ぴくの〜ほかんこ

物語

【ぴくし〜のーと】 【ほかんこいちらん】 【みんなの感想】

[702] あくまでそれは、旅の途中

華苗 #1★2006.02/22(水)19:32
http://www7a.biglobe.ne.jp/~kannunyakaku/kanae/index.html
〇〜十一話までが読みたい方はこちらへ。
十二〜十五話もまとめてもらいました。
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華苗 #2★2006.06/18(日)10:52
僕たちは負けない。
ポケモンとの信頼を築けない、絆を侮るような奴には。
私たちは屈しない。
自らの欲望のため、ポケモンを利用するような奴には。

  十六、決戦

空の高いところから、シュリウスとディネビアが舞い降りてくる。
地上のアクタルスが、それを見上げて嬉しそうに笑う。
《おー! 戻ったんだなっディーネ! よかったぁっ》
《すみませんね…たくさん、迷惑をかけました》
《気にすんなよ。終わりよければ全てよし、ってな!》
地面にふわりと降り立つディネビアの、頭の飾りが、立派な翼が、長い尾が、キラキラと光る。
それに見とれて、一向は、誰からともなく賞賛を唱える。
「キレイ…」
「本当の姿って感じだね」
「カッコイー」
ディネビアは目を伏せ、薄く頬を染めた。
《そんな…》頭を振って、表情を曇らせる。《ごめんなさいね。…わたくしは、あなた方にも迷惑をかけたというのに。そんな言葉をもらって良いのでしょうか》
「いいんだ、そんなこと」
よかったね、と笑いかけるコウに、ディネビアもふっと笑み返す。
一方、コクは。
「バカな…こんなことが…!」
勝利を確信した薄笑いは、もはやそこにはない。
野性ポケモンとディネビアが「さいみんはどう」から解き放たれた今、明らかにコクは劣勢だった。
「もういい加減諦めたら? あんたに勝ち目はないでしょっ」
スイが強気で微笑む。
「フン…どうかな」なおコクは食い下がる。「フリーザー、お前は今僕のポケモンであると言うことを忘れちゃいないか?」
その手には、モンスターボールが握られている。
「甘かったね、伝説といえど所詮はポケモンだ」
コウたちはさっと顔色を変えた。対してシュリウスとアクタルスは平然としている。
《…甘いのは、どちらです?》
ディネビアが微笑んだ。
先ほどとは打って変わって、その目はまったく笑ってはいなかったが。
丁寧ながらも冷たいその言葉に、そして自分の手にあるはずだったモンスターボールがなくなっているのに…コクの表情が凍りつく。
その足元には、ディネビアを捕らえたモンスターボールが落ちていた。
巨大な氷柱によって、大地に串刺しにされ、もはや使い物にならなくなっていたが。
「なっ…お前が…?」
《ふふっ…あなたのような傲慢な人に、わたくしがいつまで従ったままでいるとお思いでしたか?》
氷のまなざしをなげかけて、ちいさく微笑む。
《思い上がりもはなはだしいですね》
コクが蒼白になる。
「くっ…ヨルノズクッ」
力尽きたヨルノズクを呼び出し、その場から逃げ出そうとする。
神の鳥達は、コクの周りを取り囲み、それを許さなかったが。
《逃がしゃぁしないぜ?》
アクタルスがコクをにらみつける。
コクが絶望したような表情をする。
誰もが、勝利を確信した。
