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リン♪ | #1★2006.11/29(水)22:44 |
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1章〜事件〜 ある森の奥の村、ここで一匹のピチューが生まれた。名前は「ラズマ」。お母さんは優しくて、しっかりしているライチュウ。お父さんもライチュウだが、ラズマが生まれてすぐに人間に捕まってしまった。なので、お母さんは、お父さんの分までラズマを育ててあげた。 「お母さん、あれは、何??」 「あれはキャタピーって言うポケモンなの。今は、あんな格好なんだけれども、大きくなると、羽が生えてお空を飛べるようになるのよ。」 「じゃあ、僕にも羽が生えてお空を飛べるようになるのかな??」 「ふふふ…。…そうかもね。」 そんなラズマのお母さんのおかげで、ラズマはすくすくと育っていき、友達もできた。 やんちゃなダンバルの「アル」 照れ屋なラルトスの「ティア」 臆病なタツベイの「ガル」 ラズマはこの3人とたくさん遊んだ。時には外で隠れんぼや鬼ごっこ、時には近くの森に探検しに言ったこともあった。そして、ラズマはこの友達を一章大切にして、自分を生んでくれたお母さんにも、感謝をした。 しかし、幸せはそう長くは続かなかった…。 ラズマが生まれてから10年もの月日が経ったある日、ラズマはいつもの3人と遊んでいた。 「ねぇねぇ、次はなにをして遊ぼっか??」 そうラズマが言った時、突然空が闇に覆われた。 「な…何が起きたんだ!?」 アルがそういった。 「そ…空が…」 空を見たガルが、恐ろしそうに良い、皆が空を見上げた。 その時 「わぁっ!!」 飛行機がいくつも空を飛んでいた。そしたら、いきなり何かが降りてきた。 「に…人間だ!!」 村の人が叫んだ。すると、次々と人間が降りてきて、網を取り出した。 「ま…まずいよ。早く安全なところへ逃げよう!!」 そうガルが言った。 そして4人は昔作った秘密基地のところへ逃げた。 秘密基地に逃げ込んだ4人は、ひたすら長く、息を殺して見つからないように祈りながら人間が通り過ぎるのを待った。 「…〜…!!…〜?…」 「・・!!…?・・!?・・!」 そしてどれほど待ったことだろうか。人間たちが通り過ぎた。 「どうやら人間は去ったみたいだね。」 ティアが言った。 そして4人が秘密基地の戸を開いた時、すべてをあっけにとられた。 村は、もう、村ではなくなっていた。残ったものはほとんど無く、村人も200人以上いたのに、いまは…数えるほどしかいない…。 そして、ラズマの親戚である、ピィと、そのお母さんであるピクシィはいた。ラズマは急いで駆け寄って、 「な…何があったの??」 非常に慌てていった。 「いきなり人間たちが村人を網で一斉に捕まえてしまったんだ。」 ピィのお母さんはそう言った。 そして、村長さんもいた。村長さんは、とてもおびえている。 「もう、村は終わりだ…。人間の来た後には…何も残らない。」 そう言った。 ふと、ラズマの脳裏によぎった言葉が、ふと出てきた… 「お母さん…」 そう言うと、ラズマは村中を駆け回った。 「お母さん!いるんでしょ!!お母さん!!」 しかし、お母さんはいなかった。 その時、ピクシィから悲しそうに言葉が出た。 「…貴方のおかあさんも…捕まってしまったの…。」 そう言われた後、ラズマの目から大きな涙がふれ、声を上げて泣いた。 「お母さん!戻ってきてよぉ!!お母さん!!」 太陽が、知らん顔をするように、だんだんと隠れていった。 1章 事件 終わり |
リン♪ | #2★2006.08/06(日)19:27 |
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第2章〜旅立ち〜 その夜、ラズマはピィの家に止まらせてもらった。 「ほとんど壊れちゃっているんだけれども…ゴメンね」 そう、ピィのお母さんは苦笑いを浮かべながら言った。 ラズマは途方に暮れていた。お母さんに、あえないかもしれない。 しかし、ピィのお母さんは、ラズマに優しく、 「大丈夫よ…。この世界のどこかに、お母さんは、生きているんだから。」 そう言ってくれた。 すると、ラズマは、 「そうなんだよね。お母さんは必ず、世界のどこかに生きているんだ。」 と、少し涙を浮かべて微笑んだ。そして、同時に怒りが沸き起こってきた。 お母さんを、村の人を襲った集団を、許すわけにはいかなかった。そして、決心した。 「僕、お母さんと、村の人を探しに行くよ。…人間を…許せない。 その時、[ポゥ…]ラズマの体の周りが少しだけ青くなったように、ピクシィは見えた。 「ラズマ、あなた、どうしたの??」 「えっ…?」 ラズマが言った、次の瞬間、[ピカッ!!]ラズマからものすごい光がでた。そして、光がおさまったらピクシィは驚いた様子で言った。 「ラ…ラズマ…」 「えっ?どうしたの?」 「し…進化して、ピカチュウになっているわよ!!」 そう言われた時、ラズマは自分が進化して、ピカチュウになったことを、初めて知った。 「わ…わぁ!!進化してるよ!!」 そして、優しい声でラズマに、 「きっとお母さんに深く会いたいと思っていたから、その心に答えて、進化できたのね。」 と、言った。そして、 「あっ…そうだった。あなたのお母さんから預かっている物があったの。」 そう言うと、ピクシィは倉庫に行って、何かを探し始めた。 「えっと…あっ!!あったあった!!」 ピクシィは黒くて、厚さが1〜2センチあるぐらいの、小さな四角い機会を手に持っていた。 「あなたがピチューからピカチューに、なった時に渡してくれってお母さんから預かっていたもの。さぁ、これを腰に付けて。」 ラズマはその機械を腰に付けた。 「あら、似合っているじゃない。」 と、ピクシイは言い、ピィも言った。 「お兄ちゃん、カッコイイよ!!」 「あ、ありがとう。」 ラズマは少し照れながら言った。 「さてと…じゃあ、外に出てね。」 「ぇ??何で??」 「まぁ、それは一種のお楽しみ。」 そして、ラズマはピクシィに押されて外に出た。 「じゃあ、説明するわね。そこに、三つのボタンがあるでしょ。まず、左のボタンを押してみて。」 「えっ?…うん。」[カチッ]… ラズマはおそるおそるボタンを押した。すると、立体にできた、画面が出てきた。 「それは持ち物を見るためのボタン。持ち物を拾ったら、画面を使って保管したり、引き出すこともできるのよ。」 「へぇ…。」 「じゃあ、次に右のボタンを押して。」 [カチッ…] 押した瞬間に、画面が切り替わった。 「こ…これは??」 「これは仲間の登録をするボタン。『登録』と、『入れ替え』の、2つの文字が画面に映っているでしょ。まずは、画面の『登録』を押してみて。」 「うん。」[ピッ シュッ…] すると、また画面が切り替わった。真ん中に十字の模様がある。 「その十字マークの真ん中に、仲間にしたいポケモンを合わせて、もう一度、『登録』ボタンを押すと、仲間になれるの。ただし、仲間にしたいポケモンも、『仲間になりたい』という気持ちがないと、駄目みたい。そして、4匹まで連れて歩けるの。」 「じゃあ、5匹以上の時はどうするの?」 「5匹以上の時は、『入れ替え』で、その機械の中にデータとして入れることができるの。そして、データとして入れた仲間と連れて歩いている仲間と、入れ替えたり、連れて歩いている仲間をデータとして入れて、4匹以下にすることもできるの。」 「へ〜…」 「それじゃあ、最後は、真ん中のボタンね…でも…。お母さんが書いてくれた説明書には、インクがにじんでいて、読めないんだ…。」 「えっ!?説明書、見てたの?」 「だって…説明書見ないと、何も分からないでしょ。」 やっぱり…。どおりでこんなに説明ができはずだと、ラズマは思った。 「それじゃあ、押してみて。」 「えぇっ!?何も分からないのに??」 「だって、分からないから押すんじゃない。」 「じゃあ、分かったよ…。」 ラズマは不安に思いながらもボタンを押した。[カチッ]…[シュン…] 「あれ??何が起きたんだろう??」 「ラズマ〜っ」 「うわっ!!」 ラズマには、ピクシィが小さく見えた。 「どうしたの??そんなに小さくなっちゃって…」 「ラズマ…あなたが大きくなってるの…。あなた…今の状態…人間になってるわよ!」 「えぇっ!!」 ふと、ラズマは、自分の全身を見てみた。 すると、手には五本の指がはっきりとあり、黄緑色の靴、紺色のジーパンに、黄色の半袖、そして、なぜかツンツンの茶色い髪をしていた。 「分かった!!最後のボタンは、『擬人化』なのね。あっ…少しだけ読める。『擬人化してる時は、仲間を六匹まで連れて、データとして、機械の中に入れられる。』だって。後、元に戻りたい時は、もう一度同じボタンを押せば元に戻るって。」 「じゃあ、戻るよ。」 ラズマは、すぐに答えた。自分たちの村をおそった人間になって、複雑な気持ちだったからだ。 [カチッ]…[シュン] 「これで、全部の説明が終わり。それじゃあ、気をつけてね。」 「うん。」 そう言った後、村は、これまでにない静けさを感じた。 そして、ラズマは、涙をこらえて、ピクシィに背を向けて、歩き出した。 2章〜旅立ち〜 終わり |
リン♪ | #3★2006.08/07(月)22:30 |
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3章〜親友〜 しかし、歩き出した後、すぐにラズマを、誰かが止めた。 「ラ〜ズマっ!!」 声のする方を見た。すると、ラズマは驚いた。 「アル、ティア、ガル!!」 ラズマを読んだのは、いつも遊んでいた3人だった。茂みに隠れていたらしい。そして、3人はすぐに駆け寄ってくれた。 「みんな、迎えてくれて有り難う…でも、そろそろ出発しなくちゃ…。僕には、大切な物を取り返さなきゃいけないんだ…。」 今度こそ、ラズマのほほに一本の涙の筋が通った。声も少し震えている。いつも遊んでいた3人と、もう、会えないかもしれない…。下手をすれば。 「みんな、本当に今まで有り難う…。行かなきゃ。」 そして、また、一歩一歩、歩き出した。すると…。 「『ありがとう』じゃなくて、『これからもよろしく』でしょ!!カン違いしないでよ!!」 「えっ?」 アルが突き出すように言った。そう言った後、ラズマは驚いた。そして、すぐにティアが言った。 「私たちも、お父さんや、お母さんを連れ去られてしまったの…。だから、助けに行きたいの…。私たちも同じよ。」 さらに、ガルも言った。 「それに、ラズマ一人じゃ、大変でしょ。僕たちも、一緒に行って…いいかな??」 そう言った時、ラズマの目から涙があふれた。 「あ…有り難う…。みんな!!…本当は…どうすればいいか…自分でもわかんなかったんだよ…。本当に…本当に嬉しいよ!!」 すると、ラズマは涙を拭いていった。 「それじゃあ…『これからよろしく』!!」 そう言った後、3人は顔を見合わせてうなずいた後、言った。 「こちらこそ、よろしく!!」 すると、ピクシィは、 「それじゃあ、登録しよっか。」 と、言った。ラズマはすぐに登録メニューを開いて、登録をした。 「それじゃあ、登録するよ…。」[ピッ…ピッ…ピッ…][全テノIDヲ、登録シマシタ。] すると、太陽が昇りだした。ピクシィは言った。 「ほら、太陽も応援してるよ。」 すると、ラズマは、 「必ずみんなを取り返すよ。そして…またここに戻ってくる。…約束するよ。」 そう、ピクシィに言うと、ラズマは静かに歩き出した。そして、ピクシィが言った。 「『必ず戻ってくる』って信じてるから!!いつまでも!!」 ラズマは振り向かずに歩いた。そして、ラズマ達の影が少しずつ小さくなっていった。 3章 親友 終わり |
リン♪ | #4★2006.11/17(金)21:54 |
