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未羽 | #1★2005.06/11(土)18:07 |
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☆プロローグ☆ ジョウト地方で5年前に起こった事件・・それを覚えている人は数少ない。 被害者のたった1人の妹だった少女と、悪党の手下だった少年。 少年は今までの罪を償うため、少女と旅立った・・。 それから更に4年の年月がたった、ある朝。 ミナモシティにある、『民宿 モナミ』。どたどたと騒音が響き、少女が姿を現す。 「ほーら、早く!・・早くってば!・・後30分・・。」 活発そうなショートカット、『可愛い』のうちに入る位の少女は慌てて時計を見ると、ため息をついた。 「大丈夫だって、『空を飛ぶ』があるだろ?!」 もう1人の声とともに、かなり近所迷惑になりそうなくらいの騒音が再び響く。 「就職初日に遅刻なんてしたらどうするの・・とにかく早く!」 「・・未弥(ミヤ)は相変わらず時間に厳しいな・・。」 ようやく出てきた少年は、不機嫌そうに未弥と呼ばれた少女のもとへ行く。 童顔に近いが、以外と大人っぽい口調。少女と同年代だろう。 「やっと来たぁ・・瑠駆(ルク)と一緒だと遅刻しちゃうよっ。」 「五月蝿いな・・行くなら行こうぜ。ボーマンダ、出て来い!」 2人は身軽にボーマンダに飛び乗ると、ヒマワキシティ南部へ向かった。 ヒマワキシティ南部・・2人が向かった先にあるのは「ポケモンレンジャー本部基地」。 「おかしいな・・あと2人、新入隊員がいるはずなんだが・・。何度数えても、3人しかいない・・。」 ここでは、どっか抜けてそうな、かっこいい若い隊員が頭を悩ませていた。 リーンゴーン、リーンゴーン・・集合の鐘が鳴り響いた。 「来ないなぁ・・ん?!あれは・・。」 と、ボーマンダが超スピードで、基地めがけて飛んできた。 そこには、未弥と瑠駆が、必死でしがみついている。 すっとスピードが落ち、2人は隊員の前に着地した。 「ボーマンダ、戻れ。ぎりぎりセーフ・・ってところかな?」 「鐘は鳴っちゃったけど・・多分大丈夫。・・だといいけど。」 隊員は、口をぱくぱくさせて2人を見る。 「君たちは、一体・・?まさか・・ここの」 「新入隊員。その通りです。遅れてすみませんでした。」 後ろには、3人程新入隊員が並んでいる。皆、未弥達より年上だった。 「・・やっと全員揃ったよ。これから、入隊式がある。ついてきてくれ!」 波乱いっぱい、未弥と瑠駆の新しい使命がはじまる・・! |
未羽 | #2☆2005.06/12(日)18:37 |
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☆第1話 『これより、入隊式を開始する。皆、整列して下さい・・。』 アナウンスが基地全体に響く。待合室で、新入隊員5人は座っていた。 しんとしていて、誰1人として口を開く者はいない。この部屋だけ時が止まったようだった。 「皆さん、こちらへ。入場開始です。」 あの若い隊員が再び部屋に現れ、5人は案内されるままについていった。 パチパチパチパチ・・ 拍手の中、入場をした・・のだが。 式場の中は、20人程度の隊員と、他に司会を務める数人の隊員のみ。 「(以外と隊員って少ないのね・・。)」 「(だからまだ若輩の俺達も採用されたって訳か・・。)」 席に座った後、出てきたのは隊員と・・1人の幼い少女。 「皆さん、この『ホウエンポケモンレンジャー基地本部 ・・略してHPRKへようこそいらっしゃいました・・。」 少女が簡単な仕事の説明をして、最後に一言付け加えた。 「・・必ず、尊い命を守って下さい。ポケモンであろうと、悪人であろうと。 悲しい思いをする人々が1人でも減るように・・。」 式場は、一瞬にして静まり返った。そして、司会が慌てて口を開く。 「い、以上で入隊式を終了します。隊員は退場して下さい。なお、新入隊員は残るように。」 隊員が退場した後、若い隊員とあの少女が向かってきた。 「皆さん、入隊式が終わったわけですが・・。明日より、活動が始まります。」 そう述べると、隊員は未弥と瑠駆の方を向いて、 「・・遅刻なんてしたら、先輩達のお叱りが待っていますので、承知しておいて下さいね?」 2人は、作り笑いを浮かべた。しかし、かなり堪えたようである。 「・・忘れていました、私は安藤 葉芽(アンドウ ヨウガ)。呼び捨て以外なら、何とでも呼んで下さい、ね?」 「私は・・安藤 紅華(アンドウ モモカ)です。以後よろしくお願いします。」 「では、解散!