刹那。
すさまじい冷気がコウたちを襲う。
「…!?」
それは、コクのニューラが放った「こごえるかぜ」。
「きゃあッ!」
「スイッ!」
自分をかばって構えた腕を解いた、コウが真っ先に血相を変えて叫んだ。
スイが、ニューラに組み敷かれていた。
「ガキの分際で…これ以上僕にたてつくなよ」
《貴様…!》
シュリウスは激昂する。コクは神の鳥たちを見上げ、口の端を吊り上げた。
「手は出すなよ。その小娘の命が惜しいならね」
「くそっ…! スイを放せ!」
コウがコクにつかみかからんばかりの勢いで叫ぶ。
「うるさいな…。ヘルガー、黙らせろ」
コクが繰り出したヘルガーが、コウたちに「スモッグ」を吐きだす。
「くッ…」
「『しんぴのまもり』…!」
セピリアが繰り出したメガニウムが、前に進み出、自分たちの周りにバリアを張る。
毒の霧は、霧散した。
「セピリア…ありがとう」
「ううん。私だって何かしなくちゃ…守られてばっかりじゃ、イヤだもの」
唇をかみ締め、セピリアはコクを睨んだ。
コクがちいさく舌打ちをする。
「ふん…小賢しいマネを」
セリフは半ばで途切れることになった。
コクの視界に、彼にしか見えない、白いもやが広がっていったので。
「ッ…!」
コクの体を電流が取り巻く。
《オレたちがいつまでもオメーに好き勝手やらせると思ったか…?》
アクタルスが囁く。彼の操る電磁波が、コクの体の自由を奪う。
徐々にコクの視界を狭めるのは、ディネビアの「しろいきり」だった。
霧の向こうで、三匹の鳥たちの姿がおぼろに揺れる。
《貴様の野望はここで打ち砕く。私たちの手によって》
シュリウスの声が頭の中に響く。
コクは戦慄したが、それを表すにはプライドが高すぎた。
畏怖に打たれる心を叱咤するように。
コクはしもべに命令を下す。
「…やれ、ニューラ!」
《なッ…!》
アクタルスが、ディネビアがシュリウスが息を呑む。
ニューラの鋭いツメが、スイの胸に振り下ろされる――
スイが、ぎゅっと目を閉じた。
コウが自分の名を叫ぶのが聞こえた。
その次の瞬間。
奔った、緑の閃光。
予期していない攻撃に、ニューラが吹っ飛ばされる。
「シード…!」
それは、シードが放った「ハードプラント」。
スイを守るため、放った一撃だった。
反動で動けないシードの元へ駆け寄ろうとするスイ。
だが、ニューラが起き上がる。
そして再びスイに飛び掛り、鍵爪をふりかざす。
だがその攻撃は、またしても防がれた。
パキィッ―――!
辺りに響いたのは、硬いものが割れるような高音。
散った血のように零れていくのは、赤い宝石のかけら。
スイが首にかけていた、「ほしのかけら」が、ニューラのツメの一撃からスイを守って砕け散った。
「壊したわね…」スイがうめくように言った。「シード! ニューラを捕まえて!」
シードがツルを伸ばし、ニューラをがんじがらめにする。
「そのまま投げ飛ばすのよ!」
勢いをつけ、シードのツルがニューラを投げ飛ばす。
だが地面に落ちる前に体勢を立て直し着地して、ニューラはコクの足元に再び戻る。
スイの声を聞いてか、コクが苦虫を噛み潰したように。
「二度までも…しくじっただと…」
ぎりりと、歯軋りをする。
「スイッ…よかった…」コウが泣きそうな顔をしてスイに駆け寄った。
「お兄ちゃん…」
スイは笑った。心配しないでというように。
それから、ショウのほうを向いて、