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4章〜バトル〜 「ねぇラズマ、格好良く村をでたけれども、どこを目指せばいいの??」 村を出て結構歩いたという所でティアが聞いてきた。 「とりあえず、道があるところから…。何かの手がかりがありそうだから…。」 ラズマは苦笑いをしながら言った。すると、ティアが言った。 「でも、道がないけれども…。もしかしてラズマ…迷ってる??」 その一言でみんなが固まった。 「…ハイ。」 「えぇ〜っ!?じゃあ、これから先どうするの??」 みんなが声を合わせて言った。その時、 「しっ…今、何かが聞こえた…。…[ガサッ] その物音はだんだんと、ゆっくり近づいて来た。するとラズマは、その正体が分かったとたんに、声を小さくして言った。 「人だ!!」 そしてガルが、 「ラズマ、早く擬人化して!!」 「分かった!」 そしてラズマは擬人化のボタンを押した。[カチッ]…[シュン] 「ふぅ…危ない…。あれ??みんなは…そうだ。機械の中に入ったんだった。」 すると、何か言った。 「そこにいるのは誰だい??」 声はすぐ近くだった。 「あぅっ…えぇと…『ラズマ』って言う者です。」 すると、何かは姿を現した。…やはり人だ。だいぶ警戒していたようだ。いつでも攻撃できるような態勢をとっていた。 すると、誰かは言った。 「…君は、『黒龍』の一員じゃ無いみたいだね。ふぅ…。安心したよ。」 「えっ??それで…」 「ゴメン、君を敵だと思っていたよ…。悪かった。… そうだ!まだ、僕の名前を言っていなかったね。僕の名前は、『シン』。よろしく!!」 ラズマの言葉が途中でさえぎられて、自己紹介をした。どうやら、『シン』と言うらしい。 「あっ、シン、こちらこそよろしく!」 ラズマも、一安心すると、シンがいきなり言った。 「ところで、君は、ポケモンを持っているかい??」 「うん。もちろん!!大切な仲間をね!!」 「よし…。それじゃあ、仲間の印として、『バトル』をしようよ!!」 ラズマは一瞬ポカンとした。そして、しばらくしていった。 「…バトルって…何??」 すると、シンは驚いたように言った。 「えっ!?バトルを知らないの??」 「…うん。」 「バトルって言うのは、お互いのポケモンを出して、戦い、先に相手のポケモンを全部戦闘不能にさせた方が勝ちって言うルールで、勝ったポケモンは、経験値をもらって、だんだん強くなるんだよ。」 「へぇ…。」 「まぁ、聞くよりも試してみよう!!行けっ!!ヒトカゲ!」 シンはボールを投げた。すると、ヒトカゲが出てきた。 「あれ??ラズマ、君、モンスターボールを持っていないようだけれども…。」 「いや、大丈夫。」 そして、ラズマは右手を開いた。すると、モンスターボールが出てきた。 (うわぁ…スゴイや。…こんな風になるんだ。…自分でも知らなかった…。) そして、ラズマもボールを投げた。 「行けっ!!ガルっ!!」 そして、ガルが出てきた。すると、ガルが言った。 「(ラズマ…初めてでしょ。大丈夫かい??)」 …どうやら、心で会話出来るみたいだ。 「(…君を信じている。)」 「(じゃあ、頑張る!!)」 そして、シンが言った。 「へぇ…。タツベイか…。よしっ、ヒトカゲ、火の粉!!」 「カゲェ!!」 攻撃は見事に当たった。 「ガル、大丈夫??よし、頭突き!!」 「ベイ!!」 「よけろヒトカゲ!!そして、もう一度火の粉!!」 すると、ヒトカゲはガルの攻撃をよけて、もう一度、火の粉を繰り出した。」 「へぇ…よけることも出来るんだ。なら、ガル、よけろ!!」 ガルも攻撃をよけた。 「よし、技を出した後の動けない隙をついて頭突き!!」 「ベイっ!!」 攻撃は見事に当たり、ヒトカゲは倒れた。 「ヒトカゲっ…よく頑張ってくれた…。後はゆっくり休んでいてくれ…。」 どうやら、シンのポケモンは一体だけ、それも、ヒトカゲだけらしい。そして、ヒトカゲをボールに戻した後、シンは言った。 「君って、強いんだね。」 すると、ラズマは照れながら言った。 「いやいや…シンだって強かったよ。」 「ありがとう。」 そして、ラズマはふと思い浮かんだことを言った。 「シン…君はどうして旅をしようと思ったの??」 すると、シンは重々しそうに言った。 4章 バトル 終わり |
リン♪ | #5★2006.11/17(金)21:56 |
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5章〜光と影〜 「僕の大切な仲間を盗られてしまったんだ…。あの…『黒龍』に…。」 そして、ラズマは思い出した。シンと始めにあった時、…『黒龍』の一員じゃなくてよかった…とか言っていた。 そして、ラズマは質問した。 「シン…『黒龍』って…何なの??」 「『黒龍』と言うのは――約20年前、ポケモンを使って世界を支配しようとしていた組織なんだ。黒龍ができた、その当時はまだ弱く、そんなに重視される組織ではなかった。でも、その5年後、世界は一変し、その時には『最強』と呼ばれるほどにもなった組織のことなんだ。」 すると、ラズマが言った。 「へぇ…。そんな組織があったんだ…。ねぇシン、もっとその話を聞かせてよ。」 すると、シンはうなずいて、話し始めた。 「うん。――黒龍が最強と呼ばれた理由、それは、未知の力…。その力は無限に等しい力であった。それを、黒龍のポケモンだけが持っていた。 その無限の力を使い、あちこちの村や国は、黒龍が支配した。 しかし、そんな中、黒龍に立ち向かう一人の少女がいた。その少女は、自分とポケモンを信じた。 少女のポケモンを見た人は、トレーナーとの絆がとてつもなく深く、強く、少女以外には命令を全く聞かずに、命を賭けてでも、その少女を守ろうとしていたらしい。 そして、少女は人々から『闇を照らす1つの光』と呼ばれていた。 その少女は、自分の勇気、ポケモンの力のおかげもあり、黒龍のボス、『バラン』がいる、アジトへとたどり着いた。が、そのアジトには、他を寄せ付けない闇のオーラーが漂っていた。しかし、少女はそれを乗り切った。」 そして、シンが忠告するように言った。 「ここからは、他の人が外から見た事しか分からないんだ…。普通の人は恐怖で中に入れなかったから…。」 そして、ラズマが言った。 「それでもいいよ。分かる限りのことだったら。」 「それじゃあ。――少女はアジトの中にいる、黒龍の人々を次々と倒し、バランのもとへとたどり着いた。(バランの場所は、頂上で、遠くからだが一般の人も見られたらしい。) すると、少女は、バランの持っていたポケモン全てを倒した。しかし… 最終兵器とも言える、全身が闇で囲まれた『ミュウツー』が出てきた。そして、ミュウツーは、自分の持っている闇の力で周りを闇で囲んで、人々から見られないようにした。」 そして、またシンが忠告するように言った。 「ここからは、音だけしか分からないんだ…。周りが闇で囲まれていたから…。」 すると、ラズマが即答した。…早い。まばたきをするぐらいよりも早い返答だ。 「大丈夫!だから、早く話して。」 「OK。分かった。――そのミュウツーは分からないが、何らかの技を使っているらしい。音がしたから。そして、その技が出される音の回数と、少女がポケモンを戻す音が一緒だった。…つまり、少女のポケモンは一撃でやられてしまった。そして、技、戻す音が6回した時、少女の負けが分かった。しかし、少女はこういった。 『光が全てを照らし出す。闇には決して覆われずに…』 そう少女が言ったその後に、何かがはじける音がした。その瞬間、闇を突き抜けて、一本の太い光が天へと伸びた。そして、一気に周りが明るくなった。まぶしく、カメラのフラッシュをひたすら長くつけているような光だった。 そして、人々がやっとの思いで目を開けた時、天に白い、電撃をまとった龍が現れた。その龍は、目は輝いて、赤い。額には蒼い宝石のような球が1つ、埋まっていて、中国の伝説で出てくるような、蛇のような体に、大きな羽が背中に4つ付いていた。上の2つの羽は大きく、鳥のような、美しい羽毛の大きな羽、下の2つの羽はプテラノドンのような細長い羽、でも、4つとも白く、美しい…。首もとは、サンダースのようなチクチクとしたような体毛。そして何よりも…首に銀色で、十字のネックレスをしていてた。その白い龍は見る物を圧倒した。 そして、その龍はバランのミュウツーへと突進した。その威力は壮絶で、アジトは一瞬にして跡形もなく崩れた。そして、ミュウツーの周りを覆っていた闇はなくなり、すぐに救急隊が駆けつけた。 救急隊の人は、4人、アジトへと走って向かった。そして10分後、1人目はボロボロのバランを運び出し、警察に渡した。2人目、3人目は、少女の持っていたとされるポケモン6匹と、もう、闇が無くなっているミュウツーを、救った。しかし、少女の持っていたとされるポケモンの中の、『ピカチュウ』は、とてもダメージが大きく、もう、虫の息だった。しかし、救急車で運ばれ、賢明の治療の結果、一命を取り留めたらしい。 そして、さらに1時間後、4人目の救急隊が戻ってきた。しかし、何かを伝えているようだ…。 少女がいなかったらしい。いくら探しても。」 そして、ラズマが唐突にいった。 「えっ!?うそ…がれきの下敷きになったまま、見つかんなかっただなんて…」 そして、シンが残念そうに言った。 「未だにその少女は見つかっていないらしい。そのアジトのあとには、今でもたくさんの花が添えられている…。」 「へぇ…。」 「でも、その少女のおかげで、最近まで『黒龍』は活動しなかった…。今をのぞいてはね。」 そして、話がしばらく無くなった。風が当たるのを感じる。そんなときに、シンが言った。 「そうだ、あのピカチュウ、どうやら病院で3週間も寝たきりだったらしいんだ。3週間して、目が覚めたところを看護婦さが見たのが最後らしい…。」 そして、ラズマが聞いた。 「えっ!?死んじゃったの!?」 「いや…消えたんだ。病院から、跡形もなく…。」 「じゃあ、今も生きている可能性がある?」 「かもね。…まぁ、これらはみんなおじいちゃんから聞いた話なんだけれども。」 そして、ふと、シンは空を見た、夕日のせいで真っ赤に染まっている。そして… 「もうこんな時間だから、そろそろ、お別れだね。じゃあ。…君と話が出来てよかったよ。」 「こちらこそ!!有り難う、シン!それじゃあ。…」 2人は正反対に歩き出した。すると、シンが立ち止まり、ふと言った。 「そうだ!ラズマ、あのピカチュウの事がもっと知りたければ、東に行けばいいよ。…伝説だけれども、あのピカチュウがよく行っていたと言われている場所があるから。」 そう言うと、またシンは歩き出した。 「ありがとう。じゃあ、行ってみるよ!」 ラズマは行った。そして、シンの影が見えなくなった頃、近くで声がした。 「ラズマ〜っ!!」 「あ、ゴメン…」 ラズマはすぐに擬人化のボタンを押した。声の主はアル、ティア、ガルの3人だった。そして、ラズマがピカチュウになった時、3人が出てきた。 「ラズマったら、ずっと忘れているんだから…」 そう、ティアが行った。そして、 「どうする?この先…」 アルが行った。その後、しばらくしてラズマが言った。 「行くしかない。東に…。新しい手がかりが見つかるかもしれない…。『黒龍』の事も。 そして、3匹はうなずいた。 「じゃあ、行こう。」 4匹の影が、夕日に映えて長く伸びていた。 5章 光と影 終わり |
リン♪ | #6★2006.11/17(金)21:59 |
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第6章〜自分〜 「ラズマ…あと、どれくらいで目的地に着くの??」 ティアがちょろっと言った。すると、ラズマは言った。 「えっ!?…あぁっ…もう少しで…着くと…思うけれども…うん…」 明らかに動揺した。ティアは、聞かなければよかったと思っただろう。そして、ティアは安心させるように言ってくれた。 「でも、確実に東に向かっているから大丈夫だよ。」 すると、ラズマは安心した。(よかった…)そう思った時、ラズマには地面が少し揺れたように感じた。 「あれっ…今、揺れなかった??」 そして、その後すぐに、周りがとても明るくなったように感じた。 「えっ??」 そう3人が言い、振り返った時、ラズマがバタッと倒れた。 「ラズマ、大丈夫か!!」 (ガルが言っている…)ラズマは、だんだんとその声が遠くなっていくように感じた。 アルが言った。 「早く!!誰でも良いから助けを呼んで!!」 >「…何だろう…ここは…真っ暗だ…浮いている。」 >ラズマは暗い暗い、闇の中にいた。そして…空をフワフワと飛んでいる。 >「…自分の声が響く…。ここは夢だろうか…」 >「いいや、違う。」 >「誰??」 >ラズマがそう言った時、自分の前で白い、ダイヤ型の光る物が出てきた…変形できるみたいだ。そして、それはこういった。 >「僕は君、君は僕だ。」 >「エッ??」 >「つまり僕は、もう1人の君…。ただし、現実世界に出てくることは出来ない…。でも、力は貸せる。」 >「どういう意味??」 >「君は世界を救う義務がある。その助けをするために僕は生まれた。」 >「それじゃあ…君は味方なんだね。」 >「そう言うことになる。」 >そして2人の会話がとぎれた。すると、ダイヤの形をした物が言った。 >「僕は、君の想像力で力を発揮できる。さっきも言ったとおりだが…僕は現実にはでられないが、君に力を貸す。…忘れないでくれ…。君は、心が最大の武器だ。力だ。決して腕力だけが強さではない。」 >「えっ…ちょっと!!」 >ラズマとダイアの物が引き離されるように遠ざかっていく。すると、何かが自分を呼んでいる。 「…ん??」 「ラズマぁっ!!」 自分を呼んでいたのは、いつもの3人、アル、ティア、ガルだった。 「このままずっと寝たままだと思ったよ…。」 ガルが心配そうに言った。そして、ラズマが言った。 「ここは…」 誰かの部屋のベッドにラズマは寝ていたらしい。 「やっと目を覚ましたようだ…」 ウィンディだ。 「あなたは…助けてくれたんですか??」 ラズマが疑問を持ち、問いかけた。 「当たり前のことをしただけだ。私の名前はウェイこの民の警察だ…ここは風の民。…いわゆる、『くに』だとか『むら』だとか言ったところだ。」 「あ…有り難うございます。ウェイさん。」 「今夜はゆっくりと休みなさい。だいぶ疲れているようだから。」 「あっ…」 もう夜だった。だいぶ寝ていたらしい。 「では、私は戻る。何かあったらまた呼びなさい。」 「本当に有り難うございます。」 そして、ウェイが出て行った時、アルが言った。 「僕たちも、ここの部屋で寝るから、何かあったら、まず僕たちに言ってね。じゃ、おやすみ〜…」 ラズマはあまり寝られない…朝から夜までずっと寝ていたから。 (あれはいったい何だったのだろうか…夢だと思う…でも、はっきりと覚えている…真っ暗だった…本当になんだう…。) そう疑問に思った。 第6章 自分 終わり |
リン♪ | #7★2006.11/17(金)22:05 |