帰りには、お気をつけて下さいね!」 ボーマンダに乗りながら、2人は色々と、話していた。 「瑠駆、明日からは10分行動早めなくちゃだね☆」 未弥は、瑠駆が時間にルーズなのを、かなり気にしている。 「・・遅刻したら、お叱り受けるしな。勘弁してほしいぜ。」 「でも・・紅華ちゃん、すごく大人っぽかったね!葉芽さんの妹さん、かな?」 「外見も性格も似てないけどな・・。義理の兄妹じゃないか?」 『義理』という言葉に、反応する未弥。彼女も、義理の家族の中にいる。 「そうだね。色々と、苦労してきたんだろうな・・私以上に。」 「おいおい、暗くなるなって。明日からは、もっと苦労が待ってるんだから。」 「・・やる気無くなるなぁ・・。『苦労が待ってる』なんて。」 瑠駆は、図星をつかれたのか苦笑いをした。 「と、とにかく、頑張ろうな!」 「・・分かってるってば!よーし、頑張るぞー!」 橙色の空の下を、ゆっくりと進んで行ったときに、ボーマンダがふっと微笑んだことは、誰も知らない。 |
未羽 | #3★2005.09/18(日)18:47 |
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☆第3話 『朝だよ、未弥☆起〜きてっ!』 朝の5時。モミジ(ワカシャモ♀)が未弥を揺すり起こす。 「う〜ん・・、ラスタ(プラスル♂)、マイミ(マイナン♀)、ソヨ(アメモース♀)、サキト(ビブラーバ♂)、皆起きた?」 『未弥が最後に起きたのよ。よっぽど疲れてたのかしら?』 「ソヨ・・ううん、大丈夫よ。瑠駆の所へ行かなくっちゃ!」 未弥たちはあれから、寮生活を始めていた。 しかし本部に少し遠いから、遅刻する可能性は十分にある。 ガチャッと思い切りドアを開けると、瑠駆が待っていた。 「あ、瑠駆?!待ってた?」 「いや、別に。珍しいな、未弥が寝坊するなんて。」 「違っ・・瑠駆が早過ぎるだけよっ!」 「行動を10分早めようと言ってたのは誰だったかな?」 「うっ・・と、とにかく行きましょう!」 ボーマンダに飛び乗り、まだ薄暗い空の下を全速力で飛んだ。 と、思い切りポケモンに突撃した。それもかなりのスピードだ。 「うっ・・な、なんだぁ?」 瑠駆は前に乗っていたため相当なダメージを負ったようだ。 ドッカーン!・・何かが地面に衝突し、砂ぼこりが起きる。 「・・いってみようよ、多分さっきのポケモンだよ?!」 とりあえず、ボーマンダはゆっくりと着地した。 ぽっかりと大きな穴の中には、チルタリスと1人の少女。 未弥たちより少し大人びた少女は、ゆっくり体を起こす。 「あっちゃ・・大丈夫か?」瑠駆がチルタリスを持ち上げ、木の実を与えた。 「瑠駆っ、こっちの心配だってしなきゃっ。大丈夫ですか?」 「あ、なんとか・・。すみません、迷惑かけて。」 少女の姿を見た未弥は絶句した。ポケモンレンジャーの制服を着ていたのだ。 しかし、赤いはずの上着は群青色で、シャツとズボンは翡翠色。 「チルタリス、大分回復した・・って、その服は?」 「ポケモンレンジャーの制服・・ですが。」 「えぇ?!だって、赤い制服のはず・・。」 瑠駆が必死に考えていると、未弥が慌てて言った。 「と、とにかく急がなくっちゃ!遅刻したら葉芽さんに怒られるっ。」 「お詫びに、乗っていけよ。チルタリスは、もう少し休ませろ。」 「・・はい、ありがとうございます。」 またまたボーマンダは超スピードで飛ばなくてはならなかった。 無事、本部基地に到着し、先輩である葉芽の元へ下りる。 「葉芽さーん!おはようございまーすっ!」 「?ああ、未弥に瑠駆に・・何故美森までいるんだ?」 葉芽が目を丸くして駆け寄ってくる。 「へへ・・、通勤途中に衝突して落下して、乗せて貰って着ました。」 美森(というらしい少女)が笑って答える。 「何故、制服の色が違うんですか?」 「ああ、彼女は『特別隊員』だからね。」葉芽はさらりと答えた。 「特別隊員?!」未弥と瑠駆の声が被った。 「活動時間帯、内容、スケジュール・・少し易しい活動をしてもらっているんだよ。」 「どうしてですか?」2人の声が再び被った。 「・・いつか教えます。」美森がささやいた。 「とにかくだな、今日は珍しく119番道路が晴天だ。君たちに仕事を与える。」 「初仕事が、雨の多い道路だなんて・・。洪水か何か・・?」 未弥が顔を曇らせ、小さくつぶやく。 「そう。土砂災害の援助を・・未弥、瑠駆、美森に与える。」 「はいっ!」 3人はボーマンダに乗って、日本晴れの空の彼方へ向かった。 |
未羽 | #4☆2005.08/12(金)14:13 |
