたんだね、エルリアちゃん?」

エ「…悪いけど、私はお断りです。」

ソ「え!?」

ジ「どーしてだよ!?エルリアー!?」

エ「アタシは、世界に悪の組織がはびころうと、知ったこっちゃないし、何よりもそんな確信の持てないおとぎ話だの伝説だのを相手にしたくないのよ。自分が納得行かないことには付き合わない主義なの。簡潔に言ってしまえば、「興味無し」ってトコね。」

ソ「でも…それじゃあエルリアちゃんも困るのでは…」

エ「だから「興味無し」って言ってるでしょ?悪いけど、この辺で失敬させてもらいます。プテラ!」

プ「ギャウ!」

エルリアは冷たくそう言い放つと、プテラに乗って何処かへ飛んでいってしまった。

セ&ソ「…」

ジ「クゥー!相変わらず可愛くねーヤツ!」

ソ「仕方ありませんね。…おっと、もうこんな時間だ。もうすぐ眠りマユがココへ運ばれてきます。」

ピンポーン

ソ「あっ、来た来た。」

そしてソライシ博士は運ばれて来た眠りマユを受け取ると、ジンに手渡した。

ソ「それではジン君、頼みましたよ!分からない事があったら連絡して下さい。」

ジ「おっしゃ!了解!」

セ「では、そろそろ私達も失礼するか。」

ジ「親父〜今度はちゃんと着地しろよ〜?」

セ「う、うるさい!」

バサバサバサ…

ソ「あれ?そーいえば、最近ポケモンリーグチャンピオンが他の人になったっていう噂があったような…?ま、いっか。」

―その頃…とある草の茂み―

?「アレが『眠りマユ』か…」

?「なるほど、ボスの言った通りだな。」


第6話【謎の集団】へ続く…
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中氏 #8★2005.06/12(日)03:16
第6話【謎の集団】

―ミシロ―

ジ「う〜ん…」

ジンは、引き取ったマユとにらめっこしていた。
どうやら何か悩んでいるようだ。

母「ジンー、ご飯よ〜!降りて来なさ〜い!」

ジ「う〜んう〜ん…」

母「ジン!ご飯抜きにするわよ!!」

ジ「だァーっうるせーよ!今俺は重要な事を考えてんだよ!!」

母「あっそ!そんじゃご飯抜きでいいのね!?」

ジ「何でもいいから今話しかけんなよ!」

―30分後―

ぐうぅ〜…

ジ「お袋〜メシまだか〜?」

母「アンタ何言ってんの?さっき呼んだら「いらない」って言ったでしょ。」

ジ「あ〜そうだった!ちっくしょ〜何やってんだ!あの時の俺のバカバカバカ〜!!(ボカボカ)」

セ「(ガチャ)何を馬鹿な事をやってるんだ…どーせこんな事になるだろうと思って、お前の分のメシ、とっといてやったぞ。有難く思え。」

ジ「…」

いつもなら、「何自分に自惚れてんだよ!このバカ親父!」
などと言って飛び蹴りを食らわすジンだが、
空腹の危機を救ってもらったため、今回だけは黙っていることにした。

ジ「ふう〜助かった〜。危うく餓死するトコだったぜ。」

セ「そんな大袈裟な…ところで何をそんなに悩んでいたんだ?」

ジ「ああ、ソレはマユの隠し場所のコトでさ、どっかいいトコね〜かな〜?と。親父、何かこうさあ、丈夫な金庫とかないか?」

セ「そうだな…何か丈夫な金庫…」

プルルルル…

セ「(ガチャ)はい、もしもし…え!?本当ですか!?解りました、今すぐそちらへ参ります!」

ジ「親父〜誰から?」

セ「ジン、今すぐハジツゲに向かうぞ。ソライシ博士の家に謎の集団が、乱入したようだ。」

ジ「え〜…見たいTVあったのに…」

セ「そんなもの、ビデオに撮っておけ!行くぞ!」

ジ「はいはい。あ、そうだ。マユも持って行かね―と。俺の留守中に盗まれでもしたら、大変だ。」

―ハジツゲ―

バン!

セ「博士、大丈夫ですかって…」

ジ「あれ…?」

2人が家の中に入ると、不思議と家の中は物が散乱していることもなく、極めて昼と変わらない状況だった。先程謎の集団が乱入したとは、到底思えない。唯一、何かあった証拠といえば、気絶しているソライシ博士くらいであろう。

セ「昼間と…変わらんな…」

ジ「ホントに謎の集団がココに来たと思うか?親父。」

ソ「う…う〜ん…」

ジ「あっ、気が付いた。」

ソ「あれ?僕はどうしたんだっけ?」

セ「何ともありませんか?博士。」

ソ「いや、大丈夫ですけど…」

ジ「無事でよかったな。さ、用も済んだことだし、家に帰ってTVでも見るか。」
ソ「(眠りマユを見て)!ま、待ってください!」

セ&ジ「?」

ソ「そのマユ、やっぱり僕が預かりますよ。」

ジ「へ?何でだよ?」

セ「第一、博士はポケモンバトル等が苦手なんじゃ…」

ソ「いえいえ、僕が預かる事が先程トクサネの研究委員会の中で、正式に決まったんですよ。だから、マユを渡してください。」

ジ「まあ、それほどいうんなら…ほらよ。」

ソ「ありがとうございます。」

セ「そういや奥さんの姿が見えないような…」

ソ「あ、逃げた家内ならじき戻ってくるでしょう。ご迷惑をおかけしました。2人とも、もうかえってよろしいですよ。」

ジ「?ああ、んじゃあな…」

第7話に続く…
L140071.ppp.dion.ne.jp
中氏 #9★2005.06/19(日)02:30
第6話【突入】

謎の集団について不可解に思ったセンリは、住民に話を聞いていた。

住1「そいつらは、何かどこかへ逃げていったぞ。方向は分からないケド。」

セ「そうですか…」

ジ「まあ、何も問題起こってなかったことだし、さっさと家へ帰るとしますか〜。んじゃあピウス、飛ぶぞ。」

そう言ってジンは、待たせてあったトロピウスに乗った。が、しかし…

ト「…」

ジ「どうしたんだよ?ピウス。家に帰るぞ。」

トロピウスは一向に飛ぼうとしない。
それどころか、ジンを振り落とした。

ジ「(ドンッ!)痛っつぅ〜…コラ、ピウス!何で俺を振り落とすんだよ!?家へ帰らなきゃなんねーんだぞ!!…ん?」

ト「(ジンの服を口で引っ張りながら)きゃう!きゃうきゃう!!」

ジ「…何か言いたそうだな。俺に来てほしい所があるのか?」

ト「(頷きながら)きゃう!」

ジ「そうか。で、どこに来てほしいんだ?」

ト「きゃう!」

トロピウスは、ソライシ博士の家の方に首を向けた。

ジ「…博士の家?まあ、とりあえずチャイムを鳴らすか。」

ピンポーン…

「…」

セ「対応が無いな。博士ー!」

「…」

ジ「またも対応なしか。俺達が博士の家を出て5分も経ってないのに。鍵は…(ガチャガチャ)しっかり閉めてあるな。」

セ「ここまでくると、さすがにお前でも気付いてるようだな、ジン。」

ジ「一言多いんだよ。で、対応ナシで鍵がかかってるとなれば…」

セ「中に入って真相を確かめる方法はただひとつだ。ヤルキモノ!」

ヤ「ギャウ!」

ジ「準備OKというワケですか。その方法とは、博士にゃ悪ィがドアを蹴破って中に突入するコトのみ!!」

セ「ヤルキモノ!ドアを蹴破れ!!」

ヤ「ギャキィー!!」

バタン…

ヤルキモノが突進すると、ドアはあっさり倒れた。
二人が中に入ると、中には誰も居なかった。

ジ「あれ?誰もいねーぞ?」

セ「…ジン、もしかするとお前がマユを博士に渡したのは、まずかったのかもしれない。ヤルキモノ、家具を一つ一つどけてみろ。」

ジ「あ、なるべく丁寧にな。タダでさえ俺達ドアを壊してんだからな。」
そして、ヤルキモノが本棚をどけた時、謎の地下に通じる穴が開いていた。穴は、舗装されている様子も無く、今日掘ったばかりといった感じであった。

セ「ココが一番臭いな。心の準備は?」

ジ「勿論OKっす☆」

セ「よし、突入す…」

センリのポケナビ「ピロピロピロ…」

セ「(何だ?)はい、もしも…」

ジムの門下生「センリさん大変です!謎の集団がジムに乱入してきて…(バキッ!)今す…ぐ…もどっ…ツーツーツー…」

ジ「誰からだよ?」

セ「すまんなジン。たった今、我がジムにも謎の集団が押し入ったとの通報があって、急遽ジムに戻らなければならなくなったが、お前ならいけるな?」

ジ「たりめーだろ?」

セ「よし、後は頼んだぞ。」

ジ「おうよ!まかしとけって!」

バサバサバサ…

ジ「さーて、突入するとしますか!」

第8話へ続く…
L140136.ppp.dion.ne.jp
中氏 #10★2005.06/24(金)00:06
【第8話:アジト】

ジ「(くんくん…)どうやらこの穴は、ポケモンの力で掘ったみてーだな。この臭いは…さしずめサンドパンってトコか。」

人間の嗅覚でポケモンの臭いを細かく分析するのは並大抵の人間が成せる技ではない。それだけジンが、ポケモンとの行き逢いが長く、触れ合いを欠かしていないという証拠だ。

ジ「さ〜て、降りるとするか…って、こりゃあ、ちと深いな。
よし、出て来いスライム!」

メ「モ〜ン!」

ジンがボールを投げると、中からメタモンが飛び出てきた。

ジ「スライム、カギ縄に化けてくれ。この穴ん中に入るから。」

メ「モン!」

ジ「おっと、なるべく静かにしてくれよ。今から俺達が突入する所は、一般人…というか、普通の人は入らねー場所なんだ。しかも、内部は敵だらけで見つかったら確実にヤバイ事になる。分かったな?」

メタモンは、何も言わずに手(?)を挙げた。そして、カギ縄に変身した。
ジ「よいしょっと…ふう〜…マジで深けぇな〜こりゃ、普通に飛び降りたりしてたら、間違いなく大怪我してたぜ。おっ、底が見えてきた。スライム、降りるぞ。スタンバイしてくれ。」