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7章〜襲撃〜 朝からついさっきまで寝ていたので、全く眠くない。そこで、みんなを起こさないように、民を散歩しようよ思った。 ラズマが散歩して、第一に印象付いたのが大きな「風車」 (…村のど真ん中にある。だから「風の民」って言うのかな?) どうやら風車で発電しているようだ。ここはいつでも風が吹いているような村だったため、効率が良いのだろう。 「どうだ、少しはよくなったか?」 ラズマはビクッとして声の方へと向いた。ウェイだ。 「あっ…はい。…どうしても眠れなくて…」 「そりゃそうだ。あれだけ眠って、まだ眠いだなんて体がどうかしている。ケーシーだとかカビゴン以外、あり得ないな。」 そう、ウェイは笑いを込めながら言った。そして、一息付けて、こういった。 「今、世界が滅ぼうとしている。」 「『黒龍』ですか!?」 ウィンはいきなりの言葉にびっくりとしたらしい。そして、落ち着き、言った。 「そうだ。あの組織は、もう滅びたと思ったがな…。」 「ウィンさんも知っているんですか??」 「あぁ。もちろんだ。警察で、それを知らない者はいない。私も全力で取りかかったよ…。まだそのころは力が不足していたがな…。だが、今は大丈夫だ。私がここにいる限り、この民は安全だと思っていてくれ。それにここは、人が近づけないようになっている。」 「へぇ…」 ラズマは、空を見た。1つ1つの星が綺麗に、懸命に輝いている。まるで、一番誰が輝けるか競っているようだ。 そう思った時だった。 …[ズドーン!] 「何だ!?」 ウェイが焦ったように言った。何かが壊れる音だった。 「私は今、音がした方へ行く。何かがあると大変だから君は待っていてくれ…」 そうウェイが言った後、すぐに立ち去り、音のした方へと向かっていった。 そして、間もない時だった。本当に…不意だ。 『警察達よ、すぐに北の門へと集まって欲しい。いち早く集まってくれ。他の人は、急いで隠れてくれ。』 何だろうと、ラズマが思い、みんなが隠れて、物音がしない中、ウェイが向かったところへと行ってみた。すると…人だ。そして、ラズマに1つの記憶の中の映像が出てきた。 …自分の村が襲撃された時の映像だ。そして、その時の人の服と…一致した。 ズボン、Tシャツともに黒…。Tシャツの左肩からズボンの裾にかけて一匹の灰色の龍が駆けている…。そして、口元は、忍者のような感じで黒い…スカーフだろうか…それが覆っている。 そう分かった時、事態が一刻を争うことだとラズマは感じた。 (…『黒龍』だ…ここにまで攻めてきたんだ…) ラズマは必死に走った。あの3人がいる部屋へと。 その部屋へ着いた時、ラズマは一瞬安心した。 (よかった…ここにはまだ来ていないようだ…。) 「みんな起きてくれ!!」 アル、ティアがすぐに、「何だろう」という表情を浮かべて起きてくれた。…ガル…早く起きてくれよ…。やっとガルも起きた。そして、事情をラズマが説明した。 「えぇっ!?嘘だ!!悪い夢だ!!」 アルが言った。そして、その後、一息あけてラズマが言った。 「いいや…事実だ。」 「速く逃げなきゃ…」 ガルが怯えているように言った。 「私、まだ捕まりたくない!!」 ティアが頭を抱えて言った。…記憶が戻ってしまったのだろう。 「…戦おう。」 ラズマが、ふと言った。 「ここで黒龍と、風の民の警察との戦いを見ているのか!?」 4人は目を合わせて、言った。 「行こう…。」 4人は部屋を出た。と、同時にラズマが擬人化ボタンをおした。[カチッ]…[シュン] (早くしなきゃ…ウェイさん…頑張って…) そう心に刻み、ラズマは北の門へと走っていった。 7章 襲撃 終わり |
リン♪ | #8★2006.11/17(金)22:03 |
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8章〜VS…?〜 そして、やっと、風の民のポケモン達が集まっているのが見えてきた。…恐らくあの真ん中に『黒龍』の一員がいるのだろうとラズマは思った。ラズマは足を速め、その場所へと疾走した。 そして、風の民のポケモン達が集まっている場所へと着いた。 …やはりいた。黒龍だ。しかし、風の民のポケモン達に囲まれている。ラズマは呼吸を整えていった。 「やめろっ!!ここのポケモン達も奪うつもりなのか!?」 すると、黒龍の一員らしき人物は凛々しい、低い声でこういった。 「…?何でおまえはここにはいることが出来た。」 (ギクッ…そう言えば本来人は入れないんだっけ…) ラズマは返す言葉がなかった。すると、あきれたように黒龍の一員が言った。 「…まぁいい。お前みたいな実力のなさそうな者は通れるのかもしれないな。俺みたいにここを略奪出来るような力は見られないからな。」 ラズマは頭に来た。そして、こういった。 「ここを離れろ!!離れなければバトルをしろ!!」 そして、また黒龍の一員は、こういった。 「そう易々と言うことを聞くと思ったか??ここはせっかく強い、いい奴らになるのが山ほどいるんだからな。…俺の名前はヤイバ。…お前を倒す。」 凛々しく、低い声をしている黒龍の一員の名前は、『ヤイバ』と言うらしい。そしてラズマは怒りが沸き起こってきた。 (この…ヤイバ…ポケモンのことを『奴』っていってる…道具としか思っていないんだ。) 「ヤイバ、お前を倒す!!いけっ!ティア!!」 ラズマはボールを投げて、ティアを出した。そして、あることにきがついた。 (…ヤイバには…モンスターボールがない…) 「どうしたんだいヤイバ?ボールが見あたらないようだけれども…」 「ボール?そんな物いらないよ。『コレ』があればね。」 そう言うと、ヤイバは腰に付けているバックから何かを取り出した。…ビンみたいだ。そして、そのビンから薬らしき物を取り出した。 「分かるか?これが…コレが過去に『黒龍』が無敵と言われた薬、『LIー0』…コレを飲ませると…どうなるかな…」 ヤイバは薄らと笑いを込めて言った。そして、周りを囲んでいる風の民のポケモン達の中から、一匹を選んだ。 「お前だ!!」 そうヤイバが言うと一匹のポケモンを無理矢理取った。 そして、ラズマは現実が嘘のように思えた。 「ウェイ!!」 ヤイバに取られた一匹のポケモン…それはウェイだった。ウェイは必死にもがいている。離れようという一心で。 「何だ、こいつの名前を知っているのか??こいつはほかの奴よりも一段も二段も良いからな…」 そういうと、ヤイバは慣れた手つきでウェイの口を開け、さっき取り出した薬を口の中へと入れ、ウェイの口を閉じて、手でつかみ、無理矢理飲ませた。すると、ウェイはぐったりと、まるで死んでしまったように力が抜けた。…もしかしたら毒薬だったのかもしれない。 「ウェイに何をした!!」 ラズマはヤイバに噛みつくように言った。 「大丈夫だよ…。死にはしない。…ただし…」 するとウェイが少し動いた。その次の瞬間、俊敏な動きで、ウェイはティアの目の前へヤイバの腕から抜け飛び、噛みつきそうな勢いでティアに威嚇した。そして、ラズマはあることに気が付いた。…ウェイの目の輝きが消えていた。 ラズマは必死にウェイの心を読み取ろうとした。そして、ウェイに心で話しかけた。 (ウェイさん!!) (…グルルルル…) (!?…心が…読み取れない!?) 「ふふふ…分かるか??今、こいつは、この薬によって…心と引き替えに無限の力を得たんだよ!!…心は深海よりも深く、そして天よりも高い。その心を全て力に移す…画期的だろ??」 (嘘だ…あれがウェイさんだなんて…さっきの僕と話した時と…全然違ってるじゃないか…) 「さぁ、バトルを始めようじゃないか…どんなことをしても無駄だろうけれども…君の敗北という結果は、変わらないからね。」 8章 VS…? 終わり |
リン♪ | #9★2006.11/17(金)22:08 |
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9章〜救出〜 「なら、その結果を変えてみせる!!」 ラズマは答えた。しかし、ヤイバは冷静な態度を変える様子は無かった。。 「(ティア、準備はいいかい??)」 「(もちろん…ちょっぴり怖いけれども…でも頑張る!!)」 「よし、ティア!!サイコキネシス!!」 「ラル!!」 ティアの体の周りから波が起き、ウェイへとぶつけていく。しかし… 「グルルルッ!!」 嘘だとラズマは思った。異常なほど素早く、ティアのサイコキネシスを余裕と言わんばかりによけた。そして、ヤイバが言った。 「どうだ??あの薬の効果は…この力を見てみろよ。素晴らしいだろぉ?」 確かに凄い。ラズマは返す言葉が無かった。そう思う暇もなく、ウェイの炎が口から出てきた。火炎放射だろう。しかし…黒い。漆黒の炎が月の光を受けて綺麗に輝いている。そして、ティアへと当たった。 「ラルッ!…」 すさまじい威力だった。 「(うっ…そんな力は…この世には…無いはずなのに…)」 ティアが震える声で言った。 「ティア!!」 (どうすれば良いんだ…相手の力は確かに無だ…。) >「(相手の味方になっている物…それは『闇』。)」 頭の中で誰かの声が聞こえた。どこかで聞いたことがある。ど誰だっけ…どこで聞いた?…そうだ、夢の中の声と同じだ! >「(どういう意味??)」 ラズマが訪ねた。すると、頭の中に響く声はこういった。 >「(今は光が届かない時間…。つまり夜。その夜は、暗闇そのもの。それが今、彼女の力になっている。)」 >「(それじゃあ、光があれば、相手は弱くなる??)」 >「(…もとの彼女よりは強いままだが…少しは弱くなる。全てを…任せた。)」 そう言うと、声の主はどこかへ行ってしまったような気がした。そして、目の前の現実へ、とっさに引き戻された。 (光…光…太陽!!) ラズマはとっさに思いついた。そして、空を見てみた。少しだけ明るい。確実に太陽が昇っている。 「(ティア、粘れ!!もう少しで太陽が出てくる!!それまでがんばって!!)」 「(…分かった。出来るかどうかは分からないけれども…。粘ってみる。)」 すると、ティアはとっさに防御態勢へと入った。 「ティア、光の壁!!」 ティアは、光の壁を繰り出し、ウェイの炎の威力を弱めた。しかし、まだ強い。 (太陽…早くでてくれっ…) そうラズマが思った時、奇跡は起きた。太陽が風の民を照らし出し、中にいる物をくっきりと映し出した。 「グルルル…ガウウゥゥ…」 ウェイは苦しんでいるようだ。太陽の効き目は抜群だった。 「よし、ティア!今だ、サイコキネシス!!」 ティアはもう一度サイコキネシスを使った。…今度は当たった。ダメージは普通と変わらない…どうやらあの薬は攻撃だけを上げるようだ。 「グルルル…」 相手は光に苦しめられていた。そのためか、ウェイの火炎放射も外れた。 「よし!!ティア!!最期のサイコキネシス!!」 「ラールー!!」 ウェイは倒れた。勝負はあったようだ。しかし、ヤイバはこういった。 「…どうやら君は本当の強さを知らないようだね…」 すると、いきなりウェイが動いた。倒れたはずなのに!! 「この薬にはもう一つ効果があるんだよ…。『不死の体』。たとえ体力が無くなろうと、こいつは戦うことを止めないんだよ…。」 嘘だ…そうラズマはまた思った。体力がもう無いのに戦うことを止めない。ウェイはぜいぜいと荒い呼吸をしながらもまだ戦う姿勢だ。 そして、ある言葉が脳裏をよぎった。 …「僕は、君の想像力で力を発揮できる。…僕は現実にはでられないが、君に力を貸す。…忘れないでくれ…。君は、心が最大の武器だ。力だ。決して腕力だけが強さではない。」… 今さっき、自分に声をかけてくれた者が夢で言った時の言葉だ。そして、ラズマにまた、あの声が聞こえた。 >「(…思い出してくれたか…)」 >「(うん。でも、どうすれば…)」 すると、頭に響く声はこういった。 >「(僕には今、あのポケモンにかかっている物を浄化する力がある。…あのポケモンの左前足をよく見てみろ。)」 そう言われてウェイの左前足を見た。…一匹の龍が飛んでいるシルエットが見える。 >「(見えたみたいだな…そこをよく覚えてもらいたい。…今から僕が指示する。その通りにしてくれ。)」 >「(えっ!?…ちょっと…)」 …また消えてしまった。その瞬間、ラズマの手に何か光る物が握られた。そして、その光が無くなった時、その正体が分かった。…弓だ。 >「(弓を引け。)」 >「(えっ…でも矢が無い…)」 >「(良いから早く!!)」 ラズマは声に言われたとおりに弓を引こうとした。すると、引いた方の手に、矢のような物が持たれていた。…電気で出来た矢だ…バチバチと音を鳴らしている。 >「(それを今見つけたあの印に射れ!!)」 >「(!?でもそれじゃあウェイが痛いよ!!)」 >「(それは闇に以外は痛さを感じさせない。つまり闇を浄化するための矢だ。…射るんだ。)」 >「(…分かった。)」 ラズマは矢を印に向かって射った。すると、矢はウェイの印へと飛んだ。 9章 救出 終わり |
リン♪ | #10★2006.11/17(金)22:09 |