「ごめんね…せっかくもらったのに、壊れちゃった」
たちまちコウが険しい表情をするのをよそに。ショウは首を振った。
「そいつのおかげでスイちゃんが無事だったんだから、気にしないで。また見つけてきてあげるから」
「ショウくん…ありがとう」
いい雰囲気になっているのが面白くないのか、鼻を鳴らすコウ。その肩にチフユが手を置いた。
「どうやらショウのおかげでスイが助かったようだから、今回はお礼を言うべきじゃない?」
コウはチフユの顔を見て、スイとショウのほうを見て。なんとも形容しがたい表情を浮かべた。
スイは最後に、シードに歩み寄り、抱きついた。
「本当にありがと…あなたがいなかったらどうなってたか…」
スイが涙声になっている。
シードは「大丈夫だよ」と言うように、ツルを体から伸ばし、スイを抱きしめ返した。
一方で。
「ヘルガー! ニューラ! そいつらを黙らせろ!」
コクが喚きながら、もやを払うため手を振り回す。
でも実際は、むなしく空を掻くだけ。
ヘルガーとニューラは、戸惑いつつもそれぞれ攻撃技を放つ。
「かえんほうしゃ」と「れいとうビーム」。
コウたちがはっと振り向けば、フレアが、ウォールが、その攻撃を背中に受けてしのいでいる。
「フレア…」「ウォール!」
自分たちの名を呼ぶパートナーに、フレアとウォールは笑いかけた。
さっきはひどいことをしてしまったから、これはせめてものつぐないだ。
二匹は敵に振り向く。フレアの尾の炎が明るく輝き、ウォールは甲羅から噴射口をのばし。
灼熱の業火と怒涛の水流を放った。
渾身の「ブラストバーン」と「ハイドロカノン」は、かわす間も与えず、敵を戦闘不能に追いやる。
反動でよろめくフレアとウォールに、コウとショウが駆け寄って。
「助かったよ」
「ありがとうな」
笑いかけられ、同じく笑い返す。
「さあ! あんたに勝ち目はないってこと、まだわかんない?」
目を腕で乱暴に拭いて、スイが。
「僕たちの勝ちだ」コウも宣言する。
コクは倒れた自分のポケモンを戻すこともせず、喚き散らす。
「うるさい…! 黙れ! 黙れ! …っ!」
アクタルスが呆れ顔でため息。《どーするよ、アイツ。もう戦闘不能ってカンジだろ》
《このままにしておくはずがなかろう? 私も一撃見舞わないことには気が済まないからな》
《わたくしも…あの人間は許せませんね》
《あー、しゃーないな。ならオレも傍観してるわけにゃいかんだろ》
厳しい面持ちのシュリウスとディネビアに、ややかったるそうなアクタルス。
三羽の神の鳥たちが、淡く光を帯び始める。
「何が始まるのかしら…」
徐々にその光を増し、鳥たちが、コクを囲うように位置につく。
シュリウスの体が炎に包まれ、巨大な炎の鳥が姿を表す。
ディネビアもアクタルスも、それぞれ氷と雷をまとって、巨大な鳥と化した。
さらに、炎と氷と雷の鳥がひとつになる。
コクの頭上に、まばゆい光の鳥が現れた。
もう、直視できないほどに光り輝く、それは地上に舞い降りた太陽にも等しくて。
誰も何も言えず、ただその光景に圧倒されていた。
《闇に堕ちし者に、光の制裁を…!》
体中に響くような、深い声がして。
次の刹那、光の鳥が、コクを貫いた。
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華苗 #3★2006.07/18(火)17:26
決戦のその後。