ジンがそう命令すると、メタモンは元に戻った。
内部はそこら中にちょうど鉱山のようにしてライトが設置されており、思ったよりも明るい。運良く、ジンが降りた所に敵はいないようだ。

ジ「(スタッ)ふへ〜…結構広いな〜よし、進みますか。道は…よかった。一つしかねぇ様だ。スライム、戻ってくれ。」

そう言ってジンはメタモンをボールに戻し、道を進んだ。
アジトは、正に今日掘ったと言わんばかりに隠しカメラが無い上に
今のところ道は多少カーブしている部分があるものの、
大して入り組んでいるワケでもなく、一本道だったので、
大迷路を予想していたジンは、その辺に対しては安心していたが、
10分歩いても、20分歩いても、30分歩いても、
見張りが全くいない事には安心さと不気味さを同時に感じた。
そして彼がしばらく歩いて行くと、一人の男が見えた。
男の後ろには道があり、他に道と言える道いえば、
ジンがこれまでに歩んで来た『帰り道』くらいであろう。
どうやら彼は前者を見張っているようで、ジンには気づいていない。
ジンはこれまでにも何度かアジト的な場所に突入しているが、
日常茶飯事のようにやっているワケではない為、多少の緊張を肌に感じていた。

ジ(真っ向から突っ込んで気絶させちまうのが一番手っ取り早いが、そんな事をしたらほぼ確実に騒ぎが大きくなっちまうだろうな…ココはょいと苦手だけど、頭脳プレーで行くしかねーな…)

ジンは元来た道を少し戻ると、再度メタモンを出した。

ジ(メタモン、地面に化けてあそこのおっさんの後ろに回りこんで、『死なねー程度に』ぶん殴って気絶さしてくれ。)

メ(モン!)

メタモンは地面に化けると這いながら見張りの男に近づき、
壁に張り付いて男の背後に回ると、体の一部を人間の拳骨(げんこつ)に変化させ、男の後頭部を殴り、気絶させた。
男がその場に倒れた後、ジンは多少警戒しながら男に近寄った。

ジ「…どうやらちゃんと気絶している様だな。よし、ちと大胆だが…」

メ「モン?」

この後ジンが取った行動は、本当に大胆であった。
男の着ていた制服を脱がし、それを自分で着た。
その制服は男とジンの年齢差のせいか、ジンには少し大き過ぎた。

ジ「ちょっと大きいけど、大丈夫だよな。ん?」

メ(じー…)

ジ「…何なんだよ、そのいかにも『敬遠の眼差し』というか、『セクハラ』って感じの目は…仕方ねーだろ。俺だってホントはこんなむっさいおっさんの服脱がして、しかもソレを着るなんて絶対やりたくなかったけど、バレなくする為にはこうするしかなかったんだよ!」

メ「…へっ。」

ジ「(コイツ…)まあ服も着たし、スライム、縄に化けてそのおっさんを一時的に縛っててくんねーか?用が済んだら戻るからさー。ソレまでの間…な?」

メ「モン…(←嫌々)」

こうしてメタモンが男を縛ったのを確認した後、ジンはさらに奥へと進むのであった。

第9話へ続く…
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中氏 #11★2005.06/23(木)02:00
【第9話:失敗】

ジンは、先程倒した男の持ち物をチェックしていた。

ジ「コイツ、『ムヌ』っていうじゃな〜い…じゃなかった、こんな名前なのか。どっかで聞いた事あるな…他に持ち物は…銃と、このメンバーカードだけか。それにしても、この服動きにくいなー…こりゃ一刻も早く事を片付けねーとな。スライムも嫌がってるし、このムダに裾の長いコートみたいな制服着てるのも暑くて仕方がねーし。」

何やらぶつぶつと独り言を発し、敵に見つかっても全然不自然ではない言動を自ら取っているジンであった。そんな彼の前に一人の見張りが突如現れた。

ジ(げっ!見張りだ!正体が俺だってことがバレたらマズイ事になるぞ〜…)

見「…」

ジ(何かめっちゃ怪しまれてる様な…イヤ、落ち着くんだ俺。バレるハズなんてない。ココで取り乱した方が、返って怪しまれる!!そうなったらお終いだ!)

…と、自己暗示をかけているものの表情までは誤魔化せず、冷や汗がダラダラとジンの頬をつたう。

見「…やっぱオメーも暑いのか?」

ジ「へ…?」

見「へ…?って、この制服のコトに決まってんだろ。このアホみたいに裾の長いコート(制服)!」

ジ「(よく解んねーケド、バレちゃいねーようだな。)そ、そうだよなー!ホンットに暑くて仕方ねーよな!」

見「そうそう!何でこんな暑苦しいコート着なきゃなんないのか、さっぱり分からないぜ!あ、そうそう、もう知ってるだろうケド、数時間前に仲間がソライシの野郎をとっ捕まえたらしいぞ!」

ジ「マジかよ!?」

見「マジかよって、お前まだ知らなかったのか?もう、かなりしたっぱの奴らもこの事を知ってるぞ。」

ジ「あ、(ヤベェ!)じ、実は俺、さっきまで外の様子見に行っててさ〜全っ然知らなかったよ。」

見「な〜んだ、そうだったのか〜。それと、もうハジツケ側の見張りはしなくていいってよ。」

ジ「お、そうか。ならココの見張りにつくか。」

見「んじゃあ、お互い頑張ってな。」

ジ「おお。(何とか誤魔化せた…)」

しかし、ジンが安心したのもつかの間、
見張りがジンには大き過ぎてダブダブになったコートの裾を踏んでしまい、ジンはその場で転倒した。
しかもその拍子にコートが脱げてしまったのだ。

見「お、悪ィ…って、あー!!お前は!」

ジ「ヤベェ!バレた!!」

見張りは、正体を表したジンを見て無線を取り出した。

見「侵入者だ!ソライシの家にいたガキの男の方だ!!」

ジ「バレちゃあ、しょうがねェな。出て来い、キラー!!」

ハッサム「サム!」

見「なるほど、流石に無防備なまま侵入するという、愚行はしないってワケか。行け!グラエナ、マルノーム、ドゴーム!」

グ「ガルルルル…」

マ「ウゴ!」

ド「ゴーム!」

ジ「へっ!さーすが悪人、勝つ為には3対1に持ちこむ事を、何とも思わねーってコトか!」

見「相手は1匹でしかも、トレーナーはタダのガキだ!なるべくガキの方を狙え!」

ジ「聞く耳ナシってワケか。キラー、『ポケモンに』鋼の翼!」

ハ「ハッサ!」

命令されたハッサムは、敵が3体なのにもかかわらず、敵を順調に片付けていく。
勿論、ジンを守る事も忘れずに。
そして1分経つか経たないかという間に見張り側の手持ちポケモンは全員戦闘不能となった。

見「な…何故…」

ジ「タダの子供だと思ってナメてもらっちゃあ、困るんだよなー。俺、これでもチャンピオンの座に登りつめた男だからな!キラー、『人間に』みねうち!」

ハ「サム!」

見「ぐおっ…!」

バタッ…

ジ「ふう〜…何とか片付いたな…って…」

ジンが後ろを見ると、大勢の敵が先程の連絡を受けて集まってきていた。
彼らは既に各々のポケモンを出して、戦闘準備万端といった状態だ。
巨大なポケモンを出して一掃するのが一番だが、あいにく洞窟は狭く、下手をしたら
洞窟が崩れ落ちる可能性がある。

ジ「くそっ!この狭い洞窟の中、出せるポケモンは限られてるし、まさに『多勢に無勢』だぜ…でもやるっきゃねーな…キラー!」

ハ「ハッサム!」

その時、物陰からジンに向かって手招きをしてる一人の男の姿があった。

ジ(ソライシ博士!?何でココにいるんだ!?俺に「来い」って言ってるのか!?)

ソ(ジン君!とりあえずポケモンを戻してこっちに来て下さい!)

ジ「(どっちにせよピンチだし、行くとするか!)キラー、戻れ!」

ジンはハッサムを戻しながら、ソライシ博士の方へと全力で走った。

ソ「こっちに抜け道があるんだ!そのまま走りながらついて来て下さい!」

ジ「おし!」

ソ「絶対に私について来て下さいよ!はぐれたら終わりです!」

ジ「分かった!でも、何で博士がココにいるんだ?」

ソ「あの集団にさらわれてしまってね。隙を見て逃げ出したんだよ。それとジン君、もっと私に近寄って下さい!」

ジ「ああ。」

その時だった。

ゴンッ…!

第10話に続く…
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中氏 #12☆2005.06/26(日)02:59
【第10話:監禁】

ジ「…う…〜…ん…アレ?ココは?博士は?」

ジンが目覚めると、目前に鉄格子が見えた。その向こうにはソライシ博士の姿が伺える。

ジ「!博士!無事か!?」

ソ「…無事?クックック…それは、自分のおかれている状況を見てのセリフか…?」

ジ「?」

鉄格子の向こうにいるソライシ博士は顔に手をやり、博士のマスクを剥ぎ取った。
すると、全く別の男の顔が現れた。男は、これまでに見たいわゆる『下っ端』とは違う服を着ている。

ジ「て、敵…!じゃ、じゃあ、あの時、俺と一緒にいた博士は…」

男「お前の隣を見てみな。」

ジ「は、博士!!」

ジンの隣には、気絶して横たわっているソライシ博士がいた。

ジ「く…くっそー!あ、でもこんな檻、キラーの攻撃で簡単に…って、アレ?モンスターボールとポケナビが無い!!」

男「どうやら、とんだバカの様だな。取り上げるに決まってるだろ?勿論、俺の『駒』を縛っていたあのメタモンもな。第一、逃げる際に飛び道具を持っているにもかかわらず、向こうが何の攻撃もしてこない事に違和感を持てない時点でお前はバカなんだよ。そんなおつむの弱い頭でココに侵入しようとは、可笑し過ぎて俺も開いた口が塞がらないよ…クックック…」

ジ「つくづくムカツク野郎だ。変な笑い方しやがって。」

男「ははっ…そう言ってられるのも今だけだよ…今、我等はこの洞窟の穴埋め作業の準備にかかっているところだ。飢えに苦しんで死んでいくがいい…クックック…」

そう言うと、男はつかつかと足音を響かせながら去っていった。

ジ「くそっ…!手足自由だけど、どうやってこの鉄格子を…」

?「見慣れねー面してっケド、お前も、謀反人か?」

ジ「う、ウギャアァー!!」

ジンが自らの後ろを振り返ると、そこには一人の少年がいた。
髪は赤みがかった茶髪のショートヘアーで、腕にはジン達とは違って、金の手錠がかけられている。
だが、何よりジンが驚いたのは、少年の服装だった。