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10章〜風の水晶〜 「ギャァァァ…」 矢は見事にウェイの『印』へと命中した。ウェイの周りから感じられていた邪気が無くなっていき、電撃の矢も徐々に薄くなり、邪気も電撃の矢も…消えた。と、同時にウェイがばたりと倒れ、ラズマがウェイの元へと駆け寄ってウェイを抱えた。そして、ヤイバが言った。 「ば…バカな…お前にもそれが使えたとは…」 そして、ラズマはこういった。 「心無き物に勝ち目無し…心があるから負けた時に、失敗した時に悔しいんだ。…心があるからこそ強くなれるんだよ…」 「クッ…」 そうヤイバは言った。そして、風の民を去っていった。 ヤイバが完全に去っていくのを見届けたラズマは、ウェイを優しくその場に寝かせ、もう一度擬人化ボタンを押し、ピカチュウの姿へと戻った。 「ウェイさん!!」 ラズマ、アル、ティア、ガルの4人が声を合わせて言った。しかし、ウェイはまだぐったりとしている。 「ヤイバ…ウェイをこんな事にして…許せない。」 そうラズマが言った時、ガルがサラッと言った。 「黒龍って、全国でもこんなひどいことをしているのかな??」 「そ…う…かも…しれ…ない。」 とぎれとぎれに、やっとの思いで声を出しているのは、ウェイだった。 「ウェイ!!」 ラズマが驚いたように言った後、付け足した。 「…さん。」 「まっ…た…く…あい・・つは…」 ウェイは震える足で、立ち上がった。 「ラ…ズマ…ついてきてくれ…」 ウェイは震える足で立ち上がった。ゆっくりとラズマ達の前へとでていき、どこかへ案内してくれた。 しかし、傷だらけだったはずのウェイと、しばらく歩いているうちに、ウェイの歩き方、声、呼吸が元に戻っていった。ラズマはウェイの傷が完全に治ったと思い、うれしかった。 そして、あの、風車のふもとへと案内してくれた。そのふもとには1つの小さな小屋があった。その小屋にだいぶ昔から飾られているような感じの、何かの彫刻があった。青く、オオカミ…だろうか。そんな感じがした。 「この者は、私たち、風の民が昔から祭っている英雄、『ルカリオ』。」 そして、ラズマが不思議そうに言った。 「る・・か…りお??」 「そうだ。彼の勇姿は全ての見る物を圧倒させたと言われている。自分のことを最後方に、味方の事を前方に考えていた。そのルカリオが言った。『風はどこにいても吹き続けている。風があるところに、この世はある。風は、誰の心にもある物だ。』と。そのルカリオが住んでいたところ。それが、ここ、風の民だ。ここはそんなルカリオの勇姿をたたえ、村人全員が警察という特性を持った民だ。」 「へぇ…。」 ラズマは想像してみた。どんなことがあっても他の人を最優先に、自分は一番辛い場面で出てくる…素敵ではないか!! 「凄いや!!やっぱり、その勇姿はどんなに時間が経っても色あせることはないんだね!!」 「あぁ。」 そうウェイが言った時、いきなりウェイがうめき声を上げた。 「ぐぅっ…」 そして、バタンと言う音で、ラズマはハッと彼女の方を見た。…倒れていた。痛さをこらえて話をしてくれたらしい。 「ウェイさん!!大丈夫ですか??」 「いや…ど・・うやら…また傷が…痛み出したみたい・・だ…」 ラズマは彼女がとても辛そうに見えた。…いいや、『見えた』じゃない。事実だった。 「ウェイさん!!」 「私の…ことを…聞いて…く…れるか・・??」 「もちろんです!!」 「ならば…その…像が・・持っ・・ている青い・・水晶に…手を・・かざしてくれ…」 ラズマは言われた通りにして、手をかざした。すると、その水晶が反応するように光った。そして、光が抜け出し、ラズマの真上へと移動した。 (暖かい光だ…ひなたぼっこをしている感じだろうか…いや、それ以上に気持ちいい…) >「(風の水晶の力…想像せよ…ラズマ…)」 またあの声が響いた。 >「(風の水晶の力??)」 >「(水晶に使える力を…想像せよ。)」 >「(想像って…そういきなり言われても分からないよ…)」 すると、頭に響く声はこういった。 >「(君は…攻撃を求めるか…防御を求めるか…その力はどんな力か…考えてもらいたい。そして、その想像した物の力を、僕が貸す。…想像してもらいたい。この光が無くなる前に…)」 >「(…分かった。…っ!!…)」 すると、光は一層強くなり、ラズマの胸元まで降りてゆき、輝きを無くして…消えた。 「ラ・・ズ…マ…お…前は…やはり…」 すると、ウェイはぐったりとした。しかし、ただ単にぐったりとしていただけではなかった、ラズマが気付くと。もう、話す力もなく彼女は虫の息だった。 「それじゃあ、早速使わせてもらうよ…。」 すると、ラズマの周りが青く、光った。 ―あの、ピクシィが初めて気付いた光と同じ波長…しかし、一段と強く光った。 「シャウナ!!」 そうラズマが言った時、天に大きな翼をつけた天使が現れた。その天使は翼でウェイを優しく包んだ。すると、ウェイの傷がどんどん治っていった。 そして、天使が消えた時、ウェイは目を覚まし、いつも通りのようになっていた。あの正義感あふれた声、身のこなし、目の輝き… 「ラズマ…」 ラズマはブイサインをウェイに出した。 「水晶の力♪」 すると、ウェイは遠くを見た後に、ラズマをもう一度見つめて、こう言った。 「…お前は…」 10章 風の水晶 終わり |
リン♪ | #11★2006.11/17(金)22:10 |
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11章〜神〜 「…お前は…この水晶の力が使えたのか??」 「ぇ??…はい。」 「やはり…伝説は合っていた…。」 「伝説って…?」 「…『神族(シンゾク)』だ。」 「…何度も言って悪いんだけれども…『神族』って??」 すると、ウェイは少々悩んだように下を向いた。 「話は長くなるが…」 ラズマは即答した。 「構いません。」 「そうか…もう、どれくらい昔になるのだろう…この世界が出来て間もない頃だっただろうか…その原点は遙か昔のことだった。」 そして、ウェイはラズマ達の方を向き、話し始めた。 「その遙か昔、人とポケモンはまだバラバラだったんだ。しかし、時が経つに連れ、人々とポケモンは、共同で暮らすようになった。そして、だんだんと、小さな『くに』が出来た。 …それが間違いだったのだろうか…それぞれの『くに』では、またそれぞれの長所があった。武道、知恵、共同…だが、その力をもちろん全て、自分のくにの物にしようと、人々はポケモンを使い、戦争を起こした。 だが、ただの戦争ではなかった。約500年にもなる大きな戦いだった。当然、多くの死者が出た…これからも多くの死者が出て、やがて世界に人やポケモンがいなくなってしまう、『死の世界』へとなってしまうと言われるほど、長く、長く、全く意味の無い戦争だった。 しかし、戦争が始まり、500年が経ったある日…人々が争いをしていた時、天から一本の光が出てきたんだ。…そして、その光が消えた時、空に、『何か』が出てきた。」 ラズマは疑問に思った。そして、その思ったことを、ふと、口に出していた。 「『何か』って??」 ウェイはまた下を向いてしまった。 「…分からないんだ…あくまでも、伝説だから。しかし、一説には、『神の使い』と言う物がある。ふと出てきた物だから… だが、1つだけはっきり見えた物がある。…『銀色で、十字のネックレス。』」 そして、ラズマはある言葉がふと出てきた。 ―天に白い、電撃をまとった龍が現れた。その龍は、目は輝いて赤い。額には蒼い宝石のような球が1つ、埋まっていて、中国の伝説で出てくるような、蛇のような体に、大きな羽が背中に4つ付いていた。上の2つの羽は大きく、鳥のような、美しい羽毛の大きな羽、下の2つの羽はプテラノドンのような細長い羽、でも、4つとも白く、美しい…。首もとは、サンダースのようなチクチクとしたような体毛。そして何よりも…首に銀色で、十字のネックレスをしていてた。その白い龍は見る物を圧倒した。― …シンから聞いた物だった。 「それって、『龍』じゃない??」 「龍?…新しいな。」 ラズマは、自分でも気がつかないうちに喋っていた。その言葉に、ウェイが笑いを込めて言っていた。そして、また話し始めた。 「話を戻すが、その『何か』は、光を四方八方へと広げ、…争いを止めたという。そして、人々はまた、ポケモンと離れた。…ポケモンを野生へと帰したと言うのが正しいのだが。そして、その人々から野生へと帰されたポケモン達は各世界へと戻っていった。 …ある者達を除いては。その者達は、ごく数名だった。だが、皆偉大な権力を持っていた。そして、そのポケモン達は皆で、各世界に7つ、『民』を作ることを話し、そこで世界を救った『神』を祭ろうと決心したのだった。 そして、その神を祭ると同時に、神がまた戻ってきた時、自分達も協力しようとも言った。その協力させようと皆が力を合わせ、この、『水晶』を作った。」 そう言った後、ウェイはルカリオが持っている青い『風の水晶』を見た。それにつられ、ラズマ達も水晶に目を向けた。 「その水晶は各民に渡され、『神』だけが使える力を閉じこめた。…これが伝説であり、その水晶を使える力を持つ者を、『神族』と呼んだ。」 そして、ラズマは気付いた。 「…僕が…神族??」 「そうだ。」 ラズマについていた3人がえぇっ!と声を上げた。 「お前は、世界を救うんだ。神は、皆が危険になった時、現れる。…それが…今だ。」 「もちろん…世界を…救います!!」 すると、ウェイがうなずいた。 「なら、次は、ここから南西に行くとある、『火の民』へと向かいなさい。…危険はもちろんついてくるが。」 「はい。」 そして、ラズマはウェイに言った。 「では、明日の朝、出かけます。」 「分かった。それまでに、旅の支度をしておくと良いだろう。」 太陽が沈みかけている。ラズマ達は、自分たちの部屋へと戻り、旅の支度をした。するともう周りは暗くなっていた。 「おやすみ。」 皆でそう言った後、ラズマは眠りに入った。 11章 神 終わり |
リン♪ | #12★2006.11/17(金)22:25 |
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12章〜シャウル〜 >(まただ…真っ暗闇の世界…) >ラズマは真っ暗の夢の中にいた。しかし、ダイヤ型の者はいなかった。…連続して二日目…偶然としか言いようがないのか… >「…立派だった。」 >突然あの声が響き渡った。 >「いつもの声の…人(?)だよね。」 >すると、一呼吸おいて、ダイヤ型の者が出てきた。 >「あぁ…。そうだ。…立派だった。君の勇気、思いやる心…」 >「いやいや…」 >そう言うと、ラズマは少し照れくさそうに頭の後ろをかいた。そして、ダイヤ型の者が言った。 >「心は全てのエネルギーの源とも言って良いものだ…そして、その心に力は比例する。僕も、君も。」 >「それじゃあ…心があればどんなときでも勝てる??」 >すると、ダイヤ型の者は黙ってしまった。そして、重々しそうにこういった。 >「そうとは限らない…心があれば勝てる条件…それは、『思う心』と『信じる心』…そして、『復讐心』…この三つが最高になった時、力は無限と化する…」 >「そうなんだ…あの時には、ウェイの心を『思う心』、ウェイを助けられると『信じる心』、黒龍への『復讐心』…この三つが高まったから強力な矢が出来た…」 >「分かったようだな…」 >そうダイヤ型の者はつぶやいた。そして、ラズマが唐突に言った。 >「…名前は何?」 >「…名前??どうしても言わないといけないのか??」 >「もちろん…君と知り合ったと言う印に。」 >すると、ダイヤ型の者は恥ずかしかったせいか、声が小さくなった。 >「…シャウル…」 >すると、ラズマは嬉しくなって、飛び跳ねそうになった。 >「シャウル…いい名前じゃないか!!これからよろしくね!!シャウル!!」 >そして、ラズマの頭にいくつもの疑問が浮かんで来た。それを端から端まで言おうとしたが、最小限に絞って言った。 >「シャウル…君は、『現実世界に出てくることは出来ないけれども、力は貸せる』って言ったけれども、どんなことに力を貸してくれたの??」 >「主に2つ…まず、『心を読める』と言う力…。君が擬人化した時、心が読めただろう…あれは僕が貸した力…普通の人は心が読めない。」 >「そう言えば…」 >ラズマは思った。ガルとも心ではなせるようになっている…それに、ウェイの心も読み取ろうとした。 >そして、二つ目の事をシャウルが言った。 >「2つ目は、あの時君に渡した『弓と矢』。あの弓矢は私が作った物であり、矢は君の心の大きさで力を変える。」 >ラズマは思った。確かに、あの時、シャウルと弓矢が同時に出てきた。 >「君には色々と力を借りちゃっていたみたいだね…」 >そして、2つ目の疑問が出てきた。 >「君は本当に現実世界にでられない??」 >すると、シャウルは言った。 >「…あぁ…」 >あまりにも答えるまでの間が開いていた。きっと何かを考えていたのだろう…ラズマは怪しくなり、さらに聞き込んだ。 >「本当に??」 >「…ほ・・本当だよ。」 >やはり怪しい。 >「信じて良いね??」 >「…しょうがない…」 >やはり嘘だった。現実世界にでられて、シャウルの姿を見られるのではないかとラズマは胸を躍らせていた。 >「始めの方で言った三つの心、それが限界を超えて高まった時、それも、果てしなく高くなった時に限って僕は出てくることが出来る。しかし…」 >「しかし…?」 >「君の体力が全てあり、無傷だとしても…立っていることがやっとになってしまうほどの傷を負う。」 >「…」 >ラズマの心境は複雑になった。シャウルに会える。立っているだけでもやっとになってしまう傷を負う。しかし、それは体力が全部ある時の話だ。もし体力が半分も無くなっていたら…呼吸をするのでもやっとの思いになってしまうのだ。 >「だけれども安心してくれ。僕と君の心が一致しないと出てこない。」 >「そうなんだ…。有り難う…色々と話が出来たよ、シャウル。」 >「いや…これから世話になるから説明をしていただけに過ぎない…。」 >「それじゃあ、火の民に行こう…。そろそろ朝だと思うから、起きなくちゃ。じゃあ…」 …[スゥッ…] (…戻ってきた。) ラズマはみんなが寝ている中にいた。予想通り、もう朝日が昇っていた。 そして、みんなが起きて火の民へと行く準備が出来て、ウェイへ、最後の挨拶をした。 「ウェイさん、本当に有り難うございました。」 「いやいや…それよりも、君が世界を救うことを願っているよ。…そうだ、情報が欲しくなったら、風の民の住民に聞くと言い。昨日もいったが、この風の民の住民は全員が警察だ。そのため、様々な情報を持っている。我らの民を…活用してくれ。それでは…」 「有り難うございました!!」 ラズマ達が1つおじぎをして、南の門へとでて行くところを、ラズマ達の姿が小さくなるまでウェイが見送り、小さく呟いた。 「ありがとう、小さな神様…」 4匹は火の民へと向かって行った。…新たな仲間を連れて 12章 シャウル 終わり |