  十七、後日談

暖かな日差しの降る朝。
コウがベッドから起き上がって、呟いた。
「なんだ、…夢か」
目をこすって、夢の中の情景を思い出す。
コクが光の鳥の一撃に倒れた、2日前の光景。

気付けばそのとき、戦い続けて気付かなかったが、空の色が薄くなりはじめてきていた。
傷ついた自分たちのポケモンをいたわりながらボールに戻す。
気絶したコクは、7の島に運ぶことにした。
「やっぱり警察に突き出したほうがいいのかな?」
戦闘不能のコクのポケモンをボールに戻してやりながら言うスイに、アクタルスが応えた。
《その必要はねぇよ》
「なんで?」
《先ほどの光の一撃は、あの者の悪の心を貫いたのです》
《私の炎は、攻撃のためだけにない。それはアクタルスも、ディネビアも同じだ》
「そっか…よかった」
コウが笑うのを、神の鳥たちは不思議そうに見下ろす。
「さっき、コクをちょっと心配したんだ」
「なんで? あんなに悪い奴なのに」と、セピリア。
「うん、悪い奴だ。許せないと思った。でも…ポケモンには、なつかれてたみたいだし」
道具だと言われても…。コクのポケモンは、コクを信頼していたように見えたから。
シュリウスが、小さく笑った。
《…やはり、コウは変わっているな》
「え?」
《おやさしいのですね》ディネビアもふふ、と笑う。
「ちっげーよ。コウはお人よし過ぎんだ!」
ショウがコウをどつく。
「確かにね。そうだよね」チフユも笑った。
「ホント、そのせいで何度迷惑かけられたことかしら」
スイまで…なんて、コウが情けない声を出す。
《ま、いーじゃねーか。アイツはこれから立ち直ってくだろうさ》
アクタルスが気楽に言った。
「コクも、ポケモンと仲良くなれるといいな」
「そうね…」
《さあ、乗れ。送ってやろう》
シュリウスが姿勢を低くする。ディネビアもアクタルスも。
コクを最初にのせ、コウ、スイ、ショウ、チフユ、セピリアがそれぞれ神の鳥たちの背にまたがる。
《しっかりつかまれよ?》
アクタルスが、ディネビアが、シュリウスがしっぽうけいこくを飛び立った。
夏の早い朝、空は薄青く広がって、大地は朝日の昇るのを今か今かと待っていた。

夜中に戦い続けたため、その日コクを病院に送ると(《体にダメージは与えないといえ、精神面で参っているだろうからな》とシュリウス)、五人はPCのベッドに倒れこみ、すぐに眠ってしまった。
昼を過ぎても眠り続けていて、夕食の時間には一日分の食事を掻っ込む様子を見、ジョーイも「何かよほど大変なことをしていたのかしら」と、少し心配しながら彼らに尋ねるほどだった。
次の日。6のしまに立ち寄り、クロノのもとへセピリアを連れて行った。
「本当に…お礼の言葉も見つかりません。私たちを助けてくれて、ありがとうございます」
「そんな、大げさですよ」コウは照れ笑いを浮かべる。
「私からもお礼を言うわ。ありがとう、コウ!」
セピリアがコウに抱きつく。少し慣れたのか、コウは倒れることはなかったが。
「コウの優しさ、私好きよ。」
この一言に、コウはオクタンみたいに真っ赤に照れてうつむいた。
セピリアとクロノと一緒に、シーギャロップで2の島へ。
道中、クロノが尋ねてきた。「コクは、どうなったんでしょうか…?」
「シュリウスたちが、あいつの悪の心を攻撃したと言いました。7の島の病院に運びましたけど、これからどうなるかはわかんないです」
「そうですか」
クロノは長い銀髪を潮風に編ませて、7の島の方角を見た。
「…近く、私、コクの様子を見に行くわ」
「姉さん…どうして?」
セピリアが心配そうに訊いた。
「あの人にはいろいろと、お世話になったもの」
よくない意味でね、と。クロノは付け加えた。
それから2の島に着くまで、世間話などしながら過ごして。
セピリアは、スイと、ショウと、チフユと。順繰りに抱きしめて(親愛の感情表現なのだろう)、クロノと一緒にきわのみさきに帰っていった。
そして、四人は1の島へ。
もともとの目的だった、サファイアを、ニシキに渡すため。PNCに向かった。
「あ…コウさんたち!」
「おお、来たな!」
ニシキとマサキの声が、彼らを迎えた。
「ニシキさん、ちょっと遅くなっちゃったけど…約束のサファイアです」
「うわあ…すごいです、よく、見つけてくださいましたね」
サファイアを受け取った、ニシキの目は賞賛に満ちていた。
「さすがやな! おまえさんがたならやれるって、わいは信じとったで!」
「大げさですよ、マサキさん…」
肩をゆすられて、コウは苦笑い。
「よし! これでうまくいくかも…みなさん、見ててくださいね」
大型マシンには、ふたつのくぼみがあった。
ニシキはそこに、ルビーとサファイアをはめ込む。
「これで…こうすれば…」
ニシキが機械を操作する。
「…やった! つながったぞ! これで、カントーやホウエンや…ほかの地方と通信ができます!」
「やったなあ、ニシキ! うれし涙出とるでー」
「な、泣いてなんかいませんよ! 目にゴミが…」
労をねぎらいあうふたりを見て、がんばったかいがあったと四人は思った。
自分のしたことで他人がこんなに喜んでくれるというのは、気分がいいものだから。
「きっと、見つけるの大変だったでしょうね。本当にありがとうございます。何度言っても足りません」
頭を下げるニシキに、コウは手を振った。
「いえ。人の力になれて、ニシキさんやマサキさんが喜べて、僕も嬉しいです」
「コウさん…ホントに、いい人ですね」
「そりゃな。こいつはほんまにお人よしなんやから」
マサキさんまで。コウは思った。僕ってそんなにお人よしなのか…
その夜、PNCではネットワークマシン完成記念にささやかなお祝い会が開かれ、皆大いに楽しんだとか。