?「そんなにデカイ声出すなって。響くだろ?」

ジ「お、お前敵か!?」

?「?ああ、この服か。確かにこの服着てるけど、俺、実は謀反人で捕まっちまったんだ。その様子からすると…お前は侵入者かそこらだろ?」

ジ「当たり。謀反人って、お前…逆らったのか?」

?「ああ。それと、自己紹介しとくよ。俺、
『ルド:トキアドル:シグラ』っつーんだ。『ルド』って呼んでくれ。オメーは?」

ジ「俺は、『ジン:オルナウ』。『ジン』って呼んでくれ。でも、お前の名前、長いな〜。たしかホウエン人の名前の構成って『名前:苗字』だろ?もしかしてお前、外人さん?イヤ、でも言葉通じてるしな〜…」

ル「まあ、言っちまえばそんなモンか。俺もよく分かんねーケドさー、俺らの民族って極稀なる少数派らしいんだ。」

ジ「マジ!?スッゲー!」

ル「そんな事言われたの初めてだぜ。でもよ、俺らって何故か迫害されてんだよな〜理由は謎だけど。」

ジ「う〜ん…お前見たカンジ、悪いヤツには全然見えねーケドなー…」

ル「だろ!?俺が何したって言うんだよ!」

ジ「オメーも結構声デカイじゃん。そういやお前、何で手錠なんかされてんだ?博士と俺にはされていないのに。」

ル「コレは、俺の『特殊能力』を封じる為の手錠。コレさえ外れてくれれば、脱出できるのに…」

ジ「俺も檻の近くのテーブルにモンスターボールがあるのに…悔しい思いはお互い様か。」

ル「俺達、ダチになれそうだな。」

ジ「そうだな。でも今は、友情に浸っている場合じゃねーぞ?」

ル「ああ。このままだと、俺達生き埋めにされて、類人猿の化石になるのがオチだぞ。」

ジ「とりあえず、格子の根元を掘ってみるってのはどうだ?何もせずに化石化するよりマシだろ?」

ル「異議なーし。」


第11話に続く…
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中氏 #13★2005.07/02(土)03:09
【第11話:アジト脱出作戦】

ガリガリガリ…

ジ「ふう〜…堅ってえな〜…」

ル「でも、舗装されてねー分良かったじゃねーか。もしココが本格的なアジトだったら、ぜってーコンクリか何かで舗装されてるぜ?そうなってたら、手で掘る事すら出来ねーじゃん。」

ジ「ココが臨時アジトであったことに、感謝しねーとな。」

ル「そういやあの時、俺の言った『特殊能力』のコト、これまでに他の奴に話しても全然信じてくれなかったか、あまりにも信心深過ぎて「この少年は悪魔に呪われている!おお…神よ…」とか言って、ビビるかどっちかだったのに、お前、簡単に信じたよなー。何で?」

ジ「ん?だって信じるもなにも、謎の生命体の『ポケモン』がいるくらいだから、いまさら特殊能力だろうが、超能力者だろうが、エイリアンだろうが何が出てこようが、疑ったり、ビビったりするワケねーだろ?特にビビる事に関しちゃあ、ビビろうにも全っ然ビビれねーって。まあ、ビビるとすれば、般若よりもおっかねー、俺のお袋のキレた時の形相ぐれーのモンだぜ。」

ル「プッ!ククッ…!あーはっはっは!」

ジ「どうかしたか?」

ル「いや、そういうコト言ったの、お前が初めてでさー、フツーはこーゆーコト言ったら、嘘っぱちだと思うじゃんよ?だから何かスッゲー可笑しくてさ、あーはっはっは!」

ジ「それって、俺が単純バカだって言いてーのか?」

ル「あ、悪ィ。そーゆー見方もアリか。俺もバカだけどな。でも何か、無性に嬉しーよ!やっぱ俺達、友達になれそうだな!!」

ジ「え?もうダチじゃん?」

ル「おっ!そうだったなっ…と、言いたいところだけどよー、このオッサン、いつまで寝てんだ?」

ジ「う〜ん…外傷はねーみてーだから、叩き起こして穴掘り手伝ってもらうか。」

ル「んじゃあ、俺起こすわ。(ゆさゆさ)お〜い、オッサン起きろ〜。」

ソ「Zz…」

ル「…って、このオッサン『気絶』してんじゃなくて、本当に『寝てる』のかよ!!しかも、図々しく起きねーし!!」

ジ「チッチッチ…甘いねルド君。そんなんじゃ、博士は起きないよ。」

ル「んじゃ、オメェがやってみろよ!」

ジ「おっしゃ、やったらあ!…奥さんが離婚しちゃいますよ〜」

ソ「お前えぇ!!私が悪かった!だから別れるなんて言わないでくれ〜!!(土下座)」

ジ「いっちょ上がりィ!っと。」

ル「…そのネタ、どっかで聞いたことあんぞ…」

ジ「まあまあ、気にしない、気にしない。一休み一休み。(Zz…)」

ル「今度はお前かいっ!しかもそのネタ『一○さん』のパクリだし!CM終わったぞ!休むな!寝るなー!!」

ソ「(CMって…)」

ジ「冗談だって。さっさと掘ろうぜ。」

ル「そりゃこっちのセリフじゃいっ!」

ソ「あれ?何やっているんですか?あと、君は…」

ル「謀反人のルド君でーす。」

ソ「ふーん、ルド君か…僕の名前はヤンぼ…じゃなかった、ソライシ。よろしくね。」

ル「こちらこそ。」

ジ「自己紹介が終わったら、博士も穴掘るの手伝ってくれよ。俺らの命がかかってんだから。」

ソ「僕は壁側を掘ってみるよ。もしかしたらこっちの方から手を伸ばして、あそこのテーブルの上にあるジン君のモンスターボールを取り返せるかもしれないからね。」

テーブルとジン達が入っている牢の鉄格子との距離は、およそ35cm。
たとえジン達がムリだとしても、大人のソライシ博士なら、届きそうである。

ル「ジン、オメー結構体力あるな。」

ジ「そーゆーお前こそ、手錠してるにも関わらず、疲れを見せねーじゃん?」

ル「こんなの軽りィ軽りィ!」

ジ「何かこうしてると、捕まった気がしねーな。(ガッ)ん?」

ジンが手元を見ると、格子の鉄の棒の内の1本が、岩に刺さっていた。
岩はかなりグラグラしていて、ある程度押したり引いたりすれば、地面から外せそうである。

ジ「よ〜し、あと一息だ!おーい、2人ともこっち来て手伝ってくんねーか?あとちょっとで、外れそうなんだ。」

ル「どれどれ…(グラグラ)あ、こりゃあホントに、あと一息だな。実はこっちも、もう少しで格子の横側の鉄棒が刺さっている部分を、崩せそうなんだよ。」

ソ「この棒が刺さっている岩を外せば、刺さっている鉄の棒を使って、壁を崩すのに利用できそうだね…よし、僕らも手伝おう。」

ジ「そんじゃいくぜ!せーのっ!!」

ル「ふんぎぎぃ…」

ソ「う〜ん…」

ゴオォン…

大きな音を響かせながら、鉄の棒が倒れた。
棒は臨時アジトの牢屋用に使われたものとはいえど、丈夫な物である。

ル「よーし、次はこの棒で横を崩すぞ!」

ソ「一人で持つには重いから、3人で持つとしよう。」

ジ「突撃ィ〜!」

ゴガァン…

3人が突進すると、先程までルドとソライシ博士が数時間かけて掘っていた分…いや、それ以上の岩が、
この1回で、まるでケーキの様にいとも容易く(たやすく)崩れ落ちた。

ソ「よし、あともう1回!」

ジ「せーのっ!!」

ドゴガアァ…

2回目の突進で格子の横に人が余裕を持って、外に出れる位の大きさの穴が開いた。作戦成功である。

ソ「やった…」

ジ「これでやっと、外に出られるぜ!あ、そうだルド。どうせだからこの棒で、その手錠壊してやるよ。」

ル「冗談言うな!危ねーだろ!?まあ、どっちにしても、コレ丈夫過ぎて、鍵が無いと絶対開かないしな。」

ジ「あはは…(半分本気だったんだけどな…)まあ、とっとと脱出しよ…」

―その時だった。

ガチャ!

何やら銃を構えた時のような音がした。その音に反応した3人が前を見上げると、
先程ソライシ博士に変装していた男が銃を構えて立っていた。

ジ「敵か!モンスターボールを…」

バキュン!!

男の持っている銃が弾を吐いた。
弾はジンの頭上スレスレをかすめ、飛んでいった。

ジ「うわっち!」

男「動くなよ…クックック…少しでも動いたら、あっという間に仏さんだぜ…ん?」

ソ「な…何故…?敵は去った筈なのに…」

男「クックック…俺は『穴埋め作業の準備にかかっている』とは言ったが、『ココを去る』とは、一言も言ってないぜ?ケッケッケ…」

ル「けっ!相変わらず気に食わねー笑い方しやがって。」

男「おおっと、そのセリフはお前らが今、どんな状況におかされているか分かって言ってるんだろうな?俺の機嫌を損ねてもあの世逝きだぜ…?」

ソ(ジン君、ルド君、ここは一先ず彼の話を聞こう。隙を見て逃げ出せばいいさ。)

男「…逃げだそうったってムダだぜ。だってお前らは、ココで俺様に殺されるんだからな!!ヒャアッヒャヒャヒャ!!死ねェ!!」

ソ「うわあぁ!!」

ル(もうダメだ…)

ジ(短い人生だったな…)

男が銃を構え、発砲しようとしたその時だった。

?「エアームド、エアカッター!」

カキン!

男「うぐっ!」

突如後ろから風の刃が飛んできて、男を壁の方に突き飛ばした。
風の刃が飛んできた方を見ると、そこにはエアームドと、一人の男の姿があった。

ジ「!…お、オメーは…」


第12話へ続く…
L140154.ppp.dion.ne.jp
中氏 #14★2005.07/18(月)12:50
【第12話:特殊能力】

ジ「もしかして…ダイゴ!?」

ダ「そのとおり。久しぶりだね、ジン君。」

ル「知り合い?」

ジ「ああ…まあな。でも何で…」

ダ「事情は後で話す。兎に角今は…」

男「痛っつ〜…やってくれんじゃねーか、なあ、ソコの兄ちゃんよお〜…」

ソ「!」

男「死ねや!!」

ダ「エアームド!」

カキン!