リン♪ | #13★2006.11/18(土)20:32 |
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13章〜到着〜 「ねぇ、ラズマ…地図って…どこにあるの??」 風の民を出てから結構歩いた頃に、ティアがつと言ってきた。 「…ぃ。」 ラズマは小さな声で言った。しかし、ティアには聞こえなかった。 「何??」 そうティアが質問したら、ラズマは苦笑いを浮かべていた。その表情だけで、やはり…という答えが出てきた。 「どこにあるか分からない…」 まぁ仕方がない…とティアは言いたかったが、言えなかった。そして、ガルが割り込んできた。 「どうするの??」 ラズマは黙ってしまった。しかし、アルの一言が出てきた。 「風の民の人たちに頼んでみれば??ほら、ウェイさんが言ってたでしょ、風の民の人たちって、全員が『警察』だって…」 アルがそう言った時、さっきまで困っていたラズマの表情がぱっとゆるんで笑顔が出てきた。その代わり、ティアが少しうつむいてしまった。 「そうか!!アル、有り難う!」 「いやいや…」 アルは珍しく照れた。 そして、そこへ、グラエナが通りかかった。 (風の民とは結構離れているけれども、1人で歩いている…パトロールだろうか…だとすると…) ラズマはこう考えた後、すぐに訪ねた。 「あの…風の民の人ですか??」 すると、嬉しい返事が返ってきた。 「そうだ。何か用かな?」 やっぱり風の民の人だった。そして、そうだと分かるとラズマは、 「ちょっと、地図をもらえたら嬉しいのですが…」 と言った。だいぶ控えている。 「分かった。」 そうグラエナが言うと、背中にあるリュックから地図を素早く取り出した。そして、ラズマに渡した。 「はい。また何かあったら、気軽に聞いてね。」 そして、グラエナが立ち去ろうとした時、ラズマはふと聞いた、 「もう一つ良いですか??風の民の人とそうでない人の違いを教えてください。」 そして、グラエナは単刀直入に、なおかつ分かりやすく言ってくれた。 「左手首にある『コレ』が有るか無いかだけだ。」 そして、グラエナはラズマに左手首にあるスカーフを見せた。綺麗な薄緑の色をしている。 「コレが、風の民の者であるか、そうでないかの印である。それだけだ。ほかに聞きたいことは?」 「いいえ、有りません。有り難うございました」 そうラズマが言った後、グラエナはコクリとうなずいて去った。 「ねぇラズマ、早く地図を見せてよ」 アルが言っていた。 「今僕たちが、どこにいるか不安で…」 ガルが言った。 「よし、分かった。」 ラズマがそう言って、地図を広げた時、皆が目を大きくした 「うわぁ…」 地図は高性能だった。様々な所が立体となっていて…なおかつ分かりやすい。風の民の最新技術、全てがここに集まっているようにも思えた。 今僕たちがいるところがここで…ラズマは自分たちのいる場所に指を差した。 「ここから…あっ!!そう遠くもないみたいだよ!!」 ラズマ達がいるところと、火の民は目と鼻の間だった。 「早く行こうよ!!」 ティアが言った。 「もちろん!!」 ラズマが元気に返した後、4人は歩き出した。 そして、ついさっき、みんなと話をしたかのような気でいた4匹は、すぐに火の民の門へついた。 「ここで間違いないよ。」 そして、皆で門を開けたその時だった。 「うわぁ〜」 皆がその光景に目を奪われた。 13章 到着 終わり |
リン♪ | #14★2006.11/24(金)23:15 |
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14章〜火の民〜 ラズマ達が見たその火の民の姿、それは芸術に満ちあふれた町だった。有りとあらゆる所に器用に、細かいところまで見逃さずにしっかりと金属で作られている置物が所々にあった。 「す…すご〜い!!」 そうティアが言い、辺りをきょろきょろと見回している。 と、その時だった。 [ピッピ…ピッピ…] ラズマの持っている、さっきグラエナからもらった地図が鳴り出した。 「ん??どうしたんだろう…」 そう不思議そうにラズマが言った後、手に持っていた地図を広げた。すると、画面が宙に打ち出された。 「どうやら着いたようだね。」 「ウェイさん!!」 ラズマの持っていた地図は、辺りの地形の代わりにウェイが映っていた。そして、ラズマは挨拶の代わりにこう言った。 「ウェイさん…どうして連絡が取れるんですか…?」 すると、ウェイは風の民で出会った時とは変わらないままの口調でこう言った。 「君の持っている地図だよ。君の持っているその地図は『通信』と言う物が出来るんだよ。たとえば、今私がいるこの場所、その場所を、その地図で探すとすると、右側にある3つつのボタンのうち、真ん中の方のボタンを押してみれば分かる。それが『探索』、この地図を持っている者は全て赤い点で表される。そして、その中で特定の人物を捜す時は、その人の名前を言えばその者を青で表して探してくれるよ。そして一番下のボタンが―」 「『会話』ですね。」 ウェイが最後の言葉を言わないうちにラズマが答えた。 「その通り。君は覚えが速い。…それでは、私からはこれしかない。分からないことは近くの人に聞くといい。それでは…」 「あっ…ウェイさん、1つだけ聞きたいことがあります。」 ラズマがふと言った。それはラズマにとって大事なことであった。 「あの…水晶の場所は…どうやって見つければ…」 「あぁ、そうだった。君には『水晶』が必要だったんだな。じゃあ、私は単刀直入に言う…私には分からない。」 「えぇ!?じゃあ、どうすれば…」 ウェイは一息ついてこう言った。 「民には必ず『長老』がいる。その人に話を聞けば済むことだ。」 「あっ、なるほど〜…」 「もう無いな。じゃあ、切るぞ。」 そうウェイは言った後、本当にすぐに会話を断ち切った。0.何秒かの話だった。 「それじゃあ、聞いてみようよ。」 アルが言った。その後、ガルが続けざまに言った 「どうやって探すの??」 一瞬皆が凍った。辺りは暖かいのに、ツーッと風が通りすぎたようにも思った。 「あっ…あれじゃ無いの??」 ティアが指を差して言った。ほかの家よりも少し大きく、豪華な感じがした。 「とりあえず行ってみようよ。」 ラズマがみんなに言った。そして、3分も歩かないうちに着いた。近くでみるとより一層大きく、豪華に感じる。 「それじゃあ、中に入ろうか。」 ラズマはそっとドアを開き、か細い声でおじゃましますと言おうとして、部屋の中を見た時、全てを驚かされた。 ありとあらゆる炎タイプのポケモンが自らの炎で鉄を熱し、その熱せられた鉄を叩き、器用に細かいところまで1つ1つ手作業で工芸品を作っている。 「みてみて!」 ティアの視線の先ではガラスの工芸品を作っている。鉄の作り方と少々違うようだが、器用なことには代わりはない。 「どうだい?うちらの作品は?どれもこれも綺麗だろう。」 ふと背後から誰かが言ってきた。ラズマが振り向くと、そこには風の民にいるウェイと同じぐらいの年頃のバクフーンがいた。 「あ、すいません。勝手におじゃましちゃって…」 すると、そのバクフーンは笑ってこう言った。 「無理もないさ。こんなに面白くて、綺麗なもの、みてたら何年でも飽きないよ。」 そのバクフーンは笑いつつも自慢げな表情をしていた。そして、そのバクフーンの表情に見とれていたのか、本来の目的を忘れそうになった。 (…!そうだ、村長さんを探さなくちゃ) いつまでもこの場所にとどまっては先が見えないことに気がつき、ラズマは唐突に聞いた。 「あの…この民の村長さんは誰ですか?」 すると、バクフーンは少々動揺した様子を見せた。ラズマの質問が唐突だったのだろう。そして、バクフーンは気持ちを正し、腕組みをしてこう言った。 「俺がこの民の長だ。」 「えぇっ!?」 風の民ではあんなに真面目であり、1つも動揺しないウェイだったのに、と思った事が一言として、短く出てきてしまった。 でも、この大きな工場部屋の中で1人監視しているのではやはり『偉さ』が多少にじみ出ているようにも見えた。 (よし、この人を信じよう…) そうラズマが少々心もとなく決心した時、バクフーンはふと言った。 「俺の名前はエン。さっき言ったとおり、この火の民の長だ。 この民は技術があふれている。村の至る所でその技術を生かした工芸品が飾ってある。君も気付いただろう?」 「はい!とても素晴らしい作品の数々でした!!」 ラズマはふと出てきたエンの会話に乗ってしまった。と、言うよりも『乗せられた』と行った方が良いほどだった。そして、その、『乗せられた』せいで自分の名前をまだ言っていないことに気がついた。呼吸を整え…よし、乗せられない、乗せられない… 「…名前、まだ言ってませんでしたね。僕の名前はラズマです。エンさん、お願いします。」 「ラズマって言うんか…いい名前じゃないか…君は、どのような目的でこの民に来たんだい?」 「水晶を探してきました。」 よしっ、言えた。そうラズマは思って心の中で自分を褒めた。後は水晶の場所を教えてもらえれば… しかし、帰ってきた言葉は意外そのものだった。 「…水晶って何だい?」 「ぇ?」 あまりの意外さに自分でも分かるほどの小さな言葉しか出てこなかった。 「(水晶を知らない〜!?…)」 ウェイは知っていたのに!?どうして?それともこの村長さんは偽物?または… めまぐるしいほどに回転する頭にラズマはほぼパニックだった。 「あっ…でも、そんなの有ったような無かったような…」 「えっ!それじゃあ、水晶はどこにあるんですか??」 「…さぁ…場所は分からないけれども…確かあったよ。」 あっさりとした返答だった。どうにかしても思い出してもらわないと… すると、ふとティアが言った。 「あの、この民が生まれたきっかけのある本とか…有りますか?その本に水晶のことが載ってるかもしれないんで…」 何を言おうか一生懸命になっていたラズマに新しい物が生まれた。 そうだ、水晶と共に生まれた民に関する物を調べれば何か分かるかもしれない… 「あの、この民には博物館ってありませんか??」 博物館なら歴史のことは問題ない、と思ったアルの言葉だった。 「あぁ、あるとも!あの、『空炎塔』の…4階あたりだったっけな…まぁそこにあるはずだよ。」 アルの考えは見事に的中していた。そして、ラズマ達は急いでその火の民一高いと言っても良い、ガラス張りの空炎塔へと向かった。 「(結構な時間はかかったけれど、もうすぐで水晶の元へと着く!)」 ラズマは胸を躍らせてワクワクしているのか、誰よりも速く、先陣を切って進んでいた。 そんなに時間は経たないで空炎塔に着いた。これも火の民の技術が生きているのか美しい。 「早く中に入ろうよ」 ガルもワクワクしているようだ。 「うん。」 ラズマは一言、喜びの言葉を込めて言った。そして、空炎塔に、足を踏み入れた。 14章 火の民 終わり |
リン♪ | #15★2006.11/27(月)20:49 |