まだ眠い目をこすって、コウが起き上がった。
お祝い会で疲れたから、寝すぎたかな…
そう思ったが、周りを見ると起きているのは自分だけのようだ。
少し得意になって、コウはカーテンを開けてみた。
ちょうど朝日が昇るころ。明るい日差しが室内を満たす。
そのせいか、ほかの三人も次々と目を覚ました。
「あれ、お兄ちゃん今日早いね」
「珍しい…」
「へへっ」いたずらこぞうのように笑う。
と。
《目が覚めたか》
シュリウスがボール越しに話しかけてきた。
「どうしたの?」
《おめーらが寝てる間に話し合ったんだけどよ》と、アクタルス。《オレらも、そろそろ帰るかなって》
「帰る…か」
《ふたごじまの皆のことが心配ですので》
ディネビアは、いったんスイがボールに収めていた。
「伝説のポケモンを逃がすか…ちっと惜しい気もするな」
ひそりと呟いたショウが、シュリウスの視線に気付き、あわてて首を振った。「冗談だって!」
《そういうわけだ。開放してくれるか》
「そうだね。君はもともと僕の元にずっといる気はなかっただろうし」
《よくわかっているな》
「じゃあ、朝ごはん食べたら、人気のないとこ探そうか」
スイもショウもチフユもうなずくと、それぞれ身支度をし始めた。
PNCで朝食を済ませ、彼らが向かったのは、5のしまのあきち。
ついでにロケット団の倉庫のようすを見るというのもあった。
ロケット団員たちは影も形もいなくなり、倉庫は無人。
これで、ナナシマも平和になるといいな…。コウは思った。
コウ、スイ、ショウは、それぞれモンスターボールからシュリウス、ディネビア、アクタルスを呼び出した。
《くあー! やっぱ外はイイねぇ》
アクタルスが伸びをしながら。
《やはり、わたくしたちには外の空気のほうが合います》
《全くだな》
ディネビアもシュリウスもうなずいた。
「君たちを入れていたボールは…どうしよう?」
コウが尋ねる。
《そのままでいいんじゃね? オレらもほかの人間に捕まらなくて便利だし》
《それはそうだがな…》シュリウスがしかめ面をする。
《それがいいとわたくしも思いますよ。この方々との繋がりも切れなさそうです》
「おっけー。大事にとっとくわね」
「戻ってきたくなったらいつでもいいぞっ」
スイは微笑み、ショウはちゃっかり。
「君たちはやっぱりもといたところに帰るの?」
チフユの問いに、三匹は答える。
ディネビアは、ふたごじまへ戻り、仲間を守りたいと言った。これからは、仲間にもやさしく接しようと。
《いつまでも心を凍らせていてはダメでした。氷が解けたのはあなたたちのおかげです》
吹雪が止むように。雪を降らす厚い雲から日差しが注ぐように、ディネビアは暖かく優しい目をしていた。
アクタルスは、むじんはつでんしょに戻り、コウたちのことを皆に話し聞かせると言った。
《なーんでだか、人間嫌いな奴らが多いからな、ウチは》
なんて、闊達に笑いながら。
シュリウスは、ともしびやまにとどまらず、いろいろな地方を渡っていくと言った。
《さまざまな人間がいるからな。各地の火山で休憩しながら、もっと世界をよく見ようとしよう》
そして、三匹が飛び立つ。それぞれ、言葉を残して。
《達者でな》
《貴方がたの旅に、幸多からんことを》
《オレ様を忘れたら承知しないぜ!》
「元気でねー!」
「また会いたいな!」
キラキラとと火の粉を散らし、バチバチと火花が弾けるような音を立て、はらはらと淡い光を残して。
彼らは海の向こうに飛んでいき、途中で三手に分かれ、コウたちからはあっという間に見えなくなった。
「行っちゃったね…」
「そうだな」
四人はしみじみと、海の向こうを眺めていたが。
ふと唐突に、ショウがコウの背中をばんと叩いた。
「なっ、なにすんだ!」
「へっ、オレもこの辺でオサラバするぜ。スイちゃんと分かれるのは寂しいけどな」挑発するように笑って。
「オレはお前なんかよりもっともっと強くなるんだからな。今度会ったときは絶対勝つ!」
「…言ったな」コウもけんか腰に。「僕だってお前なんかに負けないぞ。今の言葉そっくり返してやるからな!」
「ははっ。今度会うときが楽しみだな」
「僕もだ」
肩をぶつけあい、それから笑み交わし、別れを告げた。
ピジョットのレイヴに乗って飛び去るショウを見送りながら。
「お兄ちゃん、ホントにショウくんに勝てるの〜?」
「ああも宣言したんだから、負けられないね」
スイとチフユが茶化す。
「あたりまえだろ。僕はアイツより強くなるんだ!」
小さいころからのあの、自信満々の憎らしい顔を思い、こぶしを突き上げるコウを見て。
(ケンカするほど…とは、よく言ったものね)
スイは、内心あきれながら、ライバルを追う兄をずっと見守ろうと決めていた。