エアームドは、ダイゴの前に立ち、その堅い鋼の鎧で弾丸を弾き、彼らの身を守った。
そして再び、男に風の刃が炸裂する。

男「うぐっ…!ちっ、相手が鋼タイプじゃ、俺には分が悪いか…しかたねぇ、ここは一旦退くしかねぇな。」

男はそう言い放った後、コートの中に手を入れた。

ファンファンファファン…

ダ「な…何だ!?」

男「今回は見逃してやるよ…まあ、後はせいぜいザコ供の相手でもしていることだな。」

男はそう捨て台詞を吐き捨てると、超人的な身のこなしで去っていった。

ジ「ま、待ちやがれこの野ろぉ…!って…」

ダ「なっ…何だ、あの異常な素早さは!」

ソ「とても人間のものとは思えないな…」

ル「驚いてるところ悪ィんだけどよー、どうやらゆっくりしてらんねーみたいだぜ。」

3人がルドの声で我に返ると、目の前に多数の敵がいた。

ダ「おっと、そうだったね。あ、そうだジン君、これを!」

そう言うと、ダイゴは小さな麻袋をジンに投げてよこした。

ジ「ん?あー!コレは俺のモンスターボールとポケナビじゃねーか!」

ダ「ここに来る途中、取り返しておいたよ。君のポケモンは皆無事だから、安心したまえ。」

ジ「おお!サンキューな!じゃあ、雑魚狩りといきましょうか!」

それからまもなく、敵のポケモンが彼らに向かって襲い掛かってきた。
しかし、いくら数が多くても烏合の衆では彼らにかなう筈も無い。

ジ「始末完了!」

ダ「さて、君達はどうするつもりかな?」

敵「ぐっ…か、構わん!人間の方を撃ち殺せ!!」

ジ「ちっ、人間相手か…」

ダ「ポケモンと違って手加減が難しいが、やるしか…」

チャリン…

ル「『人間』相手か…なら、ココは俺に任せろ。」

ダ「え?」

ジ「な、何言ってんだよ、お前!」

ソ「そ、そうですよ!君はポケモンを持っていないし、その上手錠まで…」

ル「俺の腕を見てみな。」

ジ「…ってあれ?手錠が…外れている…?」

ダ「確かに…でも、ポケモンが使えないんじゃ…」

ル「他の2人はどうだか知んねーけどよ、ジンには話したよな?俺の『特殊能力』のコト。」

ジ「あ、ああ…まさか、オメェ!」

ル「そ。この能力を使おうってワケさ。」

ソ「!て、敵が!」

ズガガァァン!

ジ「ちっ!俺等が喋ってる間に…」

弾が彼らに当たろうとした、その時だった。

バチバチバチッ!

どこからともなく電気の壁が一同の前に現れ、彼らを守った。

ル「ふぅ〜…、危ねー連中だなー。相変わらず。」

ソ「ま…まさか…」

ジ「お前の言ってた『特殊能力』って、このコトか…?」

ル「Yes,that’right.」

ジ「?日本語で言ってくんねーと分かんねーよ。」

ル「その通りって意味だよ!」

ソ「そ…そんな…コレは…夢だ!夢なんだ!!あーはっはっは!!」

ダ「博士、気を確かに…でも、本当にこんなことがあって…」

敵「ちっ!手錠を外した奴が相手では、我々に勝ち目は無い!退くぞ!」

敵「逃げろ〜!!」

ル「逃がすかよ。むん!!」

バチバチィッ!!

敵「うぎゃああ!!」

今度は、ジン達の目の前でルドの掌から電気が飛ぶ。
その電気は敵たちに襲い掛かり、易とも簡単に全員を倒してしまった。

ル「フン、俺を監禁した罰だ。ざまーみろ。」

一同は、ただ呆然としていた。


…第13話へ続く
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中氏 #15★2005.07/22(金)01:33
【第13話:信頼】

ル「ふぃー…殺さない程度にしといた分、感謝しろよ?さて、敵も片付いたことだし、早くマユを…おい、どうしたんだ…?」

ジ「ま…マジかよ…」

ル「…」

―そうか…期待していたけど、所詮コイツも今までの奴等と同じか…。
最初は「全然平気!」とか言ってても、俺の能力を目の当たりにした途端、皆俺から離れていった。
この力のせいで俺には仲間と呼べる仲間がいない。
何故俺は、こんな奇怪な体に生まれたんだろう…?何で皆、俺を裏切るんだ…?
少しでも期待をかけた俺がバカだった。
コイツも、俺の手で今まで裏切った奴等と同じ所に送って…

バチバチッ…

拳に電気が帯電する。
そしてその拳を、彼らに向けようとした、その時だった。

ジ「す…スッゲーな!オイ!」

ル「…へ?」

ジ「だってさ、ホントにスゲーじゃねーかよ!あんだけの人間を殺さないように片付けちまうなんてよ!?もし俺だったら大怪我負わせてたかもしんねーんだぜ!?」

ル「え…す、すごい以前に、俺の能力目の当たりにして、怖くねーのかよ!?」

ジ「怖くないかって?当たりめーだろ!?だってさ、「ビビるワケ無い」って言ったじゃん。ことわざで「男に遺言は無い」っていうだろ?俺は嘘は大嫌いなんだよ。だから俺も嘘つかねー。」

ル「遺言?」

ダ「ジン君、それを言うなら「男に二言は無い」だよ…」

ジ「あ、悪ィ悪ィ。俺ってバカだからさー、ことわざとかそーいうの、苦手なんだよ。」

ル「ぷっ…お前、ホント正直モンだよな!」

ジ「あったりめーだ!男に二言は無い。うむ、今回はカッコよく決まったぜ。」

ル「へへっ、お前らしいな。…あと、実は俺、お前に謝んねーといけねーことがあるんだ…」

ジ「何だ?」

ル「「そんな事言ったのオメーが初めて」とか言ったけど、実はアレ、嘘なんだ。」

ジ「え?」

ル「これまでにも「怖くない」とか言った奴は何人かいたけど、皆俺の力を見た途端、俺から離れていった。何度も裏切られた。でも、お前が約束を守ってくれて嬉しいのは本当だ。嘘じゃない。信じてくれ。」

ジ「へへっ、信じられるのがダチだろ?俺たちもう、ダチだって、言ったじゃねーか。でも…よく懺悔してくれたな。あと、改めてその言葉、信じるぜ。」

ル「…サンキュ。」

拳から帯電していた電気が抜けていく。
その代わりに、彼の瞳から涙が流れ、頬を伝い、濡らす。

ダ「…」

先程まで敵と戦い、緊迫していたダイゴの顔が次第に穏やかになっていく。
ソライシ博士は、ようやく平静を取り戻したようだ。
しかし、和やかな雰囲気はそう長くは続かなかった。

ゴゴォォ…

一同「!?」

突然、地面が揺れ出した。周囲の岩が崩れていく。

ジ「な…何だ!?」

敵「へへっ…俺達だって、タダでは死なねぇよ…このアジトは間もなく崩壊するぜ…あと、冥土の土産に教えてやるよ…マユは…ココに…は…ねぇ…」

ドゴォン!!

敵の真上に巨大な岩が落ちた。

ソ「!」

ル「あ〜あ、折角俺が手加減したのに…まあ、今はココを脱出するのが先か。」

ソ「でも、どうやって…」

ダ「ネンドール、上に向かって破壊光線!」

ドォォン…

ジ「何やってんだよダイゴ!もしこの上に人がいたら…」

ダ「大丈夫。その心配は無用だ。」

ソ「兎に角脱出しましょう!」

ジ「ああ、スライム!はしごに化けろ!」

メ「モン!」


ドゴオオォォン!!


一同が脱出し終えた途端、アジトは爆発した。あと数秒遅れていれば、助からなかっただろう。

ル「ふー…ギリギリセーフってトコか。」

ソ「まさにその通りです。ルド君。」

ジ「それはそうと、ココは一体ドコなんだ?あとダイゴお前、チャンピオンの仕事休んでいいのか?」

ダ「そうか、僕が何故ココにいるか、一部始終説明する必要があるね。」

ジ(「一部始終」だな。「一家心中」じゃないな。)

ル(何ブツブツ言ってんだ?)

ダ「実は、昨日チャンピオンは新しい人に代わったんだ。」

ジ「マジ!?で、誰だよそれ!?」

ダ「元ルネジムのジムリーダー、ミクリだよ。」

ジ「ミクリって…あの、いかにもベル○ラに出てきそうで、高飛車で、壁に刺さりそうな髪型してて、自意識過剰で、自己主張が激しくて、「私は世界で一番美しい!」とかほざいてるくせに、何故か女にモテる、あのいけ好かねー奴か!?」

ル「どんな奴だよ…」

ダ「やだなあ、一番凄くて女のコにモテるのは、この僕だよ、ジン君。フッ…(薔薇をくわえる)」

ソ「ドコから持ってきたんですか…薔薇…」

ル「なあなあ、そのチャンピオンとかいうヤツ、高飛車で自意識過剰だったら誰でもなれんのか?」

ジ「かもな。」

ダ「何か言ったかい?」

ジ「態度がでかけりゃ、誰でもチャンピオンになれるかもって話をしてたんだよ。」

ダ「なっ…!キミ達、僕のドコが態度が大きいって言うんだい!?」

ル「「何故ココにいるかを説明する」って言っておきながら説明もせず、自己主張するからだよ。」

ソ「今回は、ダイゴ君に非があるね。」

ダ「分かった。ちゃんと説明するよ。」


第14話へ続く…
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中氏 #16☆2005.07/30(土)00:53
【第14話:理由と再会】


―回想:数時間前の流星の滝―

ダ「う〜ん、流石は流星の滝。隕石がゴロゴロ転がっている。」

数時間前、ダイゴは流星の滝の最深部で、趣味の石集めをしていた。
世間はそんな趣味を持つ彼を、変わり者だとか、乱心だ、などと言うが、
彼は世間体や流行などに囚われるような男ではない。

ダ「ああ…ホウエン地方に住んでて良かったよ…ステキな石たちに巡りあ…」

ドオオォォン!