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☆第3話 「119番道路は晴天。気温は32度。作業、開始します。」 ポケナビ越しに聞こえた瑠駆の声に、葉芽は安堵の声を漏らす。 「・・新人と特別隊員だからなぁ・・って、大変だぁ!」 気付いて、ポケナビに連絡をとったが、反応は無かった。 『暑い〜っ。何この暑さ!』流木を運びながらモミジ(ワカシャモ♀)が叫ぶ。 『日光浴、とっても気持ちいいですよ?』リーフ(コノハナ♀)が答える。 炎天下での作業ほど辛い事は無い。風があれば話は別だが、な。 ・・どこかの誰かが言っていた言葉をふと未弥が思い出す。 「ソヨ(アメモース♀)、銀色の風!」 ひんやりと風が吹きぬけ、多少ましにはなった。 『・・炎ポケモンが暑さ嫌いでどうするんだよ。』サン(バシャーモ♂)が軽く25kgほどある流木を瑠駆に投げ付けた。 「うわぁっ!?」突然の事だったので、瑠駆は流木の下敷きになった。 「あらら・・ヨウカ(エーフィ♂)、念力で木を浮かせて・・。」 美森は、座り込んですやすやと寝入ってしまった。 「・・ふう。助かった。ありがとな、エーフィ。」 『しかし、パートナーが投げた木に気付かないなんて。注意力欠けてる証拠だ。』 「・・突然25kgもの流木を投げ付けられて避けるなんて無理だろ。」 静かに、熱い言い合いが行なわれている横で未弥は1人おろおろしていた。 「よおし、青いビードロ使ってみよう。」 すうっと息を吸い込んだ直後、ドゴームの叫びの様な音が響いた。 もちろん、言い合いも止まり、美森も目を覚ましたが。 上から、気を失った鳥ポケモンが降ってきたのには、驚いた。 「・・もしもし、葉芽さん?瑠駆です。 作業、日暮れまでに終わりそうにありません。以上。」 結局、この作業が終わる頃には、月が空で輝いていた。 |
未羽 | #5☆2005.08/27(土)11:58 |
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☆第4話 「・・寝れない・・。」朝4時、未弥はため息をついた。 たくさんのキャモメが部屋を騒ぎながら飛び回っている。 ビードロの音で被害を受けた鳥ポケモンが回復するまで預かる事になったのだ。 『仕方ないわね。』ソヨ(アメモース♀)が泡を飛ばす。 キャモメは泡を割ろうと夢中になって飛び回っていた。 すると、インターホンの音。夜勤を終えた美森が立っていた。 「未弥ちゃん、バトンタッチ。昼間はフリーだから、面倒見ときますね。」 「ありがとう、美森さ『キャモー!』「わっ!」 未弥の言葉を遮り、キャモメは元気よく美森の元へ飛び立った。 「24時間元気なんだから・・。よろしくね、美森さん。」 「ええ、心配しなくても大丈夫ですよ。」 キャモメ1匹1匹に、目印の首輪をつけるとキャモメを放した。 しかし、そのキャモメは1人の少年目掛けて、再び集まってきた。 「痛っ・・未、未弥、今日はキャモメを帰しに行くってさ。」 少年・瑠駆はキャモメ達のつつくを堪えながら話す。 「えっ・・。そうだよね、もうこんなに元気に飛べるんだもの。」 「初めは五月蝿くて堪らなかったのに。いざお別れって、寂しい物ね。」 キャモメは話の内容も知らずに、無邪気に空を旋回していた。 「置いておきたいな・・否、睡眠時間もっと減るのだけは勘弁して欲しい。」 瑠駆が寝不足だと言い、苦笑いを浮かべて欠伸をする。 「キャモメ達を帰すのは、夕方でしょう?それまで、仮眠してきます。」 美森は普段夜勤のパトロールなので、昼に寝ている。 「ああ。時間には、呼びにいくよ。」 夕方、3人+葉芽・紅華+キャモメ達は119番道路へ来た。 小雨がぱらついていた程度で、天候はまあまあよかった。 「じゃあね、キャモメ・・。」未弥がそっと放す。 キャモメは旅立ったと思ったが、1匹だけ、残っていた。 「?どうしたの、帰らないの?」美森が訊ねる。 キャモメは、紅華の頭に乗っかったまま動かない。 「・・キャモメ、帰って。」紅華はキャモメを空で掲げる。 「此処にいたいんでしょう?でもね、仲間が待っているの。仲間を心配させたくないなら、帰って。」 キャモメは、こくりと頷き仲間と飛んでいった。 「紅華・・、良かったのか?あれで。」葉芽が紅華の顔を覗き込む。 紅華は、声を押し殺して泣いていた。涙がぽろぽろこぼれている。 小雨と涙が混じり、紅華の体を濡らしていった。 「・・さあ、濡れると風邪を引く。もう、帰ろう。」葉芽が、静かに言った。 ホウエン地方は、小雨。所により、激しい雨が降ったという。 |
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