ひとつの物語が、こうして過ぎた。
だけど、あくまでそれは、旅の途中の物語。
彼等の人生という大冒険の、ほんの一ページにしか過ぎないのだ。

 あくまでそれは、旅の途中 ――完
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華苗 #4★2005.09/13(火)18:30
三話跡地&十五話予定地。
容量節約のためにもきれいに消しましょう。
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華苗 #5★2005.09/13(火)18:31
四話跡地&十六話予定地ですよ。
何か話のネタないかな(ぁ)
i219-167-50-123.s01.a001.ap.plala.or.jp
華苗 #6★2005.09/13(火)18:32
五話跡地&十七話予定地。
そこまで続くかどうかわかりませんけど(駄)
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華苗 #7★2005.09/13(火)18:33
六話跡地&十八話予定地。
どーでもいーけど、私のお話って一話一話が長いよね(滅)
i219-167-50-123.s01.a001.ap.plala.or.jp
華苗 #8★2005.09/13(火)18:34
七話跡地&十九話予定地。
一話千文字はムリです、課長(知らん)
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華苗 #9★2005.09/13(火)18:34
八話跡地&二十話予定地。
一応ここまでに終わるつもりではあります。
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華苗 #10★2005.09/13(火)18:35
九話跡地だよー。
お掃除ももうちょっとだねー…(何)
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華苗 #11★2005.09/13(火)18:37
十話跡地ですぜ。
なんとか近いうちに完結させたいなァ…
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華苗 #12★2005.09/13(火)18:38
お掃除完了。十一話跡地です。
キレイさっぱり! でもまた増えてきますので…
i219-167-50-123.s01.a001.ap.plala.or.jp
[702]

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