どこからか、謎の爆音が聞こえてきた。

ダ「?何だ?今の音は…」

ドラー!

キィィッ!

野生のポケモン達が謎の爆音に怯え、逃げ出して来る。
不審に思ったダイゴは、ポケモン達が逃げて来た方向に足を進めた。

ダ「ポケモン達はこの横穴から逃げて来ていたな。一体穴の中で何が…」

ダイゴは、野生ポケモン達が逃げて来た横穴に入った。
そこで彼は、地面に掘られた謎の穴を発見した。

ダ「…この穴が怪しいな。何にしろ、野生のポケモン達の生活を脅かす連中を放って置くワケにはいかないな。」


ダ「…と、いうワケなんだ。」

ジ「つまりココは、流星の滝ってコトか。」

ダ「いや、ココはその近くの滝の上だよ。」

ル「…そー言えば、水の音がするな。」

ソ「よく人や民家を避けて破壊光線を撃てましたね。」

ダ「ふっ…だから、僕が一番スゴイって、さっきから言ってるだろう。」

ソ「また薔薇くわえて…」

ル「いー加減にしねーと、電撃喰らわすぞ?」

ダ「ああ、ゴメン、ゴメン。そうだ、自己紹介がまだだったね。ルド君といったかな。僕はダイゴ。よろしく。」

ル「(嫌って程自己主張してたくせに…)ああ、その通りだよ。こちらこそ、ヨロシク。」

ソ「でも、どうやってココから降りるんですか?」

ジ「スライム…は、流石に疲れてるか。じゃあ、ビーナス!」

ミロカロス「ミロッ!!」

ジ「さ、コイツの背中に乗ってくれ!」

ソ「は…はい…」

ル「オメー、まだこんなデカイの持ってたのかよ!?」

ジ「へへっ!スゲーだろ?そんじゃ行くぞ!!ビーナス、滝を下れ!」

ズドド…

ソ「わっわわ…」

ル「気持ちイイ〜!」

ダ「ルド君は、ポケモントレーナーじゃないのかい?」

ル「ポケモントレーナー?何だそりゃ。」

ダ「違うのか…」

ジ「おっ、もう着くぞ。」

ソ「ハァハァ…怖かった…」

ル「そうか?俺は結構楽しかったぜ。」

ジ「だろ?戻れ、ビーナス!」

その時、ハジツゲの方からこちらに向かって駆けて来る、2人の人影が見えた。

ソライシの妻「博士ー!」

ソ「お前!無事だったのか!」

セ「ジン!」

ジ「親父!」

セ「あんまり遅いからてっきり昇天したかと思ったぞ!」

ジ「んなワケねーだろ!この馬鹿親父!!(飛び蹴り)」

セ「がはっ!…人が心配してやっているというのに、それは無いだろ!?」

ジ「俺を勝手に殺すからだよ!まあ確かに、ちょっと色々あったケド…」

セ「ほーら見ろ。やっぱりお前が悪い。」

ル「あはは…おもしれー親子だな。」

セ「この子は?」

ジ「ああ、ルドだよ。俺のダチだから安心してくれ。」

ル「よろしくぅ〜」

セ「こちらこそ。」

ソ「でも何でお前がセンリさんと一緒に…」

妻「あの集団から逃げていたとき、偶然出会って助けてもらったの。」

ソ「そうか…ありがとう、センリさん。」

セ「礼には及びません。そうだジン、お前が乗り込んだアジトは…」

ジ「爆発しちまったよ。敵の下っ端が自爆装置いじっちまったせいでな。」

ソ「こんな時間に外で立ち話というのもなんですから、僕の家に来ませんか?」

ダ「僕はちょっと家に戻らなければならないので、残念ですがお断りします。」

ソ「そうですか、では他の方々は…」

ジ「俺は行くよ。親父も勿論来るだろ?で、ルドはどーする?」

ル「ジンが行くなら俺も行くよ。」

ソ「そうですか。じゃあ僕について来て下さい。すぐそこですから。」

セ「解りました。」

ジ「あれっ?そーいや何か重要なコト忘れてるよーな気が…」

ル「どうかしたか?」

ジ「ん?ああ、それが…」

ソ「ああぁぁァ!!家のドアがああぁぁ!!」

ジ「そーか、思い出した!(ポン)アジトに侵入する時、ドアを蹴破って強行突破したんだった!」

ソ「ジン君…」

セ「(何というコトを言ってくれるんだ!)あ、やっぱり私も急用ができたので…ジン、逃げるぞ!」

ジ「お、おう!出て来い!ピウス!!速攻逃げるぞ!」

ト「きゃう!」

ル「あ、あの〜…俺は…」

ジ「ルド、オメーも乗れ!」

ソ「逃がすかあぁ!!」

ル「うわっ、来た!」

妻「博士、気持ちは分かるケド、金属バットを振り回すのはやめて!」

ジ「ピウス、出発だ!」

ト「きゃ、きゃう!」

ソ「ちっ…逃がしたか…」


第15話へ続く…
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中氏 #17☆2005.08/12(金)15:38
【第15話:帰宅】
ジ「ゼェ…ゼェ…し…死ぬかと思った…」
ル「怖いのは滝登りよりも、アイツ自身じゃん。」
ジ「今度この事をWeb○ぎの目に出してみよっかな〜…」
ル「そんなセリフ、言っていいのか?」
ジ「さあ?知らね。」
ル「言ったのはオメーだろーが!」
ジ「でもセリフを入れてるのは中氏だも〜ん♪」
セ「ジン、ふざけていると落ちるぞ。」
ジ「あ、そーいや親父、高いの平気なのか?」
セ「ん…?ぎゃあぁ!!」
ル「どーやらまた余計なコト言っちまったようだな。ジン。」
セ「高いトコこわ〜い!!」
ジ「…なぁ、今思ったんだけどさぁ…」
ル「何だ?」
ジ「この物語、キャラ崩壊しすぎじゃないか?」
ル「作者がアレだかんな〜…。」
セ「いやあぁん!!」
ル「…電気ショック食らわして眠らすか?」
ジ「近所迷惑なので、お願いします。」
ル「その選択、承りました。」
ジ「イ○コかよ…殺すんじゃねーぞ。」
バチッ!
ジ「ふぅ〜…やっと静かになったぜ…」
ル「いつもこうなのか?」
ジ「確かに飛ぶたびにこうなるケド、こうなるのが分かってるから移動は地上を行くんだよ。」
ル「一応自覚してんだな。」
ジ「まあな。お、家が見えてきた。親父ー、もう着くから起きろー。親父ー?」
ル「手加減はしたから、死んではいない筈だぜ。ん…?」
セ「Zz…」
ジ「またこのネタかよ…もう夜中だし、眠いのは分かるケド。」
ル「俺としては、降りるまで眠らした方がまた大騒ぎしなくて良いと思うぜ?」
ジ「それもそうだな。ピウス、フライゴン、着地体勢に入ってくれ。あ、それともう夜遅いから静かに頼むぜ。」
バササ…
ジ「よいしょっと。親父、着いたぞ。」
セ「ふぁぁ〜…よく寝た…」
ル「寝るんなら自分の家で寝ないと風邪ひきますよ?」
ジ「とりあえず入ろうぜ。」
ガチャ
ジ「ただいまー…って、お袋もう寝ちまったのか。」
セ「もう遅いから寝るぞ。ジン、ルド君。」
ジ・ル「は〜い。」
ドンドンドン…
ジ「ココが俺の部屋…つっても、二階には一つしか部屋ねーからスグ分かるか。」
ル「…」
ジ「ん?どーかしたか?」
ル「いや、思ったよりキレイに片付いてるなーって思ってさ。俺としては、漫画とかがもうちょっと散らかってると思ってたんで。」
ジ「そんなに汚くねーよ。まぁ、作者の部屋は汚ねーけどな。ベッドは一つしかねーから一緒に寝るしかないな。寝巻きは俺の使え。」
ル「サンキュー。」
ジ「あ、それと…」
ル「それと?」
ジ「変な事しないでね?夜○い仕掛けたりとか…」
ル「誰がするか!!(蹴り)」

第16話へ続く…
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中氏 #18★2005.08/19(金)01:31
【第16話:ルドの情報】

チュンチュン…
ジ「う〜ん…お、もう朝か。今何時だろ…」
セ「もう9時だ。この遅起きめ。」
ジ「い〜じゃん、昨日色々あったんだし…あ、そーいやルドは?」
セ「もうとっくに起きて朝食をとっている。」
ジ「そーかそーか。んじゃ俺、下に降りるわ。」
セ「待て、下には…」
ドタドタドタ…
ジ「ルドー、おはよ…って、なんじゃこりゃあ!?」
ル「(もぐもぐ)あ、ジン起きたか?」
ジンの母「もうー、ルド君ったら、アタシの料理「おいしい、おいしい」って言って、こーんなに食べてくれるのよ。そこまで美味しいって言ってくれるんなら、好きなだけ作ったげちゃうわ♪」
ジ「だからって、食いすぎだろ!?オメー、どれだけ食ったんだ!?」
ル「え〜と、目玉焼きとベーコンそれぞれ50枚だろ、ご飯20杯だろ、トマト16個だろ、オムライス五皿…その先は覚えてねーや。おばさーん、チャーハンおかわり!」
母「はーい♪」
ジ「お袋もお袋で、普通に作ってんじゃねーよ!」
母「あら何よ?ご飯が出来て呼んだのに、2階から降りてこないアンタがルド君とお母さんに指図する資格があると思ってんの!?」
ジ「家計を圧迫しちまうだろ!?」
セ「その通りだ。」
母「あなた、ジン、本場中国チャーハン料理直後のフライパンで顔殴るわよ?」
ジ・セ「スミマセン、私が悪ぅございました…」
ル「(ガツガツ)ふぃ〜、食った食った。おばさーん、ごちそさま!」
母「あらぁ、もういいの?もっと作れるのに〜」
ジ(十分過ぎるだろ…)
TV「では、次のニュースです。」
ジ「あ、ポケダネだ。」
TV「今日の6時頃、謎の集団が謎の赤いポケモンを追って、ミナモ付近に現れました。」
ジ・セ・ル「!」
TV「この集団は、先日ハジツゲのソライシ博士の家に押し入った様で、危険な集団である可能性が高いので、ミナモへの外出は避けた方が良いでしょう。」
母「どうしたの?」
ジ「あいつら昨日の…」
ル「ああ…」
セ「テーブルの上を片付けて、これからどうするかを話し合った方がよさそうだな。」
母「あ、そうそう。お皿洗いもお願いね。」
ジ「マジかよ…(=△=)」