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15章〜空炎塔〜 「これが空炎塔…」 ラズマの視界には火の民で生まれたであろう工芸品がびっしりと飾られていた。ある野生のポケモンが一匹吠えている物があれば、何匹もが一斉に戦いを繰り広げている物もあった。 しかし、今すぐにでも動き出しそうである作りと、ガラスから入った光が差し、1つ1つの魂が輝いているのはどれも変わらなかった。 「ここは…」 ラズマがふと掲示板に目を上げて、そこにかかれた物をそのまま言った。。 「…1階 美術館、2階 美術館、3階 図書館、4階 歴史博物館、5階 地理博物館、6階 展望台…」 どうやらこの空炎塔は6階建ての建物らしい。ラズマ達は現在1階の美術館にいる。ここから1、2、3と上がってやっと歴史博物館に行ける。 「早く4階にいこうよ」 アルが言った。1階にある美術品を全て見てみたいとラズマは思ったが、それは時間がある時の話である。今は時間がない。ごくゆっくりだが、こうしている間にも黒龍は勢力を広め、世界を蝕んでいるのだ。 「そうだね。」 ラズマは少々考え事をしながら返答したせいなのか少々抜けた声だった。 ふと気を戻し、階段へと近づいた。すると、妙な物が目に飛び込んできた。 「(あれ…下へと続いている階段がある…掲示板にはなかったのに…)」 どうしてだろう、掲示板にはないのに地下へと続く階段が不気味に、薄暗くそこへあった。最近作られたので掲示板には載っていなかったのか?それとも進入してはならない禁断の扉へと続く道なのか…ならばどうして… 「ラ〜ズ〜マ〜…」 ティアが呼んだ。ふと声の方を見たらもう4人は階段を上っていた。よっぽど階段に気を取られていたのだろう。 「おい、どうした??上らなくても良いのか?」 不安そうにエンが聞いた。 「い…いえ、上りますっ!」 そう慌てて返答した。 階段を1歩1歩上って各階に着くごとに景色が変わる。当たり前のようなことだが神秘的な物のようにも思えた。2階の美術館、3階の図書館…しかし、ラズマにはその光景が映っていないで、ずっと足下を見つつも地下へと続く階段のことを考えていた。途中階段につまずいた。危なく階段を上り、とうとう4階の歴史博物館。 「着いたぞ。」 エンがみんなに言った。ラズマも考え事を取りやめ歴史博物館の階に目をやった。すると、様々な資料や品が納められていた。その中に紅く輝く、日も沈み書けた不気味な階を照らしている物があった。 「(あれが水晶!)」 意外と簡単に水晶が見つかった!そう思い、紅く輝く物に駆け足で近づいていった。 「こらこら、静かに歩きな!」 エンの声が響き渡る。 そして、ガラス越しに、ラズマはまじまじとその紅い発光物体を見つめた。そして、気がついた。 「…水晶じゃない…」 ラズマは少々落ち込み書けているところへ、エンがやってきた。 「これは、伝説の鳥ポケモン、ファイアーの火だ。」 「ふぁ…ファイアーの…?」 「そうだ。これがあったのは確か…今から1000年ほど前になるかな…」 「1000年!?」 ラズマは驚いた。と言うよりも驚いて当然だった。1000年の間、その火を燃やすための物もなく、たった今出てきたような新鮮な紅い色をしていた。 「ねぇラズマ…」 ふとティアが聞いてきた。 「もしかして…この民を作ったのって…ファイアーなんじゃないのかな…ほら、だって風の民も、民を作ったポケモンの像があったでしょ?」 そうだ!確かにそうだ。民を作ったポケモンの像が各民にあり…そこに…水晶がある! 「エンさん!ファイアーの像って、この民のどこにありますか??」 水晶を見つけたい気持ちと、ひらめき、うれしさで急いでラズマが問いかけた。 「ファイアーの像…?いや、そんな物、この民にはなかったよ、この空炎塔上にも。」 「(空炎塔上??)」 ふと呼ばれたように記憶が出てきた。地下へと続く階段だった。 「(空炎塔上にないんだったら空炎塔下には…)」 ダッと言う音を出してラズマは駆けだした。そして、猛スピードで階段を駆け下りた。 「(やっぱり、あの地下へと続く階段には何かがあったんだ!)」 目の前いっぱいに広がる螺旋状の階段。走れば視界があけてくる。しかし、走って無くなった分の段数がまた新たに現れるまるで録画した映像を何度も何度も再生しているようだった。 今か今かとラズマは思い、1階へと来て…見つけた。あの不気味な地下へと続く階段を。 「…ここに…あるはずだ。」 ラズマは階段を下ったせいで途切れる息を言葉にしつつ、自分に言い聞かせ、その階段に足をかけた。 15章 空炎塔 終わり |
リン♪ | #16★2006.11/29(水)22:56 |
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16章〜空炎塔地下〜 途切れる息と心臓の大きな鼓動は走ったせいと嬉しさが交わっているからだと、ラズマは思いつつ、階段を下っていった。 しかし、階段を下り終わった後、ラズマはふと足を止めた。 「…暗くて遠くが見渡せない。」 特に誰へと言うわけでもなかった。こぼれた言葉が天井や壁に跳ね返って妙なエコーをかけた事が、ほとんど何もない部屋であることを物語っている。 「ラズマ〜」 一瞬ラズマはぎょっとした。ぎょっとした後にアル、ティア、ガルが姿を出した。声の主はその3人だった。3人とも息を切らしている。 「はぁ…、はぁ…、ら…ラズマったら…急に凄いスピードで…下りてっちゃうんだから…」 一番息を切らしていて苦しそうなのに、ティアが言ってくれた。 「…ここ、真っ暗だね…」 途切れることのない息で語ったのはアルだ。浮いているから疲れることは無いのだろう。 しばらく間を開けた後、ラズマはガルの方を見た。ガルは体中を震わせていた。 「…ガル、もしかして怖いの?」 「…」 ズバリ的中。体中を震わせて、血の気が少々引いている。ガルって、意外と臆病なんだな…そうラズマは思った。 そして、そう思ったと同時にふとある人物が出てきた。 「あれ??エンさんは?」 そう言えばエンがどこにも見あたらない。 「ホントだ…私達が階段を下りるまでは付いてきていたんだけど…どこ行っちゃったんだろ…」 ティアがさっき下りた階段を見上げて言った。肝心な時にどうしていなくなってしまったんだろう…それとも逃げたんだろうか… でも、今はそう思ってられない。水晶はすぐそこにあるはずだから。 「みんな、気を付けてね…全然見えないから…」 そう忠告して、ラズマは進んでいった。 「…ホントに何も見えないね…」 ラズマのすぐ後ろにいるティアが耳元で囁いた。それはまるで独り言のようだった。しかし相変わらずガルの気はよく伝わる物だ。ティアと場所を挟んだ所にいても恐怖の気しか感じられない。それをずっと浴びているとこっちもどんどん怖くなっていきそうだ。 [ゴツッ]「アイタッ!」 歩いていたラズマの顔に何かがあったのだが暗くてよく見えずに、そのまま勢いよくぶつかってしまった。…痛いジンジンする。 でも、暗くて何がぶつかったのかよく分からない。そう思ってさわってみると、それは氷のように冷たく、ザラザラしていて、とても硬かった。なおかつとてつもなく高くて大きい。 「(何だろう)」 そう思い上に視線を上げた。しかし、やはり暗さが邪魔してよく見えない。 一生懸命見ようとしているラズマの耳に声が入った。 「お〜い」 遠くの方だ。そして、その声は誰の物であるかがすぐに分かった。ラズマは声の方へと体を向けて、大声で言った。 「エンさん!」 そこで何してるんだと聞かれたが、聞きたいのはこっちだ。一体どこに行ってたのか… 「暗くてよく見えないんです!」 「分かった!ちょっと待っててくれ!」 そう言うと、赤い光が一瞬出た。火だった。そして、その火が右側の壁に掛かっていた、ラズマ達には気が付かなかった松明をゆらゆらと燃やした。少しだけ明るくなった。 すると、ラズマはふと気が付いた。あの壁に掛かっている松明の隣にも松明が…幾つも続いてる!! 「エンさん!一直線に火を付けられますか??」 「もちろん!!」 そうエンは言うとゴウという音を上げて火が一直線に出た。それと同時に、火はエン自身が出していることが分かった。 やっぱり松明は一直線に続いていた。そして、左側にも、対照的に松明がある。 「有り難うございます!あと、左側にも!!」 おうと言う声が聞こえたかと思うとまたゴウという音を出して松明を燃やした。すると、辺りがくっきりと見えた。 すると、エンがのしのしとこちらに歩いてきた。 「どうだい?俺の炎は!」 少々自慢げだ。 「す…凄いです!!」 これだけは誰もが褒めることだった。 「で…見つかったようだな…お目当ての物は…」 エンがこちらまで近づいてきたと思うと、ラズマの後ろにある『何か』の上方をまじまじと見上げていた。 ラズマがそれにつられて体をその『何か』へと体をゆっくりと向かせると… 16章 空炎塔地下 終わり |
リン♪ | #17☆2006.11/29(水)22:57 |
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17章〜条件〜 「うわっ!!」 ラズマの声はその日1番、誰よりも大きな声を出しただろう。本当に驚かされた。ラズマのぶつかった「何か」は、巨大な像だった。それも… 「ねぇ、これって…あの、伝説のポケモン、『ファイアー』の像?…大きい…」 ティアが言った。この民を作ったと言われるポケモン、『ファイアー』の巨大な像が建てられていた。 何故だろう、さわってみると、氷のように冷たかったのに燃えさかる炎をまとった羽は見ているだけでも暑くなった。 「これが…ファイアー…」 とてつもない威圧感と、存在感。そしてその力…像1つが全てを教えてくれた。 しかし、ファイアー自身も凄いのだが、その像も凄かった。その像が今にも動き出しそうなのは勿論のこと、しかし、それ以上に炎々と燃やし続けている『魂』を感じた。こんなに迫力を出す物を作れることが出来るのだろうか。そして一体誰がこれを作ったのだろうか… 「これは、代々伝わる物で、約1000年前、この民の村長が作ったらしい。」 エンが言った。なんだ、知ってるんじゃんか…と思ってエンに冗談のつもりで言おうかとエンに顔を向けた時、その気持ちはロウソクの火を息で消したかのように、ふと無くなった。 エンの手には少々傷が付いている分厚い本が一冊有り、その中の一文を読んでいた。 「エンさん、それって…」 エンはラズマの言葉に気付き、目を向けた。そして、それを自慢するかのように表紙を見せつけた。 「これか?これはこの空炎塔の3階にある図書館で見つけたんだよ。まぁ、そのせいでちょいと遅刻しちまったがなあ…」 するとラズマの心の中で何かがあふれる感じがした。エンさん、僕のためにわざわざ図書館で本を見つけてきてくれたんだ…その思いが今までのエンとは違う顔を想像させてくれた。 そしてエンはまた分厚い本に目を落としてこう言った。 「で…これは本物のファイアーを見て作ったらしいんだ。どうやらこのファイアー、相当長生きしていたそうで、もう寿命だと思ってこの像を作らせたんだってよ。…事実このファイアー、これを作った約一ヶ月後には死んじまったらしいけれど…」 「!?ほ…本物を見て!?」 この像には何度も驚かされる。約1000年も前、本物を見て作られつつ、このモデルとなったファイアーはだいぶ年を取っているにも構わずに威圧感を出している。…逆のことを言うなら、年を取っているからこそこの威圧感が生まれるのかもしれない。 「これでもう良いか??」 はい、とラズマが言い終わる前にエンは本をパタンと言う音を立たせて閉じた。 「有り難うございます…僕のために…」 「いいや、なんて事無いさ。ただ…厳重に保管されていたから妙に気になって…」 やはりエンはエンだった。厳重に保管されているからこそ普通の人がさわってはいけないのではないのか?それをエンは私物と言う感覚で扱っていた。…やっぱり大ざっぱなことは変わらないんだなとラズマは心の中で思い、くすっと笑った。 そう思っていると不意にエンがいった。 「それよりも、良いのか?探さなくて…その、『水晶』とか言うのをみっけなくてもいいのかい?」 「あ、そうだった!」 ラズマはすっかりその像に見とれていて本来の目的を完全に忘れていた。別の言い方にするとまたエンに乗せられてしまったのだ。 「あっ、これって、ちょっと色が変だけれども…水晶じゃない?」 アルがいつの間にか別行動していて、ファイアーの片足に乗っけられている、半透明と言っていいほど鈍く透き通るもの。それを見ながら言った。確かに『水晶』と一言で言われて疑問を抱いてもおかしくない鈍い輝きだった。まるで魂を抜かれた『抜け殻』である存在みたいだ。 でも、確かにこの民を作ったとされているファイアーの像に添えられているのだから本物だろう。 「これが…風の民の水晶??なんかちょっと輝きが足りないような気がするけれども…」 「なぁに、塵だとか埃でも積もってこうなったんじゃないのか?きっとそいつらを無くしちゃえば輝くだろう。」 そうエンがいうと牙を出して大きな口を開けた。 (まさか…) そうラズマが思った時には、もうエンは炎を口から出していた。 (えぇっ!?焼いちゃってもいいのか!?) ラズマはエンの大ざっぱさに『抵抗』を通り越して『あきれ』と言う物を感じていた。 そして、エンの炎が水晶を焼き続けていて、いるうちの一瞬のことだった。…[キラッ] (あれ…今、水晶が輝いたような気がしたけれども…) ラズマには確かに水晶が輝きを戻したように見えた。 「エンさん、今、水晶が輝いたように見えましたけれども…」 炎を止め、ん?そうか。と言った後、まだ炎で熱せられて赤くなっている水晶を見つめた。水晶はみるみる赤みを消していき、やがて初めの時と同じ色になった。しかし、輝きが鈍いのは変わらなかった。 「気のせいじゃないのか?」 エンはラズマを見て、いつもと変わらない口調で言った。 「いいえ、気のせいじゃありません。私、ちょっとだけれども、水晶が輝くのを見ました。」 ティアがラズマをかばうように言った。 「確かに一瞬だけれども光りました。でも、その後は…」 「ねぇ、これ見てよ!」 ティアが説明している時にガルの言葉が挟まった。みんなが一斉にガルの方へ目を向けると、エンが持っていた古そうな本を開き、まじまじとあるページを見ているのが分かった。 みんなでその本をぐるりと囲むよう並び、ページをのぞき込むと、そのページには、さっきエンが炎をはいて熱していた水晶のことが載っていた。 その水晶に矢印が引いてある。その矢印を逆側にたどっていくと、火のような絵が載っていた。 「これは…」 ラズマが言った。その言葉に応えるようにエンがいった。 「あぁ。そうだ。『水晶』っつうのはそれと何かが関係するまた別の何かを添えないと本来の力を出してくれないらしいな。」 そうか!そうだったんだ!エンが炎をはいている時に本当に水晶は輝きを取り戻したんだ。その絵の構成のように。しかし、エンの炎ではその力を十分に引き出せない。 エンの炎はかなりの物だった。しかし、それを遙かに超え、なおかつ、この水晶と関係する物は…」 「ファイアーの炎…あの永遠と燃え続けるファイアーの炎だ!」 ラズマは分かったことをそのまま口に出した。あの4階にある、紅く輝く炎を持つファイアーの炎…しかし、それを取り出して良いのだろうか… 「…使えよ。俺が許可する。」 エンが少々低めの声で言った。今回ばかりは冗談じゃない。 「えっ…でも…」 「いいから使え!」 急に元のエンの声質に戻った。 「俺はこの民の長だ。だから、使え!」 「…有りがとうございます!」 ラズマはそう言うとぐんぐんと階段を上り始めた。どんどん、どんどん。そして4階までやってきた。 「これで…やっと…たどり着くんだ…」 ラズマはそのファイアーの炎が入っているガラスの箱ごと持ち出し、慎重に下の階へと下っていった。 17章 条件 終わり |