一時間後

ジ「ハァ、ハァ…やっと終わった…」
ル「遅せーぞ、ジン。」
ジ「お前が言うな!!」
セ「2人とも落ち着け。主旨を忘れるな。」
ジ「そうだった。で、これからどうすんだ?」
ル「まず、今現在俺が知ってる情報を全て話した方がいいな。」
セ「そうか。じゃあ頼む。」
ル「…それじゃあ…って、ジン!起きろ!!」
ジ「Zz…ん…だって起きてすぐ無理矢理皿洗いさせられたんだし、眠いに決まってるじゃねーか…」
セ「こんなんで大丈夫なのか…?」
ル「んじゃあ気を取り直して、今現在俺の知ってる情報を全て話すぞ。よく聞いてくれ。」
ジ「おし。んじゃ、頼むぜ。」
セ「待て。ココで話すのはまずい。」
ジ「へ?何でだよ?」
セ「もし敵にこの話を聞かれていたとすると、無関係な民間人まで巻き込みかねん。どこか別の場所で話そう。」
ジ「んなコト言ったって、ドコでやりゃいいんだよ?」
セ「私のジムでやろう。あそこなら安全性もここよりは高いはずだ。」
ジ「でも、ジムは敵に襲われて、今滅茶苦茶なんじゃ…」
セ「安心しろ。これはあの後ジムに行って分かった事だが、確かにジムは襲われたが、 焼き討ちに遭ったりしたわけではなく、敵は単に私を狙って来ただけだ。何人かの門下生が軽傷を負ったが、ジムとしての機能はほぼ無事だ。」
ル「よし、ならそこまで移動するとしますか。」
ジ「あ、ちょっと待て。」
ル「何だ?」
ジ「その格好じゃマズイだろ?俺の服着てけよ。少しでも敵に見つかりにくくなるだろ?」
ル「お、サンキュ。すぐ着替えるから待っててくれ。」
そしてルドが着替えを終えると、まもなく一同はトウカジムへ向かった。
センリの言った通り、中は多少荒らされた形跡があるものの、いまは殆ど復活していた。
しかし彼らに復活を祝う余裕は無い。一同は脇目も振らずに会議室へと足を運んだ。
センリが門下生に入り口の警備を頼み、一通りの準備が出来ると、ルドが口を開いた。
ル「よし、じゃあまずは謎の集団…いや、リューンについてだ。」
ジ「ほう、敵のグループ名はリューンっていうのか。」
ル「奴らの目的は、リュオウの復活だ。」
ジ「リュオウ!?リュオウって、まさかあの伝説の…実在したのか!?」
セ「…こんなこともあろうかと、ホウエンで一般に売られている『リュオウ物語』の絵本を持ってきた。とりあえずこの本を読んでみよう。」

昔々、太古の昔のお話です。
高い空の上には『聖天王国リュオウ』という空飛ぶ大きな王国がありました。
リュオウには、とても賢い王様が作った現代のコンピュータよりも優れた機械や兵器があって、
それらを使って地上の他の王国との戦争に打ち勝ち、自分の国の領土を広げていきました。
また、リュオウには王様に仕える不思議な生き物がいて、彼らも戦争で活躍しました。
リュオウの文明はとても栄えていて、普通の人間を魔法使いにする事もできました。
魔法を使えるようになった人間達もまた、お礼代わりに王様に仕えました。
けれども王様は、自分の国を裕福にして他の国を占領する事ばかり考えていたので、
次第にリュオウの人々や元々他の国住民だったけど国を占領されて奴隷となった人達は、
王様を殺して、自分達ごとリュオウを滅ぼす事を決意しました。
決意を固めた人々は、王城に押し入りました。
流石の王様もこれには敵わず、とうとう殺されてしまいました。

セ「こういう訳ですから、欲張ってばかりいる人は最後に酷い目に遭う事になります…で、お終いだ。」
ジ「懐かしかったな〜。…で?」
セ「ルド君、君が解る範囲でいいから、何かこの話に誤っている部分があったら教えてくれ。」
ル「…誤りが一つと、合っている部分が何ヵ所か。」
ジ「マジかよ!?ホントに空に浮く国が…!」
セ「ジン、少し静かにしろ。」
ル「まず、この『空に浮かんでいた』と、『領土を広げていった』と、『現代より優れた文明』。この3つは本当のことだ。」
ジ「『現代より優れた文明』、か…復活されたらヤバイな。」
ル「あと、『民衆や奴隷に滅ぼされた』って書いてあるケド、コレはまるっきり嘘っぱちだ。リュオウが滅びた原因は不明。もしかしたらリューンの奴等の中には知ってる奴がいるかも知んねーけど、俺には解からない。でもまぁ、民衆や奴隷の反乱で滅びていない事だけは確かだぜ。」
ジ「で、もう一つの嘘は?」
ル「う〜ん…コレは「嘘」というよりは「間違った解釈」、と言った方が正しいな。…『魔法使い』のコトだ。これはリュオウの技術でポケモンのDNAを体内に組み込んだ奴等のコト…さらに言えば俺の先祖達の事でもある。」
ジ「何!?」

第17話へ続く…
pl013.nas521.d-osaka.nttpc.ne.jp
中氏 #19★2005.09/15(木)02:12
【第17話:DNA】

ジ「せ…先祖が魔法使いって…」
ル「だから「合ってる」んじゃなくて、「間違った解釈」だって言ってるだろ?リュオウにはポケモンと人間のDNAを合体させる装置があって、大昔に俺の先祖がそこで実験を受けたってワケ。俺の先祖はエレブーのDNAを組み込まれたらしい。」
セ「なるほど。だから君は電撃を放つことが出来るのか。」
ジ「ん?待てよ…「俺の先祖は」ってコトは…」
ル「そう。俺以外にもポケモンの血が流れてる奴がいるってワケ。それも敵側に。」
ジ「一体何人位いるんだ!?」
ル「ん〜…殆どの奴がリュオウが滅びる時に一緒に死んでしまったからな…でも、俺の知る限りでは2人、能力者がいる。」
ジ「どんな奴なんだ!?」
ル「まず一人目はマニューラのDNAを組み込んだ奴。名前は「ボルオット」実はコイツと俺達は一度会った事がある。」
ジ「何!?」
ル「俺達がアジトに閉じ込められた時に見張りをしてた奴。」
ジ「あー!!あの憎たらしい笑い声の!?」
セ「そうか。そういう意味だったのか。」
ジ「どういうコトだよ?親父。」
セ「そのボルオットという男、私たちから逃げる時、とても人間とは思えない程速い走りで逃げただろう?」
ジ「そ、そーいえば…(しまった…あん時はこっちが脱走すんのに夢中で気が付かなかった…)」
ル「んで、もう一人は名前は分からないけど、植物を使うらしい。」
ジ「植物か…草ポケモンには弱点が多いけど、油断大敵だな。」
ル「でも、奴等にも弱点はある。まず、増殖がかなり難しいというコトだ。リュオウの時代でもかなり失敗が多く、実験に成功したのはたった100人。しかもその一族の殆どが既に死滅している。」
ジ「リュオウの人口が少なかったんじゃなくて?」
ル「リュオウの人口は約1億5千人。決して少ない数値じゃない。この実験というのも、かなりグロかったらしいぜ?」
ジ「どんな実験だったんだ?」
ル「実験の際に痛みは感じないけど、グロいのはその結果だ。合体したポケモンの体の一部が人間に付いた様になったり、無機生命体になったり…最悪の場合は…」
ジ「…死か?」
ル「それも最悪と言えなくも無いが、俺が知る限りじゃ…もう原型を留ておらず、何の生き物なのかも解らない、おぞましい姿の生き物になった例だ。そいつは「殺してくれ」って言ってた。実験に失敗した奴等は全員…」
ジ「…もういい、話を本題に戻してくれ。」
ル「そうだな。次に、エネルギーの消費が激しい事だ。」
セ「やはり人間と合体してもエネルギーの消費を免れることは出来なかった、という事か。」
ル「そのとおり。むしろポケモン単体の時よりエネルギーの消費を激しくしている。俺が大食いなのもそれが理由だ。」
ジ「それじゃあ、長期戦には弱い!…ってコトか。」
ル「ところがあっちもそう甘くは無いんだよな。コレがあるからな…」
ルドはそう言うと、ポケットからカプセル状の薬が入った袋を取り出した。
ル「コレは能力者の消耗したエネルギーを瞬時に全快させる薬だ。まぁ、「エネルギーだけ」ってのが唯一の救いか。」
ジ「どういう意味だよ?」
セ「戦闘で傷ついた肉体までは回復できないという事だろう。」
ル「そういうこと。あと、どんな大家族でも能力が使えるのは長男か長女で最初に生まれた奴だけだ。」
ジ「でも待てよ、エネルギーの消費が激しい上に、仲間を増やしにくいんじゃ、DNA組み込む意味無いじゃん。」
ル「いや、人間にポケモンのDNAを組み込むと別の能力を得られるんだ。コレは決してポケモン単体では得られない。」
セ「なるほど、その他は?」
ル「俺がDNA部隊について知ってるのはこれだけだ。んじゃ、リュ―ンの連中について話を戻すぞ。まず、奴等の本拠地はホウエンと異国の境目ともいえる場所、シルファント区のビーオンスという、元リュオウの地上基地だ。向こうの文明や科学力は昔と変わってないけど、今の科学力と大差ないといっても、過言じゃない。」
ジ「地上基地の跡地でさえ、そんなに高度なのか…」
ル「リュ―ンは一般兵と、DNA部隊、そして主導者に分かれている。主導者が誰かはわからないけどな。」
セ「敵に情報を悟られない為には、味方にも情報を隠すと、いう事か。」
ジ「なあ、リュオウってポケモンで飛んで行けねーのか?」
セ「愚問だな。ジン。」 ジ「何だと!」
セ「リュオウが普通に飛んで行ける場所ならば、とっくに発見されている。」 ジ「あ…。」
ル「リュオウは特殊な結界で覆われているらしく、それを突破するにはマユの力が必要不可欠なんだ。」
ジ「それで奴等はマユを狙ってたのか。」
ル「ただしマユは、「目覚めなくては」力を発揮しない。」
ジ「目覚めるって、どういうコトだよ?」
ル「盗み聞きしたんだけど、どうやらマユには強大な力を持つポケモンが眠っていて、千年に一度短期間だけ目覚めるらしいんだ。しかもリュオウを作った張本人がコイツらしいんだ。」
ジ「マジかよ!?もしそうだったら、目覚めた瞬間この世界が滅びるんじゃ…」
ル「いや、そいつが目覚めたからといっても、コイツ一人では力を使いこなせない。人間の協力が必要不可欠だ。」
セ「ほぅ…して、その理由は?」
ル「それは解らない。でも、そいつ単独では持ってる力の半分も使えないらしい。」
ジ「そんならビビる必要はねーな。」
セ「気を抜くでないぞジン。その半分の力でも我々では歯が立たないという可能性も有り得る。」
ジ「そうか…でもこの世にはそんなすごいポケモンもいるんだな。」
ル「俺が知ってる情報はこれだけだ。質問は?」
ジ「そのポケモンが起きていられる期間はいつまでだ?」
ル「…断定は出来ないが、1週間位だ。他には?」
ジ「そのマユって…ぶっ壊せねーのか?」
ル「現在破壊は限りなく不可能らしい。他には?」
ジ「後は特にねーな。」セ「同意。」
ル「よし、じゃあ話をまとめるぞ。俺達の最終目的はマユを奪回した後、マユのポケモンが再び眠るまで奴等に渡さない事。もし可能ならば、マユポケモンの力でリュオウを破壊する。最後に次の目的を言う。それは、奴等の本拠地に攻め込み、戦力を弱める事だ。」
ジ「本拠地に攻め込むんなら、リューンそのものを壊滅させられるんじゃねーか?」
ル「いや、向こうは何箇所かアジトを作っている。壊滅は困難だ。」
セ「そうか。なら2人とも行くがよい。」ジ「え?親父は行かねーのか?」
セ「私はここで無関係な一般人を守るという役目がある。なにより、マユの守護を任されたのはジン、お前だ。男に二言は許さないぞ?」
ジ「へへっ、なら便は急げだ。さっさとそのミーオンスに向かうぜ!」
ル「あのー…、張り切ってるトコ悪いんですけど、「便」ではなく「善」でっせ。あと、「ミーオンス」じゃなくて「ビーオンス」だ。 」
ジ「…っ!細かい事は気にすんな!」
セ「細かくないぞ…下ネタも含まれていたしな。」
ジ「…っと、とりあえずビーオンスに向かうぞ!」
ル「今回はあってたな。」

第18話へ続く…
pl067.nas521.d-osaka.nttpc.ne.jp
中氏 #20★2005.09/15(木)16:02
【第18話:森林要塞・リシュレバ】

あれからまもなく、2人の少年を乗せたトロピウスはルドの命ずるままにシルファント区へと向かった。
目的地は空を飛んでいけばさほど遠くはなく、
10分経つか経たないかという内に、目的地に到着してしまった。

ジ「わりと早く着いたな。」
ル「俺が最初に流星の滝に行った時には船だの車だので3時間はかかったけどな。」
ジ「…あ、そういやお前何をやって捕まったんだよ?」
ル「ビーオンスの兵器を何十個か高圧電流流して破壊してやった。」
ジ「すげーな。もの凄く腹減ったんじゃねーのか?」
ル「まあな。あの時は餓死しかけたぜ…ま、とりあえずビーオンスに行くか。」
ジ「ああ。」
一向は森の中を突き進み、30分ほど歩いた所でやっとビーオンスに到着した。
しかし、そこは村である筈なのに、死に絶えたかのように静まり返っていた。
ジ「なぁ、やけに静かじゃねーか?」ル「…多分ココにはもう誰もいないな。」ジ「は?」
ル「俺が思うに、もう奴等は既にココを捨てて各地のアジトへ散らばってるな。」
ジ「それじゃあココに来た意味が無いんじゃ…」
ル「でも、ココには俺が隠しておいた資料がある。それを取りに来た。」
ジ「なるほど。んじゃ早速その資料とやらを取りに行くか。」
その資料は村の中心の一際目立つ塔の後ろに埋められていた。
資料は掘り始めて3分と経たないうちに見つかった。
その資料にはアジトの情報や、特殊な薬品の調合方法が載っていた。
しかし、資料に書かれていた文字は未だかつてジンが見た事の無い、不可思議な文字だった。
ジ「?これ…なんて書いてあるんだ?」
ル「あの薬の調合方法と、アジトの情報。これがあるのと無いのじゃ、全然違う。」
ジ「…でもって、これからココを破壊すんのか?」
ル「こんな所破壊したって、時間と労力が無駄だ。これから俺たちが向かうのは、ここから一番近い
『森林要塞・リシュレバ』だ。ココを破壊する。」
ジ「また森ん中歩くのかよ…」ル「でも破壊しないワケにもいかねーだろ?」
ジ「よし、こうなったらブレード!出て来い!!」
ジュ「ジュカッ!」ル「なるほど、ジュカインに乗って森林を突破するってワケね。」
ジ「そーゆーコト。さっ、早く乗れ!リシュレバをぶっ潰すぞ!」
それから5分後、彼らを乗せたジュカインはルドの命令で蔦の巻きついた洋館の門前で止まった。
ジ「サンキュー、ブレード。もう戻っていいぞ。」
ジンはジュカインをボールに戻すと、屋敷の門に向き直った。
ジ「…にしても、こんな森の中に洋館が建ってたりしたら、明らかに不自然じゃねーか?」
ル「だからこそ、森の中にあるんだよ。俺達はお前のジュカインに乗って来たから5分くらいで付いたけど、実際徒歩で来たりしたら5,6時間はゆうにかかるぜ?…この洋館、リュオウの頃に作られたやつだな。」
ジ「んじゃ、アジトを壊すとしますか。」
ジンはそう言うと、手持ちのポケモンを全員出そうとした。
ル「ちょっと待て!直接破壊したら、もしマユがここにあった場合、探すのが難しくなっちまうぞ!」
ジ「チェッ、無理か…そっちの方が楽でいいのに…」
ル「それが出来たら苦労しねーよ。ま、とにかく中に入るぞ。」
ジ「待て!もしかしたら門に電流が流れてたりとかするんじゃ…」
ル「大丈夫だって。俺はココに何回も来てるけどそんな仕掛けないし、新たに作ったとすれば、蔦(つた)の巻きつき方が不自然になるはずだ。」
ジ「そうか…ポケモンの力を使えば自然な巻きつき方を再現する事もできるけどこれは…大丈夫だな。」
ル「んじゃあ、入るとしますか。」
門はギギィ…と、鈍い音を発しながら開いた。
そして門を開けた先には、広い洋風の庭園が広がっていた。
ジ「この庭もデカイな〜迷子になりそうだぜ。」
ル「常に闘ってると思った方が身の為だぞ?次の瞬間には罠にかかってるかも知れないしな。」
?「フッ…その通りだよ、不法侵入者…いや、元リューンDNA部隊上層部、ルド・トキアドル・シグラ君。」
ジ・ル「!!」
2人が声のした方を見ると、屋敷のテラスにロココ風の服装の緑色の髪の少年が立っていた。
ル「…お前も、DNA部隊の野郎か?」
?「ボクは「野郎」などという、下劣な名前ではない。僕の名は「コトオ:イモキ:イゴス」だ。
愚かな君達を倒す、美しき貴公子の名前をよーく覚えておくがいい。」
ジ「「コトオ:イモキ:イゴス」…」ル「「コトオ:イモキ:イゴス」…」
ジ・ル「逆読みしたら「スゴイ・キモイ・男。」」
ジ「うひゃひゃ!正にその通りだな!」
ル「今時あんなカッコしてる奴なんてドコにもいねーよ!!」
コ「き、貴様等…、このボクを侮辱した罪は重い!死んでもらうぞ!!」
コトオは台詞を言い終わらない内に、ジン達に向けて花弁の刃を飛ばしてきた。
ル「ジン、来るぞ!」 ジ「おうっ!」
コトオと彼らの距離があったせいか、彼らはいとも容易く刃を避けた。―が。
コ「かかった!」ル「何!?」ジ「ルド!俺達の足に根っこが…」
気付いた時には既に遅く、2人の足元には植物の根が絡みついていた。
根は足を封じるとどんどん上半身の方へと絡みついてきた。
ジ「ぐっ…ルド、この根っこどうにかできないのか!?」 ル「無茶…言う…な…」
コ「はーはっはっは!ボクの愛しい植物たちよ、この美しい僕を侮辱した愚かな下衆共の口を塞いでしまえ!!」
ジ(くそ…こんな所でこんな奴に窒息死させられて終わりかよ…)
万事休す…そう思われた時だった。
?「ヘルガー、火炎放射!!」 コ「!?」
どこからともなく炎がコトオに向かって飛んできた。
その炎はジン達を束縛していた根を焼き切り、彼等は自由の身となった。
ル「一体どうなって…」ジ「ヘルガー、それにこの声…まさか!!」