リン♪ | #18☆2006.11/29(水)22:57 |
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18章〜火の水晶〜 「それにしても、綺麗だな…」 螺旋階段を下りつつ、ラズマはこう思った。ガラスの箱の中で燃えているファイアーの炎。1000年の衰えと言う物の替わりに力強さを語っている。ガラスの底からエネルギーが出て、そのエネルギーが集結し、美しい光りを放っている…そう言ってもおかしくはない。 その炎に見とれていたせいなのか、4階から地下まではすぐに着いた。 「あ、ラズマ、お帰り!」 ティアが言った。そして、続けざまにエンがいった。 「どうやら見っけられたみたいだな。」 みんながラズマの持っているファイアーの炎の周りに集まり、しばらく眺めていた。すると、エンはヒョイとその炎の入っているガラス箱をラズマから取り上げた。そしてガラス越しに炎を見つつ、その炎に語るように、とても優しい声色で言った。 「1000年もこんな所に閉じこめられてちゃ…嫌だよな…お前にはお前の道があるんだからな…」 そう言った後、持っていたガラス箱をそっと地面へ置いた。 「…ちょっとみんな離れていてくれるか??」 ラズマ達はエンに言われた通りに、炎の周りから3歩ほど離れた。離れたことを確認したエンは指をパキパキと鳴らした。そして、右手で拳を作り、ガラス箱の真上に立て、ゆっくりと上げていった。すると、ラズマから『嫌な予感』が出てきた。 「エンさん…まさかこの…」[ガシャアァァン!] ラズマがまだ話している時にエンは突き立てた拳を思いっきりガラス箱へと叩き付けた。叩き付けられたガラス箱はあっけなく割れ、無数の破片をあちこちに飛ばした。残っている物と言えば、ガラス箱の底面と、元々あったファイアーの炎だけだ。そのガラスの底面をエンは素手で持った。 「お前の役目が来たぞ…」 そう言うと、ポイとゴミを投げるような感覚でファイアーの炎をガラスの底面ごと水晶の方へと投げ、最後の底面のガラスまでもが水晶に当たり破片となり、地面へと落ちていった。 その時だった。ファイアーの炎は水晶へと燃え移り、どんどん炎を大きくしていき、水晶と共にあった像を巻き込みながら燃えた。 「あれ…炎が回り出した…」 ガルの言った言葉に間違いはなかった。炎が自分の力だけで、水晶とその近くにある像を取り巻いた…『炎の渦』だ。その渦はどんどん速度を増し、やがて、一瞬渦が大きくなったと思うと、炎が弾けて消えた。弾けた時に飛んだ火の粉が少しの間中を漂っていた。 その火の粉から水晶へと目を移したラズマの口から言葉がこぼれた。 「うわぁ…」 「お望みの水晶って言うのは…これかな?」 ついさっきまでは鈍く、半透明であった水晶。でも、今は違う。輝きだけではなく、真っ赤な色までを取り戻した水晶がそこにあった。水晶だけではない。所々錆び付いていたファイアーの像も、今では見違えるほど綺麗になり、ラズマの姿を反射させていた。 「ほら…さっさとその水晶の近くに行・き・な!」 ふと出されたエンの言葉の最後である『な』が発せられると同時にラズマの背中が押された。背中を押されたラズマは、初めはエンの力のせいで走りたくなくても走ってしまった。だが、その後は急にトボトボと速度を緩め、ゆっくりと水晶に近づいて行った。 (これが…火の民の水晶…) 水晶の近くに着いたラズマは火の水晶の深い赤色に釘付けだった。そして、我に返ると、スッと手を水晶にかざした。すると、 風の民の時と同じように水晶の中から光が抜け出し、ラズマの頭上へと上っていった。よく見ると風の民の物より赤みがかっていた。 >「(水晶発見おめでとう…)」 >「(シャウル!)」 ラズマは水晶のことで頭がいっぱいだったせいなのか、シャウルのことをすっかりと忘れていた。 >「(シャウル…一体どこに行っていた…)」 >「(それはまた後で…今はとにかく深刻な事態だ。)」 ラズマの質問をシャウルが打ち切った。 >「(…分かった。それじゃあ…っ!!)」 ラズマが想像すると、光は輝きを増し、そっとラズマの胸元まで降りてきて、消えた。 すると、辺りはすっかりと静まっていた。 18章 火の水晶 終わり |
リン♪ | #19☆2006.11/29(水)22:59 |
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19章〜再来〜 その静かな地下室を崩さずに、ティアがスッと質問してきた。 「ねぇラズマ、今回は、どんな能力を考えたの?」 「今度は攻撃系?」 「それとも、防御系?」 ティアの後にガル、アルと続いて聞いた。そして、その質問にラズマは一呼吸置いてから答えた。 「実は…今度も防御系なんだよね…その…みんなの自然回復力を高めるというか…早く回復する、って言う能力なんだ。」 へぇ〜、と言う言葉が揃い、1つの声になって出されたようだった。 「ラズマって、防御系好きだよね〜」 「まぁね。」 ガルが発したその言葉に、ラズマは微笑をして答えた。しかし、微笑の裏には正反対の、真顔があった。 (いくら攻撃を選んでも、防御を伸ばさなかったら…旅の途中で僕達が死んでしまう確率は一気に高くなっちゃうんだよ… 死んだら何も得ない。 僕達の旅の意味も無くなっちゃう。 それを分かってね…ガル。) ラズマはティアとアルが話している中に混ざっているガルに、呼びかけた。しかし、呼びかけたと言うよりは、自分しか分からない『独り言』を言った…そう考えた方が正しいのかもしれない。 「それじゃあ…」 エンが次に話す言葉の始めの部分を喋ったら、3人の会話はピタッと止まった。 「もう、ここには用はないんだな…」 「はい。」 エンの問いかけにはラズマが答えた。 「だが、もう辺りは暗くなり始めている。だから今夜はここに泊まった方が良い。それに、腹が空いていないのか??」 「そう言えば…」 確かに『そう言えば』だった。自分たちが旅をしている途中に食べたものは、つい最近、木になっていた『モモンの実』を食べた…だけだ。それに、1人3個と言ったわずかな量だった。なのにお腹がすいていることなど全く気に掛からなかった。…それほど黒龍の侵略の事に頭が使われていたのだろう。 「それじゃあ、ここで沢山食べな。ここの火力をよく見ておくんだぞ!」 「やったぁ!」 その時だった。 [ドーン!] 大きな爆発音がしたと思ったら、地面が少しだけ揺れた。 「何だ!?」 エンが階段を上り、空炎塔のガラスの壁を通して遠くの方を見つめた。すると、赤く揺らめき、光を出している物の上に黒い煙が立ち上っていた。…火だ。 (あの方角は確か…僕達が火の民に着いた時に初めて踏み入れた所…門。) 「エン村長〜っ!!」 ラズマが考え事をしていると、向こうの方から若いブースターが全速力で走ってきた。そのブースターの問いにエンが答える。 「どうした?」 「ひ…人が…門を突破して…し…侵入して来ました!」 [ドクン] ラズマの心臓が大きく脈打った。ラズマはもうその侵入してきた者を予測していたから。 「黒龍だ。」 ラズマは黒龍が侵入したのだと確信した。そして、みんなに指示を出した。 「エンさん、早く住民を安全なところに避難させて!僕は今爆発のあった門まで行きます!」 「あぁ分かった!それじゃあ、俺はこの空炎塔に住民を避難させるからな!…絶対に戻ってこい。」 すると、全員は同時に空炎塔を出た。そして、『エンとブースター』、『ラズマとアルとティアとガル』で分かれ、それぞれの目的地に走っていった。 「ラズマ、擬人化して!」 「分かった!」 ティアが言った言葉にラズマはすぐに答えた。そして、擬人化ボタンを押し、そのまま走り続けた。 途中で数々のオブジェがあった。 (どれもこれも美しい…って今はそれどころじゃ無い!) そんなことを思いつつも、門に着いた。 すると…やはりそこには黒龍がいた。しかも… 19章 再来 終わり |
リン♪ | #20☆2006.11/29(水)22:59 |
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20章〜新敵〜 門にいた黒龍の一員はラズマの気配に気付いたらしい。そして、振り返った後、こう言った。 「やぁ、お久しぶり。」 「お…お前…ヤイバ…どうしてここにいる…」 走ったせいで途切れる息の中に確かに声を入れて、侵入した黒龍の一員、『ヤイバ』に言った。ヤイバとは風の民以来の嬉しくない再会だった。 「どうして?…そんなこと、前に言ったはずだ。」 すると、ザッと靴を地面に漬けたまま方向転換し、体をラズマの方へと本格的に向けた。そして、話を続けた。 「俺は、ただ強い奴を見つけるだけのこと…そのためにここを襲った。何が悪い?」 ヤイバは相変わらず、ポケモンのことを『奴』と呼んでいた。だが、今はそんなことよりもここを守る方が先だ。 「今すぐここを立ち去…」 「嫌だ。」 ラズマがまだ言葉を言い終わっていない時にヤイバは話し始めた。 「俺がそう言うことを聞かないことをお前は知っているだろう?だが…お前と戦って俺が負ければここを立ち去ろう。」 それはラズマが言おうとしていた言葉だった。だが、今度はヤイバから話し始めた。…きっと何かある。 「それに、今回は、ここに来る途中、良い奴を手に入れたんだよな…」 ヤイバはそう言うと、自分の右手を見た。するとその視線につられてラズマもヤイバの右手を見た。 (…!?モンスターボール…?) その右手にはモンスターボールが1つ、持たれていた。風の民にいた時には自由だったはずの、新たな敵でもあり、新たな被害者…。 (一体どんなポケモンがあのモンスターボールの中に入っているんだ…ヤイバが好むポケモン…なおかつ強いと判断された…) その時だった。ラズマの頬にチクッとした痛みが走った。 「痛っ…」 反射的に手をチクッとした頬へと動かした。そして、その手を見た時ラズマは頭の中が一瞬、白くなった。その手には血が少しだけ付いていた。赤い、鮮やかな血だった。 ラズマの心はヤイバの右手に持たれているモンスターボールから、今さっき出された血に瞬時に移された。そして、心が移された時、ヤイバが喋った。 「おやおや…君は初対面だろ…なのにそんな事しちゃ駄目じゃないか…」 言っている『言葉』は、今まで聞いたヤイバの言葉だった。だが、その言葉に込められた『心』はとてつもなく鋭くとがった氷のようだった。 すると、2匹のポケモンがそのヤイバの隣に、挟むように来た。…いや、『来た』と言うよりは『いた』。あまりにも早すぎ、その残像さえも残らなかったために、いたように見えたのだ。そして、そのポケモンが何なのか認識できた時、ヤイバがもう一度喋った。 「これが僕の新しい仲間…『ストライク』!」 喋っている途中、一匹のストライクをヤイバは撫でていた。 驚いた。その2匹のストライクは、もう、ボールの中から出ていた。しかも、その中の1匹は自分を攻撃してきたのだ。 「こいつらはほかの奴よりも比較的能力が高かったからな…」 ラズマは2匹のストライクに驚かされつつも正気を保っていた。 「だったら、その2匹を倒すことのみ!!勝負だ!ヤイバ!!」 しかし、そんな正気を全く受けなかったように、ひるみもせず、ヤイバは言い返した。 「お前は俺の言っていることが相変わらず分かっていないようだな…その根性…ねじ伏せてやる!」 ヤイバの言葉の氷が一層鋭さを増し、見えない冷気を放った。そのせいなのかラズマはヤイバに向かって上目遣いになってしまった。それと同時に、さっき付けられた傷から、丸く成長していた血のしずくがツーと頬を伝った。 だが、その冷気に押されないようにと、必死でヤイバを睨み続けていた。 20章 新敵 終わり |
リン♪ | #21☆2006.11/29(水)22:59 |
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21章〜ダブルバトル〜 ラズマがヤイバを睨み続けていた時、ヤイバはポケモンを出してきた。 「いけっ!Wストライク!」 相手は2匹のストライクをいっぺんに出してきた…と言うことはダブルバトルだ。それに対抗して、ラズマはティアとガルを出そうと、両手にモンスターボールを想像して出し、同時に投げた。 「行けっ!ティア、ガル!」 ふと相手のストライク達を見た。すると、『LI―0』を使われたのだろう。両者とも風の民での被害者、ウェイと同じく、目には輝きが無い。しかも、右肩に龍が飛んでいるシルエット…このマークはそれぞれのポケモンの種類によって付けられている場所が違うらしい。 「さぁ、いつでもおいで。僕の勝利は分かっているんだけれどもね。」 ラズマがまだ考え事をしていた時にヤイバがふと言った。 「ならば、早速攻撃させてもらうよ!!」 ラズマは即答した。そして、ティアとガルに指示を出した。 「ティア!サイコキネシス、ガル!火の粉!」 ティアの体から波が起きた後、それが一気にストライクへと猛スピードで向かっていく。それと同時に、ガルの口から無数の火の粉が出された。 (よしっ!当たれ!!) 「…甘いよ。」 「え?」 サイコキネシスと火の粉がもうすぐ当たると言う時、ストライク達は、まるで鏡がそこにあるかのように同じ動きでジグザグに避けた。 避けられたサイコキネシスと火の粉はストライク達がいた所を通過し、後ろにある門に当たり、鈍い音を立てた。 これも、風の民で見たウェイと同じで、とてつもない素早さだった。だが、元々素早いストライクは、段違いの素早さを見せてくれた。 「やっぱり何も変わっていないようだな…」 そう淡々とヤイバは話した。 「ストライク!切り裂く!」 初めてヤイバがポケモンに命令をした。すると、命令を受けたとたん、ストライクはもう一度鏡があるような、同じ動きで、月の光を受け、鈍く光る鎌をティアとガルに向け、これも凄いスピードで突き進んでいった。 「ティ…ティア、リフレクター!」 [カキィィン…] とっさに出た言葉はティアにリフレクターを出させ、聖なる青く光る透明の盾が2匹を助けた。盾には鋭くとがった鎌が突きつけられていた。後一歩、遅れていたら2匹とも倒れていただろう。 「続けざまにティア、サイコキネシス!ガルは火の粉!」 まだ2匹のストライクのそれぞれの鎌が片方ずつリフレクターに防がれていた時のことだった。サイコキネシスと火の粉が同時に出され、ストライク達にダメージを受けさせた。 (…よし、ダメージを受けた!後は『コレ』で浄化すれば…) ラズマは『弓』を出した。…そう、あのシャウルの力である『弓』だった。そして、しばらくして、その弓を引いた。すると、『光りの矢』が出てきて、一匹のストライクにねらいを定めた。 (よし!浄化されろっ!!) >「(まだ早いっ!)」 >「(!?)」 シャウルが話しかけた。しかし、矢を持っている方の手はもう離していた。矢は強く、風を切って一匹のストライクへと向かって飛んでいった。 しかし、ストライクはその矢に気付き、その矢を鎌ではじき返した。 [カン…] 「そ…そんな…」 >「(まだ早い…相手の体力はまだ十分ある…。その体力を削り、その矢を射らないと、今のようにはじき返されたり、避けられてしまう…)」 >「(それじゃあ、相手のストライクを2匹とも倒した後に…)」 >「(それも駄目だ。)」 ラズマの言葉がまだ終わりきっていない時にシャウルは割り込み話した。 >「(倒した後ではその矢を受けた時に消費される体力が無い。つまり命を落としてしまう可能性がある。しかも、相手はあの薬によって、力を極限まで得たために、その力に体がついて行けず、技を使うたびに自分にダメージが行ってしまう。)」 それに、相手を倒したとしても『不死の体』を得ているから無駄だ。と、シャウルは言った。 >「(それじゃあ…どうすれば…)」 >「(そこは経験だ。体力がある程度減り、その『矢』を受けやすくなる印が必ずある。それを見つけること…それがこのバトルの第一目標だ。)」 すると、シャウルはラズマのその後の言葉を聞かずにまたどこかへと行ってしまった。 その時だった。 [ガシャン!] 「ティア、ガル!!」 リフレクターが壊された。相手のストライクは『瓦割り』を使ったようだ。 その瓦割りの威力を、ラズマの足下までガルを転がらせたと言うことが語った。 「(イテテ…)」 ガルの心の声が聞こえた。 「(ガル、大丈夫?)」 「(ちょっと…辛いかな?でも大丈夫!)」 「(あまり無理はしないでね。)」 「やっぱりその程度か…早く諦めたらどうなんだ?」 ヤイバの言葉はやはり、氷のように冷たく、鋭かった。 「いいや、まだまだこれからだ!」 そうラズマは言った。しかし、ラズマの熱い心でも、ヤイバの『心の氷』は溶ける様子もなかった。 「ならば…早く片付ける事までのことだ!!」 ラズマの熱い言葉を跳ね返すどころか、氷の心はまた一層鋭さを増し、冷気がまた襲ってきた。 21章 ダブルバトル 終わり |
リン♪ | #22☆2006.11/29(水)23:00 |
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22章〜記憶〜 すると、ヤイバはまたストライク達に攻撃を指示させた。 「ストライク、シザークロス!」 音もなくストライク達はガルとティアの元へと、とがった鎌をバツの字に構えて突っ込んでいった。 (まただ…どうしてあんなに息がそろうんだ…) 2匹のストライクはやはり、鏡がそこにあるかのように動いている。ラズマはそれに違和感を感じた。 「ティア、リフレクター!」 ティアがもう一度リフレクターを出した。 「分かっていないようだね…瓦割り!」 2匹のストライクの鎌がぴったりと重なっているかのように上がっていく。 「ティア、リフレクターを消して!お互い外側へ跳んで!」 ティアがパッとリフレクターを取り消すと、ティア、ガルはさっきまでいたところよりも一歩半ほど外側へ、ピョンと跳んだ。すると、急に下げられたストライクの鎌が、全く同じ場所の地面に突き刺さった。 「グルルッ…」 「グルゥッ…」 「どうしたストライク、早く始末しろ!」 地面に刺さった鎌は深かった。それも、同じ場所だ。ストライク達は移動範囲を地面に奪われてしまった。 「ティア、サイコキネシス、ガル、火の粉!」 2匹から攻撃技が出された。しかし、ラズマは他のことを考えていた。 (どうしてあんなに…息が合うんだ…心を抜かれているはずなのに…っ…!!) ふとラズマの、ある記憶が脳裏をよぎった。それは、まだラズマがピチューであった時、初めて『友』が出来た日の夜…お母さんとの会話だった。 「ねーねーお母さん!今日ね僕、ガル君と、アル君と、ティアちゃんって言うお友達が出来たんだー!」 もう夜であり、夕食の後の片づけをお母さんがしていた時に、ラズマは言った。。 「あら、良かったじゃない!…お友達って言うのは一生、大切に出来る、最高なプレゼントよ。そのお友達を大切にするのよ。」 笑顔で答えてくれたお母さん。その顔は未だに色あせずに思い出せる。 「うん!でもねー、みんなそれぞれ、好きなことや、出来ることが違うんだー…」 そうラズマが言い終わった時、お母さんは片づけが終わった。 「それはね…みんなに、『心』があるからなのよ。」 「へぇー…」 不思議そうに首をかしげるラズマ。しかし、その後の答えは単純であり、大きな意味を持っていた。 「心って言うのはその人の全てを、み〜んな出してくれるの。もし、心がなかったら…みんな…同じになっちゃうのよ。」 記憶の世界から戻ってくると、ラズマは、何かの答えを得た。 (!!…そうか!息が合っているから同じ動きになるんじゃないんだ…同じ動きにしかなれないんだ…あのストライク達は…心を『LIー0』によって無くされている。なおかつ同じポケモン…同じ行動しか出来ないんだ!) 心が無ければどんな者も1つの行動しか出来ない。たとえ指示を受けたとしても同じ動きしか出来ない。それがラズマの出した答えだった。 (だったら…こうすればっ!!) 「(ティア!ストライクをおびき寄せて!ガルもティアの隣に着いて!)」 「(わ…分かった。)」 ラズマはヤイバには聞こえないように、心の声で会話した。2人の返事が同時に返ってくると、ストライク達はティアとガルの方へと、これまた同じ動きで向かっていった。 「ガル!火の粉!」 「ベイッ!(OK!)」 ガルの口から火の粉が出された。しかし… 「…無駄なことが好きだねぇ…避けられるって言うことは分かっているだろう?」 ストライクはガルの火の粉を避け、同じ方向へと移動し、ティアとガルの方へと鎌を突き出そうとしたその時、 「ティア!今だ!サイコキネシス!」 「ラルッ!」 後一歩で鎌が届くだろうという所で、ストライク達は跳ね飛ばされた。 22章 記憶 終わり |
リン♪ | #23★2006.12/01(金)20:25 |
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23話〜救出―ストライク〜 「よしっ!」 ヤイバのストライク達が大きく飛ばされた時、ラズマは右手を硬く握り、拳を作りながら言った。 「途中で避けられたとしても、最終的に攻撃する場所は一緒!しかもそのストライク達は同じ動きしかできないから防御の面では一匹分って言う訳さ!」 「くっ…」 ヤイバが一瞬詰まった。氷がわずかだが、確かに溶けた気配がした。 「へぇ、考えた物だね…確かに防御面ではこの薬を使ったことにより大幅に下がる。だが…それは攻撃の面で補えば良いだけのこと!ストライク!攻撃に専念しろ!切り裂きまくれ!」 ヤイバのストライクは『切り裂く』を使おうと突進してきた。だが、流れはラズマが掴んでいた。 「ガル、始めに火の粉!続いてティア、サイコキネシスでもう一度飛ばせ!」 「ガルッ!」 ガルの口から無数の火の粉が夜の暗闇を照らした。すると、相手のストライク達に見事に当たった。相手もだいぶ体力を失っているのだろう。今回は避けられなかった。 「グルルゥッ…」 相手のストライクがひるみ、ガルとティアに真っ向に突進していたスピードが消えた。そこへサイコキネシスが2匹を襲う。 「ルッ!」 ティアの体の周りの波が2匹のストライクへとぶつかると、さっきよりもストライク達は豪快に飛ばされた。すると、あることにラズマは気が付いた。 (あれ…右肩にあった龍のマークが、一匹は…飛んでいた形から…羽休めをしている!) その意味が分かるまで、そう時間はかからなかった。 (…なるほど…シャウルの言っていた『印』は…コレか。ならば…) 「(ティア、限界まで守っていて!ガルはその中で待機!)」 「ラル!(分かった!)」 ティアが両手を前に構えると、その手からリフレクターが出てきた。 (よしっ。2人は安全だ、今しか無い!) 「…ヤイバ、1つ言う!」 唐突にラズマが言った。 「この勝負、僕がもらう!」 ラズマは左手に弓を出し、しっかりと持った。 「…ほう。…何を言うと思ったら…」 ヤイバには氷が残っていた。だが、ラズマの言葉に、氷が押されている。 ラズマは光の矢を出した。すると、自分の体がほんの少し、青く輝いていた。そう、その輝きを不思議に思いつつも話した。 「禁じられた力を使い、魂をも汚した闇を浄化し、本来の力を戻させてもらう!」 言い終わると同時に、右手がパッと離され、それまでしなっていた弓が一気に戻り、矢がヒュンという音を立てて、弱っている方のストライクへと飛んでいった。 (当たれっ!) そう願った時、ストライクの右肩に光の矢が刺さった。が、傷はない。 ―その矢は傷を付けない。傷を付けるとしたら、闇だけだ。それも、浄化させるために闇を殺す、光の矢。 一瞬ストライクは目を閉じた。そして、その目が開いた時、目には輝きが有った。 (闇を浄化出来た!) そのストライクはすぐに遠くへと飛んでいってしまった。と、それに見とれていた時のことだった。 [ガシャァァン!!] 「(キャッ!)」 「(ウワッ!)」 ガルとティアが同時にラズマの足下まで転がってきた。一匹のストライクの浄化に夢中になっていて、もう一匹のストライクの事をすっかりと忘れ、リフレクターが壊されてしまった。 すると、ガルがいった。 「(ラズマ…ゴメン。僕…限界…だ…よ…)」 その後、ガルはバタッと倒れた。無理をしてでも戦ってくれた。 「有り難う、ガル…後はゆっくり休んで、次に向けて頑張ろうな…」 ラズマはモンスターボールを取り出し、ガルを戻した。ふとティアを見てみると、ティアも大分疲れているようだった。 「(ティア、無理しないでね。)」 「(まだまだ大丈夫なんだからぁ!)」 傷ついているのに、無理にでも頑張っているティアの姿にラズマは早く決着を付けないと危ないと察し、アルの入っているボールを右手に持ち、アルを出した。 「行けっ、アル!」 「(アル、これで頑張って耐えてくれ!)」 「(分かった、頑張ってみる!)」 唯一アルだけが体力が満タンな状態だった。 「(2人とも、後少しだから…!?)」 ラズマがストライクの右肩の、龍の印を見た。すると、龍の印は、飛んでいない。なおかつ、羽休めもしていない、歪んだ形をしていた。 >「(ラズマ!今、浄化してはいけない!)」 シャウルの声だ。 >「(!?…どうして?)」 >「(あの形は『不死の体』へと変形してしまった形。つまり…今浄化したらあのストライクは確実に死ぬ!)」 …思い出した。あの形よりも少し、原型をとどめていたのが、ウェイが浄化される寸前の形だった。だが、今はそれ以上に歪んだ形をしている。 つまり、浄化したらウェイ以上のダメージを一気に負い、そのまま死んでしまうのだった。 >「(それじゃあ…一体…どうすれば…)」 >「(まずは一回あのストライクを倒すんだ。そして、次に会った時に浄化をするんだ。)」 >「(でも、相手は不死の体を得ているから倒せないはずじゃ…)」 >「(『不死』とは言っても完全ではない。戦うと言った事を止めようとはしないが、体には限界がある。その限界を超せば…相手は倒れる。)」 目まぐるしいスピードの会話の結末は、相手を倒す…それだけだった。今はそれしかない。 (よし…あのストライクを…倒す!!) 23章 救出―ストライク 終わり |
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