第19話へ続く…
pl251.nas521.d-osaka.nttpc.ne.jp
中氏 #21★2005.09/21(水)01:18
【第19話:真打の参戦】

?「アタシが来なきゃ、死んでたわね…」
ジンの視点には緑色のバンダナを巻いた一人の少女がいる。
そしてその隣にはヘルガーと、少しばかり西洋の龍を思い出させるような出で立ちのポケモンがいる。
ジ「エルリア!?何でお前がココに…それにそのポケモンは…」
エ「詳しい話は後よ。アンタはその子を連れてさっさと先に行きなさい。それともその子は敵なの?」
ジ「い、いや、コイツは味方だよ!んじゃ、先に行くぜ!ん…?」
ルドは植物の根から開放されたにも関わらず、微動だにしない。
ジ「ルドー?おーい、どうしたんだ?生きてるかー?」
ル「…惚れた…」ジ「へ?」ル「エルリア様ーっ!!」ジ「おーい!」
ル「私は今日を持って貴方の忠実な僕となります。何なりと命令をお申し付け下さいませ!」
エ「そう…じゃあ、最初の命令よ。よく聞きなさい。」ル「はいっ!」
エ「今すぐジンと共に先へ行きなさい!」ル「ガーン…」
ジ「ほら、行くぞ!」ル「エルリアさまぁ…」
?「なんだったんでしょうかね…?」エ「…来るわよ。」
コ「おのれ…よくもボクの愛しい植物達を…」
エ「そんなに愛しいのなら、戦闘に出すんじゃものないわよ。馬鹿。」
コ「このクソアマ…(ん?アレは確か…)フッ…エルリアといったかな…君の隣にいるラティアスをこちらに渡してくれれば命だけは助けてあげよう。だから大人しくそいつを…グエッ!」
コトオの顔面にエルリアの鉄拳が直撃した。
コ「馬鹿な…人間の脚力だけでここまで飛ぶとは…」
エ「お生憎様ね。アタシはこの子をアンタみたいなオツムの弱い馬鹿に渡す気は更々無いの。それに、どうせこの子を渡した後、その薔薇でアタシを刺し殺す気だったんでしょ?」
コ「よくも…よくもこの美しいボクの顔を殴ったな…」
エ「それはお互い様よ。アタシだってアンタみたいな雑魚相手にアタシの拳を使いたくはないしね。」
コ「貴様ァ!よくもこの俺様をそこまで侮辱したな!!貴様は断じて生きて返さんぞ!!覚悟しろ!!」
?「…ようやく本性を表したようですね。」
エ「そのようね、アミナ。所詮外道ってものは皆この程度のものよ。それはアンタも分かってるでしょ?」
ア「勿論です。あ、どうやらお喋りはココまでのようですね。」
エ「じゃあ、こんな雑魚さっさと片付けてジン達の方へ向かいましょ。」
ア「はい。」コ「死ねえェ!!」
コトオの叫び声と共に、無数の植物の蔦が彼女達に襲いかかる。
エ「アミナ!転換よ!」ア「はい!」
そう言うと「アミナ」と呼ばれた謎のポケモンは、見る見るうちに
その姿を日本刀へと変え、エルリアの手中に収まった。
刀を手にしたエルリアは、蔦を電光石火の早業で次々と切り裂いていく。
エ「あら?「生きて返さない」んじゃなかったの?そんな遅い攻撃じゃ、私に傷一つつけられないわよ?」
コ「俺様を甘く見るんじゃねぇぞ!喰らえ!」
今度はエルリアの周囲から薔薇の蔦が襲い掛かった。
エ「今度は斬れそうにも無いわね…ヘルガー、炎の渦!」
ヘルガーの炎の渦がエルリア達を取り巻き、植物の蔦から身を守る。
コ「ちぃっ!」エ「…今のでわかったわ。」コ「何っ!?」
エ「アンタの攻撃は地面に植物が生えてる事が条件で自由に植物を操れる。しかし、さっきアタシ達が居たのは石畳の上…つまり、植物が生えていない場所で戦えば恐るるに足らないのよ。アミナ!」
今度は先程とは逆に、アミナは日本刀からポケモンへと姿を変える。
そして姿を変えると同時に、エルリアとヘルガーを自らの背中に乗せ、空へと舞い上がった。
ア「そんな所に立ったままではマズイんじゃないですか?変態さん。」
コ「おのれェ!植物共よ、伸びろ!」
しかし、植物の蔦は彼女達までは届かず、途中でうねうねと蠢くばかりであった。
エ「…無様ね。ジンってもしかしたらこの程度の男なのかしら。」
ア「あっ!男が屋敷の中へ逃げます!」
エ「大丈夫よ。屋敷ごと焼き払えばいいだけの話よ。ここにマユの気配は感じてないんでしょ?ヘルガー、火炎放射!!」
炎は周囲の植物に燃え移り、屋敷はあっという間に燃上した。

第20話へ続く…
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中氏 #22★2005.10/12(水)01:28
【第20話:救い】

ル「エルリア様ぁ…」ジ「オメー、いつまでエルリアのこと考えてんだよ!」
ル「あ、でも一人にしといて大丈夫なのか!?」
ジ「大丈夫。あいつの強さは半端じゃないから。とにかく急ぐぞ!」

―一方エルリア側 ―
エ「さあ、行きましょう…と、言いたいところだけど…」
ア「そういうワケにもいきそうにないですね。」
エ「不意打ちを仕掛けようたってムダよ。大人しく出て来なさい。」
ガタッ…
鈍い音と共に、焼け落ちた屋敷の跡からコトオが這い出てきた。
しかし全身は焼け爛れ、元の姿の面影は微塵も残っていない。
コ「へ…へ…流石は俺をここまで追い詰めただけのことはあるな…」
エ「…やはり間接的にではなく、直々にとどめを刺すべきだったわね。」
コ「それ…にし…ても…ラティ…アス…考えた…な…自ら…を…「刀」という感情を…持たない…物に変え…ることで…本来…攻撃できな…いリュオ…ウ民族に…攻撃するとは…な…」
ア「ナメてもらっては困ります。いやしくも私は元人間なんですから。私だって、ココで貴方達の手に渡るワケにはいかないので。」
コ「フ…だが俺も…タダ…では…死…な…ん…」
彼は台詞を言い終えると弱々しく一つのモンスターボールを投げ、その場に倒れた。
そのボールからはアミナに似た、青と白のポケモンが飛び出した。
しかし、そのポケモンの目の色には生気が感じられない。
ア「兄さん?もしかして、オルウィン兄さんなの!?」
エ「アミナ!近づいてはダメ!相手は攻撃体勢に入っているわ!!」
しかし、まるでエルリアの呼びかけが聞こえていないかの様に、
アミナは自らが「兄」と呼んだ「敵」に近づいていった。
コオォ…
エ「ヘルガー、行きなさい!」 へ「ガウッ!」
間一髪のところでヘルガーがアミナに体当たりを食らわしたおかげで、
彼女は敵の光弾の直撃を食わずに済んだ。
ア「何をするんですか!やっと兄さんに会えたのに…」
エ「相手は「敵」よ。目が死んでいるわ。とてもじゃないけど、「兄」とは呼べそうにないわ。」
ア「なにを言ってるんです!あれは兄さ…」
ドゴオォ!!
2人が会話している間にも、敵は休みなく光弾を飛ばしてくる。
ア「兄さん!私よ、アミナよ!兄さん!!」
しかし、「兄」と呼ばれた「敵」は表情を全く変えず、攻撃の手を緩めようとはしない。
ア「にい…キャアッ!!」
その光弾はついにアミナに当たってしまい、彼女は地に落ちた。
ア「ぐっ…兄…さん…」
エ「…いつまで貴方の愚かな現実逃避で、兄を苦しめておくつもりなの?」
ア「私は現実逃避なんて…!」
エ「もし貴方が、敵に操られて自我を失ってしまったら、どうしてもらいたい?自我を失った上に敵に操られて生きるのと、あえて味方に殺されて味方を生かすのでは、貴方ならどちらを取る?」
ア「もちろん味方に殺されて…!…あ。」
エ「ようやく目覚めたようね。なら自分が何をするべきか、もう解ってる筈よね?」ア「…はい!」
アミナはそう言うと、何の迷いも無く刀へと姿を変え、エルリアの手中に収まった。
エ「戻りなさい、ヘルガー。さぁ、…反撃開始よ。」
そう言い放つと、彼女は「敵」へと向かって行った。
敵は光弾を続け様に撃ち放つ。エルリアはそれを避けつつも、確実に相手との間合いを詰めていく。
そして敵との間合いが50cm程度に狭まったところで、彼女は刀を振るった。
エ「は!」
しかし、敵もそう易々と斬られてはくれない。
攻撃を間一髪のところで避けると、再び彼女との間合いを取った。
エ(接近戦に持ち込んでもすぐに間合いを取られてしまう…それなら…)
接近戦に持ち込むのは不可能だと悟った彼女は刀に力を込め、大きく刀を振った。
それと同時に、三日月形をした波動が敵に向かって高速で飛んでいく。
敵「ぐはぁっ!」エ「!」
何を思ったのか、エルリアは刀を手放した。刀は元の姿へと戻っていく。
ア「どうしたんですか、エルリアさん!?何か…」
エ「アミナ、どうやらアンタの兄さんは「本当の意味で」救われそうよ。」
ア「え…?」
エ「兄さんを救いたい?」ア「勿論です!」
エ「それじゃあ、私をあなたの「兄さん」の元まで運びなさい!」ア「はい!」
そう言うとアミナは、エルリアを乗せ兄の元まで運んだ。
敵は波動を食らい、体勢を崩していたが、すぐに立ちなおした。
そして再び光弾を放とうとした瞬間、一瞬の隙をついて、
エルリアは敵の背に飛び移った。
彼女らはしばらくもみ合っていたが、やがて地上に落ちた。
ア「エルリアさん!無事ですか!?」エ「…あと1m高かったら死んでたわね…」
エルリアは、多少傷を負ってはいたが、大した怪我では無いという風であった。
エ「それと、コレ。触っちゃダメよ。」ア「…?」
彼女の手には一本の針が握られていた。
ア「何ですか?コレ?」
エ「コレがあなたの兄さんを操っていたのよ。」ア「どういうことですか!?」
エ「コレは私の推測だけど、大方、自分が絶命した時、針を刺した相手に乗り移る能力でしょうね。
え?コトオ・イモキ・イゴスさん?」
その時、針からごく小さな声が漏れた。
コ「くっ…貴様、見破っていたのか…」
エ「先程【斬撃波】を当てた時にね…操られている筈の生き物が声を上げるワケが無いでしょ?」
コ「ふっ…しかし、貴様に刺されば俺は…なっ!?」
次の瞬間、針は宙に投げられていた。
エ「さぁ、アミナ。この針をどうする?」
ア「…絶対に、絶対に許さない!!エルリアさん!」エ「はいはい。」
エルリアは、再び刀を握り締めた。
コ「ま、待て!俺が悪かった!二度とこんな事はしない!アンタ達の言う事を何でも聞こう!だから許してくれ!!」
エ「そう…本当に、何でも言う事を聞くのね。」コ「そうだ、その通りだ!」
エ「なら、今この場で大人しく死になさい!!」
コ「え?そりゃちょっと…ぎゃああ!!」
針は、真っ二つになると同時に、粉々になった。

―一方ジン達は―
?「ケケ…また会ったな。会えて嬉しいよ、ルド。」
ル「俺はアンタに会いたくなかったけどな。ボルオット。」

第21話へ続く。
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ぴくの〜ほかんこ